(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149862
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E02F9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058645
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 久雄
(72)【発明者】
【氏名】花田 英一
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌史
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA03
(57)【要約】
【課題】支柱の強度を確保しつつも、架台の天板上の限られたスペースを最大限に確保して、大きな排気ガス後処理装置を載置できるようにする。
【解決手段】エンジンが搭載される旋回フレーム16と、旋回フレームに固定される架台50と、架台に支持される排気ガス後処理装置40と、排気ガス後処理装置の上部を覆うマフラーカバー31と、を備え、架台50が、排気ガス後処理装置を載置する天板51と、平面視で天板の外側へオフセットさせた支柱取付部52cを有するオフセットブラケット52と、支柱取付部に取り付けられ、マフラーカバーを支持する支柱60と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが搭載される旋回フレームと、
前記旋回フレームに固定される架台と、
前記架台に支持される排気ガス後処理装置と、
前記排気ガス後処理装置の上部を覆うマフラーカバーと、を備え、
前記架台が、
前記排気ガス後処理装置を載置する天板と、
平面視で前記天板の外側へオフセットさせた支柱取付部を有するオフセットブラケットと、
前記支柱取付部に取り付けられ、前記マフラーカバーを支持する支柱と、を有することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記架台は、前記天板から前記旋回フレームへ向かって伸長する架台脚を有し、前記架台脚の上部に前記オフセットブラケットが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記エンジンと前記排気ガス後処理装置は、前記旋回フレームの左右方向に並んで配置され、
前記架台は、複数の前記架台脚を有し、
前記オフセットブラケットは、複数の前記架台脚のうち、前記エンジンと隣接する側の前記架台脚に固定され、前記架台脚から前記エンジン側へ延びることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記排気ガス後処理装置が、前記旋回フレームの前後方向に対して斜めに配置され、
前記オフセットブラケットは、前記エンジンと隣接する側の前記架台脚のうち、前記排気ガス後処理装置との距離が近い前記架台脚に固定されることを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記オフセットブラケットが、前記架台脚へ固定される架台取付部と、前記支柱が固定される前記支柱取付部を有する支柱支持部と、を有し、前記架台取付部と前記支柱支持部とで断面視L字状に形成されるとともに、前記架台取付部及び前記支柱支持部の間に架設された補強板を有することを特徴とする請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記エンジンの上部を覆うエンジンカバーと前記マフラーカバーが、前記旋回フレームの左右方向に隣接して配置され、前記支柱が、前記エンジンカバーと前記マフラーカバーとの間に立設することを特徴とする請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記旋回フレームの前後方向に延びる梁材が、前記支柱の上端に固定され、
前記梁材が、前記排気ガス後処理装置との干渉を回避するように切り欠いて形成された干渉回避部を有することを特徴とする請求項6に記載の建設機械。
【請求項8】
前記梁材は、前記エンジン及び前記排気ガス後処理装置が収容される機械室の前端部及び後端部に架設され、前記支柱は、前記梁材の後端部を支持することを特徴とする請求項7に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とを備え、上部旋回体の旋回フレームに、エンジン、油圧ポンプ、排気ガス後処理装置等が収容される機械室が設けられた建設機械が知られている。
【0003】
特許文献1には、機械室の上部を覆う開閉カバーを支持するカバー支持枠が、複数の梁材と複数の支持脚を含む骨組み構造をなし、支持脚が旋回フレームから上方に延びる構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、旋回フレームの上に立設された車体フレームが、複数の梁材と複数の柱部材を含み、柱部材が旋回フレームから上方に延びるように配置された構造が開示されている。
【0005】
機械室の上面を覆うカバーを支持する支柱の構成としては、これらの従来技術のように、上部旋回体の旋回フレームに支柱を立設させる構成や、排気ガス後処理装置を載置する架台の天板へ支柱を立設させる構成があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-114963号公報
【特許文献2】特許第5382669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排気ガス後処理装置の架台の天板へ支柱を立設する構成は、旋回フレームから支柱を立設させる構成よりも支柱を短くすることができるため、曲げモーメントを低減して支柱の強度を確保できるとともに、組立性に優れている。しかしながら、このような構成では、排気ガス後処理装置が大型化した場合、天板上の支柱が邪魔になり、載置可能な排気ガス後処理装置の大きさが制限されてしまう。そこで排気ガス後処理装置を載置するスペースを広げるために天板を拡大させることが考えられるが、架台の寸法が大きくなると、コストがかかることや、クレーン等で吊り上げた排気ガス後処理装置及び架台を設置し難くなるといった問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械室のカバーを支持する支柱の配置を工夫することで、その強度を確保しつつも、架台の天板上の限られたスペースを最大限に確保して、大きな排気ガス後処理装置を載置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る建設機械は、支柱を天板からオフセットさせるためのオフセットブラケットを含むものとした。
【0010】
具体的に、第1の発明は、
エンジンが搭載される旋回フレームと、
前記旋回フレームに固定される架台と、
前記架台に支持される排気ガス後処理装置と、
前記排気ガス後処理装置の上部を覆うマフラーカバーと、を備え、
前記架台が、
前記排気ガス後処理装置を載置する天板と、
平面視で前記天板の外側へオフセットさせた支柱取付部を有するオフセットブラケットと、
前記支柱取付部に取り付けられ、前記マフラーカバーを支持する支柱と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
上記の構成によると、オフセットブラケットにより、支柱を天板からオフセットさせることで、支柱の強度を確保するとともに、天板上の限られたスペースを広く確保することができる。これにより、レイアウトの自由度が高まるため、従来よりも大きな排気ガス後処理装置を天板上に配置することが可能となる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記架台は、前記天板から前記旋回フレームへ向かって伸長する架台脚を有し、前記架台脚の上部に前記オフセットブラケットが固定されていることを特徴とするものである。
【0013】
上記の構成によると、オフセットブラケットが架台脚の上部に固定されているため、オフセットブラケットの下方に配管やハーネス類を通すことも可能となり、下方のスペースを有効活用できる。また、オフセットブラケットへ上方からアクセスし易くなるので、メンテナンス性も向上する。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、
前記エンジンと前記排気ガス後処理装置は、前記旋回フレームの左右方向に並んで配置され、
前記架台は複数の前記架台脚を有し、
前記オフセットブラケットは、複数の前記架台脚のうち、前記エンジンと隣接する側の前記架台脚に固定され、前記架台脚から前記エンジン側へ延びることを特徴とするものである。
【0015】
上記の構成によると、エンジン周辺の空きスペースへオフセットブラケットを延ばすことで、機械室内の限られたスペースを有効活用して、支柱を排気ガス後処理装置から離れたエンジン側に立設させることができる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、
前記排気ガス後処理装置が、前記旋回フレームの前後方向に対して斜めに配置され、
前記オフセットブラケットは、前記エンジンと隣接する側の前記架台脚のうち、前記排気ガス後処理装置との距離が近い前記架台脚に固定されることを特徴とする。
【0017】
大きな排気ガス後処理装置を斜めに配置した場合、従来の天板上の位置に支柱があると、排気ガス後処理装置と干渉する懸念がある。しかしながら、上記の構成によると、オフセットブラケットにより、排気ガス後処理装置との距離が近い位置から支柱をオフセットさせ、排気ガス後処理装置と干渉しない位置に立設できるため、レイアウトの自由度が高まる。これにより、従来よりも大きな排気ガス後処理装置を天板上に斜めに配置することが可能となる。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、
前記オフセットブラケットが、前記架台脚へ固定される架台取付部と、前記支柱が固定される前記支柱取付部を有する支柱支持部と、を有し、前記架台取付部と前記支柱支持部とで断面視L字状に形成されるとともに、前記架台取付部及び前記支柱支持部の間に架設された補強板を有することを特徴とするものである。
【0019】
上記の構成によると、オフセットブラケットが補強板を有することで、マフラーカバーを支持する支柱の強度を確保することができる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、
前記エンジンの上部を覆うエンジンカバーと前記マフラーカバーが、前記旋回フレームの左右方向に隣接して配置され、前記支柱が、前記エンジンカバーと前記マフラーカバーとの間に立設することを特徴とするものである。
【0021】
上記の構成によると、オフセットブラケットによって、支柱を天板からオフセットさせ、エンジンカバーとマフラーカバーの両方をバランスよく支持することが可能な位置に立設できる。
【0022】
第7の発明は、第6の発明において、
前記旋回フレームの前後方向に延びる梁材が、前記支柱の上端に固定され、
前記排気ガス後処理装置が、前記旋回フレームの前後方向に対して斜めに配置され、
前記梁材が、前記排気ガス後処理装置との干渉を回避するように切り欠いて形成された干渉回避部を有することを特徴とするものである。
【0023】
上記の構成によると、排気ガス後処理装置を斜め配置することで従来と同じ大きさの架台に従来よりも大きな排気ガス後処理装置を天板上に配置することが可能となる。また梁材は干渉回避部によって、排気ガス後処理装置との干渉が回避できるので、排気ガス後処理装置をよりエンジンに近づけて配置することが可能となり、機能性を損なうことなく排気管のコストを抑えることができる。
【0024】
第8の発明は、第7の発明において、
前記梁材は、前記エンジン及び前記排気ガス後処理装置が収容される機械室の前端部及び後端部に架設され、前記支柱は、前記梁材の後端部を支持することを特徴とするものである。
【0025】
上記の構成によると、支柱のエンジンカバーとマフラーカバーの両方をバランスよく支持する効果を高めることができる。また、支柱は、エンジンカバーとマフラーカバーとの間の後端部に立設することで、周辺の機器と干渉せず、かつ、機械室内のスペースを有効活用することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、支柱の強度を確保しつつも、架台の天板上の限られたスペースを最大限に確保して、大きな排気ガス後処理装置を載置できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る建設機械の架台の斜視図である
【
図7】実施形態に係る建設機械のオフセットブラケットの斜視図である。
【
図8】実施形態に係る建設機械のオフセットブラケットの正面図である。
【
図9】実施形態に係る建設機械の要部を示す平面図である。
【
図10】実施形態に係る建設機械の要部を示す背面図である。
【
図11】実施形態に係る建設機械の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態に係る建設機械について、図面を参照しながら説明する。なお、いくつかの図面には上下や前後左右の方向を矢印で示しており、特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれらの矢印で示す方向に従って説明する。以下の説明では、旋回フレームの前後方向を単に「前後方向」といい、旋回フレームの前側を単に「前側」といい、旋回フレームの後側を単に「後側」というものとする。また、旋回フレームの左右方向を「左右方向」といい、左側を単に「左側」といい、右側を単に「右側」というものとする。なお、左右方向は、後側から前側を見たときの左側を左といい、右側を右という。なお、本発明において、オフセットとは、天板の位置を基準とする支柱の距離であり、オフセットさせるとは、天板と所定の距離を有するように移動させるという意味で用いる。
【0029】
図1は、実施形態に係る建設機械の一例を示す側面図であり、
図2は実施形態に係る建設機械の上部旋回体を示す斜視図である。なお、
図2における上部旋回体は、アタッチメント及びキャブが設置されていない状態である。
【0030】
図1に示すように、建設機械10は、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体12とで構成されている。
図2にも示すように、上部旋回体12は、車体フレームとしての旋回フレーム16を備えている。
【0031】
旋回フレーム16は、製缶の構造物であり、下部走行体11の上部に旋回可能に設けられ、旋回フレーム16の上面には、アタッチメント13、キャブ14、機械室15、作動油タンク17、燃料タンク18、カウンタウエイト19等が設けられている。
【0032】
アタッチメント13は、上部旋回体12の前部に設置され、ブーム13a、アーム13b及びバケット13cを有する。ブーム13a等はそれぞれ油圧制御された油圧シリンダ13dの伸縮に連動して動作し、掘削等の作業を行う。ブーム13a等の操作は、キャブ14において行われる。
【0033】
キャブ14は、例えば矩形箱形の運転室であり、アタッチメント13に隣接して上部旋回体12の前部に設置されている。キャブ14の後方には、燃料タンク18が配置され、燃料タンク18の上部にエンジンの吸気を濾過するためのエアクリーナ20が配置されている。
【0034】
燃料タンク18及びエアクリーナ20の側方には、中央足場21を挟んで対向する位置に作動油タンク17が配置されている。作動油タンク17の前方には、作業者を中央足場21へ導くための階段状の昇降ステップ22が設けられている。
【0035】
機械室15は、上部旋回体12の後部に配置され、左右方向に延びている。機械室15は、内部に排気ガス後処理装置40(
図10、11参照)や、図示しないエンジン及び油圧ポンプ等の動力機械を収容している。排気ガス後処理装置40は、エンジンへ連結され、エンジンの排気ガスを処理する装置である。
【0036】
機械室15は、前側を作動油タンク17及び燃料タンク18に覆われ、左右側方をサイドカバー23に覆われ、後側をカウンタウエイト19に覆われている。また、機械室15は、左右方向に互いに隣接して配置されたマフラーカバー31及びエンジンカバー32により上部を覆われている。エンジンと排気ガス後処理装置は、旋回フレーム16の左右方向に並んで配置される。本実施形態では、排気ガス後処理装置及び油圧ポンプが旋回フレーム16の右後端部に搭載され、その左側にエンジンが搭載される。
【0037】
図3に示すように、機械室15の、前端部及び後端部に梁材70が架設されている。梁材70の右側は、排気ガス後処理装置及び油圧ポンプが収容される空間Xであり、梁材70の左側は、エンジンが収容される空間Yである。排気ガス後処理装置及び油圧ポンプが収容される空間Xに、架台50が配置される。架台50の下方に油圧ポンプ、架台50の上方に排気ガス後処理装置が配置される。マフラーカバー31は、油圧ポンプ及び排気ガス後処理装置の上部を覆い、エンジンカバー32は、エンジンの上部を覆う。
【0038】
図3から
図5は、いずれも上部旋回体12の斜視図であるが、機械室15内の説明の便宜のため、機械室内の機器類及びカウンタウエイト19を取り外した状態で示す。
図3は、
図2からマフラーカバー31を取り外した状態であり、
図4は、
図3からエンジンカバー32、梁材70及び意匠パネル82を取り外した状態であり、
図5は、
図4から中央足場21及び後述の骨格部材81を取り外した状態である。建設機械10の定期的なメンテナンス時には、
図2から
図5の手順で部材の取り外しを行う。
【0039】
図3から
図5に示すように、旋回フレーム16は、底板16aと、上部旋回体12の左右両端において前後方向に延びる第1枠材16bと、上部旋回体12の前後両端において左右方向に延びる第2枠材16cとを有する。左右の第1枠材16bの間には、前後方向に延びる一対の縦板16dが、左右に間隔をあけて底板16aから立設している。縦板16dは上方に隆起する前部にアタッチメント13が連結される。中央足場21の後方において、縦板16dの上端には、補強用の背板16eが形成されている。背板16eの上面には、略直方体状のエンジンマウント台16gが形成されている。
【0040】
旋回フレーム16は、燃料タンク18の後方に、左側の第1枠材16bに沿って、前後方向に間隔をあけて立設する一対の側方柱材16f,16fを有する。また、旋回フレーム16は、中央足場21の後部に隣接して、マフラーカバー31とエンジンカバー32の間に立設する中間柱材16hを有する。作動油タンク17の後方には、排気ガス後処理装置40(
図10,11参照)を支持する架台50が配置される。
【0041】
機械室15は、第1枠材16b、第2枠材16c、側方柱材16f、中間柱材16h及び架台50等を骨格として、旋回フレーム16の後部に区画されている。
【0042】
図6は、架台50の斜視図である。架台50は、排気ガス後処理装置40を載置する天板51と、平面視で天板51の外側へオフセットさせた支柱取付部52cを有するオフセットブラケット52と、天板51から旋回フレーム16へ向かって伸長する複数の架台脚53a,53b,53c,53dを有する。架台50は、架台脚53a,53b,53c,53dが機械室15の右側に配設される油圧ポンプを跨ぐように旋回フレーム16に固定される。
【0043】
本実施形態では、架台50は、平面視略矩形の天板51の下面に、計4本の架台脚53a,53b,53c,53dが固定されている。天板51の右前部に固定された架台脚53a及び右後部に固定された架台脚53bは、下端が右側の第1枠材16bから延びるブラケットに固定されている。右側の架台脚53a,53bは、旋回フレーム16の左側の側方柱材16fに対応する機械室15右側の柱となる。天板51の左前部に固定された架台脚53c及び左後部に固定された架台脚53dは、右側の架台脚53a、53bよりも短く形成されている。左側の架台脚53c,53dは、エンジンマウント台16gの上面に固定されている。
【0044】
天板51の上面には、排気ガス後処理装置40を載置するための載置部材54が、右前部から左後部へ斜めに延びるように配置されている。また、天板51上面の右後部には、マフラーカバー31の右後部を支持する天板上支柱55が立設している。
【0045】
オフセットブラケット52は、複数の架台脚53a,53b,53c,53dのうち、エンジンと隣接する側の左後部の架台脚53dの上部に固定されている。エンジンと隣接する側とは、旋回フレーム16の左右方向中心側である。本実施形態において、エンジンと隣接する側の架台脚は、架台50の左側に設けられた架台脚53c,53dである。オフセットブラケット52は、マフラーカバー31を支持するための支柱60を天板51からオフセットした位置に立設させるためのブラケットである。オフセットブラケット52は、架台脚53dからエンジン側へ、換言すると、架台脚53dから旋回フレーム16の左右方向中心側に向かって延び、エンジンマウント台16gの上方に位置する。
【0046】
本実施形態では、排気ガス後処理装置40を、右前から左後に延びるように、前後方向に対して斜めに配置する。そのため、オフセットブラケット52は、エンジンと隣接する左側の架台脚53c,53dのうち、排気ガス後処理装置40との距離がより近い左後部の架台脚53dに固定されている。左後部の架台脚53dは、平面視すると排気ガス後処理装置40と重なる位置に立設している。オフセットブラケット52は、架台脚53dから左側へ延びる。オフセットブラケット52がエンジンマウント台16gの上方に位置することで、旋回フレームから支柱が立設する従来の構成よりも、エンジンマウント台16gの組立が容易となる。
【0047】
図7にオフセットブラケットの斜視図を、
図8にオフセットブラケットの正面図を示す。
図7及び8に示すように、オフセットブラケット52は、架台50と別体である。オフセットブラケット52は、平板を折り曲げたような形状であり、架台脚53dの左側面の上部にボルト止めされる架台取付部52aと、架台取付部52aの上端部から屈折して左側へ延びるように形成された支柱支持部52bとを有する。オフセットブラケット52は、架台取付部52aと支柱支持部52bとで断面視L字状に形成されている。
【0048】
本実施形態において、エンジンの後方、カウンタウエイト19の前方、且つ、排気ガス後処理装置40の左側は、従来、デッドスペースであった空間である。支柱支持部52bは、このようなデッドスペースだった後方左側へ続く空間へ向かって伸長している。支柱支持部52bの左端部の上面には、支柱60を取り付けるための支柱取付部52cが立設している。
【0049】
支柱取付部52cは、架台50の下方に設置される油圧ポンプの取付部よりも左側に位置する。また、支柱取付部52cは、天板51よりも左側に位置する。支柱取付部52c及び支柱60は平面視コ字形状に形成されている。
【0050】
オフセットブラケット52は、架台取付部52aの左側面及び支柱支持部52bの下面の間に架設された補強板52dを有する。補強板52dの下端部は、補強板52dと架台取付部52a及び支柱支持部52bとの連結部の応力を緩和するために、上方に凸の円弧形状に形成されている。支柱60は、支柱取付部52cの外側に重ねられ、下端部において2面が支柱取付部52cと締結されて、支柱支持部52bの上面に取り付けられる。
【0051】
図9は、マフラーカバー31と後述する梁材70を取り外して機械室15を示す平面図である。従来の所定サイズの天板51上に従来よりも大きな排気ガス後処理装置40を載置する場合、排気ガス後処理装置40を前後方向に対して斜めに配置することが考えられる。本実施形態においては、
図9に示すように、右前から左後へ斜め配置している。
【0052】
従来、マフラーカバーを支持するための支柱は天板上に配置され、排気ガス後処理装置をこのように斜めに配置することはできない。本実施形態では、オフセットブラケット52によって、支柱支持部52bを左側へ伸長させることで、平面視して天板51からオフセットした位置に支柱60を立設させることができる。これにより、従来デッドスペースだった左後方の空間を有効活用することが可能となるとともに、天板51上に排気ガス後処理装置40を斜めに設置しても支柱60と干渉しない。
【0053】
図10は、カウンタウエイト19を取り外して機械室15を示す背面図である。
図9に示すように、支柱60は、マフラーカバー31とエンジンカバー32との間に立設する。支柱60は、中間柱材16hと前後に対向する。
【0054】
図3、
図4及び
図10に示すように、支柱60の上部には、左右に延びる骨格部材81が連結されている。骨格部材81は、エンジンカバー32を支持する部材であり、端部を支柱60及び側方柱材16fに連結され、上部が意匠パネル82に覆われている。
【0055】
図11は、マフラーカバー31を取り外して機械室15を示す平面図である。
図3及び
図11に示すように、マフラーカバー31及びエンジンカバー32の下方に、前後方向に延びる梁材70が配置されている。梁材70は、機械室15の前端部及び後端部に架設されている。梁材70は、後側端部を支柱60の上端に固定され、前側端部を中間柱材16hの上端部に固定されている。梁材70の右側には、排気ガス後処理装置40が配置されている。エンジンは図示を省略したが、梁材70の左側は、エンジンが収容される空間Yである。梁材70は、平板状の部材であり、後部に右側から左側に向かって切り欠いて形成された干渉回避部71を有する。干渉回避部71は、天板51からはみ出す排気ガス後処理装置40の左後部との干渉を回避するように形成されている。
【0056】
以上のように構成した建設機械10は、排気ガス後処理装置40を支持する架台50がオフセットブラケット52を備えることにより、従来天板上から立設していた支柱60を天板51からオフセットさせることが可能となり、支柱60の強度を確保することができるとともに、天板51上のスペースを広く確保し、且つ、これまでデッドスペースだった天板51の左後方を有効活用することができる。限られた空間である機械室15内でレイアウトの自由度が高まるため、従来と同じサイズの天板51に従来よりも大きな排気ガス後処理装置40を配置することも可能となる。
【0057】
また、オフセットブラケット52を架台脚53dの上部に固定することで、支柱60の長さをより短くして強度を確保するとともに、オフセットブラケット52の下方に配管やハーネス類を通すことも可能となり、スペースを有効活用できる。また、メンテナンス時に上方からアクセスし易くなり、分解や再組立てが容易となる。支柱支持部52bが上方にあるため、例えば、エンジンマウントやハーネス等をメンテナンスする際に、支柱60を取り外すことなくアクセス可能となる。さらに、オフセットブラケット52は、架台50と別体とすることで、着脱可能となり、オフセットブラケット52を取り外して周辺のメンテナンスしたい部品を触ることができる。別体とすることで、組立工程のどの段階においても取付可能となり、組立性にも優れる。
【0058】
また、オフセットブラケット52は、架台取付部52aと支柱支持部52bとで断面視L字状に形成され、架台取付部52aの左側面及び支柱支持部52bの下面の間に架設された補強板52dを有することで、支柱60の強度を確保することができる。
【0059】
また、支柱60は、天板51からオフセットしてマフラーカバー31とエンジンカバー32との間に立設することで、マフラーカバー31及びエンジンカバー32をバランスよく支えることができる。
【0060】
また、排気ガス後処理装置40を斜め配置することで従来と同じ大きさの架台50に従来よりも大きな排気ガス後処理装置40を天板51上に配置することが可能となる。梁材70は干渉回避部71によって、排気ガス後処理装置40との干渉が回避できるので、排気ガス後処理装置40をよりエンジンに近づけて配置することが可能となり、機能性を損なうことなく配管のコストも抑えることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、左後部の架台脚53dにオフセットブラケット52を固定し、オフセットブラケット52を左側へ伸長させているが、この形態に限定するものではない。排気ガス後処理装置のレイアウトによって、ブラケットを固定する位置やオフセットさせる方向を適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 建設機械
15 機械室
16 旋回フレーム
31 マフラーカバー
32 エンジンカバー
40 排気ガス後処理装置
50 架台
51 天板
52 オフセットブラケット
52a 架台取付部
52b 支柱支持部
52c 支柱取付部
52d 補強板
53a,53b,53c,53d 架台脚
60 支柱
81 骨格部材
70 梁材
71 干渉回避部