IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

<>
  • 特開-二次電池 図1
  • 特開-二次電池 図2
  • 特開-二次電池 図3
  • 特開-二次電池 図4
  • 特開-二次電池 図5
  • 特開-二次電池 図6
  • 特開-二次電池 図7
  • 特開-二次電池 図8
  • 特開-二次電池 図9
  • 特開-二次電池 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149739
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20231005BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231005BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231005BHJP
   H01M 10/653 20140101ALN20231005BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/66 A
H01M4/134
H01M10/613
H01M10/653
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058483
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄介
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE04
5H017HH05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029HJ00
5H029HJ07
5H029HJ12
5H031KK06
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA06
5H050DA07
5H050FA04
5H050HA00
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】外装体への放熱部材の影響を抑えることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池100は、正極と、前記正極に対向する負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた固体電解質層12とを有する発電要素10と、前記発電要素10を覆う外装体と、前記発電要素に接する第1面と、前記外装体に接する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に設けられるとともに、平面視で前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に重なる位置に配置された中間部分とを含む放熱部材20とを備える。前記第1面および前記第2面に対向する方向の前記中間部分の断面は、前記第1面の面積および前記第2面の面積の少なくとも一方よりも小さい面積を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、前記正極に対向する負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた固体電解質層とを有する発電要素と、
前記発電要素を覆う外装体と、
前記発電要素に接する第1面と、前記外装体に接する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に設けられるとともに、平面視で前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に重なる位置に配置された中間部分とを含む放熱部材とを備え、
前記第1面および前記第2面に対向する前記中間部分の断面の面積は、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の面積よりも小さい
二次電池。
【請求項2】
前記中間部分の周縁の長さは、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の周縁の長さより短い請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記中間部分の断面の面積は、前記第1面の面積および前記第2面の面積よりも小さい請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記中間部分の周縁は、平面視で、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の周縁より内側に設けられている請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1面および前記第2面の面積が互いに異なる請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1面の面積が、前記第2面の面積より大きくなっている請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記中間部分の断面の面積は、前記第1面側から前記第2面側にかけて小さくなっている請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記正極は正極活物質層を含み、
前記第1面は、前記正極活物質層の主面を覆っている請求項1~7のいずれかに記載の二次電池。
【請求項9】
前記中間部分のビッカース硬さは、前記第1面および前記第2面のビッカース硬さよりも大きい請求項1~8のいずれかに記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極は、銅およびニッケルの少なくとも一方を含む負極集電体を有し、
前記第1面が、前記負極集電体に接する請求項1~9のいずれかに記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極は、負極集電体と、充電時に前記負極集電体の表面に析出するリチウム金属とを含む請求項1~10のいずれかに記載の二次電池。
【請求項12】
前記発電要素は、前記負極集電体と前記固体電解質層との間に設けられるとともに、リチウムイオン伝導性を有する負極保護層をさらに有する請求項11に記載の二次電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体リチウム二次電池等の二次電池の開発が盛んに進められている。二次電池の一つとして、いわゆるリチウム析出型の二次電池が知られている。このリチウム析出型の二次電池では、充電の際に、負極集電体表面にリチウム金属が析出する。このリチウム金属は、放電の際に、リチウムイオンとなる。即ち、充放電に伴って、リチウム金属が析出および消失し、発電要素の体積が変化する。
【0003】
例えば、二次電池は、この発電要素を封入する外装体を有しており、外装体の内部には、発電要素とともに放熱部材が設けられている(例えば、特許文献1)。発電要素で発生した熱は、放熱部材を介して外装体に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-113496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような二次電池では、外装体に封入された発電要素の大きさが変化すると、これに応じて放熱部材が変形する。変形した放熱部材は、外装体に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、外装体への放熱部材の影響を抑えることが可能な二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る二次電池は、正極と、前記正極に対向する負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた固体電解質層とを有する発電要素と、前記発電要素を覆う外装体と、前記発電要素に接する第1面と、前記外装体に接する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に設けられるとともに、平面視で前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に重なる位置に配置された中間部分とを含む放熱部材とを備え、前記第1面および前記第2面に対向する前記中間部分の断面の面積は、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方の面積よりも小さいものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱部材が中間部分を有しており、この中間部分の断面の面積が、第1面および第2面の少なくとも一方の面積よりも小さくなっている。これにより、発電要素の大きさが変化して放熱部材に応力がかかる際に、第1面および第2面の外側への中間部分の広がりが抑えられる。よって、外装体への放熱部材の影響を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の構成を模式的に表す断面図である。
図2図1に示した放熱部材近傍の拡大断面図である。
図3図2に示したIII-III’線に沿った断面構成を表す図である。
図4】(A)~(C)は、図1に示した二次電池の製造工程を順に表す断面図である。
図5図1に示した二次電池の使用状態の一例を表す斜視図である。
図6図5に示したA方向から見た側面図である。
図7図1に示した二次電池の満充電状態を表す断面図である。
図8】比較例に係る二次電池の構成を表す断面図である。
図9】変形例に係る二次電池の構成を表す断面図である。
図10図2に示した放熱部材の他の例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
<実施形態>
[二次電池100の構成]
図1は、本発明の一実施形態である積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウム二次電池(以下、単に「二次電池」とも称する)の構成を模式的に表した断面図である。二次電池100は、例えば、発電要素10、放熱部材20およびラミネートフィルム30を有している。充放電反応は、発電要素10において進行する。ラミネートフィルム30の内部に、この発電要素10が封止されている。放熱部材20は、発電要素10とともにラミネートフィルム30の内部に封入されている。ここでは、ラミネートフィルム30が、本発明の外装体の一具体例に対応する。以下、発電要素10、放熱部材20およびラミネートフィルム30各々の構成について説明する。
【0012】
(発電要素10)
発電要素10は、例えば、複数の単電池層1の積層構造を有している。単電池層1は、例えば、正極活物質層11、固体電解質層12、負極保護層13、正極集電体14および負極集電体15を含んでいる。本発明の正極は、正極活物質層11および正極集電体14を含み、本発明の負極は、負極活物質層(後述の図7の金属層16)および負極集電体15を含む。負極集電体15および正極集電体14には、例えば、負極集電板および正極集電板(図示せず)がそれぞれ取り付けられおり、この負極集電板および正極集電板がラミネートフィルム30の外部に導出されている。負極集電板および正極集電板は、それぞれ必要に応じて負極端子リードおよび正極端子リード(図示せず)を介して、負極集電体15および正極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0013】
単電池層1では、例えば、正極集電体14と負極集電体15とが対向して設けられている。正極集電体14と負極集電体15との間には、正極集電体14側から正極活物質層11、固体電解質層12および負極保護層13がこの順に配置されている。例えば、正極集電体14および負極集電体15は、積層された2つの単電池層1で共有される。以降の説明では、単電池層1の積層方向をZ方向、各層の主面に平行な方向をX方向およびY方向という場合もある。以降の説明中、「平面視」は、特に説明のない限り、XY平面視を指す。発電要素10の平面(XY平面)形状は、例えば、矩形等の四角形、円または楕円等である。
【0014】
正極集電体14は、電池反応(充放電反応)の進行に伴って正極から外部負荷に向かって放出され、または電源から正極に向かって流入する電子の流路として機能する導電性の部材である。正極集電体14を構成する材料に特に制限はない。正極集電体14の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0015】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。これらの金属表面がカーボンコートされていてもよい。
【0016】
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0017】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層1間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0018】
正極集電体14の厚さについて特に制限はないが、一例としては10~100μmである。
【0019】
正極活物質層11は、正極集電体14と固体電解質層12との間に設けられている。正極活物質層11は、例えば、平面視で、正極集電体14の周縁の内側に配置されている。
【0020】
正極活物質層11は、正極活物質を含んでいる。この正極活物質としては、二次電池の充電過程においてリチウムイオンを放出し、放電過程においてリチウムイオンを吸蔵しうる物質であれば特に制限されない。このような正極活物質の一例として、M1元素およびO元素を含有し、前記M1元素はLi、Mn、Ni、Co、Cr、FeおよびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するものが挙げられる。このような正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、Li(Ni-Mn-Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、LiTi12、LiVOが挙げられる。
【0021】
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0022】
好ましい実施形態において、二次電池100を構成する正極活物質層11は、出力特性の観点から、正極活物質としてリチウムとコバルトとを含有する層状岩塩型活物質(例えば、Li(Ni-Mn-Co)O)を含む。
【0023】
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、正極活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0024】
正極活物質層11における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、30~99質量%の範囲内であることが好ましく、40~90質量%の範囲内であることがより好ましく、45~80質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0025】
正極活物質層11は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。固体電解質としては、硫化物固体電解質および酸化物固体電解質が挙げられる。この固体電解質は、優れたリチウムイオン伝導性を示すとともに、充放電に伴う電極活物質の体積変化に対してより追従できるとの観点から、好ましくはS元素を含む硫化物固体電解質であり、より好ましくはLi元素、M元素およびS元素を含み、前記M元素はP、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Nb、Al、Sb、Br、ClおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する硫化物固体電解質であり、さらに好ましくはS元素、Li元素およびP元素を含む硫化物固体電解質である。
【0026】
硫化物固体電解質は、LiPS骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよい。LiPS骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiPS、LiI-LiBr-LiPS、LiPSが挙げられる。また、Li骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。より詳細には、例えば、LPS(LiS-P)、Li11、Li3.20.96S、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、またはLiPSX(ここで、XはCl、BrもしくはIである)等が挙げられる。なお、「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。中でも、硫化物固体電解質は、高イオン電導度であり、かつ低体積弾性率であるため充放電に伴う電極活物質の体積変化により追従できるとの観点から、好ましくはLPS(LiS-P)、LiPSX(ここで、XはCl、BrもしくはIである)、Li11、Li3.20.96SおよびLiPSからなる群から選択される。
【0027】
正極活物質層11における固体電解質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、1~70質量%の範囲内であることが好ましく、10~60質量%の範囲内であることがより好ましく、20~55質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0028】
正極活物質層11は、正極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
【0029】
正極活物質層11の厚さは、目的とするリチウム二次電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは40~100μmである。
【0030】
正極と負極との間に設けられた固体電解質層12は、完全放電時に、正極活物質層11と負極保護層13との間に配置される(図1)。固体電解質層12は、平面視で、正極活物質層11および負極保護層13より拡幅して設けられ、その周縁は、正極活物質層11の周縁および負極保護層13の周縁よりも外側に配置されている。固体電解質層12を正極活物質層11および負極保護層13から拡幅させることにより、正極活物質層11および負極活物質層(後述の図7の金属層16)端部での短絡の発生を抑えることができる。
【0031】
固体電解質層12は、固体電解質を(通常は主成分として)含有している。固体電解質層12に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0032】
固体電解質層12における固体電解質の含有量は、固体電解質層の合計質量に対して、例えば、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0033】
固体電解質層12は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。
【0034】
固体電解質層12の厚さは、目的とするリチウム二次電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~40μmである。
【0035】
固体電解質層12と正極集電体14との間には、正極活物質層11とともに絶縁性の弾性部材41が設けられている。弾性部材41は、正極活物質層11と同層に配置され、正極活物質層11の周縁を覆っている。弾性部材41は、例えば、正極活物質層11の周囲に額縁状に設けられ、正極活物質層11の周縁を全周にわたり覆っている。このような弾性部材41を設けることにより、製造時に固体電解質層12を押圧しても、固体電解質層12に局所的な力がかかりにくくなり、製造時の固体電解質層12の割れ等を抑えることができる。
【0036】
正極活物質層11と同層に設けられた弾性部材41の厚み(自然長)は、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは40~100μmである。
【0037】
弾性部材41は、正極活物質層11の弾性率以下の弾性率を有していることが好ましい。これにより、二次電池100の動作時に、単電池層1の積層方向に拘束圧が加えられると、弾性部材41は正極活物質層11と同程度に変形する。よって、正極活物質層11に所定の拘束圧がかかり、二次電池100が所望の電池性能を発揮する。弾性部材41は、二次電池100の充放電の際の正極活物質層11の体積変化に追従して変形する。
【0038】
弾性部材41の弾性率、具体的には圧縮弾性率は、例えば0.1GPa~100GPaであり、1GPa~10GPaであることが望ましい。また、弾性部材41の弾性率は、正極活物質層11の弾性率と同じであることが好ましい。これにより、製造時の固体電解質層12の破損をより効果的に抑えることができる。
【0039】
弾性部材41は、例えば、ポリイミド、ポリエチレンまたはバインダを含む無機粉末の圧粉成形体等により構成されている。弾性部材41は、酸化アルミニウム(Al、バルク)、ジルコニア(ZrO)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、カプトン(登録商標)、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはゴム(天然ゴム、合成ゴム)等により構成されていてもよい。
【0040】
負極集電体15は、電池反応(充放電反応)の進行に伴って負極から電源に向かって放出され、または外部負荷から負極に向かって流入する電子の流路として機能する導電性の部材である。負極集電体15を構成する材料に特に制限はない。負極集電体15の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。負極集電体15の厚さについて特に制限はないが、一例としては10~100μmである。
【0041】
発電要素10の最外層、即ち、発電要素10のZ方向の端部は、例えば、負極集電体15により構成されている。この最外層の負極集電体15の一方の主面は、放熱部材20に接している。負極集電体15が放熱部材20に接するとき、負極集電体15は銅またはニッケル等の熱伝導率の高い材料により構成されていることが好ましい。これにより、発電要素10と放熱部材20との間の界面熱抵抗が小さくなり、放熱性を高めることができる。
【0042】
二次電池100の負極は、負極集電体15および負極活物質層(後述の図7の金属層16)を含む。この負極活物質層は、二次電池100の充電過程において負極集電体15表面に形成される。換言すれば、負極集電体15上に析出するリチウム金属からなる層が、二次電池100の負極活物質層である。したがって、充電過程の進行に伴って負極活物質層の厚さは大きくなり、放電過程の進行に伴って負極活物質層の厚さは小さくなる。完全放電時には負極活物質層は存在していなくともよいが、場合によってはある程度のリチウム金属からなる負極活物質層を完全放電時において配置しておいてもよい。また、完全充電時における負極活物質層の厚さは特に制限されないが、通常は0.1~1000μmである。
【0043】
負極保護層13は、負極集電体15と固体電解質層12との間に設けられており(図1)、完全充電時には、負極活物質層と固体電解質層12との間に配置される(後述の図7)。この負極保護層13は、平面視で、固体電解質層12に重なる位置に設けられ、その周縁は、固体電解質層12の周縁よりも内側に配置されている。
【0044】
負極保護層13は、リチウムイオン伝導性を有しており、リチウム金属(負極活物質層)と固体電解質との反応を抑制する。この負極保護層13を設けることにより、電池反応の進行を妨げることなく、リチウム金属(負極活物質層)と固体電解質とが反応することに起因する固体電解質の劣化や電池容量の低下を防止することができる。
【0045】
ここで、ある材料が「リチウムイオン伝導性を有する」とは、当該材料の25℃におけるリチウムイオン伝導度が1×10-4[S/cm]以上であることをいう。一方、ある材料が「リチウムイオン伝導性を有しない」とは、当該材料の25℃におけるリチウムイオン伝導度が1×10-4[S/cm]未満であることをいう。負極保護層13の構成材料の25℃におけるリチウムイオン伝導度は、1×10-4[S/cm]以上であるが、好ましくは1.5×10-4[S/cm]以上であり、より好ましくは2.0×10-4[S/cm]以上であり、さらに好ましくは2.5×10-4[S/cm]以上であり、特に好ましくは3.0×10-4[S/cm]以上である。
【0046】
負極保護層13の構成材料について特に制限はなく、上述した機能を発現しうる種々の材料が採用可能である。負極保護層13の構成材料の一例として、銀および炭素が挙げられる。負極保護層13は、銀および炭素をともに含むことが好ましい。
【0047】
負極保護層13は、リチウムイオン伝導性を有するナノ粒子により構成されていてもよい。負極保護層13がナノ粒子を含むことで、負極保護層13の機能に優れたリチウム二次電池が提供されうる。ここで、「ナノ粒子」とは、平均粒子径がナノメートル(nm)のスケールを有する粒子を意味する。また、ナノ粒子の「平均粒子径」は、ナノ粒子を含む層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定される粒子径(観察される粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離)についての50%累積径(D50)をいう。ナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下であり、特に好ましくは100nm以下であり、最も好ましくは60nm以下である。特に、ナノ粒子の平均粒子径が60nm以下であると、デンドライトの成長抑制効果に特に優れるリチウム二次電池が提供されうる。なお、ナノ粒子の平均粒子径の下限値について特に制限はないが、通常は10nm以上であり、好ましくは20nm以上である。
【0048】
このようなナノ粒子は、負極保護層13としての機能に特に優れるという観点から、例えば、炭素、金、白金、パラジウム、ケイ素、銀、アルミニウム、ビスマス、スズおよび亜鉛からなる群から選択される1種または2種以上の元素を含むものであることが好ましく、これらの元素の単体または合金の1種または2種以上からなるものであることがより好ましい。また、ナノ粒子は、銀および炭素を含むものであることが好ましい。なお、負極保護層13がこのようなナノ粒子を含む場合には、当該層はバインダをさらに含んでもよい。
【0049】
上述したようなナノ粒子を含む負極保護層13を固体電解質層の負極集電体側の表面に形成する手法について特に制限はないが、例えば、適当な溶媒に上記ナノ粒子及び必要に応じてバインダを分散させたスラリーを固体電解質層の負極集電体側の表面に塗工し、溶媒を乾燥するという手法が採用されうる。なお、場合によっては、ナノ粒子の形態ではなく、上述した材料のいずれかを含む連続層をスパッタリング等の手法によって形成して負極保護層13としてもよい。
【0050】
以上、負極保護層13の構成材料についてのナノ粒子について説明したが、負極保護層13はその他の構成材料から構成されていてもよい。その他の構成材料としては、例えば、ハロゲン化リチウム(フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI))、Li-M-O(Mは、Mg、Au、Al、SnおよびZnからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素である)で表される複合金属酸化物、ならびにLi-Ba-TiO複合酸化物からなる群から選択される1種または2種以上のリチウム含有化合物が挙げられる。これらの材料はいずれも、リチウム金属と接触することによる還元分解について、固体電解質よりも安定である。すなわち、固体電解質層を構成する固体電解質がリチウム金属と接触することによって還元分解を受ける傾向と、負極保護層13の構成材料としての上記リチウム含有化合物がリチウム金属と接触することによって還元分解を受ける傾向とを比較したときに、後者の傾向の方が小さい。このため、上記リチウム含有化合物もまた、負極保護層13として機能しうるのである。このようなリチウム含有化合物を含む負極保護層13を形成する手法についても特に制限はないが、例えば、上述したリチウム含有化合物を含む連続層をスパッタリング等の手法によって形成して負極保護層13とすることができる。
【0051】
負極保護層13の平均厚さについて特に制限はなく、上述した機能を発現可能な厚さで配置されていればよい。ただし、負極保護層13の平均厚さが大きすぎると内部抵抗を上昇させることで充放電効率を低下させる要因となる。このため、負極保護層13の平均厚さは、固体電解質層12の平均厚さよりも小さいことが好ましい。また、負極保護層13の平均厚さが小さすぎると、負極保護層13を設けることによる反応抑制効果が十分に得られない可能性がある。これらの観点から、負極保護層13の平均厚さは、当該層がナノ粒子を含む層である場合には、好ましくは300nm~20μmであり、より好ましくは500nm~15μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。また、当該層がスパッタリング等の手法により形成されたリチウム含有化合物などからなる連続層である場合には、好ましくは0.5~20nmである。なお、負極保護層13の「平均厚さ」とは、負極保護層13の異なる数~十数か所の位置それぞれで、厚さを測定し、それらの算術平均値として算出される値を意味するものとする。
【0052】
(放熱部材20)
図2は、図1に示した放熱部材20の近傍を拡大して表している。発電要素10とラミネートフィルム30との間に設けられた放熱部材20は、発電要素10で発生した熱の伝熱経路として機能し、二次電池100の放熱性を高める役割を担っている。放熱部材20を設けることにより、放熱部材20を設けない場合に比べて、発電要素10とラミネートフィルム30との間の界面抵抗が小さくなり、放熱性を向上させることができる。特に、全固体電池である二次電池100では、液系二次電池に比べて放熱性が低くなりやすいので、放熱部材20を設けることにより、効果的に放熱性を向上させることができる。放熱部材20は、例えば、発電要素10のZ方向の両端に設けられている。
【0053】
この放熱部材20は、発電要素10およびラミネートフィルム30に接している。換言すれば、放熱部材20は、発電要素10に接する第1面S1と、ラミネートフィルム30に接する第2面S2とを有している。第1面S1および第2面S2は、対向して設けられている。第1面S1および第2面S2は、各々、周縁Ps1,Ps2を有している。周縁Ps1,Ps2は、例えば、平面視で同じ位置に設けられており、互いに同じ長さを有している。
【0054】
第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2は、平面視で、発電要素10の最外層の電極の周縁に重なる位置に配置されていることが好ましい。例えば、第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2は、平面視で、負極集電体15の周縁に重なる位置に配置されている。これにより、放熱部材20が、負極集電体15から拡幅した固体電解質層12に接触しにくくなり、放熱部材20との接触に起因する固体電解質層12の劣化等が抑えられる。
【0055】
第1面S1は、平面視で、正極活物質層11の主面(XY平面)を覆っていることが好ましい。換言すれば、平面視で、第1面S1の周縁Ps1は、正極活物質層11の周縁の外側に設けられていることが好ましい。これにより、正極に拘束圧がかかりやすくなり、発電要素10の抵抗を小さくすることができる。
【0056】
放熱部材20は、この第1面S1と第2面S2との間に中間部分20Mを有している。中間部分20Mは、平面視で、第1面S1および第2面S2に重なる位置に配置されている(後述の図3参照)。中間部分20Mは、周縁Pmを有している。
【0057】
図3は、図2に示したIII-III’線に沿った中間部分20Mの断面(XY断面)の構成を、第1面S1および第2面S2とともに表している。この中間部分20Mの断面は、第1面S1および第2面S2に対向する断面であり、例えば、第1面S1および第2面S2に略平行である。
【0058】
本実施形態では、この中間部分20Mの断面の面積が、第1面S1および第2面S2の面積よりも小さくなっている。第1面S1および第2面S2の面積は、例えば、略同じである。ここでは、中間部分20Mの周縁Pmの長さが、第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2の長さよりも短くなっており、中間部分20Mの周縁Pmが、第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2よりも内側に設けられている。詳細は後述するが、これにより、発電要素10の大きさが変化しても、ラミネートフィルム30への放熱部材20の影響を抑えることが可能となる。
【0059】
放熱部材20は、熱伝導性を有しており、1W/mk以上の熱伝導率を有していることが好ましい。これにより、発電要素10と放熱部材20との間、および、放熱部材20とラミネートフィルム30との間の界面熱抵抗が小さくなり、放熱性を高めることができる。放熱部材20は、絶縁性を有していることが好ましい。
【0060】
放熱部材20は、応力に応じて変形可能であり、75N/mm以下のビッカース硬さを有していることが好ましい。これにより、発電要素10の大きさが変化する際に、この変化に応じて放熱部材20が変形し、発電要素10およびラミネートフィルム30への放熱部材20(第1面S1および第2面S2)の接触が維持される。したがって、発電要素10と放熱部材20との間、および、放熱部材20とラミネートフィルム30との間の界面熱抵抗が小さくなり、放熱性を高めることができる。
【0061】
中間部分20Mのビッカース硬さは、第1面S1および第2面S2のビッカース硬さよりも大きいことが好ましい。これにより、第1面S1側および第2面S2側から応力がかかった際に、中間部分20Mが変形しにくくなるので、中間部分20Mの周縁Pmの広がりを、より効果的に抑えることができる。
【0062】
放熱部材20は、例えば、弾性材料と、弾性材料中に添加されたフィラーとを含んでいる。弾性材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴムおよびフッ素ゴム等を挙げることができる。フィラーとしては、例えば、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、銀、銅、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよびカーボンナノチューブ等を挙げることができる。放熱部材20は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属により構成されていてもよい。放熱部材20では、全部が同じ材料により構成されていてもよく、一部が異なる材料により構成されていてもよい。放熱部材20は、単層の放熱シートを成形することにより形成されていてもよく、複数の放熱シートを積層して形成するようにしてもよい。発電要素10とラミネートフィルム30との間に、放熱グリースを塗布することにより、放熱部材20を形成するようにしてもよい。
【0063】
(ラミネートフィルム30)
発電要素10および放熱部材20を収容するラミネートフィルム30には、例えば、PP(ポリプロピレン)、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。上記3層構造のラミネートフィルム30は、高出力化および冷却性能に優れており、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)用の大型機器用電池に好適に利用することができる。また、外部から掛かる発電要素10への群圧を容易に調整することができることから、ラミネートフィルム30はアルミニウムを含むことがより好ましい。ラミネートフィルム30に代えて、他の外装体を用いるようにしてもよい。例えば、公知の金属缶ケースを外装体として用いることができる。
【0064】
[二次電池の製造方法]
図4(A)~(C)は、二次電池100の製造方法の各工程を順に表している。
【0065】
まず、正極集電体14を形成した後、この正極集電体14の表面(主面)に正極活物質層11および弾性部材41を形成する(図4(A))。弾性部材41は、例えば、正極集電体14上に正極活物質層11を形成した後、マスクを用いて形成する。正極集電体14の一方の主面および他方の主面に、正極活物質層11および弾性部材41を形成するようにしてもよい。
【0066】
正極集電体14の表面に正極活物質層11および弾性部材41を形成した後、正極活物質層11および弾性部材41の上に、固体電解質層12を形成する(図4(B))。固体電解質層12は、例えば、ダイコータ-を用いて、正極活物質層11および弾性部材41の上に固体電解質を塗布することにより形成する。固体電解質層12は、転写法を用いて形成するようにしてもよい。
【0067】
固体電解質層12を形成した後、ロールプレスを用いて固体電解質層12を押圧し、固体電解質層12を正極活物質層11に密着させる。固体電解質層12と正極活物質層11とが密着することより、固体電解質層12と正極活物質層11との間の接触抵抗が低減し、二次電池100の電池性能が向上する。ここでは、正極活物質層11の周縁に弾性部材41が形成されているので、ロールプレスを用いて固体電解質層12を押圧するときに、固体電解質層12に局所的な力がかかりにくい。即ち、固体電解質層12への曲げ応力が緩和され、製造時の固体電解質層12の破損を抑えることができる。ロールプレスに代えて、等方圧プレスを用いて固体電解質層12を正極活物質層11に密着させるようにしてもよい。
【0068】
固体電解質層12を正極活物質層11に密着させた後、これらに、負極保護層13および負極集電体15をアッセンブリする(図4(C))。具体的には、負極集電体15の表面に負極保護層13を形成した後、負極保護層13を固体電解質層12に密着させる。これにより、単電池層1が形成される。この単電池層1を積層させて発電要素10を形成する。
【0069】
発電要素10を形成した後、正極集電体14に正極集電板、負極集電体15に負極集電板を各々接合する。接合は、例えば、超音波溶接機を用いて行う。続いて、発電要素10のZ方向の両端面に接するように放熱部材20を配置する。この後、発電要素10および放熱部材20をラミネートフィルム30に収容して、二次電池100が形成される。
【0070】
[二次電池の使用状態]
図5は、二次電池100の使用状態を表す斜視図である。図6は、図5に示すA方向から見た側面図である。
【0071】
二次電池100は、2枚の金属板200に挟持されて使用される。この2枚の金属板200は、締結部材により締結されている。締結部材には、例えば、ボルト300およびナット400が使用される。この金属板200、ボルト300およびナット400は、二次電池100(発電要素10)をその積層方向に加圧(拘束)する加圧部材として機能する。
なお、加圧部材は発電要素10をその積層方向に加圧することができる部材であれば特に制限されない。加圧部材として、典型的には、金属板200のように剛性を有する材料から形成された板と上述した締結部材との組み合わせが用いられる。また、締結部材についても、ボルト300およびナット400のみならず、発電要素10をその積層方向に拘束するように金属板200の端部を固定するテンションプレートなどが用いられてもよい。
【0072】
なお、発電要素10に印加される荷重(発電要素の積層方向における拘束圧力)の下限は、例えば0.1MPa以上であり、好ましくは1MPa以上であり、より好ましくは3MPa以上であり、さらに好ましくは5MPa以上である。発電要素10の積層方向における拘束圧力の上限は、例えば100MPa以下であり、好ましくは70MPa以下であり、より好ましくは40MPa以下であり、さらに好ましくは10MPa以下である。
【0073】
[二次電池の動作]
図7は、満充電状態(SOC100%)のときの二次電池100の構成の一例を表している。二次電池100は、例えば、発電要素10の積層方向(Z方向)に所定の拘束圧が付与された状態で動作する。二次電池100を充電すると、負極集電体15と固体電解質層12との間、より具体的には負極集電体15と負極保護層13との間に金属層16が形成される。この金属層16は、正極活物質層11内のリチウム(Li)イオンが固体電解質層12および負極保護層13を通過し、負極集電体15の表面にリチウム金属(LiM)として析出したものであり、負極活物質層として機能する。このように、充電時に金属層16が形成されることにより、放電時に比べて発電要素10の体積が増加する。この発電要素10の体積の増加に伴い、放熱部材20には、第1面S1側および第2面S2側から応力がかかる。
【0074】
一方、二次電池100が放電すると、金属層16からリチウムイオンが負極保護層13および固体電解質層12を通過して正極活物質層11内に吸蔵される。SOC0%では、金属層16が消失する(図1)。これにより、充電時に比べて発電要素10の体積が減少する。
【0075】
[二次電池の作用効果]
本実施形態に係る二次電池100では、放熱部材20が中間部分20Mを有しており、この中間部分20Mの断面(XY断面)の面積が、第1面S1の面積および第2面S2の面積よりも小さくなっている。これにより、ラミネートフィルム30への放熱部材20の影響を抑えることが可能となる。以下、この作用効果について詳細に説明する。
【0076】
図8は、比較例に係る二次電池(二次電池1000)の断面構成を表している。この二次電池1000では、放熱部材20の形状が本実施形態の二次電池100と異なり、中間部分(図2の中間部分20M)を有していない。このような二次電池1000では、充電時に発電要素10の体積が増加すると、放熱部材20がラミネートフィルム30を損傷させるおそれがある。詳細には、第1面S1側および第2面S2側から放熱部材20に応力がかかり、第1面S1と第2面S2との間の部分が第1面S1および第2面S2の周縁を超えて外側に大きく広がる。この大きく広がった放熱部材20が、ラミネートフィルム30に接触してラミネートフィルム30を損傷させる。特に、放熱部材20の厚み(Z方向の大きさ)を小さくすると、放熱部材20の広がりが顕著となる。ラミネートフィルム30が損傷すると、これに起因して、例えば、容量維持率の低下およびセル抵抗の上昇などの電池性能の劣化が生じるおそれがある。
【0077】
これに対し、二次電池100の放熱部材20は、中間部分20Mを有しており、この中間部分20Mの断面の面積は、第1面S1および第2面S2の面積よりも小さくなっている。ここでは、中間部分20Mの周縁Pmの長さが、第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2の長さよりも短くなっており、中間部分20Mの周縁Pmが、平面視で、第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2よりも内側に設けられている。したがって、第1面S1側および第2面S2側から中間部分20Mに応力がかかった際にも、第1面S1および第2面S2の外側への中間部分20Mの広がりが抑えられる。よって、中間部分20Mは、ラミネートフィルム30に接触しにくくなり、ラミネートフィルム30の損傷を防ぐことができる。また、ラミネートフィルム30の損傷に起因する電池性能の劣化を抑えることが可能となる。
【0078】
さらに、放熱部材20の厚みを小さくしても、中間部分20Mの広がりが抑えられるので、ラミネートフィルム30内部の空間が有効利用できる。したがって、電池性能を高めることが可能となる。
【0079】
さらに、放熱部材20に中間部分20Mを設けてラミネートフィルム30の損傷を抑えることにより、放熱部材20の第1面S1および第2面S2の面積を大きくすることが可能となる。これにより、放熱性を向上させることができる。
【0080】
以上のように、本実施形態の二次電池100では、放熱部材20が中間部分20Mを有しており、この中間部分20Mの断面の面積が、第1面S1の面積および第2面S2の面積よりも小さくなっている。これにより、発電要素10の大きさが変化して放熱部材20に応力がかかる際にも、第1面S1および第2面S2の外側への中間部分20Mの広がりが抑えられる。よって、ラミネートフィルム30への放熱部材20の影響を抑えることが可能となる。
【0081】
以下、上記実施形態で説明した二次電池100の変形例を説明する。なお、以下では、説明の重複を避けるため、上記実施形態で説明した二次電池の各構成と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0082】
<変形例>
図9は、変形例に係る二次電池100の要部の構成を表している。この二次電池100の放熱部材20では、第1面S1の面積および第2面S2の面積が互いに異なっている。この点を除き、変形例に係る二次電池100は、上記実施形態で説明した二次電池100と同様の構成を有しており、同様の作用効果を奏する。
【0083】
発電要素10とラミネートフィルム30との間に設けられた放熱部材20は、例えば、厚み方向(Z方向)の断面が台形状を有している。例えば、発電要素10に接する第1面S1の面積が、ラミネートフィルム30に接する第2面S2の面積よりも大きくなっている。このように、発電要素10に接する第1面S1の面積を、ラミネートフィルム30に接する第2面S2の面積よりも大きくすることにより、放熱性を高めることが可能となる。
【0084】
第1面S1と第2面S2との間の中間部分20Mでは、第1面S1および第2面S2に対向する断面(XY断面)の面積が、例えば、第1面S1側から前記第2面S2側にかけて小さくなっている。この中間部分20Mの断面の面積は、第1面S1の面積よりも小さく、かつ、第2面S2の面積よりも大きくなっている。この中間部分20Mの周縁Pmは、平面視で、第1面S1の周縁Ps1の内側、かつ、第2面S2の周縁Ps2の外側に設けられている。このため、中間部分20Mの周縁Pmの長さは、第1面S1の周縁Ps1の長さよりも短く、かつ、第2面S2の周縁Ps2の長さより長くなっている。
【0085】
図示は省略するが、放熱部材20では、第2面S2の面積が第1面S1の面積よりも大きくなっていてもよい。このとき、中間部分20Mでは、例えば、第1面S1および第2面S2に対向する断面の面積が、例えば、第1面S1側から前記第2面S2側にかけて小さくなっている。この中間部分20Mの断面の面積は、第2面S2の面積よりも小さく、かつ、第1面S1の面積よりも大きくなっている。
【0086】
本変形例に係る二次電池100では、放熱部材20が中間部分20Mを有しており、この中間部分20Mの断面の面積が、第1面S1および第2面S2の面積の一方よりも小さくなっている。これにより、上記実施形態で説明したのと同様に、発電要素10の大きさが変化して放熱部材20に応力がかかる際にも、第1面S1または第2面S2の外側への中間部分20Mの広がりが抑えられる。よって、ラミネートフィルム30への放熱部材20の影響を抑えることが可能となる。
【0087】
また、この放熱部材20は、上記実施形態で説明した放熱部材20(図2)に比べて、放熱部材20の厚み方向の断面の面積を大きくしやすい。これにより、放熱部材20の熱抵抗が小さくなり、放熱性を高めることが可能となる。
【0088】
<適用例>
二次電池100は、例えば、組電池に適用される。組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0089】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0090】
二次電池100は、例えば、車両に適用される。二次電池100は、体積あたりのエネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められる。したがって、二次電池100は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0091】
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、出力特性に優れた高容量の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより、走行距離の長い自動車とすることができるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0092】
以上、実施形態および変形例を用いて本発明の二次電池について説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができる。例えば、上記実施形態および変形例で説明した二次電池の各層の構成、形状および大きさ等は一例であり、他の構成、形状および大きさ等であってもよい。
【0093】
例えば、上記実施形態等では、積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウム二次電池を例に挙げて説明したが、本発明は、双極型(バイポーラ型)等の他の二次電池にも適用可能である。また、上記実施形態では、単電池層1を複数有する二次電池100について説明したが、二次電池100は単層構造を有していてもよい。
【0094】
また、図3では、四角形の平面形状を有する放熱部材20を図示したが、放熱部材20は、円または楕円等の他の平面形状を有していてもよい。また、発電要素10の平面形状は、円、楕円または四角形等のどのような形状であってもよい。
【0095】
また、上記実施形態等では、二次電池100が充電されると、リチウム金属を含む金属層16が析出される例を説明したが、二次電池100では、充電時に、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)などのアルカリ金属を含む金属層16が析出されてもよい。さらに、二次電池100は、充電時に金属層が析出されるものでなくてもよい。本発明は、例えば、シリコン系またはスズ系の負極活物質を用いた二次電池など、放電時と充電時との間で発電要素の体積変化が比較的大きい電池に好適に利用される。
【0096】
また、上記実施形態では、中間部分20Mの周縁Pmが、平面視で第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2よりも内側に設けられている場合について説明したが、中間部分20Mの断面の面積が第1面S1および第2面S2の少なくとも一方の面積よりも小さく構成されている限り、中間部分20Mの周縁Pmは、平面視で、第1面S1および第2面S2の周縁Ps1,Ps2に重なる位置に設けられていてもよい。
【0097】
例えば、図10に示したように、中間部分20Mは、周縁Pmの内側に空隙を有していてもよい。
【実施例0098】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下において、操作はグローブボックス内で行った。また、グローブボックス内で用いた器具および装置等は、事前に十分に乾燥処理を行った。
【0099】
<実施例>
まず、正極活物質としてのLiNi0.8Mn0.1Co0.1、導電助剤としてのアセチレンブラック、および硫化物固体電解質(LPS(LiS-P))を、70:5:25の質量比となるように秤量し、グローブボックス内でメノウ乳鉢で混合した後、遊星ボールミルでさらに混合撹拌した。得られた混合粉体100質量部に対してスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を2質量部加え、メシチレンを溶媒として加えて正極活物質スラリーを調製した。次いで、上記で調製した正極活物質スラリーを正極集電体としてのカーボンコートアルミニウム(Al)箔の両面に塗工し、乾燥することにより正極活物質層(片面の厚さ100μm)を形成して、正極を作製した。
【0100】
硫化物固体電解質(LPS(LiS-P))100質量部に対してスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を2質量部加え、メシチレンを溶媒として加えて固体電解質スラリーを調製した。次いで、上記で調製した固体電解質スラリーを支持体としてのステンレス(SUS)箔の表面に塗工し、乾燥して、ステンレス箔の表面に固体電解質層(厚さ40μm)を作製した。次いで、上記で作製した正極の正極活物質層と、同様に上記で作製した固体電解質層とが向き合うように重ね合わせた後、静水圧プレス(700MPa、25℃、1分間)により貼り合わせ、固体電解質層側のステンレス箔を剥離して、正極集電体/正極活物質層/固体電解質層の積層体を得た。
【0101】
一方、負極保護層の構成材料として、カーボンブラックおよび銀のナノ粒子を準備した。このカーボンブラックおよび銀のナノ粒子100質量部に対してスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を10質量部加え、メシチレンを溶媒として加えてナノ粒子スラリーを調製した。次いで、上記で調製したナノ粒子スラリーを支持体としてのステンレス箔の両面に塗工し、乾燥して、負極集電体としてのステンレス箔の両面に負極保護層(片面の厚さ10μm)を作製した。
【0102】
次に、上記の正極集電体/正極活物質層/固体電解質層の積層体における固体電解質層の露出表面の中央部と、上記で作製した負極集電体上の負極保護層とが向き合うように重ね合わせた後、静水圧プレス(700MPa、25℃、1分間)により貼り合わせ、固体電解質層の中央部に負極保護層を形成した。これにより、発電要素を作製した。
【0103】
続いて、この発電要素の正極集電箔にAlタブを、負極集電箔にNiタブを超音波溶接機により接合した。この後、発電要素の両面に、放熱部材を配置した。放熱部材は、ゴムおよびフィラーを含む材料により作成した。放熱部材には、図2に示した形状と同様の形状を有する中間部分を形成した。最後に、外装体(アルミラミネートフィルム)に、この放熱部材とともに発電要素を入れて真空封止することで二次電池を作製した。
【0104】
<比較例>
放熱部材に中間部分を形成しなかったこと以外は、上述した実施例と同様の手法により、本比較例の二次電池を作製した。
【0105】
[二次電池の評価1(サイクル試験および外観検査)]
セル拘束圧を3MPaとし、60℃で、セル電圧3.0Vから4.3Vの範囲において、充放電レート0.5Cの充放電(充電CCCVモード(0.01Cカットオフ)、放電CCモード)を100回繰り返して、サイクル試験を行った。このサイクル試験後に二次電池を解体し、外装体(アルミラミネートフィルム)の内層、および外層の破れ・シワを確認した。
【0106】
比較例の二次電池では、アルミラミネートフィルムのシワおよび破れが確認されたのに対し、実施例の二次電池では、アルミラミネートフィルムにシワおよび破れが確認されなかった。
【0107】
[二次電池の評価2(放電時抵抗測定)]
上記サイクル試験後、SOC=100%まで二次電池を充電した。その後、下記(1)~(7)の順に二次電池の放電を繰り返し、電流量と電圧低下との関係をプロットした。このプロットしたグラフの傾きから放電時の抵抗を算出した。また、容量維持率を求めた。
(放電条件 全て60℃で行った)
(1)0.05C CC放電 15sec
(2)2時間休止
(3)0.1C CC放電 15sec
(4)2時間休止
(5)0.2C CC充放電 15sec
(6)2時間休止
(7)0.5C CC放電 15sec
比較例の二次電池では、100サイクル後の容量維持率が70%、セル抵抗が35Ωcmであったのに対し、実施例の二次電池では、100サイクル後の容量維持率が95%、セル抵抗が20Ωcmであった。
【0108】
上記の結果から、実施例の二次電池では、比較例の二次電池に比べて、ラミネートフィルムの損傷を抑えることができることがわかる。また、ラミネートフィルムの損傷に起因する二次電池の性能劣化も抑えることができることがわかる。
【符号の説明】
【0109】
1 発電要素、
11 正極活物質層、
12 固体電解質層、
13 負極保護層、
14 正極集電体、
15 負極集電体、
16 金属層、
20 放熱部材、
20M 中間部分、
30 ラミネートフィルム、
41 弾性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10