(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149699
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】柱梁接続構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20231005BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20231005BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B1/30 Z
E04B1/94 H
E04B1/58 508T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058425
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】山木戸 勇也
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA06
2E001GA07
2E001GA12
2E001HA01
2E001HA03
2E001HA21
2E001HA32
2E001LA04
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC15
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG23
2E125BB09
2E125BB16
2E125BB18
2E125BB29
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA78
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】仕口部材を介して鋼製梁材に接続される木製柱材の耐火性能を高めることのできる柱梁接続構造を提供する。
【解決手段】柱梁接続構造10は、木製柱材11を被覆する耐火板材41と、鋼製梁材12を被覆する耐火被覆材60と、を備える。耐火被覆材60は、耐火板材41の上レベル41aと鋼製梁材12の下レベル12bの間に充填される耐火被覆材充填部61,62を有する。木製柱材11の上レベル11aは、耐火板材41の上レベル41a以下であり、木製柱材11の上レベル11aと仕口部材13の下レベル13bとの間にセメント組成材が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製柱材と、鋼製梁材と、前記木製柱材と前記鋼製梁材とを接続する仕口部材と、を有する柱梁接続構造であって、
前記木製柱材を被覆する耐火板材と、
前記鋼製梁材を被覆する耐火被覆材と、を備え、
前記耐火被覆材は、前記耐火板材の上レベルと前記鋼製梁材の下レベルの間に充填される耐火被覆材充填部を有し、
前記木製柱材の上レベルは、前記耐火板材の上レベル以下であり、
前記木製柱材の上レベルと前記仕口部材の下レベルとの間に設けられるセメント組成材と、を有する
柱梁接続構造。
【請求項2】
木製柱材と、鋼製梁材と、前記木製柱材と前記鋼製梁材とを接続する仕口部材と、を有する柱梁接続構造であって、
前記木製柱材を被覆する耐火板材と、
前記鋼製梁材を被覆する耐火被覆材と、を備え、
前記耐火被覆材は、前記耐火板材の下レベルと前記鋼製梁材の上レベルの間に充填される耐火被覆材充填部を有し、
前記木製柱材の下レベルは、前記耐火板材の下レベル以上であり、
前記木製柱材の下レベルと前記仕口部材の上レベルとの間に設けられるセメント組成材と、を有する
柱梁接続構造。
【請求項3】
木製柱材と、鋼製梁材と、前記木製柱材と前記鋼製梁材とを接続する仕口部材と、を有する柱梁接続構造であって、
前記木製柱材を被覆する耐火板材と、
前記鋼製梁材を被覆するセメント組成床材と、を備え、
前記セメント組成床材は、前記耐火板材の下レベルと前記鋼製梁材の上レベルの間に充填されるセメント組成床材充填部を有し、
前記木製柱材の下レベルと前記仕口部材の上レベルとの間に設けられるセメント組成材と、を有する
柱梁接続構造。
【請求項4】
前記セメント組成床材の上レベルは、前記耐火板材の下レベル以上である
請求項3に記載の柱梁接続構造。
【請求項5】
前記木製柱材は、前記耐火板材及び前記セメント組成材と対面する隅角部を面取りされた面取り部を有し、前記面取り部に耐火充填材が充填されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の柱梁接続構造。
【請求項6】
前記セメント組成材は、上下荷重伝達可能である
請求項1~5のいずれか一項に記載の柱梁接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕口部材を介して柱材と梁材とを接続する柱梁接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨梁(鋼製梁材)と木製の柱部材の心部(木製柱材)とを接続する柱梁接続構造として、例えば特許文献1には、鋼製の仕口部材を介して鋼製梁材と木製柱材とを接続する柱梁接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の柱梁接続構造は、仕口部材と木製柱材とが接触するかたちで接続されている。そのため、火災によって鋼製梁材や仕口部材が熱せられると、鋼製梁材や仕口部材の熱が木製柱材の端部に伝わりやすく、木製柱材の耐火性能について改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する柱梁接続構造は、木製柱材と、鋼製梁材と、前記木製柱材と前記鋼製梁材とを接続する仕口部材と、を有する柱梁接続構造であって、前記木製柱材を被覆する耐火板材と、前記鋼製梁材を被覆する耐火被覆材と、を備え、前記耐火被覆材は、前記耐火板材の上レベルと前記鋼製梁材の下レベルの間に充填される耐火被覆材充填部を有し、前記木製柱材の上レベルは、前記耐火板材の上レベル以下であり、前記木製柱材の上レベルと前記仕口部材の下レベルとの間に設けられるセメント組成材を有する。
【0006】
上記課題を解決する柱梁接続構造は、木製柱材と、鋼製梁材と、前記木製柱材と前記鋼製梁材とを接続する仕口部材と、を有する柱梁接続構造であって、前記木製柱材を被覆する耐火板材と、前記鋼製梁材を被覆する耐火被覆材と、を備え、前記耐火被覆材は、前記耐火板材の下レベルと前記鋼製梁材の上レベルの間に充填される耐火被覆材充填部を有し、前記木製柱材の下レベルは、前記耐火板材の下レベル以上であり、前記木製柱材の下レベルと前記仕口部材の上レベルとの間に設けられるセメント組成材を有する。
【0007】
上記課題を解決する柱梁接続構造は、木製柱材と、鋼製梁材と、前記木製柱材と前記鋼製梁材とを接続する仕口部材と、を有する柱梁接続構造であって、前記木製柱材を被覆する耐火板材と、前記鋼製梁材を被覆するセメント組成床材と、を備え、前記セメント組成床材は、前記耐火板材の下レベルと前記鋼製梁材の上レベルの間に充填されるセメント組成床材充填部を有し、前記木製柱材の下レベルと前記仕口部材の上レベルとの間に設けられるセメント組成材を有する。
【0008】
これらの構成によれば、構造性能を損なうことなく、木製柱材11の耐火性能を高めることができる。
上記構成において、前記セメント組成床材の上レベルは、前記耐火板材の下レベル以上であってもよい。これにより、耐火板材の下端部がセメント組成床材に覆われることから、耐火板材の下端部が火災の直接的な影響を受けにくくなる。その結果、木製柱材の下端部についての耐火性能を高めることができる。
【0009】
上記構成において、前記木製柱材は、前記耐火板材及び前記セメント組成材と対面する隅角部を面取りされた面取り部を有し、前記面取り部に耐火充填材が充填されていてもよい。これにより、木製柱材の耐火性能をより高めることができる。
【0010】
上記構成において、前記セメント組成材は、上下荷重伝達可能に構成される。これにより、木製柱材と仕口部材との間にセメント組成材が設けられたとしても、該セメント組成材を介して木製柱材と仕口部材との間において上下荷重が伝達可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態において、柱梁接続構造の構造性能に関する基本構造の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態において、木製柱材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】第1実施形態において、仕口部材と仕口部材の下側に位置する木製柱材とを接続する過程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】第1実施形態において、仕口部材と仕口部材の上側に位置する木製柱材とを接続する過程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】第1実施形態において、柱梁接続構造の概略構成を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態において、柱梁接続構造の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1~
図5を参照して、柱梁接続構造の第1実施形態について説明する。まず、柱梁接続構造の構造性能に関する基本構造について説明する。
【0013】
図1に示すように、柱梁接続構造10は、木製柱材11、鋼製梁材12、および、これら木製柱材11と鋼製梁材12とを接続する仕口部材13を備えている。
木製柱材11は、断面が矩形状に形成されている。木製柱材11は、仕口部材13との間に位置するセメント組成材14を介して仕口部材13に接続されている。
【0014】
セメント組成材14は、木製柱材11と仕口部材13とに接触するように設けられている。セメント組成材14は、セメント組成物が硬化したものである。セメント組成物は、セメントと水とを混練したモルタルである。セメント組成物は、スリムクリート(登録商標)等の繊維を混合したもの(繊維補強コンクリート材料)であってもよい。
【0015】
セメント組成材14は、木製柱材11と仕口部材13とを所定位置に配置した状態でこれらの間にセメント組成物が打設されることにより形成されてもよいし、予め所望の形状に形成されたプレキャスト材であってもよい。
【0016】
鋼製梁材12は、離れている一対の仕口部材13に架け渡されるように配設される。鋼製梁材12は、下側フランジ21、上側フランジ22、および、下側フランジ21と上側フランジ22とを連結するウェブ23を有する断面H形の部材である。下側フランジ21の下面は、鋼製梁材12の下レベル12bである。上側フランジ22の上面は、鋼製梁材12の上レベル12aである。鋼製梁材12は、溶接などの接合法によって仕口部材13に連結される。
【0017】
仕口部材13は、各種の鋼材が溶接などの接合法によって連結された鉄骨造である。仕口部材13は、本体部30、下面フランジ部31、および、上面フランジ部32を有する。本体部30は、矩形状の断面外形形状を有する。本体部30の各側面部には、鋼製梁材12のウェブ23がT継手構造で接合される。
【0018】
下面フランジ部31は、本体部30の下端に連結された矩形状の板材である。下面フランジ部31の下面は、仕口部材13の下レベル13bである。下面フランジ部31には、鋼製梁材12の下側フランジ21が突き合わせ継手構造で接合される。下面フランジ部31と下側フランジ21は、仕口部材13の下レベル13bと鋼製梁材12の下レベル12bとが面一となるように接合される。また、下面フランジ部31の上面には、鋼製梁材12のウェブ23が角継手構造で接合される。
【0019】
上面フランジ部32は、本体部30の上端に連結された矩形状の板材である。上面フランジ部32の上面は、仕口部材13の上レベル13aである。上面フランジ部32には、鋼製梁材12の上側フランジ22が突き合わせ継手構造で接合される。上面フランジ部32と上側フランジ22は、仕口部材13の上レベル13aと鋼製梁材12の上レベル12aとが面一となるように接合される。また、上面フランジ部32の下面には、鋼製梁材12のウェブ23が角継手構造で接合される。
【0020】
こうした基本構造を有する柱梁接続構造10においては、木製柱材11同士の間の荷重伝達、および、木製柱材11と鋼製梁材12との間の荷重伝達は、仕口部材13とセメント組成材14とを通じて行われる。また、鋼製梁材12同士の間の荷重伝達は、仕口部材13を通じて行われる。
【0021】
(木製柱材)
図2に示すように、木製柱材11は、各側面が耐火板材41で被覆される。耐火板材41は、木製柱材11よりも燃えにくい部材であり、耐水性に優れた耐水強化石膏ボードのほか、ケイカル板などの不燃材で構成することができる。耐火板材41は、図示されないビスなどにより木製柱材11に取り付けられている。なお、
図2では、各側面が重畳する2枚の耐水強化石膏ボードで構成されている場合を示している。
【0022】
耐火板材41は、その上端面である上レベル41aが木製柱材11の上端面である上レベル11aと面一となるように設けられている。また、耐火板材41は、その下端面である下レベル41bが木製柱材11の下端面である下レベル11bと面一となるように設けられている。耐火板材41は、化粧木板42によって外側から覆われている。
【0023】
なお、耐火板材41の上レベル41aは、木製柱材11の上レベル11aよりも下方に位置していてもよい。耐火板材41の下レベル41bは、木製柱材11の下レベル11bよりも上方に位置していてもよい。また、化粧木板42は、施工現場において取り付けられてもよい。
【0024】
木製柱材11は、上端周縁部および下端周縁部の各々に、耐火板材41に対面する隅角部を面取りした形状を有する面取り部43が設けられている。耐火板材41と木製柱材11の面取り部43との間には、耐火充填材44が充填されている。木製柱材11の上端部において、耐火充填材44は、木製柱材11の上レベル11aと面一となるように設けられている。また、木製柱材11の下端部において、耐火充填材44は、木製柱材11の下レベル11bと面一となるように設けられている。耐火充填材は、周囲の熱を吸収することで木製柱材11への熱伝導を低減する。耐火充填材44は、例えば、乾燥硬化形の無機質系充填材である「ジプタイト(登録商標)」や「タイガートラボンド(登録商標)」(いずれも吉野石膏株式会社製)などが好適である。
【0025】
木製柱材11は、上端部に接続孔45、下端部に接続孔46を有する。接続孔45,46は、端面に開口を有して木製柱材11の延在方向に延びている。接続孔45は、木製柱材11と仕口部材13とを接続する際に利用される。接続孔45,46は、木製柱材11の中心部を取り囲むように形成されている。
【0026】
(木製柱材と仕口部材との接続方法)
木製柱材11と仕口部材13との間にセメント組成物が打設される場合を例に、木製柱材11と仕口部材13との接続方法について説明する。
【0027】
図3に示すように、仕口部材13と仕口部材13の下側に配置される木製柱材11との接続に関し、仕口部材13の下面フランジ部31には、下側接合部材35が設けられている。下側接合部材35は、仕口部材13の下レベル13bから下方に向かって延びている。下側接合部材35は、木製柱材11の上端部に形成された接続孔45に挿入される部材である。下側接合部材35は、溶接接合やねじ接合などによって下面フランジ部31に連結される。
【0028】
仕口部材13と仕口部材13の下側に配置される木製柱材11とを接続する際には、まず、木製柱材11に対する仕口部材13の位置合わせを行う。そして、木製柱材11の接続孔45に仕口部材13の下側接合部材35を差し込み、セメント組成材14の設計厚さに応じた位置まで仕口部材13を下降させる。セメント組成材14の設計厚さは、柱梁接続構造10に要求される耐火性能に応じて、より具体的には、鋼製梁材12に要求される耐火性能を満足する耐火被覆材60(
図5参照)の厚さに応じて設定される。なお、仕口部材13の下側接合部材35を差し込む際には、木製柱材11の上レベル11aと仕口部材13の下レベル13bとの間の隙間をセメント組成材14の設計厚さに保持するスペーサー48としてレベルボルトなどが設けられていることが好ましい。こうしたスペーサー48が設けられることにより、仕口部材13の位置をセメント組成材14の設計厚さに応じた位置に保持するための設備が不要となる。
【0029】
次に、接続孔45に接着剤が注入される。接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂系接着剤が好ましい。接着剤は、例えば、木製柱材11等に形成されて接続孔45の下端部に連通する注入孔を通じて接続孔45に注入される。接着剤は、接続孔45全体に拡がる。接着剤が硬化すると、接着充填材51が形成される。
【0030】
次に、仕口部材13の下レベル13bと木製柱材11の上レベル11aとの間にセメント組成物を打設する。セメント組成物の打設時、セメント組成材14の形成部分の周囲が、のちに撤去される型枠などで囲まれていてもよい。そして、セメント組成物が硬化することによりセメント組成材14が形成される。これにより、仕口部材13と仕口部材13の下側に配置される木製柱材11とが接続される。
【0031】
図4に示すように、仕口部材13と仕口部材13の上側に配置される木製柱材11との接続に関し、仕口部材13の上面フランジ部32には、上側接合部材36が設けられている。上側接合部材36は、上面フランジ部32から上方に向かって延びている。上側接合部材36は、木製柱材11の下端部に形成された接続孔46に挿入される部材である。上側接合部材36は、溶接接合やねじ接合などによって上面フランジ部32に連結される。
【0032】
仕口部材13と仕口部材13の上側に配置される木製柱材11とを接続する際には、まず、仕口部材13に対する木製柱材11の位置合わせを行う。そして、仕口部材13の上側接合部材36を木製柱材11の接続孔46に差し込んで、セメント組成材14の設計厚さに応じた位置まで木製柱材11を下降させる。
【0033】
仕口部材13の上側接合部材36を木製柱材11の接続孔46に差し込む際には、木製柱材11の下レベル11bと仕口部材13の上レベル13aとの間の隙間をセメント組成材14の設計厚さに保持するスペーサー53としてレベルボルトなどが設けられていることが好ましい。
【0034】
次に、木製柱材11の下端部に形成された接続孔46に対して接着剤が注入される。接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂系接着剤が好ましい。接続孔46への接着剤の注入に関して、木製柱材11等には、接続孔46の下端部に連通する注入孔や接続孔46の上端部に連通する排出孔などが形成されていることが好ましい。また、上側接合部材36には、接続孔46からの接着剤の漏出を抑えるスポンジリング54が配設されていることが好ましい。接着剤が硬化すると、接着充填材52が形成される。
【0035】
次に、木製柱材11の下レベル11bと仕口部材13の上レベル13aとの間にセメント組成物を打設する。そして、セメント組成物が硬化することによりセメント組成材14が形成される。これにより、仕口部材13と仕口部材13の上側に配置される木製柱材11とが接続される。
【0036】
仕口部材13に対して木製柱材11が接続されると、該仕口部材13に対して鋼製梁材12が連結される。仕口部材13に対する鋼製梁材12の連結において、鋼製梁材12の下側フランジ21は、仕口部材13の下面フランジ部31に突き合わせ継手構造にて接合される。鋼製梁材12の上側フランジ22は、仕口部材13の上面フランジ部32に突き合わせ継手構造にて接合される。鋼製梁材12のウェブ23は、鋼製梁材12の本体部30にT継手構造で接合される。なお、木製柱材11と仕口部材13との接続は、仕口部材13に対して、一部あるいは全ての鋼製梁材12が連結された状態で行われてもよい。
【0037】
(耐火被覆材)
図5に示すように、仕口部材13を介して木製柱材11および鋼製梁材12が接続されると、仕口部材13および鋼製梁材12の露出部分が所定の設計厚さの耐火被覆材60で覆われる。耐火被覆材60の一例は、粒状のロックウール繊維を主原料として硬化材としてセメントを含んだ流動体である吹付けロックウールである。上述したように、セメント組成材14の設計厚さは、木製柱材11や鋼製梁材12に要求される耐火性能に応じて設定される。なお、セメント組成材14の設計厚さは、木製柱材11や鋼製梁材12に要求される耐火性能よりも高い耐火性能に設定されてもよい。
【0038】
耐火被覆材60が形成されると、鋼製梁材12の下レベル12bと耐火板材41の上レベル41aとの間には耐火被覆材充填部61が形成され、鋼製梁材12の上レベル12aと耐火板材41の下レベル41bとの間には耐火被覆材充填部62が形成される。
【0039】
第1実施形態の作用および効果について説明する。
(1-1)柱梁接続構造10においては、火災にともなって鋼製梁材12から仕口部材13に伝わった熱は、仕口部材13の下面フランジ部31および上面フランジ部32よりも熱伝導率が低いセメント組成材14を介して木製柱材11に伝わることとなる。また、鋼製梁材12と耐火板材41との間に耐火被覆材充填部61,62が設けられているため、鋼製梁材12を伝わる熱が耐火板材41に直接伝わることがない。さらには、仕口部材13と木製柱材11とがセメント組成材14を介して接続されていることから、仕口部材13と木製柱材11との間における荷重伝達が阻害されることもない。すなわち、柱梁接続構造10によれば、構造性能を損なうことなく、木製柱材11の耐火性能を高めることができる。
【0040】
(1-2)火災にともなう熱によって、耐火板材41の上端や下端、耐火被覆材60が熱分解したとしても、木製柱材11は、耐火充填材44が熱分解によって収縮から露出することになる。すなわち、耐火充填材44が設けられることにより、木製柱材11の耐火性能、特に上端周縁部および下端周縁部の耐火性能をより高めることができる。
【0041】
(1-3)セメント組成材14の設計厚さが木製柱材11や鋼製梁材12に要求される耐火性能よりも高い耐火性能に設定されることにより、耐火被覆材充填部61,62およびセメント組成材14が厚くなる。その結果、木製柱材11に対してさらに熱が伝わりにくくなることから、木製柱材11の耐火性能をさらに高めることができる。
【0042】
(第2実施形態)
図6を参照して、柱梁接続構造の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の柱梁接続構造は、第1実施形態における柱梁接続構造と主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、柱梁接続構造70は、鋼製梁材12の上面フランジ部32がセメント組成物製のセメント組成床材71を支持している。このセメント組成床材71に用いられるセメント組成物は、例えば、セメントに骨材である砂利や砂などを混ぜたセメント混合物と水と混練したコンクリートであってもよい。また、このセメント組成床材71には、各種の鉄筋が配設されていてもよい。
【0044】
セメント組成床材71は、耐火板材41の下レベル41bよりも上方に、上面である上レベル71aを有している。セメント組成床材71は、耐火板材41の下レベル41bと鋼製梁材12の上レベル12aとの間にセメント組成床材充填部72を有する。また、木製柱材11の化粧木板42は、セメント組成床材71の上レベル71aよりも上方に、下端面である下レベル42bを有している。セメント組成床材71の上レベル71aと化粧木板42の下レベル42bとの間の隙間には、耐火シール材73が設けられている。耐火シール材73としては、耐火性能に加えて、セメント組成床材71と化粧木板42との間の層間変形に対する追従性を備えたものが好ましい。耐火シール材73は、例えば変成シリコーン系の「タイガー耐火シール」(吉野石膏株式会社製)によって形成される。
【0045】
こうした構成の柱梁接続構造70では、木製柱材11、仕口部材13、および、鋼製梁材12が接続されてからセメント組成床材71が形成される。そして、セメント組成床材71の形成後、セメント組成床材71と化粧木板42との間に耐火シール材73が設けられるとともに、仕口部材13および鋼製梁材12の露出部分が耐火被覆材60によって被覆される。
【0046】
第2実施形態によれば、上記(1-1)、(1-2)に記載した効果に準ずる効果のほか、下記の効果が得られる。
(2-1)柱梁接続構造70においては、火災にともなって鋼製梁材12を伝わる熱は、セメント組成材14を介して木製柱材11に伝わるとともに、セメント組成床材71、特にセメント組成床材充填部72を介して耐火板材41に伝わる。その結果、木製柱材11の耐火性能を高めることができる。
【0047】
(2-2)セメント組成床材71の上レベル71aが耐火板材41の下レベル41bよりも上方に位置している。これにより、耐火板材41の下端部がセメント組成床材71に覆われることから、耐火板材41の下端部が火災の直接的な影響を受けにくくなる。その結果、木製柱材11の下端部について耐火性能を高めることができる。
【0048】
(2-3)化粧木板42とセメント組成床材71との間に耐火シール材73が設けられている。これにより、セメント組成床材71から化粧木板42への熱伝導に対する化粧木板42の耐火性能を高めることができる。
【0049】
第1および第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1および第2実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・第1および第2実施形態においては、木製柱材11の上端周縁部および下端周縁部の各々に設けられた面取り部43に耐火充填材44が設けられている。これに限らず、木製柱材11には、面取り部43および耐火充填材44が設けられていなくともよい。
【0051】
・第2実施形態において、セメント組成床材71の上レベル71aは、耐火板材41の下レベル41bよりも低い位置にあってもよい。この場合、耐火板材41、化粧木板42とセメント組成床材71との間に耐火シール材が設けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
10…柱梁接続構造、11…木製柱材、11a…木製柱材の上レベル、11b…木製柱材の下レベル、12…鋼製梁材、12a…鋼製梁材の上レベル、12b…鋼製梁材の下レベル、13…仕口部材、13a…仕口部材の上レベル、13b…仕口部材の下レベル、14…セメント組成材、21…下側フランジ、22…上側フランジ、23…ウェブ、30…本体部、31…下面フランジ部、32…上面フランジ部、35…下側接合部材、36…上側接合部材、41…耐火板材、41a…耐火板材の上レベル、41b…耐火板材の下レベル、42…化粧木板、42b…化粧木板の下レベル、43…面取り部、44…耐火充填材、45,46…接続孔、48…スペーサー、51,52…接着充填材、53…スペーサー、54…スポンジリング、60…耐火被覆材、61,62…耐火被覆材充填部、70…柱梁接続構造、71…セメント組成床材、71a…セメント組成床材の上レベル、72…セメント組成床材充填部、73…耐火シール材。