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特開2023-149828不織布及びその製造方法、それを用いた有機溶剤回収方法、並びに有機溶剤回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149828
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】不織布及びその製造方法、それを用いた有機溶剤回収方法、並びに有機溶剤回収装置
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4242 20120101AFI20231005BHJP
   D04H 1/43 20120101ALI20231005BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20231005BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20231005BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20231005BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20231005BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20231005BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20231005BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
D04H1/4242
D04H1/43
B01J20/20 B
B01J20/28
B01J20/30
B01J20/34 A
A61L9/014
B01J20/34 B
B01D53/04 230
B01D53/047
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058604
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】村川 優花
(72)【発明者】
【氏名】今西 正千代
【テーマコード(参考)】
4C180
4D012
4G066
4L047
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA16
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB09
4C180CC04
4C180CC16
4C180EA14X
4C180EA15X
4C180EA16X
4C180EA26X
4C180EA27X
4C180EA28X
4C180EB24Y
4C180HH05
4D012BA03
4D012CA09
4D012CA11
4D012CB12
4D012CD07
4D012CG04
4D012CG10
4D012CH06
4G066AA05B
4G066AC17C
4G066BA03
4G066BA16
4G066BA26
4G066BA35
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA02
4G066CA04
4G066CA25
4G066CA27
4G066CA29
4G066CA51
4G066CA52
4G066CA56
4G066DA01
4G066DA07
4G066FA02
4G066FA37
4G066FA40
4G066GA06
4G066GA14
4G066GA39
4L047AA03
4L047AA28
4L047AB02
4L047CB01
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有する不織布及びその製造方法、それを用いた有機溶剤回収方法、並びに有機溶剤回収装置を提供すること。
【解決手段】本発明の不織布は、平均繊維径が10μm以上30μm以下であり、引張強度(1)が40N/mm2以上300N/mm2以下であり、伸び率が0%以上10%以下である、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と、平均繊維径が5μm以上30μm以下であり、引張強度(2)が200N/mm2以上600N/mm2以下であり、前記引張強度(2)が前記引張強度(1)よりも大きい、繊維(B)と、を含み、前記炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と前記繊維(B)との配合比((A):(B))が、質量基準で、50:50~99:1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が10μm以上30μm以下であり、引張強度(1)が40N/mm2以上300N/mm2以下であり、伸び率が0%以上10%以下である、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と、
平均繊維径が5μm以上30μm以下であり、引張強度(2)が200N/mm2以上600N/mm2以下であり、前記引張強度(2)が前記引張強度(1)よりも大きい、繊維(B)と、を含み、
前記炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と前記繊維(B)との配合比((A):(B))が、質量基準で、50:50~99:1である、不織布。
【請求項2】
前記炭素繊維が活性炭素繊維であり、前記炭素繊維の比表面積が600m2/g以上2000m2/g以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
耐熱温度が200℃以上500℃以下である、請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記繊維(B)が、前記炭素繊維もしくは前記炭素繊維前駆体(A)と異なる、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項5】
下記に示す臭気ガス消臭性試験で測定される、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸の臭気ガスの消臭率が、いずれも90%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の不織布。
(臭気ガス消臭性試験)
20℃以上25℃以下及び30%RH以上60%RH以下の室内にて、前記不織布5gを容積10Lのガス収集袋に入れる。次に、前記ガス収集袋に空気3Lを封入後、所定の初期ガス濃度P(アンモニアについては350ppm、トルエンについては500ppm、アセトアルデヒドについては100ppm、メチルメルカプタンについては40ppm、トリメチルアミンについては70ppm、酢酸については100ppm)の前記臭気ガスのいずれかを前記ガス収集袋に注入する。30分放置後、前記ガス収集袋中のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸の濃度Qをガス検知管により測定する。初期ガス濃度P及び濃度Qを用いて、下記式(1)により、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸のそれぞれの消臭率を算出する。
消臭率(%)=[(P-Q)/P]×100・・・(1)
【請求項6】
前記炭素繊維(A)が、活性炭素繊維であり、前記活性炭素繊維と前記繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布を得る工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記炭素繊維前駆体(A)が、不融化繊維であり、
前記不融化繊維と前記繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布前駆体を得る工程と、
前記不織布前駆体を賦活化処理する賦活工程と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着工程と、
脱着ガスにより前記不織布から前記有機溶剤を脱着する脱着工程、又は低圧にすることで前記不織布から前記有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着法を用いた脱着工程と、
脱着した前記有機溶剤を回収する回収工程と、を含む、有機溶剤回収方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着部と、
脱着ガスにより前記不織布から前記有機溶剤を脱着する脱着部、又は低圧にすることで前記不織布から前記有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着法を用いた脱着部と、
脱着した前記有機溶剤を回収する回収部と、を備える、有機溶剤回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及びその製造方法、それを用いた有機溶剤回収方法、並びに有機溶剤回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭素繊維を用いた不織布は、一般的に各種臭気ガスの消臭に優れる。そのため、例えば、工業用、家庭用、車載用、及び生活資材用と様々な場所で利用される消臭剤の材料として有用である。それらの中でも、不織布は、例えば、印刷業、電気工業、及び機械工業の製造工程において発生する有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置に用いられる。有機溶剤回収装置には、例えば、不織布を充填した充填塔に臭気ガスを供給し、臭気ガスに含有される有機溶剤を不織布に吸着させたのち、不織布に吸着された有機溶剤を不織布から脱着させて、有機溶剤を回収する工程が備わる。
【0003】
消臭材として用いられる不織布としては、例えば、特許文献1において、活性炭と熱融着性合成繊維とを主構成要素として混合し、該熱融着性合成繊維の一部を溶融させて、これらの構成要素間を接着されることにより形成される活性炭シートが記載されている。また、特許文献2では、アクリレート系繊維10質量%以上30質量%と、活性炭素繊維5質量%以上30質量%と、その他の繊維とからなる消臭材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-64563号公報
【特許文献2】特開2000-93493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臭気ガス吸着用不織布には、臭気ガスに対する吸着性能、不織布としての耐久性(引張強度)、及び耐熱性が要求される。しかしながら、一般的に、臭気ガス吸着用不織布において活性炭素繊維に対する補強繊維として混合する熱融着繊維は、その配合率が多いと、活性炭素繊維の配合率が相対的に少なくなるため、臭気ガス吸着用不織布は十分な吸着性能が出ない。一方、その配合率が少ないと、不織布としての耐久性(引張強度)が低下する。また、熱融着繊維は、融点が低いため、耐熱性に劣るとの問題も有する。
【0006】
特許文献1では、活性炭と共に、低融点繊維である熱融着性合成繊維を用いているため、耐熱性が十分ではない。特許文献2では、活性炭素繊維が最大でも30質量%程度しか配合されないため、臭気ガスに対する吸着性能が十分ではないとの問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有する不織布及びその製造方法、それを用いた有機溶剤回収方法、並びに有機溶剤回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と、特定の繊維(B)とを特定の配合比で有する不織布が、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の実施態様を含む。
[1]平均繊維径が10μm以上30μm以下であり、引張強度(1)が40N/mm2以上300N/mm2以下であり、伸び率が0%以上10%以下である、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と、平均繊維径が5μm以上30μm以下であり、引張強度(2)が200N/mm2以上600N/mm2以下であり、前記引張強度(2)が前記引張強度(1)よりも大きい、繊維(B)と、を含み、前記炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と前記繊維(B)との配合比((A):(B))が、質量基準で、50:50~99:1である、不織布。
【0010】
[2]前記炭素繊維(A)が活性炭素繊維であり、前記炭素繊維の比表面積が600m2/g以上2000m2/g以下である、[1]に記載の不織布。
【0011】
[3]耐熱温度が200℃以上500℃以下である、[1]又は[2]に記載の不織布。
【0012】
[4]前記繊維(B)が、前記炭素繊維もしくは前記炭素繊維前駆体(A)と異なる、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体である、[1]~[3]のいずれかに記載の不織布。
【0013】
[5]下記に示す臭気ガス消臭性試験で測定される、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸の臭気ガスの消臭率が、いずれも90%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の不織布。
(臭気ガス消臭性試験)
20℃以上25℃以下及び30%RH以上60%RH以下の室内にて、測定対象の不織布5gを容積10Lのガス収集袋に入れる。次に、前記ガス収集袋に空気3Lを封入後、所定の初期ガス濃度P(アンモニアについては350ppm、トルエンについては500ppm、アセトアルデヒドについては100ppm、メチルメルカプタンについては40ppm、トリメチルアミンについては70ppm、酢酸については100ppm)の前記臭気ガスのいずれかを前記ガス収集袋に注入する。30分放置後、前記ガス収集袋中のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸の濃度Qをガス検知管により測定する。初期ガス濃度P及び濃度Qを用いて、下記式(1)により、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸のそれぞれの消臭率を算出する。
消臭率(%)=[(P-Q)/P]×100・・・(1)
【0014】
[6]前記炭素繊維(A)が、活性炭素繊維であり、前記活性炭素繊維と前記繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布を得る工程を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【0015】
[7]前記炭素繊維前駆体(A)が、不融化繊維であり、前記不融化繊維と前記繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布前駆体を得る工程と、前記不織布前駆体を賦活化処理する賦活工程と、を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の不織布の製造方法。
【0016】
[8][1]~[5]のいずれかに記載の不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着工程と、脱着ガスにより前記不織布から前記有機溶剤を脱着する脱着工程、又は低圧にすることで前記不織布から前記有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着法を用いた脱着工程と、脱着した前記有機溶剤を回収する回収工程と、を含む、有機溶剤回収方法。
【0017】
[9][1]~[5]のいずれかに記載の不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着部と、脱着ガスにより前記不織布から前記有機溶剤を脱着する脱着部、又は低圧にすることで前記不織布から前記有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着法を用いた脱着部と、脱着した前記有機溶剤を回収する回収部と、を備える、有機溶剤回収装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有する不織布及びその製造方法、それを用いた有機溶剤回収方法、並びに有機溶剤回収装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0020】
[不織布]
本実施形態の不織布は、平均繊維径が10μm以上30μm以下であり、引張強度(1)が40N/mm2以上300N/mm2以下であり、伸び率が0%以上10%以下である、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と、平均繊維径が5μm以上30μm以下であり、引張強度(2)が200N/mm2以上600N/mm2以下であり、引張強度(2)が引張強度(1)よりも大きい、繊維(B)と、を含み、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と繊維(B)との配合比((A):(B))が、質量基準で、50:50~99:1である。
【0021】
(炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A))
本実施形態に係る炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)は、平均繊維径が10μm以上30μm以下であり、引張強度(1)が40N/mm2以上300N/mm2以下であり、伸び率が0%以上10%以下である。本実施形態に係る炭素繊維は、各種臭気ガスの消臭に優れる、賦活化処理された活性炭素繊維であることが好ましい。賦活化処理については、例えば、後述の方法を参照してもよい。
【0022】
本明細書において、平均繊維径は、JIS K1477を参考にして測定される。具体的な測定方法については、実施例を参照してもよい。また、本明細書において、炭素繊維の繊維径とは、炭素繊維の形状を同一面積の真円形に換算したときの直径を意味し、平均繊維径とは、無造作に30以上の炭素繊維を取り出して繊維径を測定したときの平均値をいう。
引張強度は、JIS K1477を参考にして測定される。具体的な測定方法については、実施例を参照してもよい。
伸び率は、JIS L1015を参考にして測定される。具体的な測定方法については、実施例を参照してもよい。
【0023】
このような炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)を用いることにより、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有する不織布を得ることができる。炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
臭気ガスに対するより優れた吸着性能、より優れた耐久性(引張強度)、及びより高い耐熱性を有する不織布が得られることから、平均繊維径は、好ましくは11μm以上25μm以下であり、より好ましくは12μm以上22μm以下である。平均繊維径が30μmを超えると、単位質量当たりの繊維本数が少なくなるため、不織布全体の強度が低下する傾向にある。
【0025】
引張強度(1)は、300N/mm2を超える炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)は、比表面積が小さくなる傾向にあり、臭気ガスに対する吸着性能に劣る傾向にある。また、40N/mm2未満である炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)は、強度が低下するため、不織布形成前の解繊機中で粉化し、不織布の形成が困難になる傾向にある。臭気ガスに対するより優れた吸着性能、及びより優れた耐久性(引張強度)を有する不織布が得られることから、引張強度(1)は、好ましくは45N/mm2以上285N/mm2以下である。
【0026】
臭気ガスに対する更に優れた吸着性能、更に優れた耐久性(引張強度)、及び更に高い耐熱性を有する不織布が得られることから、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)の比表面積は、好ましくは600m2/g以上2000m2/g以下である。本明細書において、比表面積とは、液体窒素温度での窒素ガス吸着等温線によるBET法により求められる比表面積を意味し、比表面積は、例えば、比表面積/細孔分布測定装置(例えば、SHIMADZU社製TriStar3000(商品名))を用いて測定することができる。具体的な測定方法については、実施例を参照してもよい。
【0027】
不織布をより容易に製造できることから、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)の平均繊維長は、好ましくは1cm以上30cm以下である。なお、本明細書において、繊維長とは、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体における両端の間の最も長い直線距離を意味し、平均繊維長とは、例えば、無造作に30以上の繊維もしくは前駆体を取り出して繊維長を測定したときの平均値をいう。
【0028】
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としては、平均繊維径、引張強度(1)、及び伸び率を満たす限り、従来公知の方法で得られる様々な繊維を使用することができる。炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としては、通常、レーヨン系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維などのアクリル系繊維、ピッチ系繊維、及びフェノール樹脂系繊維を出発原料として、不融化処理、耐炎化処理、炭化処理、又は賦活化処理して得られる。不融化処理、耐炎化処理、炭化処理、及び賦活化処理の方法は、公知の処理方法を用いることができる。それぞれの処理方法については、例えば、後述の方法を参照してもよい。
【0029】
本実施形態では、出発原料、不融化処理、耐炎化処理、炭化処理、及び賦活化処理をそれぞれ適切に制御することで、所望の炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)を得ることができる。
【0030】
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)の形状は、特に限定されず、例えば、集束切断状(チョップドストランド)、長繊維状、短繊維状、ロービング、フィラメント、トウ、及びウイスカーが挙げられる。
【0031】
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としては、ピッチ系繊維を出発原料とし不融化処理して得られる繊維(以下、「不融化繊維」とも称する)を用いてもよい。不融化繊維は、少なくとも平均繊維径、引張強度(1)、及び伸び率を満たす。これらの不融化繊維を用いる場合、不織布前駆体を得たのち、賦活化処理をして不織布を得ることが好ましい。
【0032】
(繊維(B))
本実施形態に係る繊維(B)は、平均繊維径が5μm以上30μm以下であり、引張強度(2)が200N/mm2以上600N/mm2以下であり、引張強度(2)が引張強度(1)よりも大きい。繊維(B)としては、平均繊維径、及び引張強度(1)を満たす限り、従来公知の繊維を用いることができる。
【0033】
このような繊維(B)を用いることにより、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有する不織布を得ることができる。繊維(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0034】
臭気ガスに対するより優れた吸着性能、より優れた耐久性(引張強度)、及びより高い耐熱性を有する不織布が得られることから、平均繊維径は、好ましくは7μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上15μm以下である。平均繊維径が30μmを超えると、単位質量当たりの繊維本数が少なくなるため、不織布全体の強度が低下する傾向にある。
【0035】
引張強度(2)が、200N/mm2未満であると、不織布の耐久性の低下を引き起こすおそれがある。また、引張強度(2)が600N/mm2を超えると、解繊時、カード機でのウェブ形成時、及びニードルパンチ法での結合時において、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と絡みにくくなり、不織布が製造し難くなる。引張強度(2)は、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)における引張強度(1)よりも大きい。引張強度(2)が引張強度(1)よりも小さいと、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)に繊維(B)を混合しても、不織布の引張強度が向上せず、耐久性に劣る傾向にある。
【0036】
臭気ガスに対するより優れた吸着性能、より優れた耐久性(引張強度)、及びより高い耐熱性を有する不織布が得られることから、引張強度(2)は、好ましくは220N/mm2以上580N/mm2以下であり、より好ましくは230N/mm2以上570N/mm2以下である。
【0037】
臭気ガスに対するより優れた吸着性能、より優れた耐久性(引張強度)、及びより高い耐熱性を有する不織布が得られることから、伸び率は、好ましくは0%以上50%以下である、より好ましく0%以上30%以下である。伸び率が上記範囲にある繊維(B)を用いることで、解繊時、カード機でのウェブ形成時、及びニードルパンチ法での結合時において、繊維(B)が粉化するとなく、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と繊維(B)とが好適に絡み合う傾向にある。
【0038】
不織布をより容易に製造できることから、繊維(B)の平均繊維長は、好ましくは1cm以上30cm以下である。
【0039】
繊維(B)としては、平均繊維径、及び引張強度(2)を満たす限り、従来公知の方法で得られた様々な繊維を使用することができる。繊維(B)としては、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体が好ましい。繊維(B)としては、例えば、繊維(B)の出発原料であるレーヨン系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維などのアクリル系繊維、ピッチ系繊維、及びフェノール樹脂系繊維;これらの繊維に耐炎化処理を行った炭素繊維;これらの繊維に炭化処理を行った炭素繊維が挙げられる。
【0040】
本実施形態では、出発原料、耐炎化処理、及び炭化処理をそれぞれ適切に制御することで、所望の繊維(B)を得ることができる。
【0041】
耐炎化処理としては、例えば、220℃以上300℃以下の熱風循環型の耐炎化炉に、通過時間が30分間以上100分間以下となるように、上記の繊維を通過させる方法が挙げられる。
【0042】
炭化処理としては、例えば、無酸素の条件で、300℃以上900℃以下で加熱する方法が挙げられる。炭化処理の時間は、原料、及び炭化を行う設備によって適宜設定できる。炭化処理の時間としては、例えば、15分以上20時間以下である。炭化処理は、例えば、ロータリーキルン及びコンベア炉などの公知の製造設備を用いて、窒素雰囲気下で行われる。炭化後には、洗浄処理、及び乾燥処理等を行ってもよい。これらの条件は、特に限定されず、公知の条件を採用できる。
【0043】
繊維(B)の形状としては、特に限定されず、例えば、集束切断状(チョップドストランド)、長繊維状、短繊維状、ロービング、フィラメント、トウ、及びウイスカーが挙げられる。
【0044】
(炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と繊維(B)との配合比)
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と繊維(B)との配合比((A):(B))は、質量基準で、50:50~99:1である。配合比が上記範囲にあることで、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有する不織布が得られる。更に、不織布は、性質の相反する複数の臭気ガスを同時に吸収することができ、より多くの吸収量を有し、速い吸収速度(高い吸収能力)を有することができる。炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)が、50質量%未満であると、臭気ガスに対する吸着性能が低下する傾向にある。また、繊維(B)が1質量%未満であると、不織布の引張強度が低下する傾向にある。
【0045】
臭気ガスに対するより優れた吸着性能、より優れた耐久性(引張強度)、及びより高い耐熱性を有する不織布が得られることから、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と繊維(B)との配合比((A):(B))は、質量基準で、好ましくは50:50~95:5である。
【0046】
〔不織布〕
賦活化処理された炭素繊維は、繊維構造のため比表面積が非常に大きく、繊維表面にミクロポアが直接開孔している。そのため、臭気ガスとの接触効率が高く、他の吸着材よりも高い吸脱着効率を発揮することが可能となる。しかし、その形状により用途が限られるが、一般的に不織布に加工することで耐久性(引張強度)に優れ、多種に展開できる。そのため、不織布は、例えば、工業用、家庭用、車載用、及び生活資材用と、様々な場所で利用され、特に消臭剤の材料として有用である。それらの中でも、不織布は、例えば、印刷業、電気工業、及び機械工業の製造工程において発生する有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置に好適である。
【0047】
不織布の厚みや目付量は、特に限定されず、具体的使用態様や消臭剤の構造及び有機溶剤回収装置の形態に応じて適宜選択できる。またその寸法は、具体的使用態様に応じて適宜調整すればよい。不織布は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0048】
不織布の使用形態は、シート状または折り曲げ加工、巻きつけ充填加工など、具体的使用態様に応じて適宜調整すればよい。
【0049】
不織布は、2枚以上の乾燥状態の層を組み合わせた多層構造であってもよい。不織布が多層構造の場合、各層の炭素繊維の配合が同一である多層構造であってもよく、各層の炭素繊維配合が異なっている多層構造であってもよい。
【0050】
一層高い耐熱性を有する不織布が得られることから、不織布の耐熱温度は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは300℃以上である。上限は、特に限定さないが、通常500℃以下であり、450℃以下であってもよい。このように不織布は、耐熱温度が高く、耐熱性に優れる。なお、本明細書において、耐熱性は、熱プレスを用いて評価され、耐熱温度は、熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定される。具体的な測定方法については、実施例を参照してもよい。
【0051】
不織布は、例えば、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸における臭気ガスの吸着用として用いることができる。不織布は、これらの臭気ガスに対して、優れた吸着性能を有し、下記に示す臭気ガス消臭性試験で測定される、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸の臭気ガスの消臭率が、いずれも90%以上である。消臭率は、いずれも93%以上であることが好ましい。これらの臭気ガスの中でも、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、及びトリメチルアミンに対して、より優れた吸着性能を有し、これらの臭気ガスに対する消臭率は、好ましくはいずれも95%以上であり、より好ましくは98%以上である。上限は、特に限定されないが、100%以下であることが好ましい。なお、具体的な臭気ガス消臭性試験については、実施例を参照してもよい。
【0052】
(臭気ガス消臭性試験)
20℃以上25℃以下及び30%RH以上60%RH以下の室内にて、測定対象の不織布5gを容積10Lのガス収集袋に入れる。次に、ガス収集袋に空気3Lを封入後、所定の初期ガス濃度P(アンモニアについては350ppm、トルエンについては500ppm、アセトアルデヒドについては100ppm、メチルメルカプタンについては40ppm、トリメチルアミンについては70ppm、酢酸については100ppm)のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸のガスのいずれかをガス収集袋に注入する。30分放置後、ガス収集袋中のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸の濃度Qをガス検知管により測定する。初期ガス濃度P及び濃度Qを用いて、下記式(1)により、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸のそれぞれの消臭率を算出する。
消臭率(%)=[(P-Q)/P]×100・・・(1)
【0053】
[不織布の製造方法]
本実施形態の不織布は、例えば、炭素繊維(A)として使用される繊維が活性炭素繊維であり、活性炭素繊維と繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布を得る工程を含む方法により、製造することができる。
【0054】
活性炭素繊維は、例えば、レーヨン系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維などのアクリル系繊維、ピッチ系繊維、及びフェノール樹脂系繊維を出発原料として、出発原料を賦活化処理することで得られる。活性炭素繊維は、賦活化処理の前に、例えば、出発原料に対して、不融化処理、耐炎化処理、及び/又は炭化処理をして、それらの処理物に対して、賦活化処理して得てもよい。
【0055】
賦活化処理の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、水蒸気、及び二酸化炭素などのガス賦活法、塩化亜鉛賦活及びリン酸賦活などの薬品賦活法が挙げられる。
【0056】
具体的には、例えば、賦活ガス(水蒸気、及び二酸化炭素など)中において、出発原料を500℃以上1000℃以下で熱処理するガス賦活法、並びに出発原料を賦活剤(リン酸、塩化亜鉛、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムなど)と混合し、300℃以上800℃以下で熱処理する化学的賦活法などが挙げられる。賦活化処理して得られる活性炭素繊維は、そのまま使用してもよい。また、賦活化処理して得られる活性炭素繊維は、酸や水による洗浄、及び熱処理を行い、付着成分、及び表面官能基などを除去して使用してもよい。
【0057】
不織布は、例えば、炭素繊維(A)として活性炭素繊維を使用し、活性炭素繊維と繊維(B)との所定量を常法に従って解繊及び混合することで混合物を得て、該混合物からウェブ状の形態を得て、その後、混合物中の繊維同士を結合することで得られる。具体的には、不織布は、例えば、活性炭素繊維(A)と繊維(B)とを、カード機を用いて繊維1本1本にほぐし、シート状に広げてウェブとし、ニードルパンチ、ケミカルボンド、サーマルボンド、水流交絡、ステッチボンドなどの方法で繊維同士を結合させることで得られる。
【0058】
ウェブの幅方向及び長さ方向の目付の均一性が不織布の品質に影響するため、カード機への供給前に、活性炭素繊維(A)と繊維(B)とをブレンドできる開俵機及び混綿機を用いることや、従来のウェイパン方式に替わる体積計量型給綿機を用いて、幅方向の供給量も連続的に調整することが好ましい。
【0059】
解繊及び混合は、例えば、混打綿機やホッパーを用いて行われる。これらの装置は、適宜、組み合わせてもよい。
【0060】
ウェブ状の形態にする方法は、例えば、湿式抄紙法、空気中で原料を分散させてフォーミングする方法である所謂エアーレイ法、及びカード法が挙げられる。これらの中でも、より容易に不織布が得られることから、カード法が好ましい。
【0061】
カード法では、例えば、活性炭素繊維(A)と繊維(B)とを、鋸歯状のメタリックワイヤーで覆われたメインシリンダーロール、ワーカーロール、及びストリッパーロールの3種のロールの間でくしけずって1本1本に解繊し、薄いシート状のウェブにされる。得られたウェブは、例えば、ウェブ積層機を用いて、目付量が100g/m以上500g/m以下、好ましくは200g/m以上400g/m以下、より好ましくは250g/m以上350g/m以下となるように積層される。
【0062】
より容易に不織布が得られ、耐熱性の低下がないことから、ウェブにおける繊維同士を結合させる方法としては、ニードルパンチを用いた方法(以下、「ニードルパンチ法」と称する)が好ましい。ニードルパンチ法とは、ウェブに多数の鉤付き針(ニードル)を突き刺して繊維同士を機械的に絡合させる方法である。具体的には、ウェブをストリッパーブレードとベッドブレードの間に導入し、ニードルが植針されたニードルボードを、ニードルビームで上下運動させることによってニードルをウェブに貫通させる。なお、ニードルには、通常、6個以上9個以下の刺(バーブ)が貫通方向に逆らうように配列されており、このバーブに繊維が数本引掛けられることで、締められる。
【0063】
不織布は、必要に応じて、分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、及び殺菌剤等の添加剤を添加して製造されてもよい。
【0064】
本実施形態の不織布は、炭素繊維前駆体(A)が、不融化処理をして得られる不融化繊維であり、不融化繊維と繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布前駆体を得る工程と、不織布前駆体を賦活化処理する賦活工程と、を含む方法により製造することもできる。
【0065】
不融化処理する方法としては、公知の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、酸素、ヨウ素、オゾン、二酸化窒素、及び臭素等の活性ガスの存在下で、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)又はこれらの出発原料を熱処理及び/又は電子線照射などの方法を用いる方法が挙げられる。なお、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)の出発原料としては、上記を参照してもよい。活性ガスとしては、アルゴン等の希ガス類や、窒素などの不活性ガスと併用してもよい。また、通常、空気は、酸素が21体積%程度含まれるため、空気雰囲気下にて不融化処理を行うこともできる。
【0066】
不融化処理する温度としては、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)又はこれらの出発原料のガラス転移温度及び融点に依存し、不融化の反応に応じて適宜昇温することが好ましい。温度としては、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましい。温度の上限としては、例えば、400℃以下であり、350℃以下であってもよい。不融化処理の反応時間としては、通常5分以上24時間以下である。
【0067】
不融化繊維は、例えば、上記の方法により、ピッチ系炭素繊維を不融化することで得られる。
【0068】
不織布前駆体は、例えば、上記の工程を経て得られた不融化繊維と繊維(B)とを解繊及び混合することで得られる。不織布前駆体を得る方法は、上記の炭素繊維(A)と繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布を得る工程を参照してもよい。
【0069】
不織布は、例えば、上記の工程を経て得られた不織布前駆体を賦活化処理することで得られる。賦活化処理の方法としては、上記を参照してもよい。
【0070】
不織布は、必要に応じて、薬液担持を行い、化学吸着性能を付与してもよい。薬液担持の方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、薬液含浸や薬液スプレー等で付与後、脱水や乾燥を行う方法が挙げられる。
【0071】
[有機溶剤回収方法及び有機溶剤回収装置]
本実施形態の有機溶剤回収方法は、不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着工程と、脱着ガスにより不織布から有機溶剤を脱着する脱着工程、又は低圧にすることで不織布から有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着(Pressure swing adsorption、PSA)法を用いた脱着工程と、脱着した有機溶剤を回収する回収工程と、を含む。また、本実施形態の有機溶剤回収装置は、不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着部と、脱着ガスにより不織布から有機溶剤を脱着する脱着部、又は低圧にすることで不織布から有機溶剤を脱着するPSA法を用いた脱着部と、脱着した有機溶剤を回収する回収部と、を備える。本実施形態の有機溶剤回収方法は、不織布として本実施形態の不織布を用いる以外、公知の有機溶剤回収方法と同様の工程を有していてもよい。本実施形態の有機溶剤回収装置は、不織布として本実施形態の不織布を用いる以外、公知の有機溶剤回収装置と同様の構成を有していてもよい。
【0072】
吸着工程では、例えば、有機溶剤を含む臭気ガスを不織布と接触させることで、有機溶剤を不織布に吸着させる。
有機溶剤回収装置は、例えば、臭気ガスと不織布を接触させるための吸着槽を吸着部として備える。臭気ガスは、臭気ガスの導入ラインから送風機にて吸着槽に送られ、吸着槽にて有機溶剤を不織布に吸着させ、その後、臭気ガスは処理済みの清浄ガスとなり、排気ラインから大気に放出される。
【0073】
吸着槽では、必要に応じて、本実施形態に係る不織布以外の吸着材を含んでもよい。このような吸着材としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、及び多孔性有機化合物が挙げられる。
【0074】
脱着工程では、有機溶剤が吸着された不織布から、水蒸気などの脱着ガスにより、又はPSA法を用いて低圧にすることで、有機溶剤が脱着される。
有機溶剤回収装置における脱着部は、例えば、脱着ガスによる脱着では、吸着槽に脱着ガスを導入する導入ラインを備える。吸着槽内の有機溶剤が吸着された不織布は、この導入ラインから、例えば水蒸気が導入され、水蒸気により有機溶剤が脱着される。PSA法による脱着では、例えば、圧力可変の脱着部を備え、低圧にすることで有機溶剤が脱着される。脱着圧は、通常、真空以上大気圧以下である。
【0075】
脱着工程では、通常、130℃以上の高温にて行われる。そのため、不織布の耐熱温度は、130℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上であり、更に好ましくは300℃以上である。上限は、特に限定さないが、通常500℃以下であり、450℃以下であってもよい。
【0076】
回収工程では、脱着した有機溶剤が回収される。
有機溶剤回収装置における回収部は、例えば、脱着した有機溶剤を回収するための凝縮器と、この凝縮器へ脱着した有機溶剤を送るための回収ラインと、を備える。脱着した有機溶剤は、例えば、凝縮器にて、液化及び凝縮されることで回収される。なお、凝縮した有機溶剤を含む水蒸気は、通常、回収有機溶剤から分離され、分離排水として回収される。
【0077】
本実施形態に係る不織布は、臭気ガスに対する優れた吸着性能、優れた耐久性(引張強度)、及び高い耐熱性を有することから、種々の有機溶剤を含む臭気ガスに適用できる。有機溶剤としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、フロン-112、フロン-113、HCFC、HFC、臭化プロピル、ヨウ化ブチル、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、炭酸ジエチル、蟻酸エチル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトニトリル、アクリロニトリル、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、m-キシレン、o-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種であっても、複数種が混合された状態であってもよい。
【実施例0078】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様により何ら限定されるものではない。
【0079】
[炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)、及び繊維(B)に対する評価方法]
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)、及び繊維(B)(以下、単に「繊維等」と称する)を次の方法により評価した。
【0080】
(1)繊維等の比表面積
繊維等の比表面積(m/g)は、BET法に基づいて測定した。具体的には、比表面積/細孔分布測定装置(SHIMADZU社製TriStar3000(商品名))により測定した。
【0081】
(2)繊維等の平均繊維径
繊維等の平均繊維径(μm)は、JIS K1477を参考にして測定した。具体的には、卓上顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製Miniscope(登録商標)TM3000(商品名))により観察した繊維等について画像解析を行い、無作為に30以上の繊維径を測定した。その測定結果から、平均値を算出し、繊維等の平均繊維径(μm)とした。
【0082】
(3)繊維等の引張強度
繊維等の引張強度(N/mm2)は、JIS K1477を参考にして測定した。具体的には、小型卓上試験機(SHIMADZU社製EZ Test(商品名))を用いて、無作為に30以上の繊維等の引張強度を測定した。その測定結果から、平均値を算出し、繊維等の引張強度(N/mm2)とした。
【0083】
(4)繊維等の伸び率
繊維等の伸び率(%)は、JIS L1015を参考にして測定した。具体的には、小型卓上試験機(SHIMADZU社製EZ Test(商品名))を用いて、無作為に30以上の繊維等の伸び率を測定した。その測定結果から、平均値を算出し、繊維等の伸び率(%)とした。
【0084】
〔実施例1〕
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系活性炭素繊維(A1)95重量質量%と、繊維(B)としてPAN(ポリアクリロニトリル)系耐炎化繊維(B1)(帝人(株)製パイロメックス(登録商標)CPX2d51(商品名))5質量%とを、解繊機にて解繊及び混合し、混合物を得た。混合物をカード機に連続して供給し、ウェブ積層機にて目付量が300g/mとなるように積層を行い、ニードルパンチ機にて結合させて、不織布を得た。
【0085】
〔実施例2〕
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系活性炭素繊維(A1)50質量%と、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系活性炭素繊維(A2)45質量%と、繊維(B)としてPAN系耐炎化繊維(B1)(帝人(株)製パイロメックス(登録商標)CPX2d51(商品名))5質量%とを、解繊機にて解繊及び混合し、混合物を得た。その後は、実施例1と同様にして、不織布を作製した。
【0086】
〔実施例3〕
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系活性炭素繊維(A3)95質量%と、繊維(B)としてPAN系耐炎化繊維(B1)(帝人(株)製パイロメックス(登録商標)CPX2d51(商品名))5質量%とを、解繊機にて解繊及び混合した。その後は、実施例1と同様にして、不織布を作製した。
【0087】
〔実施例4〕
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系活性炭素繊維(A1)50質量%と、繊維(B)としてPAN系耐炎化繊維(B1)(帝人(株)製パイロメックス(登録商標)CPX2d51(商品名))50重量%とを、解繊機にて解繊及び混合し、混合物を得た。混合物をカード機に連続して供給し、ウェブ積層機にて目付量が100g/mとなるように積層を行い、ニードルパンチ機にて結合させて、不織布を得た。
【0088】
〔実施例5〕
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系活性炭素繊維(A4)95質量%と、繊維(B)としてPAN系耐炎化繊維(B1)(帝人(株)製パイロメックス(登録商標)CPX2d51(商品名))5質量%とを、解繊機にて解繊及び混合した。その後は、実施例1と同様にして、不織布を作製した。
【0089】
〔実施例6〕
炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)としてピッチ系繊維を不融化処理することで不融化繊維(A5)を得た。その後、不融化繊維90質量%と、繊維(B)として炭素繊維(B2)(大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ(登録商標)S-210F(商品名))10質量%とを、解繊機にて解繊及び混合し、混合物を得た。その後、混合物をカード機に連続して供給し、ウェブ積層機にて目付量が300g/mとなるように積層を行い、ニードルパンチ機にて結合させて、不織布前駆体を作製した。得られた不織布前駆体を賦活することで不織布を得た。
【0090】
〔比較例1〕
ピッチ系活性炭素繊維(A2)を解繊機にて解繊し、解繊物を得た。その後、解繊物をカード機に連続して供給し、ウェブ積層機にて目付量が300g/mとなるように積層を行い、ニードルパンチ機にて結合させて、不織布を作製した。
【0091】
〔比較例2〕
特開2000-93493号公報の実施例1に記載の不織布の物性を表1に示した。ここで、表1における耐熱温度は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の一般的な融点である250℃を記載し、消臭率は特開2000-93493号公報の段落〔0033〕に記載の結果を引用した。
【0092】
〔比較例3〕
ピッチ系活性炭素繊維(A1)40質量%と、熱融着繊維(ポリエチレン繊維)20質量%と、PET延伸繊維40質量%とを混合して、70℃以上250℃以下の条件で融着されて、不織布を作製した。
【0093】
[不織布に対する評価方法]
(1)耐熱性(熱プレスを用いた評価)
実施例及び比較例で得られた不織布を約10cm角に切り出した。その後、家庭用アイロンを用いて、130℃以上150℃以下及び100N以上の条件にて、切り出した不織布の上から熱プレスした。熱プレス後、不織布に風を通して、その前後の差圧をハンディマノメーター差圧計(柴田科学(株)製HP―21(商品名))にて測定することで不織布の変形が生じするか否かの評価を行った。熱プレス後の不織布の圧力損失が、熱プレス前の不織布の圧力損失に対して、±10%未満である場合、その不織布を変化なしとして評価した。それらの結果を表1に示す。なお、表1では、変化なしを「A」と、変化ありを「C」として記載した。
【0094】
(2)耐熱温度(熱分析装置を用いた評価)
示差熱・熱重量同時測定装置((株)リガク製TG8120(商品名))を用いて、実施例及び比較例で得られた不織布約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、空気中にて昇温速度10℃/minで800℃まで昇温することで、TG-DTA曲線を得た。その際、20%の熱減量が観測される温度を耐熱温度(熱分解温度、℃)とした。それらの結果を表1に示す。
【0095】
(3)引張強度比
実施例及び比較例で得られた不織布を幅100mm、及び長さ150mmに切り出し、長手方向において中央から両端に向かって25mmの切れ目を入れて、試験幅を50mmとした。この試験片を長手方向に、小型卓上試験機(SHIMADZU社製EZ Test)にて引張り、破断した時の最大強度を引張強度F(N/50mm)とした。引張強度比は、下記式(2)によって300(g/m2)として算出した。それらの結果を表1に示す。
引張強度比=F×(300/実際の目付)・・・(2)
【0096】
(4)臭気ガス消臭性試験
実施例及び比較例で得られた不織布について、ガス消臭性試験を行った。具体的には、20℃以上25℃以下及び30%RH以上60%RH以下の室内にて、実施例で得られた不織布5gを容積10Lのガス収集袋に入れた。次に、ガス収集袋に空気3Lを封入後、所定の初期ガス濃度P(アンモニアについては350ppm、トルエンについては500ppm、アセトアルデヒドについては100ppm、メチルメルカプタンについては40ppm、トリメチルアミンについては70ppm、酢酸については100ppm)のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸のガスのいずれかをガス収集袋に注入した。30分放置後、ガス収集袋中のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸の濃度Qをガス検知管((株)ガステック製)により測定した。初期ガス濃度P及び濃度Qを用いて、下記式(1)により、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸のそれぞれの消臭率を算出した。それらの結果を表1に示す。
消臭率(%)=[(P-Q)/P]×100・・・(1)
【0097】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が10μm以上30μm以下であり、引張強度(1)が40N/mm2以上300N/mm2以下であり、伸び率が0%以上10%以下である、炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と、
平均繊維径が5μm以上30μm以下であり、引張強度(2)が200N/mm2以上600N/mm2以下であり、前記引張強度(2)が前記引張強度(1)よりも大きい、繊維(B)と、を含み、
前記炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)と前記繊維(B)との配合比((A):(B))が、質量基準で、50:50~99:1であり、
前記炭素繊維もしくは炭素繊維前駆体(A)が、活性炭素繊維又は不融化繊維であり、
前記繊維(B)が、炭素繊維又は炭素繊維前駆体である、不織布。
【請求項2】
前記活性炭素繊維がピッチ系活性炭素繊維であり、前記活性炭素繊維の比表面積が600m2/g以上2000m2/g以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
耐熱温度が200℃以上500℃以下である、請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記繊維(B)が、アクリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、フェノール樹脂系炭素繊維、アクリル系耐炎化炭素繊維、ピッチ系耐炎化炭素繊維、フェノール樹脂系耐炎化炭素繊維、アクリル系炭化炭素繊維、ピッチ系炭化炭素繊維、又はフェノール樹脂系炭化炭素繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項5】
前記繊維(B)が、前記炭素繊維もしくは前記炭素繊維前駆体(A)と異なる、ポリアクリロニトリル系耐炎化炭素繊維又はピッチ系炭素繊維である、請求項1~のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
下記に示す臭気ガス消臭性試験で測定される、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸の臭気ガスの消臭率が、いずれも90%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の不織布。
(臭気ガス消臭性試験)
20℃以上25℃以下及び30%RH以上60%RH以下の室内にて、前記不織布5gを容積10Lのガス収集袋に入れる。次に、前記ガス収集袋に空気3Lを封入後、所定の初期ガス濃度P(アンモニアについては350ppm、トルエンについては500ppm、アセトアルデヒドについては100ppm、メチルメルカプタンについては40ppm、トリメチルアミンについては70ppm、酢酸については100ppm)の前記臭気ガスのいずれかを前記ガス収集袋に注入する。30分放置後、前記ガス収集袋中のアンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、又は酢酸の濃度Qをガス検知管により測定する。初期ガス濃度P及び濃度Qを用いて、下記式(1)により、アンモニア、トルエン、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、及び酢酸のそれぞれの消臭率を算出する。
消臭率(%)=[(P-Q)/P]×100・・・(1)
【請求項7】
前記炭素繊維(A)が、活性炭素繊維であり、
前記活性炭素繊維と前記繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布を得る工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
前記炭素繊維前駆体(A)が、不融化繊維であり、
前記不融化繊維と前記繊維(B)とを解繊及び混合することで不織布前駆体を得る工程と、
前記不織布前駆体を賦活化処理する賦活工程と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着工程と、
脱着ガスにより前記不織布から前記有機溶剤を脱着する脱着工程、又は低圧にすることで前記不織布から前記有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着法を用いた脱着工程と、
脱着した前記有機溶剤を回収する回収工程と、を含む、有機溶剤回収方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の不織布に、臭気ガス中の有機溶剤を吸着させる吸着部と、
脱着ガスにより前記不織布から前記有機溶剤を脱着する脱着部、又は低圧にすることで前記不織布から前記有機溶剤を脱着する圧力スイング吸着法を用いた脱着部と、
脱着した前記有機溶剤を回収する回収部と、を備える、有機溶剤回収装置。