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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149785
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】移動棚装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/10 20060101AFI20231005BHJP
   A47B 53/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65G1/10 F
A47B53/02 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058544
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平塚 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大石 圭史
(72)【発明者】
【氏名】加門 和司
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022FF24
3F022MM01
3F022MM02
3F022PP06
3F022QQ07
(57)【要約】
【課題】設置が容易な構造としつつ、移動棚を予め定められた移動方向に沿って適切に移動させることができる移動棚装置の実現。
【解決手段】移動棚装置は、移動方向Xに沿って移動する少なくとも1つの移動棚10と、移動棚10を制御する制御システムと、を備え、移動棚10は、移動方向Xに沿う案内なしに床面上を移動するように構成され、移動検出装置5は、少なくとも1つの慣性計測装置50を備え、慣性計測装置50は、棚本体2における、少なくとも、移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度と、上下方向に沿う上下軸心回りの角速度とを計測するように構成され、制御システムは、慣性計測装置50の計測結果に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量ΔXを演算し、棚本体2の幅方向Yの移動量ΔYを演算し、棚本体2の上下軸心回りの回転量θ1を演算し、それらの演算結果に基づいて、補正動作を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
前記移動検出装置は、少なくとも1つの慣性計測装置を備え、
前記慣性計測装置は、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度と、前記上下方向に沿う上下軸心回りの角速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記慣性計測装置による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記上下軸心回りの角速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う、移動棚装置。
【請求項2】
予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
前記移動検出装置は、第1慣性計測装置と第2慣性計測装置との2つの慣性計測装置を備え、
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とは、前記棚本体における前記幅方向の中心位置である幅方向中心位置に対して前記幅方向の両側に分かれて配置され、
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とのそれぞれは、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記第1慣性計測装置及び前記第2慣性計測装置の少なくとも一方による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記第1慣性計測装置及び前記第2慣性計測装置の少なくとも一方による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記第1慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との差分に基づいて前記棚本体の前記上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う、移動棚装置。
【請求項3】
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とは、前記棚本体における前記幅方向の両端部領域に分かれて、同じ高さに配置されている、請求項2に記載の移動棚装置。
【請求項4】
前記制御システムは、前記第1慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との平均に基づいて、前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算する、請求項2又は3に記載の移動棚装置。
【請求項5】
予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
複数の前記車輪のそれぞれは、前記幅方向に沿う軸心回りに回転するように前記棚本体に支持され、
前記移動検出装置は、少なくとも1つの慣性計測装置と、第1エンコーダ及び第2エンコーダと、を備え、
前記棚本体における前記幅方向の中心位置である幅方向中心位置に対して前記幅方向の両側に分かれて配置された一対の前記車輪を第1車輪及び第2車輪として、前記第1エンコーダは前記第1車輪の回転量を検出し、前記第2エンコーダは前記第2車輪の回転量を検出するように構成され、
前記慣性計測装置は、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記慣性計測装置による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記第1エンコーダ及び前記第2エンコーダの少なくとも一方の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記第1エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との差分に基づいて前記棚本体の上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う、移動棚装置。
【請求項6】
前記制御システムは、前記第1エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と前記第2エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との平均に基づいて、前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算する、請求項5に記載の移動棚装置。
【請求項7】
複数の前記車輪のそれぞれが前記幅方向に沿う軸心回りに回転するように前記棚本体に支持され、
前記制御システムは、前記幅方向に分かれて配置された少なくとも2つの車輪の回転量を異ならせるように前記駆動装置を制御することにより前記補正動作を行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の移動棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような移動棚装置の例が、特開2004-161405号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1の移動棚装置(レールレス移動ラック)は、走行路(11)に沿って移動する複数の移動棚(移動ラック15)と、移動棚の移動方向への移動を案内するガイド(14)と、制御部(28)とを備えている。複数の移動棚のそれぞれには、ガイド(14)に対する棚本体(ラック本体16)の位置ずれを検知するガイドセンサ(27)が設置されている。そして、ガイドセンサ(27)によって棚本体の上記位置ずれが検知されると、制御部(28)は、移動棚の前輪(19)及び後輪(22)の回転速度を制御して、棚本体の上記位置ずれを修正するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-161405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の移動棚装置では、移動棚を移動方向に案内するために、走行路(11)に沿って形成された磁気棒からなるガイド(14)が床に埋設されている。従って、このような移動棚装置を使用するためには、床にガイド(14)を設置するための大掛かりな工事を施す必要があった。
【0006】
そこで、設置が容易な構造としつつ、移動棚を予め定められた移動方向に沿って適切に移動させることができる移動棚装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る移動棚装置は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
前記移動検出装置は、少なくとも1つの慣性計測装置を備え、
前記慣性計測装置は、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度と、前記上下方向に沿う上下軸心回りの角速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記慣性計測装置による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記上下軸心回りの角速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う。
【0008】
本構成によれば、少なくとも1つの慣性計測装置により、移動棚を移動させた場合における棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。このような慣性計測装置は、移動棚の棚本体に容易に取り付けることができる。従って、比較的簡素な構成で、棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。
そして、本構成によれば、移動棚が床面上を移動する際に、移動方向の移動を案内するガイド等を必要とせず、移動の際に生じた幅方向の基準位置に対する移動棚のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚の傾きとを適切に補正することができる。よって移動棚を、移動方向に沿って適切に移動させることができる。
また、床面に移動棚を案内するためのレールやガイド等を設けるための大掛かりな工事を施す必要がないため、容易に移動棚装置を設置できる。
【0009】
本開示に係る別の移動棚装置は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
前記移動検出装置は、第1慣性計測装置と第2慣性計測装置との2つの慣性計測装置を備え、
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とは、前記棚本体における前記幅方向の中心位置である幅方向中心位置に対して前記幅方向の両側に分かれて配置され、
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とのそれぞれは、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記第1慣性計測装置及び前記第2慣性計測装置の少なくとも一方による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記第1慣性計測装置及び前記第2慣性計測装置の少なくとも一方による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記第1慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との差分に基づいて前記棚本体の前記上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う。
【0010】
本構成によれば、2つの慣性計測装置により、移動棚を移動させた場合における棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。このような慣性計測装置は、移動棚の棚本体に容易に取り付けることができる。従って、比較的簡素な構成で、棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。また、第1慣性計測装置の計測結果に基づく棚本体の移動方向の移動量と、第2慣性計測装置の計測結果に基づく棚本体の移動方向の移動量との差分に基づいて、棚本体の上下軸心回りの回転量を演算することができる。従って、例えば棚本体の幅方向の寸法が大きい場合であっても、比較的高精度に回転量を演算することができる。
そして、本構成によれば、移動棚が床面上を移動する際に、移動方向の移動を案内するガイド等を必要せず、移動の際に生じた幅方向の基準位置に対する移動棚のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚の傾きとを適切に補正することができる。よって移動棚を、移動方向に沿って適切に移動させることができる。
また、床面に移動棚を案内するためのレールやガイド等を設けるための大掛かりな工事を施す必要がないため、容易に移動棚装置を設置できる。
【0011】
本開示に係る更に別の移動棚装置は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
複数の前記車輪のそれぞれは、前記幅方向に沿う軸心回りに回転するように前記棚本体に支持され、
前記移動検出装置は、少なくとも1つの慣性計測装置と、第1エンコーダ及び第2エンコーダと、を備え、
前記棚本体における前記幅方向の中心位置である幅方向中心位置に対して前記幅方向の両側に分かれて配置された一対の前記車輪を第1車輪及び第2車輪として、前記第1エンコーダは前記第1車輪の回転量を検出し、前記第2エンコーダは前記第2車輪の回転量を検出するように構成され、
前記慣性計測装置は、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記慣性計測装置による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記第1エンコーダ及び前記第2エンコーダの少なくとも一方の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記第1エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との差分に基づいて前記棚本体の上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う。
【0012】
本構成によれば、少なくとも1つの慣性計測装置により、移動棚を移動させた場合における棚本体の移動方向の移動量及び幅方向の移動量を検出することができると共に、2つのエンコーダにより、移動方向の移動量、及び上下軸心回りの回転量を検出することができる。このような慣性計測装置及びエンコーダは、移動棚の棚本体に容易に取り付けることができる。従って、比較的簡素な構成で、棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。
そして、本構成によれば、移動棚が床面上を移動する際に、移動方向の移動を案内するガイド等を必要とせず、移動の際に生じた幅方向の基準位置に対する移動棚のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚の傾きを適切に補正することができる。よって移動棚を、移動方向に沿って適切に移動させることができる。
また、床面に移動棚を案内するためのレールやガイド等を設けるための大掛かりな工事を施す必要がないため、容易に移動棚装置を設置できる。
【0013】
移動棚装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】移動棚装置の構成を模式的に示す側面図
図2】移動棚装置の構成を模式的に示す平面図
図3】棚本体の位置のずれ量を模式的に示す平面図
図4】制御ブロック図
図5】別実施形態の移動棚装置の構成を模式的に示す平面図
図6】別実施形態における、棚本体の位置のずれ量を模式的に示す平面図
図7】別実施形態の移動棚装置の構成を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、移動棚装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
1.移動棚装置
図1及び図2に示すように、移動棚装置1は、予め定められた移動方向Xに沿って移動する少なくとも1つの移動棚10と、移動棚10を制御する制御システム100と、を備えている。本実施形態では、移動棚装置1は、複数の移動棚10を備えている。また、移動棚装置1は、床面Fに固定された固定棚11を更に備えている。ここで、上下方向に沿う上下方向視で移動方向Xに直交する方向を幅方向Yとする。また、本実施形態では、移動方向Xの一方側を移動方向第1側X1とし、移動方向Xの他方側を移動方向第2側X2とする。そして、幅方向Yの一方側を幅方向第1側Y1とし、幅方向Yの他方側を幅方向第2側Y2とする。ここでは、移動方向Xは水平方向であり、幅方向Yは、移動方向Xに直交する水平方向である。
【0017】
本実施形態では、複数の移動棚10は、移動方向Xに並ぶように配置されている。そして、複数の移動棚10に隣接するように、固定棚11が配置されている。本例では、複数の移動棚10は、移動方向Xにおいて、一対の固定棚11に挟まれるように配置されている。言い換えると、複数の移動棚10の移動方向Xの両側に、固定棚11がそれぞれ配置されている。そして、複数の移動棚10のそれぞれは、一対の固定棚11の間を、移動方向Xに移動自在に構成されている。
【0018】
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、棚間通路Eが、一対の固定棚11の間に形成されている。本例では、棚間通路Eを形成する位置は、一対の固定棚11の間の領域において変更可能に構成されている。図1の例では、固定棚11と、当該固定棚11に隣接する移動棚10との間に、棚間通路Eが形成されている。また、図2の例では、2つの移動棚10の間に、棚間通路Eが形成されている。
【0019】
本例では、棚間通路Eは、棚間通路Eに隣接する移動棚10や固定棚11に対して物品の出し入れ等の作業を行うための通路である。そのため、棚間通路Eは、作業者や台車等が進入可能である。複数の移動棚10及び一対の固定棚11のうちの任意の棚に対して物品の出し入れ等を行う場合は、当該棚(移動棚10又は固定棚11)に隣接する領域に棚間通路Eを形成するために、単数又は複数の移動棚10を移動方向Xに移動させる。図1及び図2に示した例では、一対の固定棚11の間に、単一の棚間通路Eが形成されているが、一対の固定棚11の間に、複数の棚間通路Eが形成されていても良い。
【0020】
2.固定棚
本実施形態では、図1及び図2に示すように、固定棚11は、幅方向Y及び上下方向に延在するように形成されている。そして、固定棚11は、移動棚10が当該固定棚11の位置よりも移動方向Xの外側に移動することを規制している。本例では、固定棚11は、物品を収容するための複数の収容部(不図示)を備えている。複数の収容部は、固定棚11の内部において、少なくとも上下方向及び幅方向Yに並ぶように配置されている。図示の例では、複数の収容部は、移動方向Xの内側(移動棚10がある側)から物品を出し入れするように構成されている。
【0021】
3.移動棚
図1図2、及び図4に示すように、移動棚10は、棚本体2と、棚本体2の底部21に設けられて床面Fを転動する複数の車輪3と、複数の車輪3を駆動する駆動装置4と、棚本体2の移動量を検出する移動検出装置5と、を備えている。そして、移動棚10は、移動方向Xに沿う案内なしに床面F上を移動するように構成されている。本実施形態では、複数の移動棚10のそれぞれが、移動方向Xに沿う案内なしに床面F上を移動する。移動棚装置1は、これらの移動棚10を移動方向Xに案内するためのレールやガイド等を備えていない。すなわち、「案内なし」とは、レール等の軌道による案内がなく、且つ、仮想的な軌道による案内(電磁誘導式、光学誘導式、磁気誘導式等の、無軌道ガイドによる案内)もないことを意味する。以下では、移動棚10の具体的な構成について説明する。なお、複数の移動棚10は、それぞれ同じ構造を有している。
【0022】
3-1.棚本体
本実施形態では、図1及び図2に示すように、棚本体2は、幅方向Y及び上下方向に延在するように形成されている。そして、棚本体2は、物品を収容するための複数の収容部(不図示)を備えている。本例では、複数の収容部は、棚本体2の内部において、少なくとも上下方向及び幅方向Yに並ぶように配置されている。そして、棚本体2は、移動方向Xの両側から、複数の収容部に対して物品の出し入れをできるように構成されている。
【0023】
3-2.車輪、駆動装置
本実施形態では、図1及び図2に示すように、複数の車輪3のそれぞれが、幅方向Yに沿う軸心Q回りに回転するように棚本体2に支持されている。移動棚10は、複数の車輪3が床面F上を転動することにより、移動方向Xに移動する。本例では、複数の車輪3は、移動方向X及び幅方向Yに分かれて配置されている。また、複数の車輪3は、底部21における、幅方向Yの両端部に設けられている。図示の例では、底部21における幅方向Yの両端部のそれぞれにおいて、複数(ここでは2つ)の車輪3が移動方向Xに分かれて配置されている。
【0024】
本実施形態では、図4に示すように、駆動装置4は、棚本体2に複数設けられている。より具体的には、複数の駆動装置4のそれぞれは、底部21に設けられており、複数の車輪3のそれぞれに対応するように配置されている。本例では、1つの車輪3に対応して、1つの駆動装置4が設けられている。なお、本例では、駆動装置4は、電動モータである。このような構成により、制御システム100は、駆動装置4を制御して、幅方向Yに分かれた車輪3の回転量(回転速度)を異ならせることができる。なお、本例では、底部21の幅方向Yにおける中央領域に、車輪3とは異なる補助輪(不図示)が設けられている。この補助輪に対しては、電動モータ等の駆動装置は設けられていない。
【0025】
3-3.移動検出装置
図2及び図3に示すように、移動検出装置5は、少なくとも1つの慣性計測装置50を備えている。本実施形態では、1つの慣性計測装置50が、棚本体2の底部21に設けられている。また、慣性計測装置50は、底部21における、幅方向Yの中央部に配置されている。
【0026】
図3に示すように、慣性計測装置50は、棚本体2における、少なくとも、移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度と、上下方向に沿う上下軸心回りの角速度とを計測するように構成されている。本実施形態では、慣性計測装置50は、棚本体2における、移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度と、上下方向に沿う上下軸心回りの角速度と、を間接的に計測する。本例では、慣性計測装置50は、自己の移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度と、上下軸心P回りの角速度とを計測する。つまり、慣性計測装置50は棚本体2に固定されているため、慣性計測装置50の移動方向Xの加速度、幅方向Yの加速度、及び上下軸心P回りの角速度は、棚本体2の移動方向Xの加速度、幅方向Yの加速度、及び上下軸心P回りの角速度とみなすことができる。よって、慣性計測装置50は、棚本体2の上記加速度等を間接的に計測する。本例では、慣性計測装置50は、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサとを備えている。これにより慣性計測装置50は、移動方向X、幅方向Y、及び上下方向のそれぞれにおける、自己の加速度及び角速度(具体的には、各方向に沿う軸心回りの角速度)を計測することができる。
【0027】
4.制御システム
本実施形態では、図4に示すように、制御システム100は、移動棚制御装置Hにおいて、後述する演算処理や各制御を実行するように構成されている。移動棚制御装置Hは、CPU等の演算処理装置を備えると共にメモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、演算処理装置等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御システム100の各機能が実現される。本例では、移動棚制御装置Hは、複数の移動棚10のそれぞれを制御する。より具体的には、移動棚制御装置Hは、複数の移動棚10のそれぞれに備えられている駆動装置4及び移動検出装置5を制御する。図1及び図2に示す例では、移動棚制御装置Hは、固定棚11に設けられている。なお、移動棚制御装置Hは、複数の移動棚10のそれぞれに設けられていても良い。この場合、移動棚制御装置Hは、自己が搭載された移動棚10の駆動装置4及び移動検出装置5を制御する。
【0028】
制御システム100は、慣性計測装置50による移動方向Xの加速度の計測結果に基づいて棚本体2の移動方向Xの移動量を演算し、慣性計測装置50による幅方向Yの加速度の計測結果に基づいて棚本体2の幅方向Yの移動量を演算し、前記慣性計測装置50による上下軸心回りの角速度の計測結果に基づいて棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算する。具体的には、制御システム100は、慣性計測装置50の計測結果に基づく移動方向Xの加速度を2回積分して棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。また、制御システム100は、慣性計測装置50の計測結果に基づく幅方向Yの加速度を2回積分して棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。また、制御システム100は、慣性計測装置50の計測結果に基づく上下軸心回りの角速度を1回積分して棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算する。本実施形態では、制御システム100は、移動中の移動棚10に設けられた移動検出装置5(ここでは、慣性計測装置50)から計測結果を受信する(図4)。そして、制御システム100は、受信した計測結果から棚本体2の移動方向Xの移動量、幅方向Yの移動量、及び上下軸心回りの回転量を演算する。本例では、移動棚10が規定距離Lを移動する毎に、慣性計測装置50は、計測結果を制御システム100に送信する。そして、制御システム100は、当該計測結果を受信する毎に、上記演算を実行する。すなわち、制御システム100は、移動棚10が規定距離Lを移動する毎に上記演算を実行する。また、本例では、制御システム100は、棚本体2の移動方向Xの移動量に基づいて、棚本体2が本来配置されるべき位置との移動方向Xのずれ量を演算する。
【0029】
図3に示すように、棚本体2は、移動方向Xに移動する際に、例えば、床面Fの凹凸や車輪3の滑り等により、本来移動すべき軌跡である棚移動経路Tからずれた位置に移動したり、上下方向視で棚本体2の姿勢が傾いたりする場合がある(以下、このような場合を単に位置ずれと称する)。図3の例では、棚本体2が位置ずれなしに移動する棚移動経路Tと、この場合における棚本体2の中心が移動する中心位置移動経路Uと、を示している。図示の例では、移動前の棚本体2が、棚移動経路Tにおける移動方向第2側X2の端部に配置されている。そして、棚本体2は、棚移動経路Tに沿って、移動方向第2側X2から移動方向第1側X1に平行移動する。棚本体2が移動方向Xに規定距離Lを移動すると、棚本体2の中心は、始点位置P0から、中心位置移動経路U上の第2位置P2に移動する。ここで、棚本体2の中心位置は、慣性計測装置50が配置された位置と一致している。そして、慣性計測装置50は、棚本体2が規定距離Lを移動方向Xに移動した位置(すなわち、当該棚本体2の中心位置である第2位置P2)において、計測結果を制御システム100に送信する。なお、ここでは、規定距離Lは、300mmとされている。しかし、規定距離Lは、300mm以上でも良いし、300mm未満でも良い。図示の例では、分かり易く説明するために、規定距離Lを大きくして表している。
【0030】
一方、図3の例では、棚本体2に位置ずれが生じて、棚本体2の中心が始点位置P0から幅方向Y(ここでは幅方向第1側Y1)にずれた第1位置P1に移動した例を示している。制御システム100は、棚本体2が始点位置P0から第1位置P1まで移動する間における、棚本体2の移動方向Xの移動量ΔX及び幅方向Yの移動量ΔYと、上下軸心回りの回転量θ1とを演算すると共に、第2位置P2からの移動方向Xにおけるずれ量ΔDを演算する。ここでは、制御システム100は、始点位置P0と第2位置P2との移動方向Xの規定距離Lから上記移動量ΔXを減算して、移動方向Xにおけるずれ量ΔDを演算する。なお、図示の例では、棚本体2の位置ずれを分かり易く説明するために、第1位置P1の位置が中心位置移動経路Uから大きくずれるようにして示している。
【0031】
そして、図3に示すように、制御システム100は、それらの演算結果に基づいて駆動装置4を制御して、幅方向Yの基準位置に対する移動棚10のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚10の傾きと、を補正する補正動作を行う。本実施形態では、制御システム100は、移動方向Xに移動中の移動棚10に対して補正動作を行う。本例では、制御システム100は、上述したように、移動棚10が規定距離Lを移動すると、慣性計測装置50の計測結果に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量、幅方向Yの移動量、及び上下軸心回りの回転量を演算する。そして、制御システム100は、上記演算の結果に基づいて、移動棚10が次の規定距離Lを移動する間に、当該移動棚10に対して補正動作を行う。ここで、図3に示すように、「基準位置」は、棚移動経路Tに沿う移動棚10の位置である。そのため、幅方向Yの基準位置とは、上下方向視において、棚本体2の幅方向Yの両端が、棚移動経路Tの幅方向Yの両端に沿う位置である。言い換えれば、幅方向Yの基準位置とは、棚本体2の幅方向Yの中心位置が、棚移動経路Tの幅方向Yの中心位置と一致する位置である。また、「上下軸心回りの基準姿勢」とは、棚移動経路Tに沿う移動棚10の姿勢であり、棚本体2の移動方向Xの両端が幅方向Yに沿うと共に、棚本体2の幅方向Yの両端が移動方向Xに沿う姿勢である。言い換えれば、上下軸心回りの基準姿勢は、棚本体2の上下方向視での短手方向が移動方向Xに沿うと共に、棚本体2の上下方向視での長手方向が幅方向Yに沿う姿勢である。図3において実線で示す移動棚10の幅方向Yの位置は基準位置であり、当該移動棚10の上下軸心回りの姿勢は基準姿勢である。
【0032】
また、本実施形態では、制御システム100は、幅方向Yに分かれて配置された少なくとも2つの車輪3の回転量を異ならせるように駆動装置4を制御することにより補正動作を行う。本実施形態では、制御システム100は、演算結果に基づいて、幅方向Yに分かれて配置された複数の車輪3の回転量(回転速度)を異ならせるように駆動装置4を制御する。これにより、移動棚10の幅方向Yの一方側の端部が、上下方向視で他方側の端部よりも先行して傾き、移動棚10の位置ずれが補正される。このように、本例では、制御システム100は、規定距離Lを移動する毎に移動棚10の位置ずれを検出すると共に移動棚10の位置ずれを補正する。このため、移動棚10の移動方向Xの案内をするレールやガイド等を設けなくても、移動棚10は棚移動経路Tに沿って移動できる。
【0033】
〔第2実施形態〕
移動棚装置の第2実施形態について、図面(図5及び図6)を参照して説明する。以下では、本実施形態の移動棚装置について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。特に明記しない点については、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0034】
1.移動検出装置
図5及び図6に示すように、移動検出装置5は、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54との2つの慣性計測装置50を備えている。本実施形態では、移動棚10に、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54との2つの慣性計測装置50が設けられている。本例では、一対の固定棚11の間に配置された複数の移動棚10のそれぞれに、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54との2つの慣性計測装置50が設けられている。
【0035】
図5に示すように、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、棚本体2における幅方向Yの中心位置である幅方向中心位置16に対して幅方向Yの両側に分かれて配置されている。より具体的には、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、棚本体2における幅方向Yの両端部領域22に分かれて、同じ高さに配置されている。本例では、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、棚本体2の底部21において、同じ高さになるように設けられている。そして、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、底部21における幅方向Yの両端部領域22に分かれて配置されている。具体的には、第1慣性計測装置52は、第2慣性計測装置54に対して幅方向第1側Y1に配置されている。より詳細には、第1慣性計測装置52は、棚本体2の両端部領域22のうちの一方側(ここでは幅方向第1側Y1)である第1端部領域22aに配置されている。第2慣性計測装置54は、棚本体2の両端部領域22のうちの他方側(ここでは幅方向第2側Y2)である第2端部領域22bに配置されている。なお、本例では、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、互いに同等の構造を有している。
【0036】
図6に示すように、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とのそれぞれは、棚本体2における、少なくとも、移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度とを計測するように構成されている。本例では、第1慣性計測装置52は、第1端部領域22aにおける、棚本体2の移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度とを計測する。第2慣性計測装置54は、第1端部領域22aに対して幅方向第2側Y2の第2端部領域22bにおける、棚本体2の移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度とを計測する。
【0037】
2.制御システム
図6に示すように、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54の少なくとも一方による移動方向Xの加速度の計測結果に基づいて棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。具体的には、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54の少なくとも一方の計測結果に基づく移動方向Xの加速度を2回積分して棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。本実施形態では、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54の双方の計測結果に基づいて棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。具体的には、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との平均に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。本例では、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の第1端部領域22aの移動方向Xの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の第2端部領域22bの移動方向Xの移動量との平均値を演算し、当該平均値を棚本体2の移動方向Xの移動量とする。
【0038】
また、図6に示すように、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54の少なくとも一方による幅方向Yの加速度の計測結果に基づいて棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。具体的には、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54の少なくとも一方の計測結果に基づく幅方向Yの加速度を2回積分して棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。本実施形態では、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54の双方の計測結果に基づく幅方向Yの加速度を2回積分して棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。本例では、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の第1端部領域22aの幅方向Yの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の第2端部領域22bの幅方向Yの移動量との平均に基づいて、棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。なお、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54のいずれか一方の計測結果に基づいて、棚本体2の幅方向Yの移動量を演算しても良い。
【0039】
また、図6に示すように、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との差分に基づいて棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算する。本実施形態では、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の第1端部領域22aの移動方向Xの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の第2端部領域22bの移動方向Xの移動量との差分に基づいて棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算する。
【0040】
図6の例では、棚本体2が位置ずれなしに移動する場合の棚本体2の移動経路である、棚移動経路Tと、この場合における第1慣性計測装置52の移動経路である第1移動経路Rと、第2慣性計測装置54の移動経路である第2移動経路Sと、を示している。ここで、第1移動経路Rは、第1端部領域22aの中心の移動経路と同じである。また、第2移動経路Sは、第2端部領域22bの移動経路と同じである。棚本体2が移動方向Xに規定距離Lを移動すると、第1端部領域22aの中心は第1端部始点位置P3から、第1移動経路R上の第1端部第1位置P5に移動する。同様に、棚本体2が移動方向Xに規定距離移動すると、第2端部領域22bの中心は第2端部始点位置P6から、第2移動経路S上の第2端部第1位置P8に移動する。
【0041】
一方、図6の例では、棚本体2に位置ずれが生じた例を示している。具体的には、第1端部領域22aの中心が、第1端部始点位置P3から幅方向Y(ここでは幅方向第1側Y1)にずれた第1端部第2位置P4に移動し、第2端部領域22bが第2端部始点位置P6から幅方向Y(ここでは幅方向第1側Y1)にずれた第2端部第2位置P7に移動した例を示している。制御システム100は、第1端部領域22aの中心が第1端部始点位置P3から第1端部第2位置P4まで移動する間における、第1端部領域22aの移動方向Xの移動量ΔX1と、幅方向Yの移動量ΔY1と、を演算する。同様に、制御システム100は、第2端部領域22bが第2端部始点位置P6から第2端部第2位置P7まで移動する間における、第2端部領域22bの移動方向Xの移動量ΔX2と、幅方向Yの移動量ΔY2と、を演算する。そして、制御システム100は、第1端部領域22aの移動方向Xの移動量ΔX1と第2端部領域22bの移動方向Xの移動量ΔX2との差分から、棚本体2の上下軸心回りの回転量θ2を演算する(図6参照)。
【0042】
このように、本実施形態では、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との差分に基づいて棚本体2の上下軸心回りの回転量θ2を演算する。第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とのそれぞれが、更に、上下方向に沿う上下軸心回りの角速度を計測する構成とすることもできる。すなわち、制御システム100が、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく上下方向に沿う上下軸心回りの角速度を1回積分して、棚本体2の上下軸心回りの回転量θ3を演算すると共に、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく上下方向に沿う上下軸心回りの角速度を1回積分して、棚本体2の上下軸心回りの回転量θ4を演算する構成とすることもできる。この場合、棚本体2の上下軸心回りの回転量として、3つの回転量が演算される。そして、制御システム100は、これら3つの回転量の少なくともいずれかに基づき、移動棚10の傾きの補正動作に用いる回転量を決定する。制御システム100は、例えば、3つの回転量のうちの環境条件や使用条件等の条件に応じて選択した1つの回転量に基づき、上記補正動作に用いる回転量を決定する。或いは、制御システム100は、3つの回転量のうちの条件に応じて選択した2つの回転量又は3つの回転量の平均(重み付き平均を含む)に基づき、上記補正動作に用いる回転量を決定する。
【0043】
〔第3実施形態〕
移動棚装置の第3実施形態について、図面(図7)を参照して説明する。以下では、本実施形態の移動棚装置について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。特に明記しない点については、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
1.移動検出装置
図7に示すように、移動検出装置5は、少なくとも1つの慣性計測装置50と、第1エンコーダ35及び第2エンコーダ45と、を備えている。本実施形態では、移動検出装置5は、単一の慣性計測装置50と、2つのエンコーダ(第1エンコーダ35及び第2エンコーダ45)とを備えている。本例では慣性計測装置50は、棚本体2における幅方向Yの中心位置である幅方向中心位置16に配置されている。そして、第1エンコーダ35と第2エンコーダ45とは、幅方向中心位置16に対して幅方向Yの両側に分かれて配置されている。
【0045】
図7に示すように、棚本体2における幅方向Yの中心位置である幅方向中心位置16に対して幅方向Yの両側に分かれて配置された一対の車輪3を第1車輪12及び第2車輪13として、第1エンコーダ35は第1車輪12の回転量を検出し、第2エンコーダ45は第2車輪13の回転量を検出するように構成されている。本実施形態では、一対の車輪3のうちの第1車輪12が、幅方向中心位置16に対して幅方向第1側Y1に配置され、一対の車輪3のうちの第2車輪13が、幅方向中心位置16に対して幅方向第2側Y2に配置されている。本例では、一対の車輪3(第1車輪12及び第2車輪13)は、移動方向Xに分かれて2組設けられている。図示の例では、第1端部領域22aにおいて、複数(ここでは2個)の第1車輪12が底部21に設けられており、第2端部領域22bにおいて、複数(ここでは2個)の第2車輪13が底部21に設けられている。そして、これら複数の第1車輪12に対応するように、第1エンコーダ35が複数配置されている。同様に、複数の第2車輪13に対応するように、第2エンコーダ45が複数配置されている。
【0046】
図7に示すように、慣性計測装置50は、棚本体2における、少なくとも、移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度とを計測するように構成されている。本実施形態では、慣性計測装置50は、棚本体2における、移動方向Xの加速度と、幅方向Yの加速度と、を間接的に計測するように構成されている。慣性計測装置50の具体的な構成は、第1実施形態における慣性計測装置50と同様のため、以下では説明を省略する。
【0047】
2.制御システム
制御システム100は、慣性計測装置50による移動方向Xの加速度の計測結果に基づいて棚本体2の移動方向Xの移動量を演算し、慣性計測装置50による幅方向Yの加速度の計測結果に基づいて棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。具体的には、制御システム100は、慣性計測装置50の計測結果に基づく移動方向Xの加速度を2回積分して棚本体2の移動方向Xの移動量を演算し、慣性計測装置50の計測結果に基づく幅方向Yの加速度を2回積分して棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する。本例では、制御システム100は、幅方向中心位置16に設けられた単一の慣性計測装置50の計測結果に基づいて、上記演算を実行する。そして、制御システム100は、第1エンコーダ35及び第2エンコーダ45の少なくとも一方の計測結果に基づいて棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。本実施形態では、制御システム100は、第1エンコーダ35及び第2エンコーダ45の双方の計測結果に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。より具体的には、制御システム100は、第1エンコーダ35の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と第2エンコーダ45の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との平均に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。本例では、制御システム100は、第1エンコーダ35の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と第2エンコーダ45の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との平均値を算出し、当該平均値を棚本体2の移動方向Xの移動量としている。更に、制御システム100は、第1エンコーダ35の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と、第2エンコーダ45の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との差分に基づいて棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算する。本実施形態では、制御システム100は、移動棚10が規定距離Lを移動する毎に、移動検出装置5(慣性計測装置50、第1エンコーダ35、及び第2エンコーダ45)から計測結果を受信する(図4)。そして、制御システム100は、当該計測結果を受信する毎に、上記演算を実行する。このように、本実施形態では、幅方向Yに分かれて配置された第1車輪12及び第2車輪13に対応するように、第1エンコーダ35と第2エンコーダ45との2つのエンコーダを用いることで、例えば、棚本体2が幅方向Yに長い場合であっても、棚本体2の移動方向Xの移動量や上下軸心周りの回転量を比較的高精度に検出できる。
【0048】
制御システム100は、慣性計測装置50の計測結果に基づく移動方向Xの加速度を2回積分して棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。本実施形態では、更に、制御システム100は、第1エンコーダ35の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と第2エンコーダ45の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との平均に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。このように、本実施形態では、棚本体2の移動方向Xの移動量として、2つの移動量が演算される。そして、制御システム100は、これら2つの移動量の少なくともいずれかに基づき、移動棚10の移動方向Xの位置(例えば、リセット位置(原点位置)からの相対位置)を検知する。制御システム100は、例えば、2つの移動量のうちの環境条件や使用条件等の条件に応じて選択した1つの移動量に基づき、移動棚10の移動方向Xの位置を検知する。或いは、制御システム100は、2つの移動量の平均(重み付き平均を含む)に基づき、移動棚10の移動方向Xの位置を検知する。
【0049】
なお、本実施形態においても、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、慣性計測装置50が、棚本体2における上下方向に沿う上下軸心回りの角速度を検出する構成とすることもできる。この場合、制御システム100が、第1エンコーダ35の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と、第2エンコーダ45の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との差分に基づいて、棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算すると共に、更に、慣性計測装置50の計測結果に基づく上下方向に沿う上下軸心回りの角速度を1回積分して、棚本体2の上下軸心回りの回転量を演算する構成とすることもできる。この場合、棚本体2の上下軸心回りの回転量として、2つの回転量が演算される。この場合、制御システム100は、これら2つの回転量の少なくともいずれかに基づき、移動棚10の傾きの補正動作に用いる回転量を決定する。制御システム100は、例えば、2つの回転量のうちの環境条件や使用条件等の条件に応じて選択した1つの回転量に基づき、上記補正動作に用いる回転量を決定する。或いは、制御システム100は、2つの回転量の平均(重み付き平均を含む)に基づき、上記補正動作に用いる回転量を決定する。
〔その他の実施形態〕
次に、移動棚装置のその他の実施形態について説明する。
【0050】
(1)上記の各実施形態では、制御システム100が、移動方向Xに移動中の移動棚10に対して補正動作を行う構成を例として説明した。しかしこのような構成に限定されることなく、制御システム100が、停止中の移動棚10に対して補正動作を行うようにしても良い。すなわち、移動棚10が規定距離Lを移動すると、制御システム100は、当該移動棚10を停止させるように駆動装置4を制御する。そして、制御システム100が、停止した移動棚10に対して、幅方向Yの基準位置に対する移動棚10のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚10の傾きと、を補正するように、駆動装置4を制御する構成としても良い。
【0051】
(2)上記の第1実施形態では、棚本体2に単一の慣性計測装置50が設けられ、制御システム100は、当該慣性計測装置50の計測結果に基づく移動方向Xの加速度を2回積分して棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する構成を例として説明した。しかしそのような構成に限定されない。例えば、棚本体2に、幅方向Yに分かれて配置された車輪3のうちの一方側の車輪3に対応したエンコーダを更に設ける構成とすることもできる。その場合、制御システム100は、このエンコーダの計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する。すなわち、棚本体2の移動方向Xの移動量として、慣性計測装置50及びエンコーダのそれぞれによる2つの移動量が演算される。制御システム100は、これら2つの移動量の少なくともいずれかに基づき、移動棚10の移動方向Xの位置(例えば、リセット位置(原点位置)からの相対位置)を検知する。制御システム100は、例えば、2つの移動量のうちの環境条件や使用条件等の条件に応じて選択した1つの移動量に基づき、移動棚10の移動方向Xの位置を検知する。或いは、制御システム100は、2つの移動量の平均(重み付き平均を含む)に基づき、移動棚10の移動方向Xの位置を検知する。
【0052】
(3)上記の第2実施形態では、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく第1端部領域22aの幅方向Yの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく第2端部領域22bの幅方向Yの移動量との平均値を、棚本体2の幅方向Yの移動量として演算する構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54のいずれか一方の計測結果に基づいて、棚本体2の幅方向Yの移動量を演算する構成としても良い。
【0053】
(4)上記の第2実施形態では、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、棚本体2における幅方向Yの両端部領域22に分かれて、同じ高さに配置されている構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、必ずしも棚本体2における幅方向Yの両端部領域22に分かれて配置されていなくても良い。また、第1慣性計測装置52と第2慣性計測装置54とは、同じ高さに配置されていなくても良い。
【0054】
(5)上記の第2実施形態では、制御システム100は、第1慣性計測装置52の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と、第2慣性計測装置54の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との平均に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、制御システム100は、第1慣性計測装置52及び第2慣性計測装置54のいずれか一方の計測結果に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算しても良い。
【0055】
(6)上記の第3実施形態では、複数の第1車輪12に対応するように第1エンコーダ35が複数配置され、複数の第2車輪13に対応するように第2エンコーダ45が複数配置されている構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、第1エンコーダ35と第2エンコーダ45とのそれぞれが1つずつ配置されている構成としても良い。
【0056】
(7)上記の第3実施形態では、棚本体2における幅方向Yの中心位置である幅方向中心位置16に、単一の慣性計測装置50が設けられている構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、慣性計測装置50は、棚本体2に複数設けられていても良い。すなわち、棚本体2に、2つのエンコーダ(第1エンコーダ35及び第2エンコーダ45)と共に、複数の慣性計測装置50が設けられていても良い。
【0057】
(8)上記の第3実施形態では、第1エンコーダ35の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量と第2エンコーダ45の計測結果に基づく棚本体2の移動方向Xの移動量との平均に基づいて、棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する構成を例として説明した。しかしこのような例に限定されることなく、第1エンコーダ35及び第2エンコーダ45のいずれか一方の計測結果に基づいて棚本体2の移動方向Xの移動量を演算する構成としても良い。
【0058】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した移動棚装置の概要について説明する。
【0059】
本開示に係る移動棚装置は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
前記移動検出装置は、少なくとも1つの慣性計測装置を備え、
前記慣性計測装置は、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度と、前記上下方向に沿う上下軸心回りの角速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記慣性計測装置による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記上下軸心回りの角速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う。
【0060】
本構成によれば、少なくとも1つの慣性計測装置により、移動棚を移動させた場合における棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。このような慣性計測装置は、移動棚の棚本体に容易に取り付けることができる。従って、比較的簡素な構成で、棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。
そして、本構成によれば、移動棚が床面上を移動する際に、移動方向の移動を案内するガイド等を必要とせず、移動の際に生じた幅方向の基準位置に対する移動棚のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚の傾きとを適切に補正することができる。よって移動棚を、移動方向に沿って適切に移動させることができる。
また、床面に移動棚を案内するためのレールやガイド等を設けるための大掛かりな工事を施す必要がないため、容易に移動棚装置を設置できる。
【0061】
本開示に係る別の移動棚装置は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
前記移動検出装置は、第1慣性計測装置と第2慣性計測装置との2つの慣性計測装置を備え、
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とは、前記棚本体における前記幅方向の中心位置である幅方向中心位置に対して前記幅方向の両側に分かれて配置され、
前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とのそれぞれは、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記第1慣性計測装置及び前記第2慣性計測装置の少なくとも一方による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記第1慣性計測装置及び前記第2慣性計測装置の少なくとも一方による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記第1慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との差分に基づいて前記棚本体の前記上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う。
【0062】
本構成によれば、2つの慣性計測装置により、移動棚を移動させた場合における棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。このような慣性計測装置は、移動棚の棚本体に容易に取り付けることができる。従って、比較的簡素な構成で、棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。また、第1慣性計測装置の計測結果に基づく棚本体の移動方向の移動量と、第2慣性計測装置の計測結果に基づく棚本体の移動方向の移動量との差分に基づいて、棚本体の上下軸心回りの回転量を演算することができる。従って、例えば棚本体の幅方向の寸法が大きい場合であっても、比較的高精度に回転量を演算することができる。
そして、本構成によれば、移動棚が床面上を移動する際に、移動方向の移動を案内するガイド等を必要せず、移動の際に生じた幅方向の基準位置に対する移動棚のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚の傾きとを適切に補正することができる。よって移動棚を、移動方向に沿って適切に移動させることができる。
また、床面に移動棚を案内するためのレールやガイド等を設けるための大掛かりな工事を施す必要がないため、容易に移動棚装置を設置できる。
【0063】
ここで、前記第1慣性計測装置と前記第2慣性計測装置とは、前記棚本体における前記幅方向の両端部領域に分かれて、同じ高さに配置されていると好適である。
【0064】
本構成によれば、棚本体が上下軸心回りに回転する場合に移動量が最も大きくなり易い領域に、第1慣性計測装置と第2慣性計測装置とが配置される。
従って、第1慣性計測装置の計測結果に基づく棚本体の移動方向の移動量と、第2慣性計測装置の計測結果に基づく棚本体の移動方向の移動量との差分に基づいて演算される、棚本体の上下軸心回りの回転量を高精度に検出し易い。
また、本構成では、第1慣性計測装置と第2慣性計測装置とが同じ高さに配置されているため、棚本体が移動中に上下方向に対して傾いた場合であっても、上下軸心回りの回転量の演算に際して、上下方向に対する傾きの影響を少なく抑えることができる。
【0065】
また、前記制御システムは、前記第1慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2慣性計測装置の計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との平均に基づいて、前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算すると好適である。
【0066】
本構成によれば、第1慣性計測装置の計測結果と第2慣性計測装置の計測結果とのそれぞれに基づく棚本体の移動方向の移動量を平均化する。これにより、棚本体の移動方向に対する移動量を高精度に検出し易い。
【0067】
本開示に係る更に別の移動棚装置は、予め定められた移動方向に沿って移動する少なくとも1つの移動棚と、前記移動棚を制御する制御システムと、を備えた移動棚装置であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記移動方向に直交する方向を幅方向として、
前記移動棚は、棚本体と、前記棚本体の底部に設けられて床面を転動する複数の車輪と、複数の前記車輪を駆動する駆動装置と、前記棚本体の移動量を検出する移動検出装置と、を備えると共に、前記移動方向に沿う案内なしに前記床面上を移動するように構成され、
複数の前記車輪のそれぞれは、前記幅方向に沿う軸心回りに回転するように前記棚本体に支持され、
前記移動検出装置は、少なくとも1つの慣性計測装置と、第1エンコーダ及び第2エンコーダと、を備え、
前記棚本体における前記幅方向の中心位置である幅方向中心位置に対して前記幅方向の両側に分かれて配置された一対の前記車輪を第1車輪及び第2車輪として、前記第1エンコーダは前記第1車輪の回転量を検出し、前記第2エンコーダは前記第2車輪の回転量を検出するように構成され、
前記慣性計測装置は、前記棚本体における、少なくとも、前記移動方向の加速度と、前記幅方向の加速度とを計測するように構成され、
前記制御システムは、
前記慣性計測装置による前記移動方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記慣性計測装置による前記幅方向の加速度の計測結果に基づいて前記棚本体の前記幅方向の移動量を演算し、
前記第1エンコーダ及び前記第2エンコーダの少なくとも一方の計測結果に基づいて前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算し、
前記第1エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と、前記第2エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との差分に基づいて前記棚本体の上下軸心回りの回転量を演算し、
それらの演算結果に基づいて前記駆動装置を制御して、前記幅方向の基準位置に対する前記移動棚のずれと、前記上下軸心回りの基準姿勢に対する前記移動棚の傾きと、を補正する補正動作を行う。
【0068】
本構成によれば、少なくとも1つの慣性計測装置により、移動棚を移動させた場合における棚本体の移動方向の移動量及び幅方向の移動量を検出することができると共に、2つのエンコーダにより、移動方向の移動量、及び上下軸心回りの回転量を検出することができる。このような慣性計測装置及びエンコーダは、移動棚の棚本体に容易に取り付けることができる。従って、比較的簡素な構成で、棚本体の移動方向の移動量、幅方向の移動量、及び上下軸心周りの回転量を検出することができる。
そして、本構成によれば、移動棚が床面上を移動する際に、移動方向の移動を案内するガイド等を必要とせず、移動の際に生じた幅方向の基準位置に対する移動棚のずれと、上下軸心回りの基準姿勢に対する移動棚の傾きを適切に補正することができる。よって移動棚を、移動方向に沿って適切に移動させることができる。
また、床面に移動棚を案内するためのレールやガイド等を設けるための大掛かりな工事を施す必要がないため、容易に移動棚装置を設置できる。
【0069】
また、前記制御システムは、前記第1エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量と前記第2エンコーダの計測結果に基づく前記棚本体の前記移動方向の移動量との平均に基づいて、前記棚本体の前記移動方向の移動量を演算すると好適である。
【0070】
本構成によれば、第1エンコーダの計測結果と第2エンコーダの計測結果とのそれぞれに基づく棚本体の移動方向の移動量を平均化する。これにより、棚本体の移動方向に対する移動量を高精度に検出し易い。
【0071】
また、複数の前記車輪のそれぞれが前記幅方向に沿う軸心回りに回転するように前記棚本体に支持され、
前記制御システムは、前記幅方向に分かれて配置された少なくとも2つの車輪の回転量を異ならせるように前記駆動装置を制御することにより前記補正動作を行うと好適である。
【0072】
本構成によれば、移動棚の移動方向を変更するための方向転換装置等を設けなくても、適切に補正動作を行うことができる。
【0073】
本開示に係る移動棚装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0074】
1:移動棚装置
2:棚本体
3:車輪
4:駆動装置
5:移動検出装置
10:移動棚
12:第1車輪
13:第2車輪
16:幅方向中心位置
21:底部
22:両端部領域
35:第1エンコーダ
45:第2エンコーダ
50:慣性計測装置
52:第1慣性計測装置
54:第2慣性計測装置
100:制御システム
F:床面
X:移動方向
Y:幅方向
θ1、θ2:棚本体の上下軸心回りの回転量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7