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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149710
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】縫合デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058440
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉原 章仙
(72)【発明者】
【氏名】大塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】兼政 賢一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB30
(57)【要約】
【課題】縫合手技を迅速化可能な縫合デバイスを提供する。
【解決手段】縫合デバイスは、内視鏡の先端部に取り付けられるものである。縫合デバイスは、全体として円弧状に形成され、縫い糸が取り付けられる曲針と、縫合スペースSを空けて曲針を摺動可能に支持する支持本体部と、曲針を進行させる駆動部(駆動機構X)と、を備える。駆動機構Xは、支持本体部に設けられ軸周りに回転可能な回転シャフト10bと、回転シャフト10bに直接又は間接的に接続され、牽引されることによって回転シャフト10bを回転させる操作線と、を有する。回転シャフト10bは、その側周面が曲針の側部に接触した状態で回転することで曲針を進行させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部に取り付けられる縫合デバイスであって、
全体として円弧状に形成され、縫い糸が取り付けられる曲針と、
縫合スペースを空けて前記曲針を摺動可能に支持する支持本体部と、
前記曲針を進行させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記支持本体部に設けられ軸周りに回転可能な回転シャフトと、該回転シャフトに直接又は間接的に接続され、牽引されることによって前記回転シャフトを回転させる操作線と、を有し、
前記回転シャフトは、その側周面が前記曲針の側部に接触した状態で回転することで前記曲針を進行させることを特徴とする縫合デバイス。
【請求項2】
前記操作線は、1回の牽引動作で、1周回を越えて前記曲針を同方向に連続回転させる請求項1に記載の縫合デバイス。
【請求項3】
前記駆動部は、前記操作線が巻き付けられた駆動軸を備え、
前記操作線は、前記曲針が複数周回するだけの巻き付け長さで前記駆動軸に巻き付けられている請求項2に記載の縫合デバイス。
【請求項4】
前記回転シャフトは、前記支持本体部において、前記曲針の摺動領域に沿って複数配置されており、
隣接する前記回転シャフトの角度間隔は、前記縫合スペース側とは逆側にある前記支持本体部側において、前記曲針の中心角よりも小さい請求項1から3に記載の縫合デバイス。
【請求項5】
前記駆動部には、前記回転シャフトが複数設けられており、
前記駆動部は、複数の前記回転シャフトに直接的又は間接的に接続されて、それぞれの前記回転シャフトに回転動力を伝達するメインシャフトを更に備え、
前記操作線は、前記メインシャフトに直接的又は間接的に接続されて、牽引されることによって前記メインシャフトを回転させる請求項1から4のいずれか一項に記載の縫合デバイス。
【請求項6】
複数の前記回転シャフトと前記メインシャフトとのそれぞれには、ギア部が設けられており、
前記メインシャフトの前記ギア部は、複数の前記回転シャフトの前記ギア部に直接的又は間接的に噛合している請求項5に記載の縫合デバイス。
【請求項7】
前記駆動部はラチェット部を備え、
前記ラチェット部は、前記回転シャフトが前記曲針を進行させる方向に回転するように前記メインシャフトに前進回転方向の回動動力を伝達し、前記前進回転方向の逆方向には前記メインシャフトに回転動力を伝達しない請求項5又は6に記載の縫合デバイス。
【請求項8】
前記駆動部は、
前記操作線が巻き付けられた駆動軸と、
該駆動軸に固定されたテーブルと、を更に備え、
前記ラチェット部は、
前記メインシャフトに固定された盤体と、
該盤体の側壁に形成され、周回方向に複数形成された凹凸部と、
前記テーブルに揺動可能に取り付けられ、複数の前記凹凸部に対向する位置に配置され、前記凹凸部に係止可能な係止爪と、によって構成されており、
前記操作線が牽引されたときに、前記駆動軸、前記テーブル及び前記係止爪が回転し、前記係止爪が前記凹凸部に当接及び押圧することで、前記曲針を進行させる方向に前記メインシャフトを回動させる請求項7に記載の縫合デバイス。
【請求項9】
前記駆動部は、弾性部材を更に備え、
前記弾性部材は、前記操作線が牽引されたときの前記テーブルの回転方向とは逆方向に前記テーブルが回転するように付勢しており、
前記ラチェット部の前記係止爪は、前記逆方向に回転するときに、前記凹凸部に係止せずに、前記テーブルが空転して前記メインシャフトを回動させない請求項8に記載の縫合デバイス。
【請求項10】
前記弾性部材は、前記駆動軸に取り付けられたゼンマイばねである請求項9に記載の縫合デバイス。
【請求項11】
前記支持本体部は、前記曲針を摺動可能に収容する収容部を備え、
該収容部には、前記支持本体部の外部に連通して、前記曲針に取り付けられた前記縫い糸を通すスリットが設けられており、
前記スリットの開口幅は、前記曲針の線径よりも狭い請求項1から10のいずれか一項に記載の縫合デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲針を備える縫合デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡に取り付けられた縫合デバイスは、組織を縫合(閉創)することにより、病変部を切除したり、ステントを消化管に固定したりするなどの手技に用いられている。このような縫合デバイスは、組織の表層にある粘膜を手繰り寄せて閉創する医療用クリップ等と比較して、組織深くまで(例えば全層まで、少なくとも粘膜下層まで)密着させて閉創できる。このため、閉創が解除されることが極めて少なく、広範囲まで閉創しやすく、止血性が高いことが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、縫合デバイスにおいては、シャトルの爪が曲針(弓形ニードル)のノッチに係合した状態で、操作線(ケーブル)が牽引されて操作線に接続されたシャトルが往復揺動することで、曲針が進行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-526948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の縫合デバイスはシャトルが所定角度で往復揺動することで、シャトルの爪に係合する曲針(弓形ニードル)を間欠的に押し出していくため、曲針の各回の前進角度はシャトルの進行量に限定され、1周回未満であった。
【0006】
このため、何度もシャトルを往復揺動させなければならず、曲針をスムーズに動作させることはできなかった。したがって、縫合手技の迅速化に関して改善の余地があった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、縫合手技を迅速化可能な縫合デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る縫合デバイスは、内視鏡の先端部に取り付けられる縫合デバイスであって、全体として円弧状に形成され、縫い糸が取り付けられる曲針と、縫合スペースを空けて前記曲針を摺動可能に支持する支持本体部と、前記曲針を進行させる駆動部と、を備え、前記駆動部は、前記支持本体部に設けられ軸周りに回転可能な回転シャフトと、該回転シャフトに直接又は間接的に接続され、牽引されることによって前記回転シャフトを回転させる操作線と、を有し、前記回転シャフトは、その側周面が前記曲針の側部に接触した状態で回転することで前記曲針を進行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の縫合デバイスによれば、縫合手技を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】縫合デバイスを示す斜視図である。
図2】曲針及び縫い糸を示す図である。
図3】縫合デバイスの駆動機構を模式的に示す説明図である。
図4】駆動機構の駆動歯車及び従動歯車が配設された部分を平面視で示す図である。
図5】ラチェット機構を説明する図であり、図3の上方から見て盤体よりも下方を示す図である。
図6】ゼンマイばねの取付状態を示す図である。
図7】(a)は、操作線を牽引している状態を示す説明図である。(b)は、操作線の牽引を停止した状態を示す説明図である。
図8】(a)は、閉創対象である粘膜及び粘膜下層の上部に縫合デバイスを配設した状態を示す模式図である。(b)は、曲針が粘膜及び粘膜下層に刺しこまれた状態を示す模式図である。(c)は、縫い糸が粘膜及び粘膜下層を縫合する直前の状態を示す模式図である。(d)は、縫い糸が粘膜及び粘膜下層を縫合した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<概要>
はじめに、本実施形態に係る縫合デバイス1の概要を、図1から図3を主に参照して説明する。
図1は、縫合デバイス1を示す斜視図、図2は、曲針2及び縫い糸2aを示す図、図3は、縫合デバイス1の駆動機構Xを模式的に示す説明図である。
なお、図1は、曲針2が取り付けられていない状態の縫合デバイス1を示す図である。また、操作線巻回部8の中央部に操作線15が巻回されるが、図3においては、操作線15の図示を省略している。
【0013】
本実施形態に係る縫合デバイス1は、不図示の内視鏡の先端部に図1に示す取付部1aで取り付けられるものである。
縫合デバイス1は、全体として円弧状に形成され、図2に示す縫い糸2aが取り付けられる曲針2と、縫合スペースSを空けて曲針2を摺動可能に支持する支持本体部6と、曲針2を進行させる駆動部(図3に示す駆動機構X)と、を備える。駆動機構Xは、支持本体部6に設けられ軸周りに回転可能な回転シャフト10bと、回転シャフト10bに直接又は間接的に接続され、牽引されることによって回転シャフト10bを回転させる操作線15(図7参照)と、を有する。回転シャフト10bは、その側周面が曲針2の側部に接触した状態で回転することで曲針2を進行させることを特徴とする。
【0014】
具体的には、支持本体部6は、図1に示すように、スパナ状に形成された一対のアーム部6aが設けられており、一対のアーム部6aの間が開放されており、曲針2の先端が露出する縫合スペースSをこの開放部分が構成している。
「縫合スペースS」とは、曲針2が通るスペースであり、体内組織(粘膜20及び粘膜下層20a)を差し込むことが可能なスペースをいう。
「縫合スペースSを空けて曲針2を摺動可能に支持する」とは、具体的には、上記の縫合スペースS部分では曲針2を支持していないが、他の部分で曲針2を摺動可能に支持することをいう。
【0015】
「牽引されることによって回転シャフト10bを回転させる操作線15」の構成について、具体的には、本実施形態においては、操作線15は、操作線巻回部8に巻回されており、間接的に回転シャフト10bに接続されている。
具体的には、操作線15は、操作線巻回部8、第1中心軸9a、ラチェット機構Y、第2中心軸10a及びギア部10を介して回転シャフト10bに接続されている。
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、回転シャフト10bに操作線15が直接巻き付けられている構成であってもよい。
【0016】
上記構成によれば、操作線15を牽引して回転シャフト10bを回転させることで、曲針2をスムーズに進行させることができる。
つまり、回転シャフト10bが回転し続ける限り、回転シャフト10bに接触する曲針2は、一周(360度)を超えて何周回も同方向に回転することができ、曲針2に取り付けられた縫い糸2aによる縫合を連続的に行うことができる。
【0017】
次に、縫合デバイス1の各部の構成について、図1から図3に加えて、図4から図8を参照して説明する。
図4は、駆動機構Xの駆動歯車11及び従動歯車(第1従動歯車12及び第2従動歯車13)が配設された部分を平面視で示す図である。図5は、ラチェット機構Yを説明する図であり、図3の上方から見て盤体9fよりも下方を示す図である。
図6は、ゼンマイばね7の取付状態を示す図、図7(a)は、操作線15を牽引している状態を示す説明図、図7(b)は、操作線15の牽引を停止した状態を示す説明図である。
図8(a)は、閉創対象である粘膜20及び粘膜下層20aの上部に縫合デバイス1を配設した状態を示す模式図、図8(b)は、曲針2が粘膜20及び粘膜下層20aに刺しこまれた状態を示す模式図、図8(c)は、縫い糸2aが粘膜20及び粘膜下層20aを縫合する直前の状態を示す模式図、図8(d)は、縫い糸2aが粘膜20及び粘膜下層20aを縫合した状態を示す模式図である。
【0018】
縫合デバイス1は、図1に示すように、操作線15の遠位端部及びゼンマイばね7を収容する操作線等収容部3と、ラチェット機構Yを収容するラチェット収容部4と、駆動歯車11、第1従動歯車12及び第2従動歯車13を収容するギア収容部5と、曲針2を摺動可能に支持する支持本体部6と、を主に備える。
【0019】
<駆動機構>
操作線15は、1回の牽引動作で、1周回を越えて曲針2を同方向に連続回転させることが可能である。
具体的には、曲針2は、図4に示す回転する回転シャフト10bの側周面に曲針2の側部が接触することで回転する。支持本体部6における曲針2の摺動領域R中の隙間(縫合スペースSにおける一対のアーム部6a間の隙間)は、曲針2の長さより短い。
【0020】
このため、曲針2の摺動領域Rは、周回状に形成されており、かつ、縫合デバイス1において曲針2の回転を阻害するものはないため、曲針2は、1周回を越えて回転可能に構成されている。「連続回転」とは、滑らかな一続きの動作に限らず、間欠的な複数回の進行動作の繰り返しを含み、曲針2を操作線15の牽引量に応じた回転量で回転することを意味する。
【0021】
回転シャフト10bの側周面は、摩擦力の高い素材であると好ましい。例えば側周面は、シリコーンゴムがその表面を覆っているようにすると好適である。
【0022】
上記構成によれば、曲針2を連続回転させることで、縫合を連続的に行うことができ、施術速度を高めることができる。
【0023】
図4に示すように、回転シャフト10bは、支持本体部6において、曲針2の摺動領域Rに沿って複数(本実施形態においては2個)配置されている。
隣接する回転シャフト10bの角度間隔θ2は、隣接する回転シャフト10bを結ぶ境界を基準として、縫合スペースS側とは逆側にある支持本体部6側において、図2に示す曲針2の中心角θ1よりも小さい。
【0024】
「曲針2の中心角θ1」とは、具体的には、図2に示すように、曲率中心Cと、曲針2の先端及び基端それぞれと、を結ぶ線分間の曲針2側の角度をいうものとし、本実施形態に係る中心角θ1は約230度である。
「回転シャフト10bの角度間隔θ2」とは、具体的には、図4に示すように、曲針2の回転中心となる曲率中心Cと、回転シャフト10bそれぞれの中心とを結ぶ線分間の角度をいうものとし、本実施形態に係る角度間隔θ2は約200度である。
特に、角度間隔θ2は、360度からθ1を引いた角度(本実施形態においては約130度)よりも大きいと好ましい。
【0025】
なお、曲針2を回転させる回転シャフト10bの数は、1個であってもよく、例えば第2中心軸10aがその機能を有していてもよい。しかしながら、複数の回転シャフト10bが設けられていれば、支持本体部6に対して摺動する曲針2に対し、回転動力を連続的に付加することができる。
【0026】
駆動部(駆動機構X)には、図4に示して上記したように、回転シャフト10bが複数(本実施形態においては2本)設けられている。
駆動機構Xは、複数の回転シャフト10bに間接的に接続されて、それぞれの回転シャフト10bに回転動力を伝達するメインシャフト(第2中心軸10a)を更に備える。
操作線15は、後述する操作線巻回部8、第1中心軸9a及びラチェット機構Yを介して第2中心軸10aに間接的に接続されて、牽引されることによって第2中心軸10aを回転させる。
【0027】
上記構成によれば、操作線15を牽引することによって、複数の回転シャフト10bを回転させて、曲針2の進行を安定させることができる。
さらには、不図示のベルトなどによって第2中心軸10aと回転シャフト10bの一つが直接接続される構成であってもよい。
【0028】
また、例えば、ラチェット機構Yを備えない構成であれば、操作線15は、第2中心軸10aに直接巻回されていてもよい。このような構成であれば、ラチェット機構Yや操作線巻回部8を備えていない分、縫合デバイス1をコンパクトにすることができる。
【0029】
複数の回転シャフト10bとメインシャフト(第2中心軸10a)とのそれぞれには、ギア部10(第2従動歯車13、駆動歯車11)が設けられている。第2中心軸10aのギア部(駆動歯車11)は、複数の回転シャフト10bのギア部(第2従動歯車13)に間接的に噛合している。
【0030】
具体的には、本実施形態に係る第2中心軸10aは、駆動歯車11、第1従動歯車12及び第2従動歯車13を介して、回転シャフト10bに間接的に接続されている。
駆動歯車11の歯数は22個であり、第1従動歯車12及び第2従動歯車13の歯数は8個である。駆動歯車11と第1従動歯車12及び第2従動歯車13とにギア比は2.75である。
このように、第2中心軸10aと回転シャフト10bとが間接的に接続される構成であれば、これらが直接的に接続される構成と比較して、第1従動歯車12及び第2従動歯車13の個々の大きさを小さく抑えることができるため好適である。さらに、縫合スペースSの近傍に回転シャフト10bが固定された第2従動歯車13を配置することが可能となり、縫合のための荷重を曲針2に好適に付加することができる。
【0031】
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されず、駆動歯車11が第2従動歯車13に直接的に噛合する構成であってもよい。
【0032】
上記構成によれば、ギア部(第2従動歯車13、駆動歯車11)が回転シャフト10b及び第2中心軸10aのそれぞれに設けられていることで、第2中心軸10aの回転動力を回転シャフト10bに容易に伝達することができる。
【0033】
支持本体部6は、曲針2を摺動可能に収容する収容部(収容溝6b)を備える。
収容溝6bには、支持本体部6の外部に連通して、曲針2に取り付けられた縫い糸2aを通すスリット6cが設けられている。スリット6cの開口幅は、曲針2の線径よりも狭い。
収容溝6bは、具体的には、ギア収容部5と支持本体部6とに跨るように形成されており、曲針2の摺動領域Rを形成するように円弧状に形成されている。
【0034】
しかしながら、このような構成に限定されず、収容部は、支持本体部6のみに設けられていてもよい。
スリット6cは、曲針2の回動中心側に開放されており、円弧状に延在している。スリット6cの開口幅は、縫い糸2aの線径以上である。
上記構成によれば、縫い糸2aがスリット6cから外部にでることで、曲針2及び縫合デバイス1に縫い糸2aが絡みつくことを防止できる。
【0035】
<ラチェット機構>
駆動部(駆動機構X)はラチェット部(ラチェット機構Y)を備える。
ラチェット機構Yは、回転シャフト10bが曲針2を進行させる方向に回転するようにメインシャフト(第2中心軸10a)に前進回転方向の回動動力を伝達し、前進回転方向の逆方向には第2中心軸10aに回転動力を伝達しない。
【0036】
換言すると、ラチェット機構Yは、詳細については後述するが、操作線15を牽引する際には、操作線15による回転動力を第2中心軸10aに伝達し、操作線15を戻す際には、回転動力を第2中心軸10aに伝達しない。
上記構成によれば、曲針2が意図せず退行方向に移動することを防ぐことができる。
【0037】
駆動部(駆動機構X)は、操作線15が巻き付けられた駆動軸(操作線巻回部8)と、操作線巻回部8に固定されたテーブル9と、を更に備える。
ラチェット部(ラチェット機構Y)は、メインシャフト(第2中心軸10a)に固定された盤体9fと、盤体9fの側壁9cに形成され、周回方向に複数形成された図5に示す凹凸部9eと、テーブル9に揺動可能に取り付けられ、複数の凹凸部9eに対向する位置に配置され、凹凸部9eに係止可能な係止爪9dと、によって構成されている。
操作線15が牽引されたときに、駆動軸(操作線巻回部8)、テーブル9及び係止爪9dが回転し、係止爪9dが凹凸部9e(の突出部分)に当接及び押圧することで、曲針2を進行させる方向にメインシャフト(第2中心軸10a)を回動させる。
【0038】
具体的には、図5に示すように、テーブル9の上面には、上方に突出する2本の支持ピン9bが設けられており、支持ピン9bに係止爪9dが回動可能に取り付けられている。
また、凹凸部9eは、第1中心軸9aを中心とし、凹凸部9eの中心を通る仮想同心円に対して、径方向内側と径方向外側とを結ぶように斜めに形成された斜面と、径方向に延在する突出部とによって構成されている。これらの斜面と突出部は、周方向に繰り返し設けられている。
【0039】
図7(a)に示すように操作リング14により操作線15が牽引されると、図5に示す向きにおいて、テーブル9が反時計周りに回転する。テーブル9の反時計回りの回転により、係止爪9dが凹凸部9eの斜面に当接及び押圧して、係止爪9dが凹凸部9eに係止した状態(係止爪9dが支持ピン9bを中心に回動しない状態)となる。この状態で係止爪9dは側壁9cを反時計回りに回転させることとなる。
このように、係止爪9dの回動が凹凸部9eによりロックされるのは、凹凸部9eからの係止爪9dに対しての反力が、回動中心となる支持ピン9b向きの荷重成分を有しているためである。
【0040】
上記構成によれば、操作線15の牽引をメインシャフト(第2中心軸10a)の回動力に変換して、第2中心軸10aに間接的に接続される回転シャフト10bを回転させることにより、曲針2を進行させることができる。
【0041】
<ゼンマイばね>
駆動部(駆動機構X)は、弾性部材(ゼンマイばね7)を更に備える。ゼンマイばね7は、操作線15が牽引されたときのテーブル9の回転方向とは逆方向(図5に示す向きにおいて時計回り)にテーブル9が回転するように付勢している。
ラチェット部(ラチェット機構Y)の係止爪9dは、逆方向に回転するときに、凹凸部9eに係止せずに、テーブル9が空転してメインシャフト(第2中心軸10a)を回動させない。
【0042】
具体的には、操作線15が牽引された後、図7(b)に示すように、その牽引力が弱まった場合に、ゼンマイばね7の弾性復元力によって、図5に示す向きにおいて、テーブル9が時計回りに回転する。テーブル9の時計回りの回転に伴って、係止爪9dも回転し、凹凸部9eの突出部に当接する。
【0043】
このとき、係止爪9dには、支持ピン9bを中心とする回動トルクが凹凸部9eの突出部から加わることになり、支持ピン9bを中心として反時計回りに回転することになる。この状態では、係止爪9dから側壁9cに極めて弱い荷重しか加わらないために、係止爪9dは、側壁9c、盤体9fを回転させることはできず、第2中心軸10aに回転動力を伝えることはできない。つまり、ラチェット機構Yにより、曲針2は逆回転しないこととなる。
【0044】
上記構成によれば、弾性材料(ゼンマイばね7)とラチェット機構Yにより、第2中心軸10aを回転させずに、操作線15を牽引前の状態に戻すことができ、繰り返し操作線15を牽引することで、曲針2に対して進行方向の荷重を繰り返し加えることができる。このため、図8(a)から(d)に示すように、粘膜20及び粘膜下層20aに何度も繰り返して曲針2を通して縫い糸2aでこれらを縫合することができる。
【0045】
なお、上記のラチェット機構Yにおいては、ばね等を設けなくても機能するが、引張ばねを係止爪9dに取り付けるようにして、この引張ばねにより、側壁9cに当接する方向に係止爪9dを付勢させるようにしてもよい。
【0046】
上記のように、本実施形態に係る弾性部材は、駆動軸(操作線巻回部8に固定された第1中心軸9a)に取り付けられたゼンマイばね7である。
ゼンマイばね7については、図6に示すように、その内端部7aが操作線巻回部8における下方に突出するボス8aに形成された係合溝8bに係合している。そして、ゼンマイばね7のU字状の外端部7bは、図1に示す操作線等収容部3の側壁に形成されたスリット3aの縁に係合している。
なお、図1においてはゼンマイばね7の外端部7bの図示を省略している。
【0047】
このように、ゼンマイばね7においては、内端部7aが操作線巻回部8に係合し、外端部7bが操作線等収容部3(スリット3aの縁)に係合していることで、操作線巻回部8に対して弾性復元力を好適に付与することができる。
つまり、このように構成されたゼンマイばね7は、牽引された操作線15が巻き戻りするように、操作線巻回部8に弾性復元力を付与することができる。
なお、ゼンマイばね7の係合箇所は、スリット3aの縁に限定されず、操作線等収容部3に設けられた突起等であってもよく、ラチェット収容部4、ギア収容部5等に形成されている部位であってもよい。
【0048】
「弾性部材」として、ゼンマイばね7であると、第1中心軸9aを介して復元トルクをかけやすく、第1中心軸9aを操作線15の牽引前の状態に近付くように付勢することができるため好適である。
しかしながら、このような構成に限定されず、「弾性部材」は、例えば操作リング14に対して弾性復元力を付加する引張ばねや圧縮ばね等であってもよい。
【0049】
<操作線巻回部>
駆動部(駆動機構X)は、操作線15が巻き付けられた駆動軸(操作線巻回部8)を備える。操作線15は、曲針2が複数周回するだけの巻き付け長さで操作線巻回部8に巻き付けられている。
【0050】
本実施形態においては、操作線巻回部8に操作線15の遠位端部が溶着されており、操作線15は、操作線巻回部8に形成された不図示の貫通孔等を通って、近位側に引きだされて、図7に示された操作リング14に近位端部が固定されている。
【0051】
操作線巻回部8はボビン状に形成され、径方向の中心部において第1中心軸9aに嵌合している。第1中心軸9aには、一方の端部(下端部)に、後述するゼンマイばね7の中心部分が固定されており、同心上の他方の端部(上端部)にテーブル9の中心部分が固定されている。
上記構成によれば、曲針2を連続回転させたときに、駆動軸(操作線巻回部8)から操作リング14側に操作線15を安定的に供給できる。
【0052】
なお、本発明に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0053】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
内視鏡の先端部に取り付けられる縫合デバイスであって、
全体として円弧状に形成され、縫い糸が取り付けられる曲針と、
縫合スペースを空けて前記曲針を摺動可能に支持する支持本体部と、
前記曲針を進行させる駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記支持本体部に設けられ軸周りに回転可能な回転シャフトと、該回転シャフトに直接又は間接的に接続され、牽引されることによって前記回転シャフトを回転させる操作線と、を有し、
前記回転シャフトは、その側周面が前記曲針の側部に接触した状態で回転することで前記曲針を進行させることを特徴とする縫合デバイス。
(2)
前記操作線は、1回の牽引動作で、1周回を越えて前記曲針を同方向に連続回転させる(1)に記載の縫合デバイス。
(3)
前記駆動部は、前記操作線が巻き付けられた駆動軸を備え、
前記操作線は、前記曲針が複数周回するだけの巻き付け長さで前記駆動軸に巻き付けられている(2)に記載の縫合デバイス。
(4)
前記回転シャフトは、前記支持本体部において、前記曲針の摺動領域に沿って複数配置されており、
隣接する前記回転シャフトの角度間隔は、前記縫合スペース側とは逆側にある前記支持本体部側において、前記曲針の中心角よりも小さい(1)から(3)に記載の縫合デバイス。
(5)
前記駆動部には、前記回転シャフトが複数設けられており、
前記駆動部は、複数の前記回転シャフトに直接的又は間接的に接続されて、それぞれの前記回転シャフトに回転動力を伝達するメインシャフトを更に備え、
前記操作線は、前記メインシャフトに直接的又は間接的に接続されて、牽引されることによって前記メインシャフトを回転させる(1)から(4)のいずれか一項に記載の縫合デバイス。
(6)
複数の前記回転シャフトと前記メインシャフトとのそれぞれには、ギア部が設けられており、
前記メインシャフトの前記ギア部は、複数の前記回転シャフトの前記ギア部に直接的又は間接的に噛合している(5)に記載の縫合デバイス。
(7)
前記駆動部はラチェット部を備え、
前記ラチェット部は、前記回転シャフトが前記曲針を進行させる方向に回転するように前記メインシャフトに前進回転方向の回動動力を伝達し、前記前進回転方向の逆方向には前記メインシャフトに回転動力を伝達しない(5)又は(6)に記載の縫合デバイス。
(8)
前記駆動部は、
前記操作線が巻き付けられた駆動軸と、
該駆動軸に固定されたテーブルと、を更に備え、
前記ラチェット部は、
前記メインシャフトに固定された盤体と、
該盤体の側壁に形成され、周回方向に複数形成された凹凸部と、
前記テーブルに揺動可能に取り付けられ、複数の前記凹凸部に対向する位置に配置され、前記凹凸部に係止可能な係止爪と、によって構成されており、
前記操作線が牽引されたときに、前記駆動軸、前記テーブル及び前記係止爪が回転し、前記係止爪が前記凹凸部に当接及び押圧することで、前記曲針を進行させる方向に前記メインシャフトを回動させる(7)に記載の縫合デバイス。
(9)
前記駆動部は、弾性部材を更に備え、
前記弾性部材は、前記操作線が牽引されたときの前記テーブルの回転方向とは逆方向に前記テーブルが回転するように付勢しており、
前記ラチェット部の前記係止爪は、前記逆方向に回転するときに、前記凹凸部に係止せずに、前記テーブルが空転して前記メインシャフトを回動させない(8)に記載の縫合デバイス。
(10)
前記弾性部材は、前記駆動軸に取り付けられたゼンマイばねである(9)に記載の縫合デバイス。
(11)
前記支持本体部は、前記曲針を摺動可能に収容する収容部を備え、
該収容部には、前記支持本体部の外部に連通して、前記曲針に取り付けられた前記縫い糸を通すスリットが設けられており、
前記スリットの開口幅は、前記曲針の線径よりも狭い(1)から(10)のいずれか一項に記載の縫合デバイス。
【符号の説明】
【0054】
C 曲率中心
R 摺動領域
S 縫合スペース
X 駆動機構
Y ラチェット機構(ラチェット部)
1 縫合デバイス
1a 取付部
2 曲針
2a 縫い糸
3 操作線等収容部
3a スリット
4 ラチェット収容部
5 ギア収容部
6 支持本体部
6a アーム部
6b 収容溝
6c スリット
7 ゼンマイばね
7a 内端部
7b 外端部
8 操作線巻回部(駆動軸)
8a ボス
8b 係合溝
9 テーブル
9a 第1中心軸(駆動軸)
9b 支持ピン
9c 側壁
9d 係止爪
9e 凹凸部
9f 盤体
10 ギア部(駆動部)
10a 第2中心軸(メインシャフト)
10b 回転シャフト
11 駆動歯車(ギア部)
12 第1従動歯車
13 第2従動歯車(ギア部)
14 操作リング
15 操作線
20 粘膜
20a 粘膜下層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8