(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149803
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両用の熱管理システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231005BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/22 651B
B60H1/22 671
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058567
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 吉男
(72)【発明者】
【氏名】木村 勇紀
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA27
3L211CA18
3L211CA19
3L211DA28
3L211DA35
3L211EA43
3L211EA50
3L211EA72
3L211GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱媒を用いて効率よく除霜を実行することができる技術を提供する。
【解決手段】熱管理システムでは、暖房動作において、熱関連機器経路とバイパス経路との間で循環する熱媒が所定温度以上であると特定される場合に、暖房動作から除霜動作に切り替えてもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の熱管理システムであって、
熱媒が循環する熱回路であって、熱交換器経路と、前記熱交換器経路と連通されているラジエータ経路と、前記ラジエータ経路と連通されている熱関連機器経路と、前記ラジエータ経路をバイパスして前記熱関連機器経路と連通されているバイパス経路と、を有する前記熱回路と、
前記熱交換器経路内の前記熱媒を熱交換によって冷却する熱交換器と、
前記ラジエータ経路内の前記熱媒と外気とを熱交換させるラジエータと、
前記熱回路内の前記熱媒の流路を変更する制御弁と、
前記熱回路内の前記熱媒を、前記熱交換器経路から前記ラジエータ経路に送出可能である第1ポンプと、
前記熱回路内の前記熱媒を、前記熱関連機器経路から前記ラジエータ経路に送出可能であるとともに、前記熱関連機器経路から前記バイパス経路に送出可能である第2ポンプと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記熱交換器経路と前記ラジエータ経路との間で前記熱媒が循環するように前記制御弁及び前記第1ポンプを制御するとともに、前記熱関連機器経路と前記バイパス経路との間で前記熱媒が循環するように前記制御弁及び前記第2ポンプを制御する暖房動作であって、前記ラジエータによって前記ラジエータ経路内の前記熱媒を加熱するとともに、前記熱関連機器経路上の熱関連機器によって前記熱関連機器経路内の前記熱媒を加熱する、前記暖房動作と、
前記熱関連機器経路と前記ラジエータ経路との間で前記熱媒が循環するように前記制御弁及び前記第2ポンプを制御する除霜動作であって、前記ラジエータによって前記ラジエータ経路内の前記熱媒を冷却する前記除霜動作と、を実行し、
前記制御装置は、前記暖房動作において、前記熱関連機器経路と前記バイパス経路との間で循環する前記熱媒が所定温度以上であると特定される場合に、前記暖房動作から前記除霜動作に切り替える、熱管理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車両の走行状態に応じて前記熱関連機器経路と前記バイパス経路との間で循環する前記熱媒の温度を特定する、請求項1に記載の熱管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記暖房動作において、前記ラジエータに霜が付着していることがさらに特定される場合に、前記暖房動作から前記除霜動作に切り替える、請求項1又は2に記載の熱管理システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ラジエータによって加熱された前記熱媒の温度を用いて、前記ラジエータに霜が付着していることを特定する、請求項3に記載の熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両用の熱管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されるヒートポンプシステムが開示されている。ヒートポンプシステムでは、室外熱交換器に着霜が生じていると判断される場合に、ヒートポンプシステムの熱媒を用いて、室外熱交換器の除霜が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
除霜に用いられる熱媒の蓄熱が十分でない場合、除霜を効率的に実行することができない場合がある。本明細書では、熱媒を用いて効率よく除霜を実行することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する熱管理システムは、車両に用いられる。熱管理システムは、熱媒が循環する熱回路であって、熱交換器経路と、前記熱交換器経路と連通されているラジエータ経路と、前記ラジエータ経路と連通されている熱関連機器経路と、前記ラジエータ経路をバイパスして前記熱関連機器経路と連通されているバイパス経路と、を有する前記熱回路と、前記熱交換器経路内の前記熱媒を熱交換によって冷却する熱交換器と、前記ラジエータ経路内の前記熱媒と外気とを熱交換させるラジエータと、前記熱回路内の前記熱媒の流路を変更する制御弁と、前記熱回路内の前記熱媒を、前記熱交換器経路から前記ラジエータ経路に送出可能である第1ポンプと、前記熱回路内の前記熱媒を、前記熱関連機器経路から前記ラジエータ経路に送出可能であるとともに、前記熱関連機器経路から前記バイパス経路に送出可能である第2ポンプと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記熱交換器経路と前記ラジエータ経路との間で前記熱媒が循環するように前記制御弁及び前記第1ポンプを制御するとともに、前記熱関連機器経路と前記バイパス経路との間で前記熱媒が循環するように前記制御弁及び前記第2ポンプを制御する暖房動作であって、前記ラジエータによって前記ラジエータ経路内の前記熱媒を加熱するとともに、前記熱関連機器経路上の熱関連機器によって前記熱関連機器経路内の前記熱媒を加熱する、前記暖房動作と、前記熱関連機器経路と前記ラジエータ経路との間で前記熱媒が循環するように前記制御弁及び前記第2ポンプを制御する除霜動作であって、前記ラジエータによって前記ラジエータ経路内の前記熱媒を冷却する前記除霜動作と、を実行し、前記制御装置は、前記暖房動作において、前記熱関連機器経路と前記バイパス経路との間で循環する前記熱媒が所定温度以上であると特定される場合に、前記暖房動作から前記除霜動作に切り替えてもよい。
【0006】
暖房動作ではラジエータにおいて熱媒が吸熱されるため、ラジエータに着霜しやすい。ラジエータに着霜する場合、熱媒は、熱関連機器において加熱されラジエータ経路に送られる。熱関連機器による加熱が十分でない場合、ラジエータ経路に加熱済みの熱媒を送っても、ラジエータの除霜に時間がかかり、効率が良くない。上記の構成によると、熱関連機器経路と前記バイパス経路との間で循環する熱媒に十分に蓄熱されていると判断される場合に、除霜動作を実行することができる。即ち、熱媒に十分に蓄熱されている場合に、除霜動作を実行することができる。これにより、熱媒を用いて効率よく除霜を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】暖房動作を実行する熱管理システム100を示す図である。
【
図2】除霜動作を実行する熱管理システム100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する熱管理装置の技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0009】
本明細書が開示する一例の熱管理システムでは、制御装置は、車両の走行状態に応じて熱関連機器経路とバイパス経路との間で循環する熱媒の温度を特定してもよい。
【0010】
この構成によると、熱関連機器経路とバイパス経路との間で循環する熱媒の温度を検出するセンサを配置せずに済む。
【0011】
本明細書が開示する一例の熱管理システムでは、制御装置は、暖房動作において、ラジエータに霜が付着していることがさらに特定される場合に、暖房動作から除霜動作に切り替えてもよい。
【0012】
この構成によると、ラジエータに霜が付着していると特定される場合に、除霜動作を実行することができる。
【0013】
本明細書が開示する一例の熱管理システムでは、制御装置は、ラジエータによって加熱された熱媒の温度を用いて、ラジエータに霜が付着していることを特定してもよい。
【0014】
この構成によると、熱媒の温度を用いて、ラジエータに着霜していることを簡単に特定することができる。
【0015】
(第1実施例)
(熱管理システム100の構造)
図面を参照して、実施例の熱管理システム100について説明する。本実施例の熱管理システム100は電動車両に搭載され、不凍液や冷媒といった熱媒を循環させることで、電動車両に設けられた構成要素の加熱及び冷却や、車内の空調等を行う。
図1に示すように、熱管理システム100は、低温ラジエータ42を有する低温ラジエータ回路10と、高温ラジエータ94を有する高温ラジエータ回路30と、その二つのラジエータ回路10、30の間へ熱的に介挿されたヒートポンプ回路20と、制御装置98と、を備える。これらの回路10、20、30は、熱的に接続されている一方で、熱媒の流れる経路は互いに独立している。特に限定されないが、二つのラジエータ回路10、30では、熱媒として、例えばロングライフクーラントといった不凍液が採用されている。一方、ヒートポンプ回路20では、熱媒として、ハイドロフルオロカーボンといった冷媒(冷凍サイクル用の熱媒)が採用されている。
【0016】
低温ラジエータ回路10とヒートポンプ回路20との間は、チラー70を介して熱的に接続されている。ヒートポンプ回路20と高温ラジエータ回路30との間は、コンデンサ84を介して熱的に接続されている。チラー70は、ヒートポンプ回路20において蒸発器として機能し、低温ラジエータ回路10の熱媒から、ヒートポンプ回路20の熱媒へ熱を伝達することができる。コンデンサ84は、ヒートポンプ回路20において蒸発器として機能し、ヒートポンプ回路20の熱媒から、高温ラジエータ回路30の熱媒へ熱を伝達することができる。
【0017】
(低温ラジエータ回路10の構成)
低温ラジエータ回路10は、車両用二次電池(以下、単にバッテリという。)66を冷却する第1回路12と、熱関連機器を冷却する第2回路16と、を有している。
【0018】
第1回路12は、チラー70とバッテリ66との間で、熱媒を循環させる循環経路である。第1回路12は、主に、バッテリ経路13と、チラー経路14と、を有している。バッテリ経路13は、上流側から、ヒータ64、バッテリ66及び第1温度センサ61を備えている。第1温度センサ61は、バッテリ66の出口側で熱媒温度を検出するためのセンサである。バッテリ66は、後述するSPU56及びPCU58を介して、トランスアクスル48に内蔵されたモータに電力を供給する。バッテリ66は、バッテリ経路13を流れる熱媒との熱交換によって冷却される。ヒータ64は、電気式のヒータであり、必要に応じてバッテリ経路13の熱媒を加熱することで、バッテリ66を温めることができる。
【0019】
チラー経路14は、その上流側から、熱媒を循環させる第1ポンプ68、チラー70を備えている。バッテリ経路13の上流端とチラー経路14の下流端とは、切換弁40を介して接続されている。また、バッテリ経路13の下流端とチラー経路14の上流端とは、リザーバタンク69を介して接続されている。リザーバタンク69は、熱媒から気泡を除去するための熱媒貯留部を備えている。
【0020】
第2回路16は、主に、低温ラジエータ経路17と、熱関連機器経路18と、バイパス経路19と、を有している。低温ラジエータ経路17の上流端と熱関連機器経路18の下流端とが、切換弁40を介して接続されている。低温ラジエータ経路17の下流端と熱関連機器経路18の上流端とは、リザーバタンク69を介して接続されている。低温ラジエータ42は、第1回路12と第2回路16との間で共用されている。こうすることで、低温ラジエータ回路10を効率的に構成することができる。
【0021】
低温ラジエータ経路17は、上流側から、低温ラジエータ42と、熱媒温度を検出するための第3温度センサ63と、を備えている。熱関連機器経路18は、上流側から、DC-DCコンバータを含むSPU(Smart Power Unitの略)56、熱媒温度を検出するための第2温度センサ62、インバータを含むPCU(Power Control Unitの略)58、熱媒を循環させるための第2ポンプ60、及びオイルクーラ54、を備えている。オイルクーラ54は、熱交換器の一種であり、オイル循環路50を介してトランスアクスル48と熱的に接続されている。トランスアクスル48は、車輪を駆動する走行用モータや、走行用モータと車輪との間に介挿された減速機等を有する。オイル循環路50は、オイルポンプ52を有しており、オイルクーラ54とトランスアクスル48との間で、熱媒であるオイルを循環させる。これにより、トランスアクスル48の熱がオイルクーラ54へ伝達され、さらにオイルクーラ54から第2回路16の熱媒へと伝達される。
【0022】
バイパス経路19は、低温ラジエータ42をバイパスしている。バイパス経路19は、低温ラジエータ経路17と熱関連機器経路18との接続部位にある切換弁40において分岐し、低温ラジエータ42をバイパスして低温ラジエータ経路17の下流端にあるリザーバタンク69に合流している。
【0023】
制御装置98は、少なくとも一つのプロセッサとメモリとを備える、いわゆるコンピュータとして構成されている。メモリには、熱管理システム100を制御するためのコンピュータプログラム、及び、熱管理システム100を制御するために必要な情報が格納されている。プロセッサは、メモリに格納されているコンピュータプログラム及び情報に基づいて熱管理システム100を制御する。
【0024】
(切換弁40の機能)
切換弁40は、5方流調弁であり、第1回路12の二つ経路13、14の他、第2回路16の3つの経路17、18及び19を接続している。切換弁40は、制御装置98に接続されており、その動作は制御装置98によって制御される。切換弁40の構造は特に限定されず、様々な構造であってよい。
【0025】
制御装置98は、切換弁40によって、暖房動作および除霜動作の間で流路を切り換えることができる。
図1に、暖房動作を示す。暖房動作では、第1流路C1および第2流路C2が分離されている。第1流路C1と第2流路C2とは、互いに独立して熱媒が流れている。第1流路C1は、低温ラジエータ42とチラー70との間で、第1ポンプ68を用いて熱媒を循環させる流路である。第1流路C1によって、低温ラジエータ42で外気から吸収された熱を、チラー70へ供給することができる。第2流路C2は、複数の熱関連機器(即ちオイルクーラ54、SPU56及びPCU58)を冷却するために、第2ポンプ60を用いて、熱媒を熱関連機器経路18とバイパス経路19とにおいて循環させる流路である。第2流路C2によって、低温ラジエータ42を介さずに熱媒を循環させることによって、熱関連機器54、56、58を冷却することができる。熱関連機器54、56、58は、バッテリ66よりも発熱量が大きい。この構成によると、暖房によって、低温ラジエータ42において熱媒を放熱させることができない状況において、低温ラジエータ42を利用せずに、熱関連機器54、56、58を冷却することができる。
【0026】
図2に、除霜動作を示す。除霜動作は、熱関連機器経路18と低温ラジエータ経路17が接続されていることで第3流路C3を形成する。第3流路C3は、低温ラジエータ42と、いくつかの熱関連機器54、56、58との間で、第2ポンプ60を用いて熱媒を循環させる流路である。第2流路C2によって、熱関連機器において吸熱された熱媒を、低温ラジエータ42に流すことができる。これにより、低温ラジエータ42を加熱することができる。
【0027】
(ヒートポンプ回路20の構成)
ヒートポンプ回路20は、主に、メイン回路22と、冷房用経路24とを有する。メイン回路22は、チラー70とコンデンサ84との間で熱媒(冷媒)を循環させる循環経路である。メイン回路22は、膨張弁72やコンプレッサ82をさらに有しており、いわゆる冷凍サイクルを構成している。メイン回路22では、熱媒が
図1において反時計回りに循環する。メイン回路22は、チラー70に接続された低温ラジエータ回路10から、コンデンサ84に接続された高温ラジエータ回路30へ、熱を伝達する。これにより、暖房動作が実行される。
【0028】
冷房用経路24は、チラー70に対して並列に設けられており、チラー70をバイパスしている。冷房用経路24には、膨張弁78、冷房用のエバポレータ76、及び、EPR74(エバポレータプレッシャレギュレータ)が設けられている。冷房用経路24の上流端には、切換弁80が設けられている。冷房用のエバポレータ76では、車内の空気(外気から導入されたものも含む)から、ヒートポンプ回路20の熱媒への吸熱が行われ、これによって車内が冷房される。エバポレータ76で吸収された熱は、コンデンサ84から高温ラジエータ回路30へ伝達される。
【0029】
(高温ラジエータ回路30の構成)
高温ラジエータ回路30は、主に、メイン回路32と、暖房用経路34とを有する。高温ラジエータ回路30のメイン回路32は、コンデンサ84と高温ラジエータ94との間で熱媒を循環させる循環経路である。メイン回路32には、熱媒を循環させるための第3ポンプ88が設けられている。メイン回路32は、熱媒を循環させることによって、ヒートポンプ回路20から伝達された熱を、高温ラジエータ94から外気へ放出する。なお、メイン回路32には、ヒータ86がさらに設けられている。
【0030】
暖房用経路34は、高温ラジエータ94に対して並列に設けられており、高温ラジエータ94をバイパスしている。暖房用経路34には、ヒータコア92が設けられている。暖房用経路34の上流端には、切換弁90が設けられている。ヒータコア92では、暖房用経路34を流れる熱媒から、車内の空気への放熱が行われ、車内が暖房される。暖房動作では、高温ラジエータ94をバイパスして、暖房用経路34に熱媒を流す。
【0031】
熱管理システム100では、車両のECUからの指示に従って、制御装置98によって、低温ラジエータ回路10、ヒートポンプ回路20及び高温ラジエータ回路30の経路が組み替えられることによって、車内の暖房、冷房、バッテリ66の温度調整、熱関連機器54、56、58の冷却等、車両の熱管理が実行される。
【0032】
(除霜処理)
熱管理システム100では、暖房動作において、低温ラジエータ42の温度が低下すると、低温ラジエータ42に霜が付着する場合がある。低温ラジエータ42に霜が付着すると、ラジエータにおいて、熱媒体の熱交換の障害になり得る。熱管理システム100では、低温ラジエータ42に付着した霜を除霜するための除霜処理が実行される。
【0033】
制御装置98は、暖房動作が開始されると除霜処理を開始する。
図3に示すように、除霜処理では、S12において、低温ラジエータ42を通過する熱媒の温度を取得する。具体的には、制御装置98は、第3温度センサ63によって検出される熱媒温度を取得する。次いで、S14では、制御装置98は、低温ラジエータ42に霜が付着しているか否かを判断する。具体的には、制御装置98は、S12で取得済みの低温ラジエータ42を通過する熱媒の温度が第1所定温度より低い場合に、低温ラジエータ42に霜が付着していると判断する(S14でYES)。制御装置98は、S12で取得済みの低温ラジエータ42を通過する熱媒温度が第1所定温度以上である場合に、低温ラジエータ42に霜が付着していないと判断する(S14でNO)。
【0034】
第1所定温度は、低温ラジエータ42に霜が付着していると推定される熱媒の温度であり、例えば、外気温から5℃以上低い温度である。第1所定温度は、実験及びシミュレーション等によって予め特定され、制御装置98に格納されている。S14でNOの場合、S24に進む。S14でNOの場合、低温ラジエータ42に霜が付着している可能性が低く、除霜動作を実行しなくてもよい。この場合、制御装置98は、除霜動作を実行せずに、S24に進む。一方、S14でYESの場合、S16において、制御装置98は、第2温度センサ62によって検出される第2流路C2を流れる熱媒温度を取得する。第2温度センサ62は、PCU62の上流側の熱媒温度を検出する。
【0035】
次いで、S18では、制御装置98は、S16で取得済みの熱媒温度が第2所定温度以上であるか否かを判断する。第2所定温度は、低温ラジエータ42に付着する霜を除霜するために必要な熱量を熱媒が蓄えていると判断される温度であり、例えば、12℃である。S18の処理は、制御装置98は、第2流路C2を流れる熱媒が、低温ラジエータ42に付着する霜を除霜するために必要な熱量を蓄えているか否かを判断すると言い換えることができる。第2所定温度は、低温ラジエータ42の寸法、第2流路C2の容積等によって、適宜決定される。第2所定温度は、実験及びシミュレーション等によって予め特定され、制御装置98に格納されている。
【0036】
S16で取得済みの熱媒温度が第2所定温度以上であると判断される場合、即ち、第2流路C2を流れる熱媒が低温ラジエータ42に付着する霜を除霜するために必要な熱量を蓄えていると判断される場合(S18でYES)、S20において、制御装置98は、熱管理システム100を、暖房動作から除霜動作に切り替える。具体的には、制御装置98は、第1流路C1および第2流路C2が分離されている状態から、第3流路C3が形成されるように、切換弁40を切り替える。制御装置98は、さらに、第1ポンプ68を停止する。これにより、第2ポンプ60によって、熱媒は、第3流路C3を流れる。この結果、複数の熱関連機器によって加熱された熱媒が、低温ラジエータ42に向かって流れる。これにより、低温ラジエータ42が加熱され、除霜される。制御装置98は、さらに、コンプレッサ82を停止することによって、ヒートポンプ回路20の熱媒の循環を停止する。除霜動作では、高温ラジエータ回路30の熱媒の経路が、暖房動作と同一である。これにより、ヒータコア92を利用して、車内の暖房が継続される。
【0037】
S22では、制御装置98は、除霜動作が実行されてから所定期間が経過することを監視する。所定期間が経過する場合(S22でYES)、S23に進む。所定期間は、低温ラジエータ42に付着する霜が除霜される期間であり、例えば5分である。変形例では、所定期間は、S16で取得済みの熱媒温度に応じて変化してもよい。例えば、S16で取得済みの熱媒温度が高いほど、所定期間が短くなるように設定されていてもよい。
【0038】
S16で取得済みの熱媒温度が第2所定温度未満であると判断される場合、即ち、第2流路C2を流れる熱媒が低温ラジエータ42に付着する霜を除霜するために必要な熱量を蓄えていないと判断される場合(S18でNO)、S24に進む。S18でNOの場合、除霜動作が実行されても、熱媒に十分な熱量が蓄えられていないため、除霜が進みにくい。除霜処理では、このような状況において、除霜を実行せずに済む。この構成によると、熱媒を用いて効率よく除霜を実行することができる。これにより、車両の電費が低下することを抑制することができる。
【0039】
S23では、制御装置98は、除霜動作から暖房動作に切り替える。次いで、S24において、制御装置98は、暖房動作を終了すべきであるか否かを判断する。車両のECUは、車内の温度又は搭乗者の操作によって、車内の暖房を終了すべき場合、制御装置98に、暖房動作を終了することを示す終了信号を送信する。制御装置98は、終了信号が受信される場合に、暖房動作を終了すべきであると判断して(S24でYES)、除霜処理を終了する。制御装置98は、ECUの指示に合わせて、暖房動作を終了するとともに、別の熱管理を実行する。一方、制御装置98は、終了信号が受信されない場合に、暖房動作を終了すべきでないと判断して(S24でNO)、S12に戻る。
【0040】
除霜処理では、低温ラジエータ42を流れる熱媒の温度を用いて、低温ラジエータ42に霜が付着しているか否かを判断する。この構成によると、低温ラジエータ42に霜が付着しているか否かを容易に判断することができる。
【0041】
(第2実施例)
本実施例の熱管理システム100は、第2温度センサ62を備えていない。その他の熱管理システム100の構成は、第1実施例の熱管理システム100と同様である。
【0042】
除霜処理において、制御装置98は、S16の処理を実行しない。S18において、制御装置98は、車両の走行状態を用いて特定される熱媒の温度が第2所定温度以上であるか否か、即ち、第2流路C2を流れる熱媒が低温ラジエータ42に付着する霜を除霜するために必要な熱量を蓄えているか否かを判断する。具体的には、制御装置98は、車両がアイドル状態である場合、即ち、電動車両が起動されており、走行されていない状態、及び、渋滞等のトランスアクスル48に内蔵されるモータの負荷が比較的に低い状態では、制御装置98は、熱媒の温度が第2所定温度未満であると判断する(S18でNO)。一方、走行されていない状態、及び、渋滞等のトランスアクスル48に内蔵されるモータの負荷が比較的に低い状態以外の状態では、制御装置98は、熱媒の温度が第2所定温度以上であると判断する(S18でYES)。
【0043】
変形例では、S18において、制御装置98は、トランスアクスル48に内蔵されるモータに供給される電流の積算値、暖房動作におけるコンプレッサ82の消費電力及び暖房動作におけるヒートポンプ回路20を循環する熱媒の温度の少なくとも1個を用いて、熱媒の温度が第2所定温度以上であるか否かを判断してもよい。
【0044】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で、技術的な有用性を持つものである。
【0045】
(変形例)
本実施例では、除霜処理において、制御装置98は、低温ラジエータ42に霜が付着しているか否かを判断する(S12及びS14)。しかしながら、制御装置98は、低温ラジエータ42に霜が付着しているか否かを判断せずに、S16以降の処理を実行してもよい。例えば、制御装置98は、予め決められた期間に亘って暖房動作が継続される等の所定の条件が成立すると、S16以降の処理を実行してもよい。所定の条件は、低温ラジエータ42に霜が付着するための条件であってもよい。
【0046】
本実施例では、第1回路12と第2回路16とをリザーバタンク69を介して接続する構造を説明したが、この構造に限られず、様々な接続構造を用いることができる。例えば、リザーバタンク69に代えて、3WAY配管を用いて接続してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10:低温ラジエータ回路、20:ヒートポンプ回路、30:高温ラジエータ回路、40:切換弁、42:低温ラジエータ、98:制御装置、100:熱管理システム