(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149847
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】レーザースキャン方法、レーザースキャンシステムおよびレーザースキャン用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20231005BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20231005BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01C15/00 104D
G01B11/24 A
G01B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058627
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA09
2F065AA53
2F065BB15
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL61
2F065MM02
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】土木工事現場における施工管理および重機の管理を効率良く行う。
【解決手段】重機200の刃先201に対するレーザースキャン装置300による刃先201に対する第1のレーザースキャンと、重機200による作業が行なわれた範囲である作業終了範囲に対するレーザースキャン装置200による第2のレーザースキャンとを行い、前記第1のレーザースキャンは、前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行われるレーザースキャン方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の刃先に対するレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、
前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記レーザースキャン装置による第2のレーザースキャンと
を行い、
前記第1のレーザースキャンは、前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行われるレーザースキャン方法。
【請求項2】
前記第1のレーザースキャンは、前記刃先の制御を行うために行われる請求項1に記載のレーザースキャン方法。
【請求項3】
前記第2のレーザースキャンは前記重機の少なくとも一部をスキャン範囲に収めている請求項1または2に記載のレーザースキャン方法。
【請求項4】
前記第1のレーザースキャンにより検出された前記刃先の位置に基づき、前記第1のレーザースキャンから前記第2のレーザースキャンへの移行を行う請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザースキャン方法。
【請求項5】
前記第1のレーザースキャンにより検出された前記刃先の位置と前記刃先による作業の対象との距離が予め定めた値より大きくなった場合を契機として、前記第1のレーザースキャンから前記第2のレーザースキャンへの移行を行う請求項4に記載のレーザースキャン方法。
【請求項6】
重機の刃先に対するレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、
前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記レーザースキャン装置による第2のレーザースキャンと
を行うレーザースキャン装置と、
前記第1のレーザースキャンを前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行う制御部と
を含むレーザースキャンシステム。
【請求項7】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
重機の刃先に対するレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、
前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記レーザースキャン装置による第2のレーザースキャンと
を実行させ、
前記第1のレーザースキャンは、前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行われるレーザースキャン用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、土木工事現場における施工管理の手段としてレーザースキャンを利用する技術がある(例えば、特許文献1を参照)。また、土木工事現場における重機の位置管理にGNSSを利用する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、重機の刃先(シャベルの先端等)制御を行う技術も知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-56152号公報
【特許文献2】特許第6964168号公報
【特許文献3】特許第6794449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの技術では、土木工事現場における重機の刃先の制御や出来形計測は、それぞれ別の技術手段で行っていた。例えば、重機の作業の前におけるレーザースキャンによる現状データの取得を行い、重機の作業中に測量装置による刃先の検出による刃先の制御を行い、作業の終了後にレーザースキャンによる出来形の計測を行う、といった具合に目的別に分けて測量装置を用いた計測を行っていた。
【0005】
この従来の方法は、計測を個別に行わなくてはならず、作業時間や作業コストの点で改善が求められている。このような背景において、本発明は、土木工事現場における施工管理を効率良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重機の刃先に対するレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記レーザースキャン装置による第2のレーザースキャンとを行い、前記第1のレーザースキャンは、前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行われるレーザースキャン方法である。
【0007】
本発明において、前記第1のレーザースキャンは、前記刃先の制御を行うために行われる態様が挙げられる。本発明において、前記第2のレーザースキャンは前記重機の少なくとも一部をスキャン範囲に収めている態様が挙げられる。本発明において、前記第1のレーザースキャンにより検出された前記刃先の位置に基づき、前記第1のレーザースキャンから前記第2のレーザースキャンへの移行を行う態様が挙げられる。
【0008】
本発明において、前記第1のレーザースキャンにより検出された前記刃先の位置と前記刃先による作業の対象との距離が予め定めた値より大きくなった場合を契機として、前記第1のレーザースキャンから前記第2のレーザースキャンへの移行を行う態様が挙げられる。
【0009】
本発明は、重機の刃先に対するレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記レーザースキャン装置による第2のレーザースキャンとを行うレーザースキャン装置と、前記第1のレーザースキャンを前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行う制御部とを含むレーザースキャンシステムである。
【0010】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータに重機の刃先に対するレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記レーザースキャン装置による第2のレーザースキャンとを実行させ、前記第1のレーザースキャンは、前記第2のレーザースキャンよりも高い頻度で行われるレーザースキャン用プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、土木工事現場における施工管理および重機の管理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】スキャンのタイミングを示すチャートである。
【
図5】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1の実施形態
(概要)
図1には、刃先201を備えた重機200が示されている。この例において、重機200はブルドーザであり、刃先201はブレード(排土板)である。重機200は、この例に限定されず、土木作業を行うものであれば、パワーシャベル、ホイールローダ等であってもよい。例えば、重機200がパワーシャベルの場合は、刃先201はシャベルとなる。
図1には、図面の右から左に向って移動しながら地形を平坦にする整地作業を重機200が行う場合の例が示されている。
【0014】
図1には、レーザースキャナ300が示されている。レーザースキャナ300は、水平回転部、水平回転部に配置された鉛直回転部を備え、鉛直回転部に測距用のレーザー光(スキャン光)の発光と受光を行う光学系を備えている。水平回転部を水平回転させつつ、鉛直回転部を鉛直回転させ、その状態において光学系からスキャン光をパルス発光さることでレーザースキャンが行われる。
【0015】
レーザースキャン装置300は、回転部の回転の範囲やパルス発光の範囲(あるいは受光の範囲)を調整することで特定の範囲に対するレーザースキャンが行われる。レーザースキャン装置の形態や方式は特に限定されない。例えば、光学系の光軸を特定の範囲で機械的に往復移動させ、スキャンを行う形態、電子的にスキャン光の走査を行う形態のレーザースキャナを用いることもできる。また、面状に多数の測定光を同時に照射し、1回の発光で特定の範囲の点群データを得る形態のレーザースキャン装置も可能である。また、レーザースキャン装置300として、レーザースキャン装置300における外部標定要素(位置と姿勢)が既知のカメラを搭載した機種を用いることもできる。
【0016】
図1の例では、レーザースキャン装置200を用いて、(1)重機200を含む重機200周囲の広範囲なレーザースキャン(広範囲スキャン)、(2)刃先201を中心とした限定された範囲のレーザースキャン(刃先スキャン)、(3)重機200による作業が行なわれた範囲のレーザースキャン(作業終了範囲スキャン)を行う。
【0017】
ここでは、(1)の広範囲スキャンに基づき、(2)の刃先スキャンと(3)の作業終了範囲スキャンの範囲が決められる。(2)の刃先スキャンは相対的に高レートで行われ、(3)の作業終了スキャンは相対的に低レートで行われる。これにより、刃先201の捕捉と、地形の変化の捕捉を行う。
【0018】
上記(1)~(3)のスキャンデータの処理、当該スキャンデータに基づく刃先201の制御に係る処理、出来形の計測に係る処理がデータ処理装置100により行われる。
図1には、地形を対象とした土木作業の例が示されているが、建築物や工作物が対象であってもよい。
【0019】
レーザースキャン装置300により、(2)の刃先スキャンと(3)の作業終了スキャンを適切なタイミングで振り分けて行うことで、刃先201の制御と出来形の算出を1台のレーザースキャン装置による一連のレーザースキャンにより実施できる。
【0020】
(データ処理装置について)
図3はデータ処理装置300のブロック図である。データ処理装置100は、コンピュータにより構成されている。当該コンピュータは、CPU、記憶装置、通信インターフェース、重機200の制御信号を扱うインターフェース、ユーザーインターフェースを備えている。利用するコンピュータは、汎用のコンピュータでも良いし専用のコンピュータでもよい。例えば、PC(パーソナル・コンピュータ)やデータ処理サーバを利用してデータ処理装置100を構成することができる。
【0021】
データ処理装置100は、広範囲スキャン制御部101、初期データ取得部102、重機および刃先検出部103、スキャン範囲設定部104、スキャン範囲選択部105、刃先スキャン制御部106、刃先制御部107、作業終了範囲スキャン制御部108、作業終了範囲データ取得部109、出来形データ算出部110、出来高算出部111を備える。
【0022】
これら機能部は、データ処理装置100を構成するコンピュータにインストールされた動作プログラムにより、ソフトウェア的に構成されている。これら機能部の一部または全部を専用のハードウェアにより構成する形態も可能である。
【0023】
広範囲スキャン制御部101は、
図2に示す広範囲スキャンの範囲に対するレーザースキャンの制御を行う。広範囲スキャンは、刃先スキャンと作業終了範囲スキャンのスキャン範囲を決めるために行われる。広範囲スキャンには、作業が終了した範囲と、これから作業が行われる範囲が含まれる。
【0024】
初期データ取得部102は、広範囲スキャンにより得られたスキャンデータを初期データとして取得する。
【0025】
重機および刃先検出部103は、上記広範囲スキャンの結果に基づき、重機200と刃先201を検出する。検出は、反射ターゲットを用いる方法、点群データから対象の形状を検出する方法、これら2つの方法を併用する方法がある。また、レーザースキャン装置300に搭載したカメラを用いて刃先201を撮影し、画像中から刃先201を検出する形態も可能である。勿論、レーザースキャンと撮影画像を併用して、刃先201の検出を行うこともできる。
【0026】
例えば、重機200に特定の多角形の頂点の位置関係となるように反射ターゲット(反射プリズムや再帰反射ターゲット等)を配置する。反射ターゲットからの反射は強いので、レーザースキャン点群の中で輝点となる。この輝点により構成される多角形を検出することで、レーザースキャン点群の中から重機200を特定する。
【0027】
また、例えば刃先201の先端に反射ターゲットを配置する、この反射ターゲットをレーザースキャン点群の中から検出することで、レーザースキャン点群の中から刃先201を特定する。勿論、複数の反射ターゲットを用いて、刃先201を特定する形態も可能である。例えば、複数の反射輝点により刃先201の形状を特定できるように複数の反射ターゲットを刃先201に配置する。この場合、複数の高輝度反射点により構成される形状から刃先201を特定できる。この場合、多角形状の向きから刃先201の向きを特定できる。
【0028】
スキャン範囲設定部104は、広範囲スキャンから得られた重機200と刃先201の位置情報に基づき、作業終了範囲スキャンの範囲と刃先スキャンの範囲を設定する。
【0029】
作業終了範囲スキャンの範囲は、重機200の進行方向における後ろの範囲として設定される。ここで、作業終了範囲スキャンには、重機200の少なくとも一部が含まれるようにする。これは以下の理由による。作業終了範囲スキャンの後に刃先スキャンが行われる。この際、作業終了範囲スキャンにおいて重機200の一部を捉えておくことで、刃先スキャンを行う段階で刃先201の位置を把握でき、刃先スキャンへのスムーズな移行が可能となる。また、作業終了範囲スキャンにおいて、重機200の一部を捉えておくことで、重機200の位置を把握でき、重機の移動を検出できる。
【0030】
スキャン範囲選択部105は、
図2に示す刃先スキャンと作業終了範囲スキャンの実施タイミングを決める。
図4に作業終了範囲スキャンと刃先スキャンの選択のタイミングチャートの一例を示す。この例では、刃先スキャンと作業終了範囲スキャンを同じ範囲(同じスキャン時間)とし、刃先スキャン5回に対して、作業終了範囲スキャンが1回行われるようにする。この割り振りの制御がスキャン範囲選択部105において行われる。
【0031】
図4に例示するように、単位時間当たりでみると、作業終了範囲スキャンの繰り返し回数に比較して、刃先スキャンの繰り返し回数が多くなる。これは、重機200の動きよりも刃先201の動きの方が速いことに対応している。
【0032】
刃先スキャンと作業終了範囲スキャンのタイミングを予め決めておくのではなく、刃先201の動きに応じて、スキャンのタイミングを選択してもよい。例えば、刃先201の動きが一瞬止まる、あるいは動きが鈍くなるタイミングを刃先スキャンの結果から検出し、そのタイミングで作業終了範囲スキャンを実行する。
【0033】
例えば、刃先201が地面より上方に変位した場合は、最上位の位置で刃先201の動きが遅くなり、また切削等の作業が生じないタイミングであるので、その状態が刃先スキャンに基づき検出された場合に、刃先スキャンから作業終了範囲スキャンに移行する。
【0034】
また、刃先201による作業が行なわれていないタイミングを検出し、それを契機として刃先スキャンから作業終了範囲スキャンに移行する形態も可能である。例えば、刃先201と作業の対象である地形表面との離間距離を刃先スキャンの結果から取得し、この離間距離が予め定めた閾値を超えた場合に、刃先スキャンから作業終了範囲スキャンに移行する。
【0035】
また例えば、刃先スキャンから刃先201の位置と向きを検出し、その位置と向きに応じて、刃先スキャンから作業終了範囲スキャンに移行する形態も可能である。また、例えば、刃先201が後ろに下がった(重機が後進した)場合に、刃先スキャンから作業終了範囲スキャンに移行する形態も可能である。勿論、これらの態様の複数を組み合わせることで判定を行い、刃先スキャンから作業終了範囲スキャンに移行する形態も可能である。
【0036】
また、上述した予め定めたスケジュールでスキャンを選択する形態と状況を見てスキャンを選択する形態を併用する形態も可能である。例えば、基本は状況により刃先スキャンを選択し、作業終了範囲スキャンが一定の時間選択されていない場合に、作業終了範囲スキャンを選択する。例えば、作業終了範囲スキャンが最低5秒間に1回選択されるようにする。
【0037】
刃先スキャン制御部106は、刃先スキャンの制御を行う。刃先制御部107は、刃先スキャンの結果に基づき、刃先201の動きの制御を行う。
【0038】
以下、刃先制御部107が行う制御の一例を説明する。まず、事前の測量(例えば、レーザースキャン)により地形の3Dモデル(作業前3Dモデル)が得られているとする。他方において、図面上(データ上)において、当該地形の作業後の3Dモデル(作業後3Dモデル)が作成されている(設計されている)とする。
【0039】
この場合、まず広範囲スキャンの結果と上記作業前3Dモデルの対応関係を特定する。広範囲スキャンには、作業前の部分が含まれているので、この作業前の部分と作業前3Dモデルの対応関係を探索することで、広範囲スキャンの結果と上記作業前3Dモデルの対応関係を特定できる。
【0040】
ここで、刃先スキャンは広範囲スキャンの結果に基づいて行われるので、刃先スキャンと広範囲スキャンの対応関係は既知である。よって、広範囲スキャンの結果と作業前3Dモデルの対応関係を特定することで、刃先スキャンと作業前3Dモデルの関係が判る。
【0041】
ここで、作業前3Dモデルと作業後3Dモデルを比較し、その差分に対応した作業が行われるように、刃先201の動きの制御が行われる。この制御が刃先制御部107で行われる。
【0042】
例えば、作業前3Dモデルと作業後3Dモデルを比較し、土砂の削る範囲を算出する。次に、該算出した範囲の土砂を削るのに必要な刃先201の移動軌跡を算出する。なお、1回で削ることができない範囲であれば、複数回に別けて削る工程で刃先201の軌道が設定される。
【0043】
刃先201の軌道を設定したら、刃先スキャンによって刃先201の位置の変化を検出し、設定した軌道からずれないように刃先201の位置を調整する制御信号を重機200に送信し、刃先201の位置のリアルタイム制御が行われる。
【0044】
なお、刃先201の設定した軌道と実際の軌道(レーザースキャンで計測した軌道)との差の情報を重機200に送り、それを重機200のオペレータが参照して刃先201の操作を行う形態や、当該情報に基づきオペレータの操作をアシストする形態等も可能である。以上の処理が刃先制御部107において行われる。
【0045】
作業終了範囲スキャン制御部108は、作業終了範囲スキャンの制御を行う。作業終了範囲データ取得部109は、作業終了範囲スキャンで得た点群データを取得する。
【0046】
出来形データ算出部110は、作業終了範囲スキャンで得た点群データに基づき、出来形を算出する。以下、出来形の算出の一例を説明する。
【0047】
上述のように、広範囲スキャンの結果と作業前3Dモデルの対応関係を特定できる。また、作業終了範囲スキャンは、広範囲スキャンの結果に基づいて行われるので、広範囲スキャンの結果と作業終了範囲スキャンの結果の対応関係も特定できる。よって、作業終了範囲スキャンの結果と作業前3Dモデルの対応関係が特定できる。
【0048】
ここで、作業終了範囲スキャンの結果と作業前3Dモデルの差分を算出することで、出来形が算出される。例えば、刃先201のよって削られた、あるいは盛り上げられた地形の変位量が算出される。この変位量が出来形となる。
【0049】
出来高算出部111は、出来形に基づき出来高を算出する。例えば、予め土砂1m3当たりのコストを単位コストとして設定しておく。そして、単位コスト×出来形により出来高を算出する。
【0050】
(処理の一例)
図5は、データ処理装置100で行われる処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートを実行するプログラムは、データ処理装置100が備える記憶装置に記憶され、データ処理装置100のCPUによって実行される。当該フローチャートを適当な記憶媒体に記憶し、そこからダウンロードする形態も可能である。
【0051】
まず、
図2に示す広範囲スキャンを行う(ステップS101)。広範囲スキャンの制御は、広範囲スキャン制御部101により行われる。次に、広範囲スキャンによって得た点群データを初期データとして取得する(ステップS102)。初期データは、初期データ取得部102で取得される。初期データを取得したら、初期データの中から重機200と刃先201を検出する(ステップS103)。この処理は、重機および刃先検出部103で行われる。
【0052】
重機200と刃先201を検出したら、スキャン範囲を設定する(ステップS104)。ここでは、重機200の位置に基づき
図2の作業終了範囲スキャン範囲を設定し、また刃先201の位置に基づき刃先スキャンの範囲を設定する。この処理は、スキャン範囲設定部104で行われる。
【0053】
次に、刃先スキャンのタイミングであるか否かの判定を行う。この処理は、スキャン範囲選択部105で行われる。刃先スキャンのタイミングであれば、刃先スキャンを行い(ステップS106)、そうでなければ作業終了範囲スキャンを行う(ステップS108)。
【0054】
刃先スキャン(ステップS106)を行い、刃先201付近の点群データを得たら、それに基づく刃先201の制御を行う(ステップS107)。この処理は、刃先制御部107により行われる。
【0055】
ステップS108の作業終了範囲スキャンを行ったら、当該スキャンによって得られる点群データである作業終了範囲データを取得し(ステップS109)、出来形データを算出する(ステップS110)。出来形データの算出は、出来形データ算出部110により行われる。出来形データを算出したら、出来高を算出する(ステップS111)。出来高は、出来高算出部111において行われる。出来形と出来高の一方のみを算出する形態も可能である。
【0056】
閾値以上の重機200の移動が検出された場合、あるいは規定の時間が経過した場合、ステップS101以下の処理を再度行う。例えば、重機200が予め定めた閾値を超えて移動した場合に、ステップS101以下の処理を繰り返す。重機200の移動は、スキャンデータや重機200が備えたGNSS位置測定装置の計測値から得る。ステップS101以下の処理を繰り返すことで、未作業範囲の点群データが更新される。この場合、重機の移動に伴い広範囲スキャンが繰り返し行われるので、広範囲スキャンのスキャン範囲を狭めることができる。これは、広範囲スキャンのスキャン密度を高めたい場合に有用である。なお、広範囲スキャンをやり直した場合、刃先201の軌道の再設定がその都度行われる。
【0057】
2.第2の実施形態
レーザースキャン装置200に加えて、トータルステーションを用いる。トータルステーションは、刃先201をロックし、追尾する。刃先スキャンでないタイミングで刃先の動き(例えば、地面に向かう動き)がトータルステーションにより検出された場合、刃先スキャンへの切り替えを行う。こうすることで、刃先の制御が追い付かないことによる不具合を回避できる。また、トータルステーションにより刃先201の位置を継続して追尾するので、刃先スキャンへの移行をスムーズに行うことができる。トータルステーションにより検出される刃先201の位置情報に基づき、刃先201の制御を行うこともできる。
【0058】
レーザースキャン装置とトータルステーションを統合し、両者の機能を持つ測量装置が知られている。この測量装置を用い、レーザースキャンを行いつつ、トータルステーションの機能を用いて刃先201の位置の測定を行う形態も可能である。
【0059】
3.第3の実施形態
レーザースキャン装置を複数台用いる。この場合、重機200に水平位置と高さ位置が異なる3つ以上の全周反射プリズムを配置する。複数台のレーザースキャン装置は同期して動作する。
【0060】
最初に各レーザースキャン装置により同時に広範囲スキャンを行い、各スキャンにおいて重機の3つ以上の全周反射プリズムをスキャンデータから共通点として検出する。この3つ以上の共通点を利用して、各レーザースキャン装置が得た点群データ間の対応関係が特定される。レーザースキャン装置が複数ある点以外は、第1の実施形態と同じである。
【0061】
この例によれば、一つのレーザースッキャン装置から見て死角となる部分を他のレーザースキャン装置によりスキャンできるので、レーザースキャンにおける死角となる部分が減少し、より精度の高い計測が可能となる。用いるレーザースキャン装置の数は、コストの許す限り多い方が好ましい。
【0062】
同じ座標系において、複数台のレーザースキャン装置を機械設置しておく方法もある。この場合、各レーザースキャン装置の外部標定要素が既知となり、反射プリズム等のターゲットを利用しなくても各レーザースキャン装置300が得た重機200の点群データを統合できる。
【0063】
4.第4の実施形態
第3の実施形態において、第1のレーザースキャン装置による刃先スキャンと作業終了範囲スキャンのタイミングと、第2のレーザースキャン装置による刃先スキャンと作業終了範囲スキャンのタイミングとをずらす。
【0064】
例えば、第1のレーザースキャン装置による刃先スキャンのタイミングにおいて、第2のレーザースキャン装置による作業終了範囲スキャンを行う。また、第2のレーザースキャン装置による刃先スキャンのタイミングにおいて、第1のレーザースキャン装置による作業終了範囲スキャンを行う。
【0065】
また、3台以上のレーザースキャン装置を用いた場合において、あるタイミングにおいて、各スキャンが少なくとも一つのレーザースキャン装置で行われるようにすることも可能である。
【0066】
この例によれば、重機の刃先に対する第1のレーザースキャン装置による第1のレーザースキャンと、前記重機による作業が行なわれた範囲に対する前記第1のレーザースキャン装置による第2のレーザースキャンとを行い、前記第1のレーザースキャン装置による前記第1のレースキャンが行われているタイミングで前記第1のレーザースキャン装置とは異なる第2のレーザースキャン装置による前記重機による作業が行なわれた範囲に対するレーザースキャンが行われる。
【0067】
あるいは、前記第1のレーザースキャン装置による前記重機による作業が行なわれた範囲に対するレーザースキャンが行われているタイミングで前記第1のレーザースキャン装置とは異なる第2のレーザースキャン装置による前記重機の刃先に対するレーザースキャンが行われる。本実施形態の方法によれば、各スキャンの未実施期間を減らすことができる。
【符号の説明】
【0068】
100…データ処理装置、200…重機、201…刃先、300天…レーザースキャン装置。