(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149887
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】水切り部材及び水切り部材の施工構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20231005BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04F13/08 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058682
(22)【出願日】2022-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・2022年(令和4年)1月31日「WALL 外壁材総合カタログ 一般地域用 2022 02」にて公開 ・2022年(令和4年)1月31日 https://www.kmew.co.jp/catalog/ https://www.catalabo.org/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&volumeID=CATALABO&catalogId=70466690000&pageGroupId=&designID=link&catalogCategoryId=&designConfirmFlg= にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 友理
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
【Fターム(参考)】
2E001DA03
2E001DB02
2E001EA08
2E001FA21
2E001GA53
2E001GA57
2E001HB01
2E001NA07
2E001ND01
2E110AA09
2E110AA13
2E110AA57
2E110AB06
2E110AB22
2E110BA12
2E110CA07
2E110DC15
2E110GA33W
2E110GB02W
(57)【要約】
【課題】建物の意匠性が損なわれにくい水切り部材を提供する。
【解決手段】建物の壁下地100に取り付けられる水切り部材1である。水切り部材1は、固定部11と、雨水案内板部2と、前板部3と、を備える。固定部11は、壁下地100に固定される。雨水案内板部2は、固定部11から前方斜め下方に延びる。前板部3は、雨水案内板部2の前端部から下方に延びる。雨水案内板部2は、前板部3側の部分よりも固定部11側の部分のほうが急勾配である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁下地に取り付けられる水切り部材であって、
前記壁下地に固定される固定部と、
前記固定部から前方斜め下方に延びる雨水案内板部と、
前記雨水案内板部の前端部から下方に延びる前板部と、を備え、
前記雨水案内板部は、前記前板部側の部分よりも前記固定部側の部分のほうが急勾配である、
水切り部材。
【請求項2】
前記雨水案内板部は、勾配の異なる複数の傾斜部を有している、
請求項1に記載の水切り部材。
【請求項3】
前記雨水案内板部は、下方に向かって凸となるように湾曲している、
請求項1に記載の水切り部材。
【請求項4】
前記前板部の上下方向の寸法は、前記壁下地の下方に設けた基礎部材の上下方向の寸法よりも小さい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の水切り部材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水切り部材の施工構造であって、
前記固定部は前記壁下地に固定され、
前記雨水案内板部は、前記壁下地の下方に設けた基礎部材の前方に位置している、
水切り部材の施工構造。
【請求項6】
前記前板部の下端が基礎部材の下端と略同一高さにある、
請求項5に記載の水切り部材の施工構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水切り部材及び水切り部材の施工構造に関する。より詳細には、本発明は、建物の土台部に好適に使用される水切り部材及びその施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の土台部に使用される水切り部材が記載されている。この水切り部材は、建物の外壁の表面を流れ落ちてくる雨水が土台部、基礎パッキン、基礎に浸入するのを防止するために、土台部に取り付けられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような水切り部材では、土台部の下方に設けた基礎パッキンを隠すために、正面からの見た寸法が大きくなり、意匠性が損なわれる場合があった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、意匠性が損なわれにくい水切り部材を提供することを目的とする。また本発明は、上記水切り部材の施工構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る水切り部材は、建物の壁下地に取り付けられる水切り部材である。前記壁下地に固定される固定部と、前記固定部から前方斜め下方に延びる雨水案内板部と、前記雨水案内板部の前端部から下方に延びる前板部と、を備える。前記雨水案内板部は、前記前板部側の部分よりも前記固定部側の部分のほうが急勾配である。
【0007】
本発明の一態様に係る水切り部材の施工構造は、前記水切り部材の施工構造であって、前記固定部は前記壁下地に固定される。前記雨水案内板部は、前記壁下地の下方に設けた基礎部材の前方に位置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正面からの見た寸法が小さくなり、意匠性が損なわれにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る水切り部材の施工構造を示す断面図である。
【
図2】
図2Aは、本発明の実施形態1に係る水切り部材を示す正面図である。
図2Bは、同上の側面図である。
【
図3】
図3Aは、本発明の実施形態2に係る水切り部材を示す側面図である。
図3Bは、同上の施工構造を示す断面図である。
【
図4】
図3は、従来例の水切り部材の施工構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る水切り部材1は、建物の壁下地100に取り付けられるものである(
図1参照)。水切り部材1は、固定部11と、雨水案内板部2と、前板部3と、を備える。(
図2A及びB参照)。固定部11は、壁下地100に固定される。雨水案内板部2は、固定部11から前方斜め下方に延びる。前板部3は、雨水案内板部2の前端部から下方に延びる。雨水案内板部2は、前記前板部3側の部分よりも固定部11側の部分のほうが急勾配である。
【0011】
本実施形態によれば、雨水案内板部2が急勾配の部分を有しているため、前板部3の上下方向の寸法を小さくしても、水切り部材1で隠すことができる範囲が小さくならないようにすることができる。従って、前板部3の上下方向の寸法を小さくすることができ、建物の意匠性が損なわれにくい。
【0012】
(2)詳細
図1に示すように、本実施形態に係る水切り部材1は、建物の壁下地100に取り付けられるものである。本実施形態では、壁下地100が土台部である場合について説明する。土台部110は、基礎部材200を介して、基礎部111の上方に設けられている。基礎部111は、布基礎やベタ基礎などのコンクリートで形成されており、地中から地面上にまで形成されている。基礎部材200は、基礎パッキンであって、例えば、ゴム製や樹脂製の部材である。基礎部材200は、基礎部111と土台部110との間に設けられており、通気性を有している。従って、基礎部材200により、床下の換気を行うことができる。土台部110は、基礎部材200の上面に設けられ、柱等が載置される部材であり、例えば、角材等の材木で形成されている。
【0013】
そして、土台部110の前方に水切り部材1や外壁材101が設けられている。なお、本明細書において、「前方」は、外壁材101から建物の屋外側に向かう方向を意味する。「後方」は、外壁材101から建物の屋内側に向かう方向を意味する。「下方」は、鉛直下向きの方向を意味する。「上方」は、鉛直上向きの方向を意味する。左右方向は、前方、後方、下方及び上方に直交する方向を意味する。
【0014】
外壁材101は、土台部110の前方に配置されている。外壁材101は、例えば、窯業系サイディング材で構成されている。外壁材101の下端は、スタータ112を介して、土台部110に取り付けられている。スタータ112は、ビスや釘などの固定具113により、土台部110に固定されている。外壁材101の下端は、スタータ112に引っ掛けられて支持されている。外壁材101は、その長手方向が水平となるように施工される「横張り」施工でもよく、または、その長手方向が鉛直となるように施工される「縦張り」施工であってもよい。
【0015】
また、スタータ112と土台部110の間には、水切り部材1の固定部11が配置されている。固定部11も上記固定具113により土台部110に固定されている。なお、スタータ112と固定部11の間には、透湿防水シート115が設けられている。透湿防水シート115の下部は、両面テープなどの接着部材116で固定部11の前面に固定されていてもよい。
【0016】
図2A及びBは、本実施形態の水切り部材1を示している。水切り部材1は、金属板を折り曲げ加工等して成形した金属成形品である。金属板としては、塗装鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板などの耐食性のものを使用するのが好ましい。また、水切り部材1は、一定の断面形状を有し、左右方向に延びて長尺に形成されている。水切り部材1は、雨水案内板部2と、前板部3と、固定部11と、を備えている。
【0017】
固定部11は、正面視で矩形平板状に形成されている。固定部11の前面には、左右方向の全長にわたって、接着部材116が設けられている。前板部3は、水切り部材1の前面を構成する部分であり、雨水案内板部2の前端から下方に延びる矩形板状に形成されている。なお、前板部3の下端は、ヘミング曲げなどで折り返されていてもよい。
【0018】
雨水案内板部2は、固定部11の下端部から前方に突出する部分である。雨水案内板部2は、勾配の異なる複数の傾斜部を有している。本実施形態では、複数の傾斜部として、勾配が急な急傾斜部21と、急傾斜部21に比べて勾配が緩い緩傾斜部22とを有している。ここで、勾配とは、水平面に対する傾きの程度を意味し、緩傾斜部22は急傾斜部21に比べて傾きが小さい。
【0019】
本実施形態では、固定部11の下端には、急傾斜部21の後端が接続され、急傾斜部21の前端に緩傾斜部22が接続されている。従って、雨水案内板部2は、急傾斜部21と緩傾斜部22との境界部で屈曲している。急傾斜部21と緩傾斜部22との間の角度は、鈍角であり、例えば、100°以上180°未満である。このように、急傾斜部21は緩傾斜部22よりも固定部11に近い位置にあるため、雨水案内板部2は、前板部3側の部分(前部)よりも固定部11側の部分(後部)のほうが急勾配である。
【0020】
本実施形態の水切り部材1は、固定部11が土台部110の前面に配置されている。また、雨水案内板部2及び前板部3が基礎部材200の前方に位置している。従って、雨水案内板部2及び前板部3により、基礎部材200が正面(前方)から見えにくくなって、隠される。よって、建物の外観が損なわれず意匠性が向上する。
【0021】
また、本実施形態では、雨水案内板部2が前板部3側の緩傾斜部22よりも固定部11側の急傾斜部21のほうが急勾配であるため、急傾斜部21で基礎部材200の上部が見えにくくなる。従って、前板部3の上下方向の寸法を大きくしなくても、基礎部材200を十分に隠すことができる。例えば、
図4に示すような従来例の水切り部材1aの場合、雨水案内板部2aが固定部11aから一定の傾斜角度であるため、雨水案内板部2aで基礎部材200を十分に見えにくくすることができない。従って、前板部3aの上下方向の寸法を十分に大きくして(例えば、基礎部材200の上下方向の寸法と同等程度)、基礎部材200を覆わなければならない。
【0022】
一方、本実施形態では、急傾斜部21で基礎部材200の上部を覆って見えにくくし、しかも、前板部3が基礎部材200の下部の前方に位置して見えにくくしているため、前板部3の上下方向の寸法を小さく(例えば、基礎部材200の上下方向の寸法と半分程度)することができる。従って、前板部3の上下方向の寸法を小さくてスマートな外観であっっても、基礎部材200が露出せず、建物の外観が損なわれず意匠性が向上する。
【0023】
また、前板部3の下端は、基礎部材200の下端と略同一高さにあることが好ましい。この場合、基礎部材200の露出がほぼなくなり、外観の低下が確実に防止することができ、しかも、害虫や害獣が基礎部材200の部分から床下に侵入しにくくなる。
【0024】
水切り部材1が施工された土台部110では、外壁材101の前面を流下する雨水が、外壁材101の下端から雨水案内板部2の上面に落下する。そして、雨水は、雨水案内板部2の上面から前板部3の前面にまで流れて下端から落下する。このようにして、水切り部材1により、雨水が基礎部材200や基礎部111に到達しないように水切りすることができる。また、前板部3の下端及び雨水案内板部2の下面と、基礎部111との間から基礎部材200を通じて床下の換気を行うことができる。
【0025】
(変形例)
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0026】
実施形態1では、壁下地100が建物の土台部の場合について説明したが、これに限らない。壁下地100が建物の梁などの横架材であってもよい。この場合、水切り部材1は、上階部分と下階部分の境界部分に設けられる。
【0027】
実施形態1では、複数の傾斜部が急傾斜部21と緩傾斜部22の2つの場合について説明したが、これに限られない。複数の傾斜部が勾配の異なる3つ以上であってもよい。
【0028】
実施形態1では、外壁材101が、窯業系サイディング材で構成されている場合について説明したが、これに限られない。外壁材101は、通常、外壁を構成するものであればよく、例えば、金属サイディング材、木質板などであってもよい。
【0029】
(実施形態2)
本実施形態に係る水切り部材1は、雨水案内板部2の構成が実施形態1に係る水切り部材1と相違する。
【0030】
以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0031】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0032】
図3A及びBに示すように、実施形態2の水切り部材1は、実施形態1と同様に、雨水案内板部2が、前板部3側の部分よりも固定部11側の部分のほうが急勾配となるように形成されているが、実施形態1の急傾斜部21と緩傾斜部22のように明確な境界がない。つまり、雨水案内板部2は、下方に向かって凸となるように湾曲しており、雨水案内板部2の全体にわたって徐々に勾配が変化している。そして、雨水案内板部2の前側略半分よりも後側略半分のほうが急勾配となっている。
【0033】
実施形態2の水切り部材1であっても、前板部3の上下方向の寸法を小さくてスマートな外観であっても、基礎部材200が露出せず、建物の外観が損なわれず意匠性が向上する。
【0034】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様は、建物の壁下地100に取り付けられる水切り部材1である。水切り部材1は、固定部11と、雨水案内板部2と、前板部3と、を備える。固定部11は、壁下地100に固定される。雨水案内板部2は、固定部11から前方斜め下方に延びる。前板部3は、雨水案内板部2の前端部から下方に延びる。雨水案内板部2は、前板部3側の部分よりも固定部11側の部分のほうが急勾配である。
【0035】
この態様によれば、前板部3の上下方向の寸法を小さくしても、水切り部材1で隠すことができる範囲が小さくならないようにすることができ、建物の意匠性が損なわれにくい。
【0036】
第2の態様は、第1の態様に係る水切り部材1であって、雨水案内板部2は、勾配の異なる複数の傾斜部を有している。
【0037】
この態様によれば、前板部3の上下方向の寸法を小さくしても、雨水案内板部2の複数の傾斜部で隠すことができる範囲が小さくならないようにすることができ、建物の意匠性が損なわれにくい。
【0038】
第3の態様は、第1の態様に係る水切り部材1であって、雨水案内板部2は、下方に向かって凸となるように湾曲している。
【0039】
この態様によれば、前板部3の上下方向の寸法を小さくしても、雨水案内板部2の湾曲で隠すことができる範囲が小さくならないようにすることができ、建物の意匠性が損なわれにくい。
【0040】
第4の態様は、第1~3のいずれか1つの態様に係る水切り部材1である。前板部3の上下方向の寸法は、前記壁下地の下方に設けた基礎部材の上下方向の寸法よりも小さい。
【0041】
この態様によれば、前板部3の上下方向の寸法が小さくなって、建物の意匠性が損なわれにくい。
【0042】
第5の態様は、第1~4のいずれか1つの態様に係る水切り部材1の施工構造である。固定部11は壁下地100に固定される。雨水案内板部2は、壁下地100の下方に設けた基礎部材200の前方に位置している。
【0043】
この態様によれば、基礎部材200の通気性を確保しながら、基礎部材200を隠蔽することができ、建物の意匠性及び通気性が損なわれにくい。
【0044】
第6の態様は、第5の態様に係る水切り部材1の施工構造である。前板部3の下端が基礎部材200の下端と略同一高さにある。
【0045】
この態様によれば、基礎部材200を隠蔽することができ、スマートな外観を得やすい。
【符号の説明】
【0046】
1 水切り部材
2 雨水案内板
3 前板部
11 固定部
100 壁下地
200 基礎部材