IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧

特開2023-149715回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法
<>
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図1
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図2
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図3
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図4
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図5
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図6
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図7
  • 特開-回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149715
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20231005BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02D5/24 103
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058447
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】丸山 栄
(72)【発明者】
【氏名】厳 明光
(72)【発明者】
【氏名】沖 恭裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌敏
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA33
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB02
2D041DB12
2D041FA14
(57)【要約】
【課題】機械式継手構造によって連結される回転鋼管杭と施工機械との間を連結する施工治具において、鋼管杭同士の間の継手構造と部品を共通化しつつ、作業性をも向上させる。
【解決手段】鋼管からなる本体部と、前記本体部の一方の端部に接合され、前記本体部の内側にあたる部分に係合孔が形成され、前記本体部の外側にあたるフランジ部分をさらに含む端板と、前記係合孔に嵌め込まれる係合部材と、前記係合部材の上面に取り付けられ、前記係合孔の周縁部で前記端板または前記本体部に係止される係止部材とを備える回転鋼管杭の施工治具が提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管からなる本体部と、
前記本体部の一方の端部に接合され、前記本体部の内側にあたる部分に係合孔が形成され、前記本体部の外側にあたるフランジ部分をさらに含む端板と、
前記係合孔に嵌め込まれる係合部材と、
前記係合部材の上面に取り付けられ、前記係合孔の周縁部で前記端板または前記本体部に係止される係止部材と
を備える回転鋼管杭の施工治具。
【請求項2】
前記係止部材は、前記係合部材の上面に取り付けられるさや管と、前記さや管に挿通され前記係合部材の側面を越えて外側まで延出する鋼棒とを含む、請求項1に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項3】
前記本体部に、前記係合孔に嵌め込まれた前記係合部材の上面に沿って前記鋼棒を差し入れることが可能な開孔が形成される、請求項2に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項4】
前記開孔の外側にナットが接合され、前記開孔に挿通されるボルトが前記ナットに螺合させられる、請求項3に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項5】
前記ボルトの先端は球面状に形成される、請求項4に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項6】
前記鋼棒の前記開孔とは反対側の先端は球面状に形成される、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項7】
前記係止部材は、前記係合部材の上面に取り付けられ、前記係合部材の側面を越えて外側まで延出する板状部材を含む、請求項1に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項8】
前記係止部材は、前記係合部材の上面から突出して外側に湾曲する鉤状部材を含む、請求項1に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項9】
前記係止部材は、前記係合部材を貫通する軸部を介して前記係合部材に取り付けられ、前記軸部の回りに回転可能である、請求項7または請求項8に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項10】
前記本体部の周方向の2か所に、前記係合孔に嵌め込まれた前記係合部材の上面に対して平行に鋼棒を差し入れることが可能な開孔が形成され、
前記係止部材は、前記係合部材の上面に取り付けられる吊りピースと、前記吊りピースおよび前記開孔に挿通される前記鋼棒とを含む、請求項1に記載の回転鋼管杭の施工治具。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の施工治具を用いた回転鋼管杭の施工方法であって、
杭本体と、
前記杭本体の一方の端部に接合され、前記杭本体の内側にあたる部分に杭側係合孔が形成され、前記杭本体の外側にあたる杭側フランジ部分をさらに含む杭側端板と
を含む回転鋼管杭を、前記杭側係合孔に前記係合部材を嵌め込み、前記杭側フランジ部分と前記フランジ部分とを重ね合わせて締結することによって前記施工治具に連結する、回転鋼管杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋼管で構成される回転杭の端部に固定された一対の端板と、それぞれの端板に設けられ回転杭の回転せん断力に抗するせん断抵抗部とを含む回転杭継手構造が記載されている。このように、回転杭の回転せん断力を主に溶接ではなく機械的な手段によって伝達する継手を、機械式継手構造ともいう。このような回転杭の機械式継手構造は、現場での溶接が不要になり、回転杭の施工工程が簡略化されるという点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/111882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような機械式継手構造において、鋼管杭同士の間の継手構造と、地上に設置される施工機械と鋼管杭との間の継手構造とを共通化できれば、部品点数の削減などの点で有利である。しかしながら、鋼管杭同士はそれぞれの鋼管杭が鉛直方向に立てられた状態で連結されるのに対し、施工機械と鋼管杭との間は打設前の鋼管杭が横置きされた状態で連結されるため、作業性を確保しつつ同じ構造で連結することは必ずしも容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、機械式継手構造によって連結される回転鋼管杭と施工機械との間を連結する施工治具において、鋼管杭同士の間の継手構造と部品を共通化しつつ、作業性をも向上させることが可能な回転鋼管杭の施工治具および回転鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]鋼管からなる本体部と、前記本体部の一方の端部に接合され、前記本体部の内側にあたる部分に係合孔が形成され、前記本体部の外側にあたるフランジ部分をさらに含む端板と、前記係合孔に嵌め込まれる係合部材と、前記係合部材の上面に取り付けられ、前記係合孔の周縁部で前記端板または前記本体部に係止される係止部材とを備える回転鋼管杭の施工治具。
[2]前記係止部材は、前記係合部材の上面に取り付けられるさや管と、前記さや管に挿通され前記係合部材の側面を越えて外側まで延出する鋼棒とを含む、[1]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[3]前記本体部に、前記係合孔に嵌め込まれた前記係合部材の上面に沿って前記鋼棒を差し入れることが可能な開孔が形成される、[2]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[4]前記開孔の外側にナットが接合され、前記開孔に挿通されるボルトが前記ナットに螺合させられる、[3]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[5]前記ボルトの先端は球面状に形成される、[4]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[6]前記鋼棒の前記開孔とは反対側の先端は球面状に形成される、[3]から[5]のいずれか1項に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[7]前記係止部材は、前記係合部材の上面に取り付けられ、前記係合部材の側面を越えて外側まで延出する板状部材を含む、[1]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[8]前記係止部材は、前記係合部材の上面から突出して外側に湾曲する鉤状部材を含む、[1]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[9]前記係止部材は、前記係合部材を貫通する軸部を介して前記係合部材に取り付けられ、前記軸部の回りに回転可能である、[7]または[8]に記載の回転鋼管杭の施工治具。
[10]前記本体部の周方向の2か所に、前記係合孔に嵌め込まれた前記係合部材の上面に対して平行に鋼棒を差し入れることが可能な開孔が形成され、記係止部材は、前記係合部材の上面に取り付けられる吊りピースと、前記吊りピースおよび前記開孔に挿通される前記鋼棒とを含む、[1]に記載の施工治具。
[11][1]から[10]のいずれか1項に記載の施工治具を用いた回転鋼管杭の施工方法であって、杭本体と、前記杭本体の一方の端部に接合され、前記杭本体の内側にあたる部分に杭側係合孔が形成され、前記杭本体の外側にあたる杭側フランジ部分をさらに含む杭側端板とを含む回転鋼管杭を、前記杭側係合孔に前記係合部材を嵌め込み、前記杭側フランジ部分と前記フランジ部分とを重ね合わせて締結することによって前記施工治具に連結する、回転鋼管杭の施工方法。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、打設前の鋼管杭が横置きされている状態であっても、施工治具の端板に係止された係合部材が係合孔から脱落することを防止しながら施工治具を鋼管杭に連結することができる。従って、鋼管杭同士の間の継手構造と部品を共通化しつつ、作業性をも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】回転鋼管杭の機械式継手構造の例を示す図である。
図2図1に示した機械式継手構造と同じ構造で施工治具と鋼管杭との間を連結する場合の例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す斜視図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3の例における係合部材を取り出して示す斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
図1は、回転鋼管杭の機械式継手構造の例を示す図である。図示された例では、鋼管杭1Aと鋼管杭1Bとが、それぞれの杭本体の端部に接合される端板2A,2Bの杭本体の内側にあたる部分に形成された係合孔21A(端板2B側の係合孔は見えていない)に共通の係合部材3を嵌め込み、端板2A,2Bの杭本体の外側にあたるフランジ部分を重ね合わせて、ボルト孔22A,22Bに挿通されるボルト41およびナット42を用いて締結する。係合孔21A、端板2B側の係合孔と、係合部材3とは、対応する多角形(図示された例では六角形)の断面を有する。これによって、係合孔と係合部材3とが多角形断面の角部で噛み合い、鋼管杭1A,1Bの間で面同士の間の支圧力によってトルクを伝達することができる。なお、上記のような噛み合いを可能にするために、ボルト41およびナット42を用いた端板2A,2Bのフランジ部分の締結は、端板2A,2Bの間のすべりを許容する程度の緩やかな締結である。
【0011】
具体的な連結工程としては、図1(a)に示されるように、既に地中に打設されている鋼管杭1Aの上端で係合孔21Aに係合部材3を嵌め込み、鋼管杭1Aの内側に設けられたストッパー23Aに係合部材3を載せて安定させる。この状態で、図1(b)に示されるように上方から鋼管杭1Bの下端を降ろして端板2B側の係合孔にも係合部材3を嵌め込み、さらに図1(c)に示すように端板2A,2Bのフランジ部を重ね合わせてボルト41およびナット42を用いて締結する。
【0012】
図2は、図1に示した機械式継手構造と同じ構造で施工治具と鋼管杭との間を連結する場合の例を示す図である。地中に打設される前の鋼管杭1は、地上に置台5などを介して横置きされている。この状態で、施工機械に連結するための突起11が形成され、端部に端板12が接合された施工治具10を、係合部材3を介して鋼管杭1に連結する。ところが、鋼管杭1の端部に接合された端板2と施工治具10の端板12とにそれぞれ形成された係合孔(図示せず)に係合部材3を係合させようとしても、鋼管杭1が横置きされているために、図1に示した鋼管杭同士の継手構造のように係合孔に嵌め込まれた係合部材3を鋼管杭1の内側に設けられたストッパーに載せて安定させることができない。それゆえ、端板2,12のフランジ部を重ね合わせる直前まで係合部材3を人手や別の治具を使って支えていなければならず、作業時間が長くなるのに加えて、鋼管杭の径が大きくなって係合部材3が大型化したような場合には安全性の点でも問題があった。
【0013】
なお、係合部材3は上記のように端板に形成された係合孔と噛み合い、面同士の間の支圧力によってトルクを伝達するものであるため、例えば係合部材3を施工治具10の端板12に溶接すると、伝達されるトルクに対して溶接部耐力が不足する。従って、係合部材3を施工治具10の端板12に予め溶接することで上記の問題の解決を図ることは適切ではない。
【0014】
図3は本発明の第1の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す斜視図であり、図4図3のIV-IV線断面図である。また、図5図3の例における係合部材を取り出して示す斜視図である。図3に示されるように、本実施形態に係る施工治具10は、鋼管からなる本体部を有し、本体部から突出する施工機械に連結するための突起11と、本体部の一方の端部に接合された端板12と、端板12に形成された係合孔121に嵌め込まれる係合部材3と、後述する係止部材とを含む。端板12には、ボルト孔122も形成される。図1に示した鋼管杭同士の継手構造と同様に、係合孔121は端板12の本体部の内側にあたる部分に形成され、ボルト孔122は端板12の本体の外側にあたるフランジ部分に形成される。図示されているように、施工治具10は、鋼管杭1の端板2に形成された係合孔(図3では見えていない。図1参照)に係合部材3を嵌め込み、さらに端板12のフランジ部分と鋼管杭1の端板2のフランジ部分とを重ね合わせてボルト孔122およびボルト孔22に挿通されるボルト41およびナット(図示せず)で締結することによって鋼管杭1に連結される。
【0015】
図4の断面図、および図5の係合部材の斜視図に示されるように、本実施形態では、係合部材3の上面3Aにさや管31が接合される。なお、上面3Aは、係合部材3の側面(多角形断面の各辺を構成して係合孔と接触する面)以外の面のうちの一方を意味し、必ずしも面が常に上向きであることを意味しない。上面3Aは、係合部材3が係合孔121に嵌め込まれたときには施工治具10の本体部側に向けられる。図4に示されるように、係合部材3が係合孔121に嵌め込まれた状態で、上面3Aに沿ってさや管31に丸鋼棒32を挿入する。丸鋼棒32の長さは係合部材3および係合孔121の外径よりも長いため、丸鋼棒32は係合部材3の側面を越えて外側まで延出し、両端が係合孔121の周縁部で端板12に係止される。これによって、例えば図2に示されたように鋼管杭1および施工治具10が横置きされている場合であっても、係合部材3が端板12の係合孔121から脱落することを防止できる。
【0016】
本実施形態では、さや管31および丸鋼棒32が、係合部材3の上面3Aに取り付けられて係合孔121の周縁部で端板12に係止される係止部材を構成する。なお、さや管31の断面は円形には限られず、三角形、矩形、およびその他の多角形であってもよい。さや管31の断面が円形ではない場合、挿入される鋼棒は丸鋼棒ではなく、例えばさや管31の断面に合わせた三角形、矩形、およびその他の多角形の断面の鋼棒が用いられてもよい。
【0017】
図4の断面図に示されるように、施工治具10の鋼管からなる本体部には、係合孔121に嵌め込まれた係合部材3の上面3Aに沿って丸鋼棒32を差し入れることが可能な開孔13が形成される。開孔13から丸鋼棒32を差し入れた後、開孔13の外側で本体部に接合されたナット14にボルト15が螺合させられる。ボルト15は、ナット14を貫通して開孔13に挿通され、丸鋼棒32に接触させられた後、所定のクリアランスの分(例えば3mm)だけ戻される。これによって、丸鋼棒32の脱落を防止して係合部材3が端板12に係止された状態を維持するとともに、所定のクリアランスを確保して係合部材3と係合孔121との間で面同士の間の支圧力によってトルクが伝達される状態を維持する。これによって、丸鋼棒32やボルト15に過大な応力が作用することを防止できる。
【0018】
なお、図示された例において、丸鋼棒32と施工治具10の鋼管からなる本体部の内周面との確実な接触、ならびにボルト15の先端と丸鋼棒32の端面との確実な接触および正確なクリアランスの確保のために、丸鋼棒32の先端(ボルト15とは反対側の端部)およびボルト15の先端は、球面状に形成されている。
【0019】
上記の例では、さや管31が係合部材3の側面よりも外側には張り出しておらず、係合孔121とは干渉しないため、取り付け時には係合部材3を端板12の外側から係合孔121に嵌め込み、その後に開孔13を通してさや管31に丸鋼棒32を挿入して係合部材3が端板12に係止することができる。他の例では、例えば丸鋼棒32が最初からさや管31に挿入されていてもよく、またさや管31の代わりに係合部材3の側面よりも外側まで張り出す鋼棒が係合部材3の上面3Aに取り付けられていてもよい。これらの場合、係合部材3は施工治具10の端板12とは反対側の端部から挿入されて係合孔121に嵌め込まれる。
【0020】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す図である。図示された例では、係合部材3の上面3Aに取り付けられ、係合部材3の側面を越えて外側まで延出する板状部材33が、係合孔121の周縁部で端板12に係止される係止部材を構成する。
【0021】
図示された例において、板状部材33は、係合部材3を貫通する軸部34を介して係合部材3に取り付けられており、軸部34の回りに回転可能である。上面3Aとは反対側の面で軸部34に螺合するナット35を締め付けることによって、板状部材33の回転方向の位置が固定される。この場合、板状部材33が係合孔121に干渉しないように係合部材3の側面よりも内側に回転させた状態で係合部材3を端板12の外側から係合孔121に嵌め込み、その後に板状部材33を軸部34の回りに回転させて端板12に係止させることができる。
【0022】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す図である。図示された例では、係合部材3の上面3Aから突出して外側に湾曲する鉤状部材36が、係合孔121の周縁部で端板12に係止される係止部材を構成する。鉤状部材36は上面3Aから突出して外側に約180°湾曲し、先端が端板12に接触する。
【0023】
図示された例において、鉤状部材36は、係合部材3を貫通して上面3Aとは反対側の面まで延びる軸部を含み、軸部の回りに回転可能である。軸部に螺合するナット37を締め付けることによって、鉤状部材36の回転方向の位置が固定される。この場合、鉤状部材36が係合孔121に干渉しないように係合部材3の側面よりも内側に回転させた状態で係合部材3を端板12の外側から係合孔121に嵌め込み、その後に鉤状部材36を軸部の回りに回転させて端板12に係止させることができる。
【0024】
なお、上述された例において板状部材33や鉤状部材36は軸部の回りに回転可能ではなく、係合部材3に固定されていてもよい。この場合、係合部材3は施工治具10の端板12とは反対側の端部から挿入されて係合孔121に嵌め込まれる。板状部材33や鉤状部材36は必ずしも係合部材3を貫通する軸部を介して取り付けられなくてもよく、例えば係合部材3の上面3Aに溶接されていてもよい。
【0025】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る鋼管回転杭の施工治具と鋼管杭との間の連結構造を示す図である。上述した第1から第3の実施形態では係合部材3の上面に取り付けられる係止部材が係合孔121の周縁部で端板12に係止されたのに対して、第4の実施形態では係止部材が施工治具10の本体部に係止される。具体的には、施工治具10の鋼管からなる本体部の周方向の2か所には開孔16A,16Bが形成される。より具体的には、開孔16A,16Bは、本体部の鋼管の断面円周の直径上の2か所に形成される。
【0026】
一方、係合部材3の上面3Aには吊りピース38が接合される。吊りピース38は、例えば図示されているような枠型の部材であるが、この例には限定されない。また、図示された例では係合部材3の上面3Aの2か所に吊りピース38が接合されているが、1か所または3か所以上であってもよい。吊りピース38および開孔16A,16Bに丸鋼棒39を挿通することによって、係合部材3が施工治具10の本体部に係止される。例えば、丸鋼棒39の一方の端部に端板39Aを予め接合しておき、他方の端部にはナット39Bを螺合させることによって、丸鋼棒39が吊りピース38および開孔16A,16Bに挿通されて係合部材3が係止された状態を維持することができる。
【0027】
なお、挿通される部材は丸鋼棒39には限定されず、例えば三角形、矩形、およびその他の多角形の断面の鋼棒が用いられてもよい。丸鋼棒39が吊りピース38に、少なくとも水平方向について隙間をもって挿通されることによって、係合部材3の水平方向の動きを阻害せず、係合部材3が端板12の係合孔121と噛み合って面同士の間の支圧力によってトルクが伝達される状態を維持することができる。従って、吊りピース38の内側の形状は挿通される部材の形状に必ずしも対応していなくてもよく、例えば図示された例のように矩形の吊りピース38に丸鋼棒39が挿通されてもよい。あるいは、吊りピース38と丸鋼棒39との間に隙間がない場合でも、本体部の開孔16A,16Bに丸鋼棒39が隙間をもって挿通されていれば上記と同様に支圧力によってトルクが伝達される状態を維持することができる。
【0028】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0029】
1,1A,1B…鋼管杭、2,2A,2B…端板、21A…係合孔、22,22A,22B…ボルト孔、23A…ストッパー、3…係合部材、3A…上面、5…置台、10…施工治具、11…突起、12…端板、121…係合孔、122…ボルト孔、13…開孔、14…ナット、15…ボルト、16A,16B…開孔、31…さや管、32…丸鋼棒、33…板状部材、34…軸部、35,37…ナット、36…鉤状部材、38…吊りピース、39…丸鋼棒、39A…端板、39B…ナット、41…ボルト、42…ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8