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  • 特開-ボイラ水位の検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149764
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ボイラ水位の検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/24 20060101AFI20231005BHJP
   F22B 37/78 20060101ALI20231005BHJP
   G01F 23/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01F23/24 A
F22B37/78
G01F23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058518
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久郷 康行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA01
2F014AB01
2F014AC03
(57)【要約】
【課題】ボイラにおける水位の検出や給水の制御を安定して行えるようにする。
【解決手段】上端側が上側連通路26によって缶体11内の蒸気存在部分17に連通されるとともに、下端側が下側連通路25によって缶体11内の缶水15の存在部分に連通された水位検出系20、22を、缶体11外に有する。水位検出系20、22における下側連通路25よりも上側における缶水15を貯留した部分と、缶体11における缶水15の存在部分の中の下側連通路25の連通部分よりも上側の部分とを連通させる缶水循環路40を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側が上側連通路によって缶体内の蒸気存在部分に連通されるとともに下端側が下側連通路によって缶体内の缶水存在部分に連通された水位検出系を缶体外に有し、
前記水位検出系における前記下側連通路よりも上側における缶水を貯留した部分と、前記缶体の缶水存在部分における前記下側連通路の連通部分よりも上側における部分とを連通させる缶水循環路を備えることを特徴とするボイラ水位の検出装置。
【請求項2】
缶水循環路に流量調節手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のボイラ水位の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ水位の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ装置においては、缶体外に水位検出系が設けられている。水位検出系は、たとえば上下方向に長さの異なる複数本の検出電極を設けた水位制御用の水位検出装置や、目視式の水柱管を備えた水位検出装置や、水位発信器付きの水柱管を備えた水位検出装置などを有するものである。いずれの水位検出装置も、その上端側が上側連通路によって缶体内の蒸気存在部分に連通されるとともに下端側が下側連通路によって缶体内の缶水存在部分に連通された構成で、内部に蒸気相と缶水相とを備える(特許文献1)。
【0003】
このような水位検出系において、冷態時には、水位検出系における水位と缶体内の水位とは同一レベル(高さ)になる。しかし、ボイラの運転中には、水位検出系における水位と缶体内の水位とが相違することが一般的である。なぜなら、ボイラの運転中において、水柱管などを備えた缶体外の水位検出系の内部の缶水は外気によって冷却されるために約70℃前後になるが、缶体内の缶水は現に蒸発していることから飽和温度(たとえば蒸気圧力が0.8MPaである場合には約175℃)となり、両者に温度差が存在することで、缶水の比重の違いなどによって水位差が生じるためである。
【0004】
また、缶体内では缶水が蒸発しているため、缶水の内部に水蒸気の気泡が混在し、その分だけ缶内では缶水の水位が上昇する。これにより、水位検出系の水位と缶内の水位との差が大きくなる。
【0005】
具体的には、一般的なボイラにおいては、缶体内の水位と水位検出系の水位との水位差は約100mm程度になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49-63468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ボイラにおける缶体内の水位と水位検出系の水位とに大きな水位差が存在すると、缶体内の缶水が発生蒸気とともに缶体外に排出されるいわゆるキャリーオーバの問題が生じる。つまり、水柱管などの水位検出系の水位でボイラの給水制御を行う場合には、缶体内の実際の水位は水位検出系により検出される水位よりも高いために、キャリーオーバの発生を抑えるために缶体の蒸気室の容積を大きくすることが必要になり、その結果、缶体自体が大きくなって、不経済な設計製作が必要になってしまう。
【0008】
また腐食の発生の問題もある。水位検出系における水柱管や、水位検出電極を備えた水位検出装置や、給水制御機器などは、缶体外の外気温度すなわち雰囲気温度で冷却されることから、系における機器の内部の蒸気が冷却されて凝縮したドレンとなり、このドレンが時間とともに増加する。すると、機器の内部や缶体との缶水側の連絡通路の内部は、蒸気ドレンやpHの低いドレンが多くなって、水柱管の内面にスラッジなどが付着したり、また低pHを原因とする腐食の進行により漏れが発生したりするという不具合が発生しやすくなる。
【0009】
さらに、水位の安定性に問題が生じる。つまり、缶体内の缶水は温度が高く、また沸騰状態であることで缶水中に蒸気の気泡が混在していることから、缶体内の缶水はかなりのレベルの撹拌状態にあり、このため水位検出系における水位もそれに連動して大きく動揺し、変動する。その結果として、給水制御のための正確な水位の検出が難しいという問題点がある。
【0010】
そこで本発明は、ボイラにおける水位の検出や給水の制御を安定して行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明のボイラ水位の検出装置は、
【0012】
上端側が上側連通路によって缶体内の蒸気存在部分に連通されるとともに下端側が下側連通路によって缶体内の缶水存在部分に連通された水位検出系を缶体外に有し、
前記水位検出系における前記下側連通路よりも上側における缶水を貯留した部分と、前記缶体の缶水存在部分における前記下側連通路の連通部分よりも上側における部分とを連通させる缶水循環路を備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成であると、水位検出系における下側連通路よりも上側において貯留されている缶水は缶体外の外気により冷却されて比重が大きくなることで下側連通路を経て缶体内に戻り、それに対応して缶体内の高温の缶水が缶水循環路を経て水位検出系に入り込む。このため、水位検出系の内部の缶水の温度が上昇し、そのために缶体の内部の缶水の温度と水位検出系の内部の缶水の温度との温度差が小さくなり、両者の水位差も小さくなる。そして、それにより、両者の水位差が大きいときに生じる様々な問題点が解消される。
【0014】
本発明のボイラ水位の検出装置によれば、缶水循環路に流量調節手段が設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のボイラ水位の検出装置によれば、缶体の内部の缶水の温度と水位検出系の内部の缶水の温度との温度差が小さくなり、両者の水位差も小さくなるため、両者の水位差が大きいときに生じる様々な問題点が解消されて、ボイラにおける水位の検出や給水の制御を安定して行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態のボイラ水位の検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1にはボイラ装置が示されている。このボイラ装置は円筒状の缶体11を有し、この缶体11は、図1の紙面と垂直な方向を長さ方向として、水平方向に設置されている。缶体11の内部には水平方向の円筒状体12が缶体11と同方向に設置されており、この円筒状体12の内部に水平方向の燃焼室13が形成されている。円筒状体12の周囲には多数の煙管14が水平方向に配置されている。燃焼室13においては、火炎がたとえば円筒状体12の長さ方向に形成され、それによって円筒状体12の長さ方向すなわち図1における紙面の奥方向に流れる高温の燃焼ガスが発生される。この燃焼ガスは缶体11の端部に設けられた煙室の壁面などで流動方向が反転され、煙管14を図1における紙面の手前方向に流れたうえで、缶体外へ排出される。
【0018】
缶体11の内部には、円筒状体12および煙管14が水没するように、缶水15が貯留されている。缶水15の水面16よりも上側は、蒸気貯留空間17となっている。そして、円筒状体12および煙管14を通る燃焼ガスが缶水15と熱交換することで、缶水15が加熱されて蒸気が発生される。缶体11には、図示を省略した給水路と蒸気排出路とが連通されている。
【0019】
図1に示されるボイラ装置は、水位検出系20を備える。図示の水位検出系20は、例示として、上下方向に長さの異なる複数本の検出電極21を設けた水位制御用の水位検出装置22と、目視式の水柱管23を設けた水位検出装置24とを備える。
【0020】
検出電極21を設けた水位検出装置22は、下側連通路としての配管25によって缶体11における缶水15を貯留した部分に連通されるとともに、上側連通路としての配管26によって缶体11における蒸気貯留空間17に連通されている。図示の例では、配管26は水平方向の缶体11の頂部に接続されている。これによって、水位検出装置22の内部には、原理的には缶体11の内部と同レベルで缶水15が貯留される。そして、この缶水15が上下方向に長さの異なる複数本の検出電極21に触れることで、缶体11の内部における缶水15の水位が検出される。図示のボイラ装置では、検出電極21の検出結果に基づいて、缶体11への給水を制御するようにされている。
【0021】
配管26には空気抜き弁27が分岐状態で接続されている。また配管25には、ブローバルブ28が分岐状態で接続されている。ブローバルブ28は、このブローバルブ28を開くことで、水位検出装置22の内部に貯留する缶水15を外部に排出することができる。水位検出装置22には濃度が高くなった缶水がたまり易いが、ブローバルブ28を開いくことで濃度が高くなった缶水を缶外へ排出することができて、この濃度が高くなった缶水がボイラ装置に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0022】
水柱管23を備えた水位検出装置24は、点検コック29を備えた上側連通路としての蒸気導入管30によって、検出電極21を備えた水位検出装置22における蒸気を貯留した部分を経由して、缶体11における蒸気貯留空間17に連通されるとともに、点検コック31を備えた下側連通路としての缶水導入管32によって、水位検出装置22における缶水を貯留した部分を経由して、缶体11における缶水15を貯留した部分に連通されている。このため、両点検コック29、31を開くと、水柱管23の内部の水位が、水位検出装置22における水位つまり缶体11の内部における缶水15の水位と同じレベルになり、そのことを目視によって確認することができる。
【0023】
缶水導入管32には、排水コック33を備えた排水管34が分岐状態で接続されている。点検コック29、31を閉じたうえで、排水コック33を開くことで、水柱管23の内部の缶水を外部に排出することができる。
【0024】
検出電極21を備えた水位検出装置22と缶体11との間には、さらに、缶水循環用配管38がわたされている。缶水循環用配管38には、流量調節手段としての循環量調節弁39が設けられている。
【0025】
缶水循環用配管38は、その一端が、水位検出装置22における缶水15を貯留した部分、詳細には配管25が接続された部分よりも上側の部分に、連通されている。さらに詳細には、缶水循環用配管38の一端は、複数の検出電極21における、図外の給水装置を起動させるための検出電極の下端の位置よりも下側の位置の部分で、水位検出装置22に接続されている。
【0026】
缶水循環用配管38の他端は、缶体11における缶水15が貯留されて存在している部分の、配管25の接続部分よりも上側の位置の部分で、缶体11に接続されている。
【0027】
その結果、循環量調節弁39が設けられた缶水循環用配管38によって、缶水循環路40が形成される。このとき、水位検出装置22および配管25は外気によって冷却されるために、これら水位検出装置22および配管25の内部の水温はそれに応じて低下し、この水温が低下した部分では缶水15の比重が大きくなる。この比重が大きくなった缶水15は、配管25を経て缶体11の内部に戻る。すると、それにともなって、缶体11の内部の熱く比重が大きくない缶水15が缶水循環用配管38を経て水位検出装置22の内部に流入する。すなわち缶水15の循環が行われる。缶水15の循環量は、循環量調節弁39の開度を調節することによって変化させることができる。
【0028】
このとき、同様に、水柱管23を備えた水位検出装置24の内部の缶水の入れ替えも行うことができる。
【0029】
このようにすることで、水位検出系20に缶体11の内部の熱い缶水15が流入することで、水位検出系20の内部の缶水15の温度を高くすることができる。詳細にはその温度を缶水15の飽和温度の近傍まで上昇させることができる。これにより、水位検出系20すなわち検出電極21を備えた水位検出装置22や、水位検出装置24の水柱管23における水位と、缶体11の内部における水位との水位差41が小さくなる。そのため、水位差41が大きい場合に生じる上述の問題点を、たとえばキャリーオーバが発生するなどの問題点を、良好に抑制することができる。
【0030】
しかも、温度差により十分に濃縮された水位検出系20の内部の缶水15が、すなわち検出電極21を備えた水位検出装置22や、水位検出装置24の水柱管23の内部の缶水15が、十分に濃縮され安定した状態で循環する。その結果、蒸気の凝縮により生じる低pH水の滞留がなくなるとともに、錆やスラッジなどの腐食原因物質の発生も抑制できて、缶体11およびその周辺の機器の健全性を保つことができる。
【0031】
さらに、水位検出系20の内部の缶水15の温度と、缶体11の内部の缶水15の温度との温度差を小さくすることができるため、水位検出系20の内部の水位、すなわち水位検出装置22における検出電極21を設けた部分の水位などを、安定させることができる。それによって、検出電極21の検出結果にもとづいて動作する給水制御機器を容易に調整することができる。
【0032】
缶水循環路40すなわち缶水循環用配管38に流量調節手段としての循環量調節弁39を設置したため、缶水15の循環量や水位の安定化について細かな調節を行うことが可能である。なお、流量調節手段としては、上述の循環量調節弁39のほかに、オリフィスやその他の機器を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
11 缶体
15 缶水
16 水面
17 蒸気貯留空間
20 水位検出系
21 検出電極
22 水位検出装置
23 水柱管
24 水位検出装置
25 配管(下側連通路)
26 配管(上側連通路)
38 缶水循環用配管
39 循環量調節弁(流量調節手段)
40 缶水循環路
図1