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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149784
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】接合構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231005BHJP
   C04B 35/581 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C04B35/581
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058543
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海野 豊
(72)【発明者】
【氏名】只木 幹也
(72)【発明者】
【氏名】横野 拓也
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB14
5F131EB16
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】接続部材がセラミック部材から抜け難くする。
【解決手段】ウエハ載置台10は、ウエハ載置面12aを備えたセラミック部材12と、セラミック部材12に埋設されウエハ載置面12aに沿う形状のRF電極14と、セラミック部材12のうちウエハ載置面12aとは反対側の面からRF電極14に達するように埋設された金属製の接続部材16と、接続部材16のうち外部に露出している面に接合層20を介して接合された金属製の外部通電部材18と、を備える。接続部材16は、表面の算術平均粗さRaが6~16μmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を備えたセラミック部材と、
前記セラミック部材に埋設され前記ウエハ載置面に沿う形状の埋設電極と、
前記セラミック部材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面から前記埋設電極に達するように埋設された金属製の接続部材と、
前記接続部材のうち外部に露出している面に接合層を介して接合された金属製の外部通電部材と、
を備え、
前記接続部材は、表面の算術平均粗さRaが6~16μmである、
接合構造体。
【請求項2】
前記接続部材を構成する粒子の平均粒径は、4~8μmである、
請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記接続部材は、気孔率が5~20%の金属多孔質体で構成されている、
請求項1又は2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記セラミック部材は、窒素アルミニウムで構成されており、
前記接続部材は、Mo、W又はMo-W系合金で構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造体。
【請求項5】
前記外部通電部材の耐引張荷重が、120kgf以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック部材と、セラミック部材に埋設された電極と、電極に達するようにセラミック部材に埋設された接続部材と、接合層を介して接続部材に接合された外部通電部材とを備えた接合構造体が知られている。例えば、特許文献1には、図6に示すセラミックヒータ610が開示されている。このセラミックヒータ610は、内部にヒータエレメント614が埋設されたセラミック部材612を備えている。セラミック部材612のうち、セラミック部材612のウエハ載置面612aとは反対側の面612bには有底筒状の孔612cが設けられている。セラミック部材612には、孔612cの底面からヒータエレメント614に達するように円柱状の接続部材616が埋設されている。接続部材616のうち外部に露出している面には、接合層620を介して外部通電部材618が接合されている。こうしたセラミックヒータ610は、プラズマを利用してウエハにCVD成膜を施したりエッチングを施したりするのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/198892号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックヒータ610では、プラズマパワーやヒータパワーの増加に伴う接続部材616の熱膨張が繰り返し発生して外部通電部材618に過負荷が生じた場合、外部通電部材618が接続部材616ごとセラミック部材612から抜けるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、接続部材がセラミック部材から抜け難くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接合構造体は、
ウエハ載置面を備えたセラミック部材と、
前記セラミック部材に埋設され前記ウエハ載置面に沿う形状の埋設電極と、
前記セラミック部材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面から前記埋設電極に達するように埋設された金属製の接続部材と、
前記接続部材のうち外部に露出している面に接合層を介して接合された金属製の外部通電部材と、
を備え、
前記接続部材は、表面の算術平均粗さRaが6~16μmである、
ものである。
【0007】
この接合構造体では、接続部材は、表面の算術平均粗さRaが6~16μmである。そのため、外部通電部材に過負荷が生じたとしても、アンカー効果により外部通電部材が接続部材ごとセラミック部材から抜け難くすることができる。
【0008】
本発明の接合構造体において、前記接続部材を構成する粒子の平均粒径は、4~8μmであってもよい。こうすれば、平均粒径が4μm未満の場合と比べると、良好なアンカー効果を得ることができる。ここで、接続部材を構成する粒子の平均粒径とは、接続部材の作製に用いられる原材料粉末の平均粒径ではなく、接続部材そのものを構成する粒子の平均粒径である。
【0009】
本発明の接合構造体において、前記接続部材は、気孔率が5~20%の金属多孔質体で構成されていてもよい。こうすれば、表面の算術平均粗さRaが6~16μmである接続部材を、比較的簡単に作製することができる。このような接続部材は、例えば、平均粒径が4~8μmの粒径を有する金属粉末を用いて、粉末冶金によって作製される。
【0010】
本発明の接合構造体において、前記セラミック部材は、窒素アルミニウムで構成されていてもよく、前記接続部材は、Mo、W又はMo-W系合金で構成されていてもよい。こうすれば、セラミック部材にクラックが発生し難くなる。セラミック部材と、接続部材との熱膨張係数の差が小さいためである。
【0011】
本発明の接合構造体において、前記外部通電部材の耐引張荷重が、120kgf以上であってもよい。接合構造体の製造時や使用時には、外部通電部材に大きな負荷が加わることが多く、前記外部通電部材の耐引張荷重が、120kgf以上であることの意義は高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ウエハ載置台10の要部の断面図。
図2】接続部材16の斜視図。
図3図1のA部分の拡大図。
図4】接続部材16の製造工程図。
図5】ウエハ載置台10の製造工程図
図6】セラミックヒータ610の要部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の接合構造体の好適な一実施形態であるウエハ載置台10について、以下に説明する。図1はウエハ載置台10の要部の断面図、図2は接続部材16の斜視図、図3図1のA部分の拡大図である。なお、本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0014】
ウエハ載置台10(本発明の接合構造体に相当)は、プラズマを利用してエッチングやCVDなどを行なうウエハを載置するために用いられるものであり、図示しない真空チャンバ内に設置される。このウエハ載置台10は、セラミック部材12と、RF電極(本発明の埋設電極に相当)14と、接続部材16と、外部通電部材18と、ガイド部材22とを備えている。
【0015】
セラミック部材12は、円板状に形成され、一方の面がウエハを載置するためのウエハ載置面12aとなっている。なお、図1では、ウエハ載置面12aが下になっているが、実際にウエハ載置台10を使用する際には、ウエハ載置面12aが上になるようにする。このセラミック部材12の材質としては、例えば、窒化アルミニウムが好ましい。また、セラミック部材12のウエハ載置面12aとは反対側の面12bには、有底筒状の孔12cが形成されている。セラミック部材12は、例えば直径150~500mm、厚み0.5~30mmとしてもよい。孔12cは、例えば直径5~15mm、深さ5~25mmとしてもよい。
【0016】
RF電極14は、セラミック部材12に埋設された電極であり、ウエハ載置面12aに沿う形状の部材、ここでは円形状の金属メッシュである。このRF電極14の材質としては、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル、白金やこれらの合金などが好ましい。金属メッシュは、例えば、線径0.1~1.0mm、1インチあたり10~100本としてもよい。また、RF電極14は印刷により形成されてもよい。
【0017】
接続部材16は、セラミック部材12のうち孔12cの底面からRF電極14に達するように埋設された金属部材である。接続部材16は、第1面16a、第2面16b及び第3面16cを備えた、円柱形状の部材である。第1面16aは、RF電極14側の表面であり、円形面である。第2面16bは、接合層20側の表面であり、第1面16aと同形状の円形面である。また、第2面16bは、孔12cに露出しており、孔12cの底面と同一面である。第3面16cは、円柱の側面である。この接続部材16は、金属多孔質材料で形成されている。金属としては、例えば、Mo、W、又はMo-W系合金などを用いることができる。
【0018】
接続部材16の第1面16a及び第2面16bの直径Lは、1~5mmであることが好ましく、2.5~3.5mmであることがより好ましい。接続部材16の高さHは、1~5mmであることが好ましく、1~2mmであることがより好ましい。また、第1面16a、第2面16b及び第3面16cの算術平均粗さRaは、6~16μmであることが好ましい。接続部材16を構成する金属粒子の平均粒径は、4~8μmであることが好ましい。接続部材16を構成する金属多孔質材料の気孔率は、5~20%であることが好ましい。
【0019】
外部通電部材18は、接続部材16に接合層20を介して接合された第1部18aと、この第1部18aのうち接続部材16の接合面とは反対側の面に中間接合部18cを介して接合された第2部18bとを備えている。第2部18bは、プラズマ雰囲気や腐食ガス雰囲気で使用されることを考慮して、耐酸化性の高い金属で構成されている。しかし、耐酸化性の高い金属は、一般に熱膨張係数が大きいため、直接接続部材16と接合すると、両者の熱膨張差によって接合強度が低下する。そのため、第2部18bは、熱膨張係数が接続部材16の熱膨張係数に近い金属からなる第1部18aを介して接続部材16に接合されている。第2部18bの材質としては、純ニッケル、ニッケル基耐熱合金、金、白金、銀及びこれらの合金などが好ましい。第1部18aの材質としては、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金、タングステン-銅-ニッケル合金、コバールなどが好ましい。接合層20は、ロウ材によって接合されている。ロウ材としては、金属ロウ材が好ましく、例えばAu-Niロウ材、Alロウ材、Agロウ材などが好ましい。接合層20は、接続部材16の第2面16bと第1部18aの端面とを接合している。外部通電部材18の中間接合部18cは、第1部18aと第2部18bとを接合すると共に、ガイド部材22の内周面と第1部18aの外周面全面又はその一部との隙間やガイド部材22の内周面と第2部18bの外周面の一部とを接続している。そのため、第1部18aは、中間接合部18cによって周囲の雰囲気との接触が遮断されている。なお、中間接合部18cも、接合層20と同様の材質を用いることができる。第1部18aは、直径3~6mm、高さ2~5mmとしてもよく、第2部18bは、直径3~6mm、高さは任意としてもよい。
【0020】
ガイド部材22は、外部通電部材18のうち少なくとも第1部18aの周囲を囲む円筒状の部材であり、第1部18aよりも耐酸化性の高い材質で形成されている。このガイド部材22は、内径が第1部18a及び第2部18b(フランジを除く)の外径より大きく、外径が孔12cの直径より小さく、高さが第1部18aの高さより高い。ガイド部材22のうち孔12cの底面に面する端面は、接合層20を介して接続部材16、外部通電部材18及びセラミック部材12と接合されている。ガイド部材22の材質は、外部通電部材18の第2部18bの材質として例示したものを使用することができる。なお、ガイド部材22の端面は、図1に示すように、接合層20を介して穴12cの底面に接合されていてもよいし、穴12cの底面から離れていてもよい。
【0021】
次に、ウエハ載置台10の製造方法について、図4及び図5を用いて説明する。まず、接続部材16を用意する。接続部材16は、例えば以下のような粉末冶金により製造される。すなわち、金属粉末97と樹脂粉末98とを混合する。これにより、混合物96が得られる(図4A)。次に、混合物96を金型に充填して加圧成形する。これにより、成形体86が得られる(図4B)。次に、成形体86を、400~500℃で1時間程度加熱して、成形体86に含まれる樹脂を燃焼させて除去する。そして、成型体86を1300~1800℃で1時間程度加熱して金属粉末97を焼結させる。これにより、金属多孔質材料で形成された接続部材16が得られる(図4C)。ここで、金属粉末97の平均粒径、圧力、加熱時の温度及び加熱時間を適宜変更することにより、所望の算術平均粗さRa、平均粒径及び気孔率を有する接続部材16を得ることができる。なお、接続部材16を構成する粒子の平均粒径は、金属粉末97の平均粒径と略同じとなる。
【0022】
続いて、セラミック原料粉末を円板になるようにプレス成形して成形体62を作製する(図5A)。この成形体62には、円形の金属メッシュからなるRF電極14と、接続部材16とを埋設しておく。この成形体62をホットプレス炉又は常圧炉等で焼成することにより、成形体62が焼結してセラミック部材12となる(図5B)。得られたセラミック部材12を所定寸法になるように加工する。
【0023】
続いて、セラミック部材12のウエハ載置面12aとは反対側の面12bに研削加工を施して有底筒状の孔12cを形成する(図5C)。このとき、接続部材16の第2面16bが孔12cに露出し、孔12cの底面と接続部材16の第2面16bとが同一面になるように加工する。
【0024】
続いて、孔12cの底面に接合層20となるロウ材72を敷き、その上に外部通電部材18の第1部18a、中間接合部18cとなるロウ材78c、ガイド部材22及び外部通電部材18の第2部18bをこの順に積み上げて積層体を得る(図5D)。この積層体を非酸化性条件下で加熱してロウ材72,78cを溶融しその後固化することにより、図1に示すウエハ載置台10を得る。非酸化性条件とは、真空下又は非酸化性雰囲気(例えばアルゴン雰囲気や窒素雰囲気などの不活性雰囲気)下をいう。
【0025】
以上説明したウエハ載置台10では、接続部材16は、表面の算術平均粗さRaが6~16μmである。そのため、外部通電部材18に過負荷が生じたとしても、アンカー効果により外部通電部材18が接続部材16ごとセラミック部材12から抜け難くすることができる。
【0026】
また、ウエハ載置台10では、接続部材16を構成する粒子の平均粒径は、4~8μmであることが好ましい。こうすれば、平均粒径が4μm未満の場合と比べると、良好なアンカー効果を得ることができる。
【0027】
更に、ウエハ載置台10では、接続部材16は、気孔率が5~20%の金属多孔質体で構成されていることが好ましい。こうすれば、表面の算術平均粗さRaが6~16μmの接続部材16を、比較的簡単に作成することができる。
【0028】
更にまた、ウエハ載置台10では、セラミック部材12は、窒素アルミニウムで構成されており、接続部材16は、Mo、W又はMo-W系合金で構成されている。そのため、セラミック部材12にクラックが発生し難くなる。セラミック部材12と、接続部材16との熱膨張係数の差が小さいためである。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。なお、本発明は、セラミック部材12に埋設された電極と外部通電部材18との間に設けられ且つセラミック部材12に埋設されている接続部材16を有する構造体に好適である。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、接続部材16は金属多孔質材料で構成されていたが、これに限定されない。上述した実施形態において、接続部材16は、緻密質の金属材料で構成されていてもよい。
【0031】
上述した実施形態において、接続部材16は、第1面16aと第3面16cとの間に、所定の曲率半径Rを有するコーナー部を有していてもよい。こうすれば、コーナー部周辺のセラミック部材12にクラックが発生することを防止できる。この場合、曲率半径Rは、0.3~1.5mmであることが好ましい。
【0032】
上述した実施形態では、セラミック部材12にRF電極14を埋設したが、RF電極14に代えて又は加えて、静電電極を埋設してもよいし、ヒータエレメントを埋設してもよいし、静電電極とヒータエレメントの両方を埋設してもよい。
【0033】
上述した実施形態のウエハ載置台10のウエハ載置面12aとは反対側の面12bに、セラミック部材12と同じ材質の筒状のシャフトをセラミック部材12と一体化してもよい。この場合、シャフトの中空内部に外部通電部材18等が配置されるようにする。シャフトを製造するには、例えば、金型を用いてセラミック原料粉末をCIPにて成形し、常圧炉にて所定温度で焼成し、焼成後、所定寸法となるように加工すればよい。また、シャフトとセラミック部材12とを一体化するには、例えば、シャフトの端面をセラミック部材12の面12bに突き合わせ、所定温度に昇温して両者を接合して一体化すればよい。
【0034】
上述した実施形態では、外部通電部材18の第2部18bのフランジとガイド部材22の端面とを接合しなかったが、両者の間を詰めてその隙間に接合層(例えば接合層20と同じ材質)を設け、両者をこの接合層を介して接合してもよい。
【実施例0035】
以下に、本発明の実施例について説明する。以下の実験例1~9のうち実験例1~5が本発明の実施例に相当し、実験例6~9が比較例に相当する。なお、以下の実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0036】
[実験例1]
1.接続部材16の用意
(1)接続部材16の作製
図4の製造手順にしたがって製造された接続部材16を作製した。すなわち、金属粉末97として平均粒径4μmのMo粉末を91質量%と、樹脂粉末98を9質量%とを混合して混合体96を作製した。次に、作製した混合体96を金型に充填して加圧成形することで、円柱状の成型体86を作製した。そして、成型体86を500℃で1時間加熱して、成型体86に含まれる樹脂を燃焼させて除去した。そして、成形体86を1800℃で1時間加熱して、金属粉末97を焼結させて円柱状の接続部材16を得た。得られた接続部材16のサイズは、上面及び下面の直径が3mm、高さが1.5mmであった。
【0037】
(2)表面の算術平均粗さRaの測定
JIS B 0601:2013に準じた方法で光干渉計を用いて測定した値を、接続部材16の表面(第1面16a、第2面16b及び第3面16c)の算術平均粗さRaとした。その結果、表面の算術平均粗さRaは6μmであった。
【0038】
(3)平均粒径の測定
以下のようにして、接続部材16を構成する粒子の平均粒径を測定した。すなわち、まず、接続部材16を切断し、切断面のSEM画像(倍率3000倍)を取得した。そして、その画像上に直線を引き、40個の粒子を横切る線分の長さをそれぞれ測定し、それらの平均値として算出した。その結果、接続部材16を構成する粒子の平均粒径は4μmであった。
【0039】
(4)気孔率の測定
以下のようにして、接続部材16の気孔率を測定した。すなわち、まず、接続部材16の切断面の樹脂埋め及び研磨を行って観察用試料を作製した。次に、切断面のSEM画像(倍率1000倍)を撮影した。次に、得た画像を画像解析することにより、画像中の画素の輝度データの輝度分布から判別分析法(大津の2値化)で閾値を決定した。その後、決定した閾値に基づいて画像中の各画素を物体部分と気孔部分とに2値化して、物体部分の面積と気孔部分の面積とを算出した。そして、全面積(物体部分と気孔部分の合計面積)に対する気孔部分の面積の割合を、気孔率として導出した。その結果、接続部材16の気孔率は5%であった。
【0040】
2.ウエハ載置台の作製
(1)成形体62の作製
図5の製造手順にしたがい、3台のウエハ載置台10のサンプルを製造した。まず、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤とを混合した混合粉末にRF電極14と接続部材16とを埋設し、一軸加圧成形することによって成形体62を作製した。RF電極14としては、モリブデン製の金網を使用した。この金網は、直径0.12mmのモリブデン線を、1インチあたり50本の密度で編んだものを使用した。
【0041】
(2)焼成
続いてこの成形体62を金型に入れ、カーボンフォイル内に密封し、ホットプレス法で焼成することにより、セラミック部材12を得た。焼成後、セラミック部材12を直径200mm、厚さ8mmになるように加工した。
【0042】
(3)孔12cの形成
続いて、セラミック部材12のウエハ載置面12aとは反対側の面12bにマシニングセンタによって有底筒状の孔12cを形成した。孔12cは、直径9mm(開口部直径12mm)、深さ4.5mmとした。このとき、接続部材の第2面16bが孔12cに露出し、孔12cの底面と接続部材の第2面16bとが同一面になるように加工した。
【0043】
(4)外部通電部材18の接合
続いて、孔12cの底面にAu-Niからなるロウ材72を敷き、その上に外部通電部材18の第1部18a、Au-Niからなるロウ材78c、ニッケル製(純度99%以上)のガイド部材22及び外部通電部材18の第2部18bをこの順に積み上げて積層体を得た。第1部18aとしては、コバール製で直径4mm、高さ3mmのものを使用し、第2部18bとしては、ニッケル製(純度99%以上)で直径4mm(フランジ直径8mm)、高さ60mmのものを使用した。この積層体を、不活性雰囲気下、960~1100℃で10分間加熱して、図1に示すウエハ載置台10を得た。
【0044】
[実験例2~9]
実験例2~9では、表面の算術平均粗さRa、平均粒径及び気孔率が、表1に示した値となるような接続部材16を用意した点以外は、実験例1と同様にウエハ載置台10を3台ずつ作製した。
【0045】
【表1】
【0046】
[ウエハ載置台の評価]
(1)製造時破損の有無
実験例1~9において作製したウエハ載置台10に対して、製造時破損の有無を確認した。実験例ごとに3台のウエハ載置台10の製造時破損の有無を確認した。具体的には、成形体62を焼結させてセラミック部材12を製造した直後にセラミック部材12にクラックが発生したか否かを調べ、クラックが発生していたものについて製造時破損ありと判定した。
【0047】
(2)耐引張荷重
実験例1~9において作製したウエハ載置台10に対して、耐引張荷重を確認した。実験例ごとに3台のウエハ載置台10の耐引張荷重を確認した。耐引張荷重の確認は、以下のように行なった。すなわち、外部通電部材18の自由端に雄ネジを形成し、その雄ネジに円柱状の接続治具の雌ネジを螺合した後、700℃、酸素雰囲気下で800時間放置した。その後、セラミック部材12のウエハ載置面12aをワーク設置面に固定した。その状態で、引っ張り試験機を用いて、垂直方向の荷重を1~120kgfまで変化させながら、接続治具を引っ張った。120kgfの荷重で引っ張っても接続部材がセラミック部材12から抜けないものの耐引張荷重は、120kgf以上とした。そうでないものの耐引張荷重は、外部通電部材18ごと接続部材16がセラミック部材12から抜けた際の引張荷重とした。
【0048】
(3)判定
上述した方法により、製造時破損の有無及び耐引張荷重を確認した。製造時破損がなく耐引張荷重が120kgf以上のものをOKと判定した。一方、製造時破損があったもの又は耐引張荷重が120kgf未満のものをNGと判定した。
【0049】
接続部材16の表面の算術平均粗さRaが6~16μmである実験例1~5(1つの実験例につき3台)では、いずれも、製造時破損はなく、耐引張荷重は120kgf以上であった。また、実験例1~5では、接続部材16を構成する粒子の平均粒径が、4~8μmであった。
【0050】
一方、表面の算術平均粗さRaが、6μm未満である実験例6~8では、製造時破損はないものの、耐引張荷重が120kgf未満であった。実験例6~8では、接合部材16を構成する粒子の平均粒径が3μmであり、接続部材16の気孔率が5%未満であった。また、表面の算術平均粗さRaが16μmよりも大きい実験例9では、製造時破損があり、耐引張荷重が120kgf未満であった。実験例9では、接合部材16を構成する粒子の平均粒径が10μmであり、接続部材16の気孔率が24%であった。なお、実験例6において、「~」を用いて耐引張荷重を所定の数値範囲として表したのは、実験例6で作製した3台のウエハ載置台において、耐引張荷重がばらついたからである。実験例7~9についても同様である。
【符号の説明】
【0051】
10 ウエハ載置台、12 セラミック部材、12a ウエハ載置面、12b 面、12c 孔、14 RF電極、16 接続部材、16a 第1面、16b 第2面、16b 第3面、16c 第3面、18 外部通電部材、18a 第1部、18b 第2部、18c 中間接合部、20 接合層、22 ガイド部材、62 成形体、72 ロウ材、78c ロウ材、86 成形体、96 混合物、97 金属粉末、98 樹脂粉末、610 セラミックヒータ、612 セラミック部材、612a ウエハ載置面、612b 面、612c 孔、614 ヒータエレメント、616 接続部材、618 外部通電部材、620 接合層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6