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特開2023-149730粘着シート、積層体及び粘着シートの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149730
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粘着シート、積層体及び粘着シートの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231005BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231005BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058467
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 直人
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 睦之
(72)【発明者】
【氏名】西田 雅樹
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK25B
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05B
4F100EH46
4F100EJ05B
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JA05B
4F100JA07B
4F100JL13B
4J004AB01
4J004BA02
4J004DB02
4J004FA01
4J040DF001
4J040EC002
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB05
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】樹脂板とフィルム基材との積層体を形成するための粘着剤として適しており、特に積層体中の樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行ったとしても反り及び発泡も生じにくい積層体を形成するための粘着剤として適した粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂板とフィルム基材とを貼り合わせるための粘着剤層を備える粘着シートであって、前記粘着剤層は、質量平均分子量が50万以上、200万以下のアクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体と、質量平均分子量が3000以上、50000以下のアクリル低分子量ポリマー(B)とを含有し、前記アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、カルボキシル基含有単量体単位が3~20質量部であり、前記アクリル低分子量ポリマー(B)のTgが60℃以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂板とフィルム基材とを貼り合わせるための粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、質量平均分子量が50万以上、200万以下のアクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体と、質量平均分子量が3000以上、50000以下のアクリル低分子量ポリマー(B)とを含有し、
前記アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、カルボキシル基含有単量体単位が3~20質量部であり、
前記アクリル低分子量ポリマー(B)のTgが60℃以上である、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層は、前記アクリル高分子量ポリマー(A)100質量部あたり、前記アクリル低分子量ポリマー(B)を3~10質量部含有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さが5~50μmである、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記架橋体は、エポキシ架橋剤由来の構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着シートと、樹脂板とを備える、積層体。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着シートの使用方法であって、
前記粘着シートとフィルム基材とを貼り合わせて粘着剤付きフィルムを得る工程、
前記粘着剤付きフィルムと樹脂板との貼り合せにより積層体を得る積層工程、及び、
前記積層体を機械加工による処理を施す工程、
を備える、粘着シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、積層体及び粘着シートの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置、表示装置と組み合わせて用いられるタッチパネルなどの入力装置が広く用いられている。これらタッチパネル等の入力装置には、その視認性を向上させるなどの目的で、タッチパネルを構成する機能性フィルム(フィルム基材)表面に、樹脂板等のカバーパネルが貼り合わされる。機能性フィルムとカバーパネルとの貼り合わせには粘着シートが使用される。
【0003】
機能性フィルムとカバーパネルとを粘着フィルムで貼り合わせにあたっては、例えば、特許文献1には、いわゆるアフターキュア工程を利用する方法が開示されている。この方法では、機能性フィルムとカバーパネルとを粘着フィルムで貼り合わせた後、アフターキュア、すなわち、紫外線を照射することで機能性フィルムとカバーパネルとを強固に接着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-41091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外線を照射して機能性フィルムとカバーパネルとを接着させて得られる積層体は、反りが発生しやすく、また、積層体の加工時に積層体が割れやすいという問題があった。また、機能性フィルムとカバーパネルとを貼り合わせるために紫外線を照射する工程(アフターキュア)に付す必要があることから、積層体を加工するにも、積層させてアフターキュア工程を別途経る必要があり、工程数が多いものであった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、樹脂板とフィルム基材との積層体を形成するための粘着剤として適しており、特に積層体中の樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行ったとしても反り及び発泡が生じにくい積層体を形成するための粘着剤として適した粘着シート及び該粘着シートを備える積層体並びに粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の成分で形成される粘着剤層を使用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
樹脂板とフィルム基材とを貼り合わせるための粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、質量平均分子量が50万以上、200万以下のアクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体と、質量平均分子量が3000以上、50000以下のアクリル低分子量ポリマー(B)とを含有し、
前記アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、カルボキシル基含有単量体単位が3~20質量部であり、
前記アクリル低分子量ポリマー(B)のTgが60℃以上である、粘着シート。
項2
前記粘着剤層は、前記アクリル高分子量ポリマー(A)100質量部あたり、前記アクリル低分子量ポリマー(B)を3~10質量部含有する、項1に記載の粘着シート。
項3
前記粘着剤層の厚さが5~50μmである、項1又は2に記載の粘着シート。
項4
前記架橋体は、エポキシ架橋剤由来の構造を有する、項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
項5
項1~4のいずれか1項に記載の粘着シートと、樹脂板とを備える、積層体。
項6
項1~4のいずれか1項に記載の粘着シートの使用方法であって、
前記粘着シートとフィルム基材とを貼り合わせて粘着剤付きフィルムを得る工程、
前記粘着剤付きフィルムと樹脂板との貼り合せにより積層体を得る積層工程、及び、
前記積層体を機械加工による処理を施す工程、
を備える、粘着シートの使用方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着シートは、樹脂板とフィルム基材との積層体を形成するための粘着剤として適しており、特に積層体中の樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行ったとしても反り及び発泡が生じにくい積層体を形成するための粘着剤として適している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
1.粘着シート
本発明の粘着シートは、樹脂板とフィルム基材とを貼り合わせるための粘着剤層を備え、前記粘着剤層は、質量平均分子量が50万以上、200万以下のアクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体と、質量平均分子量が3000以上、50000以下のアクリル低分子量ポリマー(B)とを含有し、
前記アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、カルボキシル基含有単量体単位が3~20質量部であり、
前記アクリル低分子量ポリマー(B)のTgが60℃以上である。
【0012】
本発明の粘着シートは、樹脂板とフィルム基材との貼り合わせに適しており、すなわち、樹脂板とフィルム基材との積層体を形成するための粘着剤として適している。また、本発明の粘着シートを用いて得られる積層体では、該積層体を構成する樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行うことができ、同時に加工を行ったとしても積層体は、反りが生じにくく、また、粘着シートに発泡も生じにくい。従って、本発明の粘着シートは、樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行ったとしても、反り及び粘着シートの発泡が生じにくい積層体を形成するための粘着剤として適している。
【0013】
なお、本明細書において、粘着シートによって、積層された樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行うことを、本明細書では「多層同時加工」と表記することもある。
【0014】
以上のように、本発明の粘着シートによれば、樹脂板とフィルム基材との多層同時加工に適したものであり、斯かる加工で得られる積層体は、反りが発生しにくく粘着シートの発泡も生じにくい。
【0015】
本発明の粘着シートは粘着剤層を備える。粘着剤層は、樹脂板とフィルム基材とを接着させるための層である。粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤層である。
【0016】
粘着剤層は、前述のように、アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体と、アクリル低分子量ポリマー(B)とを含有する。
【0017】
<アクリル高分子量ポリマー(A)>
アクリル高分子量ポリマー(A)は、質量平均分子量が50万以上、200万以下である。これにより、粘着シートは、優れた粘着性能を発揮することができ、また、反りが発生しにくく粘着シートの発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。
【0018】
アクリル高分子量ポリマー(A)の質量平均分子量は60万以上であることが好ましく、70万以上であることがより好ましく、80万以上であることがさらに好ましく、90万以上であることが特に好ましい。また、アクリル高分子量ポリマー(A)の質量平均分子量の上限は特に制限されず、経済的観点及び良好な塗工性が得られやすい観点から、180万以下であることが好ましく、160万以下であることがより好ましく、150万以下であることがさらに好ましく、130万以下であることが特に好ましい。
【0019】
アクリル高分子量ポリマー(A)の質量平均分子量及び後記するアクリル低分子量ポリマー(B)の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算で求めた値である。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μL
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工製)Mw=1320~2500000迄の10サンプルによる校正曲線を使用する。
【0020】
アクリル高分子量ポリマー(A)は質量平均分子量が上記範囲である限り、その種類は特に限定されず、例えば、従来の粘着剤層に用いられている(メタ)アクリル系共重合体を広く挙げることができる。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0021】
アクリル高分子量ポリマー(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を有することができる。本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し構造単位(単量体単位ともいう)である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。アクリル高分子量ポリマー(A)に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は1種を単独とすることができ、2種以上の単位を含むこともできる。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソボロニルからなる群より選ばれる少なくとも1種類が好ましい。
【0023】
アクリル高分子量ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他のアクリル系単量体単位を有してもよい。他のアクリル系単量体単位としては、架橋性官能基を有する単量体単位を挙げることができ、例えば、ヒドロキシ基含有単量体単位、カルボキシ基含有単量体単位を挙げることができる。これら単量体単位はアクリル高分子量ポリマー(A)中に1種含むことができ、あるいは、2種以上を含むこともできる。
【0024】
ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位は、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体に由来する。ヒドロキシ基含有アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有アクリル系単量体単位は、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0026】
アクリル高分子量ポリマー(A)は、架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位を含むことが好ましく、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位及び/又はカルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含むことがより好ましく、カルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含むことがさらに好ましく、ヒドロキシ基含有アクリル系単量体単位を含まず、カルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含むことが特に好ましい。アクリル高分子量ポリマー(A)がカルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含む場合、より優れた粘着性能を発揮することができ、しかも、より反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。
【0027】
アクリル高分子量ポリマー(A)は、架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位を含む場合、その含有量は、例えば、前記アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位が3~20質量部であることが好ましい。これにより、より反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。前記アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位は5~15質量部であることが好ましい。
【0028】
特に、アクリル高分子量ポリマー(A)がカルボキシル基含有単量体単位を有することが好ましく、アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、カルボキシル基含有単量体単位が3~20質量部である場合は、特に反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。アクリル高分子量ポリマー(A)中の構造単位の総質量100質量部に対し、カルボキシル基含有単量体単位は、5質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがさらに好ましく、また、18質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0029】
アクリル高分子量ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位及び架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位(例えば、カルボキシル基含有単量体単位)以外の単量体単位(他の単量体単位)を有することもできる。他の単量体単位の含有量は(メタ)アクリル系共重合体の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%であることがより好ましい。アクリル高分子量ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位及び架橋性官能基を有するアクリル系単量体単位のみで形成されていても良く、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位、ヒドロキシ基含有単量体単位及びカルボキシ基含有単量体単位のみで形成されていても良く、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位及びカルボキシ基含有単量体単位のみで形成されていてもよい。
【0030】
アクリル高分子量ポリマー(A)のTg(ガラス転移温度)は特に限定されない。例えば、アクリル高分子量ポリマー(A)のTgは-40℃以上とすることができ、この場合、粘着シートは、優れた粘着性能を発揮することができ、また、反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。アクリル高分子量ポリマー(A)のTgは-38℃以上であることが好ましく、-36℃以上であることがより好ましく、-35℃以上であることがさらに好ましい。アクリル高分子量ポリマー(A)のTgは10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明において、アクリル高分子量ポリマー(A)及び後記するアクリル低分子量ポリマー(B)のTg(ガラス転移温度)は、該ポリマーの合成に用いられる単量体の組成に基づいて、下記Foxの式により求められるTgをいう。
Foxの式:1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+・・・+(Wm/Tgm

ここで、W1+W2+・・・+Wm=1
式中、Tgは架橋性アクリル共重合体(A)のガラス転移温度(単位:K)であり、Tg1、Tg2、・・・、Tgmは架橋性アクリル共重合体(A)を構成するm種類の単量体(mは整数)のそれぞれのホモポリマーのガラス転移温度であり、W1、W2、・・・、Wmは架橋性アクリル共重合体(A)における各構成単位の質量分率である。なお、Tg1とW1とは、互いに対応する関係にあり、つまり、Tg1のガラス転移温度を示すホモポリマーを構成するモノマーは、質量分率がW1である構成単位を形成するためのモノマーと同一である。同様に、Tg2とW2、・・・TgmとWmとは、互いに対応する関係にある。
【0032】
前述のホモポリマーのガラス転移温度としては、例えば、Polymer Handbook 4th Edition (Wiley-Interscience 2003)に記載の値を用いることができる。斯かるハンドブックに記載が無い場合は、例えば、示差走査型熱量計(DSC)によりホモポリマーのガラス転移温度を測定できる。DSCの測定条件としては、試料5mg、窒素雰囲気下とし、1回目の測定(1st RUN)で昇温速度5℃/分で-100℃から200℃迄昇温した後、降温速度5℃/分で-100℃まで冷却し、さらに2回目の測定(2nd RUN)で昇温速度5℃/分で-100℃から200℃まで昇温する。ここでガラス転移温度は、2nd RUNにおいて-100℃から200℃迄昇温したときに測定されるDSC曲線のベースラインが吸熱方向にシグモイド型に変化する領域において、シグモイド型に変化する領域より低温側のベースラインの延長線と、シグモイドにおける変曲点の接線の交点を指す。
【0033】
アクリル高分子量ポリマー(A)は、例えば、公知の方法で製造することができ、例として、(メタ)アクリルモノマーの重合反応によって製造することができる。この場合、各種の重合方法を採用することができ、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0034】
<アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体>
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層は上述したアクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体を含有する。アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体とは、アクリル高分子量ポリマー(A)が、例えば、架橋剤で架橋された構造を有することを意味する。
【0035】
前記架橋剤としては、アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋反応を進行させることができるための成分を広く挙げることができる。特に、架橋剤は、アクリル高分子量ポリマー(A)中のカルボキシ基又はヒドロキシル基と反応することができる成分を広く挙げることができる。架橋剤は、二官能型であることが好ましく、三官能以上であることが好ましい。
【0036】
斯かる架橋剤は、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。
【0037】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;が挙げられる。イソシアネート化合物は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。市販品の例としては、トリレンジイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)等が挙げられる。
【0038】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、TETRAD-C(三菱ガス化学社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
【0039】
中でも、架橋剤は、イソシアネート化合物及び/又はエポキシ化合物であることが好ましく、エポキシ化合物であることがより好ましい。すなわち、アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体は、エポキシ架橋剤由来の構造を有することが好ましい。
【0040】
<アクリル低分子量ポリマー(B)>
アクリル低分子量ポリマー(B)は、質量平均分子量が3000以上、50000以下である。アクリル低分子量ポリマー(B)は、粘着剤層において、いわゆる粘着付与剤としての機能を発揮することができる。これにより、粘着シートは、優れた粘着性能を発揮することができ、また、アクリル高分子量ポリマー(A)と組み合わされることで、反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。
【0041】
アクリル低分子量ポリマー(B)の質量平均分子量は3500以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましく、4500以上であることがさらに好ましく、5000以上であることが特に好ましい。また、アクリル低分子量ポリマー(B)の質量平均分子量は40000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましく、20000以下であることがさらに好ましく、12000以下であることが特に好ましい。
【0042】
アクリル低分子量ポリマー(B)は質量平均分子量が上記範囲である限り、その種類は特に限定されず、例えば、従来の粘着付与剤として用いられているアクリルポリマーを広く挙げることができる。
【0043】
アクリル低分子量ポリマー(B)は、例えば、アクリル高分子量ポリマー(A)と同様、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を有することができる。従って、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては前述同様、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。アクリル低分子量ポリマー(B)に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位は1種を単独とすることができ、2種以上の単位を含むこともできる。
【0044】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、アクリル低分子量ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸メチル単位、(メタ)アクリル酸n-ブチル単位及び(メタ)アクリル酸イソボロニル単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むこと好ましく、(メタ)アクリル酸メチル単位及び(メタ)アクリル酸イソボロニル単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことより好ましい。
【0045】
アクリル低分子量ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他のアクリル系単量体単位を有してもよいが、粘着付与剤としての性能が高まりやすいという点で、前述のヒドロキシ基含有単量体単位及びカルボキシ基含有単量体単位を含まないことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単位を含まないことがより好ましい。すなわち、アクリル低分子量ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位のみで形成されていることが好ましい。アクリル低分子量ポリマー(B)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単位を含む場合、その含有量はアクリル低分子量ポリマー(B)の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%であることがより好ましく、1質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
アクリル低分子量ポリマー(B)のTgは60℃以上である。この場合、粘着シートは、優れた粘着性能を発揮することができ、また、反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。アクリル低分子量ポリマー(B)のTgは80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがよりさらに好ましく、105℃以上であることが特に好ましい。アクリル低分子量ポリマー(B)のTgは150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。
【0047】
アクリル低分子量ポリマー(B)は、例えば、公知の方法で製造することができ、例として、(メタ)アクリルモノマーの重合反応によって製造することができる。この場合、各種の重合方法を採用することができ、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0048】
<粘着剤層>
粘着剤層は、アクリル高分子量ポリマー(A)及びアクリル低分子量ポリマー(B)を含む。アクリル高分子量ポリマー(A)及びアクリル低分子量ポリマー(B)の含有割合は特に限定されない。例えば、粘着剤層は、アクリル高分子量ポリマー(A)100質量部あたり、アクリル低分子量ポリマー(B)を0.5~50質量部含むことが好ましく、1~30質量部含むことがより好ましく、2~20質量部含むことがさらに好ましく、3~10質量部含むことが特に好ましい。
【0049】
粘着剤層は、アクリル高分子量ポリマー(A)及びアクリル低分子量ポリマー(B)を含む他、本発明の効果が阻害されない限りは他の成分を含むことができる。いわゆるアフターキュア型の粘着シートは、アフターキュア性を付与すべく光重合開始剤や単官能又は多官能単量体を含むが、本発明の粘着剤層は、前述の多層同時加工を実現するという点で、光重合開始剤、単官能単量体及び多官能単量体を含まないことが好ましい。
【0050】
粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の各種の粘着剤用の添加剤を含むことができる。斯かる添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0051】
粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率は、例えば、0.2~2MPaとすることができる。これにより、粘着シートは多層同時加工性に優れ、反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。
【0052】
粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率が0.25MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、また、1.8MPa以下であることが好ましく、1.6MPa以下であることがより好ましく、1.4MPa以下であることがさらに好ましく、1.2MPa以下であることが特に好ましい。
【0053】
粘着剤層のゲル分率は60%以上であることが好ましい。これにより、粘着シートは優れた粘着力を有することができ、また、多層同時加工性も向上しやすい。
【0054】
粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定した値である。まず、粘着シート(粘着剤層)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を120℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定する。得られた乾燥質量から下記式1
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着剤層の採取質量)×100・・・式1
によりゲル分率を求めることができる。
【0055】
粘着剤層の厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。例えば、粘着剤層の厚みは5~50μmであることが好ましい。この場合、多層同時加工性が向上しやすく、また、反りが発生しにくく発泡も生じにくい積層体を形成しやすい。粘着剤層の厚みは10~40μmであることがより好ましい。なお、粘着剤層の厚みとは、粘着剤層が多層の積層構造を有する場合は、各層の厚みの総合計を意味する。
【0056】
粘着剤層の対ガラス粘着力は、例えば、10N/25mm以上である。粘着シートの対ガラス粘着力を測定は、JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じ、測定条件の詳細は実施例に記載のとおりである。
【0057】
粘着剤層は単層構造とすることができ、あるいは、単層の粘着剤層を複数積層した多層構造を有することもできる。
【0058】
粘着剤層の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着シートと同様の方法で、粘着剤層を形成することができる。具体的には、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物を用いて、粘着剤層を形成できる。
【0059】
粘着剤組成物は、前記アクリル高分子量ポリマー(A)と、前記架橋剤と、前記アクリル低分子量ポリマー(B)とを少なくとも含む。粘着剤組成物は、架橋剤を含むことで、前記アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体を形成することができる。
【0060】
粘着剤組成物は、前記アクリル高分子量ポリマー(A)100質量部に対し、前記アクリル低分子量ポリマー(B)を0.5~50質量部含むことが好ましく、1~30質量部含むことがより好ましく、2~20質量部含むことがさらに好ましく、3~10質量部含むことが特に好ましい。
【0061】
粘着剤組成物は、前記アクリル高分子量ポリマー(A)100質量部に対し、前記架橋剤を0.005~5質量部含むことが好ましく、0.01~3質量部含むことがより好ましく、0.02~1質量部含むことがさらに好ましく、0.03~1質量部含むことが特に好ましい。
【0062】
粘着剤組成物は、本発明の効果が阻害されない限りは他の成分を含むことができる。例えば、粘着剤組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。粘着剤組成物が溶剤を含むことで粘着剤組成物の塗工性が向上し、粘着シートを形成しやすくなる。
【0063】
前記溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0064】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は特に限定されず、前記アクリル高分子量ポリマー(A)100質量部に対し、25~500質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましい。加えて、粘着剤組成物の全質量に対する溶剤の含有割合は、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。粘着剤組成物に含まれる溶剤は、1種単独とすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。
【0065】
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有することもできる。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0066】
なお、いわゆるアフターキュア型の粘着シートを得る場合は、アフターキュア性を付与すべく、粘着剤組成物は光重合開始剤や単官能又は多官能単量体を含むが、本発明では、前述の多層同時加工を実現するという点で、粘着剤組成物は光重合開始剤、単官能単量体及び多官能単量体を含まないことが好ましい。
【0067】
上記の粘着剤組成物を調製する方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着剤組成物の調製方法を広く採用することができる。
【0068】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層を備える。粘着シートは、例えば、粘着剤層のみで構成することができる。あるいは、粘着シートは、本発明の効果が阻害されない限り、粘着剤層以外の層を有することもできる。
【0069】
本発明の粘着シートは、片面粘着シートであってもよいし、両面粘着シートであってもよいが、後記する積層体を形成する点で、両面粘着シートであることが好ましい。
【0070】
本発明の粘着シートは、剥離シート付き粘着シートであってもよい。剥離シートは粘着シートの片面又は両面に直接貼り合わされ得る。
【0071】
剥離シートとしては、公知の剥離シートを広く適用することができ、例えば、剥離シート用基材の片面に剥離剤層が形成されてなる剥離性積層シートを挙げることができ、剥離剤層を構成する剥離剤も限定されず、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。剥離性積層シートは、市販品から入手することもでき、例えば、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、東洋紡(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0072】
剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することもできる。
【0073】
粘着シートの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く適用することができる。中でも、剥離シート上に上述した粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、この塗膜を加熱する工程を含む製造方法により、粘着シートを形成することが好ましい。斯かる製造方法において、粘着剤組成物に溶剤が含まれる場合は、前記加熱する工程で溶剤が除去されると同時に前記アクリル高分子量ポリマー(A)および架橋剤の反応が進行して硬化物が形成される。具体的には、前記アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋性官能基(例えば、カルボキシ基)が架橋剤と反応して、前記アクリル高分子量ポリマー(A)の架橋体が形成される。粘着剤組成物は加熱により硬化し、得られた硬化物が粘着シートの粘着剤層である。
【0074】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、アプリケーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0075】
粘着剤組成物を塗工するにあたって使用する基材は、特に限定されない。例えば、粘着剤組成物は、樹脂製の基材、ガラス製の基材等の各種基材に塗工することができる。例えば、剥離シート付き粘着シートを得る場合は、基材として剥離シートを選択できる。また、粘着剤組成物は接着対象とする部材上に直接塗工することもできる。
【0076】
粘着剤組成物の塗工後の厚みも特に制限されず、目的とする粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。
【0077】
塗膜を加熱する工程では、加熱温度は特に限定されず、例えば、50~150℃とすることが好ましい。加熱時間は、加熱温度、塗膜の厚み及び粘着剤組成物の溶剤の含有量によって適宜調節することができ、例えば、1~60分とすることができる。塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。また、加熱後は、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施すことが好ましい。エージング処理は、例えば、23℃で7日間静置して行うことができる。
【0078】
本発明の粘着シートは、樹脂板とフィルム基材との貼り合わせに適しており、すなわち、樹脂板とフィルム基材との積層体を形成するための粘着剤として適しているので、例えば、各種表示装置に使用されるパネル用の粘着剤として好適である。また、本発明の粘着シートは、光学デバイス等に使用される光学部材を貼りあわせるために好適である。
【0079】
2.積層体
本発明の積層体は、前述の本発明の粘着シートと、樹脂板とを備える。粘着シートが粘着剤層のみで形成されている場合は、本発明の積層体は、粘着剤層と、樹脂板とを備える。本発明の積層体において、樹脂板は、例えば、粘着剤シートの両面又は片面に直接貼り合わされる。本発明の積層体において、粘着シート(粘着剤層)は、樹脂板の少なくとも片面に貼り合わされる層であって、粘着機能を発揮する層である。
【0080】
本発明の積層体は、樹脂板の他、フィルム基材を備えることもできる。この場合、積層体は、例えば、粘着剤シートの一方の面に樹脂板が直接貼り合わされ、他方の面にフィルム基材が直接貼り合わされる。
【0081】
本発明の積層体において、樹脂板は、例えば、タッチパネルやカーナビパネル等の液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置に適用することができる樹脂板を広く採用することができる。
【0082】
樹脂板としては特に制限されるものではなく、例えば、公知の透明又は半透明の樹脂板を用いることができる。例えば、ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース,ポリイミド、セルロースアシレートなどが例示される。これらの中でも、光学特性や耐熱性が良好であって、機械的強度、寸法安定性、耐候性、経済性に優れていることから、特にアクリル樹脂板やポリカーボネート樹脂板であることがさらに好ましい。また、要求に応じてアクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板との積層品でもよく、2種2層板や2種3層板でもよい。
【0083】
樹脂板の厚みは特に限定されず、例えば、従来タッチパネル等の入力装置に適用され得るカバーパネルなどと同様の厚みを採用することができる。樹脂板の厚みは、例えば、200~10000μmとすることができ、樹脂板の強度や機械加工時の加工性の観点から400~5000μmの範囲とすることが好ましく、400~2000μmの範囲がより好ましい。
【0084】
フィルム基材の種類は特に限定されず、例えば、公知のフィルムを広く適用することができる。フィルム基材としては、タッチパネル等の入力装置に適用され得るカバーパネルに対して貼り合わされるフィルムを広く挙げることができる。斯かるフィルム基材としては、例えば、各種樹脂フィルム等を挙げることができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムが広く例示される。また、フィルムの粘着剤層が貼り合わされる面には易接着層が設けられていてもよい。さらに、フィルム基材の粘着剤層とは逆面にはハードコート層や反射防止層、防汚層、紫外線吸収層などの機能層が備えられていてもよい。
【0085】
フィルム基材の厚みは特に限定されず、例えば、従来タッチパネル等の入力装置に適用され得るカバーパネルに対して貼り合わされるフィルムと同様の厚みを採用することができる。フィルム基材の厚みは、例えば、10~200μmとすることができる。
【0086】
本発明の積層体は、各種用途に適用することができ、例えば、光学デバイス、画像表示装置等の好適に使用することができる。特に、本発明の積層体は、透明性の高い粘着シートで貼りあわされて形成されているので、光学デバイス、画像表示装置等に適用した場合に画像の意匠性及び視認性をより向上させることができる。
本発明の積層体は、前述の本発明の粘着シートを備えるので、反りが発生しにくい。また、積層体では樹脂板あるいはフィルム基材由来のガスによって粘着シートの気泡が発生することがあるが、本発明の積層体は、前述の粘着シートを備えるので、粘着シートに発泡も生じにくく、すなわち、耐アウトガス性にも優れるものである。
【0087】
従って、本発明の積層体は、タッチパネルやカーナビのカバーパネルに好適に使用することができる。とりわけ、視認性向上のために貼り合わせられる機能性フィルム(フィルム基材)とカバーパネルとを同時加工した場合であっても、積層体は反りが発生しにくく発泡も生じにくい。本発明の積層体によれば、表示装置等に対し、意匠性を向上させることができると共に、画面全体の視認性の向上ももたらすことができる。
【0088】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の積層体の製造方法を広く採用することができる。例えば、本発明の粘着シートと機能性フィルムとを貼り合わせて粘着剤付きフィルムを得る工程1、及び、前記粘着剤付きフィルムと樹脂板との貼り合せにより積層体を得る積層工程2を備えることができる。工程1は、工程2の後であっても前であっても良い。
【0089】
上記のように得られた積層体に対し、機械加工による処理を施すこともでき、これにより、適宜の型に積層体を成形加工することができる。
【0090】
3.粘着シートの使用方法
本発明の粘着シートは、上記積層体への使用に適したものであり、機能性フィルムとカバーパネルとを積層させることができる。斯かる積層体において、機能性フィルムとカバーパネルとを同時加工した場合であっても、積層体は反りが発生しにくく発泡も生じにくい。
【0091】
従って、本発明の粘着シートの使用方法は、粘着シートと機能性フィルムとを貼り合わせて粘着剤付きフィルムを得る工程1、前記粘着剤付きフィルムと樹脂板との貼り合せにより積層体を得る積層工程2、及び、前記積層体を機械加工による処理を施す工程3を備えることが好ましい。
【0092】
工程3の機械加工による処理の方法は特に限定されず、公知の機械加工による処理方法を本発明でも広く採用することができる。機械加工の方法としては打ち抜き加工や切削加工を採用することができる。中でも、所望の大きさや形状に成形することができる点で、切削加工が好ましい。
【実施例0093】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0094】
(製造例1-1;アクリル高分子量ポリマー(A-1))
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内で、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸ブチル(BA)及びアクリル酸(AA)の質量比が30:60:10である混合モノマー100質量部を、重合溶媒である酢酸エチル120質量部中、(ABVN(アゾビスジメチルバレロニトリル)0.3質量部の存在下で65℃に加熱して重合させた。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、固形分濃度が21質量%であるアクリル高分子量ポリマー(A-1)(表1において「A-1」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル高分子量ポリマー(A-1)は、質量平均分子量が110万、ガラス転移温度が-26℃であった。
【0095】
(製造例1-2;アクリル高分子量ポリマー(A-2))
混合モノマーを、MA、BA、アクリル酸イソボロニル(IBXA)及びAAの質量比が10:67:15:8である混合モノマーに変更し、ABVNと酢酸エチルの添加量を調整したこと以外は製造例1-1と同様の方法で固形分濃度が21質量%であるアクリル高分子量ポリマー(A-2)(表1において「A-2」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル高分子量ポリマー(A-2)は、質量平均分子量が100万、ガラス転移温度が-26℃であった。
【0096】
(製造例1-3;アクリル高分子量ポリマー(A-3))
混合モノマーを、MA、BA、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)及びAAの質量比が25:50:10:15である混合モノマーに変更し、ABVNと酢酸エチルの添加量を調整したこと以外は製造例1-1と同様の方法で固形分濃度が21質量%であるアクリル高分子量ポリマー(A-3)(表1において「A-3」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル高分子量ポリマー(A-3)は、質量平均分子量が100万、ガラス転移温度が-26℃であった。
【0097】
(製造例1-4;アクリル高分子量ポリマー(A-4))
混合モノマーを、BA及びアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)の質量比が80:20である混合モノマーに変更し、ABVNと酢酸エチルの添加量を調整したこと以外は製造例1-1と同様の方法で固形分濃度が40質量%であるアクリル高分子量ポリマー(A-4)(表1において「A-4」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル高分子量ポリマー(A-4)は、質量平均分子量が60万、ガラス転移温度が-46℃であった。
【0098】
(製造例1-5;アクリル高分子量ポリマー(A-5))
混合モノマーを、BA及びAAの質量比が90:10である混合モノマーに変更し、ABVNと酢酸エチルの添加量を調整したこと以外は製造例1-1と同様の方法で固形分濃度が45質量%であるアクリル高分子量ポリマー(A-5)(表1において「A-5」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル高分子量ポリマー(A-5)は、質量平均分子量が50万、ガラス転移温度が-42℃であった。
【0099】
(製造例2-1;アクリル低分子量ポリマー(B-1))
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置及び温度計を備えた反応装置に、酢酸エチル30質量部、及びトルエン20質量部を加えて加熱し、還流温度で10分間維持した。次いで、還流温度条件下で、メタクリル酸メチル(MMA)のみからなるモノマーを300質量部、酢酸エチル15質量部、トルエン10質量部及び重合開始剤としてジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601、和光純薬工業製)5質量部の混合液を180分間にわたって逐次滴下し、滴下終了後、更に180分間の重合反応を行った。反応終了後、固形分濃度が40質量%になるように酢酸エチルで希釈し、アクリル低分子量ポリマー(B-1)(表1において「B-1」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル低分子量ポリマー(B-1)は、質量平均分子量が12000、ガラス転移温度が105℃であった。
【0100】
(製造例2-2;アクリル低分子量ポリマー(B-2))
モノマーを、MMA及びメタクリル酸イソボロニル(IBXMA)が質量比で50:50である混合モノマーに変更し、重合開始剤と有機溶媒との量を変更して重量平均分子量を調整したこと以外は製造例2-1と同様の方法で固形分濃度が40質量%であるアクリル低分子量ポリマー(B-2)(表1において「B-2」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル低分子量ポリマー(B-2)は、質量平均分子量が5000、ガラス転移温度が139℃であった。
【0101】
(製造例2-3;アクリル低分子量ポリマー(B-3))
モノマーを、MMA及びメタクリル酸ブチル(BMA)が質量比で50:50である混合モノマーに変更し、重合開始剤と有機溶媒との量を変更して重量平均分子量を調整したこと以外は製造例2-1と同様の方法で固形分濃度が40質量%であるアクリル低分子量ポリマー(B-3)(表1において「B-3」と表記)の溶液を得た。得られたアクリル低分子量ポリマー(B-3)は、質量平均分子量が5000、ガラス転移温度が57℃であった。
【0102】
(実施例1)
アクリル高分子量ポリマー(A-1)100質量部に対して、アクリル低分子量ポリマー(B-1)を5質量部と、架橋剤としてエポキシ系化合物(テトラッドX、三菱瓦斯化学社製、表1中「架橋剤1」と表記)を0.1質量部と含む原料に、当該原料の濃度が20量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物を調製した。斯かる粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート、王子エフテックス社製、50RL-07(2))の表面に、アプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃で3分間乾燥させることで、第1の剥離シートの表面に、厚みが8μmである粘着剤層(粘着シート)を形成した。次いで、該粘着剤層の表面に第1の剥離シートと剥離力の異なる、厚さ38μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))を貼合し、23℃、相対湿度50%の条件で7日間養生した。これにより、粘着剤層(粘着シート)が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着シート/第2の剥離シートの構成を備える剥離シート付き粘着シートを得た。
【0103】
(実施例2)
粘着剤層の厚みを15μmに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0104】
(実施例3)
アクリル低分子量ポリマー(B-1)の代わりにアクリル低分子量ポリマー(B-2)を使用し、また、粘着剤層の厚みを25μmに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0105】
(実施例4)
架橋剤の配合量を0.05質量部質量部に変更し、また、粘着剤層の厚みを50μmに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0106】
(実施例5)
アクリル高分子量ポリマー(A-1)の代わりにアクリル高分子量ポリマー(A-2)を使用し、架橋剤の配合量を0.05質量部質量部に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0107】
(実施例6)
アクリル高分子量ポリマー(A-1)の代わりにアクリル高分子量ポリマー(A-3)を使用し、アクリル低分子量ポリマー(B-2)の代わりにアクリル低分子量ポリマー(B-2)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0108】
(比較例1)
アクリル高分子量ポリマー(A-1)の代わりにアクリル高分子量ポリマー(A-4)を使用し、また、架橋剤をイソシアネート系化合物(タケネートD-110N、三井化学社製、表1中「架橋剤2」と表記)に変更し、架橋剤の配合量を0.3質量部に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0109】
(比較例2)
アクリル高分子量ポリマー(A-1)の代わりにアクリル高分子量ポリマー(A-5)を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0110】
(比較例3)
アクリル低分子量ポリマー(B-1)の代わりにアクリル低分子量ポリマー(B-3)に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0111】
(比較例4)
アクリル低分子量ポリマー(B-1)を使用せず、また、架橋剤の配合量を0.3質量部質量部に変更したこと以外は実施例2と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0112】
(比較例5)
アクリル高分子量ポリマー(A-4)100質量部に対して、架橋剤としてエポキシ系化合物(テトラッドX、三菱瓦斯化学社製)を0.25質量部と、光重合開始剤としてIGMレジン社「Omnirad TPO」1.5質量部と、紫外線硬化成分として、A-9300(新中村化学工業社「NKエステル」シリーズのA-9300)15質量部とを含む原料に、当該原料の濃度が25質量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物を調製した。斯かる粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート、王子エフテックス社製、50RL-07(2))の表面に、アプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃で3分間乾燥させることで、第1の剥離シートの表面に、厚みが15μmである粘着剤層(粘着シート)を形成した。次いで、該粘着剤層の表面に第1の剥離シートと剥離力の異なる、厚さ38μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))を貼合し、23℃、相対湿度50%の条件で14日間養生した。これにより、粘着剤層(粘着シート)が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着シート/第2の剥離シートの構成を備える剥離シート付き粘着シートを得た。
【0113】
<ゲル分率>
実施例及び比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートから、粘着シートを剥がし、粘着シート(粘着剤層のみ)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定した。得られた乾燥重量から下記式
ゲル分率(%)=(乾燥質量W/粘着シートの採取質量)×100
から算出される値を粘着シートのゲル分率とした。なお、比較例4で得られた剥離シート付き両面粘着シートでは、第2の剥離シート側から照度200mW/cmの紫外線LEDランプ(365nm)を用いて積算光量が2000mJ/cmとなるように光照射することで粘着シートを後硬化させた粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、上記同様の方法でゲル分率を計測した。
【0114】
(積層体の作製)
実施例及び比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートの粘着剤層の軽剥離側の剥離シートを剥離し、100μmPETフィルム(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)と貼合した。更に、重剥離側の剥離シートを剥離し、100mm×300mmのポリカーボネート樹脂板(帝人社製/品番:パンライトPC-1151/厚み0.5mm)に貼合した。その後オートクレーブにて温度30℃、圧力0.5MPaの環境下で30分間処理し、積層体を得た。なお、比較例4で得られた剥離シート付き両面粘着シートでは、上記試験片を得た後、100μmPET側から照度200mW/cmの紫外線LEDランプ(365nm)を用いて積算光量が3000mJ/cmとなるように光照射することで硬化させた。
【0115】
(多層同時加工性)
ギロチンカッターを用いて、前記積層体の短片側から50mmの位置にて、積層体のPETフィルム側から鉛直方向に切断し、100mm×250mmの加工品を得た。このときに形成される切断面の顕微鏡観察により、下記基準に沿って多層同時加工性の評価を行った。
〇:切断面に気泡がなく、剥がれ距離が0.05mm未満であった。
×:切断面に気泡がある、又は、剥がれ距離が0.05mm以上であった。
【0116】
(加工品反り評価)
長辺250mm側で前記積層体を水平に置き、反り量の最大値を測定し、下記基準で加工品反りを評価した。
〇:最大反り量が5mm以内であり、反りが抑制されていた。
×:最大反り量が5mm以上であり、反りが見られた。
【0117】
(耐発泡性)
前記積層体を、温度85℃、相対湿度85%に調整された恒温恒湿機内部に設置し、24時間後に観察し、剥離および気泡が発生しているか目視観察し、下記判定基準で評価した。
◎:目視で確認できる気泡が全くなかった。
〇:目視で確認できる気泡の数が10個未満であり、気泡は少なかった。
×:目視で確認できる気泡の数が20個以上あり、気泡は多かった。
【0118】
(総合評価)
多層同時加工性、加工品反り評価及び耐発泡性評価の総合的な評価を下記基準で判断した。
◎:上記評価すべてで良好な評価である
〇:一部評価で完璧ではない項目があるが実用上問題ないレベルである。
×:一部評価で問題があり、実用上問題となるレベルであった。
【0119】
【表1】
【0120】
表1は、粘着シートを製造するために使用した粘着剤組成物の成分割合、及び、得られた粘着シートの評価結果を示している。各実施例で得られた粘着シートから形成される積層体は、積層体中の樹脂板とフィルム基材との加工を同時に行ったとしても反り及び発泡が生じにくいものであった。従って、本発明の粘着シートは、樹脂板とフィルム基材との積層体を形成するための粘着剤として適していることがわかった。