(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149723
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】床用目地装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058457
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DG00
2E001FA11
2E001FA51
2E001PA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通行人等が怪我をすることなく安全に地震による揺れ動きを吸収できる床用目地装置を提供すること
【解決手段】一方の躯体と他方の躯体との間の目地部を塞ぐ床用目地装置1であって、第1の目地プレート支持部6と、第2の目地プレート支持部と、目地プレート8と、端部目地プレート9と、ガイドレールと、ガイドレールに摺動可能に設けられた摺動部材11と、角部目地プレート12と、当接手段13とで構成され、端部目地プレート9は、底面に斜面状の切り欠きを有する端部目地プレート本体19と、端部目地プレート本体19の角部目地プレート12側の端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバー部材27とで構成され、角部目地プレート12は端部目地プレート9側に突出する傾斜面を有し通常時において端部目地プレート9の少なくとも一部が角部目地プレート12の傾斜面に位置しかつ端部目地プレート9と角部目地プレート12の上面が略平坦となる
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角部を有する目地部を介して設けられた一方の躯体と他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ床用目地装置であって、
前記一方の躯体に設けられ、係止杭を備える第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が前記第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持された目地プレートと、一端部が前記第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地プレートの端部側に隙間なく設けられた端部目地プレートと、前記一方の躯体又は前記第1の目地プレート支持部に設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに摺動可能に設けられた摺動部材と、少なくとも一端部の一部が前記摺動部材に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地部の角部を塞ぐ角部目地プレートと、前記角部目地プレートの側部を前記他方の躯体の前後方向の側壁に常時略当接させる当接手段とで構成され、
前記端部目地プレートは、底面に斜面状の切り欠きを有する端部目地プレート本体と、前記端部目地プレート本体の前記角部目地プレート側の端部にヒンジ部材を介して設けられたカバー部材とで構成され、
前記角部目地プレートは、前記端部目地プレート側に突出する傾斜面を有し、通常時において、前記端部目地プレートの少なくとも一部が前記角部目地プレートの前記傾斜面に位置し、かつ、前記端部目地プレートと前記角部目地プレートの上面が略平坦となる床用目地装置。
【請求項2】
前記端部目地プレート本体は、少なくとも2つ以上に分割され、前記複数個の端部目地プレート本体は、回動軸を有する接続部材で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の床用目地装置。
【請求項3】
前記カバー部材の底面には前記切り欠きと連続するように傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の床用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目地部を塞ぐ床用目地装置は、通常左右方向(目地部が狭くなる又は広くなる方向)に揺れ動いた場合には、目地プレートの他端部が目地プレート支持部上をスライド移動して地震による揺れ動きを吸収する。左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合であっても目地部が開口せずに塞ぐことができるものがあり、そのような床用目地装置としては、例えば「目地部を介して設けられた側壁を有する左右の躯体の、一方の躯体の目地部側の床面に反目地部側が傾斜面に形成された床用目地プレートの先端部をスライド移動可能に支持する床用目地プレートスライド支持凹部と、この床用目地プレートスライド支持凹部と対向する前記他方の躯体の目地部側に、前記床用目地プレートの後端部を支持する床用目地プレート支持部と、この床用目地プレート支持部に後端部が係止具を介して前後方向に移動可能に支持され、先端部が前記床用目地プレートスライド支持凹部に支持され、かつ一端部が前記側壁と当接する端部床用目地プレートと、この端部床用目地プレートの他端部に、該端部床用目地プレートと並列するように配置された、地震により前記左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合に、一端部側が端部床用目地プレート上に乗り上がる、底面に複数個のローラが設けられた可動側床用目地プレート、この可動側床用目地プレートの他端部側にヒンジ部材を介して接続された後端部が前記床用目地プレート支持部に係止具を介して支持され、先端部が前記床用目地プレートスライド支持凹部に支持された固定側床用目地プレートとからなる床用目地プレートと、前記端部床用目地プレートを常時側壁方向へ付勢する付勢装置とからなることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、このような床用目地装置では、左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合であっても目地部が開口しないように塞ぐことができるものの、目地プレートが隣り合う目地プレートに乗り上げるため、乗り上げた目地プレートにより通行人が足等を怪我するおそれがあった。
【0004】
また、目地部が開口した部位には第1又は第2の端部目地装置が配置されているものの、段差が非常に大きく、この部位に落下した後地震から復帰した場合には、復帰した目地プレートに衝突するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、通行人等が怪我をすることなく安全に地震による揺れ動きを吸収できる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の床用目地装置は、角部を有する目地部を介して設けられた一方の躯体と他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ床用目地装置であって、一方の躯体に設けられ、係止杭を備える第1の目地プレート支持部と、他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部に支持された複数個の目地プレートと、一端部が第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地プレートの端部側に隙間なく設けられた端部目地プレートと、前記一方の躯体又は前記第1の目地プレート支持部に設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに摺動可能に設けられた摺動部材と、少なくとも一端部の一部が前記摺動部材に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地部の角部を塞ぐ角部目地プレートと、前記角部目地プレートの側部を前記他方の躯体の前後方向の側壁に常時略当接させる当接手段とで構成され、前記端部目地プレートは、底面に斜面状の切り欠きを有する端部目地プレート本体と、前記端部目地プレート本体の前記角部目地プレート側の端部にヒンジ部材を介して設けられたカバー部材とで構成され、前記角部目地プレートは、前記端部目地プレート側に突出する摩擦用の傾斜面を有し、通常時において、前記端部目地プレートの少なくとも一部が前記角部目地プレートの前記傾斜面に位置し、かつ、前記端部目地プレートと前記角部目地プレートの上面が略平坦となることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の床用目地装置の前記端部目地プレート本体は、少なくとも2つ以上に分割され、前記複数個の端部目地プレート本体は、回動軸を有する接続部材で接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の床用目地装置の前記カバー部材の底面には前記切り欠きと連続するように傾斜部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては端部目地プレートの底面及び角部目地プレートの上面に摩擦用の傾斜面を形成するとともに、端部目地プレートの側面にカバー部材を設けているので、地震によって端部目地プレートと角部目地プレートの重なり幅が大きくなっても、カバー部材によって角部目地プレートの上面との段差を小さくすることができ、また、端部目地プレートの側面等が直接人や物品に衝突することを防止できる。
したがって、安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)請求項2及び請求項3に記載の各発明においても、前記(1)と同様の作用効果を得られるとともに、地震時に端部目地プレートと角部目地プレート段差をより小さくすることができ、より安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至
図10は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図11乃至
図15は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【
図4】一方の躯体、他方の躯体及び目地部を示す説明図。
【
図7】地震で左右方向の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図8】地震で左右方向の目地部が広くなった状態の説明図。
【
図9】地震で前後方向の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図10】地震で前後方向の目地部が広くなった状態の説明図。
【
図14】地震で前後方向の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図15】地震で前後方向の目地部が広くなった状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1乃至
図10に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は角部2a(左右方向の目地部2bと前後方向の目地部2cが交わる部位)を有する目地部2を介して設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置される床用目地装置である。
なお、左右方向とは
図1における左右方向であり、前後方向とは
図1における上下方向をいい、上下方向とは
図2における上下方向をいう。
【0015】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0016】
この床用目地装置1は、例えば
図1乃至
図3に示すように、一方の躯体3に設けられ、係止杭5を備える第1の目地プレート支持部6と、他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部7と、一端部が第1の目地プレート支持部6に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部7に支持された複数個の目地プレート8(例えば
図3を参照)と、一端部が第1の目地プレート支持部6に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部7に支持され、前記目地プレート8の端部側に隙間なく設けられた端部目地プレート9と、前記一方の躯体3又は前記第1の目地プレート支持部6に設けられたガイドレール10と、前記ガイドレール10に摺動可能に設けられた摺動部材11と、少なくとも一端部の一部が前記摺動部材11に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部7に支持され、前記目地部2の角部2aを塞ぐ角部目地プレート12と、前記角部目地プレート12の側部を前記他方の躯体4の前後方向に延在する壁面4aに常時略当接させる当接手段13とで構成されている。
【0017】
一方の躯体3は、
図4に示すように平面視において略方形状、略矩形状又は略逆L字状の躯体で、角部を有する平面視略L字状又は略クランク状の目地部2(左右方向の目地部2b及び前後方向の目地部2c)を介して平面視略L字状又は略クランク状の他方の躯体4が設けられている。第2の目地プレート支持部7と対向する一方の躯体3の壁面3aに前後方向に延在する凹所状の第1の目地プレート支持部6が設けられている。
【0018】
この第1の目地プレート支持部6は、角パイプ状の支持部材14と、前記支持部材14の上面に設けられた前記係止杭5と、前記支持部材の内部空間に形成された前記ガイドレール10とで構成されている。この支持部材14はビス(図示せず)等により一方の躯体3の壁面に固定されており、ガイドレール10の内部には、後述する角部目地プレート12の一端部の少なくとも一部を支持する摺動部材11が前後方向(ガイドレール10の軸方向)にスライド移動可能に設けられている。本実施形態では、第1の目地プレート支持部6にガイドレール10を形成しているが、第1の目地プレート支持部6とは別途ガイドレール10を一方の躯体3の壁面に設けてもよい。
【0019】
この摺動部材11は、角柱状又は角パイプ状の部材で、前記ガイドレール10に設けられたローラーや滑り材等の滑動部材15を介してガイドレール10の延伸方向にスライド移動可能に設けられている。
【0020】
この摺動部材11には角部目地プレート12の一端部が接続されている。この摺動部材11の突出端部には、下方に突出する係合片16が形成されており、この係合片16が他方の躯体4の壁面4aに設けられたレール状の被係合部材17に係合しており、これにより角部目地プレート12の側面が常時壁面4aに当接する。
【0021】
換言すると、当接手段13は、摺動部材11の突出端部に設けられた下方に突出するバー状(根太状)の係合片16と、他方の躯体4の壁面4aに設けられ、前記係合片16が係合するレール状の被係合部材17とで構成されている。なお、当接手段13としては、例えば角部目地プレート12の一端部側の端部に係合片を形成し、この係合片を被係合部材に係合させてもよいし、摺動部材11を他方の躯体4の壁面4aの方向へ付勢する付勢手段等を用いてもよい。
【0022】
他方の躯体4の目地部2側の床面には、目地プレート9の他端部が左右方向にスライド移動可能な凹所状の第2の目地プレート支持部7が形成されており、この第2の目地プレート支持部7の目地部2と反対側の端部には、地震によって目地部2が狭くなった場合に目地プレート9の他端部が乗り上げる乗り上げ傾斜面18が形成されている。また、他方の躯体4の少なくとも前記第2の目地プレート支持部7が形成された部位の側部(前後方向の端)には、立設するように側壁4bが設けられている。
【0023】
目地プレート8は、
図12で示すように、浅皿状の目地プレート本体19と、前記目地プレート本体19の一端部側に設けられ、前記係止杭5が挿入される1対の杭ケース20と、前記目地プレート本体19に充填されたセメントやモルタル等の充填部材21と、充填部材21の上部を覆うように設けられた化粧板22と、目地プレート本体19の他端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバープレート24とで構成されている。
【0024】
なお、
図3では左端の目地プレート8は省略しているが、本実施形態では複数個の目地プレート8が、一方の躯体3側の係止杭5を備える第1の目地プレート支持部6側から他方の躯体4側のカバープレート24を備える第2の目地プレート支持部7まで隙間なく一体的に接続している。
【0025】
端部目地プレート9は、
図5に示すように、底面に斜面状の切り欠き25を有する端部目地プレート本体26と、前記係止杭5が挿入される1対の杭ケース20と、前記端部目地プレート本体26の前記角部目地プレート12側の端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバー部材27とで構成されている。
【0026】
端部目地プレート本体26は、角部目地プレート12方向に2つ以上、本実施形態では3つに分割されており、説明の便宜上、一方の端部目地プレート本体26a、中間の端部目地プレート本体26b、他方の端部目地プレート本体26cとして説明する。なお、本実施形態では一方の端部目地プレート本体26aの一端部側のみ係止杭5が挿入される1対の杭ケース20が設けられている。
【0027】
一方の端部目地プレート本体26aと中間の端部目地プレート本体26b、他方の端部目地プレート本体26cは、それぞれ浅皿状の皿部材28(一方の端部目地プレート本体26aの皿部材28a、中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28b、他方の端部目地プレート本体26cの皿部材28c)と、皿部材28に充填されたセメントやモルタル等の充填部材21と、充填部材21の上部を覆うように設けられた化粧板22と、端部目地プレート本体26の他端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバープレート24とで構成されている。
【0028】
また、皿部材28bの底面には切り欠き25が連続するように形成されている。この切り欠き25は、角部目地プレート12の方向に進むに従って端部目地プレート本体26の高さ(厚み)が減少するような傾斜面に形成されている。この切り欠き25は例えば中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28bと他方の端部目地プレート本体26cの皿部材28cにのみ形成してもよい。また、皿部材28a、28bの全体に切り欠き25を形成してもよいし、一部に形成してもよい。本実施形態では、中間の端部目地プレート本体26bの底面の中央部付近から他方の端部目地プレート本体26cに向かって切り欠き25が形成されている。
【0029】
この一方の端部目地プレート本体26aの皿部材28aと中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28b及び中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28bと他方の端部目地プレート本体26cの皿部材28cは、それぞれ回動軸29を有するヒンジ状の接続部材30で底面側が接続されており、回動軸29は隣り合う皿部材28の当接部付近に位置するように設けられている。この接続部材30としてカバー部材27等を接続するヒンジ部材23を用いてもよい。
【0030】
他方の端部目地プレート本体26cの角部目地プレート12側の側面には、ヒンジ部材23を介してカバー部材27が設けられている。このヒンジ部材23は、他方の端部目地プレート本体26cの底面とカバー部材27の底面を接続するように設けられている。
【0031】
このカバー部材27は平面視において矩形状の板材で、本実施形態ではその底面には前記切り欠き25と連続するように傾斜部31が形成されている。切り欠き25及び傾斜部31が形成されている部分の長さとしては、地震による前後方向の揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されている。なお、カバー部材27の上面に目地プレート8等と同様の化粧板22を設けてもよい。
【0032】
角部目地プレート12は、
図6に示すように、本実施形態では浅皿状で端部目地プレート9側の上面に摩擦用の緩やかな傾斜面32が形成された角部目地プレート本体33と、角部目地プレート本体33に充填されたセメントやモルタル等の充填部材21と、充填部材21の上部を覆うように設けられた化粧板22と、角部目地プレート本体33の他端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバープレート24とで構成されている。この角部目地プレート12には一端部側に1対の杭ケース20が設けられており、本実施形態では、摺動部材11の係止杭5に係合しているが、端部目地プレート9側の杭ケース20は、第1の目地プレート支持部に設けられた係止杭5に係合するように設けてもよく、このような場合には角部目地プレート12が前後方向にスライド移動できるよう、杭ケース20を長尺とすることが望ましい。また、杭ケース20(特に他方の躯体4の壁面4a側の杭ケース20)は、角部目地プレート12が端部目地プレート9等と上面が略水平になるように、摺動部材11の上面に形成又は固定したゲタ部11aの上に設けることが望ましい。
【0033】
角部目地プレート12の前後方向の寸法は、地震による前後方向の揺れ動き幅の2倍以上になるように形成されており、前記傾斜面32は地震による前後方向の揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されている。そのため、切り欠き25や傾斜部31、傾斜面32の角度が非常にゆるくなっている(緩斜面になっている)ため、地震によって傾斜面32の上面を切り欠き25や傾斜部31が乗り上がっても、カバー部材27や端部目地プレート9が大きく跳ね上がることがなく、安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。なお、摩擦用(せり上がり用)の緩やかな傾斜面32の傾斜角(例えば角部目地プレート本体33の底面に対する傾斜面32のスベリ摩擦角)は、好ましくは、10度乃至40度、望ましくは11度乃至20度である。
【0034】
角部目地プレート12は、本実施形態では、摺動部材11に設けられた1対の係止杭5が角部目地プレート12の1対の杭ケース20に挿入されているが、一端部側の一方の端部が前記第1の目地プレート支持部6に前後方向にスライド移動可能に支持され、一端部の他方の端部(他方の躯体4の壁面4a側の端部)は、摺動部材11に支持されるように設けてもよい。摺動部材11には、係止杭5が設けられており、この係止杭5が角部目地プレート12に設けられた1対の杭ケース20に挿入される。なお、摺動部材11に一端部の全体が支持されるように設けてもよい。角部目地プレート12が前後方向に揺れ動いた場合でも係止杭5と干渉しないように、第1の目地プレート支持部6に設けられた係止杭5が挿入される杭ケース20は、前後方向に長いものを用いることが望ましく、摺動部材11に1対の係止杭5を設けて角部目地プレートを支持する場合には、係止杭5から摺動部材11の端部までの長さを地震による揺れ動き幅より大きくする又は、摺動部材11に係止杭5が入り込める切り欠き等を設けることが望ましい。
【0035】
通常時(
図1の状態)においては、端部目地プレート9の切り欠き25が形成された部位及びカバー部材27は、角部目地プレート12の摩擦用の緩やかな傾斜面32の上面に乗るように、すなわち、切り欠き25と傾斜面32が略当接するように配置される。また、端部目地プレート9と角部目地プレート12の上面が略平坦となるように配置され、目地部2(角部2a及び左右方向の目地部2b)を塞ぐことができる。
【0036】
なお、略当接するとは、ぴったりと面接触している状態だけでなく、部分的に接触し、その他の部分は僅かな間隙を有して接近している状態や、僅かな間隙を有して接近している状態も含むものである。
また、本実施形態では、浅皿状の目地プレート本体19等を使用した目地プレート8、端部目地プレート9、角部目地プレート12を用いたが、板状の部材を用いて目地プレート8、端部目地プレート9、角部目地プレート12を形成してもよい。
【0037】
ところで、一方の躯体3の前後方向の目地部2c側の壁面3aと他方の躯体4の壁面4aとの間の縦方向の隙間(前後方向の目地部2cが開口している部位)については壁面用目地装置等(図示せず)を用いて塞ぐことが望ましい。
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き左右方向の目地部2bが狭くなると、
図7に示すように、目地プレート8、端部目地プレート9及び角部目地プレート12の他端部が第2の目地プレート支持部7の乗り上げ傾斜面18により上方にせり上がり地震による揺れ動きを吸収する。
【0038】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き左右方向の目地部2bが広くなると、
図8に示すように、目地プレート8、端部目地プレート9及び角部目地プレート12の他端部が第2の目地プレート支持部7の上面を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0039】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが狭くなると、
図9に示すように、角部目地プレート12が端部目地プレート9と重なり幅が大きくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。
【0040】
この時、前述したように切り欠き25や傾斜部31、傾斜面32の角度が緩斜面になっているため、地震によって傾斜面32の上面に端部目地プレート9の切り欠き25やカバー部材27の傾斜部31が乗り上がっても、カバー部材27や端部目地プレート9が大きく跳ね上がることがなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0041】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが広くなると、
図10に示すように、端部目地プレート9やカバー部材27が角部目地プレート12の傾斜面32の上面を、その重なり幅が小さくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。傾斜面32の寸法は地震による揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されており、端部目地プレート9とカバー部材27はヒンジ部材23により接続されているため、大きな段差が生じることなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0042】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図11乃至
図15に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図11乃至
図15に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、分割されていない端部目地プレート本体26Aを用い、この端部目地プレート本体26Aの角部目地プレート12側の側面にヒンジ部材23を介して薄板状のカバー部材27Aを設けた端部目地プレート9Aにした点で、このような端部目地プレート9Aを用いた床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態では、端部目地プレート本体26Aは浅皿状に形成されており、この端部目地プレート本体26Aに充填部材21が充填され、その上面に化粧板22が設けられている。
【0044】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが狭くなると、
図14に示すように、角部目地プレート12が端部目地プレート9と重なり幅が大きくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。
【0045】
この時、薄板状のカバー部材27Aを備え、傾斜面32の角度が緩斜面になっているため、地震によって傾斜面32の上面に端部目地プレート9Aの切り欠き25が乗り上がっても、カバー部材27Aや端部目地プレート9Aが大きく跳ね上がることがなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0046】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが広くなると、
図10に示すように、端部目地プレート9Aやカバー部材27Aが角部目地プレート12の傾斜面32の上面を、その重なり幅が小さくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。傾斜面32の寸法は地震による揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されており、端部目地プレート9Aとカバー部材27Aはヒンジ部材23により接続されているため、大きな段差が生じることなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0048】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:係止杭、 6:第1の目地プレート支持部、
7:第2の目地プレート支持部、 8:目地プレート、
9、9A:端部目地プレート、 10:ガイドレール、
11:摺動部材、 12:角部目地プレート、
13:当接手段、 14:支持部材、
15:滑動部材、 16:係合片、
17:被係合部材、 18:乗り上げ傾斜面、
19:目地プレート本体、 20:杭ケース、
21:充填部材、 22:化粧板、
23:ヒンジ部材、 24:カバープレート、
25:切り欠き、 26、26A:端部目地プレート本体、
27、27A:カバー部材、 28:皿部材、
29:回動軸、 30:接続部材、
31:傾斜部、 32:傾斜面、
33:角部目地プレート本体。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角部を有する目地部を介して設けられた一方の躯体と他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ床用目地装置であって、
前記一方の躯体に設けられ、係止杭を備える第1の目地プレート支持部と、前記他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が前記第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持された目地プレートと、一端部が前記第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が前記第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地プレートの端部側に隙間なく設けられた端部目地プレートと、前記一方の躯体又は前記第1の目地プレート支持部に設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに摺動可能に設けられた摺動部材と、少なくとも一端部の一部が前記摺動部材に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地部の角部を塞ぐ角部目地プレートと、前記角部目地プレートの前記端部目地プレートと反対側の側部を前記他方の躯体の側壁に常時略当接させる当接手段とで構成され、
前記端部目地プレートは、底面に前記角部目地プレート方向に進むに従って厚みが減少する斜面状の切り欠きを有する端部目地プレート本体と、前記端部目地プレート本体の前記角部目地プレート側の端部にヒンジ部材を介して設けられたカバー部材とで構成され、
前記角部目地プレートは、前記端部目地プレート側に突出する傾斜面を有し、通常時において、前記端部目地プレートの少なくとも一部が前記角部目地プレートの前記傾斜面に位置し、かつ、前記端部目地プレートと前記角部目地プレートの上面が略平坦となる床用目地装置。
【請求項2】
前記端部目地プレート本体は、少なくとも2つ以上に分割され、前記複数個の端部目地プレート本体は、回動軸を有する接続部材で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の床用目地装置。
【請求項3】
前記カバー部材の底面には前記切り欠きと連続するように傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の床用目地装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた躯体の間の目地部を塞ぐ床用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目地部を塞ぐ床用目地装置は、通常左右方向(目地部が狭くなる又は広くなる方向)に揺れ動いた場合には、目地プレートの他端部が目地プレート支持部上をスライド移動して地震による揺れ動きを吸収する。左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合であっても目地部が開口せずに塞ぐことができるものがあり、そのような床用目地装置としては、例えば「目地部を介して設けられた側壁を有する左右の躯体の、一方の躯体の目地部側の床面に反目地部側が傾斜面に形成された床用目地プレートの先端部をスライド移動可能に支持する床用目地プレートスライド支持凹部と、この床用目地プレートスライド支持凹部と対向する前記他方の躯体の目地部側に、前記床用目地プレートの後端部を支持する床用目地プレート支持部と、この床用目地プレート支持部に後端部が係止具を介して前後方向に移動可能に支持され、先端部が前記床用目地プレートスライド支持凹部に支持され、かつ一端部が前記側壁と当接する端部床用目地プレートと、この端部床用目地プレートの他端部に、該端部床用目地プレートと並列するように配置された、地震により前記左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合に、一端部側が端部床用目地プレート上に乗り上がる、底面に複数個のローラが設けられた可動側床用目地プレート、この可動側床用目地プレートの他端部側にヒンジ部材を介して接続された後端部が前記床用目地プレート支持部に係止具を介して支持され、先端部が前記床用目地プレートスライド支持凹部に支持された固定側床用目地プレートとからなる床用目地プレートと、前記端部床用目地プレートを常時側壁方向へ付勢する付勢装置とからなることを特徴とする床用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、このような床用目地装置では、左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合であっても目地部が開口しないように塞ぐことができるものの、目地プレートが隣り合う目地プレートに乗り上げるため、乗り上げた目地プレートにより通行人が足等を怪我するおそれがあった。
【0004】
また、目地部が開口した部位には第1又は第2の端部目地装置が配置されているものの、段差が非常に大きく、この部位に落下した後地震から復帰した場合には、復帰した目地プレートに衝突するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、通行人等が怪我をすることなく安全に地震による揺れ動きを吸収できる床用目地装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の床用目地装置は、角部を有する目地部を介して設けられた一方の躯体と他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ床用目地装置であって、一方の躯体に設けられ、係止杭を備える第1の目地プレート支持部と、他方の躯体に設けられた第2の目地プレート支持部と、一端部が第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部に支持された複数個の目地プレートと、一端部が第1の目地プレート支持部に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地プレートの端部側に隙間なく設けられた端部目地プレートと、前記一方の躯体又は前記第1の目地プレート支持部に設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに摺動可能に設けられた摺動部材と、少なくとも一端部の一部が前記摺動部材に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部に支持され、前記目地部の角部を塞ぐ角部目地プレートと、前記角部目地プレートの前記端部目地プレートと反対側の側部を前記他方の躯体の側壁に常時略当接させる当接手段とで構成され、前記端部目地プレートは、底面に前記角部目地プレート方向に進むに従って厚みが減少する斜面状の切り欠きを有する端部目地プレート本体と、前記端部目地プレート本体の前記角部目地プレート側の端部にヒンジ部材を介して設けられたカバー部材とで構成され、前記角部目地プレートは、前記端部目地プレート側に突出する摩擦用の傾斜面を有し、通常時において、前記端部目地プレートの少なくとも一部が前記角部目地プレートの前記傾斜面に位置し、かつ、前記端部目地プレートと前記角部目地プレートの上面が略平坦となることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の床用目地装置の前記端部目地プレート本体は、少なくとも2つ以上に分割され、前記複数個の端部目地プレート本体は、回動軸を有する接続部材で接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の床用目地装置の前記カバー部材の底面には前記切り欠きと連続するように傾斜部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては端部目地プレートの底面及び角部目地プレートの上面に摩擦用の傾斜面を形成するとともに、端部目地プレートの側面にカバー部材を設けているので、地震によって端部目地プレートと角部目地プレートの重なり幅が大きくなっても、カバー部材によって角部目地プレートの上面との段差を小さくすることができ、また、端部目地プレートの側面等が直接人や物品に衝突することを防止できる。
したがって、安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)請求項2及び請求項3に記載の各発明においても、前記(1)と同様の作用効果を得られるとともに、地震時に端部目地プレートと角部目地プレート段差をより小さくすることができ、より安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至
図10は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図11乃至
図15は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【
図4】一方の躯体、他方の躯体及び目地部を示す説明図。
【
図7】地震で左右方向の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図8】地震で左右方向の目地部が広くなった状態の説明図。
【
図9】地震で前後方向の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図10】地震で前後方向の目地部が広くなった状態の説明図。
【
図14】地震で前後方向の目地部が狭くなった状態の説明図。
【
図15】地震で前後方向の目地部が広くなった状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1乃至
図10に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は角部2a(左右方向の目地部2bと前後方向の目地部2cが交わる部位)を有する目地部2を介して設けられた一方の躯体3と他方の躯体4間に設置される床用目地装置である。
なお、左右方向とは
図1における左右方向であり、前後方向とは
図1における上下方向をいい、上下方向とは
図2における上下方向をいう。
【0015】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0016】
この床用目地装置1は、例えば
図1乃至
図3に示すように、一方の躯体3に設けられ、係止杭5を備える第1の目地プレート支持部6と、他方の躯体4に設けられた第2の目地プレート支持部7と、一端部が第1の目地プレート支持部6に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部7に支持された複数個の目地プレート8(例えば
図3を参照)と、一端部が第1の目地プレート支持部6に支持されると共に、他端部が第2の目地プレート支持部7に支持され、前記目地プレート8の端部側に隙間なく設けられた端部目地プレート9と、前記一方の躯体3又は前記第1の目地プレート支持部6に設けられたガイドレール10と、前記ガイドレール10に摺動可能に設けられた摺動部材11と、少なくとも一端部の一部が前記摺動部材11に支持され、他端部が第2の目地プレート支持部7に支持され、前記目地部2の角部2aを塞ぐ角部目地プレート12と、前記角部目地プレート12の側部を前記他方の躯体4の
左右方向に延在する壁面4aに常時略当接させる当接手段13とで構成されている。
【0017】
一方の躯体3は、
図4に示すように平面視において略方形状、略矩形状又は略逆L字状の躯体で、角部を有する平面視略L字状又は略クランク状の目地部2(左右方向の目地部2b及び前後方向の目地部2c)を介して平面視略L字状又は略クランク状の他方の躯体4が設けられている。第2の目地プレート支持部7と対向する一方の躯体3に前後方向に延在する凹所状の第1の目地プレート支持部6が設けられている。
【0018】
この第1の目地プレート支持部6は、角パイプ状の支持部材14と、前記支持部材14の上面に設けられた前記係止杭5と、前記支持部材の内部空間に形成された前記ガイドレール10とで構成されている。この支持部材14はビス(図示せず)等により一方の躯体3の壁面に固定されており、ガイドレール10の内部には、後述する角部目地プレート12の一端部の少なくとも一部を支持する摺動部材11が前後方向(ガイドレール10の軸方向)にスライド移動可能に設けられている。本実施形態では、第1の目地プレート支持部6にガイドレール10を形成しているが、第1の目地プレート支持部6とは別途ガイドレール10を一方の躯体3の壁面に設けてもよい。
【0019】
この摺動部材11は、角柱状又は角パイプ状の部材で、前記ガイドレール10に設けられたローラーや滑り材等の滑動部材15を介してガイドレール10の延伸方向にスライド移動可能に設けられている。
【0020】
この摺動部材11には角部目地プレート12の一端部が接続されている。この摺動部材11の突出端部には、下方に突出する係合片16が形成されており、この係合片16が他方の躯体4の壁面4aに設けられたレール状の被係合部材17に係合しており、これにより角部目地プレート12の側面が常時壁面4aに当接する。
【0021】
換言すると、当接手段13は、摺動部材11の突出端部に設けられた下方に突出するバー状(根太状)の係合片16と、他方の躯体4の壁面4aに設けられ、前記係合片16が係合するレール状の被係合部材17とで構成されている。なお、当接手段13としては、例えば角部目地プレート12の一端部側の端部に係合片を形成し、この係合片を被係合部材に係合させてもよいし、摺動部材11を他方の躯体4の壁面4aの方向へ付勢する付勢手段等を用いてもよい。
【0022】
他方の躯体4の目地部2側の床面には、目地プレート9の他端部が左右方向にスライド移動可能な凹所状の第2の目地プレート支持部7が形成されており、この第2の目地プレート支持部7の目地部2と反対側の端部には、地震によって目地部2が狭くなった場合に目地プレート9の他端部が乗り上げる乗り上げ傾斜面18が形成されている。また、他方の躯体4の少なくとも前記第2の目地プレート支持部7が形成された部位の側部(前後方向の端)には、立設するように側壁4bが設けられている。
【0023】
目地プレート8は、
図12で示すように、浅皿状の目地プレート本体19と、前記目地プレート本体19の一端部側に設けられ、前記係止杭5が挿入される1対の杭ケース20と、前記目地プレート本体19に充填されたセメントやモルタル等の充填部材21と、充填部材21の上部を覆うように設けられた化粧板22と、目地プレート本体19の他端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバープレート24とで構成されている。
【0024】
なお、
図3では左端の目地プレート8は省略しているが、本実施形態では複数個の目地プレート8が、一方の躯体3側の係止杭5を備える第1の目地プレート支持部6側から他方の躯体4側のカバープレート24を備える第2の目地プレート支持部7まで隙間なく一体的に接続している。
【0025】
端部目地プレート9は、
図5に示すように、底面に斜面状の切り欠き25を有する端部目地プレート本体26と、前記係止杭5が挿入される1対の杭ケース20と、前記端部目地プレート本体26の前記角部目地プレート12側の端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバー部材27とで構成されている。
【0026】
端部目地プレート本体26は、角部目地プレート12方向に2つ以上、本実施形態では3つに分割されており、説明の便宜上、一方の端部目地プレート本体26a、中間の端部目地プレート本体26b、他方の端部目地プレート本体26cとして説明する。なお、本実施形態では一方の端部目地プレート本体26aの一端部側のみ係止杭5が挿入される1対の杭ケース20が設けられている。
【0027】
一方の端部目地プレート本体26aと中間の端部目地プレート本体26b、他方の端部目地プレート本体26cは、それぞれ浅皿状の皿部材28(一方の端部目地プレート本体26aの皿部材28a、中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28b、他方の端部目地プレート本体26cの皿部材28c)と、皿部材28に充填されたセメントやモルタル等の充填部材21と、充填部材21の上部を覆うように設けられた化粧板22と、端部目地プレート本体26の他端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバープレート24とで構成されている。
【0028】
また、皿部材28bの底面には切り欠き25が連続するように形成されている。この切り欠き25は、角部目地プレート12の方向に進むに従って端部目地プレート本体26の高さ(厚み)が減少するような傾斜面に形成されている。この切り欠き25は例えば中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28bと他方の端部目地プレート本体26cの皿部材28cにのみ形成してもよい。また、皿部材28a、28bの全体に切り欠き25を形成してもよいし、一部に形成してもよい。本実施形態では、中間の端部目地プレート本体26bの底面の中央部付近から他方の端部目地プレート本体26cに向かって切り欠き25が形成されている。
【0029】
この一方の端部目地プレート本体26aの皿部材28aと中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28b及び中間の端部目地プレート本体26bの皿部材28bと他方の端部目地プレート本体26cの皿部材28cは、それぞれ回動軸29を有するヒンジ状の接続部材30で底面側が接続されており、回動軸29は隣り合う皿部材28の当接部付近に位置するように設けられている。この接続部材30としてカバー部材27等を接続するヒンジ部材23を用いてもよい。
【0030】
他方の端部目地プレート本体26cの角部目地プレート12側の側面には、ヒンジ部材23を介してカバー部材27が設けられている。このヒンジ部材23は、他方の端部目地プレート本体26cの底面とカバー部材27の底面を接続するように設けられている。
【0031】
このカバー部材27は平面視において矩形状の板材で、本実施形態ではその底面には前記切り欠き25と連続するように傾斜部31が形成されている。切り欠き25及び傾斜部31が形成されている部分の長さとしては、地震による前後方向の揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されている。なお、カバー部材27の上面に目地プレート8等と同様の化粧板22を設けてもよい。
【0032】
角部目地プレート12は、
図6に示すように、本実施形態では浅皿状で端部目地プレート9側の上面に摩擦用の緩やかな傾斜面32が形成された角部目地プレート本体33と、角部目地プレート本体33に充填されたセメントやモルタル等の充填部材21と、充填部材21の上部を覆うように設けられた化粧板22と、角部目地プレート本体33の他端部にヒンジ部材23を介して設けられたカバープレート24とで構成されている。この角部目地プレート12には一端部側に1対の杭ケース20が設けられており、本実施形態では、摺動部材11の係止杭5に係合しているが、端部目地プレート9側の杭ケース20は、第1の目地プレート支持部に設けられた係止杭5に係合するように設けてもよく、このような場合には角部目地プレート12が前後方向にスライド移動できるよう、杭ケース20を長尺とすることが望ましい。また、杭ケース20(特に他方の躯体4の壁面4a側の杭ケース20)は、角部目地プレート12が端部目地プレート9等と上面が略水平になるように、摺動部材11の上面に形成又は固定したゲタ部11aの上に設けることが望ましい。
【0033】
角部目地プレート12の前後方向の寸法は、地震による前後方向の揺れ動き幅の2倍以上になるように形成されており、前記傾斜面32は地震による前後方向の揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されている。そのため、切り欠き25や傾斜部31、傾斜面32の角度が非常にゆるくなっている(緩斜面になっている)ため、地震によって傾斜面32の上面を切り欠き25や傾斜部31が乗り上がっても、カバー部材27や端部目地プレート9が大きく跳ね上がることがなく、安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。なお、摩擦用(せり上がり用)の緩やかな傾斜面32の傾斜角(例えば角部目地プレート本体33の底面に対する傾斜面32のスベリ摩擦角)は、好ましくは、10度乃至40度、望ましくは11度乃至20度である。
【0034】
角部目地プレート12は、本実施形態では、摺動部材11に設けられた1対の係止杭5が角部目地プレート12の1対の杭ケース20に挿入されているが、一端部側の一方の端部が前記第1の目地プレート支持部6に前後方向にスライド移動可能に支持され、一端部の他方の端部(他方の躯体4の壁面4a側の端部)は、摺動部材11に支持されるように設けてもよい。摺動部材11には、係止杭5が設けられており、この係止杭5が角部目地プレート12に設けられた1対の杭ケース20に挿入される。なお、摺動部材11に一端部の全体が支持されるように設けてもよい。角部目地プレート12が前後方向に揺れ動いた場合でも係止杭5と干渉しないように、第1の目地プレート支持部6に設けられた係止杭5が挿入される杭ケース20は、前後方向に長いものを用いることが望ましく、摺動部材11に1対の係止杭5を設けて角部目地プレートを支持する場合には、係止杭5から摺動部材11の端部までの長さを地震による揺れ動き幅より大きくする又は、摺動部材11に係止杭5が入り込める切り欠き等を設けることが望ましい。
【0035】
通常時(
図1の状態)においては、端部目地プレート9の切り欠き25が形成された部位及びカバー部材27は、角部目地プレート12の摩擦用の緩やかな傾斜面32の上面に乗るように、すなわち、切り欠き25と傾斜面32が略当接するように配置される。また、端部目地プレート9と角部目地プレート12の上面が略平坦となるように配置され、目地部2(角部2a及び左右方向の目地部2b)を塞ぐことができる。
【0036】
なお、略当接するとは、ぴったりと面接触している状態だけでなく、部分的に接触し、その他の部分は僅かな間隙を有して接近している状態や、僅かな間隙を有して接近している状態も含むものである。
また、本実施形態では、浅皿状の目地プレート本体19等を使用した目地プレート8、端部目地プレート9、角部目地プレート12を用いたが、板状の部材を用いて目地プレート8、端部目地プレート9、角部目地プレート12を形成してもよい。
【0037】
ところで、一方の躯体3の前後方向の目地部2c側の壁面3aと他方の躯体4の壁面4aとの間の縦方向の隙間(前後方向の目地部2cが開口している部位)については壁面用目地装置等(図示せず)を用いて塞ぐことが望ましい。
地震で左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き左右方向の目地部2bが狭くなると、
図7に示すように、目地プレート8、端部目地プレート9及び角部目地プレート12の他端部が第2の目地プレート支持部7の乗り上げ傾斜面18により上方にせり上がり地震による揺れ動きを吸収する。
【0038】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き左右方向の目地部2bが広くなると、
図8に示すように、目地プレート8、端部目地プレート9及び角部目地プレート12の他端部が第2の目地プレート支持部7の上面を左右方向にスライド移動し、地震による揺れ動きを吸収する。
【0039】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが狭くなると、
図9に示すように、角部目地プレート12が端部目地プレート9と重なり幅が大きくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。
【0040】
この時、前述したように切り欠き25や傾斜部31、傾斜面32の角度が緩斜面になっているため、地震によって傾斜面32の上面に端部目地プレート9の切り欠き25やカバー部材27の傾斜部31が乗り上がっても、カバー部材27や端部目地プレート9が大きく跳ね上がることがなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0041】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが広くなると、
図10に示すように、端部目地プレート9やカバー部材27が角部目地プレート12の傾斜面32の上面を、その重なり幅が小さくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。傾斜面32の寸法は地震による揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されており、端部目地プレート9とカバー部材27はヒンジ部材23により接続されているため、大きな段差が生じることなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0042】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図11乃至
図15に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図11乃至
図15に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、分割されていない端部目地プレート本体26Aを用い、この端部目地プレート本体26Aの角部目地プレート12側の側面にヒンジ部材23を介して薄板状のカバー部材27Aを設けた端部目地プレート9Aにした点で、このような端部目地プレート9Aを用いた床用目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態では、端部目地プレート本体26Aは浅皿状に形成されており、この端部目地プレート本体26Aに充填部材21が充填され、その上面に化粧板22が設けられている。
【0044】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが狭くなると、
図14に示すように、角部目地プレート12が端部目地プレート9と重なり幅が大きくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。
【0045】
この時、薄板状のカバー部材27Aを備え、傾斜面32の角度が緩斜面になっているため、地震によって傾斜面32の上面に端部目地プレート9Aの切り欠き25が乗り上がっても、カバー部材27Aや端部目地プレート9Aが大きく跳ね上がることがなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0046】
左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、前後方向の目地部2cが広くなると、
図10に示すように、端部目地プレート9Aやカバー部材27Aが角部目地プレート12の傾斜面32の上面を、その重なり幅が小さくなるように前後方向にスライド移動して、揺れ動きを吸収する。傾斜面32の寸法は地震による揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されており、端部目地プレート9Aとカバー部材27Aはヒンジ部材23により接続されているため、大きな段差が生じることなく安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は床用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0048】
1、1A:床用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:係止杭、 6:第1の目地プレート支持部、
7:第2の目地プレート支持部、 8:目地プレート、
9、9A:端部目地プレート、 10:ガイドレール、
11:摺動部材、 12:角部目地プレート、
13:当接手段、 14:支持部材、
15:滑動部材、 16:係合片、
17:被係合部材、 18:乗り上げ傾斜面、
19:目地プレート本体、 20:杭ケース、
21:充填部材、 22:化粧板、
23:ヒンジ部材、 24:カバープレート、
25:切り欠き、 26、26A:端部目地プレート本体、
27、27A:カバー部材、 28:皿部材、
29:回動軸、 30:接続部材、
31:傾斜部、 32:傾斜面、
33:角部目地プレート本体。