(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149719
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231005BHJP
C04B 37/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C04B37/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058452
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】室川 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】牧野 礼佳
【テーマコード(参考)】
4G026
5F131
【Fターム(参考)】
4G026BA03
4G026BA16
4G026BB27
4G026BF09
4G026BH13
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA68
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静電チャック表面に形成されるセラミックス等を材料とする溶射層内部の微細孔及び貫通孔を介して、貫通孔内を流れるガスや大気等が流通することに起因する不都合を防止する保持装置を提供する。
【解決手段】対象物を保持する保持装置である静電チャック10は、板状に形成される板状部であるセラミック部20と、金属を含み、一対の主面を備える板状であり、一対の主面のそれぞれに開口を形成する貫通孔を有し、一対の主面のうちの一方の主面の一部に溶射層35が形成されるベース部30と、接着剤を含み、板状部とベース部の一方の主面との間に配置されて板状部とベース部とを接着する接着層40と、ベース部の一方の主面のうち、溶射層が形成された領域よりも開口側の領域において、開口を囲むように設けられ、一方の主面から接着層に向かって突出し、自身の頭頂部が接着層に接する封止凸部60と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する保持装置であって、
板状に形成される板状部と、
金属を含み、一対の主面を備える板状のベース部であって、前記一対の主面のそれぞれに開口を形成する貫通孔を有し、前記一対の主面のうちの一方の主面の一部に溶射層が形成されるベース部と、
接着剤を含み、前記板状部と前記ベース部の前記一方の主面との間に配置されて前記板状部と前記ベース部とを接着する接着層と、
前記ベース部の前記一方の主面のうち、前記溶射層が形成された領域よりも開口側の領域において、前記開口を囲むように設けられ、前記一方の主面から前記接着層に向かって突出し、自身の頭頂部が前記接着層に接する封止凸部と、
を備えることを特徴とする
保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記封止凸部に囲まれる前記領域に存在する前記貫通孔は、前記保持装置の使用時に大気開放される貫通孔であることを特徴とする
保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記封止凸部に囲まれる前記領域に存在する前記貫通孔は、前記保持装置の使用時に大気と非連通状態となる貫通孔であることを特徴とする
保持装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記ベース部の前記一方の主面は、複数の前記開口を有し、
前記封止凸部は、前記複数の開口の各々を囲むように形成されていることを特徴とする
保持装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記封止凸部は、前記ベース部上に接着された樹脂製の凸状構造であることを特徴とする
保持装置。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記封止凸部は、前記ベース部の表面構造として前記ベース部の前記一方の主面に形成された凸状構造であることを特徴とする
保持装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の保持装置であって、
前記封止凸部の頭頂部の幅は、1mm以上であることを特徴とする
保持装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の保持装置であって、
静電吸着用電極を備える静電チャックであることを特徴とする
保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を保持する保持装置として、例えば、半導体を製造する際にウェハ等の対象物を保持する静電チャックが知られている。静電チャックは、一般に、対象物が載置されるセラミック部と、冷媒流路等の流路が形成されるベース部と、セラミック部とベース部とを接合する接着層と、を備える。このような静電チャックにおいては、例えばプラズマ環境下における耐プラズマ性や耐久性や耐電圧性を高めるために、ベース部等の構成部材の表面に、セラミックス等を材料とする溶射層を設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶射層は一般に、溶射層内部において3次元的に広がる微細孔が形成されており、このような微細孔を完全に塞ぐことは極めて困難であるという問題があった。ここで、静電チャックのベース部には、一般に、ベース部を厚み方向に貫通する貫通孔として、種々の貫通孔が設けられている。このような貫通孔には、例えば、静電チャックの使用時に大気開放される貫通孔や、静電チャックの使用時に大気と非連通状態になり、例えばガスの流路となる貫通孔が含まれ得る。そのため、静電チャックの使用時には、溶射層内部の微細孔および貫通孔を介して、貫通孔内を流れるガスや大気等が流通することに起因する不都合が生じる可能性があった。このような課題は、静電チャックに限らず、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、表面に溶射層が形成される部材を備える保持装置に共通する課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、対象物を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、板状に形成される板状部と、金属を含み、一対の主面を備える板状のベース部であって、前記一対の主面のそれぞれに開口を形成する貫通孔を有し、前記一対の主面のうちの一方の主面の一部に溶射層が形成されるベース部と、接着剤を含み、前記板状部と前記ベース部の前記一方の主面との間に配置されて前記板状部と前記ベース部とを接着する接着層と、前記ベース部の前記一方の主面のうち、前記溶射層が形成された領域よりも開口側の領域において、前記開口を囲むように設けられ、前記一方の主面から前記接着層に向かって突出し、自身の頭頂部が前記接着層に接する封止凸部と、を備える。
この形態の保持装置によれば、ベース部に設けられた貫通孔の開口を囲むように封止凸部が設けられているため、貫通孔と溶射層との間のガス流れが封止凸部によって妨げられる。そのため、溶射層の微細孔および貫通孔を介して、保持装置内で望ましくないガスの流れが生じることに起因して生じる不都合を、抑えることができる。
(2)上記形態の保持装置において、前記封止凸部に囲まれる前記領域に存在する前記貫通孔は、前記保持装置の使用時に大気開放される貫通孔であることとしてもよい。このような構成とすれば、溶射層の微細孔および貫通孔を介して、保持装置が配置される空間や他の貫通孔に対して大気が流入することを、抑えることができる。
(3)上記形態の保持装置において、前記封止凸部に囲まれる前記領域に存在する前記貫通孔は、前記保持装置の使用時に大気と非連通状態となる貫通孔であることとしてもよい。このような構成とすれば、溶射層の微細孔を介して、保持装置が配置される空間と貫通孔とが連通することや、上記貫通孔と他の貫通孔とが連通することに起因する不都合を、抑えることができる。
(4)上記形態の保持装置において、前記ベース部の前記一方の主面は、複数の前記開口を有し、前記封止凸部は、前記複数の開口の各々を囲むように形成されていることとしてもよい。このような構成とすれば、複数の開口に対応する各々の貫通孔において、溶射層の微細孔を介した望ましくないガスの流れを抑えることができる。
(5)上記形態の保持装置において、前記封止凸部は、前記ベース部上に接着された樹脂製の凸状構造であることとしてもよい。このような構成とすれば、樹脂製の凸状構造をベース部上に接着して封止凸部を形成することにより、溶射層の微細孔および貫通孔を介した保持装置内での望ましくないガスの流れを、抑えることができる。また、封止凸部の材料として樹脂を用いることで、封止凸部の材料として例えば金属等を用いる場合に比べて封止凸部の形成が容易になり、製造工程を容易にすることができる。さらに、封止凸部を樹脂製の凸状構造とする場合には、例えば封止凸部を金属製の凸状構造等とする場合に比べて硬度が低くなるため、封止凸部の高さに多少のズレがあっても、ベース部と板状部との接着時の圧力により高さが揃い易い。そのため、封止凸部の高さを揃えるための精度の高い加工が不要となり、封止凸部の高さのズレに起因して接着剤による接着性が損なわれる等の不都合が生じることを抑制できる。
(6)上記構成の保持装置において、前記封止凸部は、前記ベース部の表面構造として前記ベース部の前記一方の主面に形成された凸状構造であることとしてもよい。このような構成とすれば、ベース部の表面構造としてベース部の一方の主面に形成された凸状構造として封止凸部を設けることにより、溶射層の微細孔および貫通孔を介した保持装置内での望ましくないガスの流れを、抑えることができる。また、封止凸部をベース部の一部として形成することにより、例えば金属製の封止凸部を別途用意する場合と比較して、金属部材間を接着する接着層等が不要となり、封止凸部とベース部との間の接合強度を確保することができる。さらに、金属を含むベース部の一部として封止凸部を形成することにより、樹脂製の封止凸部を用いる場合に比べて、封止凸部と板状部との間の接合強度の確保が容易になる。
(7)上記構成の保持装置において、前記封止凸部の頭頂部の幅は、1mm以上であることとしてもよい。このような構成とすれば、貫通孔と溶射層との間のガス流れを封止凸部によって妨げる効果を高めることができる。
(8)上記構成の保持装置は、静電吸着用電極を備える静電チャックであることとしてもよい。このような構成とすれば、静電チャックにおいて、ベース部に設けた溶射層の微細孔および貫通孔を介した保持装置内での望ましくないガスの流れを、抑えることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、保持装置を含む半導体製造装置、保持装置の製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の静電チャックの外観の概略を表す斜視図。
【
図3】ベース部に形成される貫通孔の配置の一例を表す説明図。
【
図4】比較例の静電チャックの概略構成を示す断面図。
【
図5】第2実施形態の静電チャックの概略構成を示す断面図。
【
図6】第3実施形態のベース部上に形成される封止凸部の様子を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
(A-1)静電チャックの構造:
図1は、第1実施形態における静電チャック10の外観の概略を表す斜視図である。
図2は、静電チャック10の構成を模式的に表す断面図である。
図1では、静電チャック10の一部を破断して示している。また、
図1、
図2、および、後述する
図3~
図6には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸を示している。各図に示されるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ同じ向きを表す。本願明細書においては、Z軸は鉛直方向を示し、X軸およびY軸は水平方向を示している。なお、各図は、静電チャック10を構成する各部の配置を模式的に表しており、各部の寸法の比率を正確に表すものではない。
【0008】
静電チャック10は、対象物を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバ内で、対象物であるウェハを固定するために使用される。静電チャック10は、セラミック部20と、ベース部30と、接着層40と、を備える。これらは、-Z軸方向(鉛直下方)に向かって、セラミック部20、接着層40、ベース部30の順に積層されている。本実施形態における静電チャック10を、「保持装置」とも呼ぶ。
【0009】
セラミック部20は、略円形の板状部材であり、セラミック(例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等)を主成分として形成されている。セラミック部20の直径は、例えば、50mm~500mm程度とすればよく、通常は200mm~350mm程度である。セラミック部20の厚さは、例えば1mm~10mm程度とすればよい。セラミック部20は、「板状部」とも呼ぶ。
【0010】
図2に示すように、セラミック部20の内部には、チャック電極22(静電吸着用電極)が配置されている。チャック電極22は、例えば、タングステンやモリブデンなどの導電性材料により形成されている。チャック電極22に対して図示しない電源から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハがセラミック部20の載置面24に吸着固定される。チャック電極22は、双極型であってもよく、単極型であってもよい。また、セラミック部20の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された抵抗発熱体で構成されて、載置面24に吸着固定されたウェハを加熱するための、図示しないヒータ電極を設けてもよい。
【0011】
ベース部30は、金属を含み、略円形に形成された板状部材である。本実施形態のベース部30は、アルミニウムを含む金属(アルミニウムまたはアルミニウム合金)を用いて形成されている。ベース部30による冷却効率を高めつつ製造コストを抑える観点からは、ベース部30における金属の含有割合が高い方が望ましく、ベース部30は、金属を主成分とすることが望ましい。例えば、汎用性が高いアルミニウムを90質量%以上含有すること(例えば、A6061、A5052などのアルミニウム合金により構成すること)が望ましい。ただし、ベース部30は、セラミックなどの金属以外の成分を含んでいてもよい。ベース部30の直径は、例えば、220mm~550mm程度とすればよく、通常は220mm~350mmである。ベース部30の厚さは、例えば、20mm~40mm程度とすればよい。
【0012】
ベース部30の内部には、複数の冷媒流路32がXY平面に沿うように形成されている。冷媒流路32に、例えばフッ素系不活性液体や水や液体窒素等の冷媒を流すことにより、ベース部30が冷却される。そして、接着層40を介したベース部30とセラミック部20との間の伝熱によりセラミック部20が冷却され、セラミック部20の載置面24に保持されたウェハが冷却される。これにより、ウェハの温度制御が実現される。ベース部30の内部に冷媒流路32を有する形態の他、ベース部30の外部からベース部30を冷却することにより、ベース部30に冷却機能を持たせてもよい。
【0013】
図2に示すように、ベース部30には、ベース部30の表面を覆うように溶射層35が形成されている。具体的には、板状部材であるベース部30は、一対の主面を備えており、この一対の主面のうちの一方の主面の一部に、溶射層35が形成されている。
図2では、ベース部30の表面のうち、「セラミック部20に対向する面」が、上記「一方の主面」に相当する。本実施形態のベース部30は、さらに、Z軸方向に平行な側面にも、溶射層35が形成されている。また、ベース部30の一対の主面のうちの他方の主面(ベース部30における-Z軸方向の裏面)にも、溶射層35を形成することとしてもよい。
【0014】
溶射層35は、例えば、プラズマ溶射により形成することができる。溶射層35を構成する材料としては、例えば、酸化イットリウム(イットリア:Y2O3)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、アルミナ-ジルコニア、スピネル、アルミニウムイットリウムガーネット(YAG)、フッ化イットリウム(YF3)、オキシフッ化イットリウム(YOF)等を挙げることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化イットリウムを用いることが望ましい。溶射層35の厚さは、例えば、200μm~1mmとすることができる。
【0015】
ベース部30は、さらに、上記した一対の主面のそれぞれに開口を形成する複数の貫通孔を有している。ベース部30の一方の主面では、上記複数の貫通孔の各々の開口を囲むように、封止凸部60が設けられている。封止凸部60は、ベース部30の一方の主面のうち、溶射層35が形成されていない領域、すなわち、溶射層35が形成された領域よりも開口側の領域において、一方の主面から接着層40に向かって(+Z軸方向に)突出し、自身の頭頂部が接着層40に接するように設けられている。貫通孔および封止凸部60の配置や構成については、後に詳しく説明する。
【0016】
接着層40は、溶射層35および封止凸部60が形成されたベース部30の一方の主面と、セラミック部20と、の間に配置されて、ベース部30とセラミック部20とを接合する。接着層40は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着剤を含む。接着層40は、例えばセラミック粉末等の無機フィラーを含んでいてもよい。接着層40の厚さは、例えば100μm~1mm程度とすることができる。
【0017】
(A-2)封止凸部の配置と構成:
図3は、ベース部30に形成される貫通孔の配置の一例を表す説明図であり、静電チャック10を上面視した(-Z軸方向に見た)様子を表す。ベース部30に形成される複数の貫通孔は、上面視したときにセラミック部20と重なる領域に形成されており、
図3では、セラミック部20に対する相対的な位置により、各貫通孔を表している。
図3に示すように、本実施形態のベース部30は、貫通孔として、ガス流路孔50,51と、リフトピン孔53と、温度センサ用孔54と、チャック端子用孔55と、を備える。なお、
図3では、セラミック部20の表面(載置面24)まで貫通して設けられる孔を実線で表し、セラミック部20の表面までは貫通していない孔を点線で表している。以下では、ベース部30に設けられた貫通孔と、静電チャック10内に形成されて、ベース部30の貫通孔によって少なくとも一部が構成される孔構造と、の双方を、ガス流路孔50,51、リフトピン孔53、温度センサ用孔54、チャック端子用孔55と呼ぶ。また、
図3では、
図2に表す断面の位置を、2-2断面として示している。なお、上記したベース部30の貫通孔に連通するようにセラミック部20に形成される孔構造は、上記とは異なる形状であってもよく、セラミック部20を、鉛直方向(Z軸方向)に真っ直ぐに貫通する以外の形状であってもよい。例えば、少なくとも一部が、セラミック部20内において鉛直方向とは異なる方向に延びる形状であってもよい。
【0018】
ガス流路孔50,51は、ベース部30に加えて、溶射層35、接着層40、およびセラミック部20をZ方向に貫通して設けられており、載置面24に形成されたガス吐出口
52において開口している(
図1および
図2参照)。ガス流路孔50,51は、図示しないガス供給装置から供給されるヘリウムガス等の不活性ガスが流れる流路である。ガス流路孔50は不活性ガスを供給する流路であり、ガス流路孔51は別系統にて不活性ガスを供給する流路である。ガス供給装置から供給される不活性ガスは、載置面24と、載置面24上に載置されるウェハとの間の空間に対して、ガス吐出口52から吐出される。これにより、セラミック部20とウェハとの間の伝熱性を高めて、ウェハの温度分布の制御性がさらに高められる。
【0019】
リフトピン孔53は、ガス流路孔50,51と同様に、ベース部30に加えて、溶射層35、接着層40、およびセラミック部20をZ方向に貫通して設けられている。リフトピン孔53は、静電チャック10の載置面24上に載置されるウェハを上げ下げするためのリフトピンが、挿入される孔構造である。リフトピンは、静電チャック10が収納される半導体製造装置の真空チャンバに付属して設けられている。
【0020】
温度センサ用孔54は、ベース部30に加えて、溶射層35および接着層40をZ方向に貫通して設けられているが、セラミック部20は貫通していない(
図2参照)。温度センサ用孔54は、熱電対等の温度センサのプローブを挿入して、温度センサのプローブをセラミック部20に近接して配置することにより、セラミック部20の温度を検出するための孔構造である。
【0021】
チャック端子用孔55は、ベース部30に加えて、溶射層35および接着層40をZ方向に貫通すると共に、セラミック部20の内部にまで延びるように設けられている。チャック端子用孔55は、セラミック部20の内部に設けられるチャック電極22(静電吸着用電極)の電極端子に電気的に接続する配線を、配置するための孔構造である。
【0022】
上記した貫通孔のうち、ガス流路孔50,51、およびリフトピン孔53は、半導体製造時において、真空引きされたチャンバ内の空間と連通する。このように、静電チャック10の使用時に大気と非連通状態となる貫通孔を、「真空系貫通孔」とも呼ぶ。また、上記した貫通孔のうち、温度センサ用孔54およびチャック端子用孔55は、静電チャック10の使用時に大気開放される貫通孔である。このように大気と連通する貫通孔を、「大気系貫通孔」とも呼ぶ。
【0023】
なお、ベース部30は、さらに異なる貫通孔を有していてもよい。例えば、セラミック部20の内部に、ウェハを加熱するためのヒータ電極を設ける場合には、ヒータ電極のヒータ端子に電気的に接続する配線を配置するための孔構造である、ヒータ端子用孔を設けることとしてもよい。このようなヒータ端子用孔は、静電チャック10の使用時に大気と連通する「大気系貫通孔」である。また、各々の貫通孔の配置は、
図3とは異なっていてもよい。また、各貫通孔は、ベース部30を、鉛直方向(Z軸方向)に真っ直ぐに貫通する以外の形状であってもよく、例えば、少なくとも一部が、鉛直方向とは異なる方向に延びる形状であってもよい。各貫通孔は、ベース部30の一対の主面のそれぞれに開口を有して、一対の主面間を連通させる孔であればよい。
【0024】
封止凸部60は、ベース部30の一方の主面において、各々の貫通孔の開口を隙間無く囲むように設けられている。各々の封止凸部60は、
図2に示すように、各貫通孔の開口の外周に近接して設けることが望ましい。各封止凸部60は、例えば、対応する貫通孔の開口に対して、上面視で同心円状となるように形成すればよい。なお、溶射層35は、ベース部30の一方の主面において、封止凸部60が設けられていない領域全体を覆うように形成されることが望ましい。
【0025】
本実施形態の封止凸部60は、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)により構成されて、ベー
ス部30上に接着された凸状構造である。封止凸部60を構成する樹脂としては、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等を用いることができる。封止凸部60と接着層40との接着性を高めるためには、封止凸部60を構成する樹脂と、接着層40を構成する接着剤とが、同種の樹脂であることが望ましい。
【0026】
封止凸部60を形成する際には、例えば、上記した樹脂のペーストを用いて、ベース部30の一方の主面における封止凸部60を設けるべき位置に、スクリーン印刷により樹脂ペーストを配置すればよい。また、上記した樹脂ペーストを、封止凸部60を設けるべき位置に、ディスペンサー等を用いて塗布してもよい。あるいは、上記した樹脂をシート状に成形し、封止凸部60の形状に切り抜いて、封止凸部60を設けるべき位置に貼付してもよい。その後、ベース部30上に配置した上記樹脂ペーストや樹脂シートを熱硬化させることにより、封止凸部60を形成することができる。なお、封止凸部60の形成に先立ってベース部30の表面に溶射層35を形成する際には、例えば、ベース部30の一方の主面上に特定形状のハードマスクを配置する等の方法で、封止凸部60を形成すべき領域における溶射層35の形成を抑えればよい。あるいは、ベース部30の一方の主面上に溶射層を形成した後に、封止凸部60を形成すべき領域に対してブラスト処理を行って、溶射層を部分的に除去してもよい。
【0027】
静電チャック10を製造する際には、例えば、ベース部30の一方の主面上の所望の位置において封止凸部60を半硬化状態で用意すると共に、セラミック部20における載置面24とは反対の面上において接着層40を半硬化状態で用意すればよい。そして、封止凸部60と接着層40とが接するように、上記ベース部30とセラミック部20とを重ね合わせ、加熱により、封止凸部60および接着層40を構成する樹脂を完全硬化させればよい。これにより、封止凸部60と接着層40との間、および、封止凸部60とベース部30との間で、高い接着性を実現することができる。
【0028】
封止凸部60の厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)は、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑える観点から、例えば200μm以上とすることが好ましく、300μm以上とすることがより好ましく、500μm以上とすることがさらに好ましい。また、静電チャック10の大型化を抑える観点から、1mm以下とすることが好ましく、800μm以下とすることがより好ましく、600μm以下とすることがさらに好ましい。
【0029】
封止凸部60の頭頂部の幅は、封止凸部60と、ベース部30および接着層40と、の間の接着性を確保して、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑える観点から、また、封止凸部60を精度良く形成する観点から、1mm以上とすることが好ましい。ここで、封止凸部60の「頭頂部の幅」とは、貫通孔の開口を囲むように設けられる封止凸部60全体の大きさをいうのではなく、貫通孔の開口を囲みつつ封止凸部60が延びる方向に垂直な方向の、封止凸部60の幅を意味しており、
図2では長さ「a」として示されている。すなわち、封止凸部60の「頭頂部の幅」とは、ベース部30の一方の主面を上面視したときに、一方の主面上において線状に延びる封止凸部60の線状部分の幅である。
【0030】
また、ベース部30の一方の主面上において、ベース部30の外周と封止凸部60との間の距離は、1mm以上とすることが望ましい。「ベース部30の外周と封止凸部60との間の距離」は、ベース部30の外周と封止凸部60との間の最短距離であり、
図2では長さ「b」として示されている。さらに、ベース部30の一方の主面上において、隣り合う貫通孔の開口の各々を囲んで設けられる封止凸部60間の距離は、1mm以上とすることが望ましい。「隣り合う貫通孔の開口の各々を囲んで設けられる封止凸部60間の距離」は、隣り合う貫通孔の開口の各々を囲んで設けられる封止凸部60間の最短距離であり、
図2では長さ「c」として示されている。
【0031】
封止凸部60と溶射層35の厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)は、同一であることが望ましい。封止凸部60は、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑える機能を有するが、封止凸部60が溶射層35よりも薄い(Z軸方向の高さが低い)と、このような機能が低下し得るためである。また、溶射層35が封止凸部60よりも薄い(Z軸方向の高さが低い)と、溶射層35と接着層40との間の接着性が低下し得るためである。ただし、封止凸部60が溶射層35よりも薄いことや、溶射層35が封止凸部60よりも薄いことに起因する上記不都合の程度が許容範囲であればよく、封止凸部60と溶射層35の厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)は、100μm程度の差を許容するものとする。例えば、比較的柔軟性の高い樹脂により形成される接着層40の厚みとして、150μm~1mm程度の厚みを確保することにより、接着層40によって、溶射層35と封止凸部60との間の厚みの差を吸収して、両者の厚みの差に起因する不都合を抑えることが可能になる。封止凸部60と溶射層35の厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)を同じにするためには、例えば、ベース部30の一方の主面上に溶射層35および封止凸部60を形成した後に、溶射層35および封止凸部60の高さが揃うように表面を削る同面加工を施すことが望ましい。
【0032】
以上のように構成された本実施形態の静電チャック10によれば、ベース部30におけるセラミック部20に対向する一方の主面上において、溶射層35が形成された領域よりも開口側の領域において、上記開口を囲むように設けられ、一方の主面から接着層40に向かって突出し、自身の頭頂部が接着層40に接する封止凸部60を備える。そのため、封止凸部60によって、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑えて、このようなガスの流通に起因して生じる不都合を抑えることができる。以下では、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通に起因する不都合について説明する。
【0033】
図4は、封止凸部60を有しない比較例としての静電チャック110の概略構成を、
図2と同様にして示す断面図である。静電チャック110は、封止凸部60を有しない点以外は静電チャック10と同様の構成を有しており、共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0034】
静電チャック110の使用時、すなわち、静電チャック110を真空チャンバ内に配置してウェハを製造する際には、大気開放される温度センサ用孔54と、溶射層35内の微細孔と、の間が連通していることにより、温度センサ用孔54および溶射層35内の微細孔を介して、真空チャンバ内に大気が流入し得る。このような現象は、「大気リーク」とも呼ぶ。温度センサ用孔54から溶射層35内へと大気が流入して大気リークが起こる様子を、
図4において矢印αで表す。このような大気リークは、温度センサ用孔54以外にも、チャック端子用孔55等の他の大気系貫通孔でも同様に起こり得る。
【0035】
また、静電チャック110の使用時には、ガス流路孔50と、溶射層35内の微細孔と、の間が連通していることにより、ガス流路孔50および溶射層35内の微細孔を介して、真空チャンバ内に余分な量の不活性ガスが流入し得る。このような現象は、「ガスリーク」とも呼ぶ。ガス流路孔50から溶射層35の外周に向かって不活性ガスが流れてガスリークが起こる様子を、
図4において矢印γで表す。このようなガスリークは、ガス流路孔50以外にも、ガス流路孔51等の、ガスが流通する他の貫通孔でも同様に起こり得る。
【0036】
また、静電チャック110の使用時には、温度センサ用孔54とガス流路孔50との間が、溶射層35内の微細孔を介して連通していることにより、温度センサ用孔54からガス流路孔50へと大気が流入し得る。このような現象は、「貫通孔間大気流入」とも呼ぶ。温度センサ用孔54からガス流路孔50へと大気が流入して貫通孔間大気流入が起こる
様子を、
図4において矢印βで表す。このような貫通孔間大気流入は、温度センサ用孔54とガス流路孔50との間以外であっても、大気系貫通孔と真空系貫通孔との種々の組み合わせにおいて同様に起こり得る。
【0037】
本実施形態の静電チャック10では、ベース部30の一方の主面上において、複数の貫通孔の開口の各々を囲むように封止凸部60が設けられるため、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通に起因する不都合、具体的には、上記した大気リーク、ガスリーク、および貫通孔間大気流入を抑えることができる。特に、本実施形態では、封止凸部60を、樹脂を用いて構成しているため、複数の封止凸部60間の厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)を揃えることや、溶射層35と厚みを揃えた封止凸部60を形成することが容易になる。また、封止凸部60を、比較的柔らかい材料である樹脂を用いて構成することにより、封止凸部60と溶射層35との間で厚みに差があったとしても、このような厚みの差による影響を抑えて、封止凸部60および溶射層35と接着層40との間の接着性を高めることが容易になる。
【0038】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態の静電チャック210の概略構成を、
図2と同様にして示す断面図である。静電チャック210は、ベース部30および封止凸部60に代えて、封止凸部260を備えるベース部230を備える点以外は静電チャック10と同様の構成を有しており、共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0039】
静電チャック210が備えるベース部230は、ベース部230の表面構造としてベース部230の一方の主面に形成された凸状構造である封止凸部260を備える。封止凸部260は、ベース部230の一方の主面上において、各貫通孔の開口を囲むように、第1実施形態の封止凸部60と同様の位置に設けられており、頭頂部が接着層40に接着されている。
【0040】
ベース部230の表面構造として封止凸部260を形成するには、ベース部230となる部材の一方の主面上に、切削加工等により、封止凸部260となる凸構造を形成すればよい。そして、このような凸構造である封止凸部260を形成した後に、ベース部230表面に溶射層35を形成すればよい。溶射層35は、例えば、封止凸部260を形成したベース部230の一方の主面の全体に溶射の処理を施し、その後、溶射により形成された層のうち、封止凸部260上に形成された部分のみを、研磨やブラスト加工により除去することにより、形成できる。あるいは、溶射層35は、封止凸部260を形成したベース部230の一方の主面において、封止凸部260上のみにハードマスクを配置して溶射の処理を行い、その後、研磨加工を行うことにより形成してもよい。そして、このようにして溶射層35を形成した後、必要に応じてさらに、溶射層35と封止凸部260の高さを揃える同面加工を行えばよい。
【0041】
封止凸部260の大きさに係る各パラメータは、第1実施形態の封止凸部60と同様に設定すればよい。封止凸部260の厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)は、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑える観点から、例えば200μm以上とすることが好ましく、300μm以上とすることがより好ましく、500μm以上とすることがさらに好ましい。また、静電チャック210の大型化を抑える観点から、1mm以下とすることが好ましく、800μm以下とすることがより好ましく、600μm以下とすることがさらに好ましい。
【0042】
封止凸部260の頭頂部の幅(
図5における長さ「a」)は、封止凸部260と、ベース部30および接着層40と、の間の接着性を確保して、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑える観点から、また、封止凸部60を精度良く形成する観点から、1mm以
上とすることが望ましい。また、ベース部230の一方の主面上において、ベース部230の外周と封止凸部260との間の距離(
図5における長さ「b」)は、1mm以上とすることが望ましい。さらに、ベース部230の一方の主面上において、隣り合う貫通孔の開口の各々を囲んで設けられる封止凸部260間の距離(
図5における長さ「c」)は、1mm以上とすることが望ましい。
【0043】
このような構成とすれば、封止凸部260を設けることにより、貫通孔と溶射層35との間のガスの流通を抑えて、このようなガスの流通に起因して生じる不都合を抑えるという、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態では、封止凸部260を、ベース部230の表面構造としているため、樹脂製の別部材である封止凸部60を用いる第1実施形態に比べて、封止凸部と接着層40との間の接着性を高めて、封止凸部と接着層40との間のガスリークに係る信頼性を高めることが可能になる。
【0044】
C.第3実施形態:
第1および第2実施形態では、ベース部の一方の主面上において、複数の貫通孔の各々の開口ごとに封止凸部を設けたが、異なる構成としてもよい。以下では、複数の貫通孔の開口に対して、単一の封止凸部を設ける構成を、第3実施形態として説明する。
【0045】
図6は、第3実施形態の静電チャックが備えるベース部30の一方の主面上に形成される封止凸部の様子を表す説明図である。第3実施形態の静電チャックは、封止凸部の配置が異なる点以外は第1実施形態の静電チャック10と同様の構成を有しており、共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0046】
図6に示すように、第3実施形態では、ベース部30上において、2つのリフトピン孔53の開口を囲むように形成された封止凸部360aと、2つの温度センサ用孔54の開口を囲むように形成された封止凸部360bとが設けられている。なお、上記した2つのリフトピン孔53および2つの温度センサ用孔54以外の貫通孔の開口については、各々の開口ごとに、第1実施形態と同様の封止凸部60が設けられている(図示せず)。また、封止凸部360aおよび封止凸部360bの大きさに係る各パラメータ、具体的には、封止凸部360a,360bの厚み(接着層40に接着する前のZ軸方向の高さ)、封止凸部360a,360bの頭頂部の幅、および、ベース部30の外周と封止凸部360a,360bとの間の距離は、第1実施形態の封止凸部60と同様に設定すればよい。
【0047】
図6に示すように、複数のリフトピン孔53を単一の封止凸部360aで囲む場合であっても、これらのリフトピン孔53と他の大気系貫通孔との間の貫通孔間大気流入を抑える効果を得ることができる。また、
図6に示すように、複数の温度センサ用孔54を単一の封止凸部360bで囲む場合であっても、これらの温度センサ用孔54を介した大気リークを抑える効果や、これらの温度センサ用孔54と他の真空系貫通孔との間の貫通孔間大気流入を抑える効果を得ることができる。なお、複数の貫通孔の開口を囲むように封止凸部を設ける際には、例えば、同種の3以上の貫通孔の開口を囲むように封止凸部を設けてもよい。
【0048】
また、複数の貫通孔の開口を単一の封止凸部によって囲む場合に、単一の封止凸部によって囲まれる複数の開口に対応する貫通孔は、同種の貫通孔とする他、異種の貫通孔とすることも可能である。具体的には、真空系貫通孔に属する異種の貫通孔(例えば、ガス流路孔50とリフトピン孔53)の開口を、単一の封止凸部により囲むこととしてもよい。このような場合であっても、封止凸部を設けることにより、ガス流路孔50を介したガスリークを抑える効果や、これらガス流路孔50およびリフトピン孔53と、他の大気系貫通孔と、の間の貫通孔間大気流入を抑える効果を得ることができる。また、大気系貫通孔に属する異種の貫通孔(例えば、温度センサ用孔54とチャック端子用孔55)の開口を
、単一の封止凸部により囲むこととしてもよい。このような場合であっても、封止凸部を設けることにより、温度センサ用孔54およびチャック端子用孔55を介した大気リークを抑える効果や、これら温度センサ用孔54およびチャック端子用孔55と、他の真空系貫通孔と、の間の貫通孔間大気流入を抑える効果を得ることができる。
【0049】
あるいは、真空系貫通孔と大気系貫通孔のうちの一方のみについて、各々の貫通孔の開口ごとに、あるいは、複数の貫通孔の開口をまとめて、封止凸部を設けることとしてもよい。これにより、少なくとも貫通孔間大気流入を抑えることができ、さらに、封止凸部で囲んだ開口を有する貫通孔については、貫通孔の種類に応じて、大気リークやガスリークを抑える効果を得ることができる。
【0050】
なお、このような封止凸部の配置の変形は、第1実施形態と同様に樹脂を用いて形成した封止凸部を設ける場合だけでなく、第2実施形態と同様にベース部の表面構造として設けた凸状構造によって封止凸部を形成する場合にも、同様に適用することができる。
【0051】
D.他の実施形態:
上記した第1実施形態では、封止凸部60を、ベース部30上に接着された樹脂製の凸状構造としたが、ベース部30上に接着されない樹脂製部材により封止凸部を構成することも可能である。例えば、封止凸部として樹脂製のOリングを用い、封止凸部と接着層40との間は接着剤によって接着させつつ、封止凸部とベース部30との間は、接着剤を用いることなく密着させて封止することとしてもよい。封止凸部は、ベース部の一方の主面から接着層に向かって突出するように形成されて、自身の頭頂部が接着層に接していればよい。
【0052】
本開示は、静電引力を利用してウェハを保持する静電チャック以外の保持装置に適用してもよい。すなわち、セラミック部のような板状部材と、板状部材に接合されると共に溶射層で被覆された被覆構造体としてのベース部と、を備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置、例えば、CVD、PVD、PLD等の真空装置用ヒータ装置や、真空チャック等にも同様に適用可能である。特に、耐食性や耐電圧性の確保のために溶射膜を設けることが望まれるプラズマ環境下で使用する装置において、好適に適用できる。
【0053】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10,110,210…静電チャック
20…セラミック部
22…チャック電極
24…載置面
30,230…ベース部
32…冷媒流路
35…溶射層
40…接着層
50,51…ガス流路孔
52…ガス吐出口
53…リフトピン孔
54…温度センサ用孔
55…チャック端子用孔
60,260,360a,360b…封止凸部