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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149679
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20231005BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 J
H01F17/04 F
H01F27/24 Q
H01F27/32 140
H01F41/02 D
H01F41/02 J
H01F37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058367
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆幸
【テーマコード(参考)】
5E044
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA09
5E062AA10
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA03
5E070BB03
5E070DA11
(57)【要約】
【課題】 圧粉コアの表面にガラス層等の絶縁層を形成することなく、導線と圧粉コアとの間の電気的な絶縁性を向上させること。
【解決手段】 本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品は、第1面12a1及び第2面12a2を含む内側面12aを有する第1フランジ12、第1フランジ12の内側面12aと対向する第2フランジ13、並びに軸芯方向に延びており第1フランジ12と第2フランジ13とを接続する巻芯11を有し、第1面12a1が第2面12a2よりも低い平滑性を有するように、絶縁材で互いに結合された複数の金属磁性粒子から構成された圧粉コア10と、第1面12a1において内側面12aに接するように巻芯11の周囲に巻かれた導線25と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を含む内側面を有する第1フランジ、前記第1フランジの前記内側面と対向する第2フランジ、並びに軸芯方向に延びており前記第1フランジと前記第2フランジとを接続する巻芯を有し、前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有するように、絶縁材で互いに結合された複数の金属磁性粒子から構成された圧粉コアと、
前記第1面において前記内側面に接するように前記巻芯の周囲に巻かれた導線と、
を備えるコイル部品。
【請求項2】
前記第1面は、前記軸芯方向において、前記第2面よりも前記第2フランジに近い位置に配置されている、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記導線は、前記第2面に接しない、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記巻芯は、前記第1面と第1長さにわたって接し、前記第2面と前記第1長さよりも短い第2長さにわたって接している、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1面は、第1領域と第2領域とに区画され、前記第1領域は、前記巻芯に対して前記第2領域と反対側に配置されている、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1面の面積を表す第1面積は、前記第2面の面積を表す第2面積よりも小さい、
請求項4に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1フランジと前記第2フランジとの間に前記導線を覆うように設けられた樹脂を含む外装部をさらに備える、
請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1面の算術平均粗さ第1Saは、前記第2面の算術平均粗さ第2Saよりも2倍以上大きい、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1面の算術平均粗さ第1Saは、前記複数の金属磁性粒子の平均粒径の1/20以上である、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第2フランジは、前記第1フランジの前記内側面と対向する第2内側面と、前記第2内側面に対向し前記第2面よりも低い平滑性を有する外側面を有し、
前記第2フランジの前記外側面に設けられ、前記導線と電気的に接続される外部電極をさらに備える、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1面は、前記第2面に対して傾斜している、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1面は、前記第2面と平行に延伸している、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項13】
ダイスの内周面及び下パンチの上端面で画定される充填空間に、複数の軟磁性金属粉を樹脂と混合して得られた混合樹脂組成物を充填する工程と、
一軸方向に対して傾斜する傾斜面を有する上パンチを前記下パンチに向かって前記一軸方向に沿って移動させて前記混合樹脂組成物を圧縮することで、前記傾斜面に沿って延びる第1面及び前記一軸方向に沿って延びる第2面を有しており前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有する圧縮成型体を得る工程と、
前記圧縮成型体を加熱して圧粉コアを得る工程と、
前記圧粉コアに前記第1面に接するように導線を巻回する工程と、
を備えるコイル部品の製造方法。
【請求項14】
ダイスの内周面及び下パンチの上端面で画定されるキャビティに、複数の軟磁性金属粉を樹脂と混合して得られた混合樹脂組成物を充填する工程と
第1加圧面及び前記第1加圧面よりも前記下パンチの近くに配置されている第2加圧面を有する上パンチを前記下パンチに向かって一軸方向に沿って移動させて前記混合樹脂組成物を圧縮することで、前記第1加圧面により圧縮され前記一軸方向に沿って延びる第1面を有する第1領域及び前記第2加圧面により圧縮され前記一軸方向に沿って延びる第2面を有する第2領域を有しており前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有する圧縮成型体を得る工程と、
前記圧縮成型体を加熱して圧粉コアを得る工程と、
前記圧粉コアに前記第1面に接するように導線を巻回する工程と、
を備えるコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コアと当該コアに巻き付けられた導線とを備える巻線型のコイル部品が知られている。コアは、一対のフランジと当該一対のフランジを連結する巻芯とを有する。導線の表面は、絶縁性の被覆部材で被覆されている。
【0003】
特開2011-014822公報(特許文献1)には、コアの周囲がガラス層で被覆された巻線型のコイル部品が記載されている。ガラス層は、ガラス粉をバインダ樹脂と混合したガラスペーストをコアの表面に塗布することで形成される。引用文献1のコイル部品では、コアの表面を被覆するガラス層により、コアの機械的強度を高めるとともに、コアと他の部材との絶縁性を高めている。
【0004】
特開2013-045926号公報(特許文献2)に記載されているように、コアは、金属磁性粒子を圧縮成型して作製される成型体(「圧粉コア」と呼ばれる。)であってもよい。圧粉コアを備えるコイル部品は、フェライトコアを備えるコイル部品よりも優れた磁気飽和特性を呈する。引用文献2には、圧粉コアの表面にガラス塗膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-014822号公報
【特許文献2】特開2013-045926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導線は、例えば、スピンドル式巻線機やフライヤー式巻線機等の巻線機を利用して、コアの巻芯に巻回される。導線を巻芯に巻回する時に、導線がフランジの内側面に接触して導線の表面の被覆部材が損傷を受け、その損傷部位において導線の絶縁性が低下することがある。圧粉コアは、フェライトコアと比べて比抵抗が小さいため、導線の被覆部材が部分的に損傷すると、その損傷部位を介して導線から圧粉コアに電流がリークしやすい。
【0007】
上記の特許文献1及び特許文献2では、コアの表面をガラス層で被覆することによりコアの絶縁性を確保することが提案されている。しかしながら、ガラス層の材料となるガラススラリーは、コアに含まれるフェライト粒の粒界や金属磁性粒子の隙間からコアの内部に浸透するため、ガラススラリーは、一部がコアの内部に浸透しても残部がコアの表面に残留して絶縁層として機能することができるように、コアの表面に厚く塗布される。圧粉コアにおいては、ガラススラリーの内部への浸透量が多くなるため、ガラススラリーの塗布量の調整が特に難しい。圧粉コアの絶縁性を確保するためには、ガラススラリーの塗布量を多くする必要があるため、圧粉コアの表面にガラス層が厚く形成されてしまい、ガラス層の厚さの分だけコイル部品が大型化してしまう。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決又は緩和することである。本発明の具体的な目的の一つは、導線と圧粉コアとの間の電気的な絶縁性を向上させることができる新規なコイル部品及びその製造方法を提供することである。本発明のより具体的な目的の一つは、圧粉コアの表面にガラス層等の絶縁層を形成することなく、導線と圧粉コアとの間の電気的な絶縁性を向上させることである。
【0009】
本発明の前記以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。特許請求の範囲に記載される発明は、「発明を解決しようとする課題」から把握される課題以外の課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によるコイル部品は、第1面及び第2面を含む内側面を有する第1フランジ、前記第1フランジの前記内側面と対向する第2フランジ、並びに軸芯方向に延びており前記第1フランジと前記第2フランジとを接続する巻芯を有し、前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有するように、絶縁材で互いに結合された複数の金属磁性粒子から構成された圧粉コアと、前記第1面において前記内側面に接するように前記巻芯の周囲に巻かれた導線と、を備える。
【0011】
本発明の一実施形態によるコイル部品の製造方法は、ダイスの内周面及び下パンチの上端面で画定される充填空間に、複数の軟磁性金属粉を樹脂と混合して得られた混合樹脂組成物を充填する工程と、一軸方向に対して傾斜する傾斜面を有する上パンチを前記下パンチに向かって前記一軸方向に沿って移動させて前記混合樹脂組成物を圧縮することで、前記傾斜面に沿って延びる第1面及び前記一軸方向に沿って延びる第2面を有しており前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有する圧縮成型体を得る工程と、前記圧縮成型体を加熱して圧粉コアを得る工程と、前記圧粉コアに前記第1面に接するように導線を巻回する工程と、を備える。
【0012】
本発明の一実施形態によるコイル部品の製造方法は、ダイスの内周面及び下パンチの上端面で画定されるキャビティに、複数の軟磁性金属粉を樹脂と混合して得られた混合樹脂組成物を充填する工程と、第1加圧面と、前記第1加圧面よりも前記下パンチの近くに配置されている第2加圧面を有する上パンチを前記下パンチに向かって一軸方向に沿って移動させて前記混合樹脂組成物を圧縮することで、前記第1加圧面により圧縮され前記一軸方向に沿って延びる第1面を有する第1領域及び前記第2加圧面により圧縮され前記一軸方向に沿って延びる第2面を有する第2領域を有しており前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有する圧縮成型体を得る工程と、前記圧縮成型体を加熱して圧粉コアを得る工程と、前記圧粉コアに前記第1面に接するように導線を巻回する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に開示されている発明によれば、圧粉コアの表面にガラス層等の絶縁層を形成することなく、導線と圧粉コアとの間の電気的な絶縁性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるコイル部品の斜視図である。
図2】実装基板に実装された図1のコイル部品の縦断面図である。
図3図2のコイル部品のI-I線断面図である。
図4図1に示されているコイル部品が有する圧粉コアを示す斜視図である。
図5図4の圧粉コアのII-II線断面図である。
図6図4に示されている圧粉コアを製造するために用いられる一軸プレス機を模式的に示す図である。
図7図6の一軸プレス機の上パンチを模式的に示す図である。
図8a図4に示されている圧粉コアの製造方法を説明するための模式図である。
図8b図4に示されている圧粉コアの製造方法を説明するための模式図である。
図8c図4に示されている圧粉コアの製造方法を説明するための模式図である。
図9a図4の圧粉コアの第2面の微細構造を説明する模式図である。
図9b図4の圧粉コアの第1面の微細構造を説明する模式図である。
図10】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面図である。
図11図10に示されているコイル部品が有する圧粉コアを示す斜視図である。
図12図11の圧粉コアのV-V線断面図である。
図13図11に示されている圧粉コアを製造するために用いられる金型を模式的に示す図である。
図14a図11に示されている圧粉コアの製造方法を説明するための模式図である。
図14b図11に示されている圧粉コアの製造方法を説明するための模式図である。
図14c図11に示されている圧粉コアの製造方法を説明するための模式図である。
図15】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1から図5には、本発明の一実施形態によるコイル部品1が図示されている。コイル部品1は、例えば、電子回路においてノイズを除去するために用いられるインダクタである。コイル部品1は、電源ラインに組み込まれるパワーインダクタであってもよいし、信号ラインにおいて用いられるインダクタであってもよい。
【0017】
まず、図1及び図2を参照して、コイル部品1の概要を説明する。図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の斜視図であり、図2は、実装基板2aに実装されたコイル部品1の縦断面図である。図1では、実装基板2aの図示を省略している。
【0018】
図1に示されているように、コイル部品1は、圧粉コア10と、この圧粉コア10に設けられた導線25と、を備えている。以下では、圧粉コア10を単にコア10と呼ぶことがある。
【0019】
本明細書に添付される図面には、互いに直交するW軸、L軸及びZ軸が示されている。本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とする。本明細書においては、L軸方向、W軸方向及びZ軸方向を基準としてコイル部品1の構成部材の向きや配置を説明することがある。
【0020】
コア10は、金属磁性粒子を含む磁性材料から、例えば圧縮成型法により作製される。コア10には、多数の金属磁性粒子が含まれている。一態様において、コア10内の隣接する金属磁性粒子同士は、絶縁材を介して互いに結合されている。絶縁材は、例えば、金属磁性粒子の表面を覆う絶縁膜である。金属磁性粒子の表面を覆う絶縁膜は、金属磁性粒子が含有する元素の酸化物を含む。別の態様において、絶縁材は、コア10内の隣接する金属磁性粒子同士は、エポキシ樹脂等の絶縁性に優れた熱硬化性樹脂から成る絶縁性の結着材である。コア10に含まれる金属磁性粒子の平均粒径は、例えば、1~20μmである。金属磁性粒子の平均粒径は、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))とすることができる。
【0021】
コア10は、軸芯方向に沿って延びる巻芯11と、巻芯11の一方の端部に設けられた板状の第1フランジ12と、巻芯11の他方の端部に設けられた板状の第2フランジ13とを有する。巻芯11は、第1フランジ12と第2フランジ13とを接続している。図示の実施形態では、巻芯11がT軸方向に沿って延びているので、軸芯方向は、T軸方向と一致する。
【0022】
図示の実施形態において、巻芯11は、四角柱形状を呈する。巻芯11は、導線25を巻回するために適した任意の形状をとることができる。例えば、巻芯11は、四角柱形状以外に、三角柱形状、五角柱形状、六角柱形状等の多角柱形状、円柱形状、楕円柱形状又は截頭円錐形状をとることができる。
【0023】
第1フランジ12は、内側面12aと、この内側面12aに対向する外側面12bとを有している。第2フランジ13は、内側面13aと、この内側面に対向する外側面13bとを有している。第1フランジ12の内側面12aは、第2フランジ13の内側面13aと対向している。
【0024】
図示の実施形態において、第1フランジ12の外側面12bは、平坦に形成された平坦面である。第2フランジ13の外側面13bには、W軸方向に沿って延びる第1凹部14a及び第2凹部14bが設けられている。第1凹部14aは、L軸方向において第2凹部14bから離間している。第1凹部14aの表面には、導電性の材料から構成される外部電極21が設けられ、第2凹部14bの表面には、導電性の材料から構成される外部電極22が設けられる。外部電極21、22はいずれも、銅、銀、パラジウム、又は銀パラジウム合金等の金属材料から成る下地層と、この下地層上に設けられためっき層と、を含むことができる。めっき層は、ニッケルめっき層と、スズめっき層との二層構造であってもよい。
【0025】
巻芯11には導線25が巻回されている。導線25は、導電性に優れた金属材料から成る金属線の周囲を絶縁被膜で被覆することにより構成される。導線25用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni及びAgのうちの1以上の金属又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導線の周囲に設けられる絶縁被膜は、例えばポリエステルイミド、ポリアミド、又はこれら以外の絶縁性に優れた絶縁材料から構成される。導線25の一端25aは第1凹部14a内に引き出されており、導線25の他端25bは第2凹部14b内に引き出されている。導線25は、その一端25aが第1凹部14aの底面に設けられた外部電極21に接し、その他端25bが第2凹部14bの底面に設けられた外部電極22に接するように設けられてもよい。導線25のうち巻芯11の周りに配置されている部位を周回部25cと呼ぶことがある。図示の実施形態では、導線25の断面形状は円形とされている。導線25の断面形状は、円形には限られず、楕円形、長円形、長方形又は正方形であってもよい。
【0026】
図2に示されているように、コイル部品1は実装基板2aに実装され得る。コイル部品1は、導線25の一端25aを覆うようにコア10に設けられたはんだ部30a及び導線25の他端25bを覆うようにコア10に設けられたはんだ部30bにより、実装基板2aのランド3a及びランド3bにそれぞれ接合される。ランド3aとランド3bとの間には、空隙Gが存在する。導線25は、はんだ部30aを介してランド3aと電気的に接続されてもよいし、ランド3aに直接接してもよい。同様に、導線25は、はんだ部30bを介してランド3bと電気的に接続されてもよいし、ランド3bに直接接してもよい。
【0027】
はんだ部30aは、第1凹部14a内に充填されたはんだペーストを加熱することで生成される溶融はんだを第1凹部14aに濡れ広がらせ、この濡れ広がった溶融はんだが固化することで作製され得る。本発明の一又は複数の実施形態において、導線25を被覆する絶縁被膜は、第1凹部14aにはんだを充填する前に導線25から除去される。導線25を被覆する絶縁被膜は、実装時にはんだ部30aが溶融して生成される溶解はんだに接触することにより熱分解され、この熱分解により導線25から除去されてもよい。はんだペーストは、任意のはんだ材料から成る。はんだ材料として、例えば、JIS Z 3282に規定されている鉛フリーの合金材料を用いることができる。はんだペーストは、例えば、孔版印刷法により第1凹部14a内に塗布され得る。はんだ部30aは、コア10をはんだ槽に浸漬することで形成されてもよい。はんだ部30aは、金型を用いてはんだ材料を成型して得られたはんだ材料の成形体を導線25の一端25aをとともに第1凹部14aに嵌め込み、この第1凹部14aに嵌め込まれたはんだ材料の成形体を加熱することで形成されてもよい。はんだ部30aの具体的な形成方法は、本明細書において明示的に開示されたものには限定されない。はんだ部30bは、はんだ部30aと同様にして第2凹部14b内に導線25の他端25bと電気的に接続されるように設けられる。
【0028】
以上のとおり、コイル部品1は、コア10の第2フランジ13の外側面13bが実装基板2aに対向するように配置され、この外側面13bに設けられた外部電極21、22及びはんだ部30a、30bを介して実装基板2aに実装される。よって、第2フランジ13の外側面13bがコイル部品1の実装面となる。
【0029】
次に、図3ないし図5をさらに参照して、コア10について説明する。図3は、図2のコイル部品1をI-I切断線で切断した断面図、図4は、コイル部品1が備えるコア10を示す斜視図であり、図5は、コア10をII-II切断線で切断した断面図である。
【0030】
図3ないし図5に示されているように、第1フランジ12の内側面12aは、第1面12a1と、第2面12a2と、に区画される。第1面12a1は、第2面12a2よりも低い平滑性を有する。言い換えると、第1面12a1は、第2面12a2よりも粗い。本明細書において、コア10の表面の平滑性は、コア10の表面の算術平均粗さSaにより表される。算術表面粗さSaは、ISO25178に準拠した測定器を用いることによって算出される。算術表面粗さSaは、株式会社キーエンス製の形状解析レーザー顕微鏡(VK-X250)を用いて測定することができる。第1面12a1の算術平均粗さを第1Saとし、第2面12a2の算術平均粗さを第2Saとすると、第1Saは、第2Saよりも大きい。一態様において、第1Saは、第2Saよりも2倍以上大きい。一態様において、第1Saは、第2Saの2倍~3倍の値である。
【0031】
一態様において、第1フランジ12の外側面12bは、内側面12aの第2面12a2よりも低い平滑性を有する。この場合、外側面12bの算術平均粗さを第3Saとすると、第3Saは、第2Saよりも大きい。外側面12bの平滑性は、第2面12a2の平滑性と同程度であってもよい。外側面12bの算術平均粗さ第3Saは、内側面12aの第1面12a1の算術平均粗さ第1Saより小さくてもよい。
【0032】
一態様において、第1面12a1の算術平均粗さ第1Saは、コア10に含まれる金属磁性粒子の平均粒径の1/20以上である。第2面12a2の算術平均粗さ第2Sa及び外側面12bの算術平均粗さ第3Saはいずれも、コア10に含まれる金属磁性粒子の平均粒径の1/20よりも小さい。第1面12a1の算術平均粗さ第1Saは、例えば、0.3μm以上1μm以下とされる。第2面12a2の算術平均粗さ第2Saは、例えば、0.1μm以上0.3μm未満とされる。外側面12bの算術平均粗さ第3Saは、例えば、0.2μm以上0.6μm未満とされる。第1面12a1の算術平均粗さ第1Saは、第2面12a2の算術平均粗さ第2Saよりも大きいので、単位長さあたりの第1面12a1の表面抵抗値は、単位長さあたりの第2面12a2の表面抵抗値よりも大きい。コア10の表面の表面抵抗値は、JIS C-2139-3-2に準拠して、市販の接触式の抵抗測定器を用いて測定することができる。コア10の表面の表面抵抗値の測定は、東亜DKK製の超絶縁計(SM8203)を用いて行うことができる。同様に、外側面12bの算術平均粗さ第3Saは、第2面12a2の算術平均粗さ第2Saよりも大きいので、単位長さあたりの外側面12bの表面抵抗値は、単位長さあたりの第2面12a2の表面抵抗値よりも大きい。第1面12a1の表面抵抗値は、1000MΩ/cm以上、10000MΩ/cm以下とすることができる。第2面12a2の表面抵抗値は、100MΩ/cm以上、1000MΩ/cmより小さいとすることができる。外側面12bの表面抵抗値は、500MΩ/cm以上、5000MΩ/cmより小さいとすることができる。
【0033】
第2フランジ13の内側面13aは、第1フランジ12の内側面12aと同様に、第1面13a1と、第2面13a2と、に区画される。第1面13a1の平滑性は、第2面13a2の平滑性よりも低い。第2フランジ13の内側面13aの第1面13a1は、第1フランジ12の内側面12aの第1面12a1と対向する位置に設けられ、第2フランジ13の内側面13aの第2面13a2は、第1フランジ12の内側面12aの第2面12a2と対向する位置に設けられる。一態様において、第2フランジ13の外側面13bは、内側面13aの第2面13a2よりも低い平滑性を有する。第1面13a1の算術平均粗さは、第2面13a2の算術平均粗さよりも大きいので、単位長さあたりの第1面13a1の表面抵抗値は、単位長さあたりの第2面13a2の表面抵抗値よりも大きい。同様に、外側面13bの算術平均粗さは、第2面13a2の算術平均粗さよりも大きいので、単位長さあたりの外側面13bの表面抵抗値は、単位長さあたりの第2面13a2の表面抵抗値よりも大きい。
【0034】
本明細書では、説明の簡潔さのために、第1フランジ12についても主に説明するが、第1フランジ12に関する説明は、可能な限り第2フランジ13にも当てはまる。
【0035】
図3及び図4に示されているように、第1面12a1は、T軸方向において、第2面12a2よりも第2フランジ13に近い位置に配置されている。第1面12a1は、第1フランジ12の内側面12aから第2フランジ13に向かって隆起している。図示の実施形態において、第2面12a2は、軸芯方向(T軸方向)に対して垂直な方向に延伸している。言い換えると、第2面12a2は、軸芯方向に対して垂直なLW平面に平行に延びている。図示の実施形態において、第1面12a1は、第2面12a2に対して傾斜している。図示されているように、第1面12a1は、巻芯11との接続位置において第2面12a2から最も離れるように第2面12a2に対して傾斜していてもよい。第1面12a1及び第2面12a2は、いずれも平坦な面である。
【0036】
同様に、第2フランジ13において、第1面13a1は、T軸方向において、第2面13a2よりも第1フランジ12に近い位置に配置されている。第1面13a1は、第2フランジ13の内側面13aから第1フランジ12に向かって隆起している。図示の実施形態において、第2面13a2は、軸芯方向(T軸方向)に対して垂直な方向に延伸している。言い換えると、第2面13a2は、軸芯方向に対して垂直なLW平面に平行に延びている。図示の実施形態において、第1面13a1は、第2面13a2に対して傾斜している。図示されているように、第1面13a1は、巻芯11との接続位置において第2面13a2から最も離れるように第2面13a2に対して傾斜していてもよい。第1面13a1及び第2面13a2は、いずれも平坦な面である。
【0037】
図5に示されているように、第1フランジ12の内側面12aは、軸芯方向(T軸方向)から見たときに、巻芯11に対してW軸方向のプラス側にある第1領域R1と、巻芯11に対してW軸方向のマイナス側にある第2領域R2と、巻芯11に対してL軸方向のプラス側にある第3領域R3と、巻芯11に対してL軸方向のマイナス側にある第4領域R4と、に区画される。これらの領域のうち、第1領域R1及び第2領域R2が第1面12a1を構成し、第3領域R3及び第4領域R4が第2面12a2を構成する。言い換えると、第1面12a1は、第1領域R1と第2領域R2とに区画され、第2面12a2は、第3領域R3と第4領域R4とに区画される。領域R1は、L軸方向において第3領域R3及び第4領域R4と接している。同様に、領域R2も、L軸方向において第3領域R3及び第4領域R4と接している。
【0038】
巻芯11の外周面は、第1周面11aと、第1周面11aに対向する第2周面11bと、第1周面11aと第2周面11bとを接続する第3周面11cと、第3周面11cと対向する第4周面11dと、により画定されている。第1フランジ12の第1面12a1のうち第1領域R1は、巻芯11の第1周面11aと接しており、第2領域R2は、巻芯11の第2周面11bと接している。図示の実施形態において、巻芯11の第1周面11aのL軸方向における寸法(=a)は、第2周面11bのL軸方向における寸法(=a)と等しい。一態様において、第1フランジ12の第1面12a1のL軸方向における寸法は、巻芯11の第1周面11aのL軸方向における寸法及び巻芯11の第2周面11bのL軸方向における寸法と等しい。よって、第1面12a1は、巻芯と長さ2aにわたって接している。
【0039】
一態様において、第1フランジ12の第2面12a2のうち第3領域R3は、巻芯11の第3周面11cと接しており、第4領域R4は、巻芯11の第4周面11dと接している。図示の実施形態において、巻芯11の第3周面11cのW軸方向における寸法(=b)は、第4周面11dのW軸方向における寸法(=b)と等しい。よって、第2面12a2は、巻芯と長さ2bにわたって接している。
【0040】
一態様において、第1フランジ12の第2面12a2の面積(つまり、領域R3の面積と領域R4の面積との合計面積)は、第1面12a1の面積(つまり、領域R1の面積と領域R2の面積との合計面積)よりも大きい。
【0041】
コイル部品1の製造時には、圧縮成型法により金属磁性粒子を含む磁性材料からコア10を成型した後、コア10の巻芯11の周りに導線25が巻回される。導線25は、市販されているスピンドル式巻線機、市販されているフライヤー式巻線機、又はこれら以外の公知の巻線機を用いて巻芯11の周りに巻回される。
【0042】
図3に示されているように、コア10においては、第1フランジ12の内側面12aにおいて第1面12a1が第2フランジ13に向かって突出しているため、導線25は、第1フランジ12の内側面12aのうち第1面12a1に接触する。一態様において、第2面12a2は、T軸方向において第1面12a1よりも後退した位置にあるため、導線25は、第2面12a2に接触しない。よって、第1フランジ12の内側面12aのうち、導線25と接触するのは、第1面12a1のみである。
【0043】
同様に、コア10においては、第1フランジ12の内側面12aにおいて第1面12a1が第2フランジ13に向かって突出しているため、導線25は、第1面13a1において第2フランジ13の内側面13aに接触する。一態様において、第2面13a2は、T軸方向において第1面13a1よりも後退した位置にあるため、導線25は、第2面13a2に接触しない。よって、第2フランジ13の内側面13aのうち、導線25と接触するのは、第1面13a1のみである。
【0044】
巻線機により導線25を巻芯11に巻き付ける際には、導線の両端が巻線機のノズルによって引っ張られているため、導線にはテンションがかかっている。このため、導線25を巻芯11の周囲に巻き付ける際に、導線25が第1フランジ12の内側面12a又は第2フランジ13の内側面13aに接触すると、導線25の表面に設けられている絶縁被覆が損傷を受けるおそれがある。導線25は、第1面12a1のみにおいて第1フランジ12の内側面12aと接触する。上述のとおり、第1面12a1は、第2面12a2よりも表面抵抗値が大きいので、導線25を巻芯11に巻き付ける際に導線25の被覆部材が第1フランジ12の内側面12aとの摩擦により損傷を受けても、導線25の損傷を受けた部位は、表面抵抗値が大きい第1面12a1において内側面12aと接触するので、導線25と第1フランジ12との間で導線25の被覆部材の損傷箇所を介した電流のリークを抑制することができる。同様に、導線25は、第1面13a1のみにおいて第2フランジ13の内側面13aと接触するので、導線25と第2フランジ13との間で導線25の被覆部材の損傷箇所を介した電流のリークを抑制することができる。
【0045】
コア10は、一軸プレス法により作製され得る。図6は、コア10を作製するための一軸プレス機の模式図であり、図7は、一軸プレス機の上パンチ52を模式的に示している。図示されているように、一軸プレス機50は、貫通孔を有するダイス51と、上パンチ52と、下パンチ53と、を備える。
【0046】
図7に示されているように、上パンチ52は、平坦な第1加圧面52aと、平坦な第2加圧面52bと、下方に突出する突出部52cに設けられた第1傾斜面52c1と、突出部52cに設けられた第2傾斜面52c2と、第1傾斜面52c1と第2傾斜面52c2とを接続する平坦な第3加圧面52c3と、を有する。第1傾斜面52c1は、ストローク方向(後述する図8a~図8cでは、紙面の上下方向)に対して1℃より大きな角度をなしている。同様に、第2傾斜面52c2は、ストローク方向に対して1℃より大きな角度をなしている。下パンチ53は、上パンチ52と同じ形状を有する。具体的には、下パンチ53は、平坦な第1加圧面53aと、平坦な第2加圧面53bと、上方に突出する突出部53cに設けられた第1傾斜面53c1と、突出部52cに設けられた第2傾斜面53c2と、第1傾斜面53c1と第2傾斜面53c2とを接続する平坦な第3加圧面53c3と、を有する。下パンチ53は、上パンチ52とは上下方向が逆向きとなるように、ダイス51の貫通孔内に設置される。上パンチ52及び下パンチ53は、ストローク方向に移動可能である。上パンチ52及び下パンチ53のストローク方向は、紙面の上下方向である。
【0047】
図8aないし図8cを参照してコア10の製造方法を説明する。図8aないし図8cには、一軸プレス機50を図6のIII-III線で切断した断面が模式的に示されている。まず、図8aに示されているように、ダイス51の内周面と下パンチ53の上端面で確定される充填空間に磁性材料Mが充填される。磁性材料Mは、軟磁性金属粉と樹脂とを混合した混合樹脂組成物である。
【0048】
次に、下パンチ53及び上パンチ52によって、充填空間内に充填された磁性材料Mを加圧する。具体的には、図8bに示されている位置まで上パンチ52を下降させて、下パンチ53、上パンチ52及びダイス51によって磁性材料Mを加圧し、その後、上パンチ52を上昇させることにより図8cに示されているように、コア10に対応する形状を有する成型体60が得られる。成型体60は、複数の金属磁性粒子を含む成型体である。成型体60は、巻芯11に対応する巻芯部61、第1フランジ12に対応する第1フランジ部62、及び第2フランジ13に対応する第2フランジ部63を有する。第1フランジ部62は、上パンチ52の第1傾斜面52c1及び下パンチ53の第1傾斜面53c1に対応する傾斜面62a1及びストローク方向に沿って延びる平坦面62a2を有している。第2フランジ部63は、上パンチ52の第2傾斜面52c2及び下パンチ53の第2傾斜面53c2に対応する傾斜面63a1及びストローク方向に沿って延びる平坦面63a2を有している。
【0049】
成型体60を一軸プレス機50から取り出した後、成型体60を加熱することで、コア10が得られる。この加熱処理により、成型体60の巻芯部61が巻芯11となり、第1フランジ部62が第1フランジ12となり、第2フランジ部63が第2フランジ13となる。成型体60への加熱処理は、例えば、600℃~850℃にて、30分~240分間行われる。
【0050】
以上の製造工程において、磁性材料Mの加圧後に上パンチ52を上昇させる際に、上パンチ52のストローク方向に沿って延びる成型面から成型体60の平坦面62a2に対して摩擦力が作用する。この摩擦力により、成型体60に含まれる複数の金属磁性粒子のうち平坦面62a2から露出する金属磁性粒子がストローク方向に変形する。その結果、図9aに示されているように、コア10において、第1フランジ12の第2面12a2から露出する金属磁性粒子31は、コア10の内部にある金属磁性粒子31よりもストローク方向に沿う変形量が大きくなる。このように、加圧後に上パンチ52を上昇させる際の摩擦力により、成型体60の平坦面62a2から露出する金属磁性粒子31がストローク方向に沿って変形する結果、平坦面62a2における金属磁性粒子31の形状に起因する凹凸が小さくなる。このため、成型体60における平坦面62a2、ひいてはコア10の第1フランジ12における第2面12a2は、高い平滑性を有する。同様の理由で、コア10の第2フランジ13における第2面13a2も、高い平滑性を有する。
【0051】
他方、傾斜面62a1は、ストローク方向に対して傾斜しているので、上パンチ52を上昇させる際に、傾斜面62a1に対しては上パンチ52からの摩擦力が作用しない。したがって、上パンチ52を上昇させる際に、傾斜面62a1においては、金属磁性粒子の凹凸が保存される。その結果、図9bに示されているように、コア10において、第1フランジ12の第1面12a1から露出する金属磁性粒子31は、第2面12a2から露出する金属磁性粒子31と比べて変形が抑制されている。このため、成型体60における傾斜面62a1、ひいてはコア10の第1フランジ12における第1面12a1の平滑性は、第2面12a2の平滑性よりも低くなる。同様の理由で、コア10の第2フランジ13における第1面13a1の平滑性も、第2面13a2の平滑性よりも低くなる。
【0052】
続いて、図10から図12を参照して、別の実施形態によるコイル部品101について説明する。コイル部品101は、コア10に代えてコア110を備えている点で、コイル部品1と異なっている。コイル部品1とコイル部品101は、コアの形状以外については、共通の特徴を有しているため、以下ではコア110について主に説明し、共通する特徴については説明を省略する。
【0053】
図10及び図11に示されているように、コア110の第1フランジ12は、内側面12a及び外側面12bを有している。第1フランジ12の内側面12aは、第1面112a1と、第2面12a2と、に区画されている。第1面112a1は、第1面12a1と異なり、第2面12a2に平行に延伸している。第1面112a1は、第2面12a2よりも低い平滑性を有する。コイル部品1の第1面12a1の平滑性に関する説明は、第1面112a1の平滑性についても当てはまる。
【0054】
図12は、コア110をV-V切断線で切断した断面図である。図12に示されているように、T軸方向から見た第1面112a1の配置は、第1面12a1の配置と同様である。
【0055】
コア110の第2フランジ13は、内側面13a及び外側面13bを有している。第2フランジ13の内側面13aは、第1面113a1と、第2面13a2と、に区画されている。第1面113a1は、第1面13a1と異なり、第2面13a2に平行に延伸している。第1面113a1は、第2面13a2よりも低い平滑性を有する。コイル部品1の第1面13a1の平滑性に関する説明は、第1面113a1の平滑性についても当てはまる。
【0056】
コア110は、コア10と同様に、一軸プレス法により作製される。図13及び図4aないし図14cを参照してコア110の製造方法を説明する。コア110は、一軸プレス機50を用いて作成することができる。ただし、コア110は、コア10と形状が異なるため、上パンチ52に代えて上パンチ152を用い、下パンチ53に代えて下パンチ153が用いられる。図13は、コア110を作製するための一軸プレス機に用いられる上パンチ152を模式的に示している。また、図14aないし図14cは、コア110の製造に用いられる一軸プレス機を図6のIV-IV線で切断した断面が模式的に示されている。
【0057】
図13に示されているように、上パンチ152は、板状の第1部位152aと、板状の第2部位152bと、第1部位152aと第2部位152bとの接続部から下方に突出する突出部152cと、を有する。第1部位152aは、平坦な第1加圧面152a1と、第1加圧面152a1よりも下方にある平坦な第2加圧面152a2及び第3加圧面152a3と、を有する。第2部位152bは、第1部位152aと概ね同じ形状に構成されてもよい。突出部152cは、平坦な第4加圧面152c1を有している。
【0058】
下パンチ153は、上パンチ152と同じ形状を有する。具体的には、下パンチ153は、第1加圧面152a1に対向する位置に設けられた第1加圧面153a1と、第2加圧面152a2に対向する位置に設けられた第2加圧面153a2と、第3加圧面152a3に対向する位置に設けられた第3加圧面153a3と、を備える。下パンチ153は、上方に突出する突出部に第4加圧面152c1に対向するように設けられた第4加圧面153c1と、を有する。
【0059】
コア110を製造するためには、まず、図14aに示されているように、ダイス151の内周面と下パンチ153の上端面で確定される充填空間に磁性材料Mが充填される。磁性材料Mは、軟磁性金属粉と樹脂とを混合した混合樹脂組成物である。
【0060】
次に、下パンチ153及び上パンチ152によって、充填空間内に充填された磁性材料Mを加圧する。具体的には、図14bに示されている位置まで上パンチ152を下降させて、下パンチ153、上パンチ152及びダイス151によって磁性材料Mを加圧し、その後、上パンチ152を上昇させることにより図14cに示されているように、コア110に対応する形状を有する成型体160が得られる。成型体160は、複数の金属磁性粒子を含む成型体である。図14cに記載されているように、成型体160は、巻芯11に対応する巻芯部61、第1フランジ12に対応する第1フランジ部162、及び第2フランジ13に対応する第2フランジ部を有する。第2フランジ部の図示は省略されているが、図14cの視点で、第2フランジ部は、第1フランジ部と同じ形状を呈する。成型体160に対して加熱処理を行うことにより、コア110が得られる。
【0061】
成型体160は、圧縮量が異なる複数の部位に区画される。具体的には、成型体160は、上パンチ152の第1加圧面152a1と下パンチ153の第1加圧面153a1との間で圧縮された第1領域160aと、上パンチ152の第2加圧面152a2と下パンチ153の第2加圧面153a2との間で圧縮された第2領域160bと、上パンチ152の第3加圧面152a3と下パンチ153の第3加圧面153a3との間で圧縮された第3領域160cと、に区画される。第2領域160b及び第3領域160cは、上パンチ152のうち第1加圧面152a1よりも下パンチ153に近い位置にある第2加圧面152a2及び第3加圧面152a3と下パンチ153のうち第1加圧面153a1よりも上パンチ152に近い位置にある第2加圧面153a2及び第3加圧面153a3との間で圧縮されているため、第2領域160b及び第3領域160cの圧縮量は、上パンチ152の第1加圧面152a1と下パンチ153の第1加圧面153a1との間で圧縮される第1領域160aの圧縮量よりも大きい。このため、第2領域160b及び第3領域160cにおける金属磁性粒子の充填率は、第1領域160aにおける金属磁性粒子の充填率よりも大きくなる。また、第2領域160b及び第3領域160cに含まれる金属磁性粒子は、第1領域160aに含まれる金属磁性粒子よりも大きく変形する。このため、成型体160のうち第2領域160b及び第3領域160cの表面を構成する平坦面162a2は、第1領域160aの表面を構成する平坦面162a1よりも高い平滑性を有する。このため、成型体160における平坦面162a1の平滑性は、成型体160における平坦面162a2の平滑性よりも低くなる。よって、成型体160に加熱処理を施すことで得られるコア110において、第1フランジ12における第1面112a1の平滑性は、第2面12a2の平滑性よりも低くなる。同様の理由で、コア110の第2フランジ13における第1面113a1の平滑性も、第2面13a2の平滑性より低くなる。
【0062】
続いて、図15を参照して、別の実施形態によるコイル部品201について説明する。コイル部品201は、外装部40を備える点で、コイル部品1と異なっている。コイル部品201のうち、コイル部品1と共通する特徴については説明を省略する。
【0063】
外装部40は、第1フランジ12と第2フランジ13との間に絶縁性の樹脂を含む樹脂組成物を充填することにより形成される。外装部40用の樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂材料が用いられ得る。外装部40は、第1フランジ12と第2フランジ13との間の領域の一部又は全部に充填される。外装部40は、導線25を覆うように設けられる。外装部40は、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、磁性材料又は非磁性材料を用いることができる。フィラーとして、フェライト粉、金属磁性粒子、アルミナ粒子又はシリカ粒子を用いることにより、外装部40の線膨張係数を低くし、機械的強度を高くすることができる。
【0064】
外装部40の材料となる樹脂組成物を第1フランジ12と第2フランジ13との間に充填すると、第1フランジ12の第1面12a1は第2面12a2よりも粗く、また、第2フランジ13の第1面13a1は第2面13a2よりも粗いため、樹脂組成物は、第1面12a1及び第1面13a1からコア10の内部に浸透しやすい。コイル部品201においては、第1フランジ12の第1面12a1の面積が第2面12a2の面積よりも小さく、また、第2フランジ13の第1面13a1の面積が第2面13a2の面積よりも小さいので、樹脂組成物のコア10への浸透を抑制することができる。このように、第1面12a1の面積を第2面12a2の面積よりも小さくし、また、第1面13a1の面積を第2面13a2の面積よりも小さくすることにより、外装部40と第1フランジ12の内側面12a及び第2フランジ13の内側面13aとの密着性を向上させることができる。
【0065】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。本発明の一実施形態によれば、第1フランジ12の内側面12aが、第1面12a1及び第2面12a2を有しており、第1面12a1が第2面12a2よりも低い平滑性を有するように構成されている。導線25は、第1面12a1において第1フランジ12の内側面12aと接するように巻芯11に巻き付けられている。上述のとおり、第1面12a1は、第2面12a2よりも表面抵抗値が大きいので、導線25を巻芯11に巻き付ける際に導線25の被覆部材が第1フランジ12の内側面12aとの摩擦により損傷を受けても、導線25の損傷を受けた部位は、表面抵抗値が大きい第1面12a1において内側面12aと接触するので、導線25と第1フランジ12との間で導線25の被覆部材の損傷箇所を介した電流のリークを抑制することができる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、第1フランジ12の内側面12aの第1面12a1は、T軸方向において第2面12a2よりも第2フランジ13に近い位置に配置されている。このため、第1面12a1に接するように巻き付けられた導線25が、第2面12a2に接触することを防止できる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、巻芯11は、第1面12a1と長さaにわたって接し、第2面12a2と長さaよりも短い長さbにわたって接している。これにより、巻芯11に巻き付けられた導線25を第1面12a1で支持することができる。このため、導線25と第2面12a2との接触を抑制することを抑制できる。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、第1面12a1の面積が第2面12a2の面積よりも小さく、また、第1面13a1の面積が第2面13a2の面積よりも小さいので、外装部40と第1フランジ12の内側面12a及び第2フランジ13の内側面13aとの密着性を向上させることができる。
【0069】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。例えば、第2フランジ13において、第1面13a1を省略することができる。この場合、第2フランジ13の内側面13aは、ほぼ均一な平滑さを有する平坦面となる。導線25が第1フランジ12の近傍に偏って配置され第2フランジ13に接しない場合には、第2フランジ13には第1面13a1を設ける必要がない。
【0070】
本明細書において説明した製造方法に含まれる工程の一部は、矛盾が生じない限り適宜省略可能である。本明細書において説明した製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。本明細書において説明した製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。本明細書において説明した製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0071】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0072】
本明細書では、以下の技術も開示される。
[1]
第1面及び第2面を含む内側面を有する第1フランジ、前記第1フランジの前記内側面と対向する第2フランジ、並びに軸芯方向に延びており前記第1フランジと前記第2フランジとを接続する巻芯を有し、前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有するように、絶縁材で互いに結合された複数の金属磁性粒子から構成された圧粉コアと、
前記第1面において前記内側面に接するように前記巻芯の周囲に巻かれた導線と、
を備えるコイル部品。
[2]
前記第1面は、前記軸芯方向において、前記第2面よりも前記第2フランジに近い位置に配置されている、
[1]に記載のコイル部品。
[3]
前記導線は、前記第2面に接しない、
[1]又は[2]に記載のコイル部品。
[4]
前記巻芯は、前記第1面と第1長さにわたって接し、前記第2面と前記第1長さよりも短い第2長さにわたって接している、
[1]から[3]のいずれかに記載のコイル部品。
[5]
前記第1面は、第1領域と第2領域とに区画され、前記第1領域は、前記巻芯に対して前記第2領域と反対側に配置されている、
[1]から[4]のいずれかに記載のコイル部品。
[6]
前記第1面の面積を表す第1面積は、前記第2面の面積を表す第2面積よりも小さい、
[1]から[5]のいずれかに記載のコイル部品。
[7]
前記第1フランジと前記第2フランジとの間に前記導線を覆うように設けられた樹脂を含む外装部をさらに備える、
[1]から[6]のいずれかに記載のコイル部品。
[8]
前記第1面の算術平均粗さ第1Saは、前記第2面の算術平均粗さ第2Saよりも2倍以上大きい、
[1]から[7]のいずれかに記載のコイル部品。
[9]
前記第1面の算術平均粗さ第1Saは、前記複数の金属磁性粒子の平均粒径の1/20以上である、
[1]から[8]のいずれかに記載のコイル部品。
[10]
前記第2フランジは、前記第1フランジの前記内側面と対向する第2内側面と、前記第2内側面に対向し前記第2面よりも低い平滑性を有する外側面を有し、
前記第2フランジの前記外側面に設けられ、前記導線と電気的に接続される外部電極をさらに備える、
[1]から[9]のいずれかに記載のコイル部品。
[11]
前記第1面は、前記第2面に対して傾斜している、
[1]から[10]のいずれかに記載のコイル部品。
[12]
前記第1面は、前記第2面と平行に延伸している、
[1]から[11]のいずれかに記載のコイル部品。
[13]
ダイスの内周面及び下パンチの上端面で画定される充填空間に、複数の軟磁性金属粉を樹脂と混合して得られた混合樹脂組成物を充填する工程と、
一軸方向に対して傾斜する傾斜面を有する上パンチを前記下パンチに向かって前記一軸方向に沿って移動させて前記混合樹脂組成物を圧縮することで、前記傾斜面に沿って延びる第1面及び前記一軸方向に沿って延びる第2面を有しており前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有する圧縮成型体を得る工程と、
前記圧縮成型体を加熱して圧粉コアを得る工程と、
前記圧粉コアに前記第1面に接するように導線を巻回する工程と、
を備えるコイル部品の製造方法。
[14]
ダイスの内周面及び下パンチの上端面で画定されるキャビティに、複数の軟磁性金属粉を樹脂と混合して得られた混合樹脂組成物を充填する工程と、
第1加圧面及び前記第1加圧面よりも前記下パンチの近くに配置されている第2加圧面を有する上パンチを前記下パンチに向かって一軸方向に沿って移動させて前記混合樹脂組成物を圧縮することで、前記第1加圧面により圧縮され前記一軸方向に沿って延びる第1面を有する第1領域及び前記第2加圧面により圧縮され前記一軸方向に沿って延びる第2面を有する第2領域を有しており前記第1面が前記第2面よりも低い平滑性を有する圧縮成型体を得る工程と、
前記圧縮成型体を加熱して圧粉コアを得る工程と、
前記圧粉コアに前記第1面に接するように導線を巻回する工程と、
を備えるコイル部品の製造方法。
【符号の説明】
【0073】
1、101、201 コイル部品
2a 実装基板
3a、3b ランド
10。110 コア
11 巻芯
12 第1フランジ
12a 内側面
12b 外側面
12a1 第1面
12a2 第2面
13 第2フランジ
13a 内側面
13b 外側面
13a1 第1面
13a2 第2面
25 導線
40 外装部
51、151 ダイス
52、152 上パンチ
53、153 下パンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図15