(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149697
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】吐止水装置
(51)【国際特許分類】
B05B 1/18 20060101AFI20231005BHJP
B05B 1/30 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B05B1/18
B05B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058422
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 崇明
(72)【発明者】
【氏名】砂場 孝行
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033AA09
4F033BA04
4F033DA01
4F033EA01
4F033GA02
4F033GA10
(57)【要約】
【課題】退行位置にある操作レバーに、突出側への力が作用した場合であっても、カム機構が保護される吐止水装置の提供。
【解決手段】吐止水装置2は、本体部4と、退行位置と突出位置とに切り換えられ、開閉弁を開閉する操作レバー6と、カム32と従節34との係合により操作レバー6を退行位置に保持するカム機構30と、カム32を有するカム部材8と、を備えている。カム部材8は、操作レバー6側の正規位置で保持されている。従節34は、本体部4側の正規位置で保持されている。退行位置にある操作レバー6が外力で突出側に引き出されると、従節34が破損する前に、カム部材8が操作レバー6側の正規位置から外れるか、又は、従節34が本体部4側の前記正規位置から外れる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路及び開閉弁を有する本体部と、
退行位置と突出位置とに切り換えられ、前記開閉弁を開閉する操作レバーと、
カム及び従節を有し、前記カムと前記従節との係合により前記操作レバーを前記退行位置に保持するカム機構と、
前記カムを有するカム部材と、
を備えており、
前記カム部材が、前記操作レバー側の正規位置で保持されており、
前記従節が、前記本体部側の正規位置で保持されており、
前記退行位置にある前記操作レバーが外力で突出側に引き出されると、前記従節が破損する前に、前記カム部材が前記操作レバー側の前記正規位置から外れるか、又は、前記従節が前記本体部側の前記正規位置から外れる吐止水装置。
【請求項2】
前記退行位置にある前記操作レバーが外力で突出側に引き出されると、前記従節が破損する前に前記カム部材が前記正規位置から外れる請求項1に記載の吐止水装置。
【請求項3】
前記操作レバーが回転中心線を有しており、
前記カム部材を前記正規位置から外すのに要する前記回転中心線まわりの前記外力のモーメントが、前記従節を破損させて前記従節を前記カムから離脱させるのに要する前記回転中心線まわりの前記外力のモーメントよりも小さい請求項2に記載の吐止水装置。
【請求項4】
前記カム部材が、前記正規位置に、凹凸係合で保持されている請求項2又は3に記載の吐止水装置。
【請求項5】
前記カム部材が、片持ち状態で延びる脚部と、前記脚部の自由端部に形成された係合端部とを有しており、
前記操作レバーが、前記係合端部と係合することで前記カム部材を前記正規位置に保持する係合保持部を有しており、
前記カム部材が前記正規位置にあるとき、前記係合端部と前記係合保持部とで前記凹凸係合が形成されており、
前記操作レバーに前記外力が付加されると、前記凹凸係合における凸が凹に押し付けられると共に、前記凸が前記凹を乗り越えるように前記脚部に撓み変形が生ずる請求項4に記載の吐止水装置。
【請求項6】
前記カム部材が前記正規位置から外れた状態で、前記操作レバーを押し込んで前記退行位置とすることで、前記カム部材が前記正規位置に復帰する請求項2から5のいずれか1項に記載の吐止水装置。
【請求項7】
前記本体部が、前記開閉弁を閉じる方向に付勢する付勢部材と、前記操作レバーの運動を前記開閉弁の開閉運動に変換すると共に前記操作レバーを突出側に押圧する中レバーとを備えており、
前記中レバーが、前記正規位置にある前記カム部材を突出側に押圧している請求項2から6のいずれか1項に記載の吐止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐水及び止水することができる吐止水装置として、例えば、散水ノズル、洗浄ノズルなど、様々な装置が知られている。これらの装置では、操作レバーを操作することで、吐水と止水との切替が可能とされる。
【0003】
特開2009-22848号公報は、操作部材の動作でカム沿いに従節を移動させて開閉弁を開弁状態のまま維持するようにロックする散水ノズルを開示する。この散水ノズルでは、前記カムの周回路に通じる従節の進入路とは別個に、これらから離脱した従節を前記周回路又は前記進入路へ向け導く誘導路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の吐止水装置では、操作レバーを握るたびに、操作レバーが退行位置と突出位置とに切り替わる。操作レバーが退行位置にあるとき、従節がカムに掛かっている。この状態から操作レバーを握ると、操作レバーが突出位置に切り替わる。
【0006】
しかし、摺動部のグリスが固着したり、部材間の隙間に砂等が入り込んだりした場合などでは、通常のレバー操作(レバーの押し込み)を行っても、操作レバーが突出位置に戻りにくいことがある。この場合使用者が、退行位置にある操作レバーを突出位置に向かって引っ張ることがある。また、操作レバーに何かが引っかかった場合や、操作レバーに衝撃が加わったような場合などにも、退行位置にある操作レバーに突出位置に向かう力が作用しうる。退行位置にある操作レバーに突出位置に向かう方向の力が作用すると、従節の係合部に力が掛かり、当該係合部に破損(変形、破壊等)が生じうる。この破損が生じると、カム機構が作動せず、吐水と止水との切替が不能となる。
【0007】
本開示の目的の一つは、退行位置にある操作レバーに、突出側への力が作用した場合であっても、カム機構が保護される吐止水装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様では、吐止水装置は、流路及び開閉弁を有する本体部と、退行位置と突出位置とに切り換えられ、前記開閉弁を開閉する操作レバーと、カム及び従節を有し、前記カムと前記従節との係合により前記操作レバーを前記退行位置に保持するカム機構と、前記カムを有するカム部材と、を備えている。前記カム部材が、前記操作レバー側の正規位置で保持されている。前記従節が、前記本体部側の正規位置で保持されている。前記退行位置にある前記操作レバーが外力で突出側に引き出されると、前記従節が破損する前に、前記カム部材が前記操作レバー側の前記正規位置から外れるか、又は、前記従節が前記本体部側の前記正規位置から外れる。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面では、退行位置にある操作レバーに、突出側への力が作用した場合であっても、カム機構が保護される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る吐止水装置の斜視図である。
図1では、操作レバーが突出位置にある。
【
図2】
図2(a)は
図1の吐止水装置の側面図であり、
図2(b)はその断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、
図1の吐止水装置において外カバーが除かれた状態の側面図である。
図3(a)では操作レバーが突出位置にあり、
図3(b)では操作レバーが退行位置にある。
【
図4】
図4(a)は
図3(a)から操作レバーが除かれた状態の側面図であり、
図4(b)は
図3(b)から操作レバーが除かれた状態の側面図である。
【
図5】
図5(a)は
図4(a)の斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)からカム部材及び従節が除かれた斜視図である。
【
図6】
図6(a)は従節の斜視図であり、
図6(b)は係合部が破損(変形)した従節の斜視図である。
【
図7】
図7(a)はカム部材の斜視図であり、
図7(b)はカム部材の側面図であり、
図7(c)はカム部材の底面図であり、
図7(d)はカム部材の背面図である。
図7(e)は比較例のカム部材の背面図である。
【
図8】
図8(a)は操作レバーを上側から見た斜視図であり、
図8(b)は操作レバーを下側から見た斜視図であり、
図8(c)は操作レバーの側面図であり、
図8(d)は操作レバーの底面図である。
【
図9】
図9は、
図3(b)の部分拡大側面図である。
図9では、操作レバーの内部に配置されているカム部材が破線で示されている
【
図10】
図10は、
図9の状態から操作レバーが外力で突出側に引き出された状態を示す部分拡大側面図である。
図10でも、操作レバーの内部に配置されているカム部材が破線で示されている。
【
図12】
図12は、比較例のカム部材が用いられた場合の、
図11(a)に相当する断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態の吐止水装置の部分拡大側面図である。
図13は、外カバーが除去された状態の図である。
図13では、操作レバーが退行位置にある。
図13では、操作レバーの内部に配置されているカム部材が破線で示されている。
【
図14】
図14は、
図13の状態から操作レバーが外力で突出側に引き出された状態を示す部分拡大側面図である。
図14でも、操作レバーの内部に配置されているカム部材が破線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0012】
図1は、第1実施形態の吐止水装置2の斜視図である。
図2(a)は、吐止水装置2の側面図であり、
図2(b)は、吐止水装置2の断面図である。
図1、
図2(a)及び
図2(b)は止水状態であり、操作レバー6は突出位置にある。
図3(a)及び
図3(b)は、外カバー23が除かれた吐止水装置2の側面図である。
図3(a)は止水状態であり、操作レバー6は突出位置にある。
図3(b)は吐水状態であり、操作レバー6は退行位置にある。
図4(a)及び
図4(b)は、外カバー23及び操作レバー6が除かれた吐止水装置2の側面図である。
図4(a)は止水状態であり、
図4(b)は吐水状態である。
図5(a)は
図4(a)の吐止水装置2の斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)から更にカム部材8及び従節34が除かれた斜視図である。
【0013】
吐止水装置2は、本体部4と、操作レバー6と、カム部材8とを有する。本体部4は、流路10と、開閉弁12と、付勢部材14と、中レバー16と、水形切換部18と、吐水口20と、接続部22と、外カバー23とを有する。
【0014】
操作レバー6は、退行位置と突出位置とに切り替えられる。退行位置は、本体部4に比較的近い位置である。突出位置は、本体部4に比較的遠い位置である。
図3(a)において、操作レバー6は突出位置にある。
図3(b)において、操作レバー6は退行位置にある。操作レバー6が突出位置にあるとき、吐止水装置2は止水状態である。操作レバー6が退行位置にあるとき、吐止水装置2は吐水状態である。操作レバー6を押し込む毎に、退行位置(吐水状態)と突出位置(止水状態)とが切り替わる。
【0015】
なお、この関係は逆であってもよい。すなわち、操作レバー6が突出位置にあるとき、吐止水装置2が吐水状態であってもよい。操作レバー6が退行位置にあるとき、吐止水装置2は止水状態であってもよい。
【0016】
図2(b)が示すように、開閉弁12は、スライド弁体12aと、スライド弁体12aの前端部に設けられたシール12bと、シール12bが当接する弁座12cとを有する。スライド弁体12aは、内部に流路10を形成しており、前後方向にスライド移動する。スライド弁体12aが前方に移動し、シール12bが弁座12cに当接することで、開閉弁12が閉じる。スライド弁体12aが後方に移動し、シール12bが弁座12cから離れることで、開閉弁12が開く。
【0017】
付勢部材14は、圧縮ばね(圧縮コイルばね)である。付勢部材14は、スライド弁体12aを常に前方に付勢している。中レバー16は、レバー部16aと回動支持部16bとリンク係合部16cとを有する。中レバー16は、回動支持部16bにおいて回動可能に支持されている。中レバー16は、回動軸24(
図4(a)及び
図4(b)参照)まわりに回動する。中レバー16のリンク係合部16cは、スライド弁体12aと係合している。中レバー16は、スライド弁体12aに連動して回動する。スライド弁体12aが前方に動くと、中レバー16は突出側に回動する。スライド弁体12aが後方に動くと、中レバー16は退行側に回動する。付勢部材14は、スライド弁体12aを介して、中レバー16を常に突出側に付勢している。このように、中レバー16は、操作レバー6の運動を開閉弁12の開閉運動に変換している。また、中レバー16は、操作レバー6を常に突出側に押圧している。
【0018】
中レバー16(レバー部16a)は、カム部材8(の下面)を押圧する押圧部16dを有する。カム部材8は、中レバー16(押圧部16d)が当接する被押圧部33を有する。中レバー16は、カム部材8を介して、操作レバー6を常に突出側に押圧している。
【0019】
水形切換部18は、回転操作により吐水口20から吐出される水形を切り替える。接続部22は、ホース等を介して、水栓に接続される。通常、接続部22は、ホースの端部に設けられた継手に接続される。
【0020】
吐止水装置2は、カム機構30を有する。カム機構30は、カム32と従節34とを有する。カム32は、カム部材8に設けられている。カム部材8は、操作レバー6とは別の部材である。本実施形態では、カム32はハート状カムであり、従節34はストッパーピンである。
【0021】
図6(a)は従節(ストッパーピン)34の斜視図であり、
図6(b)は係合部が変形した従節34の斜視図である。
【0022】
図6(a)が示すように、ストッパーピン34は、片持ち延在部34aと係合部34bと連結部34cとを有する。片持ち延在部34aは真っ直ぐに延びている。片持ち延在部34aは、その根元部分(下端部)が本体側に保持されている。係合部34bは、片持ち延在部34aの上端部である。係合部34bは、片持ち延在部34aの自由端側の端部である。係合部34bは、直角に曲がった先端部を構成している。ストッパーピン34は、左右対称の形状を有する。片持ち延在部34a及び係合部34bが、左右のそれぞれに形成されている。片持ち延在部34a同士が、連結部34cで繋がっている。左右の各係合部34bが、左右それぞれに配置されたカム32に係合する。連結部34cは、なくてもよい。
【0023】
図4(a)及び
図4(b)の拡大部が示すように、カム32は、第1案内面32aと、第2案内面32bと、凹面32cと、第3案内面32dとを有する。第1案内面32aは、ストッパーピン34の真上を含む位置にある。真上とは、自然状態の片持ち延在部34aが配向する方向である。第1案内面32aは、上側にいくにつれて一方側(吐止水装置2における前側)にいく斜面を構成している。凹面32cは、第1案内面32aの上端と第3案内面32dの上端との間に延びている。第2案内面32bは、凹面32cとは間隔をおいて、凹面32cの上側に位置する。第2案内面32bの下端は、ストッパーピン34の真上よりも一方側に位置する。第2案内面32bの下端は、凹面32cの最下部に接近している。凹面32cの最下部は、ストッパーピン34の真上よりも一方側に位置する。凹面32cの他方側(吐止水装置2における後側)の端は、ストッパーピン34の真上よりも一方側に位置する。第3案内面32dは、下側にいくにつれて他方側にいく斜面を構成している。
【0024】
操作レバー6が突出位置P1にあるとき、ストッパーピン34はカム32の下側に位置している。突出位置P1にある操作レバー6を押圧すると、ストッパーピン34の係合部34bが第1案内面32aに当たり、第1案内面32aに沿って動く。ストッパーピン34が一方側に倒れるように弾性変形しながら、係合部34bが第1案内面32aの上端を超える。更にストッパーピン34が真っ直ぐに戻ろうとするため、係合部34bは第2案内面32bに当たり、第2案内面32bに案内されて凹面32cの最下部に落ち込む。この状態で、操作レバー6は退行位置P2に保持される(
図4(b))。再度操作レバー6を押圧すると、ストッパーピン34が真っ直ぐに戻ろうとするため、係合部34bが凹面32cを他方側に抜け、第3案内面32dに案内されて元の位置に戻る(
図4(a))。
【0025】
カム機構30は、操作レバー6のオルタネイト動作を行うオルタネイト機構を構成している。突出位置P1にある操作レバー6が押圧されると、操作レバー6は、押し込み位置を経由して、退行位置P2に移行する。押し込み位置とは、退行位置P2よりも更に本体部4に近い位置である。操作レバー6の押圧は、例えば、吐止水装置2を片手でもちながらその手を握ることで容易に達成されうる。押圧を解除すると、退行位置P2は維持される。退行位置P2にある操作レバー6が押圧されると、操作レバー6は、押し込み位置を経由して、突出位置P1に移行する。押圧を解除すると、突出位置P1が維持される。押圧される毎に、操作レバー6は、突出位置P1と退行位置P2との相互移行を繰り返す。このように、操作レバー6の動作は、オルタネイト動作である。オルタネイト動作を行うカム機構としては、本実施形態のようなハート状カム方式であってもよいし、他の公知の機構が採用されてもよい。
【0026】
図7(a)はカム部材8の斜視図であり、
図7(b)はカム部材8の側面図であり、
図7(c)はカム部材8の底面図であり、
図7(d)はカム部材8を後方から見た背面図である。
図7(e)は比較例のカム部材8xの背面図である。このカム部材8xについては後述される。
【0027】
カム部材8は、左右対称な部材である。カム部材8は、左側壁部8aと右側壁部8bと連結部8cとを有する。
【0028】
連結部8cは、左側壁部8aの上縁と右側壁部8bの上縁とを繋いでいる。連結部8cは、前述した被押圧部33を有する。被押圧部33は、連結部8cの下面に位置する。被押圧部33は凸曲面とされており、操作レバー6及び中レバー16の回動位置に関わらず、中レバー16と安定的に当接する。
【0029】
左側壁部8a及び右側壁部8bのそれぞれが、カム32を有する。左側壁部8aは、その外面に、カム32を有する。右側壁部8bは、その外面に、カム32を有する。カム部材8は、スライド係合部36を有する。左側壁部8a及び右側壁部8bのそれぞれが、スライド係合部36を有する。各スライド係合部36は、第1面36aと第2面36bとを有する。第1面36aは、前方を向いた面である。第1面36aは、カム32の前方に設けられ上下方向に延びる延在凸部38により形成されている。第2面36bは、後方を向いた面である。第2面36bは、カム部材8の後端面である。第1面36aと第2面36bとは、互いに平行である。
【0030】
カム部材8は、脚部40と、係合端部42とを有する。左側壁部8a及び右側壁部8bのそれぞれが、脚部40及び係合端部42を有する。脚部40は、カム部材8の後端面を構成している。脚部40は、片持ち状態で延びている。脚部40の下端は自由端である。脚部40の幅は限定されない。係合端部42は、脚部40の自由端部に形成されている。係合端部42は、係合凸部42aを有する。係合凸部42aは、係合当接面42bを有する。
【0031】
図5(a)が示すように、カム部材8は、中レバー16の上側に配置されている。中レバー16は、左側壁部8aと右側壁部8bとの間に配置されている。中レバー16は、連結部8cの下面(被押圧部33)に当接している。カム部材8は、中レバー16により、常時上側に押圧されている。
【0032】
図8(a)は上側から見た操作レバー6の斜視図であり、
図8(b)は下側から見た操作レバー6の斜視図であり、
図8(c)は操作レバー6の側面図であり、
図8(d)は操作レバー6の底面図である。
【0033】
操作レバー6は、上壁部6aと、左壁部6bと、右壁部6cとを有する。上壁部6aは、左壁部6bの上縁と右壁部6cの上縁とを繋いでいる。左壁部6bと右壁部6cとの間に、下方に開放された空間が形成されている。この空間に、カム部材8及び中レバー16が配置されている(
図5(a)及び
図5(b)参照)。左壁部6bと右壁部6cとの間に、カム部材8が配置されている。
【0034】
操作レバー6は、その後方部に、軸孔6dを有する。軸孔6dには、回転軸z1が挿通されている(
図5(a)参照)。回転軸z1は、本体部4の軸支持部46(
図5(a)参照)をも貫通している。操作レバー6は、本体部4に、回動可能に支持されている。
【0035】
操作レバー6は、スライド係合部50を有する。スライド係合部50は、左壁部6b(の内面)及び右壁部6c(の内面)のそれぞれに設けられている。各スライド係合部50は、第1対向面50aと第2対向面50bとを有する。第1対向面50aは、後方を向いた面である。第1対向面50aは、左壁部6b及び右壁部6cのそれぞれに設けられた第1の延在凸部51により形成されている。第2対向面50bは、前方を向いた面である。第2対向面50bは、左壁部6b及び右壁部6cのそれぞれに設けられた第2の延在凸部53により形成されている。第2の延在凸部53は、第1の延在凸部51よりも後方に位置する。第1対向面50aと第2対向面50bとは、互いに平行である。
【0036】
操作レバー6の内側にカム部材8が配置された状態では、第1対向面50aは第1面36aに対向しており、第2対向面50bは第2面36bに対向している。このように、操作レバー6のスライド係合部50は、カム部材8のスライド係合部36と係合している。操作レバー6に対するカム部材8の移動は、所定の方向(スライド係合部36,50の延在方向)に規制されている。
【0037】
操作レバー6は、係合保持部52を有する。係合保持部52は、左壁部6b及び右壁部6cのそれぞれに設けられている。係合保持部52は貫通孔である。
【0038】
操作レバー6は、突出係止部54を有する。操作レバー6が突出位置P1にあるとき、突出係止部54が本体部4に係合する。この係合により、操作レバー6の突出方向の可動限界である突出位置P1が規定されている。
【0039】
以上に説明の通り、操作レバー6の内側にカム部材8が配置され、カム部材8の内側(下側)に中レバー16が配置されている。中レバー16は、カム部材8を介して、操作レバー6を常時上側に付勢している。カム機構30により、操作レバー6は、押圧する毎に、突出位置P1(止水)と退行位置P2(吐水)とが切り替わる。
【0040】
図9は、
図3(b)の部分拡大側面図である。
図9では、操作レバー6が退行位置にあり、吐止水装置2は吐水状態である。
図10は、
図9の状態から操作レバー6が外力Fで突出側に引き出された状態を示す部分拡大側面図である。
図9及び
図10では、操作レバー6の内部に配置されているカム部材8が破線で示されている。
図11(a)は、
図9のa-a線に沿った断面図である。
図11(b)は、
図10のb-b線に沿った断面図である。分かりやすさの観点から、
図11(a)及び
図11(b)では、操作レバー6とカム部材8のみが示されている。
【0041】
図9において、カム部材8は、操作レバー6側の正規位置で保持されている。退行位置P2にある操作レバー6に外力Fが付加され、操作レバー6が突出側に引き出される。通常の操作とは異なり、このように外力Fが付加される状況が起こりうるのは、上述の通りである。外力Fにより、ストッパーピン34の係合部34bに作用する力が増加する。この力が過大になると、係合部34bが破損する。この破損は、例えば変形(塑性変形)である。ストッパーピン34の材質が金属である場合、過大な力が作用することで係合部34bは変形する。
図6(b)は、係合部34bが変形したストッパーピン34を示している。このように変形してしまうと、ストッパーピン34はカム32と係合することができず、カム機構30の機能が失われる。
【0042】
しかし、吐止水装置2では、ストッパーピン34が破損する前に、カム部材8が操作レバー6側の正規位置から外れる。
図10は、カム部材8が正規位置から外れた状態を示している。このため、ストッパーピン34(係合部34b)の破損が防止される。
【0043】
なお、上述の通り、カム部材8は中レバー16により突出側に押されている(
図5(a)参照)。このため、カム部材8は操作レバー6から外れても、カム部材8の位置は変わらず、カム32とストッパーピン34との係合は維持される。
【0044】
図11(a)が示すように、カム部材8が操作レバー6側の正規位置にあるとき、カム部材8の係合端部42が係合保持部52に係合している。外力Fが付加されると、係合部34bが破損する前に、係合端部42が係合保持部52から外れる(
図11(b))。この結果、係合部34bが破損する前に、カム部材8が操作レバー6から外れる。
【0045】
本実施形態では、カム部材8が正規位置にあるとき、カム部材8の係合端部42と係合保持部52とで凹凸係合が形成されている。本実施形態では、係合端部42が凸で係合保持部52が凹である。操作レバー6に外力Fが付加されると、前記凹凸係合における凸(係合端部42)が凹(係合保持部52)に押し付けられる。これと共に、凸(係合端部42)が凹(係合保持部52)を乗り越えるように、脚部40に撓み変形が生ずる(
図11(b)参照)。脚部40の撓み変形量が係合かかり代K1以上となることで、凹凸係合が解除される。この構成では、凹凸係合が容易に解除される。この結果、係合部34bが破損する前にカム部材8が操作レバー6から外れる。なお、本実施形態とは逆に、係合端部42が凹で係合保持部52が凸であってもよい。ただしこの場合、係合保持部53である凸が係合解除後の脚部40に当接し、カム部材8が下方に移動するほど脚部40の撓みが大きくなる事態が生じうる。この場合、脚部40への負荷が増加すると共に、カム部材8が移動しにくくなる。この観点からは、係合端部42が凸で係合保持部52が凹であるのが好ましい。
【0046】
図11(a)の拡大部が示すように、係合当接面42bは、係合保持部52(開口のエッジ)に当接している。
図11(a)の拡大部における直線D1は、カム部材8が操作レバー6から外れるときの当該カム部材8の移動方向に対して垂直な方向である。係合当接面42bは、方向D1に対して傾斜している。方向D1に対する傾斜角度がθである。係合当接面42bは、傾斜角度θがゼロよりも大きい。係合当接面42bは、カム部材8が操作レバー6から外れる方向(下方向)に移動するにつれて係合凸部42aが係合保持部52から外れる方向(操作レバー6の内側方向)に動くように傾斜している。この係合当接面42bにより、カム部材8を正規位置から外すのに要する力が低減されている。
【0047】
図12は、カム部材8に代えて比較例のカム部材8xが用いられた場合の断面図である。
図12は、
図11(a)と同様に、カム部材8xが操作レバー6における正規位置にあるときの断面図である。
図11(a)と同様に、
図12でも、カム部材8xと操作レバー6のみが示されている。
【0048】
図7(e)は、カム部材8xを後方から見た背面図である。カム部材8xは、係合端部43を有する。係合端部43は、係合凸部43aを有する。係合凸部43aは係合当接面43bを有する。係合端部の形状が変更された他は、カム部材8xはカム部材8と同じである。係合端部42と係合端部43との相違は、係合当接面の角度である。
【0049】
図12の拡大部が示すように、係合当接面43bは、方向D1に平行である。換言すれば、係合当接面43bでは、前記傾斜角度θが0°である。係合当接面43bは、方向D1に対して傾斜していない。係合当接面43bと係合保持部52との係合は、外れにくい。このため、カム部材8を正規位置から外すのに要する力は大きい。カム部材8に代えてカム部材8xを用いた場合、係合部34bが破損する前にカム部材8xは操作レバー6から外れず、ストッパーピン34の係合部34bが変形する(
図6(b)参照)。
【0050】
図10及び
図11(b)に示されるように、カム部材8が操作レバー6から外れることで、ストッパーピン34の破損が防止される。この状態から、この操作レバー6を押し込んで退行位置P2とすると、係合端部42が再び係合保持部52に係合し、カム部材8が正規位置に復帰する。カム部材8が正規位置に復帰することで、カム機構30は正常に動作する状態に戻り、操作レバー6のオルタネイト動作による吐止水の切替が可能となる。
【0051】
図9では、カム部材8は操作レバー6側の正規位置R1にある。外力Fによりカム部材8が操作レバー6から外れると、カム部材8は、操作レバー6に対して、非正規位置N1に移動する。前述の通り、この相対移動は、停止しているカム部材8に対して、操作レバー6が動くことで達成される。また、操作レバー6を押し込むことで、カム部材8は非正規位置N1から正規位置R1に復帰する。即ち、
図10のように、操作レバー6が突出位置にありカム部材8が非正規位置N1にある状態から、操作レバー6を押し込む外力Bを加えると、カム部材8は正規位置R1に復帰する(
図9)。使用者は、吐止水装置2を片手で持ちながらその手を握るだけで、カム部材8を正規位置R1に復帰させることができる。このように、操作レバー6とカム部材8との間の相対移動により、カム部材8は正規位置R1と非正規位置N1との間を相互に移行しうる。
【0052】
操作レバー6に対するカム部材8の相対移動の経路は、一定である。操作レバー6とカム部材8との間には、正規位置R1と非正規位置N1との間の相対移動の経路を規定するスライド係合部が形成されている。本実施形態では、このスライド係合部は、前述した操作レバー6のスライド係合部50及びカム部材8のスライド係合部36である。このスライド係合部により、一旦操作レバー6から外れたカム部材8が、確実に正規位置R1に復帰する。なお、スライド係合部50とスライド係合部36との間には遊び(隙間)があり、これらの間に摩擦力は実質的に生じない。操作レバー6におけるカム部材8の保持は、実質的に、係合端部42と係合保持部52との係合のみによって達成されている。このため、この係合が解除されると、カム部材8は容易に操作レバー6から外れる。
【0053】
図13及び
図14は、第2実施形態の吐止水装置60の部分拡大側面図である。
図15は、
図13の円内の拡大図である。
図9及び
図10と同様に、
図13及び
図14は、外カバー23が除去された状態の部分拡大図である。
図13では、操作レバー6yが退行位置にあり、吐止水装置60は吐水状態である。
図14は、
図13の状態から操作レバー6yが外力Fで突出側に引き出された状態を示す。
図13及び
図14では、操作レバー6yの内部に配置されているカム部材8yが破線で示されている。
【0054】
吐止水装置60の操作レバー6yは、係合保持部55を有する。係合保持部55の形状が、第1実施形態の係合保持部52と相違する。この点を除き、操作レバー6yは、第1実施形態の操作レバー6と同じである。
【0055】
吐止水装置60のカム部材8yは、係合端部44を有する。この係合端部44は、第1実施形態の係合端部42と形状が相違する。係合端部44は、係合凸部44aを有する。係合凸部44aは、第1実施形態の係合凸部42aに比べて、幅が小さくされている。係合凸部44aは、係合当接面44bを有する。係合当接面44bは、係合当接面43b(
図12)と同じく、前記傾斜角度θが0°である。これらの点を除き、カム部材8yはカム部材8と同じである。
【0056】
操作レバー6が操作レバー6yに置換されカム部材8がカム部材8yに置換された点を除き、吐止水装置60は吐止水装置2と同じである。
【0057】
図15が示すように、係合保持部55は、L字型に曲がった孔である。係合保持部55は、係合縁55aと、係合縁55aよりも後方且つ下方に拡がる拡張孔部55bとを有する。カム部材8yが正規位置R1にあるとき、係合当接面44bが係合縁55aに係合している。外力F(
図13)が加えられると、カム部材8yは操作レバー6yに対して下方に移動しようとする。より正確には、この相対移動の方向は、円に沿った方向である。操作レバー6yは、回転中心線z2まわりに回動する(
図13参照)。このため、係合当接面44bに対する係合縁55aの移動方向は、回転中心線z2を中心とする円C1に沿った方向である。係合縁55aと係合当接面44bとの当接位置において、円C1の方向は、係合縁55aと係合当接面44bとの当接境界面に対して垂直ではない。この結果、係合当接面44bが係合縁55aに対して横に滑る方向の力が作用する(
図15の矢印参照)。この滑りの方向は、係合端部44が拡張孔部55bに向かう方向である。この滑りにより、係合当接面44bは係合縁55aから外れ、係合端部44が拡張孔部55bに誘導される。結果として、係合保持部55と係合端部44との係合が解除される。
【0058】
以上に説明された通り、第1実施形態の吐止水装置2では、退行位置P2にある操作レバー6が外力Fで突出側に引き出されると、従節34が破損する前に、カム部材8が操作レバー6側の正規位置R1から外れる。この結果、従節34の破損が防止される。カム部材8が外れる代わりに、従節34が外れてもよい。すなわち、退行位置P2にある操作レバー6が外力Fで突出側に引き出されると、従節34が破損する前に、従節34が本体部4側の正規位置から外れてもよい。この場合も、従節34の破損が防止される。なお、この「破損」とは、変形及び破壊を含む概念である。また、「変形」は、典型的には、塑性変形である。
【0059】
このように従節34の破損が保護される構成は、操作レバー6に付与される外力のモーメントで説明することができる。
図3(a)を参照して、退行位置P2にある操作レバー6において、操作レバー6上の作用点Pwに外力Fが付加される場合を考える。操作レバー6の回転中心線z2と作用点Pwとの間の距離がrである。力F1は、外力Fの垂直方向成分である。この垂直方向成分とは、回転中心線z2と作用点Pwとを結ぶ直線L1に対して垂直な方向の成分という意味である。なお、直線L1は回転中心線z2に対して垂直である。F1にrを掛けた値が、回転中心線z2まわりの外力Fのモーメントである。このモーメント(F1×r)を定義することで、カム部材8の外れ及び従節34の破損に係る外力の値を一義的に評価することができる。このモーメントの単位は、N・mとされうる。
【0060】
カム部材8を正規位置R1から外すのに要する、回転中心線z2まわりの外力FのモーメントがM1とされる。一方、従節34を破損させて従節34をカム32から離脱させるのに要する、回転中心線z2まわりの外力Fのモーメントが、M2とされる。
【0061】
モーメントM1は、モーメントM2よりも小さくされる。この結果、退行位置P2にある操作レバー6が外力Fで突出側に引き出されると、従節34が破損する前に、カム部材8が操作レバー6側の正規位置R1から外れる。なお、モーメントM2を測定するためには、従節34が破損するまでカム部材8が正規位置R1から外れないように、カム部材8を操作レバー6に強く固定する改修が必要となる。この改修の一例は、カム部材8を操作レバー6に接着剤で接着することである。しかし、モーメントM1及びM2を測定しなくても、モーメントM1がモーメントM2よりも小さいと判断することは可能である。すなわち、従節34が破損する前に、カム部材8が操作レバー6側の正規位置R1から外れた場合には、モーメントM1がモーメントM2より小さいと判断することができる。
【0062】
好ましくは、モーメントM1は、0.7(N・m)以下、更には0.5(N・m)以下、更には0.3(N・m)以下とされうる。この場合、小さな外力Fでカム部材8が操作レバー6から外れるため、従節34が破損する前にカム部材8が外れる構成が容易に達成されうる。モーメントM1が過小であると、退行位置にある操作レバー6が、自重や振動等により容易にカム部材8から外れて、突出方向に動いてしまう場合がある。この観点から、モーメントM1は、0.1(N・m)以上、更には0.15(N・m)以上、更には0.2(N・m)以上とされうる。
【0063】
比(M1/M2)が小さくされることで、従節34が破損する前にカム部材8が外れる構成が確実に達成されうる。この観点から、比(M1/M2)は、0.6以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.2以下がより好ましい。モーメントM1の好ましい下限値を考慮すると、比(M1/M2)は、0.04以上が好ましく、0.09以上がより好ましく、0.31以上がより好ましい。
【0064】
上記第1実施形態では、中レバー16が、カム部材8を介して操作レバー6を突出側に押圧している。カム部材8は中レバー16により常に突出側に押圧されている。
図9及び
図10がよく示すように、操作レバー6から外れる前と外れた後とで、カム部材8の位置は変わらない。カム部材8は中レバー16により支持されているため、カム部材8が操作レバー6から外れても、従節34とカム32とが係合した状態は維持される。このように、カム部材8は、操作レバー6による保持に依存することなく、従節34とカム32とが係合した状態を維持しうる。よって、操作レバー6によるカム部材8の保持力が限りなく小さくても、カム部材8は、退行位置P2を維持でき、また突出位置P1と退行位置P2との間の操作レバー6の動きに追従して正規位置R1を維持しうる。このため、操作レバー6によるカム部材8の保持力を小さくすることが可能である。換言すれば、モーメントM1を小さくすることが可能である。したがって、カム部材8を操作レバー6から外れやすくすることができ、従節34が破損する前にカム部材8が外れる構成が容易に達成される。
【0065】
本開示は、前述した特許文献1(特開2009-22848号公報)に記載されているような、従来型の散水ノズルにも適用されうる。このような散水ノズルでは、中レバーが操作レバーを押圧する当接位置はカム部分から離れており、カム部分を中レバーで支持させることができない。このため、カム部分を操作レバーとは別部材(カム部材)にした場合には、突出方向への付勢に抗して操作レバーを退行位置に保持するため、操作レバーとカム部材との間に高い保持力が必要となる。よって、カム部材を外すのに要する力(モーメントM1)が大きくなり、比(M1/M2)が大きくなりやすい。もちろん、例えば従節の係合部の剛性を高める等、適切な調整を行うことで、従来型の散水ノズルでも、従節が破損する前にカム部材が操作レバーから外れる構成は達成されうる。
【0066】
カム部材が操作レバーから外れやすい構成の例が、前述した第1及び第2実施形態で示されている。これらの実施形態では、カム部材が、片持ち状態で延びる脚部と、前記脚部の自由端部に形成された係合端部とを有している。また、操作レバーが、前記係合端部と係合することで前記カム部材を前記正規位置に保持する係合保持部を有している。カム部材が正規位置R1にあるとき、係合端部と係合保持部とで凹凸係合が形成されている。操作レバーに外力Fが付加されると、前記凹凸係合における凸が凹に押し付けられると共に、前記凸が凹を乗り越えるように脚部に撓み変形が生ずる。このため凹凸係合が容易に解除され、カム部材が操作レバーから外れやすい。
【0067】
第1実施形態では、傾斜角度θ(
図11(a))を調整することによっても、カム部材8の外れやすさが調整されうる。脚部の長さや剛性等によっても、カム部材8の外れやすさが調整されうる。係合かかり代K1を調整することによっても、カム部材8の外れやすさが調整されうる。
図11(a)の実施形態では、傾斜角度θが45°とされ、係合かかり代K1が0.7~0.8mmとされている。傾斜角度θは、モーメントM1が上述の好ましい範囲(例えば0.7(N・m))であるときに脚部の撓み変形量が係合かかり代K1以上となるような角度に設定されうる。
【0068】
操作レバー6がカム部材8を保持する構造は限定されない。例えば、凹凸係合による保持、静止摩擦力による保持、及び、磁力による保持が挙げられる。凹凸係合による保持の例は上述の第1及び第2実施形態であるが、凹凸係合の形態及び配置は様々に設定されうる。静止摩擦力による保持では、例えば、カム部材8と操作レバー6との寸法を調整して、正規位置R1にあるカム部材8と操作レバー6との間に静止摩擦力が生じる構成とすることができる。磁力による保持では、例えば、操作レバー6又はカム部材8の一方に磁石を配置し、他方に磁石又は磁性体を配置した構成とすることができる。いずれの構成でも、保持力を小さく調整することは容易である。
【0069】
上記実施形態では、カム部材8が直接的に操作レバー6に保持されている。カム部材8が他の部材を介して間接的に操作レバー6に保持されていてもよい。上記第1実施形態のカム部材8は、ストッパーガイドとも称されるが、カム部材の形態は限定されない。例えば、カム部材8(
図7(a)から(d))において、カム32を含む左右両側の部分(
図7(c)における2本の2点鎖線よりも外側の部分)のそれぞれがカム部材とされ、他の部分(当該2本の2点鎖線の間の中央部分)に対してスライド可能である構成が可能である。この場合、当該中央部分が操作レバー6に固定されて、操作レバー6の一部とされうる。中央部分とカム部材との間のスライド面に凹凸係合を設けておくことで、所定の力でカム部材が中央部分から外れる構成が達成されうる。
【0070】
従節(ストッパーピン等)の材質として、金属及び樹脂が挙げられる。先端部が変形することなくカム部材を操作レバーから離脱させる観点から、細くても剛性及び強度に優れるのが好ましい。金属の場合、好ましい材質の1つはステンレス鋼であり、例えばSUS304が挙げられる。従節の材質は、ばね鋼とされてもよい。ばね鋼は、ばねに用いられる鋼である。従節の材質は、ピアノ線であってもよい。上記実施形態では、SUS304が用いられた。
【0071】
カム部材(ストッパーガイド等)の材質として、樹脂が挙げられる。操作レバー側の正規位置から外れる際には、変形を伴うため、耐力に優れた材料が好ましい。この観点から、POM(ポリアセタール)及びABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂)が好ましい。操作レバー側の正規位置からの外れやすさを考慮すると、ある程度の滑り性があるのが好ましい。この観点から、POMがより好ましい。中レバーとの摺動の観点からも、適度な滑り性を有するPOMが好ましい。上記実施形態では、POMが用いられた。
【0072】
操作レバーの材質として、樹脂が挙げられる。この樹脂として、ABS、POM及びPP(ポリプロピレン)が例示される。上記実施形態のように操作レバーの係合保持部がカム部材の係合端部と係合している場合、当該係合端部によって潰されにくい材質が好ましい。この観点から、ABS及びPOMが好ましい。上記実施形態では、ABSが用いられた。
【0073】
以下の付記は、本開示で示される発明の一部である。
[付記1]
流路及び開閉弁を有する本体部と、
退行位置と突出位置とに切り換えられ、前記開閉弁を開閉する操作レバーと、
カム及び従節を有し、前記カムと前記従節との係合により前記操作レバーを前記退行位置に保持するカム機構と、
前記カムを有するカム部材と、
を備えており、
前記カム部材が、前記操作レバー側の正規位置で保持されており、
前記従節が、前記本体部側の正規位置で保持されており、
前記退行位置にある前記操作レバーが外力で突出側に引き出されると、前記従節が破損する前に、前記カム部材が前記操作レバー側の前記正規位置から外れるか、又は、前記従節が前記本体部側の前記正規位置から外れる吐止水装置。
[付記2]
前記退行位置にある前記操作レバーが外力で突出側に引き出されると、前記従節が破損する前に前記カム部材が前記正規位置から外れる付記1に記載の吐止水装置。
[付記3]
前記操作レバーが回転中心線を有しており、
前記カム部材を前記正規位置から外すのに要する前記回転中心線まわりの前記外力のモーメントが、前記従節を破損させて前記従節を前記カムから離脱させるのに要する前記回転中心線まわりの前記外力のモーメントよりも小さい付記2に記載の吐止水装置。
[付記4]
前記カム部材が、前記正規位置に、凹凸係合で保持されている付記2又は3に記載の吐止水装置。
[付記5]
前記カム部材が、片持ち状態で延びる脚部と、前記脚部の自由端部に形成された係合端部とを有しており、
前記操作レバーが、前記係合端部と係合することで前記カム部材を前記正規位置に保持する係合保持部を有しており、
前記カム部材が前記正規位置にあるとき、前記係合端部と前記係合保持部とで前記凹凸係合が形成されており、
前記操作レバーに前記外力が付加されると、前記凹凸係合における凸が凹に押し付けられると共に、前記凸が前記凹を乗り越えるように前記脚部に撓み変形が生ずる付記4に記載の吐止水装置。
[付記6]
前記カム部材が前記正規位置から外れた状態で、前記操作レバーを押し込んで前記退行位置とすることで、前記カム部材が前記正規位置に復帰する付記2から5のいずれか1項に記載の吐止水装置。
[付記7]
前記本体部が、前記開閉弁を閉じる方向に付勢する付勢部材と、前記操作レバーの運動を前記開閉弁の開閉運動に変換すると共に前記操作レバーを突出側に押圧する中レバーとを備えており、
前記中レバーが、前記正規位置にある前記カム部材を突出側に押圧している付記2から6のいずれか1項に記載の吐止水装置。
【0074】
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成等は、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0075】
前記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成を備えなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。
【符号の説明】
【0076】
2、60・・・吐止水装置
4・・・本体部
6、6y・・・操作レバー
8、8y・・・カム部材
12・・・開閉弁
14・・・付勢部材
16・・・中レバー
30・・・カム機構
32・・・カム
34・・・従節(ストッパーピン)
40・・・脚部
42、44・・・係合端部
52、55・・・係合保持部
z2・・・操作レバーの回転中心線