(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149711
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ロックボルト用アダプター
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058441
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】鵜山 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 秀文
(72)【発明者】
【氏名】犬走 望
(57)【要約】
【課題】ロックボルトの基端が外れにくいロックボルト用アダプターを提供する。
【解決手段】ガイドセルに沿って移動可能なドリフター22に着脱可能に装着されるロックボルト用アダプター35であって、ドリフター22に接続される接続部51を基端部に有し、ガイドセルの先端側からロックボルト36の基端を挿入可能な凹部61を先端部に有するアダプター本体45と、アダプター本体45における接続部51と凹部61との間に配設され、凹部61に磁界を形成可能なボルト用マグネット71と、備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドセルに沿って移動可能なドリフターに着脱可能に装着されるロックボルト用アダプターであって、
前記ドリフターに接続される接続部を基端部に有し、前記ガイドセルの先端側からロックボルトの基端を挿入可能な凹部を先端部に有するアダプター本体と、
前記アダプター本体における前記接続部と前記凹部との間に配設され、前記ロックボルトの基端が前記凹部に挿入された状態を磁力で保持するボルト用マグネットと、を備える
ロックボルト用アダプター。
【請求項2】
前記接続部と前記ボルト用マグネットとの間に配設され、前記凹部の底部に向けて前記ボルト用マグネットを付勢する付勢部材をさらに備える
請求項1に記載のロックボルト用アダプター。
【請求項3】
前記アダプター本体は、前記接続部を有するドリフター接続部材と前記凹部を有するボルト取付部材とが連結されることにより構成され、
前記ドリフター接続部材は、前記接続部から前記ボルト取付部材に向かって延びて、先端の開口が前記凹部の底部によって閉塞される筒状部を有し、
前記付勢部材および前記ボルト用マグネットは、前記筒状部の内側に配設されている
請求項2に記載のロックボルト用アダプター。
【請求項4】
前記筒状部の外周面に平行な2つの平面を有する
請求項3に記載のロックボルト用アダプター。
【請求項5】
前記ロックボルトの基端は、ナットを有し、
前記凹部は、前記ナットが嵌合する形状に形成されている
請求項1~4のいずれか一項に記載のロックボルト用アダプター。
【請求項6】
前記凹部の開口周りにフランジ部を有し、
前記フランジ部にワッシャ用マグネットが配設されている
請求項1~5のいずれか一項に記載のロックボルト用アダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリフターに対するロックボルトの取付に用いられるロックボルト用アダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの工事においては、掘削断面周辺の地山の安定を目的の1つとして、トンネルの周面にロックボルトが打設される。ロックボルトの打設は、削孔機によるロックボルト孔の削孔、ロックボルト孔へのグラウト材の充填、ロックボルト孔へのロックボルトの挿入の順に行われる。例えば特許文献1には、こうした一連の作業を行うロックボルト施工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のロックボルト施工装置においては、ドリフターとともに移動するフートパッドにロックボルトの基端を挿入させた状態でドリフターを移動させることにより、ロックボルトをロックボルト孔に挿入している。しかしながら、フートパッドにロックボルトの基端を挿入させているだけであるため、例えばロックボルトを所望位置に配置する過程においてフートパッドからロックボルトが外れてしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するロックボルト用アダプターは、ガイドセルに沿って移動可能なドリフターに着脱可能に装着されるロックボルト用アダプターであって、前記ドリフターに接続される接続部を基端部に有し、前記ガイドセルの先端側からロックボルトの基端を挿入可能な凹部を先端部に有するアダプター本体と、前記アダプター本体における前記接続部と前記凹部との間に配設され、前記ロックボルトの基端が前記凹部に挿入された状態を磁力で保持するボルト用マグネットと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、凹部からロックボルトの基端が外れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ロックボルト用アダプターの一実施形態が装着される建設機械の概略構成を示す図である。
【
図2】ユニットの概略構成を模式的に示す図である。
【
図3】ロックボルト用アダプターを介してロックボルトがドリフターに取り付けられた状態を示す図である。
【
図4】ロックボルト用アダプターを示す斜視図である。
【
図5】ロックボルトの基端とともにロックボルト用アダプターを示す図であって、回転軸線よりも上側は側面を示す図であり、回転軸線よりも下側は内部構造を示す図である。
【
図6】(a)はロックボルトを挿入する際のユニットの位置調整が完了した状態を模式的に示す図であり、(b)はロックボルトの挿入後にガイドセルの基端部側へドリフターを移動させたときの様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図6を参照して、ロックボルト用アダプターの一実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、ロックボルト用アダプターが装着可能な建設機械の一例である削孔機10について説明する。削孔機10は、地山11に形成されたトンネル12内において、トンネル12の周面12aに対して、削孔ロッド13を用いたロックボルト孔14の削孔作業のほか、ロックボルトの打設作業などを行う。このロックボルト孔14には、グラウト材が充填されたのちロックボルトが挿入される。
【0009】
削孔機10は、ユニット15を備える。ユニット15は、連結器17を介してブーム18に連結されている。ユニット15は、連結器17により、ブーム18に対する起伏動作や旋回動作・ローリング動作などの各種動作が可能に構成されている。ユニット15は、ブーム18によってトンネル12内の所望位置に配置可能に構成されている。また、削孔機10は、作業員が搭乗可能なマンゲージ19を備える。マンゲージ19は、ユニット15と同様にして、ブーム20によってトンネル12内の所望位置に配置可能に構成されている。
【0010】
図2に示すように、ユニット15は、ガイドセル21とドリフター22とを備える。ガイドセル21は、1つの方向に延びている。ガイドセル21は、その基端部側において、連結器17を介してブーム18の先端部に連結されている。ガイドセル21の先端部には、削孔ロッド13を回転可能に保持する保持機構23が設けられている。
【0011】
ドリフター22は、ガイドセル21に支持されている。ドリフター22は、ガイドセル21の延在方向に沿って移動可能に構成されている。ドリフター22は、その先端部であるねじ部がガイドセル21の延在方向に沿って延びる回転軸線24を中心として回転可能に構成されている。
【0012】
ドリフター22の先端部には、削孔用アダプター30が着脱可能に装着される。削孔用アダプター30は、削孔ロッド13をドリフター22に取り付けるときに使用される。削孔用アダプター30には、例えばねじ結合構造などによって、削孔ロッド13の基端部が着脱可能に装着される。削孔用アダプター30は、ドリフター22の先端部の回転を、回転軸線24周りの回転として削孔ロッド13に伝達可能に構成されている。削孔機10は、ドリフター22に削孔ロッド13を取り付けた状態でユニット15を所望の位置に配置し、削孔ロッド13を回転させながらドリフター22をガイドセル21の先端部へ向けて移動させることにより、ロックボルト孔14の削孔作業を行う。
【0013】
また、
図3に示すように、ドリフター22の先端部には、ロックボルト用アダプター35が着脱可能に装着される。ロックボルト用アダプター35は、ロックボルト36をドリフター22に取り付けるときに使用される。ロックボルト36は、ガイドセル21の先端部において保持機構23に保持されるように、また、その中心軸線が回転軸線24に沿って配置されるようにドリフター22に取り付けられる。
【0014】
(ロックボルト)
図5に示すように、ロックボルト36は、磁性を有する材料によって構成されている。ロックボルト36は、ロックボルト本体37を有する。ロックボルト36の基端は、ナット38とナット38から突出している突出部39とを有する。ナット38は、ロックボルト本体37に対してねじ結合構造により取り付けられる。突出部39は、ナット38から所定の長さだけ突出している。また、ロックボルト36は、トンネル12の周面12aとナット38との間に配置されるワッシャ41を有する。このワッシャ41は、ナット38と別部材であってもよいし、ナット38と一体型であってもよい。
【0015】
(ロックボルト用アダプター)
図4および
図5に示すように、ロックボルト用アダプター35(以下、単にアダプター35という。)は、アダプター本体45を有する。アダプター本体45は、ドリフター22に装着された状態において、ドリフター22の移動方向に沿うような細長い形状を有する。アダプター本体45は、ドリフター22に装着された状態において、その中心軸線がドリフター22の回転軸線24に一致するように形成されている。
【0016】
アダプター本体45は、ドリフター接続部材46とボルト取付部材47とで構成されている。ドリフター接続部材46およびボルト取付部材47は、例えば非磁性の金属材などに対して各種の機械加工を行うことにより製造される。ドリフター接続部材46とボルト取付部材47は、ねじ接続により接続される。
【0017】
ドリフター接続部材46は、接続部51と筒状部52とを有する。接続部51は、ドリフター22の先端部に接続される部分である。本実施形態では、ドリフター22の先端部が雄ねじであることを想定して、接続部51には雌ねじ部53が形成されている。
【0018】
筒状部52は、ドリフター22にアダプター35が取り付けられた状態において、ガイドセル21の先端部に向かって接続部51から延びる部分である。筒状部52の先端部は、開放されている。筒状部52の外周面には、互いに平行な2つの平面である係合面55が形成されている。係合面55は、ドリフター22に対するアダプター35の着脱作業を行う際に、レンチなどの工具が係合可能な面である。筒状部52の先端部には、ねじ結合構造によりボルト取付部材47が接続される。
【0019】
ボルト取付部材47は、ガイドセル21の先端部側に配置される端面に開口する凹部61を有する。凹部61は、ロックボルト36の基端が挿入可能な形状に形成されている。具体的には、凹部61は、ナット38と突出部39とが嵌合する形状に形成されている。
【0020】
ボルト取付部材47は、凹部61の開口周りに、回転軸線24に対する径方向に突出するフランジ部62を有している。フランジ部62は、ロックボルト36の基端部が凹部61に挿入された状態において、ロックボルト36のワッシャ41に対向配置される部位である。
【0021】
図5に示すように、フランジ部62には、その周方向において、所定の間隔でワッシャ用マグネット63が配設されている。ワッシャ用マグネット63は、永久磁石で構成される。ワッシャ用マグネット63は、フランジ部62に形成された貫通孔に配置されたのち、貫通孔の開口部が閉塞部材64で閉塞されることにより、フランジ部62に配設される。ワッシャ用マグネット63は、フランジ部62にワッシャ41が当接する状態を保持可能な磁力を有する。また、ワッシャ用マグネット63は、グラウト材が充填されたロックボルト孔14に対するロックボルト36の挿入後にドリフター22がガイドセル21の基端側へ移動することによって、ワッシャ41を切り離し可能な磁力を有する。なお、
図4は、閉塞部材64を省略してロックボルト用アダプター35を示している。
【0022】
ドリフター接続部材46とボルト取付部材47との接続作業は、ドリフター接続部材46の筒状部52の内部に付勢部材70とボルト用マグネット71とが配設された状態で行われる。付勢部材70は接続部51側に位置し、ボルト用マグネット71は筒状部52の先端部側に位置する。
【0023】
ボルト用マグネット71は、ボルト取付部材47に形成された凹部61の底部に当接された状態が付勢部材70の付勢力によって保持される。ボルト用マグネット71は、ロックボルト36の基端が凹部61に挿入された状態を保持可能な磁力を有する。また、ボルト用マグネット71は、グラウト材が充填されたロックボルト孔14に対するロックボルト36の挿入後にドリフター22がガイドセル21の基端側へ移動することによって、ロックボルト36を切り離し可能な磁力を有する。
【0024】
(作用)
グラウト材が充填されたロックボルト孔14へのロックボルト36の打設作業を行う際には、まず、ガイドセル21の基端部側にドリフター22を配置するとともにドリフター22にアダプター35を装着する。そして、ロックボルト36を保持機構23に保持させつつ、アダプター35の凹部61に対してロックボルト36の基端を挿入する。
【0025】
凹部61に挿入されたロックボルト36の基端は、ボルト用マグネット71の磁力を受けることで凹部61に挿入された状態が保持される。また、ワッシャ41は、フランジ部62に当接すると、ワッシャ用マグネット63の磁力を受けることでフランジ部62に当接した状態が保持される。
【0026】
そして、
図6(a)に示すように、グラウト材75が充填されたロックボルト孔14にロックボルト36が挿入可能となるようにユニット15の位置調整が行われたのち、ドリフター22をガイドセル21の先端部に向かって移動させる。ドリフター22は、ワッシャ41が地山11に当接するまで移動する。これにより、ロックボルト孔14にロックボルト36が挿入される。
【0027】
その後、
図6(b)に示すように、ロックボルト孔14にロックボルト36が挿入されると、ドリフター22をガイドセル21の基端部側に向かって移動させる。このとき、ロックボルト36は、各種マグネット63,71から受ける磁力よりもグラウト材75との間に生じている摩擦力が大きいため、ロックボルト孔14に挿入された状態のままアダプター35から切り離される。
【0028】
本実施形態の効果について説明する。
(1)アダプター35は、接続部51を基端部に有し、凹部61を先端部に有するアダプター本体45と、アダプター本体45に配設され、凹部61に磁界を形成可能なボルト用マグネット71と、を備える。これにより、凹部61からロックボルト36の基端が外れにくくなる。
【0029】
(2)ボルト用マグネット71は、付勢部材70によって凹部61の底部に向けて付勢されている。こうした構成によれば、アダプター35の軽量化を図りつつ、ボルト用マグネット71を凹部61の近くに配置した状態を維持することができる。
【0030】
(3)アダプター本体45は、ドリフター接続部材46とボルト取付部材47とによって構成される。ドリフター接続部材46とボルト取付部材47との連結作業は、付勢部材70およびボルト用マグネット71がドリフター接続部材46の筒状部52の内側に配設された状態で行われる。これにより、アダプター本体45の内側に付勢部材70およびボルト用マグネット71を配設することができる。
【0031】
また、付勢部材70が配設されることにより、ドリフター22の先端部に作用するボルト用マグネット71の磁力を抑えつつ、アダプター35の軽量化を図ることができる。また、筒状部52に係合面55を形成可能なスペースも確保することができる。
【0032】
(4)ドリフター接続部材46は、筒状部52の外周面に、平行な2つの面である係合面55を有する。これにより、ドリフター22に対するアダプター35の着脱作業をレンチなどの工具を使用して繰り返し行ったとしても、ドリフター接続部材46の変形を抑えることができる。
【0033】
(5)ロックボルト36の基端は、ナット38を有する。また、凹部61は、ナット38が嵌合する形状に形成されている。これにより、ロックボルト36の回転を抑えることができる。
【0034】
(6)アダプター本体45は、凹部61の開口周りにフランジ部62を有する。そのフランジ部62には、ワッシャ用マグネット63が配設されている。これにより、フランジ部62にワッシャ41が当接した状態を確実に保持することができる。
【0035】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・アダプター35は、フランジ部62にワッシャ用マグネット63が配設されていなくともよい。こうした構成であっても、ボルト用マグネット71の磁力を利用してフランジ部62にワッシャ41が保持されるようにすることも可能である。また、アダプター35は、フランジ部62を有していなくともよい。こうした構成であっても凹部61の開口付近にワッシャ41を当接させることができる。
【0036】
・凹部61は、ロックボルト36の基端が挿入可能な形状であればよい。すなわち、凹部61は、ナット38と突出部39が挿入可能な形状であればよい。
・アダプター35には、係合面55が形成されていなくともよい。こうした構成であっても、レンチなどの工具を用いた着脱作業を行うことができる。
【0037】
・アダプター本体45は、ドリフター接続部材46とボルト取付部材47とで構成される構成に限られない。例えば、アダプター本体45は、接続部51を有する部材、凹部61を有する部材、および、これらの部材を連結する連結部材を有する構成であってもよい。
【0038】
・筒状部52の内部には、ボルト用マグネット71のみが配設される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…削孔機、11…地山、12…トンネル、12a…周面、13…削孔ロッド、14…ロックボルト孔、15…ユニット、17…連結器、18…ブーム、19…マンゲージ、20…ブーム、21…ガイドセル、22…ドリフター、23…保持機構、24…回転軸線、30…削孔用アダプター、35…ロックボルト用アダプター、36…ロックボルト、37…ロックボルト本体、38…ナット、39…突出部、41…ワッシャ、45…アダプター本体、46…ドリフター接続部材、47…ボルト取付部材、51…接続部、52…筒状部、53…雌ねじ部、55…係合面、61…凹部、62…フランジ部、63…ワッシャ用マグネット、64…閉塞部材、70…付勢部材、71…ボルト用マグネット、75…グラウト材。