(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149819
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タイル貼り付け情報生成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20231005BHJP
G06F 111/04 20200101ALN20231005BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058586
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰弘
(72)【発明者】
【氏名】大谷 星輝
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146BA04
5B146DC05
5B146DE12
5B146EC08
(57)【要約】
【課題】縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に複数のタイル材を適切に貼り付けるために必要な「タイル貼り付け情報」を生成すること。
【解決手段】タイル貼り付け情報生成装置(20A)は、パネル部材の湾曲方向におけるタイル材の貼り付け基準となる基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算するタイル条件計算手段(172)と、タイル条件計算手段により計算された基準点ごとの奥行きおよび接線傾きを含む、タイル貼り付け情報を生成する生成手段(174)とを備える。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に複数のタイル材を貼り付けて製造される曲面パネル体用のタイル貼り付け情報生成装置であって、
前記パネル部材の湾曲方向におけるタイル材の貼り付け基準となる基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算するタイル条件計算手段と、
前記タイル条件計算手段により計算された前記基準点ごとの奥行きおよび接線傾きを含む、タイル貼り付け情報を生成する生成手段とを備える、タイル貼り付け情報生成装置。
【請求項2】
前記タイル条件計算手段は、
タイル材の幅を所定サイズとした第1の基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算する第1の計算手段と、
前記第1の計算手段による計算結果に基づいて、前記第1の基準点を貼り付け基準位置とした場合に各タイル材がタイル施工条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により満たしていないと判定された場合に、前記タイル施工条件を満たす正規サイズを計算し、タイル材の幅を前記正規サイズとした第2の基準点ごとに、前記仮想平面からの奥行き値および接線傾きを再計算する第2の計算手段とを含む、請求項1に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項3】
前記タイル施工条件は、タイル材の裏面が接着剤の仮想厚み範囲内に収まっていることを含む、請求項2に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項4】
タイル材の幅を一定とする第1パターンと、タイル材の幅を一定としない第2パターンとのいずれかを選択する選択手段をさらに備え、
前記第2の計算手段は、前記選択手段により前記第1パターンが選択された場合に、前記第1の基準点の全てを再計算の対象とし、前記第2パターンが選択された場合には、前記タイル施工条件を満たしていないと判定された前記第1の基準点を含む一部の基準点を再計算の対象とする、請求項2または3に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項5】
生産ラインにおけるタイル貼り付けロボットが有するハンド部の個数に基づいて、前記基準点をグルーピングするグルーピング計算手段をさらに備え、
タイル貼り付け情報は、前記基準点のグループ情報をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項6】
縦方向または横方向に湾曲したパネル部材の湾曲方向におけるタイル材の貼り付け基準となる基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算するステップと、
計算された前記基準点ごとの奥行きおよび接線傾きを含む、タイル貼り付け情報を生成するステップとをコンピュータに実行させる、タイル貼り付け情報生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル貼り付け情報生成装置およびプログラムに関し、特に、複数のタイル材を縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に貼り付けて製造される「曲面パネル体」用のタイル貼り付け情報生成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
外壁パネルなどの建物のパネル体の仕上げ材としてタイル材を用いる場合がある。特開2005-275983号公報(特許文献1)および特開2020-149465号公報(特許文献2)には、外壁のタイル施工対象面に対するタイル割付を演算するタイル割付方法が開示されている。
【0003】
また、曲面形状の壁面へのタイルの貼り付けを容易にするために、特開2005-83031号公報(特許文献3)には、タイルの裏面にフレキシブル基板を設けたタイル材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-275983号公報
【特許文献2】特開2020-149465号公報
【特許文献3】特開2005-83031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今般、デザイン性の向上等を目的として、建物の内外壁を曲面形状としたものがある。曲面形状の内外壁の仕上げ材にタイル材を用いる場合、貼り付け場所ごとに適切なサイズのタイル材を選択する必要があり、特許文献1、2のようなタイル割付方法を利用することができない。
【0006】
また、特許文献3のように、曲面形状の壁面に適したタイル材の構造が提案されているものの、施工対象面が平坦面か曲面かに関わらず、タイル材の貼り付けは現場で手作業で行われることが一般的である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に複数のタイル材を適切に貼り付けるために必要な「タイル貼り付け情報」を生成することのできるタイル貼り付け情報生成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従うタイル貼り付け情報生成装置は、縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に複数のタイル材を貼り付けて製造される曲面パネル体用のタイル貼り付け情報生成装置であって、パネル部材の湾曲方向におけるタイル材の貼り付け基準となる基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算するタイル条件計算手段と、タイル条件計算手段により計算された基準点ごとの奥行きおよび接線傾きを含む、タイル貼り付け情報を生成する生成手段とを備える。
【0009】
好ましくは、タイル条件計算手段は、タイル材の幅を所定サイズとした第1の基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算する第1の計算手段と、第1の計算手段による計算結果に基づいて、第1の基準点を貼り付け基準位置とした場合に各タイル材がタイル施工条件を満たすか否かを判定する判定手段と、判定手段により満たしていないと判定された場合に、タイル施工条件を満たす正規サイズを計算し、タイル材の幅を正規サイズとした第2の基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを再計算する第2の計算手段とを含む。
【0010】
好ましくは、タイル施工条件は、タイル材の裏面が接着剤の仮想厚み範囲内に収まっていることを含む。
【0011】
好ましくは、タイル貼り付け情報生成装置は、タイル材の幅を一定とする第1パターンと、タイル材の幅を一定としない第2パターンとのいずれかを選択する選択手段をさらに備える。この場合、第2の計算手段は、選択手段により第1パターンが選択された場合に、第1の基準点の全てを再計算の対象とし、第2パターンが選択された場合には、タイル施工条件を満たしていないと判定された第1の基準点を含む一部の基準点を再計算の対象とすることが望ましい。
【0012】
好ましくは、タイル貼り付け情報生成装置は、生産ラインにおけるタイル貼り付けロボットが有するハンド部の個数に基づいて、基準点をグルーピングするグルーピング計算手段をさらに備える。この場合、タイル貼り付け情報は、基準点のグループ情報をさらに含む。
【0013】
この発明の他の局面に従うタイル貼り付け情報生成プログラムは、縦方向または横方向に湾曲したパネル部材の湾曲方向におけるタイル材の貼り付け基準となる基準点ごとに、仮想平面からの奥行き値および接線傾きを計算するステップと、計算された基準点ごとの奥行きおよび接線傾きを含む、タイル貼り付け情報を生成するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に複数のタイル材を適切に貼り付けるために必要な「タイル貼り付け情報」を生成することができる。
【0015】
また、このような「タイル貼り付け情報」を用いることにより、工場において、効率的に曲面パネル体を製造することが可能となり、曲面パネル体の生産性を向上させることができる。この場合、現場施工の省人化を図ることができる。また、画一的な工場化パネルからマスカスタマイゼーション生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る曲面パネル体生産システムの前提となる「外壁パネル生産システム」の全体構成を示す模式図である。
【
図2】(A),(B)は、
図1に示すシステムにおける外壁パネル(タイル外壁パネル)の構成例を示す図である。
【
図3】(A)は、
図1に示すシステムにおける製造条件情報生成装置のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図であり、(B)は、
図1に示すシステムにおけるタイル貼り付け情報生成装置のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示すシステムにおける製造条件情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図5】(A),(B)は、
図1に示すシステムにおける位置情報の検出方法を示す説明図である。
【
図6】(A),(B)は、
図1に示すシステムにおける製造条件情報に含まれる条件データの項目を示す説明図である。
【
図7】(A)~(D)は、
図1に示すシステムにおける端部条件の判別方法を示す説明図である。
【
図8】(A),(B)は、
図1に示すシステムにおける端部タイル種類の判別方法を示す説明図である。
【
図9】
図1に示すシステムにおけるタイル貼り付け情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図10】(A),(B)は、
図1に示すシステムにおける区画処理用法を示す説明図である。
【
図11】(A)は、
図1に示すシステムにおいて、複数種類の組合せパターンの具体例を示す図であり、(B)は、
図1に示すシステムにおいて、一部の仮想領域に作業順序を表わす番号が付与された例を模式的に示す図である。
【
図12】
図1に示すシステムにおいて、工場内における外壁パネルの生産ラインの具体例を示す図である。
【
図13】(A)は、
図1に示すシステムにおけるパターン生成ステーションの概略構成を示す図であり、(B)は、
図1に示すシステムにおけるタイルユニットの具体例を示す図である。
【
図14】
図1に示すシステムにおけるパターン生成ステーションにおけるタイルユニット生成処理を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の実施の形態に係る曲面パネル体生産システムの全体構成を示す模式図である。
【
図16】(A)は、本発明の実施の形態に係るタイル貼り付け情報生成装置の機能構成を示す機能ブロック図であり、(B)は、タイル貼り付け情報生成装置のタイル条件計算部が実行するタイル条件計算処理を示すフローチャートである。
【
図17】(A)~(C)は、本発明の実施の形態におけるタイル条件計算方法を説明するための図である。
【
図18】(A),(B)は、本発明の実施の形態におけるタイル施工条件を模式的に示す図である。
【
図19】タイル材の幅を一定とする第1パターン、および、タイル材の幅を一定としない第2パターンを模式的に示す図である。
【
図20】本発明の実施の形態におけるグルーピング計算方法を説明するための図である。
【
図21】(A)は、本発明の実施の形態におけるタイル貼り付け装置が設置されるタイル貼りラインを模式的に示す図であり、(B)は、本発明の実施の形態におけるタイル貼り付け装置を制御する制御装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図22】本発明の実施の形態におけるパネル支持装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図23】本発明の実施の形態におけるタイル貼り付けロボットの把持部の構成例を示す図であり、(A)が正面図、(B)が側面図である。
【
図24】(A)は、本発明の実施の形態において、タイル貼り付けロボットのハンド部の高さおよび傾斜角度が調整された状態を模式的に示す図であり、(B)は、ハンド部の吸着面を斜め下方から見た図である。
【
図25】(A)は、本発明の実施の形態に係る曲面パネル体生産システムにより製造される曲面パネル体のイメージ図であり、(B)は、比較例の曲面パネル体を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
本実施の形態では、縦方向または横方向に湾曲したパネル部材に、平板形状のタイル材を仕上げ材として貼り付けて「曲面パネル体」を工場生産する曲面パネル体生産システムについて説明する。曲面パネル体は、たとえば建物の外壁パネルである。本実施の形態に係る曲面パネル体生産システムの基本的な構成および動作は、本出願人が、特願2021-160274号、特願2021-160275号、および特願2021-160276号として出願済の特許出願明細書に記載したシステム(以下「基本システム」という)と同様であってもよい。この基本システムは、フラットなパネル部材をタイル材の貼り付け対象面としたパネル体(外壁パネル)生産システムである。本実施の形態に係る曲面パネル体生産システムの詳細な説明に先立ち、基本システムの構成および動作について説明する。
【0019】
<基本システムの全体構成>
図1は、本実施の形態の曲面パネル体生産システムの前提となる外壁パネル生産システム1の全体構成を示す模式図である。外壁パネル生産システム1は、ブリック(煉瓦)などの複数のタイル材を仕上げ材とする外壁パネル(以下「タイル外壁パネル」という)を工場にて自動的に生産するためのシステムであり、主に、ティーチングデータ生成システム2と、工場内に設置される外壁パネル製造装置3とを備えている。
【0020】
図2は、タイル外壁パネルPの構成例を示す図であり、(A)はタイル外壁パネルPの分解図であり、(B)はタイル外壁パネルPの正面図である。
図2(A)を参照して、タイル外壁パネル(以下「外壁パネル」と略す)Pは、たとえば鋼製フレームなどを含むフレーム部材101と窯業系の下地材(以下「サイディング」という)105とを含むパネル部材110と、パネル部材110に貼り付けられ、多数のタイル材BTからなる仕上げ材120とを備えている。各タイル材BTは、板状に形成された部材であり、たとえば、ブリック(煉瓦)BRを所定の厚みでカットして形成されていてもよい。パネル部材110の表面には、
図2(B)に示されるように、多数のタイル材BTが敷き詰められている。
【0021】
複数の外壁パネルPが少なくとも横方向に接続されることにより、住宅の外壁が構成される。
図5(A)には、ある住宅9の1階部分の平面図が示されており、住宅9の外壁を構成する各外壁パネルPに、方角に応じた符号W1・・・,S1・・・,E1・・・,N1・・・が付与されている。
【0022】
再び
図1を参照して、外壁パネル製造装置3は、工場において、パネル部材110に複数のタイル材BTを貼り付けて外壁パネルPを製造する装置であり、複数の機械設備を含む。具体的には、外壁パネル製造装置3は、複数のタイル材をユニット化した「タイルユニット」を生成するタイルユニット生成装置30と、タイルユニット生成装置30により生成されたタイルユニットをタイル貼りステーションに供給するタイルユニット供給装置40と、タイル貼りステーションに供給されたタイルユニットをパネル部材110に貼り付けるタイル貼り付け装置50とを備えている。また、これらの装置30,40,50を制御する制御装置60を備えている。
【0023】
ティーチングデータ生成システム2は、外壁パネル製造装置3を稼働させるために必要なデータ(ティーチングデータ)を生成する。
図1に示されるように、ティーチングデータ生成システム2は、建物の基本設計情報に基づいて、外壁パネルPの「製造条件情報」を生成する製造条件情報生成装置10と、製造条件情報生成装置10により生成された製造条件情報に基づいて、外壁パネルPごとの「タイル貼り付け情報」を生成するタイル貼り付け情報生成装置20とを備えている。
【0024】
図2(B)に示されるように、外壁パネルPのパネル部材110には、基本的には共通の形状および幅寸法のタイル材BTが敷き詰められるものの、縦目地が連続しないよう、千鳥状に配置されることが望ましい。そのため、各外壁パネルPの幅方向端部には、縦方向において、幅寸法が異なるタイル材BTが交互に使用される。また、建物の隅部(出隅または入隅)に配置される外壁パネルPについては、パネル同士の繋ぎ目が目立たないようにするために、外壁パネルPの隅部側の端部には、L字形状のタイル材BTや寸法調整されたタイル材BTが用いられることが望ましい。これらの理由により、外壁パネルPが配置される位置、および、開口部130の有無やその取り付け位置等に応じて、外壁パネルPの端部に使用するタイル材BTの種類を定める必要がある。なお、開口部の両端部においても、寸法調整されたタイル材BTが用いられる。
【0025】
そこで、製造条件情報生成装置10は、外壁パネルPごとの基本設計情報から後述する「パネル施工情報」を検出することによって、各外壁パネルPの端部条件を特定し、特定した端部条件に応じて外壁パネルPの端部(少なくとも始点位置)に用いるタイル材BTの種類を判別する。そして、外壁パネルPごとに、判別したタイル材BTの種類(端部タイル種類の情報)を含む製造条件情報を生成し、タイル貼り付け情報生成装置20に出力(送信)する。
【0026】
タイル貼り付け情報生成装置20は、製造条件情報を取得(入力)し、取得した製造条件情報、および、タイル材BTの種類ごとの幅寸法および形状を規定した「タイルサイズ情報」に基づいて、外壁パネルPごとにタイル材BTの配置パターンを決定する。そして、外壁パネルPごとに、決定した配置パターンを含む「タイル貼り付け情報」を生成し、工場内に設置された外壁パネル製造装置3に出力(送信)する。タイル貼り付け情報は、「ティーチングデータ」の一種であり、たとえばインターネットなどのネットワークを介して制御装置60に送信される。
【0027】
これにより、外壁パネル製造装置3は、制御装置60による制御の下、外壁パネルPごとに、予め設定されたタイル材BTの配置パターンに基づいて複数種類のタイル材BTをパネル部材110に貼り付けることができる。したがって、外壁パネル生産システム1によれば、人手を介したティーチング作業を必要とすることなく、パネル部材110へのタイル材BTの貼り付けを自動かつ適切に行うことができる。その結果、外壁パネルPの生産ラインを完全自動化することができる。
【0028】
なお、製造条件情報生成装置10およびタイル貼り付け情報生成装置20は、たとえば汎用コンピュータなどの情報処理装置により構成される。これらの装置10,20は、機能上、別装置として示しているが、共通の情報処理装置により実現されてもよい。
【0029】
<基本システムの製造条件情報生成装置>
図3(A)は、製造条件情報生成装置10のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図である。製造条件情報生成装置10は、ハードウェア構成として、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)11と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部12と、ユーザからの指示を受け付ける操作部13と、各種情報を表示する表示部14と、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信する通信I/F(インターフェイス)15とを備えている。なお、記憶部12は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリおよびROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリを含む。操作部13は、たとえばキーボードまたはマウスを含む。表示部14は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイを含む。
【0030】
製造条件情報生成装置10は、機能構成として、検出部161と、条件判別部162と、種類判別部163と、生成部164と、出力処理部165とを備えている。
【0031】
検出部161は、たとえば通信I/F15を介して入力される建物の「基本設計情報」から、外壁を構成する外壁パネルPに関する情報を抽出し、抽出した情報を元に、外壁パネルPの施工に必要なパネル施工情報を検出する。ここでの「検出」とは、基本設計情報から抽出した情報を元に必要な情報を計算により求めること、および、基本設計情報から抽出した情報をそのまま(計算することなく)特定すること、の両方の意味を含む。
【0032】
「パネル施工情報」は、外壁パネルPの配置位置を示す「位置情報」、および、外壁パネルPの大きさおよび開口範囲を示す「形状情報」を含む。検出部161は、入力される基本設計情報が、BIM(Building Information Modeling)データなどの立体モデルの設計データである場合、当該設計データに定義された「位置情報」をそのまま抽出および特定する機能と、設計データに定義された、「形状情報」の元になる数値(たとえば開口範囲を示す数値)を施工図に用いられる数値に変換する機能とを有している。
【0033】
条件判別部162は、検出部161により検出されたパネル施工情報(主に位置情報)に基づいて、各外壁パネルPの端部条件を判別する。具体的には、端部条件として、直線部、入隅部、および出隅部のいずれかを判別するとともに、その判別結果と上述の位置情報とに基づいて、隣接するパネルとの取り合い条件を算出する。取り合い条件は、隣接するパネルとの「勝ち負け」およびその度合を含む。なお、条件判別部162は、幅方向両端部の条件だけでなく上下方向両端部の条件を判別してもよい。
【0034】
種類判別部163は、条件判別部162により判別された端部条件に基づいて、外壁パネルPごとに、少なくとも始点位置に用いるタイル材BTの種類を「端部タイル種類」として判別する。始点位置については後述する。
【0035】
生成部164は、外壁パネルPごとに製造条件情報を生成する。具体的には、i)検出部161により検出されたパネル施工情報の少なくとも一部、ii)条件判別部162により判別された端部条件、ならびに、iii)種類判別部163により判別された端部タイル種類を含む、複数項目の条件データを統合することにより、製造条件情報を生成する。
【0036】
図6(B)には、製造条件情報に含まれる条件データの項目(ID記号)が列挙されている。ID記号の例として、Wid:外壁パネルの位置(方位および番号)、Ws:始点側の端部条件、XP:パネル幅、We:終点側の端部条件、Wu:上側の条件、H:パネル高さ、Wd:下側の条件、Ow:開口部の幅、Oh:開口部の高さ、Osx:開口部始点のx座標、Osy:開口部始点のy座標、Bs:始点位置に使用するタイル材BTの種類(端部タイル種類)、が採用されている。ID記号とそれに対応するコード情報とにより、IDコードが生成される。コード情報は、数値、記号(+,-など)、文字(アルファベットなど)のうちの少なくとも一つを含む。なお、製造条件情報に含まれる項目は、
図6(B)に列挙した項目に限定されず、他の項目を含んでいてもよい。
【0037】
生成部164は、外壁パネルP単位で上記のようなIDコードを統合して、製造条件情報を生成する。このように、製造条件情報は、より詳細には、外壁パネルPの識別子と複数のIDコードで示された複数の条件データとからなる情報である。このような製造条件情報は、後述するように、タイル貼り付け情報生成装置20において利用される。
【0038】
出力処理部165は、生成部164により生成された外壁パネルPごとの製造条件情報を出力する処理を実行する。具体的には、各外壁パネルPの製造条件情報を、通信I/F15等を介して、タイル貼り付け情報生成装置20に送信する処理を実行する。あるいは、着脱可能な記録媒体(図示せず)に、各外壁パネルPの製造条件情報を書き込む処理を行ってもよい。あるいは、各外壁パネルPの製造条件情報を、製造条件記憶部18に記録しておき、タイル貼り付け情報生成装置20からの要求に応じて出力する処理を行ってもよい。製造条件記憶部18は、たとえばハードディスクなどの不揮発性の記憶装置(図示せず)により実現されてもよいし、クラウドサーバにより実現されてもよい。
【0039】
上述の検出部161、条件判別部162、種類判別部163、生成部164、および出力処理部165の機能は、CPU11がソフトウェアを実行することにより実現される。なお、これらの機能部のうちの少なくとも一つは、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0040】
図4は、製造条件情報生成処理を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、製造条件情報生成装置10のCPU11がたとえば記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0041】
はじめに、製造条件情報生成装置10は、通信I/F15を介して、たとえばBIM基本設計データを入力する(ステップS2)。BIM基本設計データは、BIMにより3次元のリアルタイムでダイナミックなモデリングソフトウェアを使用して作成された建物全体の設計データであり、建物形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量および特性を含む。なお、ここではBIMで構築された基本設計情報を入力することとしたが、限定的ではない。入力される基本設計情報は、たとえば、他種の3次元の建物設計ソフトウェアにより構築された設計データであってもよいし、建物のスキャンデータから読み取られた設計データであってもよい。また、2次元の図面データと紙ベースの図面とをスキャンして、必要な情報だけを読み取ることも可能である。
【0042】
基本設計データを入力すると、検出部161は、入力した基本設計データから、建物の外壁を構成する外壁パネルPに関する情報を検出する。具体的には、各外壁パネルPのモジュール(建物の基本寸法単位)を識別するとともに(ステップS4)、外壁パネルPごとに位置情報および形状情報を検出する(ステップS6,S8)。
【0043】
「位置情報」は、1階、2階などの階情報、東西南北のいずれであるかを示す方位情報、建物のどの部分に配置されるかを示す情報(以下「属性情報」という)、などを含む。
図5(A)に示される符号は、各外壁パネルPの位置情報(「Wid」のコード情報)を表記したものであり、方位情報をアルファベットN,W,S,Eで表わし、属性情報を数字(番号)で表わしている。
【0044】
属性情報を表わす数字は、
図5(B)の矢印A1で示されるように、建物の正面側の角部(出隅)を開始点とし、反時計回りまたは時計回りの順序で、方位ごとに採番されている。つまり、検出部161は、建物の正面側の角部を始点とした所定の採番方向に沿って各外壁パネルPの配置位置を特定し、特定した配置位置を「位置情報」として検出する。開始点となる出隅は、正面外壁の一方端(たとえば北西の角)であり、正面側の外壁パネルPから採番されるように、採番方向が定められている。一例として、採番方向は反時計方向であり、建物の各面において左から右へ採番される。そのため、各外壁パネルPの左側を始点側、右側を終点側という。なお、矢印A1で示す採番方向は、後述の端部条件の判別順序を定めている。
【0045】
BIMデータのように基本設計データにおいて上述の位置情報が定義されている場合には、ステップS6において検出部161は、基本設計データから位置情報をそのまま抽出する(特定する)だけでよい。
【0046】
「形状情報」は、パネル幅(「XP」のコード情報)、パネル高さ(「H」のコード情報)、開口範囲などを含む。開口範囲は、開口部のスケール(「Ow」「Oh」のコード情報)、開口部の座標位置(「Osx」「Osy」のコード情報)などにより特定される。
図6(A)には、外壁パネルPの幅XPおよび高さH、開口部の幅Owおよび高さOh、開口部の所定点(左下)のX座標OsxおよびY座標Osyが模式的に示されている。BIM基本設計データを元に形状情報を検出する場合、ステップS8において、検出部161により窓の取り付け枠(サッシ)の寸法情報などを考慮した値が算出される。
【0047】
次に、条件判別部162は、ステップS6で検出された位置情報およびステップS8で検出された形状情報に基づいて、外壁パネルPごとに端部条件を判別(算出)する(ステップS10)。具体的には、まず、各外壁パネルPの両端部(始点側端部および終点側端部)が、
図7(A)に示されるような直線部、入隅部、および出隅部のどれに該当するかを判別する。
【0048】
続いて、条件判別部162は、ステップS6で検出された位置情報が示す所定の順序に従って、すなわち、
図5(B)の矢印A1で示す採番方向に従って、外壁パネルPの両端部の取り合い条件を算出する。「取り合い条件」は、隣接するパネルとの「勝ち負け」およびその度合を含む。たとえば、
図7(B)に示すように、ある外壁パネルPaの始点側端部が直線部である場合、隣接する他の外壁パネルPbとの「勝ち負け」は無いため、取り合い条件は「0」(+,-なし)と判別される。
【0049】
一方、
図7(C)に示すように、ある外壁パネルPaの始点側端部が出隅部である場合、交差する他の外壁パネルPcの基準線に重なるように配置される「勝ち」条件(図面左側のパターン)と、他の外壁パネルPcの基準線に重ならずに配置される「負け」条件(図面右側のパターン)とがある。
図7(D)に示すように、入隅部の場合も同様である。これらの図では、「勝ち」条件を「+」で表現し、「負け」条件を「-」で表現している。「勝ち」「負け」いずれの取り合い条件の場合においても、その度合は様々であるため、条件判別部162は、勝ち/負け度合を数値(mm)で算出する。なお、条件判別部162は、正面側に配置される外壁パネルPが「勝ち」条件となるよう、取り合い条件を算出する。
【0050】
上述のような処理によって各外壁パネルPの端部条件(少なくとも「Ws」「We」のコード情報)が判別されると、種類判別部163が、始点側端部の始点位置に用いるタイル材BTの種類を、端部タイル種類として判別する(ステップS12)。始点位置は、典型的には始点側端部の下端位置である。なお、終点位置は、終点側端部の下端位置である。
【0051】
図8(A)は、タイル材BTの種類の例を示す図である。寸法または形状の異なる複数種類のタイル材BTa,BTb,BTc,BTd,・・・があるとすると、これらの情報が「タイルサイズ情報」として記憶部12または不揮発性の記憶装置(図示せず)に記憶されている。なお、「タイルサイズ情報」は、タイル材の種類ごとに幅寸法および形状(幅寸法または形状)を示す情報である。
【0052】
図示されるように、タイル材BTa,BTbはいずれもL字形状のタイル材であり、タイル材BTc,BTdは、いずれも直線形状(I字形状)のタイル材である。なお、たとえば直線形状のタイル材BTcを基本の種類としてもよい。L字形状のタイル材BTaはタイル材BTcと同じ横幅寸法であってもよい。また、図示はしていないが、タイル材BTの他の種類として、丸形状や多角形形状のタイル材が含まれていてもよい。
【0053】
図8(B)は、外壁パネルPの端部条件(具体的には、取り合い条件)ごとに、始点位置において使用可能なタイル材BTの種類を定めた対応テーブルである。この例では、外壁パネルPの始点側端部が「勝ち」条件の場合、その度合(プラス幅)、および、終点側端部の取り合い条件に応じて、L字形状のタイル材およびL字以外の形状のタイル材のなかから一つ選択されることが定められている。外壁パネルPの始点側端部が「負け」条件の場合、その度合(マイナス幅)、および、終点側端部の取り合い条件に応じて、L字以外の形状のタイル材のなかから一つ選択されることが定められている。外壁パネルPの始点側端部の取り合い条件が「0」の場合、L字以外の形状のタイル材のうちのいずれか一つが選択されることが定められている。
【0054】
種類判別部163は、上述のタイルサイズ情報および対応テーブルを参照しながら、全ての外壁パネルPに対し、始点位置に用いるタイル材BTの種類(「Bs」のコード情報)を決定する。なお、端部タイル種類の選択もまた、所定の判別順序に従って、すなわち、
図5(B)の矢印A1で示す採番方向に従って行われる。そのため、現場での施工時に、互いに隣接するタイル材BT同士が干渉したり、目地以上の隙間があくといった不具合を防止できる。
【0055】
種類判別部163による処理が終わると、生成部164は、外壁パネルP単位で全てのIDコードを統合し、「製造条件情報」を生成する(ステップS14)。出力処理部165は、統合したパネルIDコード、すなわち「製造条件情報」を出力する(ステップS16)。以上で、製造条件情報生成処理が終了する。
【0056】
このように、製造条件情報生成装置10が、基本設計情報から直接、外壁パネルPのタイル貼り付け情報の生成に必要な「製造条件情報」を生成することができるので、設計士による設計図の生成工程を省くことができる。
【0057】
<基本システムのタイル貼り付け情報生成装置>
図3(B)は、タイル貼り付け情報生成装置20のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図である。タイル貼り付け情報生成装置20のハードウェア構成は、製造条件情報生成装置10と同様であってよく、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部22と、ユーザからの指示を受け付ける操作部23と、各種情報を表示する表示部24と、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信する通信I/F(インターフェイス)25とを備えている。
【0058】
タイル貼り付け情報生成装置20は、機能構成として、取得部261と、区画部262と、パターン決定部263と、順序決定部264と、生成部265と、出力処理部266とを備えている。
【0059】
取得部261は、通信I/F25等を介して、製造条件情報生成装置10により生成された製造条件情報を取得する。つまり、
図5(B)に示されたような、外壁パネルごとにIDコード化された複数項目の条件データを取得する。なお、取得部261が取得する製造条件情報は、典型的には製造条件情報生成装置10により生成された情報であるものの、たとえば、設計図作成装置(図示せず)等により作成された設計図情報から抽出される情報であってもよい。
【0060】
区画部262は、取得した製造条件情報のうち、パネル幅、パネル高さ、および開口範囲を示す形状情報に基づいて、外壁パネルP(パネル部材110)を複数の仮想領域に区画する。仮想領域の区画例については後述する。
【0061】
パターン決定部263は、外壁パネルPごとに、取得部261が取得した製造条件情報、および、上述のタイルサイズ情報に基づいて、望ましくは区画部262により区画された仮想領域単位で、タイル材BTの配置パターンを決定する。この際、パターン決定部263は、仮想領域ごとに、予め定めた複数種類の組合せパターンのなかから1つまたは複数の組合せパターンを選択することにより、タイル材の配置パターンを決定することが望ましい。組合せパターンの詳細については後述する。
【0062】
順序決定部264は、生産ラインにおけるタイル貼り付け装置50(
図1)の配置位置情報に基づいて、複数の仮想領域へのタイル材の貼り付け順序を決定する。
【0063】
生成部265は、外壁パネルPごとのタイル貼り付け情報を生成する。タイル貼り付け情報は、外壁パネル製造装置3へのティーチングデータに相当し、パターン決定部263により決定された配置パターンと、順序決定部264により決定された貼り付け順序とを含む。
【0064】
出力処理部266は、生成部265により生成された外壁パネルPごとのタイル貼り付け情報を出力する処理を実行する。具体的には、各外壁パネルPのタイル貼り付け情報を、通信I/F25等を介して、外壁パネル製造装置3の制御装置60に送信する処理を実行する。あるいは、着脱可能な記録媒体(図示せず)に、各外壁パネルPのタイル貼り付け情報を書き込む処理を行ってもよい。あるいは、各外壁パネルPのタイル貼り付け情報を、貼り付け情報記憶部28に記録しておき、制御装置60など他の装置からの要求に応じて出力する処理を行ってもよい。貼り付け情報記憶部28は、たとえばハードディスクなどの不揮発性の記憶装置(図示せず)により実現されてもよいし、クラウドサーバにより実現されてもよい。
【0065】
上述の取得部261、区画部262、パターン決定部263、順序決定部264、生成部265、および出力処理部266の機能は、CPU21がソフトウェアを実行することにより実現される。なお、これらの機能部のうちの少なくとも一つは、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0066】
図9は、タイル貼り付け情報生成処理を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、タイル貼り付け情報生成装置20のCPU21がたとえば記憶部22に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0067】
はじめに、タイル貼り付け情報生成装置20は、通信I/F25を介して、ある建物に使用する全ての外壁パネルPのパネルIDコードを入力する(ステップS2)。これにより、取得部261が、外壁パネルPごとに、Wid:外壁パネルの位置(方位および番号)、Ws:始点側の端部条件、XP:パネル幅、We:終点側の端部条件、Wu:上側の条件、H:パネル高さ、Wd:下側の条件、Ow:開口部の幅、Oh:開口部の高さ、Osx:開口部始点のx座標、Osy:開口部始点のy座標、Bs:始点に使用するタイル材BTの種類(端部タイル種類)についてのコード情報を取得する。
【0068】
次に、取得部261が取得したIDコード情報のうち、形状情報を表わす情報(XP:パネル幅、H:パネル高さ、Ow:開口部の幅、Oh;開口部の高さ、Osx:開口部始点のx座標、Osy:開口部始点のy座標)に基づいて、区画部262が、各外壁パネルPを複数の仮想領域に区画する処理を実行する(ステップS24)。この処理については、
図10を参照して説明する。なお、
図10(A)では、図面が煩雑になるのを避けるために、タイル材BTの個数を減らして示している。
【0069】
図10(A)に示されるように、区画部262はまず、外壁パネルPを、開口部130の位置で縦方向(上下方向)に区画し、残りの領域を所定のルールで区画する。具体的には、工場に設置されたタイル貼り付け装置50が一度に吸着可能(保持可能)なサイズに基づいて、外壁パネルPの区画分けを実行する。より具体的には、タイル貼り付け装置50が一度に吸着可能な吸着可能面積を算出し、算出した面積に基づいて、仮想領域の最大サイズを基準に、残りの領域を縦方向に区画する。
【0070】
仮想領域の最大サイズが、
図10(B)に示すように、(基本種類のタイル材BTcを用いた場合に)X列×Y行であると仮定すると、外壁パネルPの残りの領域を、最大Y行となるように縦方向に区画する(ただし、XおよびYは自然数であり、典型的にはY>Xである)。
図10(A)に示す例では、外壁パネルPが、4本の分割線B1~B4を境界として縦方向に5つの領域に分割されている。また、5つの領域の各々において、パネルの端部領域、開口部に隣接する開口横領域を区画してから、残りの領域を、最大X列となるよう横方向に区画する。
図10(A)には、任意の仮想領域VAが示されている。
【0071】
上記のような処理によって外壁パネルPを複数の仮想領域に区画すると、区画部262は、各仮想領域の座標位置データを、「貼り付け位置情報」として内部メモリに一時記憶する。なお、タイル材BTは縦目地が連続しないよう半ピッチずつずらして配置されるため、横方向に隣接する仮想領域の端部は半ピッチ分重なりをもっている。
【0072】
パターン決定部263は、上述のようにして区画された仮想領域ごとに、タイル材BTの配置パターンを決定する(ステップS26)。この際、パターン決定部263は、外壁パネルPの両端部の仮想領域(端部領域)、開口部130の両端部の仮想領域(開口横領域)、および残りの領域(中央領域)の順に、タイル材BTの配置パターンを決定することが望ましい。取得部261が取得したIDコード情報には、端部タイル種類(Bs:始点に使用するタイル材BTの種類)が含まれているため、対象の外壁パネルPの端部タイル種類に基づいて、始点側の端部領域の配置パターンを決定し、対象の外壁パネルPの次の番号の外壁パネルPの端部タイル種類に基づいて、終点側の端部領域の配置パターンを決定することができる。
【0073】
パターン決定部263は、上述のように、仮想領域ごとに、複数種類の組合せパターンのなかから1つまたは複数の組合せパターンを選択することにより、タイル材BTの配置パターンを決定する。複数種類の組み合わせパターンの具体例を
図11(A)に示す。
図11(A)に示す複数種類の組み合わせパターンは、種類(寸法または形状)の異なるタイル材BT(BTa,BTb,BTc,BTd,・・・)の組合せ方を予めパターン化したものであり、各組合せパターンは、複数種類のタイル材BTのなかから1つまたは複数のタイル材を組み合わせて形成されている。
【0074】
複数種類の組み合わせパターンは、全行においてタイル種類が同一であるパターン、一行おきにタイル種類が異なるパターン、3種類以上のタイル材BTをランダムに並べたパターン、などがある。また、奇数行または偶数行にのみタイル材BTが配置されるパターン(目地跨ぎパターン)もある。なお、ここでは5行分の組み合わせが示されているが、仮想領域の行数に応じて同様のパターンが形成可能である。
【0075】
パターン決定部263は、各仮想領域の大きさに応じて、上述のような複数種類の組み合わせパターンの中から1つまたは複数の組み合わせパターンを選択する。この際、パターン決定部263は、各仮想領域において組み合わせパターンの数が少なくなるように(望ましくは最小となるように)選択処理を実行する。これにより、仮想領域ごとに、効率良くタイル材BTの配置パターンを決定することができる。仮想領域ごとの(パターン化された)複数のタイル材BTのまとまりを、「タイルユニット」という。なお、端部領域および/または開口横領域の組み合わせパターンは、予め定められていてもよい。
【0076】
パターン決定部263は、仮想領域ごとに選択した組み合わせパターンに従った、複数のタイル材BTの配置パターンを示すタイルパターン情報を、各仮想領域に固有の識別子に対応付けて、内部メモリに一時記憶する。「タイルパターン情報」は、タイル材BTの種類、個数、並べ方を含む。
【0077】
次に、順序決定部264が、生産ラインにおけるタイル貼り付け装置50(
図1)の配置位置情報に基づいて、複数の仮想領域へのタイルユニットの貼り付け順序を決定する(ステップS28)。つまり、タイル貼り付け装置50が効率良く(最短時間で)全ての仮想領域へのタイル貼り付け作業を実行できるように、仮想領域の作業順序を決定する。
図11(B)には、一部の仮想領域に、作業順序を表わす番号が付与された例が模式的に示されている。
【0078】
後述するように、工場内のタイル貼りステーションには、複数台のタイル貼り付け装置50が設置され、これらのタイル貼り付け装置50が同時に稼働して1枚の外壁パネルPへのタイル貼り付け作業が実施される。そのため、順序決定部264は、このような配置位置情報に基づいて、仮想領域ごとに、配置順序を示す番号を付与する。
【0079】
典型的には、2台のタイル貼り付け装置50がパネル載置台(
図12に示すパネル搬送部300)を挟んで互いに対面するように配置されている。たとえば一方のタイル貼り付け装置50(50a)が、パネル載置台に載置された状態の外壁パネルPの下端部側に配置され、他方のタイル貼り付け装置50(50b)が、パネル載置台に載置された状態の外壁パネルPの上端部側に配置されている。この場合、たとえば、外壁パネルPの略中央位置を通る基準線を基準として各タイル貼り付け装置による作業対象の仮想領域を仮決めした後、作業対象の仮想領域の数が略同数となるように作業区域を調整して、作業区域ごとに番号を付与してもよい。
【0080】
順序決定部264は、決定した貼り付け順序を示す順序情報を、各仮想領域に固有の識別子に対応付けて、内部メモリに一時記憶する。「順序情報」は、作業を行うタイル貼り付け装置50を特定するための識別情報および作業順序を含む。
【0081】
上述の処理によって仮想領域ごとの配置パターンおよび貼り付け順序が決定すると、生成部265は、「タイル貼り付け情報」を生成する(ステップS30)。つまり、ステップS24,S26,S28の処理によって内部メモリに一時記憶された情報(貼り付け位置情報、タイルパターン情報、および順序情報)を仮想領域ごとに統合し、タイル貼り付け情報を生成する。出力処理部266は、生成部265により生成されたタイル貼り付け情報を出力する(ステップS32)。以上で、タイル貼り付け情報生成処理が終了する。
【0082】
このように、タイル貼り付け情報生成装置20は、工場に設置された外壁パネル製造装置3に適した「タイル貼り付け情報」を生成することができる。したがって、このタイル貼り付け情報を外壁パネル製造装置3のティーチングデータとすることで、パネル部材110へのタイル材BTの貼り付けを自動かつ効率良く行うことが可能となる。
【0083】
<基本システムの外壁パネル製造装置>
図12は、工場内における外壁パネルPの生産ラインの概要を示す図である。生産ラインは、中央に配置されたパネル搬送部(ベルトコンベア等)300に沿って、外壁パネルPのパネル部材110を製造するパネル部材製造ラインと、仕上げ材120となるタイル材BTをパネル部材110に貼り付けるタイル貼りラインとを含んでいる。パネル部材製造ラインは、たとえば、パネル部材110の基本部材を加工するステーションST101,ST102と、パネル搬送部300上の組み立てステーションST103とで構成されている。
【0084】
タイル貼りラインは、主に、パターン生成ステーションST1と、タイル貼りステーションST2とで構成されている。パターン生成ステーションST1に、タイルユニット生成装置30と、タイルユニット供給装置40とが配置されている。タイル貼りステーションST2に、タイル貼り付けロボットとしてのタイル貼り付け装置50が配置されている。タイル貼りステーションST2は、パネル搬送部300の下流側領域(組み立てステーションの下流側の領域)を含む位置に設けられている。
【0085】
タイル貼りステーションST2には、パネル搬送部300の両側に、タイル貼り付け装置50a,50bが配置されている。そのため、パターン生成ステーションSTが2箇所設けられており、パターン生成ステーションST1aにおいて、一方のタイル貼り付け装置50aが貼り付けるタイル材BTの配置パターンを生成し、他方のパターン生成ステーションST1bにおいて、タイル貼り付け装置50bが貼り付けるタイル材BTの配置パターンを生成する。
【0086】
図13(A)は、パターン生成ステーションST1(ST1aまたはST1b)の概略構成を示す図である。パターン生成ステーションST1には、タイル材BTの種類ごとに供給レーンを有するタイル供給ライン61が設けられており、タイル供給ライン61の下流側にユニット搬送部62が設けられている。タイルユニット生成装置30は、ユニット搬送部62の上流側部分に設置されており、タイルユニット供給装置40は、ユニット搬送部62の下流側部分に設置されている。
【0087】
タイルユニット生成装置30の制御装置には、予め、タイル貼り付け情報生成装置20において生成されたタイル貼り付け情報の少なくとも一部(タイルパターン情報および順序情報)がティーチングデータとして入力されている。あるいは、生産ライン稼働時に、タイル貼り付け情報生成装置20から受信してもよい。タイルユニット生成装置30は、入力または受信したタイル貼り付け情報に従って、仮想領域ごとに複数のタイル材BTを並べてタイルユニットを生成する。つまり、事前に決定された貼り付け順序で、事前に決定された配置パターンに従ってタイルユニットを生成する。タイルユニット生成装置30は、たとえばデルタ式ピッキングロボットなどの公知のピッキングロボットにより構成されている。
【0088】
タイルユニット供給装置40は、タイルユニット生成装置30により生成されたタイルユニットを受け取り、受け取った順序で、タイルユニットをタイル貼り付け装置50のピックアップ位置64(
図12参照)に供給する。つまり、事前に決定された貼り付け順序(順序情報)に従って、タイルユニットを順次、ピックアップ位置64に供給する。
【0089】
タイルユニット供給装置40は、たとえば、ユニット搬送部62を稼働する搬送制御部(図示せず)と、ユニット搬送部62により搬送されるタイルユニットTUを一つずつ載せる載置台41と、載置台41に載せられたタイルユニットTUの待機およびピックアップ位置64への供給を実現するための待機機構42とを含む。待機機構42は、たとえば、載置台41を昇降させる昇降機を含む。
【0090】
図13(B)には、タイルユニットTUの具体例が示されている。タイルユニット生成装置30により生成されたタイルユニットTUを、そのままの状態でタイルユニット供給装置40の載置台41に乗せて、そのままの状態でタイル貼り付け装置50に供給するために、型枠パレット70が用いられる。型枠パレット70は、タイルパターンの種類に応じて定められていてもよい。
【0091】
図14は、パターン生成ステーションSTにおけるタイルユニット生成処理を示すフローチャートである。この処理は、たとえば制御装置60による制御下で、タイルユニット生成装置30、タイルユニット供給装置40、および、これらの装置30,40と連携する装置(または作業員)とにより実行される。なお、制御装置60は典型的にはPLC(Programmable Logic Controller)により構成される。
【0092】
図14を参照して、タイルユニット生成装置30は、製造対象の外壁パネルP(以下「対象パネル」という)についてのタイル貼り付け情報を受信する(ステップS42)。パターン生成ステーションSTには、パレット供給ライン(図示せず)があり、パレット供給ラインに複数種類のパレット70が供給される(ステップS44)。対象パネルについてのタイル貼り付け情報に基づいて、複数種類のパレット70のなかから使用するパレット70が決定される(ステップS46)。決定されたパレット70は、ユニット搬送部62の上流側部分に載置される。
【0093】
また、タイルユニット生成装置30はまず、貼り付け順序が1番のタイルパターン情報を読み取り、そのタイルパターン情報からタイル材BTの種類を特定し、特定したタイル材BTの種類および個数をタイル供給ライン61に伝達する。これによりタイル供給ライン61において、指示のあった種類のタイル材BTが供給され(ステップS48)、タイル材BTが種類ごとに供給レーン上に設置される(ステップS50)。なお、タイル材BTの供給は、作業員による手作業で行われてもよい。
【0094】
タイルユニット生成装置30は、全てのタイル材BTの供給を確認すると(ステップS52にてYES)、供給レーン上のタイル材BTをたとえば一つずつピッキングして(ステップS54)、ユニット搬送部62に載置されたパレット70に、ピッキングしたタイル材BTを配置する(ステップS56)。このように、タイルユニット生成装置30は、タイル材BTの種類ごとに設けられた供給レーンから、タイルユニットTUを構成する複数種類のタイル材BTをピッキングし、タイルパターン情報で規定された並べ方で、複数種類のタイル材BTをパレット70上に配置する。
【0095】
タイルパターン情報に応じた全てのタイル材BTの配置が完了するまで、タイル材BTのピッキングおよび配置作業が繰り返し実行される(ステップS60にてNO)。
【0096】
なお、タイル材BTがパレット70に配置される度に、パレット供給ラインなどに設けられた検知手段によりタイル材BTの配置を確認することが望ましい(ステップS58)。これにより、不完全なタイルユニットTUが次工程に供給されることを防止できる。検知手段は、たとえば
図13に示すようなカメラ63を含み、カメラ63による撮影画像に基づいてタイル材BTの配置の有無を検知するものであってもよいし、赤外線センサ等のセンサによりタイル材BTの配置の有無を検知するものであってもよい。
【0097】
パレット70への全てのタイル材BTの配置が完了し、たとえば1番目のタイルユニットTUが完成すると(ステップS60にてYES)、タイルユニット供給装置40が稼働する。タイルユニット供給装置40は、タイルパターン情報に従ったタイルパターンの配置を確認した後(ステップS62)、ユニット搬送部62としてのベルトコンベアを稼働するとともに、待機機構42を構成する昇降機を稼働する(ステップS64,S66)。
【0098】
タイルユニット供給装置40は、待機機構42によって1番目のタイルユニットTUを、ピックアップ位置64にパレット70ごと供給する。タイルユニット供給装置40は、タイル貼り付け装置50によるピッキングを確認すると(ステップS68)、1番目のタイルユニットTUの供給が完了したと判断し、2番目以降のタイルユニットTUの供給処理を実行する(ステップS70)。
【0099】
図12を参照して、各タイル貼りステーションST2には、上述のように、タイル貼り付け装置50が配置されている。タイル貼り付け装置50は、タイル材BTのピッキングおよびパネル部材110への配置を行うタイル貼り付けロボット51と、タイル貼り付けロボット51を、パネル搬送部300による搬送方向に沿って(パネル部材110の横幅方向に沿って)移動させる移動部材52とを含んでいる。これにより、タイル貼り付けロボット51は、パターン生成ステーションST1におけるピックアップ位置64とタイル貼りステーションST2における貼り付け作業位置との間を、パネル搬送部300に沿って往復移動可能となっている。
【0100】
図12に模式的に示すように、タイル貼り付けロボット51は、複数のタイル材BTを保持するハンド部51hを有している。ハンド部51hは、タイル材BTを上方から吸着することによって複数のタイル材BTを一度に保持する構成であり、複数のタイル材BTと接する吸着面(図示せず)を有している。なお、本明細書において既述の「タイル貼り付け装置50」は、主にタイル貼り付けロボット51を示しているものとする。
【0101】
図12を参照して、タイル貼り付けロボット51は、タイルユニット供給装置40によりピックアップ位置64に供給されたタイルユニットTUをピックアップし、ピックアップしたタイルユニットTUをパネル部材110上の指定された領域(仮想領域に対応する領域)に貼り付ける。上述のように、タイルユニット供給装置40は、事前に決定された貼り付け順序に従ってタイルユニットTUをピックアップ位置64に供給するために、タイル貼り付け装置50もまた、事前に決定された貼り付け順序に従って、タイルユニットTUをピックアップしてパネル部材110に貼り付けることができる。
【0102】
タイル貼り付けロボット51の制御装置には、予め、タイル貼り付け情報生成装置20において生成されたタイル貼り付け情報の少なくとも一部(貼り付け位置情報)がティーチングデータとして入力されている。あるいは、生産ライン稼働時に、タイル貼り付け情報生成装置20から受信してもよい。そのため、タイル貼り付けロボット51は、入力または受信したタイル貼り付け情報に従って、事前に計算された各仮想領域に、事前にパターン決めされた複数のタイル材BTからなるタイルユニットTUを、適切に配置することができる。
【0103】
なお、タイル貼りステーションST2においてタイル貼り作業を開始する前に、パネル部材110の表面には接着剤が塗布されているものとする。接着剤の塗布位置は、タイル材BTの配置パターンに応じて計算可能である。タイル貼り付けロボット51によるタイル材BTの貼り付けが完了すると、外壁パネルPが完成する。
【0104】
[本実施の形態に係る曲面パネル体生産システム]
<全体構成>
図15は、本実施の形態に係る曲面パネル体生産システム1Aの全体構成を示す模式図である。曲面パネル体生産システム1Aは、上記システム1と同様に、ティーチングデータ生成システム2Aと、工場内に設置される曲面パネル体製造装置3Aとを備えている。以下に、上述のパネル部材110が、横方向(幅方向)または縦方向(高さ方向)に湾曲したパネル部材111(
図21参照)である場合に特有の構成および動作について、詳細に説明する。本実施の形態では、パネル部材111が横方向に沿って湾曲しているものとする。なお、パネル部材111は縦方向に沿って湾曲していてもよい。
【0105】
曲面パネル体製造装置3Aは、湾曲したパネル部材(以下「湾曲パネル部材」という)111に複数のタイル材BTを貼り付けることによって、曲面パネル体PAを製造する。曲面パネル体PAは、基本システム1と同様に、典型的には外壁パネルである。タイル材BTの形状は、
図8(A)に示したタイル材BTc,BTd,・・・のように、直線状の平板形状(I字形状)である。また、タイル材BTは、平面視において矩形形状(長方形および正方形を含む)である。
【0106】
ティーチングデータ生成システム2Aは、建物の基本設計情報に「曲面パネルあり」の情報が含まれている場合に、湾曲パネル部材111を対象としたタイル貼り付け情報を生成するタイル貼り付け情報生成装置20Aを備えている。タイル貼り付け情報生成装置20Aは、
図1のシステム1に示した製造条件情報生成装置10とタイル貼り付け情報生成装置20との両方の機能を実行し得る情報処理装置である。
【0107】
曲面パネル体製造装置3Aは、工場において、湾曲パネル部材111に複数のタイル材BTを貼り付けて曲面パネル体PAを製造する装置であり、
図1のシステム1と同様に、複数のタイル材BTをユニット化した「タイルユニット」を生成するタイルユニット生成装置30Aと、タイルユニット生成装置30Aにより生成されたタイルユニットをタイル貼りステーションに供給するタイルユニット供給装置40Aと、タイル貼りステーションに供給されたタイルユニットを湾曲パネル部材111に貼り付けるタイル貼り付け装置50Aとを備えている。また、これらの装置30A,40A,50Aを制御する制御装置60Aを備えている。なお、タイルユニット生成装置30Aおよびタイルユニット供給装置40Aの構成および動作は、
図1のシステム1におけるタイルユニット生成装置30およびタイルユニット供給装置40と同様とすることができる。
【0108】
<タイル貼り付け情報生成装置>
図16(A)は、タイル貼り付け情報生成装置20Aの機能構成を示す機能ブロック図である。タイル貼り付け情報生成装置20Aは、検出部171と、タイル条件計算部172と、グルーピング計算部173と、生成部174と、出力処理部175とを備えている。
【0109】
検出部171は、
図3(A)に示した検出部161に対応する。検出部171は、曲面パネル体PAの施工に必要なパネル施工情報を検出する。パネル施工情報は、曲面パネル体PAの配置位置を示す位置情報、および、曲面パネル体PA(湾曲パネル部材111)の形状情報を含む。形状情報は、湾曲パネル部材111の大きさおよび湾曲情報(たとえば、湾曲方向、湾曲度合、など)を含む。湾曲パネル部材111は、一例として横方向に湾曲しているものとする。
【0110】
タイル条件計算部172は、湾曲パネル部材111の横方向(湾曲方向)におけるタイル材BTの貼り付け基準となる基準点(x座標)ごとに、後述の仮想平面からの奥行き値(以下「z値」という)および接線傾き(以下「m値」という)を計算する。タイル材BTを千鳥配置する場合には、奇数行の基準点ごとのz値・m値と、偶数行の基準点ごとのz値・m値とを、それぞれ計算する。タイル条件計算部172による具体的な計算方法については、後述する。
【0111】
グルーピング計算部173は、生産ラインにおけるタイル貼り付けロボット51Aが一度に保持可能なタイル材BTの個数に基づいて、タイル材BTごとの貼り付け基準位置をグルーピングする。貼り付け基準位置は、たとえばタイル材BTの中心点に相当し、x座標(横方向の基準点)およびy座標(垂直ポイント)により特定される。なお、タイル貼り付けロボット51Aの仕様のバリエーション等を考慮すると、貼り付け基準位置はx座標(基準点)と同義であってもよい。つまり、グルーピング計算部173は、単に、横方向の基準点をグルーピングしてもよい。
【0112】
生成部174は、タイル条件計算部172による計算結果およびグルーピング計算部173による計算結果を含む「タイル貼り付け情報」を生成する。つまり、タイル貼り付け情報は、基準点ごとのz値およびm値を含むとともに、各貼り付け基準位置が属するグループ情報を含む。なお、このタイル貼り付け情報には、曲面パネル体PAの識別子と、
図6(B)に示したような複数のIDコードで示された複数の条件データとが含まれるものとする。
【0113】
出力処理部175は、生成部174で生成されたタイル貼り付け情報を出力する。具体的には、各曲面パネル体PAのタイル貼り付け情報を、図示しない貼り付け情報記憶部(
図3(B)の貼り付け情報記憶部28に相当)に記録する処理を行ってもよいし、直接、曲面パネル体製造装置3Aの制御装置60Aに送信する処理を行ってもよい。タイル貼り付け情報は、曲面パネル体製造装置3Aに対するティーチングデータとして利用される。
【0114】
図16(B)は、タイル条件計算部172が実行するタイル条件計算処理を示すフローチャートである。タイル条件計算部172は、はじめに、タイル材BTの幅寸法(y方向のサイズ)を所定サイズとした場合の基準点を計算する(ステップS61)。ここでの所定サイズは、たとえばデフォルトのサイズである。あるいは、操作部(図示せず)を介して入力されたサイズであってもよいし、パネル施工情報において予め定められたサイズであってもよい。この処理については、
図17を参照して説明する。
【0115】
図17(A)に示すように、まず、湾曲パネル部材111の湾曲形状を再現した仮想湾曲面112の前方に、湾曲パネル部材111と幅および高さが同一の仮想平面113を対称するように設定する。そして、
図17(B)に示すように、まず、仮想平面113を表す直線(横方向に延びる断面線)をx軸とし、x方向に等間隔でとった点Paを計算する。x方向は湾曲パネル部材111の湾曲方向A2に相当する。点Paと同じx座標の仮想湾曲面112上の点が、タイル材BTの貼り付け基準となる基準点Pbである。隣り合う点Pa間の間隔(ピッチ)は、たとえば、タイル材BTのデフォルトサイズ(幅寸法)と同等であり、より具体的には、仮想平面113にデフォルトサイズのタイル材BTを横方向に沿ってピッタリと並べた場合に互いに隣接するタイル材BTの中心点間の距離に相当する。
【0116】
なお、実際の処理では、タイル材BT間の目地寸法を考慮して点Paを計算するものとする。目地寸法は予め定められたデフォルトの寸法であってもよいし、操作部(図示せず)を介して入力された寸法であってもよい。
【0117】
再び
図16(B)を参照して、タイル条件計算部172は、仮想湾曲面112における基準点Pbごとに、仮想平面113上の点Paからの奥行き値(z値)、および、基準点Pbに接する仮想湾曲面112の接線の傾き(m値)を計算する(ステップS62)。
図17(C)に示すように、m値は、正負を区別した値であり、接線が仮想平面113と平行である場合に「±0」となる。このようにして、デフォルトサイズでとった基準点Pbごとに、z値およびm値が算出される。なお、接線は、基準点Pbを接点とし計算され、具体的には、基準点Pbを通る法線と垂直な直線である。
【0118】
次に、タイル幅をデフォルトサイズとした場合のz値およびm値に基づいて、基準点Pbをタイル材BTの貼り付け基準位置(中心点)とした場合に、全てのタイル材BTが所定のタイル施工条件を満たすか否かを判定する(ステップS64)。「タイル施工条件」は、タイル材BTの裏面が接着剤の仮想厚み範囲D内に収まっていることを含む。厚み範囲Dとしては、たとえば8~10mm程度が想定される。
【0119】
具体的には、
図18(A),(B)に示すように、デフォルトサイズのタイル材BTの幅xをたとえば100%で表した場合、タイル材BTの裏面181が、接着材180の仮想厚み範囲Dからはみ出すことなく収まっているか否かを判断する。各タイル材BTの裏面は各基準点Pbの接線に一致するので、隣り合う基準点Pbごとのm値、z値、およびタイル材BTのデフォルトサイズにより、このようなタイル施工条件を判定できる。
【0120】
図18(A)のケースでは、仮想湾曲面112の湾曲度合が緩やかであるので、裏面181が仮想厚み範囲D内に収まっており、タイル施工条件を満たす。一方、
図18(B)のケースでは、仮想湾曲面112の湾曲度合が急である(激しい)ので、裏面182が仮想厚み範囲D内に収まっていない。この場合、タイルBTの両端部を適切に接着することができないので、タイル施工条件を満たさない。
【0121】
全ての基準点Pbにおいてタイル施工条件を満たしている場合(ステップS64にてYES)、ステップS72に進む。一方、少なくとも一部の基準点Pbにおいてタイル施工条件を満していない場合(ステップS64にてNO)、タイル材BTの幅xをデフォルトサイズからタイル施工条件を満足する正規サイズに変更する(ステップS68)。
図18(B)の下の図では、タイル材BTの幅xが50%に変更されている。タイル材BTの幅xは、規定の(流通している)タイル材BTの寸法に応じて、たとえば、100%、75%、50%、25%の4種類から選ばれる。あるいは、適宜、規定サイズのタイル材BTをカットして所望の幅xを実現してもよい。
【0122】
図19の左の図に示すように、タイル施工条件を満たす領域「A」と満たさない領域「B」とが混在する場合、右上の図に示すように、領域「A」,「B」の両方についてタイル材BTの幅xを一定とする“第1パターン”と、右下の図に示すように、タイル材BTの幅xを一定とせず、領域「B」のみタイルサイズを変更する“第2パターン”とを、選択できることが望ましい。この場合、タイル条件計算部172は、第1パターンが選択された場合には、基準点Pbの全てを再計算の対象とし、第2パターンが選択された場合には、タイル施工条件を満たしていないと判定された基準点Pbを含む一部の基準点を再計算の対象とする。パターンの選択は、たとえば
図3に示した操作部13または23により実現可能である。タイルサイズの変更箇所については、タイルサイズに応じて基準点Pb(Pa)の位置が変わる。変更後の基準点Pb´は、タイルサイズを正規サイズとしたときのタイル材BTの中心点に相当する。
【0123】
タイル施工条件を満たすタイルサイズを計算すると、変更後の基準点Pb´ごとに、z値およびm値を再計算する(ステップS70)。
【0124】
ステップS72では、ステップS62で計算された基準点Pbごとのz値・m値、または、ステップS70で計算された基準点Pb´ごとのz値・m値を、生成部174に出力する。以上で、タイル条件計算処理は終了する。
【0125】
図16(A)を参照して、上述のタイル条件計算処理が終わると、グルーピング計算部173が、まず、検出部171が検出した湾曲パネル部材111の大きさ、および、タイル材BTの規定の縦寸法に基づいて、貼り付け基準位置の垂直ポイント(y座標)を計算する。垂直ポイントは、
図20(B)に示すようにy方向に沿って等間隔でとった水平ライン190のy座標により特定できる。これにより、各タイル材BTの貼り付け基準位置(中心点)が特定される。貼り付け基準位置は、IDコード化される。
【0126】
グルーピング計算部173は、生産ラインにおけるタイル貼り付けロボット51Aが一度に保持可能なタイル材BTの個数に応じて、タイル材BTの貼り付け基準位置をグルーピングする。つまり、貼り付け基準位置のIDコード、すなわち位置座標識別コードをグルーピングする。たとえば、タイル貼り付けロボット51Aが3つのハンド部51hを有する場合、
図20(A),(B)のイメージ図に示すように、x方向に3個を1グループとして、位置座標識別コードをグループ分けする。ハンド部51hの吸着面がy方向に長い場合、y方向に沿って吸着できる個数(たとえばNy個)を計算し、3個×Ny個を1グループに分類する。なお、タイル材BTを千鳥配置する場合には、3個×(Ny/2)個を1グループに分類してもよい。また、1グループに含まれるx方向の個数は、ハンド部51hの個数(3個)と一致していなくてもよく、たとえばタイル材BTのサイズが小さい場合にはハンド部51hの個数よりも多くてもよい。
【0127】
グルーピング計算部173は、位置座標識別コードごとにグループ番号(グループ識別コード)を割り当て、割り当てたグループ番号を生成部174に出力する。
【0128】
生成部174は、タイル材BTの貼り付け基準位置のIDコード(位置座標識別コード)ごとに、z値・m値およびグループ情報(グループ番号)を含む、タイル貼り付け情報を生成する。タイル貼り付け情報は、タイル材BTのサイズ(少なくとも幅寸法)をさらに含む。出力処理部175は、タイル貼り付け情報を、たとえば曲面パネル体製造装置3Aの制御装置60Aに送信する処理を実行する。
【0129】
本実施の形態に係るタイル貼り付け情報生成装置20Aによれば、湾曲パネル部材111の湾曲形状に応じて、タイル材BTを貼り付ける際に必要となるタイル貼り付け情報が生成されるので、タイル貼り付けロボット51Aによる自動貼り付けを可能とすることができる。なお、タイル貼り付け情報生成装置20Aが生成したタイル貼り付け情報に基づいて、手作業でタイル材BTを貼り付けてもよい。
【0130】
<曲面パネル体製造装置>
曲面パネル体製造装置3Aは、
図15に示したように、タイルユニット生成装置30Aと、タイルユニット供給装置40Aと、タイル貼り付け装置50Aと、これらを制御する制御装置60Aとを備えている。
【0131】
図21(A)は、タイル貼り付け装置50Aが設置されるタイル貼りラインを模式的に示す図である。タイル貼りラインは、湾曲パネル部材111をセットする「パネルセット工程」と、パネルセット工程でセットされた湾曲パネル部材111にタイル材BTを貼り付ける「タイル貼り工程」とを、この順序で含む。
【0132】
タイル貼り付け装置50Aは、湾曲パネル部材111を下方から支持するパネル支持装置80と、タイル材BTを貼り付けるタイル貼り付けロボット51Aとを含む。パネル支持装置80は、パネルセット工程において後述する高さ調整が行われる。パネル支持装置80は、パネルセット工程からタイル貼り付け工程へと移動可能に設けられており、タイル貼り工程では、パネル支持装置80が湾曲パネル部材111を下方から支持した状態で、タイル貼り付けロボット51Aによるタイル材BTの貼り付け作業が行われる。
【0133】
タイル貼り付けロボット51Aは、タイルユニット供給装置40Aによってピックアップ位置64(
図12参照)に順次供給されたタイルユニット(1つのグループに含まれる複数のタイル材BT)をそのままピックアップして、湾曲パネル部材111への貼り付け処理を実行する。なお、タイル貼り付けロボット51Aは、アーム式ロボットに限定されず、たとえばガントリー式ロボットであってもよい。
【0134】
図21(B)は、タイル貼り付け装置50Aを制御する制御装置60Aの機能構成を示す機能ブロック図である。制御装置60Aは、タイル貼り付け情報を記憶する不揮発性の記憶装置601と、パネル支持装置80を調整制御する支持調整制御部602と、タイル貼り付けロボット51Aのハンド部51hを調整制御するハンド調整制御部603とを含む。支持調整制御部602およびハンド調整制御部603の機能は、プロセッサがソフトウェアを実行することにより実現される。記憶装置601は、クラウドサーバにより実現されてもよい。なお、支持調整制御部602の機能は、パネル支持装置80に搭載された制御部により実現されてもよく、ハンド調整制御部603の機能は、タイル貼り付けロボット51Aに搭載された制御部により実現されてもよい。
【0135】
図22は、パネル支持装置80の構成例を模式的に示す断面図である。パネル支持装置80は、湾曲パネル部材111の縦横両方向に沿ってマトリクス状に配置された複数本の支持棒部材81を備えている。湾曲パネル部材111の湾曲方向(横方向)が矢印A2で示されている。
【0136】
支持棒部材81は、たとえば高さ調整ボルトにより構成されている。この場合、パネル支持装置80は、支持棒部材81の外周面に螺合する内周面を有する円筒部材82と、円筒部材82を回転させる回転駆動部83とをさらに含む。支持棒部材81の横方向の配置ピッチは、固定であってもよいし、貼り付け基準位置の基準点Pb,Pb´に応じて調整できてもよい。円筒部材82および回転駆動部83は、支持棒部材81の高さを調整する高さ調整手段として機能する。回転駆動部83は、複数の回転軸83aと、各回転軸83aを回転させる回転モータ(図示せず)と、回転モータを収納するケース部83bとを含む。
【0137】
制御装置60Aの支持調整制御部602は、パネルセット工程において、記憶装置601に記憶されたタイル貼り付け情報を読み出して、位置座標識別コードごとの情報(貼り付け基準位置の情報)に基づき、パネル支持装置80の支持棒部材81の高さを調整する。具体的には、x座標(基準点Pb,Pb´)ごとのz値に応じて回転駆動部83の回転軸83aの回転回数を調整することにより、対応する支持棒部材81の高さを個別に調整する。
【0138】
なお、基準点と支持棒部材81とを1対1の関係とする場合、多数の支持棒部材81(および円筒部材82)から湾曲パネル部材111を支持する支持棒部材81を選択し、支持棒部材81の配置間隔を調整してもよい。一方、基準点と支持棒部材81とが1対1の関係にならず、支持棒部材81の位置が固定の場合には、基準点からの距離と基準点のz値とに基づいて支持棒部材81の高さを計算により求めてもよい。回転駆動部83に含まれる回転軸83aも同様である。
【0139】
これにより、横方向に湾曲した湾曲パネル部材111を複数の支持棒部材81により適切に支持することができる。パネル支持装置80の下端にはたとえばキャスター86が設けられており、湾曲パネル部材111を支持した状態のパネル支持装置80が、タイル貼り工程へと自動または手動で移動される。
【0140】
回転駆動部83の回転軸83aは、円筒部材82と着脱可能であってもよい。その場合、支持棒部材81および円筒部材82を有し、下端にキャスター86が設けられた本体部と、回転駆動部83とが、分離可能に設けられるので、回転駆動部83は、パネルセット工程に固定されていてもよい。
【0141】
なお、
図22の部分拡大図に示すように、各支持棒部材81の先端部(上端部)には、ゴムなどの弾性部材84が設けられていることが望ましい。これにより、湾曲パネル部材111が支持棒部材81上で滑り、横方向にずれることを防止できる。また、
図22に示すように、パネル支持装置80は、湾曲パネル部材111を横方向両側から挟み込む一対のパネル止め部85をさらに備えていてもよい。
【0142】
図23は、タイル貼り付けロボット51Aの把持部500の構成例を示す図であり、(A)が正面図、(B)が側面図である。
図23(A)に示されるように、把持部500は、互いに独立して設けられた3つのハンド部51hと、吊り部材520を介して3つのハンド部51hを支持する支持部510とを含む。吊り部材520もまた、たとえば高さ調整ボルトにより構成されていてもよい。この場合、把持部500は、吊り部材520の外周面に螺合する内周面を有する円筒部材521と、円筒部材521を回転させる回転駆動部(図示せず)とをさらに含む。
【0143】
吊り部材520の先端(下端)とハンド部51hとの連結部には、ハンド部51hの傾きを変更可能とするための角度調整部材530が設けられている。角度調整部材530は、たとえばボールジョイントにより構成される。円筒部材521を回転する回転駆動部および角度調整部材530は、ハンド部51hの高さおよび傾斜角度を調整するハンド調整手段として機能する。
【0144】
ハンド部51hは、縦方向(矢印A3で示す)に長い吸着面540を有している。吸着面540を含む下側板状部541と、角度調整部材530に連結される上側板状部542との間には、たとえばスプリングなどの弾性部材543が設けられていることが望ましい。全てのハンド部51hに弾性部材543が介在されることにより、複数のタイルBTを一度に貼り付ける際のz値の誤差を吸収することができる。
【0145】
制御装置60Aのハンド調整制御部603は、タイル貼り工程において、記憶装置601に記憶されたタイル貼り付け情報を読み出して、位置座標識別コードごとの情報(貼り付け基準位置の情報)に基づき、タイル貼り付けロボット51Aの各ハンド部51hの高さおよび傾斜角度を調整する。ハンド調整制御部603による調整制御は、ハンド部51hが、タイルユニット供給装置40Aから供給された(1つのグループに含まれる)複数のタイル材BTを吸着した後に行われる。なお、タイル材BTを湾曲パネル部材111に千鳥配置する場合、タイルユニット供給装置40Aは偶数行のタイル材BTと奇数行のタイル材BTとを区別して供給するので、
図24(B)に示されるように、ハンド部51hの吸着面540には、複数のタイル材BTが縦方向に(1つ分だけ)間隔をあけて吸着されている。
【0146】
ハンド調整制御部603は、
図24(A)に模式的に示すように、対応するz値に応じて各ハンド部51hの高さを個別に調整する。上述の仮想平面113とハンド部51hを支持する支持部510とを互いに平行な関係とすることにより、仮想平面113を基準として計算したz値に応じて、ハンド部51hの高さを調整できる。ハンド調整制御部603はまた、対応するm値に応じて各ハンド部51hの傾斜角度を個別に調整する。
【0147】
これにより、ハンド部51hの吸着面540(つまり、吸着面540に吸着されたタイル材BT)が、湾曲パネル部材111上の貼り付け基準点(基準点PbまたはPb´に相当)に接する接線と平行、かつ、当該基準点から一定の距離に配置される。したがって、複数のハンド部51hを有する把持部500全体を一度に下降させることによって、効率的かつ精度良く、複数のタイル材BTを湾曲パネル部材111に貼り付けることができる。
【0148】
本実施の形態に係る曲面パネル体生産システム1Aによれば、
図25(A)に示すように、凹凸や隙間が抑えられた滑らかな曲面パネル体PAを製造することができる。
図25(B)には、デフォルトサイズの(サイズ調整されていない)タイル材BTが湾曲パネル部材111に敷き詰められた場合の比較例が示されている。比較例の曲面パネル体PBでは、湾曲度合が急な箇所において凹凸や隙間が大きくなっていることが分かる。
【0149】
曲面パネル体生産システム1Aにより製造された曲面パネル体PAを建物の外壁に用いることにより、現場でのタイル材BTの貼り付け作業を不要にできる(目地部分などの一部のみ手作業で貼り付けてもよい)。したがって、本実施の形態に係る曲面パネル体生産システム1Aによれば、現場での外壁の施工を簡素化できるので、労務費の削減、および、施工期間の短縮が可能となる。
【0150】
さらに、タイル材BTの素材に(スライスした)ブリックを用いて外壁を施工した場合には、実際のブリックを積み上げて外壁が作られているような印象を与えることができる。したがって、労務費が嵩むことなく、建物の意匠性を向上させることができる。なお、曲面パネル体PAは、外壁用のパネルに限定されず、間仕切りパネル、床パネル、天井パネルなど、他種の面材であってもよい。
【0151】
<変形例>
本実施の形態では、タイル材BTの素材がブリック(煉瓦)である例について説明したが、陶磁器製素材や石材など、他の材料により形成されていてもよい。つまり、タイル材BTは、一般的に「タイル」と称される部材に限定されず、各々が、曲面パネル体の装飾面を分割した「仕上げ材」として機能し、複数個の集まりによってパターン(装飾パターン)を形成できるものであればよい。
【0152】
本実施の形態に係るタイル貼り付け情報生成装置20Aにより実行されるタイル貼り付け情報生成方法を、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0153】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0154】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0155】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0156】
1A 曲面パネル体生産システム、2A ティーチングデータ生成システム、3A 曲面パネル体製造装置、20A タイル貼り付け情報生成装置、50A タイル貼り付け装置、51A タイル貼り付けロボット、51h ハンド部、80 パネル支持装置、111 パネル部材、112 仮想湾曲面、113 仮想平面、172 タイル条件計算部、173 グルーピング計算部、174 生成部、175 出力処理部、602 支持調整制御部、603 ハンド調整制御部、BT タイル材、PA 曲面パネル体、Pb,Pb´ 基準点。