(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149837
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ポータブルトイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 11/04 20060101AFI20231005BHJP
A47K 17/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A47K11/04
A47K17/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058615
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】青山 智行
(72)【発明者】
【氏名】鳩原 匡人
(72)【発明者】
【氏名】川村 満夫
(72)【発明者】
【氏名】土井 健史
【テーマコード(参考)】
2D036
2D037
【Fターム(参考)】
2D036HA02
2D036HA12
2D036HA42
2D037BA12
2D037BA13
2D037BA15
2D037BA16
(57)【要約】
【課題】使用者が誤って肘掛の固定を解除するおそれを低減する。
【解決手段】ポータブルトイレは、肘掛40と、上下方向に移動可能に肘掛40を支持する支持部材50と、肘掛40に設けられた第1ボタン45と、肘掛40に設けられた第2ボタン46と、支持部材50に対して肘掛40を移動不能に固定しまたは上下方向に移動可能に固定解除するロック機構60と、を備える。ロック機構60は、第1ボタン45と第2ボタン46とがともに押されると肘掛40を固定解除するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肘掛と、
上下方向に移動可能に前記肘掛を支持する支持部材と、
前記肘掛に設けられた第1ボタンと、
前記肘掛に設けられた第2ボタンと、
前記支持部材に対して前記肘掛を移動不能に固定しまたは上下方向に移動可能に固定解除する機構であって、前記第1ボタンと前記第2ボタンとがともに押されると前記肘掛を固定解除するロック機構と、を備えた、
ポータブルトイレ。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記第1ボタンに接続され、前記第1ボタンが押されると前記支持部材に対して前記肘掛を上下方向に移動可能に固定解除し、前記第1ボタンが離されると前記支持部材に対して前記肘掛を移動不能に固定する固定部と、
前記第2ボタンに接続され、前記第2ボタンが離された状態では押下不能に前記第1ボタンの動きを規制し、前記第2ボタンが押されると前記第1ボタンの動きを規制解除する規制部と、を備えている、
請求項1に記載のポータブルトイレ。
【請求項3】
前記第1ボタンは、前記肘掛の1つの外側面である第1面に露出するように設けられており、
前記第2ボタンは、前記肘掛の他の1つの外側面であって前記第1面の裏面である第2面に露出するように設けられ、前記第1ボタンと向かい合うように見たときに前記第1ボタンと重なるように配置されている、
請求項1または2に記載のポータブルトイレ。
【請求項4】
前記第1面は、前記肘掛の上面または下面であり、
前記第2面は、前記肘掛の下面または上面である、
請求項3に記載のポータブルトイレ。
【請求項5】
前記第1ボタンおよび前記第2ボタンのうち前記肘掛の上面に露出しているボタンを上ボタンとするとき、
前記上ボタンは、前記肘掛の上面よりも下方に凹むか、または前記肘掛の上面と面一となるように配置されている、
請求項4に記載のポータブルトイレ。
【請求項6】
前記第1ボタンおよび前記第2ボタンのうち前記肘掛の下面に露出しているボタンを下ボタンとするとき、
前記下ボタンは、前記肘掛の下面よりも下方に突出している、
請求項4または5に記載のポータブルトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、介護用のポータブルトイレが開示されている。特許文献1に開示されたポータブルトイレは、高さ調整機構を有する肘掛を備えている。特許文献1に開示された肘掛の高さ調整機構では、肘掛の支持部分に設けられた突出または退避する凸部を複数のピン孔のうちのいずれかに挿入しまたは抜くことによって、肘掛の高さを変更できる。特許文献1に開示されたポータブルトイレでは、凸部を退避させることができるボタンが肘掛の上面に設けられている。使用者がボタンを押すと、凸部がピン孔から抜け、肘掛が上下方向に移動可能となる。
【0003】
特許文献1に記載のポータブルトイレの肘掛には、スライドさせることによってボタンを露出および閉鎖するカバーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたカバーは、使用者が誤ってボタンを押し、意図せず肘掛が下がることを防止するものと考えられる。しかしながら、例えば、カバーでボタンを閉鎖しないまま、使用者が肘掛に手をついて立ち上がろうとすると、誤ってボタンが押されてしまうおそれがある。このような誤操作の可能性は、低減することが望ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者が誤って肘掛の固定を解除してしまうおそれを低減できるポータブルトイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するポータブルトイレは、肘掛と、上下方向に移動可能に前記肘掛を支持する支持部材と、前記肘掛に設けられた第1ボタンと、前記肘掛に設けられた第2ボタンと、前記支持部材に対して前記肘掛を移動不能に固定しまたは上下方向に移動可能に固定解除するロック機構と、を備える。ロック機構は、前記第1ボタンと前記第2ボタンとがともに押されると前記肘掛を固定解除するように構成されている。
【0008】
上記ポータブルトイレによれば、第1のボタンと第2のボタンとがともに押されないと、支持部材に対する肘掛の固定が解除されない。そのため、使用者が誤って肘掛の固定を解除してしまうおそれを低減できる。
【0009】
本発明のポータブルトイレの好ましい一態様によれば、ロック機構は、固定部と、規制部と、を備えている。前記固定部は、前記第1ボタンに接続され、前記第1ボタンが押されると前記支持部材に対して前記肘掛を上下方向に移動可能に固定解除し、前記第1ボタンが離されると前記支持部材に対して前記肘掛を移動不能に固定する。前記規制部は、前記第2ボタンに接続され、前記第2ボタンが離された状態では押下不能に前記第1ボタンの動きを規制し、前記第2ボタンが押されると前記第1ボタンの動きを規制解除する。
【0010】
上記ポータブルトイレによれば、第1ボタンおよび第2ボタンをともに押すことによって肘掛の固定が解除される機構を容易に実現できる。
【0011】
本発明のポータブルトイレの好ましい一態様によれば、前記第1ボタンは、前記肘掛の1つの外側面である第1面に露出するように設けられている。前記第2ボタンは、前記肘掛の他の1つの外側面であって前記第1面の裏面である第2面に露出するように設けられ、前記第1ボタンと向かい合うように見たときに前記第1ボタンと重なるように配置されている。
【0012】
上記ポータブルトイレによれば、使用者は、肘掛を手で握り込むことによって、第1ボタンおよび第2ボタンをともに押すことが容易にできる。
【0013】
上記ポータブルトイレの好ましい一態様によれば、前記第1面は、前記肘掛の上面または下面であり、前記第2面は、前記肘掛の下面または上面である。
【0014】
上記ポータブルトイレによれば、第1ボタンおよび第2ボタンのうちの一方のボタンは、肘掛の上面に露出しているため、押しやすい。かつ、他方のボタンは、肘掛の下面に露出しているため、誤って押されにくい。そのため、使用者が誤って肘掛の固定を解除してしまうおそれをより低減し、かつ、第1ボタンおよび第2ボタンの同時押しを行いやすくすることができる。
【0015】
上記ポータブルトイレの好ましい一態様によれば、前記第1ボタンおよび前記第2ボタンのうち前記肘掛の上面に露出しているボタンを上ボタンとするとき、前記上ボタンは、前記肘掛の上面よりも下方に凹むか、または前記肘掛の上面と面一となるように配置されている。
【0016】
上記ポータブルトイレによれば、上ボタンを誤って押してしまうおそれが少なくなるため、使用者が誤って肘掛の固定を解除してしまうおそれをさらに低減することができる。
【0017】
上記ポータブルトイレの好ましい一態様によれば、前記第1ボタンおよび前記第2ボタンのうち前記肘掛の下面に露出しているボタンを下ボタンとするとき、前記下ボタンは、前記肘掛の下面よりも下方に突出している。
【0018】
上記ポータブルトイレによれば、比較的見えにくい下ボタンを押すことが容易にできる。
【発明の効果】
【0019】
ここに開示するポータブルトイレによれば、使用者が誤って肘掛の固定を解除してしまうおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係るポータブルトイレを示す斜視図である。
【
図2】蓋が取り外された状態のポータブルトイレを示す斜視図である。
【
図3】肘掛、肘掛アジャスタ、およびロック機構の断面図である。
【
図4】下ボタンが押されていない状態の肘掛部の断面図である。
【
図5】下ボタンが押された状態の肘掛部の断面図である。
【
図6】上ボタンが押された状態の肘掛部の断面図である。
【
図7】ロックピンが退避した状態の肘掛支柱の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る一実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0022】
[ポータブルトイレの構成]
図1は、本実施形態に係るポータブルトイレ100を示す斜視図である。
図2は、蓋25が取り外された状態のポータブルトイレ100を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、ポータブルトイレ100の前、後、左、右、上、下とは、ポータブルトイレ100を使用し、後述の便座20に座る使用者から見た前、後、左、右、上、下の各方向をそれぞれ意味するものとする。また、図面において、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれポータブルトイレ100の前、後、左、右、上、下を示している。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、ポータブルトイレ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
ポータブルトイレ100は、主に高齢者および身障者などのいわゆる要介護者に使用されるトイレであり、介護用に好適に使用されるトイレである。また、ポータブルトイレ100は、床に固定されるトイレではなく、移動可能式のトイレである。
図1に示すように、ポータブルトイレ100は、座部10と、バケツ12(
図2参照)と、脚15と、便座20(
図2参照)と、蓋25と、背もたれ30と、左右一対の肘掛40と、を備えている。ポータブルトイレ100の主たる材料としては、例えば、ABS樹脂、ポロプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を好適に用いることができる。それぞれの部品は、例えば、射出成形により一体成形される。ただし、ポータブルトイレ100の材料や製法は、上記に限定されるわけではない。
【0024】
図2に示すように、座部10は、箱状に形成されており、上方に開口している。バケツ12は、ポータブルトイレ100を使用する使用者の尿や便などの排泄物が排出される容器である。バケツ12は、座部10の開口を通じて座部10の内側に装着され、上方に向かって開口している。バケツ12は、座部10に対して上下に着脱可能に構成されている。
【0025】
脚15は、座部10を支持するものである。脚15は、座部10を介してバケツ12を間接的に支持している。脚15は、座部10の下面から下方に延びている。本実施形態では、脚15の数は4つである。脚15は、座部10の左前部、左後部、右前部、右後部に設けられている。なお、
図1および
図2では、右後部の脚15の図示が省略されている。詳しい説明は省略するが、脚15は、座部10から下方に延びる長さを調整することが可能に構成されている。座部10から下方に延びる脚15の長さを調整することで、使用者の体格に合うように、座部10(言い換えると、便座20)の高さを調整することができる。
【0026】
図2に示すように、便座20は、使用者が尻を乗せて座る部位である。便座20は、座部10の上面に配置される。ここでは、便座20は、座部10の後部を軸に回転可能に座部10に取り付けられている。便座20は、前後に回動可能に構成されている。便座20を前方に回動させると、便座20を座部10の上面に配置し、かつ、水平に配置することができる。このとき、便座20は、バケツ12の上方に配置されるため、使用者は便座20に座って、排泄物をバケツ12に排出することができる。一方、便座20を後方に回動させると、便座20は、座部10の後部において立てることができる。このとき、座部10の内側を上方に開放することができる。よって、便座20を立てた状態にすることによって、座部10からバケツ12を上方に取り外すことができる。また、便座20を立てた状態にすることによって、バケツ12を上方から座部10に取り付けることができる。
【0027】
図1に示す蓋25は、バケツ12の上方においてバケツ12を覆うものである。蓋25は、座部10の後部を軸に回転可能に座部10に着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、蓋25は、折り畳み可能に構成されているが、折り畳まれなくてもよい。
図2では、蓋25は、取り外されているが、折り畳まれた状態で背もたれ30の下方に配置されていてもよい。蓋25を前方に回動させ、かつ、展開させることによって、
図1に示すように、便座20およびバケツ12を蓋25によって覆うことができる。蓋25を後方に回動させ、かつ、折り畳むことによって、便座20およびバケツ12が開放される。このことによって、使用者は、便座20に座ることができる。
【0028】
背もたれ30は、便座20に座った使用者が凭れ掛かるものである。
図2に示すように、背もたれ30は、左右一対の背もたれ支柱31と、背もたれ部32と、を備えている。背もたれ支柱31は、座部10から上方に延びている。詳しくは、
図2に示すように、左側の背もたれ支柱31は、座部10の左後部の上面から上方に延びている。右側の背もたれ支柱31は、座部10の右後部の上面から上方に延びている。背もたれ部32は、左右一対の背もたれ支柱31の間に架け渡されている。背もたれ部32や便座20の表面には、例えば、クッション性のある発泡軟質樹脂が用いられてもよい。
【0029】
肘掛40は、便座20の上に座った使用者が肘を置くためのものである。肘掛40は、便座20の上に座った使用者が立ち上がるときに手をつき体重を掛ける部材でもある。
図2に示すように、左右の肘掛40は、それぞれ、便座20の左方および右方に配置されている。肘掛40は、座部10に対する高さを調整可能に構成されている。肘掛40は、また、例えば使用者が手をついたときにも下がらないように、調整後の高さで固定されるように構成されている。本実施形態では、左右の肘掛40は、左右互い違いであることを除き、同様に構成されている。そこで、以下では、左側の肘掛40について説明し、右側の肘掛40についての説明は省略する。
【0030】
図1に示すように、肘掛40は、使用者が肘を置く肘掛部41と、肘掛部41を支持する前後一対の肘掛支柱42と、を備えている。肘掛部41は、前後方向に延びている。肘掛部41は、平板状に形成され、左右方向にある程度の幅を有している。肘掛部41の上面41Uは、肘掛40の外側面の1つであって前後方向および左右方向に延びている。上面41Uの裏面である下面41Dも、肘掛40の外側面の他の1つであり、前後方向および左右方向に延びている。肘掛支柱42は、肘掛部41の下面41Dに接続され、下方に向かって延びている。肘掛支柱42は、上下方向に延びる略円筒状に構成されている。後ろ側の肘掛支柱42は、肘掛部41の後端部近くに接続されている。前側の肘掛支柱42は、肘掛部41の中央よりやや前寄りに接続されている。肘掛部41は、前側の肘掛支柱42よりも前方に飛び出している。肘掛部41の後端部と背もたれ支柱31の前端部との間には、使用者が指を挟まないための隙間が形成されている。この隙間は、肘掛40の高さ調整範囲のうちのどこに肘掛40を移動させても形成される。
【0031】
図3は、肘掛40、肘掛アジャスタ50、およびロック機構60の断面図である。
図3に示すように、ポータブルトイレ100は、上下方向に移動可能に肘掛40を支持する肘掛アジャスタ50と、肘掛アジャスタ50に対して肘掛40を移動不能に固定し、または上下方向に移動可能に固定解除するロック機構60と、を備えている。
図3に示すように、本実施形態では、肘掛部41および肘掛支柱42は中空に形成され、ロック機構60は、肘掛部41および肘掛支柱42の内部空間に設けられている。肘掛アジャスタ50、肘掛支柱42等の部材は、それぞれ、例えば、ABS樹脂、ポロプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂の一体成形により形成されている。ただし、それぞれの部材の材料や製法は、上記には限定されない。
【0032】
肘掛アジャスタ50は、上下方向に移動可能に肘掛40を支持する支持部材の一例である。肘掛アジャスタ50は、一対の肘掛支柱42が挿入される一対の筒状部51を備えている。肘掛40は、筒状部51の内側面に沿って肘掛支柱42が上下方向に摺動することにより、上下方向に移動する。一対の筒状部51の間の部分は、肘掛40を最低高さ(座部10に対して0mmの高さ)に調整したときにも使用者の指が挟まれないよう、下に向かって凹んだ円弧上に形成されている。筒状部51には、ロック機構60のロックピン65(後述)が挿入される複数の調整孔52が設けられている。複数の調整孔52は、それぞれ、水平方向(ここでは前後方向)に筒状部51を貫通するとともに、上下方向に並んでいる。前方側の筒状部51の調整孔52は、筒状部51の前方側の壁部に設けられている。後方側の筒状部51の調整孔52は、筒状部51の後方側の壁部に設けられている。1つの調整孔52にロックピン65が挿入されることにより、肘掛40の肘掛アジャスタ50に対する上下位置が決まる。かつ、肘掛40が肘掛アジャスタ50に固定される。この詳細については後述する。なお、肘掛アジャスタ50は、座部10と一体に構成されていてもよく、座部10に着脱可能に構成されていてもよい。
【0033】
図3に示すように、肘掛40には、肘掛アジャスタ50に対する肘掛40の固定および固定解除操作を行うための2つのボタン、ここでは、上ボタン45および下ボタン46が設けられている。上ボタン45および下ボタン46は、肘掛部41の内部空間に配置されている。詳しくは、上ボタン45および下ボタン46は、肘掛部41の内部空間のうち、前側の肘掛支柱42と後ろ側の肘掛支柱42と中間部に配置されている。
【0034】
図3に示すように、上ボタン45は、肘掛40の上面41Uに露出するように設けられている。肘掛40の上面41Uには、上ボタン45を露出させるための貫通孔41aが形成されている。貫通孔41aは、上面41Uを構成する壁部(肘掛部41の蓋)を上下方向に貫通している。本実施形態では、上ボタン45は、肘掛40の上面41Uと面一となるように配置されている。ただし、上ボタン45は、肘掛40の上面41Uよりも下方に凹むように配置されていてもよい。上ボタン45は、肘掛40の上面41Uよりも上方に飛び出していないことが好ましい。
【0035】
下ボタン46は、肘掛40の下面41Dに露出するように設けられている。肘掛40の下面41Dには、下ボタン46を露出させるための貫通孔41bが形成されている。下ボタン46は、ここでは、肘掛40の下面41Dよりも下方に突出している。
図3に示すように、下ボタン46は、上ボタン45と上下方向に並んで配置されている。下ボタン46は、平面視において上ボタン45と重なるように配置されている(ただし、左右方向の図示は省略)。下ボタン46の前後方向の位置および左右方向の位置は、上ボタン45と揃っている。
【0036】
本実施形態に係るポータブルトイレ100のロック機構60は、上ボタン45と下ボタン46とがともに押されると肘掛40を固定解除するように構成されている。上ボタン45と下ボタン46とのうちの一方が押されただけでは、ロック機構60は、肘掛アジャスタ50と肘掛40との固定を解除しない。詳しくは、ロック機構60は、規制部60Aと、固定部60Bと、を備えている。規制部60Aは、下ボタン46に接続され、下ボタン46が離された状態(押されていない状態)では押下不能に上ボタン45の動きを規制する。また、規制部60Aは、下ボタン46が押されると、上ボタン45の動きを規制解除する。固定部60Bは、上ボタン45に接続され、上ボタン45が押されると肘掛アジャスタ50に対して肘掛40を上下方向に移動可能に固定解除する。また、固定部60Bは、上ボタン45が離されると肘掛アジャスタ50に対して肘掛40を移動不能に固定する。かかる構成により、上ボタン45および下ボタン46の両方が押されないと、肘掛アジャスタ50と肘掛40との固定が解除されないようになっている。以下、ロック機構60の詳しい構成を説明する。
【0037】
図4は、肘掛部41の拡大断面図である。
図4は、下ボタン46が押されていない状態の肘掛部41を示している。
図4に示すように、規制部60Aは、一対の上ボタンストッパ61と、一対のストッパ用バネ62と、を備えている。一対の上ボタンストッパ61は、それぞれ、下ボタン46の前方および後方に配置されている。前方側のストッパ用バネ62は、前方側の上ボタンストッパ61を下ボタン46の方、ここでは後方に付勢している。後方側のストッパ用バネ62は、後方側の上ボタンストッパ61を下ボタン46の方、ここでは前方に付勢している。
【0038】
下ボタン46は、使用者によって押下されるボタン本体46aと、一対の傾斜面46bと、を有している。一対の傾斜面46bは、ボタン本体46aの前方および後方に設けられている。前方の傾斜面46bは、後方に向かって上昇傾斜している。後方の傾斜面46bは、前方に向かって上昇傾斜している。一対の上ボタンストッパ61は、それぞれ、下ボタン46の傾斜面46bに当接する傾斜面61aを備えている。前方側の上ボタンストッパ61の傾斜面61aは、下ボタン46の前方側の傾斜面46bに当接している。前方側の上ボタンストッパ61の傾斜面61aは、下ボタン46の前方側の傾斜面46bに対応するように、後方に向かって上昇傾斜している。後方側の上ボタンストッパ61の傾斜面61aは、下ボタン46の後方側の傾斜面46bに当接している。後方側の上ボタンストッパ61の傾斜面61aは、下ボタン46の後方側の傾斜面46bに対応するように、前方に向かって上昇傾斜している。
【0039】
使用者によって押されていないとき、
図4に示すように、下ボタン46は、上ボタンストッパ61の傾斜面61aと傾斜面46bとを介して伝達されるストッパ用バネ62の付勢力、および後述する上ボタン用バネ63の付勢力によって下方に付勢されている。
【0040】
一対の上ボタンストッパ61は、それぞれ、下ボタン46が押されていない状態において上ボタン45の動きを規制する受部61bを備えている。受部61bは、上方かつ下ボタン46寄りの隅(前方側の上ボタンストッパ61では後方上隅、後方側の上ボタンストッパ61では前方上隅)に設けられている。
図4に示すように、受部61bは、下ボタン46が押されていない状態において、上ボタン45(より詳しくは、上ボタン45のうち、後述する突起部45b)の下方に位置している。この状態では、上ボタン45を押しても、突起部45bが受部61bに突き当たるため、上ボタン45は下方に移動しない。
【0041】
図5は、下ボタン46が押された状態の肘掛部41の断面図である。
図5に示すように、下ボタン46が押されると、一対の上ボタンストッパ61は、下ボタン46の傾斜面46bを介して、下ボタン46を押す力を受け、それぞれ、下ボタン46から離れる方向に移動する。詳しくは、前方側の上ボタンストッパ61は、前方に移動する。後方側の上ボタンストッパ61は、後方に移動する。これにより、上ボタンストッパ61の受部61bが、上ボタン45の突起部45bの下方から移動する。これにより、受部61bが突起部45bに突き当たることがなくなり、上ボタン45を下方に押し込むことが可能となる。
【0042】
図6は、さらに上ボタン45が押された状態の肘掛部41の断面図である。
図6に示すように、上ボタン45は、使用者が押すボタン本体45aと、突起部45bと、ボタン本体45aから前方および後方に延びる一対のアーム45cと、を備えている。突起部45bは、下ボタン46が押されていない状態で上ボタン45を押すと、上ボタンストッパ61と当接する部材である。上ボタンストッパ61は、上ボタン45のうちでは突起部45bとだけ当接し得る。
図6に示すように、アーム45cは、上ボタンストッパ61の側方を通り抜けることが可能なように構成されている。そのため、下ボタン46を押すことにより上ボタンストッパ61の受部61bが突起部45bの下方から移動すると、上ボタン45を下方に押し込むことが可能となる。
【0043】
図3に示すように、前後一対のアーム45cは、ボタン本体45aからそれぞれ前方および後方に延びている。固定部60Bは、上ボタン用バネ63と、一対のアーム45cの先端部にそれぞれ連結された上ボタン支柱64と、一対のロックピン65と、一対のロックピン用バネ66と、を備えている。上ボタン用バネ63は、上ボタン45を上方に向かって付勢している。上ボタン用バネ63は、上ボタン45と下ボタン46との間に配置されている。これにより、下ボタン46が押され、上ボタン45の移動規制が解除されても、上ボタン45が自重および連結された部品の重さにより下方に移動することが防止されている。上ボタン45は、下ボタン46が押し上げられ、かつ、使用者に押されて初めて下方に移動する。
【0044】
上ボタン支柱64は、肘掛40の肘掛支柱42の内部空間に挿通されている。上ボタン支柱64は、アーム45cに連結された連結部64aと、上下方向に延びるロッド部64bと、下端部に設けられたカット面64cと、を備えている。連結部64aは、上ボタン支柱64の上端部に設けられ、アーム45cの先端部に連結されている。ロッド部64bは、上ボタン支柱64の上下方向の中間部分である。カット面64cは、斜めにカットされた上ボタン支柱64の下端部である。カット面64cは、前後方向のうち調整孔52から離れる方向に向かって上昇傾斜している。ここでは、前方側の上ボタン支柱64のカット面64cは、後方に向かって上昇傾斜している。後方側の上ボタン支柱64のカット面64cは、前方に向かって上昇傾斜している。
【0045】
ロックピン65は、上ボタン支柱64の下方に配置されている。
図3に示すように、ロックピン65は、ピン部65aと、カット面65bと、を備えている(
図7も参照)。ピン部65aは、肘掛アジャスタ50の調整孔52に抜き差しされる部位である。ピン部65aは、水平方向、ここでは前後方向に延びている。カット面65bは、ロックピン65の上端に設けられている。カット面65bは、上ボタン支柱64のカット面64cに対応するように斜めにカットされた面である。カット面65bは、上ボタン支柱64のカット面64cと当接している。
【0046】
ロックピン用バネ66は、ロックピン65を肘掛アジャスタ50の調整孔52の側に向かって付勢している。ロックピン用バネ66の付勢力により、ピン部65aは、上ボタン45が押されていないとき、上ボタン支柱64よりも肘掛アジャスタ50の調整孔52の側に突出し、調整孔52に挿入された状態に維持されている。
【0047】
上ボタン45が押されると、ロックピン65は、ロックピン用バネ66の付勢力に抗して上ボタン支柱64よりも内側に退避する。
図7は、ロックピン65が退避した状態の肘掛支柱42の断面図である。
図7に示すように、上ボタン45(
図3参照)が押されて下方に移動すると、上ボタン45に接続された上ボタン支柱64が下方に移動する。これにより、上ボタン支柱64のカット面64cとロックピン65のカット面65bとの傾斜に沿って、ロックピン65が、肘掛アジャスタ50の調整孔52から抜かれる方向に移動する。これにより、ピン部65aが調整孔52から抜け、肘掛40を上下方向に移動させることが可能となる。ピン部65aの上下位置を他の調整孔52に合わせた後に上ボタン45を押し込むのを止めると、ロックピン65は再び調整孔52に挿入される。これにより、肘掛40の高さを変更し、なおかつ、高さが変わらないように肘掛40を固定することができる。
【0048】
[肘掛の高さ調整作業]
肘掛の高さを変更するときには、使用者は、例えば、肘掛40を握り込んで上ボタン45および下ボタン46を操作する。使用者は、例えば、人差し指から小指の4本の指のうちのいくつかの指の腹で下ボタン46を押下する。また、使用者は、例えば、親指で上ボタン45を押下する。下ボタン46が押されることにより、上ボタン45の動きの規制が解除され、上ボタン45を押せるようになる。上ボタン45を押すと、ロックピン65が肘掛アジャスタ50の調整孔52から抜ける。使用者は、この状態で肘掛40を移動させ、ロックピン65を調整孔52に挿入可能な位置のうちで好みの位置に肘掛40の位置を合わせる。使用者が上ボタン45を離すと、ロックピン65は調整孔52に挿入される。これにより、肘掛40の上下位置が固定される。使用者が下ボタン46を離すと、上ボタン45の動きが再び規制される。
【0049】
肘掛40は、使用者が立ち上がるとき等に手をつくことがあり得る。そのとき、使用者の手が上ボタン45に触れることもあり得る。しかし、もし使用者が誤って上ボタン45を押したとしても、本実施形態に係るポータブルトイレ100では、同時に下ボタン46も押さなければ、上ボタン45を操作することができない。そのため、使用者が立ち上がるとき等に誤って肘掛40のロックを解除し、肘掛40が下がってしまうおそれが少ない。
【0050】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るポータブルトイレ100が奏することができる作用効果について説明する。
【0051】
本実施形態に係るポータブルトイレ100は、肘掛40と、上下方向に移動可能に肘掛40を支持する肘掛アジャスタ50と、肘掛40に設けられた第1のボタン(本実施形態では上ボタン45)と、肘掛40に設けられた第2のボタン(本実施形態では下ボタン46)と、肘掛アジャスタ50に対して肘掛40を移動不能に固定しまたは上下方向に移動可能に固定解除するロック機構60と、を備えている。ロック機構60は、第1のボタンと第2のボタンとがともに押されると肘掛40を固定解除するように構成されている。かかるポータブルトイレ100によれば、第1のボタンと第2のボタンとをともに押さないと、肘掛アジャスタ50に対する肘掛40の固定が解除されない。そのため、使用者が誤って肘掛40の固定を解除してしまうおそれを低減できる。
【0052】
なお、本実施形態では、第1のボタンおよび第2のボタンは、それぞれ上ボタン45および下ボタン46であるが、肘掛における第1のボタンおよび第2のボタンの位置は特に限定されない。第1のボタンおよび第2のボタンは、例えば、肘掛支柱42に設けられていてもよい。
【0053】
本実施形態では、ロック機構60は、固定部60Bと、規制部60Aと、を備えている。固定部60Bは、上ボタン45に接続され、上ボタン45が押されると肘掛アジャスタ50に対して肘掛40を上下方向に移動可能に固定解除し、上ボタン45が離されると肘掛アジャスタ50に対して肘掛40を移動不能に固定するように構成されている。規制部60Aは、下ボタン46に接続され、下ボタン46が離された状態では押下不能に上ボタン45の動きを規制し、下ボタン46が押されると上ボタン45の動きを規制解除する。かかる構成によれば、2つのボタンをともに押すことによって肘掛の固定が解除される機構を容易に実現できる。
【0054】
本実施形態では、上ボタン45は、肘掛40の1つの外側面である上面41Uに露出するように設けられており、下ボタン46は、肘掛40の他の1つの外側面であって上面41Uの裏面である下面41Dに露出するように設けられている。下ボタン46は、平面視において、上ボタン45と重なるように配置されている。かかる構成によれば、使用者は、肘掛40を手で握り込むことによって、上ボタン45および下ボタン46を同時に押すことが容易にできる。
【0055】
なお、第1のボタンおよび第2のボタンがそれぞれ肘掛の上面および下面以外の外側面に露出している場合(例えば、第1のボタンおよび第2のボタンがそれぞれ肘掛支柱42の前面および後面に露出している場合)、好ましくは、第2のボタンは、第1のボタンと向かい合うように見たときに(例えば、前後方向視において)第1のボタンと重なるように配置される。
【0056】
本実施形態では、第1のボタンが露出している肘掛の外側面は、肘掛40の上面41Uであり、第2のボタンが露出している肘掛の外側面は、肘掛40の下面41Dである。かかる構成によれば、肘掛40の上面41Uに露出しているため第1のボタンを押しやすく、かつ、肘掛40の下面41Dに露出しているため第2のボタンを誤って押すことが起こりにくい。そのため、使用者が誤って肘掛40の固定を解除してしまうおそれをより低減し、かつ、第1のボタンおよび第2のボタンの同時押しを容易なものとすることができる。
【0057】
なお、ロック機構の固定部に接続された方のボタンが下ボタンであってもよく、ロック機構の規制部に接続された方のボタンが上ボタンであってもよい。この場合でも、使用者が誤って肘掛40の固定を解除してしまうおそれを低減する効果、および、ボタンの操作性は、本実施形態に係るポータブルトイレ100と同等である。
【0058】
本実施形態では、上ボタン45は、肘掛40の上面41Uと面一となるように配置されている。かかる構成によれば、上ボタン45を誤って押してしまうおそれが少なくなるため、使用者が誤って肘掛40の固定を解除してしまうおそれをさらに低減することができる。なお、上ボタン45は、肘掛40の上面41Uよりも下方に凹んでいてもよい。
【0059】
本実施形態では、下ボタン46は、肘掛40の下面41Dよりも下方に突出している。かかる構成によれば、下ボタン46を押す操作が容易である。下ボタン46は肘掛40の下面41Dにあって使用者にとっては見にくいため、下ボタン46が肘掛40の下面41Dよりも下方に突出していることにより、下ボタン46の操作が行いやすくなる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、ロック機構の構成は、上記したようなものには限定されない。例えば、ロック機構は、1つのボタンに接続された固定部と、他の1つのボタンに接続された規制部という構成を有していなくてもよい。ロック機構は、例えば、第1ボタンを押すことによって第1のロックピンを退避させ、第2ボタンを押すことによって第2のロックピンを退避させるように構成されていてもよい。
【0061】
第1ボタンおよび第2ボタンは、それぞれ、肘掛の外側面より突出していてもよく、肘掛の外側面より凹んでいてもよく、肘掛の外側面と面一であってもよい。肘掛の外側面に対する第1ボタンおよび第2ボタンの凹凸は特に限定されない。第1ボタンおよび第2ボタンの位置も限定されない。例えば、第1ボタンと第2ボタンとは、肘掛の同じ外側面に設けられていてもよい。第1ボタンおよび第2ボタンは、例えばそれぞれ、肘掛部の上面および側面に設けられていてもよい。第1ボタンおよび第2ボタンは、例えばそれぞれ、肘掛部および肘掛支柱に設けられていてもよい。第1ボタンおよび第2ボタンは、例えばそれぞれ、前側の肘掛支柱の前面および後面に設けられていてもよい。
【0062】
その他、特に言及されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。例えば、ロック機構は、3つ以上のボタンを同時押ししなければ肘掛の固定を解除しないように構成されていてもよい。また、例えば、肘掛支柱は、1つの肘掛につき1本でもよく、3本以上であってもよい。肘掛を支持する支持部材は、例えば肘掛支柱の数等、肘掛の形状に合わせて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
40 肘掛
41D 下面
41U 上面
45 上ボタン(第1ボタン)
46 下ボタン(第2ボタン)
50 肘掛アジャスタ(支持部材)
60 ロック機構
60A 規制部
60B 固定部
100 ポータブルトイレ