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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149736
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058478
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】520110098
【氏名又は名称】株式会社Linkhola
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小野 真利
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】
ユーザが削減した環境負荷要素の排出量,削減量を認識可能とする情報処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
ユーザによる環境負荷要素を出力する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,前記ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部と,前記ユーザの仮想移動に関する処理を実行する第2移動処理部と,前記実移動と前記仮想移動とを用いて算出した前記ユーザの環境負荷要素の削減量を出力する出力処理部と,を有する情報処理システムのように構成することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる環境負荷要素を出力する情報処理システムであって,
前記情報処理システムは,
前記ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部と,
前記ユーザの仮想移動に関する処理を実行する第2移動処理部と,
前記実移動と前記仮想移動とを用いて算出した前記ユーザの環境負荷要素の削減量を出力する出力処理部と,
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記第1移動処理部は,
前記ユーザから実移動手段および/または実移動経路の入力を受け付ける,または前記ユーザ端末に備えた位置検出装置で検出した位置情報を用いて前記実移動手段および/または前記実移動経路を推定する,
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第2移動処理部は,
前記ユーザから仮想移動手段および/または仮想移動経路の入力を受け付ける,またはルート検索により前記仮想移動手段および/または前記仮想移動経路を受け付ける,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第2移動処理部は,
あらかじめ設定された仮想移動手段および仮想移動経路を記憶しており,
前記第1移動処理部は,
前記仮想移動手段のうち実移動手段と重複する移動手段と,前記仮想移動手段とは異なる移動手段とを含む移動手段を実移動手段とし,
前記仮想移動経路のうち実移動経路と重複する移動経路と,前記仮想移動経路とは異なる移動経路とを含む移動経路を実移動経路とする,
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記情報処理システムは,
前記実移動経路を用いて算出した実移動距離および/または実移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部,
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記情報処理システムは,
前記仮想移動経路を用いて算出した仮想移動距離および/または仮想移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部,
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の情報処理システム。
【請求項7】
ユーザによる環境負荷要素を出力する情報処理システムであって,
前記情報処理システムは,
前記ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部と,
前記実移動を用いて算出した実移動距離および/または実移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部と,
前記算出した環境負荷要素の排出量を出力する出力処理部と,
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
前記情報処理システムは,
前記ユーザに対して付与された,前記ユーザの環境負荷要素の削減量に対応するインセンティブと,削減量とを対応づけて記録する記録保管システム,
を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の情報処理システム。
【請求項9】
コンピュータを,
ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部,
前記ユーザの仮想移動に関する処理を実行する第2移動処理部,
前記実移動と前記仮想移動とを用いて算出した前記ユーザの環境負荷要素の削減量を出力する出力処理部,
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項10】
コンピュータを,
ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部,
前記実移動を用いて算出した実移動距離および/または実移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部,
前記算出した環境負荷要素の排出量を出力する出力処理部,
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ユーザの移動に伴う環境負荷要素の排出量,削減量を定量的に認識可能とする情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の移動をインセンティブとして評価しようとするアプリケーションソフトウェアが出てきている。これらの一例を下記非特許文献1乃至非特許文献3に示す。
【0003】
しかし,人の移動は,同時に,二酸化炭素の排出など,何らかの環境負荷が発生することを意味する。近年は環境意識が高まっており,移動する際にも環境負荷の少ない手段で移動することが望まれるようになってきている。そこで,環境負荷の少ない移動を促すため,たとえば下記非特許文献4に示すアプリケーションソフトウェアがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ジオテクノロジーズ株式会社,”トリマ|移動するだけでポイントがたまるポイ活アプリ”,[online],インターネット<URL:https://www.trip-mile.com/>
【非特許文献2】株式会社NTTドコモ,”毎日の歩数がdポイントに!|dヘルスケア”,[online],インターネット<URL:https://health.dmkt-sp.jp/>
【非特許文献3】DeSCヘルスケア株式会社,”kencomアプリで楽しみながら,健康に。”,[online],インターネット<URL:https://kencom.jp/login>
【非特許文献4】Miles Japan株式会社,”Miles(マイルズ)|すべての移動に,マイルを”,[online],インターネット<URL:https://www.getmiles.com/jp>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献4のアプリケーションソフトウェアは,単に,人(ユーザ)が移動する際にマイル(ポイント)を付与するほか,環境負荷が少ない移動手段による移動の場合,マイルをたまりやすくすることで,環境負荷の少ない移動を促している。また,人(ユーザ)に対して,「環境に優しい」などの定性的な情報を表示するにとどまり,具体的にどの程度,環境負荷要素が排出されたか,削減されたか,などの客観的な情報は提供されていない。
【0006】
非特許文献4のアプリケーションソフトウェアを用いることによって,人(ユーザ)が環境負荷の少ない移動手段を選択することの一つの契機とはなるが,どの程度,環境負荷が減少するのか,客観的かつ定量的な情報を知ることはできないため,積極的な契機にはなりにくい課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は,上記課題に鑑み,人(ユーザ)が環境負荷の少ない移動手段をとったときに,どの程度環境負荷要素が排出されたのか,削減されたのかを客観的かつ定量的な情報を算出して,認識可能とする情報処理システムを発明した。
【0008】
第1の発明は,ユーザによる環境負荷要素を出力する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,前記ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部と,前記ユーザの仮想移動に関する処理を実行する第2移動処理部と,前記実移動と前記仮想移動とを用いて算出した前記ユーザの環境負荷要素の削減量を出力する出力処理部と,を有する情報処理システムである。
【0009】
本発明のように構成することで,ユーザが環境負荷の少ない移動手段をとったときに,それがどの程度,環境負荷要素が減少したのかを定性情報ではなく定量情報として出力し,ユーザに認識可能とすることができる。
【0010】
上述の発明において,前記第1移動処理部は,前記ユーザから実移動手段および/または実移動経路の入力を受け付ける,または前記ユーザ端末に備えた位置検出装置で検出した位置情報を用いて前記実移動手段および/または前記実移動経路を推定する,情報処理システムのように構成することができる。
【0011】
実移動手段,実移動経路の入力,推定については,本発明のような処理を実行するとよい。
【0012】
上述の発明において,前記第2移動処理部は,前記ユーザから仮想移動手段および/または仮想移動経路の入力を受け付ける,またはルート検索により前記仮想移動手段および/または前記仮想移動経路を受け付ける,情報処理システムのように構成することができる。
【0013】
仮想移動手段,仮想移動経路の受付については,本発明のような処理を実行するとよい。
【0014】
上述の発明において,前記第2移動処理部は,あらかじめ設定された仮想移動手段および仮想移動経路を記憶しており,前記第1移動処理部は,前記仮想移動手段のうち実移動手段と重複する移動手段と,前記仮想移動手段とは異なる移動手段とを含む移動手段を実移動手段とし,前記仮想移動経路のうち実移動経路と重複する移動経路と,前記仮想移動経路とは異なる移動経路とを含む移動経路を実移動経路とする,情報処理システムのように構成することができる。
【0015】
たとえば通勤経路のように,あらかじめ移動経路が定められている場合,それを仮想移動手段,仮想移動経路として記憶させておき,そこからのズレがある部分について実移動手段,実移動経路としてもよい。これによって,仮想移動手段,仮想移動経路と同じ部分についてはそのまま用い,ズレがある移動手段,移動経路を入力すればよいので,入力工数を減らすことができる。
【0016】
上述の発明において,前記情報処理システムは,前記実移動経路を用いて算出した実移動距離および/または実移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部,を有する情報処理システムのように構成することができる。
【0017】
上述の発明において,前記情報処理システムは,前記仮想移動経路を用いて算出した仮想移動距離および/または仮想移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部,を有する情報処理システムのように構成することができる。
【0018】
環境負荷要素の排出量の算出処理は,本発明のように構成することで実行できる。
【0019】
第7の発明は,ユーザによる環境負荷要素を出力する情報処理システムであって,前記情報処理システムは,前記ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部と,前記実移動を用いて算出した実移動距離および/または実移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部と,前記算出した環境負荷要素の排出量を出力する出力処理部と,を有する情報処理システムである。
【0020】
本発明のように構成することで,ユーザが実際に移動したときの環境負荷要素の排出量を,定性情報ではなく定量情報として出力し,ユーザに認識可能とすることができる。
【0021】
上述の発明において,前記情報処理システムは,前記ユーザに対して付与された,前記ユーザの環境負荷要素の削減量に対応するインセンティブと,削減量とを対応づけて記録する記録保管システム,を有する情報処理システムのように構成することができる。
【0022】
本発明のように構成することで,ユーザが環境負荷要素を削減することで,それに対応したインセンティブを取得することができる。そのため,ユーザは積極的に環境負荷要素の削減に協力することとなる。
【0023】
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで,実現できる。すなわち,コンピュータを,ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部,前記ユーザの仮想移動に関する処理を実行する第2移動処理部,前記実移動と前記仮想移動とを用いて算出した前記ユーザの環境負荷要素の削減量を出力する出力処理部,として機能させる情報処理プログラムである。
【0024】
第7の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで,実現できる。すなわち,コンピュータを,ユーザの実移動に関する処理を実行する第1移動処理部,前記実移動を用いて算出した実移動距離および/または実移動手段を用いて,前記環境負荷要素の排出量を算出する排出量算出処理部,前記算出した環境負荷要素の排出量を出力する出力処理部,として機能させる情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の情報処理システムを用いることによって,人(ユーザ)が環境負荷の少ない移動手段で移動したときに,どの程度,環境負荷要素の排出がされたのか,排出が削減されたのかをユーザが客観的かつ定量的に認識可能となる。そのため,人(ユーザ)に対して,環境負荷を念頭に置いた移動を促す積極的な契機となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の情報処理システムの全体の処理機能の一例を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明の情報処理システムにおける第1移動処理部の処理機能の一例を模式的に示すブロック図である。
図3】本発明の情報処理システムにおける第2移動処理部の処理機能の一例を模式的に示すブロック図である。
図4】本発明の情報処理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示すブロック図である。
図5】本発明の情報処理システムにおける全体の処理プロセスの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の情報処理システム1の処理機能の一例を図1乃至図3のブロック図で示す。情報処理システム1はユーザ端末2を有しており,環境負荷算出システム3,記録保管システム4とネットワークを介して情報の送受信が可能である。
【0028】
ユーザ端末2は,本発明の情報処理システム1の処理機能を備えたアプリケーションソフトウェアを備えたコンピュータである。ユーザ端末2は,好ましくは,スマートフォン,タブレット型コンピュータ,ウェアラブルデバイス,カーナビゲーション,車載器などの可搬型通信端末であるとよい。
【0029】
環境負荷算出システム3は,二酸化炭素などの環境負荷要素の排出量,削減量を算出するコンピュータである。環境負荷要素としては,二酸化炭素を一例とするが,それに限定するものではなく,環境に影響を与える要素であれば如何なる要素であってもよい。
【0030】
記録保管システム4は,情報を記録するコンピュータである。
【0031】
情報処理システム1におけるユーザ端末2,環境負荷算出システム3,記録保管システム4はコンピュータを用いて実現される。図2にコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,情報を表示するディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力が可能なキーボードやマウス,マイクなどの入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報をインターネットやLANなどのネットワークを介して送受信する通信装置74とを有している。
【0032】
コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には,表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0033】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0034】
入力装置73としては,マイクを介した音声での入力を可能としてもよい。
【0035】
ユーザ端末2は,上記の各装置のほか,GPSなどの位置検出装置を備えており,ユーザ端末2の位置情報が検出可能となっている。位置検出装置としては,GPS以外にも,加速度センサやジャイロセンサなどのモーションセンサなどを用いてもよい。なお,本発明の情報処理システム1の処理において,位置情報を用いない場合には,位置検出装置は備えなくてもよい。
【0036】
本発明における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。本発明の各手段における処理は,その処理順序を適宜変更することもできる。また,処理の一部を省略してもよい。
【0037】
環境負荷算出システム3,記録保管システム4の機能の一部または全部をユーザ端末2で実現してもよい。また,逆に,ユーザ端末2の機能の一部または全部を環境負荷算出システム3,記録保管システム4,あるいはほかのサーバやクラウドコンピューティングシステムなどによって実現してもよい。
【0038】
ユーザ端末2は,第1移動処理部20と第2移動処理部21と排出量処理部22と削減量処理部23と出力処理部24とを有する。
【0039】
第1移動処理部20は,ユーザの実際の移動(実移動)に関する処理を実行する。第1移動処理部20は,移動手段処理部200と実移動経路処理部201と実移動距離算出処理部202とを有する。
【0040】
移動手段処理部200は,ユーザ端末2を保有するユーザの実際の移動手段(実移動手段)の入力を受け付け,または実移動手段を推定する。
【0041】
実移動手段の入力を受け付ける場合には,ユーザ端末2に対して,移動手段の候補を複数提示し,その入力を受け付けることでよい。移動手段としては,たとえば徒歩,自転車,自動車,バス,タクシー,鉄道,飛行機,船などがあるがそれに限定するものではない。
【0042】
また,実移動手段の推定処理を行う場合には,ユーザ端末2に備えた位置検出装置を用いて,ユーザ端末2を保有するユーザの実移動手段を推定する。移動手段処理部200における実移動手段の推定処理としては,位置検出装置で位置情報(たとえば緯度,経度,高度など)を検出し,その位置情報,時刻情報などを用いて実移動手段を推定する。移動手段処理部200におけるユーザの実移動手段の推定処理としては,各種の公知の方法を用いることができる。
【0043】
実移動経路処理部201は,ユーザ端末2に備えた位置検出装置を用いて検出した位置情報に基づいて,ユーザ端末2を保有するユーザの実際の移動経路(実移動経路)を導出する。実移動経路導出手段は,検出した位置情報を時系列ごとにプロットすることで実移動経路を導出できる。実移動経路導出手段としては,各種の公知の方法を用いることができる。
【0044】
なお,移動手段処理部200による実移動手段,実移動経路処理部201が導出した実移動経路については,ユーザ端末2の表示装置72に,「あなたは,徒歩でこのルートで移動しましたか」などのメッセージを表示し,ユーザによる選択,同意を受け付けるように構成してもよい。
【0045】
実移動距離算出処理部202は,実移動経路処理部201で導出した実移動経路に基づいて,ユーザが実際に移動した実移動距離を算出する。実移動距離算出処理部202は,実移動経路導出処理手段で時系列ごとにプロットした位置情報に基づいて導出した実移動経路を用いて実移動距離を算出できる。
【0046】
第2移動処理部21は,ユーザの本来の移動(仮想移動)に関する処理を実行する。第2移動処理部21は,たとえば第1移動処理部20で導出した実移動経路に基づいて,本来の移動手段(仮想移動手段)での仮想的な移動(仮想移動)について入力を受け付ける,または推定する。第2移動処理部21は,仮想移動経路処理部210と仮想移動距離算出処理部211とを有する。
【0047】
仮想移動経路処理部210は,実移動経路処理部201で導出した実移動経路の開始地点と終着地点における移動について,仮想移動手段による本来の移動経路(仮想移動経路)の入力を受け付ける,または推定する。すなわち,開始地点と終着地点との間の仮想的な移動経路に関する処理を実行する。仮想移動経路処理部210における仮想移動経路の処理には各種の方法を用いることができる。
【0048】
仮想移動経路処理部210における処理の一例としては,たとえばユーザから仮想移動手段の候補,たとえば徒歩,自転車,自動車,バス,鉄道,飛行機,船などをユーザ端末2に表示し,その中から仮想移動手段の選択を受け付け,また当該仮想移動手段による移動の開始地点,終了地点の入力を受け付けることで,仮想移動手段および仮想移動経路とする。
【0049】
仮想移動経路処理部210における処理のほかの一例としては,実移動経路処理部201で導出した実移動経路の開始地点と終着地点とを用いて,公知のルート検索アプリケーションで検索し,仮想移動手段および仮想移動経路を推定する。ルート検索アプリケーションとしては,ユーザ端末に記憶しているルート検索アプリケーションを用いてもよいし,所定のルート検索を行う外部のサーバにアクセスしてルート検索を行い,その検索結果を受け付けるルート検索アプリケーションであってもよい。
【0050】
仮想移動経路処理部210における処理のほかの一例としては,実移動経路処理部201で導出した実移動経路の開始地点と終着地点との間の移動について,仮想移動手段および仮想移動経路を統計的手法に基づいて推定してもよい。統計的手法に基づく推定処理としては,たとえば実移動経路の開始地点と終着地点との間の移動について,大多数が利用する移動手段および移動経路を統計的に推定し,利用が多い移動手段および移動経路から順に複数の候補をユーザに提示してその選択を受け付け,仮想移動手段および仮想移動経路とする。あるいは,大多数が利用する移動手段を統計的に推定し,利用がもっとも多い移動手段および移動経路を仮想移動手段および仮想移動経路とする。
【0051】
仮想移動経路処理部210における処理のほかの一例としては,深層学習(ディープラーニング)を含む機械学習を用いて推定してもよい。この場合,中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して,実移動経路処理部201で導出した実移動経路の開始地点と終着地点を入力値として入力し,移動手段および移動経路を出力値として出力させ,出力値の移動手段を仮想移動手段,出力値の移動経路を仮想移動経路とする。学習モデルとしては,さまざまな開始地点と終着地点について,移動手段,移動経路を正解データとして与えたものを用いることができる。なお,機械学習の方法はこれに限定するものではなく,各種の方法を用いることができる。
【0052】
なお,仮想移動経路処理部210が導出した仮想移動経路および仮想移動手段については,ユーザ端末2の表示装置72に,「あなたはこのルートを使わずに,徒歩で移動しましたか」などのメッセージを表示し,ユーザによる選択,同意を受け付けるように構成してもよい。
【0053】
仮想移動距離算出処理部211は,仮想移動経路処理部210において入力を受け付けた,または推定をした仮想移動手段および仮想移動経路に基づいて,その移動距離(仮想移動距離)を算出する。
【0054】
排出量処理部22は,ユーザの実際の移動により排出した環境負荷要素の排出量の算出に関する処理を実行する。たとえば第1移動処理部20で算出した実移動距離と,実移動経路および実移動手段の情報を環境負荷算出システム3に渡し,実移動による環境負荷要素の排出量(実排出量)の算出要求を行う。排出量処理部22が環境負荷算出システム3に渡す情報としては,後述する環境負荷算出システム3における環境負荷要素の排出量算出に用いる情報であれば如何なる情報であってもよく,実移動距離,実移動経路および実移動手段はその一例である。
【0055】
また排出量処理部22は,ユーザの仮想移動に基づき排出される環境負荷要素の排出量の算出に関する処理を実行する。たとえば第2移動処理部21で算出した仮想移動距離と,仮想移動経路および仮想移動手段の情報を環境負荷算出システム3に渡し,仮想移動による環境負荷要素の排出量(仮想排出量)の算出要求を行う。排出量処理部22が環境負荷算出システム3に渡す情報としては,後述する環境負荷算出システム3における環境負荷要素の排出量算出に用いる情報であれば如何なる情報であってもよく,仮想移動距離,仮想移動経路および仮想移動手段はその一例である。
【0056】
削減量処理部23は,仮想移動に基づき排出される環境負荷要素の仮想排出量とユーザの実際の移動による環境負荷要素の実排出量とを用いて,実移動による環境負荷要素の排出の削減量の算出に関する処理を実行する。たとえば,削減量処理部23は,仮想排出量と実排出量の情報を環境負荷算出システム3に渡し,削減量の算出要求を行う。
【0057】
出力処理部24は,環境負荷算出システム3から受け取った仮想排出量,実排出量,削減量などの各種の情報の一部または全部を,ユーザ端末2の表示装置72に表示する。また,仮想排出量,実排出量,削減量に日時情報を対応づけて記録保管システム4に送り,記録させる。この際に,当該ユーザを識別するユーザ識別情報も送るとよい。さらに,実移動経路,実移動手段,仮想移動経路,仮想移動手段の一部または全部を記録保管システム4に送ってもよい。
【0058】
環境負荷算出システム3は,環境負荷要素の排出量,削減量に関する処理を実行する。環境負荷算出システム3は,排出量算出処理部30と削減量算出処理部31とを有する。
【0059】
排出量算出処理部30は,環境負荷要素の排出量の算出を公知の算出方法に基づいて算出する。たとえば,各移動手段による移動距離,それらに基づくエネルギー使用量(燃料使用量)などを用いて,エネルギー(燃料など)の種類に応じた排出原単位を乗じて算出することができる。すなわち,移動手段および移動距離によって移動に要したエネルギー使用量が算出できるので,エネルギー使用量に,エネルギーの種類に応じた排出原単位(エネルギーの種類ごとの環境負荷要素の排出量の基準量)を乗算すれば,環境負荷要素の排出量を算出できる。排出原単位としては,環境省が公表する排出原単位データベースの値を用いることができる。
【0060】
環境負荷要素の排出量の算出方法,とくに二酸化炭素の排出量の算出方法としては,たとえば上述の燃料法,燃費法,改良トンキロ法,従来トンキロ法,人キロ原単位法,乗車料金に基づく算出方法などがある。
【0061】
燃料法は上述のように燃料使用量を用いて二酸化炭素の排出量を算出する方法であり,対象乗り物(移動手段)の使用した燃料使用量に対象乗り物(移動手段)別の二酸化炭素排出係数を乗算して算出する。
【0062】
燃費法は,移動距離と燃費から二酸化炭素の排出量を算出する方法であり,対象乗り物(移動手段)での移動距離を対象乗り物(移動手段)の燃費で除算し,対象乗り物(移動手段)別の二酸化炭素排出係数を乗算して算出する。
【0063】
改良トンキロ法は,車載率と車両の種類,積載量別の輸送量から二酸化炭素排出量を算出する。
【0064】
従来トンキロ法は,車載別モード別輸送量から二酸化炭素排出量を算出する。
【0065】
人キロ原単位法は,国土交通省,旅客事業者,車両メーカが公表する燃料消費人キロ原単位を使用する方法であり,移動手段での移動距離に対象乗り物(移動手段)別の二酸化炭素排出係数を乗算して算出する。
【0066】
乗車料金に基づく算出方法は,移動手段の乗車料金に対象乗り物(移動手段)別の二酸化炭素排出係数を乗算して算出する。
【0067】
排出量算出処理部30による環境負荷要素の排出量の算出方法は,上記に限定するものではなく,各種の方法を用いることができる。この際に,国際水準や,環境省,資源エネルギー庁などの行政機関が推奨する算出方法を用いると好ましいが,それに限定するものではない。
【0068】
削減量算出処理部31は,環境負荷要素の削減量の算出を行う。たとえば,仮想移動に基づき排出される環境負荷要素の仮想排出量とユーザの実際の移動による環境負荷要素の実排出量との差分を削減量として算出する。
【0069】
削減量算出処理部31における削減量の算出処理は上記に限定するものではなく,仮想移動に基づく仮想排出量と実移動による実排出量とを用いて,環境負荷要素の削減量を算出できれば如何なる方法であってもよい。
【0070】
記録保管システム4は,ユーザごとの環境負荷要素の削減量,日時情報などを記録する。削減量,日時情報のほかに,実排出量などを対応づけて記録していてもよい。なお,各種の情報を記録する際に,ブロックチェーンなどを用いて記録するように構成してもよい。
【実施例0071】
つぎに本発明の情報処理システム1の処理プロセスの一例を図5のシーケンス図などを用いて説明する。以下の説明では環境負荷要素として二酸化炭素を例とする場合を説明する。また,X駅近郊のAビルからY駅近郊のBビルまでの移動を行う場合を説明する。
【0072】
ユーザがX駅からY駅まで移動を行う場合,たとえばユーザ端末2に備えた所定のアプリケーションソフトウェアを起動する。アプリケーションソフトウェアの起動によって,ユーザ端末2の位置検出装置を起動し,その位置情報を検出する。最初の位置情報を検出した地点を移動の開始地点とする。たとえばユーザがX駅近郊のAビルでアプリケーションソフトウェアを起動した場合,Aビルにおける位置情報を検出し,その地点を移動の開始地点とする。
【0073】
本来,ユーザは、X駅からY駅までは電車で移動するところ,当該ユーザは,X駅近郊のAビルからY駅近郊のBビルまで徒歩で移動したとする。この場合,ユーザ端末2の位置検出装置では,逐次,位置情報と日時情報とを検出し,記憶している。
【0074】
ユーザがY駅近郊のBビルに到着すると,所定の操作を行うことで,アプリケーションソフトウェアは位置検出装置による位置情報の検出を中止し,その地点を移動の終着地点とする。
【0075】
そして,第1移動処理部20の移動手段推定処理部は,終着地点が登録されると,当該ユーザの移動手段の推定処理を実行する(S100)。すなわち,開始地点であるX駅近郊のAビルから終着地点であるY駅近郊のBビルの間の移動手段を,位置検出装置で検出した位置情報と日時情報とを用いて,移動手段を推定する。ここでは,開始地点であるX駅近郊のAビルから終着地点であるY駅近郊のBビルまで徒歩で移動したと,移動手段推定処理部が推定したとする。
【0076】
また第1移動処理部20の実移動経路処理部201は,ユーザ端末2に備えた位置検出装置を用いて検出した位置情報と日時情報とを用いて,検出した位置情報を時系列ごとにプロットして実移動経路を導出する(S110)。
【0077】
そして,実移動距離算出処理部202が,実移動経路処理部201で導出した実移動経路に基づいて,ユーザがX駅近郊のAビルからY駅近郊のBビルまでの徒歩による移動に要した実移動距離を算出する(S120)。
【0078】
さらに,第2移動処理部21における仮想移動経路処理部210が,実移動経路処理部201で導出した実移動経路の開始地点と終着地点との間の移動について,仮想移動経路の入力を受け付ける(S130)。たとえば仮想移動経路処理部210が,実移動経路の開始地点と終着地点とを公知のルート検索アプリケーションに入力し,開始地点と終着地点との間の移動経路を導出させる。そして,ルート検索アプリケーションからの検索結果を受け付け,仮想移動経路の候補をユーザ端末2で表示して,その選択を受け付ける。選択された仮想移動経路の候補を,仮想移動経路処理部210は,X駅近郊のAビルからY駅近郊のBビルまでの仮想移動経路とする。なお,選択された仮想移動経路の候補における移動手段を仮想移動手段として設定する。また,仮想移動距離算出処理部211は,この仮想移動経路による距離である仮想移動距離を算出する(S140)。
【0079】
以上のように,第1移動処理部20で実移動に関する処理を実行後,排出量処理部22が,実移動距離と,実移動経路および実移動手段の情報を環境負荷算出システム3に渡し,実移動による二酸化炭素の排出量(実排出量)の算出要求を行う(S150)。また,第2移動処理部21で仮想移動に関する処理を実行後,排出量処理部22は,仮想移動距離と,仮想移動経路および仮想移動手段の情報を環境負荷算出システム3に渡し,仮想移動による二酸化炭素の排出量(仮想排出量)の算出要求を行う(S150)。
【0080】
環境負荷算出システム3の排出量算出処理部30は,ユーザ端末2からの実排出量の算出要求を受け付けると,公知の手法により,実排出量の算出処理を実行し(S160),実排出量をユーザ端末2に送る(S170)。また,環境負荷算出システム3の排出量算出処理部30は,ユーザ端末2からの仮想排出量の算出要求を受け付けると,公知の手法により,仮想排出量の算出処理を実行し(S160),仮想排出量をユーザ端末2に送る(S170)。
【0081】
そして削減量処理部23は,環境負荷算出システム3に対して,仮想排出量と実排出量の情報とともに,二酸化炭素の削減量の算出要求を送る(S180)。
【0082】
環境負荷算出システム3の削減量算出処理部31は,仮想排出量から実排出量を減算することで,二酸化炭素の削減量を算出し(S190),削減量をユーザ端末2に送る(S200)。
【0083】
環境負荷算出システム3から受け付けた実排出量,削減量などを,ユーザ端末2の出力処理部24は,その表示装置72で表示をするとともに(S210),日時情報に対応づけて記録をする(S220)。また,出力処理部24は,削減量,日時情報,ユーザ識別情報を記録保管システム4に送り(S230),記録保管システム4は,ユーザ端末2から受け付けた削減量,実排出量,日時情報,ユーザ識別情報を対応づけて記録する(S240)。
【0084】
なお,ユーザ端末2は,記録保管システム4に対して,第1移動処理部20による実移動手段,実移動経路,実移動距離,第2移動処理部21による仮想移動手段,仮想移動経路,仮想移動距離の一部または全部を送り,記録させてもよい。この記録によって,深層学習(ディープラーニング)の学習用データ,統計分析用のデータとして用いることができる。
【実施例0085】
上述の実施例1において,実移動経路処理部201は,位置検出装置で検出した位置情報に基づいて実移動経路を導出していたが,実移動経路の開始地点,終着地点,移動手段を含め,任意のタイミングで,ユーザの操作により,ユーザ端末2で入力を受け付けるように構成してもよい。この場合,各種の方法があるが,たとえば実移動経路の開始地点,終着地点,実移動経路の経由地などを地図上で入力を実移動経路処理部201で受け付け,またそれぞれの区間における実移動手段の入力を移動手段処理部200で受け付ける。
【実施例0086】
また,実移動手段が開始,変更される場合に,ユーザにより,逐次,第1移動処理部20において入力を受け付けてもよい。たとえばユーザ端末2においてアプリケーションソフトウェアが起動するなどによって移動開始を検知すると,開始地点を記録する。そして,移動手段処理部200は,実移動手段の候補を表示装置72に表示し,実移動手段の入力を受け付ける。たとえば,X駅のAビル付近からの実移動手段の候補として,「徒歩」,「自転車」,「自動車」,「電車」などを表示し,その中から「徒歩」の選択を移動手段処理部200が受け付けることで,実移動手段が徒歩として選択される。
【0087】
そしてY駅のBビル付近まで徒歩による移動を継続する間,位置検出装置が位置情報を検出しており,実移動経路処理部201が実移動経路として日時情報とともに記録する。
【0088】
ユーザがY駅のBビル付近まで到着すると,所定の操作を行うことで,位置検出装置による位置情報の検出を終了し,終着地点を記録する。
【0089】
終着地点が記録されると,仮想移動経路処理部210により,仮想移動経路の入力を受け付ける。たとえば実施例1に示すように,ルート検索アプリケーションを用いて仮想移動経路の入力を受け付ける,あるいは,実施例2に示すように,地図を表示し,そこに,仮想移動経路を地図上で入力を受け付け,また仮想移動手段の入力を受け付けるなどの方法がある。もちろん,仮想移動経路処理部210における仮想移動経路の入力についてはこれに限定するものではない。
【実施例0090】
別の変形例として,仮想移動経路処理部210が,乗り物区間開始とその駅等の地点の情報,乗り物区間終了とその駅等の地点の情報の選択を受け付け,仮想移動経路処理部210による仮想移動経路と仮想移動手段としてもよい。この場合,ユーザ端末2の位置検出装置による位置情報や,移動手段処理部200による実移動手段と一致していなければ,上述の仮想移動経路,仮想移動手段を確定する。
【0091】
なお,乗り物区間開始とその駅等の地点の情報,乗り物区間終了のその駅等の地点の情報の選択を受け付けるほか,位置検出装置で位置情報を検出し,その周辺にある駅,バスの停留所などを検出することで,乗り物区間開始とその駅等の地点の情報,乗り物区間終了のその駅等の地点の情報としてもよい。
【実施例0092】
仮想移動経路処理部210における仮想移動経路として,あらかじめ定められている経路,たとえば通勤経路を事前に登録していてもよい。そして,仮想移動経路と同じ開始地点,終着地点であるが,仮想移動経路とは異なる移動経路を取った場合に,異なる移動経路を取った時点で,実移動手段処理部200において異なる実移動手段の選択を受け付けるようにしてもよい。この場合,異なる移動手段の選択を受け付けた時点,異なる移動手段を終了することの選択を受け付けた時点を,仮想移動経路から変更した経路として,実移動経路処理部201が実移動経路を導出する。
【0093】
たとえば,自宅からX駅までが徒歩,X駅からY駅までバス,Y駅からZ駅まで電車,Z駅から会社までが徒歩として通勤経路が仮想移動経路として設定されていたとする。この場合,第2移動処理部21の仮想移動経路処理部210で,上述の仮想移動経路の入力をあらかじめ受け付けておき,記憶しておく。仮想移動距離算出処理部211もあらかじめ当該仮想移動経路に基づいて仮想移動距離を算出しておく。
【0094】
そして,ユーザが上述の仮想移動経路に基づいて通勤をしてる途中,X駅からY駅までの間を,通勤経路とは異なり,徒歩で移動したとする。このとき,ユーザが任意のタイミングで,所定の操作を行うことで,異なる移動経路として徒歩の選択を移動手段処理部200で受け付け,X駅を異なる移動経路の開始地点,Y駅を異なる移動経路の終着地点としての選択を実移動経路処理部201で受け付ける。たとえばユーザがX駅に到達したときに異なる移動経路の開始地点としての入力を行い,ユーザが徒歩でX駅からY駅まで移動してY駅に到着したときに異なる移動経路の終着地点としての入力を行う。
【0095】
実移動経路処理部201は,仮想移動経路とは異なる移動経路を実移動経路として導出する。すなわち,自宅からX駅までが徒歩,X駅からY駅まで徒歩,Y駅からZ駅まで電車,Z駅から会社までが徒歩として実移動経路を導出する。また,実移動距離算出処理部202は,導出した実移動経路に基づいて実移動距離を算出する。
【0096】
以上のような処理のように,第1移動処理部20は,第2移動処理部21においてあらかじめ設定されている仮想移動経路とは異なる移動経路の部分の入力を受け付けることで,実移動経路,実移動距離を設定してもよい。
【実施例0097】
また,本発明の情報処理システム1をスケジューラなどと連動させてもよい。たとえば,スケジューラ(スケジュール管理ソフトウェア)でリモート会議,リモートワークなどのスケジュールが設定されている場合,リモート会議,リモートワークなどの開始時刻,終了時刻などの所定のタイミングが到来すると,第1移動処理部20は,自社やクライアント先などの会議場所,就業場所までの実移動手段を「なし」,実移動経路を「なし」,実移動距離を「0」として設定し,排出量処理部22による実排出量の算出処理を実行させる。なお,実排出量の算出処理を実行せず,実排出量は「0」と設定してもよい。
【0098】
なお,自動的に第1移動処理部20により実移動手段,実移動経路,実移動距離の算出,設定の処理を開始するのではなく,所定のタイミングが到来すると,第1移動処理部20を起動させ,ユーザにこれらの入力を行わせたり,自動的な処理の開始の選択を受け付けるなどであってもよい。
【0099】
また,第2移動処理部21は,自社やクライアント先などの会議場所,就業場所までの仮想移動手段,仮想移動経路を仮想移動経路処理部210により導出し,それに基づいて仮想移動距離算出処理部211が仮想移動距離を算出する。そして,排出量処理部22による仮想排出量の算出処理を実行させる。
【0100】
なお,第2移動処理部21における仮想移動手段,仮想移動経路,仮想移動距離などは,ユーザからの入力を受け付けてもよいことは上述の各実施例と同様である。
【0101】
そして,上述の各実施例と同様に,削減量処理部23により環境負荷要素の削減量を算出し,出力処理部24で出力する。
【0102】
以上のような処理を実行することで,リモート会議,リモートワークなどによる環境負荷要素の削減量を算出し,出力することができる。また,スケジューラと連動することで,自動的にリモート会議,リモートワークがあった場合の環境負荷要素の削減量の出力もできる。
【実施例0103】
なお,本発明の情報処理システム1の処理により算出した削減量について,削減量に対応するインセンティブ,たとえばポイント,金銭,暗号資産などを当該ユーザに付与してもよい。この場合,ユーザ端末2や記録保管システム4では,当該ユーザの削減量に対応するインセンティブを記録していてもよい。このインセンティブは,ほかのユーザと取引可能,交換可能であってもよい。また,実排出量や削減量そのものをインセンティブとして取引対象としてもよい。すなわち,実排出量や削減量を炭素クレジットとして売買取引の対象としてもよい。
【実施例0104】
上述の実施例1乃至実施例7の処理を,適宜,組み合わせることもできる。またその各処理については,本発明の明細書に記載した順序に限定するものではなく,その目的を達成する限度において適宜,変更することが可能である。
【0105】
たとえば排出量算出処理部30,削減量算出処理部31の双方または一方をユーザ端末2において実行してもよい。この場合,環境負荷算出システム3を設けずともよい。
【0106】
また,削減量を出力せず,実移動による環境負荷要素の実排出量のみを出力してもよい。この場合,第2移動処理部21,削減量処理部23,削減量算出処理部31などは設けずともよい。
【0107】
また,削減量を算出する場合には,実移動経路,実移動距離,実移動手段などを用いて算出した実排出量と,仮想移動経路,仮想移動距離,仮想移動手段などを用いて算出した仮想排出量との差分を算出するのではなく,仮想移動距離と実移動距離との距離の差分(削減距離)と仮想移動手段とに基づいて排出量を算出することで,それを削減量としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の情報処理システム1を用いることによって,人(ユーザ)が環境負荷の少ない移動手段で移動したときに,どの程度,環境負荷要素の排出がされたのか,排出が削減されたのかをユーザが客観的かつ定量的に認識可能となる。そのため,人(ユーザ)に対して,環境負荷を念頭に置いた移動を促す積極的な契機となる。
【符号の説明】
【0109】
1:情報処理システム
2:ユーザ端末
3:環境負荷算出システム
4:記録保管システム
20:第1移動処理部
21:第2移動処理部
22:排出量処理部
23:削減量処理部
24:出力処理部
30:排出量算出処理部
31:削減量算出処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
200:移動手段処理部
201:実移動経路処理部
202:実移動距離算出処理部
210:仮想移動経路処理部
211:仮想移動距離算出処理部
図1
図2
図3
図4
図5