(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149869
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】真空断熱パネルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20231005BHJP
C03C 3/16 20060101ALI20231005BHJP
C03C 3/21 20060101ALI20231005BHJP
F16L 59/065 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C03C27/06 101D
C03C27/06 101E
C03C3/16
C03C3/21
F16L59/065
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058655
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 竜也
(72)【発明者】
【氏名】内藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓愛
(72)【発明者】
【氏名】井関 崇
(72)【発明者】
【氏名】塩家 洋一
【テーマコード(参考)】
3H036
4G061
4G062
【Fターム(参考)】
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB33
3H036AB42
3H036AC03
3H036AE07
4G061AA02
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4G062MM08
4G062NN29
4G062NN33
(57)【要約】
【課題】基板を薄型化した場合であっても、基板に設けた排気口封止部のクラック発生を抑制し、信頼性の高い真空断熱パネルおよびその製造方法を提供する
【解決手段】
本発明に係る真空断熱パネル100は、一対の基板10,20と、一対の基板10,20の間に配置され、一対の基板10,20を封止する第1のガラス材料を含む基板封止部と、一対の基板10,20の一方に設けられ、一対の基板の間の空間を排気する排気口70と、排気口70を封止する第2のガラス材料91を含む排気口封止部と、を備え、排気口封止部は、第2のガラス材料91の中心部に配置され、第2のガラス材料91よりも熱膨張係数が低い芯材80と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板の間に配置され、前記一対の基板を封止する第1のガラス材料を含む基板封止部と、
前記一対の基板の一方に設けられ、前記一対の基板の間の空間を排気する排気口と、
前記排気口を封止する第2のガラス材料を含む排気口封止部と、を備え、
前記排気口封止部は、前記第2のガラス材料の中心部に配置され、前記第2のガラス材料よりも熱膨張係数が低い芯材と、を有することを特徴とする真空断熱パネル。
【請求項2】
前記排気口が設けられた前記基板の前記排気口付近の厚みが周囲より大きいことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記芯材がコバール合金、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ムライト、アルミナまたは石英であることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記第2のガラス材料および前記芯材が、前記一対の基板の間の隙間全体を塞ぐように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項5】
前記基板封止部には、前記基板封止部を補強するための封止部補強部材が前記第1のガラス材料を介して挿間されていることを特徴とする請求項1または2に記載真空断熱パネル。
【請求項6】
前記第2のガラス材料の軟化点は前記第1のガラス材料の軟化点よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項7】
前記第1のガラス材料は、成分を酸化物で表現したときに三種類以上の酸化物からなり、
主要成分としてV2O5とAg2Oとを含有し、
第一任意成分としてTeO2および/またはLi2Oを含有し、
第二任意成分としてK2O、MgO、P2O5、BaO、ZnOおよびWO3からなる群のうちの一種以上を含有し、
第三任意成分としてAl2O3、Fe2O3、Y2O3、La2O3、CeO2、Er2O3およびYb2O3からなる群のうちの一種以上を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項8】
前記第2のガラス材料は、その軟化点が第1のガラス材料の軟化点よりも50℃以上低い無鉛ガラス材料であり、成分を酸化物で表現したときに三種類以上の酸化物からなり、
主要成分としてV2O5とAg2Oとを含有し、
第一任意成分としてTeO2および/またはLi2Oを含有し、
第二任意成分としてMgO、P2O5、BaOおよびZnOからなる群のうちの一種以上を含有し、
第三任意成分としてAl2O3、Fe2O3、Y2O3、La2O3、CeO2、Er2O3、およびYb2O3からなる群のうちの一種以上を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱パネル。
【請求項9】
一対の基板の一方の基板における一方の主表面の周縁領域に第1のガラス材料を肉盛り塗布し仮焼付して第1断熱板を用意する第1断熱板用意工程と、
前記第1断熱板に対面配置し、排気口を有する第2断熱板を用意する第2断熱板用意工程と、
前記第1断熱板における前記第1のガラス材料を仮焼付した面が内側になるように該第1断熱板と前記第2断熱板とを対面配置し、前記第1のガラス材料の軟化点-10℃の温度以上で該軟化点+20℃以下の温度に昇温して前記第1断熱板と前記第2断熱板とを封着して基板封止部を形成する基板封止部形成工程と、
前記第1断熱板と第2断熱板との間の空間を前記排気口から排気し、前記排気口を真空封止する工程と、を有し、
前記排気口を真空封止する工程は、前記排気口に第2のガラス材料と、前記第2のガラス材料の中心部に配置され、前記第2のガラス材料よりも熱膨張係数が低い芯材と、を配置することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
【請求項10】
前記排気口を真空封止する工程は、前記排気口に、前記第2のガラス材料を設置した後に前記芯材を設置するか、前記第2のガラス材料を表面に塗布した前記芯材を設置することを特徴とする請求項9に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱体の技術に関し、特に真空断熱パネルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵や冷凍や保温の装置や容器の断熱体として、真空断熱パネル(VIP)と称される断熱体が広く利用されている。現在主流の真空断熱パネルは、金属/樹脂の複層シートからなる外包材料で断熱材料を真空パックしたものであり、断熱体内部の気体による熱伝導を限りなくゼロに近づけることにより断熱性能を高めている。
【0003】
真空断熱パネルの一例として、特許文献1には、一対の基板と、気密封止部と、を含み、気密封止部は、一対の基板の間の外周部に設けられ、一対の基板の間に空間を形成し、空間が真空或いは減圧の状態にあり、気密封止部を構成する封止材料は、低融点ガラス(酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化リン及び酸化タングステンを含み、酸化物換算で所定の関係式が成り立つ)ことを特徴とする断熱部材が開示されている。特許文献1には、基板には排気穴が形成され、この排気穴より真空ポンプを用いて一対の基板の間の空間部の排気を行い、排気後に排気孔にキャップを取り付け、空間の真空度を維持できるようにする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、冷蔵庫のガラス扉に用いられる真空断熱パネルには、断熱性能の向上と共に、冷蔵庫の庫内容量の拡大のために薄壁化することが求められている。真空断熱パネルを構成する基板を薄くするほど、基板内部を排気して封止する際の排気口封止部には圧縮応力がかかるため、排気口封止部へのクラックの発生を防止する対策が必要となる。上述した特許文献1において、この課題に対する解決策は検討されていない。
【0006】
したがった、本発明は、基板を薄型化した場合であっても、基板に設けた排気口封止部のクラック発生を抑制し、信頼性の高い真空断熱パネルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、一対の基板と、一対の基板の間に配置され、一対の基板を封止する第1のガラス材料を含む基板封止部と、一対の基板の一方に設けられ、一対の基板の間の空間を排気する排気口と、排気口を封止する第2のガラス材料を含む排気口封止部と、を備え、排気口封止部は、第2のガラス材料の中心部に配置され、第2のガラス材料よりも熱膨張係数が低い芯材と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明の他の態様は、一対の基板の一方の主表面の周縁領域に第1のガラス材料を肉盛り塗布し仮焼付して第1断熱板を用意する第1断熱板用意工程と、第1断熱板に対面配置し、排気口を有する第2断熱板を用意する第2断熱板用意工程と、第1断熱板における第1のガラス材料を仮焼付した面が内側になるように該第1断熱板と第2断熱板とを対面配置し、第1のガラス材料の軟化点-10℃の温度以上で該軟化点+20℃以下の温度に昇温して第1断熱板と第2断熱板とを封着して基板封止部を形成する基板封止部形成工程と、第1断熱板と第2断熱板との間の空間を排気口から排気し、排気口を真空封止する工程と、を有し、排気口を真空封止する工程は、排気口に第2のガラス材料と、第2のガラス材料の中心部に配置され、第2のガラス材料よりも熱膨張係数が低い芯材と、を配置することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法である。
【0009】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板を薄型化した場合であっても、基板に設けた排気口封止部のクラック発生を抑制し、信頼性の高い真空断熱パネルおよびその製造方法を提供することができる。
【0011】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の真空断熱パネルの一例を示す平面透過模式図
【
図2A】排気口封止部材構成の近傍の一例で、封止前後を示す断面模式図
【
図2B】排気口封止部材構成の近傍の一例で、封止前後を示す断面模式図
【
図2C】排気口封止部材構成の近傍の他の一例を示す断面模式図
【
図2D】排気口封止部材構成の近傍の他の一例を示す断面模式図
【
図3】封止部補強部材が挿間されたガラス封止部近傍の一例を示す断面模式図
【
図4】本発明に係る真空断熱パネルの製造方法の一例を示すフロー図
【
図5】ガラス粉末STA-1を用いた本発明の真空断熱パネルおよびグラスウールが充填された従来の真空断熱パネルにおける加速試験による経過時間と熱伝導率との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の基本思想]
従来の真空断熱パネルよりも低熱伝導性の断熱体を開発することができれば、冷蔵・冷凍・保温の装置・容器の省エネ性能を更に向上させることができ、また断熱体としての熱貫流率/熱透過率を悪化させることなく断熱体の厚さを薄くすることもできる。断熱体を薄くすることができると、装置・容器の外寸法を変更せずに冷蔵・冷凍・保温する空間/容積を拡大することができるようになる。
【0014】
薄い断熱体を得るには、真空断熱パネルにおいて、構成材料を薄くして、排気口を真空ガラス封止する技術が必要である。その技術の原理は、排気口を設置している板材の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を持つガラス封止材料を用いることにより、その熱膨張係数差で加熱後冷却時に排気口の板材がガラス封止材を圧縮することにより真空封止することである。このとき、基板として薄い基板を用いる場合の排気口の真空ガラス封止では、排気口の口径に対しての排気口深さ(厚み)が十分に取れないため、真空封止の圧縮時に一部分に力がかかるため、ガラス封止材料に割れが発生するという課題がある。
【0015】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、薄い基板を用いた排気口のガラス封止材料に割れが発生する課題は、排気口に挿入するガラス封止材料に薄い基板から一部だけに圧縮力が掛からないように、ガラス封止材料の中心部に圧縮力を分散させる芯材を入れることにより解決できることを見出した。排気口封止用ガラス材料の中心部に入れる芯材は、排気口封止ガラス材料の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を持つ金属材、セラミック材等を用いる。例えば、低熱膨張係数αのコバール合金(α:5ppm以下)や窒化ケイ素(α:2.8ppm以下)、炭化ケイ素(α:3.7ppm以下)、窒化アルミニウム(α:4.6ppm以下)、ムライト(α:5ppm以下)、アルミナ(α:7.2ppm以下)、石英(α:5ppm以下)等が好ましい。本発明は、該知見に基づいて完成したものである。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより具体的に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。
【0017】
[真空断熱パネル]
図1Aは本発明の真空断熱パネルの一例を示す平面透過模式図であり、
図1Bは
図1AのA-A´線断面模式図である。なお、透過模式図とは、本来は不透明体によって隠されていて直接見ることができない物の位置関係を見せるために、当該不透明体を透明体または半透明体として描いた模式図とする。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る真空断熱パネル100は、所定の間隔を空けて主表面が対面配置された一対の基板10,20と、基板10,20の周縁領域を封止する基板封止部30とを有する。一対の基板10,20の間には、内部空間40が形成されている。内部空間40には、所定の間隔を維持するためのスペーサ50が平面格子の態様で分散配置されている。そして、基板封止部(ガラス封止部)30には、該基板封止部30を機械的に補強するための封止部補強部材60がガラス封止材料(第1のガラス材料)90を介して挿間されている。
【0019】
また、一対の基板10,20の少なくとも一方には、内部空間40を真空排気するための排気口70が形成されており、該排気口を塞ぐための、排気口封止部92を有する。排気口封止部92は、排気口封止用ガラス材料(第2のガラス材料)91と、排気口封止用ガラス材料の芯材80で構成される。
【0020】
内部空間40の真空度としては、1×10-1Pa未満が好ましく、5×10-2Pa以下がより好ましい。本発明では、真空度1×10-1Pa未満を高真空と定義する。なお、従来の真空断熱パネルの真空度は、100Paオーダ(1~9Pa)であり、中真空の範疇である。
【0021】
本発明に係る真空断熱パネル100は、外包材料である基板10,20同士が直接接合することなく基板封止部30を介して接合されており、基板10,20間に形成される内部空間40が高真空状態であることから、従来よりも低熱伝導性(常温で2mW/(m・K)未満)を示す。一例として、常温での熱伝導率が1mW/(m・K)以下という非常に優れた低熱伝導性を示す(詳細は後述する)。基板10,20の間隔(内部空間40の高さ)は、断熱体に要求される熱貫流率/熱透過率(例えば、従来の真空断熱パネルの熱貫流率/熱透過率:167mW/(m2・K)以下)を満たすように0.2mm以上18mm以下の範囲で適宜設定すればよい。
【0022】
なお、1枚のみの真空断熱パネル100で、要求される熱貫流率/熱透過率を達成する必然性はなく、真空断熱パネル100を厚さ方向に複数枚積層することによって熱貫流率/熱透過率を調整してもよい。また、パネルを複数枚積層する際に、温度変化や温度勾配に対応して各パネルがある程度スライドできるように、積層するパネル間に潤滑層を挿入してもよい。積層したパネルのスライドを許容することにより、断熱する環境の温度勾配が非常に大きい場合でも断熱体全体としての反りを抑制することができる。
【0023】
つぎに、真空断熱パネル100を構成する各部品について、より詳細に説明する。
【0024】
(基板)
基板10,20は、大気圧の面圧に耐えられる剛性(外部と内部空間40との差圧に起因する応力で内部空間40の高さがゼロにならない程度の剛性)を有する金属材料を用いる必要がある。基板10,20の厚さは、剛性および気密性の観点から0.1mm以上が好ましく、真空断熱パネル100の軽量化の観点から1mm以下が好ましい。
【0025】
また、材料コストは安価であるが、使用済み材であっても有価物としての価値をもつ素材が好ましい。一例としては、合金鋼板、ステンレス鋼板、アルミ合金板を好ましく用いることができる。基板10,20は、同一の金属材料であってもよいし、それぞれが異なる金属材料の組み合わせであってもよい。
【0026】
基板10,20の主表面サイズ(縦×横)に特段の限定はなく、本発明の真空断熱パネル100を利用する断熱体のサイズ(冷蔵・冷凍・保温の装置・容器のサイズ)に適宜合わせればよい。一例としては、縦×横=1500mm×600mmが挙げられる。
【0027】
(排気口)
排気口70は、内部空間40を効率良く真空排気できれば、その形状、サイズ、個数に特段の限定はないが、例えば、円形状の場合、直径が基板10,20の厚さ以上で基板封止部30の幅以下となるように制御することが好ましい。排気口70の位置にも特段の限定はないが、真空断熱パネルの製造性の観点からは、基板封止部30の近傍にある方が便利である。
【0028】
図2Aから
図2Cに排気口封止近傍の断面模式図を示す。
図2Aでは排気口70の封止前後(左図と右図)の模式断面図である。排気口70からパネル内を真空排気した後に、加熱した排気口封止用ガラス材料91と排気口封止用ガラス材の芯材80で構成される封止部材を
図2A右側のように配置し、室温まで温度を冷却することにより、排気封止が完成する。封止部材の縦方向の大きさは、
図2Cに記載されているように基板20までに到達するぐらい大きくしても問題ない。すなわち、排気口封止用ガラス材料91と排気口封止用ガラス材料の芯材80が、一対の基板10,20の間の隙間全体を塞ぐように設けられていても良い。また、封止部材は最初に排気口封止用ガラス材料91と排気口封止用ガラス材料の芯材80を組み合わせたものを排気口70に設置しても、あるいは、
図2Cに記載されているように排気口封止用ガラス材の芯材80をパネル側の基板20に先に設置して、真空排気後、後から加熱した排気口封止用ガラス材91を封入しても問題ない。
【0029】
図2Bでは、封止用ガラス材に割れが発生する防止策の他の手段として、排気口の深さを長くした例である。排気口を絞り加工等で、排気口の周辺部71のみの厚みを大きくすることにより、排気口封止用ガラス材料91に排気口の基板11が接触する面積を大きくして、封止時の圧縮力を分散させて、割れを防止する方法である。
図2B右の図は封止完了後の断面模式図で、封止部材の高さは
図2Dのように、基板20に到達するぐらい大きくしても問題ない。
【0030】
(周縁部封止用ガラス封止材料、排気口封止用ガラス封止材料)
基板封止部30で用いるガラス封止材料90、および、排気口封止部92で用いるガラス封止材料91は、環境負荷の低減および真空断熱パネルの製造性の観点から、軟化点が330℃以下の低融点無鉛ガラス材料が好ましい。基板封止部30のガラス封止材料90の軟化点は、300℃以下がより好ましく、270℃以下が更に好ましい。また、排気口封止部92のガラス封止材料91は、ガラス封止材料90よりも軟化点が50℃以上低いガラス材料であることが好ましい。
【0031】
ガラス封止材料90,91として、例えば、参考文献1:特開2013-032255号公報、参考文献2:国際公開第2017/126378号に記載されているガラス材料を好ましく用いることができる。組成例としては、ガラスの成分を酸化物で表現したときに三種類以上の酸化物からなり、主要成分としてV2O5とAg2Oとを含有し、第一任意成分としてTeO2および/またはLi2Oを含有し、第二任意成分としてK2O、MgO、P2O5、BaO、ZnO、およびWO3からなる群のうちの一種以上を含有し、第三任意成分としてAl2O3、Fe2O3、Y2O3、La2O3、CeO2、Er2O3およびYb2O3からなる群のうちの一種以上を含有している低融点無鉛ガラス材料を好ましく用いることができる。
【0032】
なお、上記文献にも記載されているように、封止材料の熱膨張係数を調整するために熱膨張係数調整粒子を混合させたガラス材料を用いてもよい。
【0033】
本発明では、上述したように、排気口封止用ガラス材料91の中心部に、排気口封止ガラス材料91の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を持つ芯材80を設置する。芯材80の材料としては、金属材、セラミック材等を用いる。例えば、低熱膨張係数のコバール合金やアルミナ材、石英材等が好適である。
【0034】
(スペーサ)
スペーサ50は、内部空間40の高さ(対面配置された一対の基板10,20の間隔)を維持するために用いられる。一対の基板10,20の間の接触伝熱量をできるだけ抑制する観点から、スペーサ50は、内部空間40の中で平面格子状に分散配置されることが好ましい。また、接触伝熱量をできるだけ抑制するために、金属よりも熱伝導率が低いセラミックス材料または樹脂材料からなる球体または柱体とすることが好ましい。
【0035】
なお、スペーサ50として樹脂材料を利用する場合は、真空断熱パネルの製造過程における熱処理の温度(例えば、後述する排気口真空封止工程の温度)に耐えられるエンジニアリングプラスチック(例えば、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド)を用いることが好ましい。
【0036】
分散配置する平面格子の態様に特段の限定はなく、例えば、正方格子、矩形格子、正三角格子、斜方格子および平行体格子からなる群のうちの一種以上を適宜選択できる。前述した
図1Aは、球体のスペーサ50を正方格子の態様に分散配置した例を示している。スペーサ50のサイズは、内部空間40の所望高さ(対面配置された一対の基板10,20の所望間隔)に合わせて適宜選択すればよく、例えば、0.2mm以上18mm以下が好ましい。
【0037】
(封止部補強部材)
図3は、封止部補強部材が挿間された周縁部封止部近傍の一例を示す断面模式図である。
図3に示すように、基板封止部30は、基板10,20の間に、封止部補強部材60が所定のガラス封止材料(軟化点が330℃以下の無鉛ガラス材料90)を介して挿間されている。
【0038】
封止部補強部材60の材料としては、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料および各種材料の複合材を適用することができる。封止部補強部材60として用いる金属材料やセラミックス材料、樹脂材料は、真空封止に対応できるものであれば特段の限定はない。例えば、基板10,20と同じ金属材料や、石英、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス材料を好適に利用できる。金属材料は、靭性などの機械的特性や気密性の観点でセラミックス材料よりも有利であり、セラミックス材料や樹脂材料は、低熱伝導性の観点で金属材料よりも有利である。
【0039】
ここで、本発明者等の研究の結果、基板封止部30において封止部補強部材60と基板10,20との間に介在するガラス封止材料の厚さが0.2mm以上になるとクラックが生じ易くなることが分かっており、当該ガラス封止材料の厚さは0.2mm未満が好ましい。一方、接着性と気密性とを確保する観点から、当該ガラス封止材料の厚さは、0.02mm以上が好ましい。言い換えると、封止部補強部材60の厚さは、基板10,20との間に介在するガラス封止材料の厚さが0.02mm以上0.2mm未満となり、かつ内部空間40の所望高さを確保できるように設定する。
【0040】
封止部補強部材60は、基板封止部30におけるガラス封止材料のクラック発生を防止するための部材であり、クラック発生を防止できるならば封止部補強部材60を基板封止部30の全周に挿間する必要はない。例えば、基板封止部30の全周を複数箇所に分割するように複数個の封止部補強部材60を挿間してもよいし、隣り合う封止部補強部材60の間に適当な間隔が空いていてもよい。
【0041】
[真空断熱パネルの製造方法]
図4は、本発明に係る真空断熱パネルの製造方法の一例を示すフロー図である。
図4に示すように、本発明に係る真空断熱パネルの製造方法は、概略的に、第1断熱板用意工程S1と、第2断熱板用意工程S2と、ガラス封止部形成工程S3と、排気口真空封止工程S4とを有する。第1断熱板用意工程S1は、封止部補強部材挿間素工程S1aと、スペーサ分散配置素工程S1bとを含む。また、第2断熱板用意工程S2は、熱線反射膜形成素工程S2aを含んでもよい。
【0042】
つぎに、製造方法の各工程について、より詳細に説明する。まず、製造に必要に各部品(真空断熱パネルの両表面を構成する一対の基板、基板周縁部を封止するためのガラス封止材料(フリットまたはペーストが好ましい)、封止部材を構成するための排気口封止用ガラス封止材料(フリットまたはペーストが好ましい)および芯材、封止部補強部材、スペーサ、スペーサ用接着剤)をそれぞれ別途用意する。
【0043】
(第1断熱板用意工程S1)
工程S1は、一対の基板の一方の基板における一方の主表面の周縁領域に、ガラス封止材料を肉盛り塗布し仮焼付して第1断熱板を用意する工程である。まず、一対の基板の一方の基板における一方の主表面の周縁領域に、ガラス封止材料を肉盛り塗布する。
【0044】
つぎに、封止部補強部材挿間素工程S1aとして、ガラス封止材料の肉盛り塗布部に封止部補強部材を挿間する。このとき、ガラス封止材料の肉盛り塗布部に差し込むように封止部補強部材を挿間してもよいし、肉盛り塗布部の上に封止部補強部材を置いた後に該封止部補強部材の上にガラス封止材料を更に肉盛り塗布してもよい。
【0045】
つぎに、ガラス封止材料の軟化点以上に昇温して、一方の基板の主表面の周縁領域にガラス封止材料(封止部補強部材を含む)を仮焼付する。
【0046】
つぎに、スペーサ分散配置素工程S1bとして、仮焼付したガラス封止材料の内側領域(内部空間になる領域)に平面格子の態様でスペーサ用接着剤を塗布した後に、当該領域内でスペーサを転がしながら接着配置する。接着剤としては、ガラス封止部で用いるガラス封止材料でもよいし、後のガラス封止部形成工程S3の熱処理で完全に熱分解する有機系接着剤でもよい。接着剤の塗布方法に特段の限定はなく、従前の方法を適宜利用できる。
【0047】
(第2断熱板用意工程S2)
工程S2は、第1断熱板に対面配置する第2断熱板を用意する工程である。このとき、熱線反射膜形成素工程S2aとして、第2断熱板における第1断熱板に対面する側の面に熱線反射膜を形成してもよい。熱線反射膜形成素工程S2aは必須の工程ではないが、行うことによって真空断熱パネルの低熱伝導化に寄与する。熱線反射膜形成の代わりに鏡面加工を行ってもよい。
【0048】
(ガラス封止部形成工程S3)
工程S3は、第1断熱板におけるガラス封止材料を仮焼付した面が内側になるように該第1断熱板と第2断熱板とを対面配置し、ガラス封止材料の軟化点-10℃の温度以上で該軟化点+20℃以下の温度に昇温して第1断熱板と第2断熱板とを封着してガラス封止部を形成する工程である。第1断熱板と第2断熱板との間に圧縮応力が付加される場合は、熱処理温度はガラス封止材料の軟化点-10℃の温度から軟化点までの範囲でもよいが、第1断熱板と第2断熱板との間に圧縮応力が付加されない場合は、熱処理温度は軟化点から軟化点+20℃の温度までの範囲が好ましい。
【0049】
ここで、封着した第1断熱板と第2断熱板との間の電気抵抗率を測定することによって、ガラス封止部が正しく形成されているのか否かをある程度判定することができる。これは、電気抵抗と熱抵抗とが定性的には同じ傾向を示すためである。測定した電気抵抗率が100kΩ・m以上であれば、ガラス封止部は十分な熱抵抗を有すると判定できる。一方、当該電気抵抗率が100kΩ・m未満の場合、第1断熱板と第2断熱板との間のどこかで電気的短絡/熱的短絡が起きていることを意味するので不合格品と判定できる。
【0050】
(排気口真空封止工程S4)
工程S4は、排気口70から内部空間を真空排気した後、排気口封止部92を構成する排気口封止用ガラス材料91よび排気口封止用ガラス材料の芯材80を設置し、排気口封止用ガラス封止材料の軟化点以上かつ該軟化点+20℃以下の温度に昇温して、排気口70を真空封止する工程である。排気口封止部92の形成方法としては、まず排気口封止用ガラス材料91を配置した後に排気口封止用ガラス材料の芯材80を挿入する方法や、排気口封止用ガラス材料91を排気口封止用ガラス材料の芯材80の表面に塗布したものを排気口70に設置する方法がある。
【0051】
内部空間の真空度は、1×10-1Pa未満が好ましく、5×10-2Pa以下がより好ましい。ガラス封止部で用いるガラス封止材料よりも軟化点が低い排気口封止用ガラス封止材料を用いることで、ガラス封止部に熱的悪影響を及ぼすことなく排気口を真空封止することができる。
【0052】
なお、ここでは、排気口封止用ガラス封止材料と芯材を用いた真空封止を説明したが、本発明の本質はそれに限定されるものではなく、所望の真空度で内部空間を真空封止できれば他の方法で真空封止を行ってもよい。
【実施例0053】
以下、本発明について、いくつかの実験例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実験例に限定されることはなく、そのバリエーションを含むものである。
【0054】
[実験1]
(各部品の用意)
真空断熱パネルの両表面を構成する一対の基板としてステンレス鋼板(SUS304、縦1000mm×横800mm×厚さ0.5mm、熱膨張係数α=17ppm)を用意し、排気口はφ4mmの孔加工し、排気口70を塞ぐ封止部材として排気口封止用ガラス材料の芯材80はコバール合金(直径2mm×厚さ1.0mm、熱膨張係数α=5ppm)を用意し、封止部補強部材として石英ガラス板(幅6mm×厚さ0.5mm)を用意し、スペーサとして石英ガラスビーズ(直径0.7mm)を用意した。
【0055】
基板封止部30で用いるガラス封止材料90としては、上述した参考文献1~2に記載された手順に沿って、後述する表1に示す名目組成を有するガラス粉末(STA-1~STA-5、それぞれ平均粒径約10μm)を用意し、熱膨張係数調整粒子(リン酸タングステン酸ジルコニウム)とバインダー(イソボニルシクロヘキサノール)と溶媒(α-テルピネオール)とを混合して無鉛ガラスペーストを用意した。また、スペーサ用接着剤としては、ガラス封止部で用いるガラス封止材料90と同じ無鉛ガラスペーストを利用した。
【0056】
同様に、排気口封止用ガラス封止材料91としても、上述した参考文献1~2に記載された手順に沿って、後述する表1に示す名目組成を有するガラス粉末(STA-6、平均粒径約10μm)を用意し、熱膨張係数調整粒子(リン酸タングステン酸ジルコニウム)とバインダー(イソボニルシクロヘキサノール)と溶媒(α-テルピネオール)とを混合して無鉛ガラスペースト(熱膨張係数α=11ppm)を用意した。
【0057】
(ガラス粉末の特性調査)
上記で得られた各ガラス粉末STA-1~STA-6に対して、参考文献1~2に記載された方法・定義に沿って、示差熱分析(DTA)により軟化点Tsを調査した。名目組成と合わせて結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
[実験2]
(真空断熱パネルの作製)
図4に示したフローに沿って、実験1で用意した各部品を用いて真空断熱パネルをそれぞれ10枚ずつ作製した。真空断熱パネルの作製にあたって、まず、各部品(基板、刃一口封止用封止部材、封止部補強部材、スペーサ)に対して、オゾン洗浄を行って有機物などの汚染物を除去した。
【0060】
第1断熱板用意工程S1において、封止部補強部材挿間素工程S1aは、ガラス封止材料の肉盛り塗布部の上に封止部補強部材を置いた後に該封止部補強部材の上にガラス封止材料を更に肉盛り塗布する方法で行った。ガラス封止材料の仮焼付温度は、使用したガラス粉末の軟化点とした。スペーサ分散配置素工程S1bにおけるスペーサの配置形態は、正方格子とした(
図1参照)。
【0061】
第2断熱板用意工程S2において、熱線反射膜形成素工程S2aを行った。
【0062】
ガラス封止部形成工程S3において、熱風循環式加熱炉を用い、使用したガラス粉末の軟化点の温度に加熱して第1断熱板と第2断熱板とを封着すると共にガラス封止部を形成した(内部空間の高さは約0.7mm)。ガラス封止部形成工程S3の後、各試料に対して第1断熱板と第2断熱板との間の電気抵抗率を測定した。その結果、全ての試料において100kΩ・m以上の電気抵抗率を示し、健全な試料であることを確認した。
【0063】
排気口真空封止工程S4においては、排気口封止用ガラス材料91として、表1のガラス粉末STA-6を含むペーストを予め肉盛り塗布・仮焼付した排気口封止用ガラス材料の芯材(コバール合金)80が内部にセットされた真空引きキャップを、第1または第2の断熱板に形成された排気口に被せて、内部空間を真空排気しながら断熱パネル全体をガラス粉末STA-6の軟化点まで加熱し保持した。内部空間の真空度が5×10
-2Paになったところで、加熱した排気口封止用ガラス材料91と排気口封止用ガラス材料の芯材80で構成される封止部材を
図2Cのように配置し、室温まで全体を冷却して本発明に係る真空断熱パネルを作製した。
【0064】
[実験3]
(真空断熱パネルの検査・試験)
実験2で得られた全ての真空断熱パネルに対して、目視による外観検査を行った。その結果、基板封止部30および排気口封止部92ともに、封止用のガラス材料にクラック等の損傷は観察されず、外観上の問題はなかった。また、10枚ずつ作製した各種試料から2枚ずつを抽出し、ヘリウムリーク試験を行った。その結果、基板封止部30および排気口封止部92が真空封止できていることを確認した。
【0065】
10枚ずつ作製した各種試料から3枚ずつを抽出し、水中浸漬試験(50℃の温水、30日間)を行った。その結果、全ての試験試料で内部空間に温水が浸入することなく、内部空間が真空状態に維持されていることを確認した。また、各種試料から3枚ずつを更に抽出し、温度サイクル試験(+50℃⇔-20℃、1000サイクル)を行った。その結果、内部空間が真空状態に維持されていることを確認した。これらのことから、本発明に係る真空断熱パネルの周縁部ガラス封止部および排気口封止部は、真空封止に関して高い信頼性を有していることが確認された。
【0066】
つぎに、各種試料の残りの2枚ずつに対して、熱伝導率劣化の加速試験(温度85℃、相対湿度85%の恒温槽中に保持)を行った。試験試料の熱伝導率は、JIS規格の保護熱板法(GHP法)を用いて測定した。このとき、グラスウールが充填された従来の真空断熱パネル(市販品)を別途用意して、熱伝導率劣化の加速試験を一緒に行った。
【0067】
図5は、ガラス粉末STA-1を用いた本発明の真空断熱パネルおよびグラスウールが充填された従来の真空断熱パネルにおける加速試験による経過時間と熱伝導率との関係を示すグラフである。グラフ中のプロットは、2試料の平均とした。
【0068】
図5に示したように、従来の真空断熱パネルは、初期熱伝導率が約2mW/(m・K)であり、10年経過後の熱伝導率が約8mW/(m・K)となって、大きく劣化していることが判る。これに対し、本発明の真空断熱パネルは、初期熱伝導率が約0.2mW/(m・K)であり、10年経過後の熱伝導率が約0.5mW/(m・K)であることから、極めて優れた低熱伝導性と極めて優れた耐久性とを兼ね備えていることが確認される。
【0069】
以上の各種実験から、本発明は、従来よりも低熱伝導性でありかつ耐久性の高い真空断熱パネルおよびその製造方法を提供できることが実証された。本発明に係る真空断熱パネルを用いることで、断熱体としての熱貫流率/熱透過率を悪化させることなく断熱体の厚さを薄くすることができる。また、本発明に係る真空断熱パネルは、リサイクルコストの高い断熱材料(例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、プラスチックフォームなど)を用いないことから、従来よりもリサイクル性が高まると考えられる。
【0070】
上述した実施形態や実験例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実験例の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
100…真空断熱パネル、10,11,20…基板、30…基板封止部、40…内部空間、50…スペーサ、60…封止部補強部材、70…排気口、80…排気口封止用ガラス材料の芯材、90…基板封止用ガラス材料(第1のガラス材料)、91…排気口封止用ガラス材料(第2のガラス材料)、92…排気口封止部。