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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149861
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】圧延接合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20231005BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B23K20/04 A
B23K20/04 D
B32B15/01 G
B32B15/01 H
H01L21/60 321E
H01L21/60 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058644
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貞木 功太
(72)【発明者】
【氏名】黒川 哲平
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 由和
【テーマコード(参考)】
4E167
4F100
5F044
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA29
4E167BC03
4E167BC12
4E167CC01
4E167DB11
4F100AB10A
4F100AB17B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD07A
4F100EJ15A
4F100EJ15B
4F100EJ42
4F100JK06
4F100JK12A
4F100JK12B
4F100JK14A
4F100YY00A
4F100YY00B
5F044FF05
5F044FF06
5F044FF10
(57)【要約】
【課題】本発明は、高いピール強度と、ボンディングや曲げ加工に対する高い耐性とを両立した圧延接合体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体であって、前記アルミニウム層と前記銅層の界面に、アルミニウム及び銅を含む金属間化合物を有さず、且つピール強度が10N/cm超である圧延接合体、並びにその製造方法に関する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体であって、前記アルミニウム層と前記銅層の界面に、アルミニウム及び銅を含む金属間化合物を有さず、且つピール強度が10N/cm超である、圧延接合体。
【請求項2】
前記アルミニウム層の硬度HVが40以下である、請求項1に記載の圧延接合体。
【請求項3】
前記アルミニウム層の表面粗さRzが0.5μm以下である、請求項1又は2に記載の圧延接合体。
【請求項4】
アルミニウムが、JISに規定の1000系の純アルミニウムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧延接合体。
【請求項5】
前記銅層の硬度HVが130以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧延接合体。
【請求項6】
銅が、JISに規定の1000系の純銅である、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧延接合体。
【請求項7】
前記銅層の硬度と前記アルミニウム層の硬度の比(銅層の硬度/アルミニウム層の硬度)が、1.0~5.0である、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧延接合体。
【請求項8】
ワイヤ形状又はリボン形状である、請求項1~7のいずれか1項に記載の圧延接合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の圧延接合体の製造方法であって、
アルミニウム板をスパッタエッチングする工程と、
銅板をスパッタエッチングする工程と、
前記アルミニウム板と前記銅板のスパッタエッチングした表面同士を、圧延接合体の圧下率が3%以上となるように圧接して接合する工程と
を含み、
前記接合する工程の後に、熱処理を行わないか、又は250℃未満の熱処理を行う、圧延接合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の圧延接合体からなるボンディングワイヤ又はボンディングリボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、産業機器、家電や情報端末などの様々な製品に用いられている。パワーモジュール用のボンディングワイヤやボンディングリボンには種々の金属材料が用いられている。このような金属材料として、2種類以上の金属板又は金属箔を積層した圧延接合体(金属積層材、クラッド材とも呼ばれる)が知られている。圧延接合体は、単独の材料では得られない複合特性を有する高機能性金属材料であり、例えば、アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体が検討されている(特許文献1~5)。
【0003】
パワーモジュール用のボンディングワイヤやボンディングリボンに用いられる圧延接合体には、パワーモジュールの用途に応じて様々な特性が求められ、例えば、高いピール強度(接合強度とも呼ばれる)を有することや、ボンディングや曲げ加工に対する耐性が高いことが求められる。従来のアルミニウム層と銅層からなる圧延接合体においては、圧延接合体のピール強度を十分に高くするためには、通常、一定の温度以上の熱処理が必要であった。しかし、この熱処理により、アルミニウム層と銅層の界面にこれらの金属を含む金属間化合物が生成してしまう。圧延接合体の界面に金属間化合物が存在すると、ピール強度の低下につながり、また、ボンディングや曲げ加工時に亀裂や剥離が発生するなどの悪影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-227241号公報
【特許文献2】国際公開第2011/155379号
【特許文献3】特開2015-226928号公報
【特許文献4】国際公開第2016/63744号
【特許文献5】特開2003-80621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、従来のアルミニウム層と銅層からなる圧延接合体においては、高いピール強度を有しつつ、ボンディングや曲げ加工に対して高い耐性を有することが難しいことがあった。そこで本発明は、高いピール強度と、ボンディングや曲げ加工に対する高い耐性とを両立した圧延接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、熱処理を制御した表面活性化接合法により圧延接合体を製造することにより、圧延接合体において、高いピール強度と、ボンディングや曲げ加工に対する高い耐性とを両立できることを見出し、発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体であって、前記アルミニウム層と前記銅層の界面に、アルミニウム及び銅を含む金属間化合物を有さず、且つピール強度が10N/cm超である、圧延接合体。
(2)前記アルミニウム層の硬度HVが40以下である、前記(1)に記載の圧延接合体。
(3)前記アルミニウム層の表面粗さRzが0.5μm以下である、前記(1)又は(2)に記載の圧延接合体。
(4)アルミニウムが、JISに規定の1000系の純アルミニウムである、前記(1)~(3)のいずれかに記載の圧延接合体。
(5)前記銅層の硬度HVが130以下である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の圧延接合体。
(6)銅が、JISに規定の1000系の純銅である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の圧延接合体。
(7)前記銅層の硬度と前記アルミニウム層の硬度の比(銅層の硬度/アルミニウム層の硬度)が、1.0~5.0である、前記(1)~(6)のいずれかに記載の圧延接合体。
(8)ワイヤ形状又はリボン形状である、前記(1)~(7)のいずれかに記載の圧延接合体。
(9)前記(1)~(8)のいずれかに記載の圧延接合体の製造方法であって、
アルミニウム板をスパッタエッチングする工程と、
銅板をスパッタエッチングする工程と、
前記アルミニウム板と前記銅板のスパッタエッチングした表面同士を、圧延接合体の圧下率が3%以上となるように圧接して接合する工程とを含み、前記接合する工程の後に、熱処理を行わないか、又は250℃未満の熱処理を行う、圧延接合体の製造方法。
(10)前記(1)~(8)のいずれかに記載の圧延接合体からなるボンディングワイヤ又はボンディングリボン。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高いピール強度と、ボンディングや曲げ加工に対する高い耐性とを両立した圧延接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1-1】図1A~Dは、実施例における金属間化合物の有無の確認の結果を示す。図1Aは、実施例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。図1Bは、実施例2の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。
図1-2】図1A~Dは、実施例における金属間化合物の有無の確認の結果を示す。図1Cは、比較例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。図1Dは、比較例4の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。
図2図2A~Cは、実施例における曲げ曲げ戻しによる亀裂の有無の確認の結果を示す。図2Aは、実施例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。図2Bは、実施例2の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。図2Cは、比較例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、アルミニウム層と銅層の2層構造を有する圧延接合体に関し、すなわち、アルミニウム層と銅層が直接積層した、アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体に関する。
【0011】
アルミニウム層に用いられるアルミニウムは、純アルミニウム又はアルミニウム合金のいずれでもよいが、ボンディングワイヤ又はボンディングリボン等に用いた際における曲げ性や導電性の観点から、純アルミニウムが好ましい。
【0012】
純アルミニウムは、純度が、通常99.0質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上である。純アルミニウム中のアルミニウム以外の添加金属元素の合計含有量は、通常1.0質量%以下であり、好ましくは0.7質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.3質量%以下である。純アルミニウムとしては、例えば、JIS(JIS-H4000)に規定の1000系の純アルミニウムを用いることができ、A1100、A1N30、A1050、A1085、A1N99が好ましい。
【0013】
アルミニウム合金としては、アルミニウム以外の金属元素の合計含有量が1質量%超のものを用いることができ、例えば、Mg、Mn、Si及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有するものを用いることができる。
【0014】
アルミニウム合金としては、例えば、JISに規定のAl-Cu系合金(2000系)、Al-Mn系合金(3000系)、Al-Si系合金(4000系)、Al-Mg系合金(5000系)、Al-Mg-Si系合金(6000系)及びAl-Zn-Mg系合金(7000系)を用いることができ、プレス成形性、強度、耐食性の観点から3000系、5000系、6000系及び7000系のアルミニウム合金が好ましく、特に強度や導電性の観点から3000系のアルミニウム合金がより好ましい。
【0015】
アルミニウム層の厚みは、通常0.01mm以上であれば適用可能であり、圧延接合体の加工性及びハンドリングの観点から、下限は好ましくは0.03mm以上であり、さらに強度を必要とする場合には0.05mm以上がより好ましい。アルミニウム層の厚みは、軽量化やコストの観点から好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.3mm以下である。アルミニウム層の厚みは、好ましくは0.01mm~1.0mmであり、より好ましくは0.01mm~0.5mmであり、特に好ましくは0.03mm~0.3mmである。アルミニウム層の厚みは、圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点におけるアルミニウム層の厚みを計測し、得られた測定値の平均値をいう。
【0016】
アルミニウム層の硬度HVは、特に制限されないが、通常80以下であり、曲げ性の観点から、好ましくは60以下であり、より好ましくは40以下であり、特に好ましくは30以下である。特に、アルミニウム層の硬度HVを30以下の軟質とすることで、圧延接合体を例えばパワーモジュール用のボンディングワイヤやボンディングリボンに用いる場合に、半導体チップへの超音波接合時の荷重を低くすることができるため、半導体チップへのダメージを低減することができる。アルミニウム層の硬度HVの下限は、特に制限されないが、通常10以上であり、強度やハンドリング性の観点から、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、特に好ましくは25以上である。アルミニウム層の硬度HVは、好ましくは15~60であり、より好ましくは15~40であり、特に好ましくは15~30である。アルミニウム層の硬度は、マイクロビッカース硬度計(荷重50gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験-試験方法)に準じて測定することができる。
【0017】
アルミニウム層の表面粗さRaは、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、特に好ましくは0.05μm以下である。表面粗さRaは、SURFCOM 1400D-3DF(株式会社東京精密製)にてJIS-B0601-1994に準拠して測定することができる。
【0018】
アルミニウム層の表面粗さRzは、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.2μm以下であり、特に好ましくは0.1μm以下である。表面粗さRzは、SURFCOM 1400D-3DF(株式会社東京精密製)にてJIS-B0601-1994に準拠して測定することができる。
【0019】
アルミニウム層の表面粗さRa及び/又はRzを上記範囲とすることにより、圧延接合体を例えばパワーモジュール用のボンディングワイヤやボンディングリボンに用いる場合に、半導体チップへの超音波接合時の密着性が優れるため好ましい。
【0020】
銅層に用いられる銅は、純銅又は銅合金のいずれでもよいが、ボンディングワイヤ又はボンディングリボン等に用いた際における曲げ性や導電性の観点から、純銅が好ましい。
【0021】
純銅は、純度が、通常99.0質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上であり、より好ましく99.9質量%以上である。純銅中の銅以外の添加金属元素の合計含有量は、通常1.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。純銅としては、例えば、JISに規定の1000系の純銅を用いることができ、具体的には、JISに規定のJIS-H3510(C1011)、JIS-H3100(C1020)に規格される無酸素銅、及びJIS-H3100(C1100)に規格されるタフピッチ銅を用いることができる。
【0022】
銅合金としては、銅以外の金属元素の合計含有量が1質量%超のものを用いることができ、例えば、銅以外の金属元素として、Sn、Mn、Cr、Zn、Zr、Ni、Si、Mg及びAgから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有するものを用いることができる。
【0023】
銅層の厚みは、通常0.01mm以上であれば適用可能であり、圧延接合体の加工性及びハンドリングの観点から、下限は好ましくは、0.03mm以上、さらに強度を必要とする場合には0.05mm以上がより好ましい。銅層の厚みは、軽量化やコストの観点から好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.3mm以下である。銅層の厚みは、好ましくは0.01mm~1.0mmであり、より好ましくは0.01mm~0.5mmであり、特に好ましくは0.03mm~0.3mmである。銅層の厚みは、前記のアルミニウム層と同様にして測定できる。
【0024】
銅層の硬度HVは、特に制限されないが、通常150以下であり、曲げ性の観点から、好ましくは140以下であり、より好ましくは130以下である。なお圧延接合体をリード線などの柔軟性が求められるものに使用する場合、銅層の硬度HVは、好ましくは85以下であり、より好ましくは70以下であり、特に好ましくは65以下である。特に、銅層の硬度HVを65以下の軟質とすると、上述したアルミニウム層と同様に、半導体チップへの超音波接合時の荷重を低くすることができるため、半導体チップへのダメージを低減することができる。銅層の硬度HVの下限は、特に制限されないが、強度やハンドリング性の観点から、好ましくは40以上であり、より好ましくは50以上であり、特に好ましくは60以上である。銅層の硬度HVは、好ましくは40~140であり、より好ましくは40~130であり、特に好ましくは40~85である。銅層の硬度は、前記のアルミニウム層と同様にして測定できる。
【0025】
銅層の硬度とアルミニウム層の硬度の比(銅層の硬度/アルミニウム層の硬度)(以下、硬度比とも記載する)は、1に近いほど、曲げ加工の際により過酷な条件に耐え得るため、好ましい。銅層の硬度とアルミニウム層の硬度の比は、好ましくは1.0~5.0であり、より好ましくは1.0~4.0であり、特に好ましくは1.5~3.5である。硬度比がこの範囲内であると、銅層とアルミニウム層の硬度のバランスが取れ、曲げ加工の際により過酷な条件においても亀裂の発生及び亀裂伝播を抑制することができる。本発明の圧延接合体は、界面に金属間化合物を有さず、曲げ加工に対する耐性が高いため、前記のように硬度比を制御することで、より過酷な条件の曲げ加工にも耐え得る。一方、界面に金属間化合物を有する圧延接合体では、硬度比が例えば1.0~2.0と1に近い場合であっても、早期に亀裂が発生し、亀裂伝播が起こり破断してしまい、より過酷な条件の曲げ加工に対する耐性が低い。
【0026】
銅層の表面粗さRaは、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、特に好ましくは0.05μm以下である。銅層の表面粗さRaは、前記のアルミニウム層と同様にして測定できる。
【0027】
銅層の表面粗さRzは、特に制限されないが、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.2μm以下であり、特に好ましくは0.1μm以下である。銅層の表面粗さRzは、前記のアルミニウム層と同様にして測定できる。
【0028】
なお、銅層の表面粗さRa及び/又はRzを上記範囲とすることにより、上述したアルミニウム層と同様に、半導体チップへの超音波接合時の密着性が優れるため好ましい。
【0029】
本発明の圧延接合体は、アルミニウム層と銅層からなる2層材である。本発明の圧延接合体は、アルミニウム層と銅層が直接積層した、アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体である。本発明の圧延接合体は、アルミニウム層と銅層の間に他の層(例えば、めっき層など)を有さない。
【0030】
本発明の圧延接合体は、アルミニウム層と銅層の界面に金属間化合物を有さないことを特徴とする。本発明において、金属間化合物とは、アルミニウム及び銅を含む金属間化合物をいう。アルミニウム層と銅層の界面に金属間化合物が存在しないことにより、ボンディングや曲げ加工に対する耐性が高くなる。本発明において、「界面に金属間化合物を有さない」とは、界面を100倍~10000倍(例えば、2000倍)で観察することにより、界面の生成物の有無の確認が可能であり、界面に厚み0.1μm以上の生成物の形成がない状態をいう。
【0031】
本発明の圧延接合体は、ピール強度が10N/cm超である。圧延接合体のピール強度が10N/cm超であると、アルミニウム層と銅層が十分に高い密着力を有し、ボンディングや曲げ加工時に層が剥離することなく圧延接合体を使用することができる。圧延接合体のピール強度は、好ましくは15N/cm以上であり、より好ましくは20N/cm以上であり、さらに好ましくは25N/cm以上であり、特に好ましくは30N/cm以上である。
【0032】
本発明において、圧延接合体のピール強度は、圧延接合体から幅20mmの試験片を作製し、アルミニウム層と銅層を一部剥離後、厚膜層側又は硬質層側を固定し、他方の層を固定側と180°反対側へ引っ張った際に引きはがすのに要する力を測定し、単位としてN/cmを用いた。なお、同様の試験において、試験片の幅が10mm~30mmの間であれば、ピール強度は変化しない。
【0033】
本発明の圧延接合体の厚みは、特に限定されずに、通常0.015mm~1.0mmであり、上限は、好ましくは0.8mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.3mm以下である。下限は、好ましくは0.02mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上である。圧延接合体の厚みは、好ましくは0.02mm~0.8mmであり、特に好ましくは0.05mm~0.3mmである。圧延接合体の厚みとは、アルミニウム層と銅層の総厚みをいう。圧延接合体の厚みは、圧延接合体上の任意の10点における厚みをマイクロメータなどで測定し、得られた測定値の平均値をいう。
【0034】
本発明の圧延接合体の形状としては、特に限定されずに、例えば、板、箔、テープ、リボン、ワイヤ、リング及びコイルなどの形状が挙げられる。本発明の圧延接合体は、高いピール強度及びボンディングや曲げ加工に対する高い耐性を有し、ワイヤ及びリボンの形状が好ましい。
【0035】
本発明は、前記の圧延接合体の製造方法も含む。本発明では、圧延接合体は表面活性化接合法により製造される。具体的には、本発明の圧延接合体は、アルミニウム板をスパッタエッチングする工程と、銅板をスパッタエッチングする工程と、アルミニウム板と銅板のスパッタエッチングした表面同士を、圧延接合体の圧下率が3%以上となるように圧接して接合する工程とを含み、接合する工程の後に、熱処理を行わないか、又は250℃未満、好ましくは220℃以下の熱処理を行う。
【0036】
本発明の圧延接合体の製造方法において用いられるアルミニウム板は、圧延接合体のアルミニウム層について前記の純アルミニウム又はアルミニウム合金の板材である。
【0037】
アルミニウム板の厚みは、通常0.01mm以上であれば適用可能であり、圧延接合体の加工性及びハンドリングの観点から、下限は好ましくは0.03mm以上であり、さらに強度を必要とする場合には0.05mm以上がより好ましい。アルミニウム板の厚みは、軽量化やコストの観点から好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.3mm以下である。アルミニウム板の厚みは、好ましくは0.01mm~1.0mmであり、より好ましくは0.01mm~0.5mmであり、特に好ましくは0.03mm~0.3mmである。アルミニウム板の厚みは、マイクロメータなどによって測定可能であり、アルミニウム板の表面上からランダムに選択した10点において測定した厚みの平均値をいう。
【0038】
アルミニウム板の硬度HVは、特に制限されないが、通常80以下であり、曲げ性の観点から、好ましくは60以下であり、より好ましくは40以下であり、特に好ましくは30以下である。表面活性化接合法では、軟質なアルミニウム板をその硬度をほぼ維持したまま積層することができる。アルミニウム板の硬度HVの下限は、特に制限されないが、通常10以上であり、強度やハンドリング性の観点から、好ましくは15以上であり、特に好ましくは20以上である。アルミニウム板の硬度HVは、好ましくは15~60であり、より好ましくは15~40である。本発明において、アルミニウム板の硬度は、前記の圧延接合体のアルミニウム層と同様にして測定できる。
【0039】
本発明の圧延接合体の製造方法において用いられる銅板は、圧延接合体の銅層について前記の純銅又は銅合金の板材である。
【0040】
銅板の厚みは、通常0.01mm以上であれば適用可能であり、圧延接合体の加工性及びハンドリングの観点から、下限は好ましくは、0.03mm以上であり、さらに強度を必要とする場合には0.05mm以上がより好ましい。銅板の厚みは、軽量化やコストの観点から好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、特に好ましくは0.3mm以下である。銅板の厚みは、好ましくは0.01mm~1.0mmであり、より好ましくは0.01mm~0.5mmであり、特に好ましくは0.03mm~0.3mmである。銅板の厚みは、前記のアルミニウム板と同様にして測定できる。
【0041】
銅板の硬度HVは、特に制限されないが、通常150以下であり、曲げ性の観点から、好ましくは140以下であり、特に好ましくは130以下である。銅板の硬度HVの下限は、特に制限されないが、強度やハンドリング性の観点から、好ましくは40以上であり、より好ましくは50以上であり、特に好ましくは60以上である。銅板の硬度HVは、好ましくは40~140であり、より好ましくは40~130である。本発明において、銅板の硬度は、前記の圧延接合体のアルミニウム層と同様にして測定できる。
【0042】
本発明の製造方法において、まず、アルミニウム板及び銅板をそれぞれスパッタエッチングする(スパッタエッチング処理工程)。
【0043】
スパッタエッチング処理は、具体的には、アルミニウム板と銅板を、幅100mm~600mmの長尺コイルとして用意し、接合面を有するアルミニウム板と銅板をそれぞれアース接地した一方の電極とし、絶縁支持された他の電極との間に1MHz~50MHzの交流を印加してグロー放電を発生させ、且つグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極の面積を前記の他の電極の面積の1/3以下として行う。スパッタエッチング処理中は、アース接地した電極が冷却ロールの形をとっており、各搬送材料の温度上昇を防いでいる。
【0044】
スパッタエッチング処理では、真空中でアルミニウム板と銅板の接合する面を不活性ガスによりスパッタすることにより、表面の吸着物を完全に除去し、且つ表面の酸化膜の一部又は全部を除去する。酸化膜は必ずしも完全に除去する必要はなく、一部残存した状態であっても十分な接合力を得ることができる。酸化膜を一部残存させることにより、完全に除去する場合に比べてスパッタエッチング処理時間を大幅に減少させ、生産性を向上させることができる。不活性ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトンなどや、これらを少なくとも1種類含む不活性ガスの混合気体を適用することができる。アルミニウム板と銅板のいずれについても、表面の吸着物は、エッチング量約1nm程度で完全に除去することができる。
【0045】
アルミニウム板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W~1kWのプラズマ出力で1~50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、真空下で、例えば100W~10kWのプラズマ出力、ライン速度1m/分~30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、例えば1×10-5Pa~10Paであればよい。スパッタエッチング処理において、アルミニウム板の温度は、好ましくは常温~150℃に保たれる。なお、本発明において、常温とは15℃~25℃をいう。
【0046】
銅板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W~1kWのプラズマ出力で1~50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、100W~10kWのプラズマ出力、ライン速度1m/分~30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、1×10-5Pa~10Paであればよい。スパッタエッチング処理において、銅板の温度は、好ましくは常温~150℃に保たれる。
【0047】
次に、以上のようにしてスパッタエッチングしたアルミニウム板と銅板のスパッタエッチングした表面(接合面)同士を、圧延接合体の圧下率が3%以上となるように、例えばロール圧接により圧接して、アルミニウム板と銅板を接合する(接合工程)。
【0048】
圧延接合体の圧下率は、3%以上であり、好ましくは4%以上であり、より好ましくは4.5%以上であり、特に好ましくは5%以上である。圧延接合体の圧下率が3%以上であると、十分に高いピール強度を有する圧延接合体を得ることができる。圧延接合体の圧下率の上限は、通常10%以下であり、形状制御や硬度等の観点から、好ましくは8%以下であり、特に好ましくは6%以下である。圧延接合体の圧下率は、好ましくは3%~10%であり、より好ましくは3%~8%であり、特に好ましくは3%~6%である。圧延接合体の圧下率は、接合前のアルミニウム板及び銅板の総厚みと、最終的な圧延接合体の厚みから、以下の式:(接合前のアルミニウム板及び銅板の総厚み-最終的な圧延接合体の厚み)/接合前のアルミニウム板及び銅板の総厚み、により求められる。
【0049】
ロール圧接の圧延線荷重は、特に限定されずに、圧延接合体の所定の圧下率を達成するように設定し、例えば、0.1tf/cm~10.0tf/cmの範囲に設定することができる。例えば圧接ロールのロール直径が300mm~400mmのとき、ロール圧接の圧延線荷重は、好ましくは0.1tf/cm~3.0tf/cmであり、より好ましくは0.3tf/cm~3.0tf/cmであり、特に好ましくは0.3tf/cm~1.8tf/cmである。ただし、ロール直径が大きくなった場合や接合前のアルミニウム板や銅板の厚みが厚い場合などには、所定の圧下率を達成するための圧力確保のために圧延線荷重を高くすることが必要になる場合があり、この数値範囲に限定されるものではない。
【0050】
接合時の温度は、特に限定されずに、例えば常温~150℃である。
【0051】
接合は、アルミニウム板と銅板の表面への酸素の再吸着によって両者間の接合強度が低下するのを防止するため、非酸化雰囲気中、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0052】
本発明の製造方法においては、以上のようにしてアルミニウム板と銅板を接合して得た圧延接合体について、熱処理を行わないか、又は熱処理を行う場合、250℃未満で、好ましくは220℃以下で熱処理を行う。このように熱処理を制御することにより、金属間化合物の生成を抑制することができるため、圧延接合体が、高いピール強度及びボンディングや曲げ加工に対する高い耐性を有する。熱処理の適用の要否は圧延接合体の用途に応じて選択することができ、例えば、220℃以下の熱処理を行うと、圧延接合体のピール強度をより高めることができ、また、銅層を軟化させることができる。特に、銅層を軟化させることにより、アルミニウム層と銅層の硬度比を上述した範囲に制御することが可能であり、例えば、リード線などの柔軟性を求められる用途に好適に用いることができる。
【0053】
熱処理を行う場合、熱処理温度は、250℃未満であり、好ましくは220℃以下である。熱処理温度を220℃以下とすることにより、金属間化合物の生成を抑制することができる。熱処理温度の下限は、十分に高いピール強度が得られるという観点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。熱処理温度は、好ましくは100℃~220℃であり、より好ましくは150℃~220℃である。
【0054】
熱処理時間は、熱処理温度や熱処理を行う圧延接合体のサイズに応じて、金属間化合物が生成しないようにして適宜設定することができる。熱処理時間は、例えば0.5時間~8時間であり、好ましくは0.5時間~5時間であり、特に好ましくは0.5時間~3時間である。なお、金属間化合物が生成しなければ8時間以上の熱処理を行っても問題ない。なお、熱処理時間とは、熱処理を行う圧延接合体が所定の温度になってからの時間をいい、圧延接合体の昇温時間は含まない。熱処理時間は、例えば、熱処理温度が150℃の場合、通常0.5時間~8時間であり、熱処理温度が200℃の場合、通常0.5時間~5時間であり、熱処理温度が220℃の場合、通常0.5時間~3時間である。
【0055】
本発明の圧延接合体は、界面に金属間化合物を有さず、且つ十分に高いピール強度を有するため、ボンディングや曲げ加工に対する高い耐性を有し、より過酷な条件の曲げ加工においても亀裂や剥離の発生を抑制することができ、ボンディングワイヤ、ボンディングリボン及びリード線などに好適に用いることができる。よって、本発明は、前記の圧延接合体からなるボンディングワイヤ、ボンディングリボン及びリード線も含む。本発明のボンディングワイヤ、ボンディングリボン及びリード線は、例えばパワーモジュールに用いることができる。
【実施例0056】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1
アルミニウム板として、硬度HVが24.5であるA1N30(厚み0.05mm)を用い、銅板として、硬度HVが122.5であるC1020(厚み0.15mm)を用いて、以下のようにして、表面活性化接合法によりアルミニウム板と銅板を接合して、アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体を製造した。
【0058】
A1N30及びC1020の接合する各々の面に対してスパッタエッチング処理を実施した。A1N30についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.2Pa下で、プラズマ出力300W、1分間の条件にて実施し、C1020についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.2Pa下で、プラズマ出力600W、1分間の条件にて実施した。
【0059】
スパッタエッチング処理後のA1N30とC1020を、常温で、圧延ロール径300mm~400mm、圧延線荷重0.9tf/cm~1.8tf/cmの加圧力で、ロール圧接により接合し、アルミニウム層と銅層からなる圧延接合体を得た。圧延接合体の圧下率は5%であった。
【0060】
実施例2
実施例1と同様にして製造した圧延接合体に対し、220℃、1時間の条件で熱処理を行い、実施例2の圧延接合体を製造した。
【0061】
実施例3
アルミニウム板として、硬度HVが23.6であるA1050(厚み0.1mm)を用い、銅板として、硬度HVが123.5であるC1020(厚み0.1mm)を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の圧延接合体を製造した。圧延接合体の圧下率は3%であった。
【0062】
実施例4
アルミニウム板として、硬度HVが34.5であるA1050(厚み0.1mm)を用いた以外は実施例3と同様にして実施例4の圧延接合体を製造した。圧延接合体の圧下率は3%であった。
【0063】
比較例1
熱処理条件を400℃、3時間に変えた以外は実施例2と同様にして比較例1の圧延接合体を製造した。
【0064】
比較例2
実施例4と同様にして製造した圧延接合体に対し、350℃、1時間の条件で熱処理を行い、比較例2の圧延接合体を製造した。
【0065】
比較例3
接合時の加圧力を変えて圧延接合体の圧下率を2.5%とした以外は実施例4と同様にして、比較例3の圧延接合体を製造した。
【0066】
比較例4
熱処理条件を250℃、1時間に変えた以外は実施例2と同様にして比較例4の圧延接合体を製造した。
【0067】
実施例1~4及び比較例1~4の圧延接合体について、以下の特性を測定した。
【0068】
[硬度]
マイクロビッカース硬度計を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験-試験方法)に準じて測定した。
【0069】
[表面粗さRa、Rz]
圧延接合体のアルミニウム層及び銅層の表面を三次元表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密製SURFCOM 1400D-3DF)を用い、JIS-B0601-1994に準拠して、表面粗さRa及びRzを測定した。
【0070】
[ピール強度]
圧延接合体から幅20mmの試験片を作製し、アルミニウム層と銅層を一部剥離後、銅層側を固定し、アルミニウム層を銅層側と180°反対側へ、引張速度20mm/分にて引っ張った際に引きはがすのに要する力(単位:N/cm)を、テンシロン万能材料試験機 RTC-1350A(株式会社オリエンテック製)を用いて測定した。
【0071】
[金属間化合物の有無の確認]
圧延接合体をクロスセクションポリッシャ(CP)断面加工した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で断面を観察し、金属間化合物の有無を確認した。表1において、アルミニウム層と銅層の界面に厚み0.1μm以上の金属間化合物がある場合を「有」と記載し、0.1μm以上の金属間化合物がない場合を「無」と記載した。
【0072】
[曲げ曲げ戻しによる亀裂の有無の確認]
圧延接合体から縦50mm×横10mmの試験片を作製し、次いで得られた試験片をバイスに挟み固定した後、90°に曲げて戻す曲げ曲げ戻し加工を行った。加工後の圧延接合体の断面を手動で研磨した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて2000倍で断面を観察し、亀裂の有無を確認した。表1において、亀裂がある場合を「有」と記載し、亀裂がない場合を「無」と記載した。
【0073】
[折り曲げ剥離試験]
圧延接合体から縦50mm×横10mmの試験片を作製し、折り曲げ試験機で90°折り曲げ、次いで反対側へ同様に90°折り曲げる工程を試験片が破断するまで繰り返し、試験片の破断後の層の剥離の有無を確認した。表1において、剥離がある場合を「有」と記載し、剥離がない場合を「無」と記載した。また、表2に、試験片が破断するまでの折り曲げの回数を示した。
【0074】
実施例1~4及び比較例1~4の圧延接合体について、原板の特性及び圧延接合体の評価結果を以下の表1に示す。また、図1A~Dに、金属間化合物の有無の確認の結果を示す。図1Aは、実施例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)であり、図1Bは、実施例2の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)であり、図1Cは、比較例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)であり、図1Dは、比較例4の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。また、図2A~Cに、曲げ曲げ戻しによる亀裂の有無の確認の結果を示す。図2Aは、実施例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)であり、図2Bは、実施例2の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)であり、図2Cは、比較例1の圧延接合体の断面のSEM像(2000倍)である。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示されるように、実施例1~4の圧延接合体は、界面に金属間化合物を有さず、且つピール強度が10N/cm超であり、曲げ曲げ戻し加工及び折り曲げ加工に対する高い耐性を示した。実施例1、2と比較例1、4の比較により、250℃以上の温度で熱処理を行うと、界面に金属間化合物が生成し(図1A~D参照)、曲げ曲げ戻し加工において界面に亀裂が発生し(図2A~C参照)、折り曲げ加工において剥離が発生し、曲げ曲げ戻し加工及び折り曲げ加工に対する耐性が低下したことが示された。また、別のアルミニウムを用いた場合について、実施例4と比較例2の比較により、350℃の熱処理を行うと金属間化合物が生成し、曲げ曲げ戻し加工及び折り曲げ加工に対する耐性が低下したことが示され、実施例4と比較例3の比較により、圧延接合体の圧下率が低いと十分に高いピール強度が得られないことが示された。
【0077】
実施例1~4及び比較例1の圧延接合体について、圧延接合体の各層の硬度及び硬度比、並びに折り曲げ剥離試験において試験片が破断するまでの折り曲げ回数を以下の表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示されるように、界面に金属間化合物を有さない実施例1~4の圧延接合体では、銅層とアルミニウム層の硬度比(Cu層/Al層)が1に近いほど、より過酷な折り曲げ加工にも耐え得ることが示された。これは、銅層とアルミニウム層の硬度の差が大きい場合、亀裂が生じた個所を起点に亀裂が広がり易く、硬度比が1に近いほど、2つの層の硬度のバランスが取れ、亀裂の広がりを抑制することができるためであると考えられる。一方、界面に金属間化合物を有する比較例1の圧延接合体では、硬度比は1に近いものの、実施例1~4の圧延接合体よりも早期に破断した。これは、比較例1の圧延接合体は、界面に金属間化合物を有するため、早期に亀裂が発生し、そこからアルミニウム層及び銅層に亀裂伝播して破断に至るためであると考えられる。また、表2に示されるように、実施例2の圧延接合体は、220℃での熱処理により、熱処理なしの実施例1と比較して、アルミニウム層の硬度は同程度で銅層の硬度が大幅に低下していた。
図1-1】
図1-2】
図2