(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149888
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】オーバーハング部役物及びオーバーハング部構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E04F13/08 101N
E04F13/08 101Q
E04F13/08 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058683
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】古谷 早希
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA13
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB16
2E110AB22
2E110AB26
2E110AB34
2E110BA12
2E110CA07
2E110DC15
2E110EA06
2E110GB02W
(57)【要約】
【課題】オーバーハング部の外観を損ないにくいオーバーハング部役物を提供する。
【解決手段】建物のオーバーハング部100に設けられる。オーバーハング部役物1は、オーバーハング部100の壁下地101と、壁下地101の前方に配置されるオーバーハング部100の胴縁102との間で固定される固定部2と、固定部2から前方に突出して胴縁102の下方に配置される突出部3と、を備える。突出部3は、オーバーハング部100の軒天井材103の下面104よりも胴縁102に近い高さに位置するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のオーバーハング部に設けられるオーバーハング部役物であって、
前記オーバーハング部の壁下地と、前記壁下地の前方に配置される前記オーバーハング部の胴縁との間で固定される固定部と、
前記固定部から前方に突出して前記胴縁の下方に配置される突出部と、を備え、
前記突出部は、前記オーバーハング部の軒天井材の下面よりも前記胴縁に近い高さに位置するように構成される、
オーバーハング部役物。
【請求項2】
前記固定部は、前記軒天井材の前端面に当接するように構成される、
請求項1に記載のオーバーハング部役物。
【請求項3】
前記固定部の下端は、前記軒天井材の前記下面よりも低い高さに位置し、
前記固定部の前記下端から前記軒天井材の下面に当接しつつ後方に延びる底面部を更に備える、
請求項1又は2に記載のオーバーハング部役物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオーバーハング部役物と、壁下地と、胴縁と、軒天井材と、を備えるオーバーハング部構造であって、
前記固定部は、前記壁下地と前記壁下地の前方に配置される前記胴縁との間で固定され、
前記突出部は、前記固定部から前方に突出して前記胴縁の下方に配置され、前記軒天井材の下面よりも前記胴縁に近い高さに位置する、
オーバーハング部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーハング部役物及びオーバーハング部構造に関する。より詳細には、本発明は、建物のオーバーハング部の下部に使用されるオーバーハング部役物及びオーバーハング部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オーバーハング部役物が記載されている。このオーバーハング部役物は、第一端部カバー部材と第二端部カバー部材とを備えている。第一端部カバー部材は、オーバーハング部の外装パネルの下端部を覆って配置される。第二端部カバー部材は、外装パネルと根太との間に位置する胴縁の下方を覆って配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、第二端部カバー部材が、胴縁から離れた下方に位置するため、目立ちやすく、オーバーハング部の外観を損なうことがあった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、オーバーハング部の外観を損ないにくいオーバーハング部役物を提供することを目的とする。また、本発明は、オーバーハング部役物を使用したオーバーハング部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るオーバーハング部役物は、建物のオーバーハング部に設けられる。前記オーバーハング部役物は、固定部と、突出部とを備える。前記固定部は、前記オーバーハング部の壁下地と、前記壁下地の前方に配置される前記オーバーハング部の胴縁との間で固定される。前記突出部は、前記固定部から前方に突出して前記胴縁の下方に配置される。また前記突出部は、前記オーバーハング部の軒天井の下面よりも前記胴縁に近い高さに位置するように構成される。
【0007】
本発明の一態様に係るオーバーハング部構造は、前記オーバーハング部役物と、壁下地と、胴縁と、軒天井と、を備える。前記固定部は、前記壁下地と前記壁下地の前方に配置される前記胴縁との間で固定される。前記突出部は、前記固定部から前方に突出して前記胴縁の下方に配置される。前記突出部は、前記軒天井の下面よりも前記胴縁に近い高さに位置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、突出部がオーバーハング部の軒天井材の下面よりも上方に位置するため、目立ちにくくなり、オーバーハング部の外観を損ないにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本発明に係るオーバーハング部構造の実施形態を示す概念図である。
図1Bは、本発明に係るオーバーハング部構造の実施形態の変形例1を示す概念図である。
【
図2】
図2Aは、本発明に係るオーバーハング部構造の実施形態の変形例2を示す概念図である。
図2Bは、本発明に係るオーバーハング部構造の実施形態の変形例3を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るオーバーハング部構造の実施形態の変形例4を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係るオーバーハング部役物1は、建物のオーバーハング部100に設けられる(
図1A参照)。オーバーハング部役物1は、固定部2と突出部3とを備える。固定部2は、オーバーハング部100の壁下地101と、壁下地101の前方に配置されるオーバーハング部100の胴縁102との間で固定される。突出部3は、固定部2から前方に突出して胴縁102の下方に配置される。そして、突出部3は、オーバーハング部100の軒天井材103の下面104よりも胴縁102に近い高さに位置するように構成される。
【0011】
本実施形態では、突出部3が軒天井材103の下面104よりも上方に位置するため、オーバーハング部100を下方から見上げたときに、突出部3が軒天井材103の影になって目立ちにくくなる。従って、オーバーハング部100の外観を損ないにくい。また、オーバーハング部役物1よりも後に胴縁102を施工する場合には、突出部3を目安にして胴縁102の上下方向の位置を決めることができる。従って、突出部3により胴縁102の上下方向の位置が決めやすくなって、施工性が向上する。
【0012】
(2)詳細
図1Aに示すように、本実施形態のオーバーハング部役物1は、建物のオーバーハング部100に設けられる。オーバーハング部100は、建物の外壁よりも前方(屋外側)に突出する部分であればよく、例えば、バルコニー、ベランダ、庇、屋根、階段などである。オーバーハング部100は、壁下地101と、胴縁102と、軒天井材103とを備えている。また、オーバーハング部100は、外壁材106及び端部カバー部材5を備えている。
【0013】
なお、本明細書において、「前方」は、壁下地101から建物の屋外側に向かう方向を意味する。「後方」は、壁下地101から建物の屋内側に向かう方向を意味する。「下方」は、軒天井材103の厚み方向のうち下向きの方向を意味する。「上方」は、軒天井材103の厚み方向のうち上向きの方向を意味する。左右方向は、前方、後方、下方及び上方に直交する方向を意味する。
【0014】
壁下地101は、建物の梁などの横架材である。壁下地101の前方には、胴縁102が配置されており、釘やビスなどの固定具108により壁下地101に固定されている。胴縁102は、上下方向に延びる縦胴縁であってもよいし、左右方向に延びる横胴縁であってもよい。壁下地101及び胴縁102は、角材等の材木や軽量鉄骨等の金属部材が使用される。なお、壁下地101の前面には、透湿防水110が両面テープなどの接着部材111で貼り付けられている。
【0015】
胴縁102の前方には、外壁材106が設けられている。外壁材106は、通常、オーバーハング部100の外壁を構成するものであればよく、例えば、窯業系サイディング材、金属サイディング材、木質板などが挙げられる。外壁材106の下端部は、端部カバー部材5に差し込まれている。なお、端部カバー部材5は無くてもよい。
【0016】
端部カバー部材5は、例えば、金属板を折り曲げ加工等して成形した金属成形品であり、前片53と後片51と底片52とで、上面が開口する断面コ字状の部材である。端部カバー部材5は、左右方向に延びて長尺に形成されている。底片52には、上下方向に貫通する孔部54が設けられており、孔部54と通じて端部カバー部材5内の通気及び排水が行われる。端部カバー部材5は、後片51が胴縁102の前面に沿って配置され、釘やビスなどの固定具109により胴縁102及び壁下地101に固定されている。そして、前片53と後片51との間に、外壁材106の下端部が差し込まれる。
【0017】
軒天井材103は、壁下地101の下方に設けられている。軒天井材103は、矩形平板状に形成され、例えば、窯業系板材、合板、金属板、プラスチック板などが使用される。
【0018】
オーバーハング部役物1は、金属板を折り曲げ加工等して成形した金属成形品である。なお、オーバーハング部材役物1は、アルミニウム等を押出成形した押出成形品であってもよい。金属板としては、塗装鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板などの耐食性のものを使用するのが好ましい。また、オーバーハング部役物1は、一定の断面形状を有し、左右方向に延びて長尺に形成されている。オーバーハング部役物1は、固定部2と、突出部3と、底面部4と、を備えている。
【0019】
固定部2は、正面視で矩形平板状に形成されている。固定部2の下端21には、底面部4が設けられている。底面部4は、固定部2の下端21から後方に延びるように形成されている。底面部4は固定部2の後面に対して直角で略水平に突出している。なお、本明細書において、「直角」は厳密な意味での直角でなく、ほぼ直角も含む概念である。底面部4は、底面視で矩形平板状に形成されている。なお、底面部4は、後方に向かって上方に傾斜するように形成されていてもよい。
【0020】
突出部3は、平面視で矩形平板状に形成されている。突出部3は、固定部2から前方に延びるように形成されている。また突出部3は、固定部2の前面に対して直角で略水平に突出している。突出部3は、固定部2の下端21よりも高い位置に形成されている。従って、突出部3は、底面部4よりも高い位置にある。また突出部3には、通気用及び排水用の複数の孔部31が設けられている。複数の孔部31は、突出部3を厚み方向(上下方向)で貫通している。なお、オーバーハング部役物1は、金属板を折り曲げて形成しているため、底面部4と固定部2の下部(突出部3よりも下の部分)は金属板が二枚重ねになっており、突出部3と固定部2の上部(突出部よりも上の部分)は一枚の金属板で構成されている。
【0021】
そして、オーバーハング部役物1は、固定部2を壁下地101に固定することにより、オーバーハング部100に設けられる。固定部2は、壁下地101の前面と胴縁102の後面との間に配置され、釘やビスなどの固定具107で壁下地101に固定される。従って、胴縁102を固定する固定具108及び端部カバー部材5を固定する固定具109も固定部2を貫通することになる。
【0022】
また、固定部2の下端21は、軒天井材103の下面104よりも下方に突出している。従って、固定部2の下端21は、軒天井材103の下面104よりも低い高さに位置している。この場合、壁下地101の下方に設けられた軒天井材103の前端面105は、固定部2の後面と対向して配置される。軒天井材103の前端面105は、固定部2の後面と接触していてもよいし、わずかに離れている(近接している)状態であってもよい。
【0023】
また、底面部4は、固定部2の下端21から軒天井材103の下面104の前部に当接しつつ後方に延びている状態で配置される。これにより、軒天井材103の下面104の前部が、下方から見えないように、底面部4で覆われる。そして、底面部4により軒天井材103の前部の下面が覆われるため、軒天井材103への水の浸入を抑えることができる。
【0024】
さらに、突出部3は、軒天井材103の下面104よりも上方に位置し、胴縁102に近い高さに位置している。すなわち、突出部3は、胴縁102の下面と対向して配置され、突出部3の上面と胴縁102の下面とが接触あるいは近接して配置されている。
【0025】
上記のように構成されるオーバーハング部100では、突出部3で胴縁102の下面が覆われるため、下方から胴縁102を見えないようにすることができ、オーバーハング部100の外観が向上する。また、突出部3は、軒天井材103の下面104よりも高い位置にあるため、軒天井材103が影になって目立ちにくくなり、オーバーハング部100の外観が向上する。しかも突出部3は、外壁材106及び端部カバー部材5の下面よりも高い位置にあるため、外壁材106及び端部カバー部材5が影になって目立ちにくくなり、オーバーハング部100の外観が向上する。
【0026】
またオーバーハング部役物1は、胴縁102よりも先に壁下地101に取り付けられる。従って、胴縁102を施工するにあたって、壁下地101の前方に突出している突出部3を目安(基準)にして胴縁102の上下方向の位置を調整することができ、胴縁102の施工性が向上する。またオーバーハング部役物1は、軒天井材103よりも先に壁下地101に取り付けられる。従って、軒天井材103を施工するにあたって、壁下地101の下方に位置する底面部4を目安(基準)にして軒天井材103の前後方向の位置を調整することができ、軒天井材103の施工性が向上する。
【0027】
また、底面部4は、軒天井材103の下面104とほぼ同一の高さ位置で、固定部2の下端21から略水平に突出しているため、固定部2の下端21の位置が、軒天井材103の下面104よりも下方に大きく突出せず、固定部2の下方への突出量を抑えて、オーバーハング部100のスマートな外観を実現することができる。
【0028】
(変形例)
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0029】
(変形例1)
図1Bに本実施形態の変形例1を示す。この変形例1は、
図1Aのものと比較して、軒天井材103の下面104から突出部3までの寸法Hが大きい。従って、突出部3がさらに高い位置に配置されることになり、軒天井材103、外壁材106及び端部カバー部材5の影になりやすくなって、オーバーハング部100の外観が向上する。
【0030】
(変形例2)
図2Aに本実施形態の変形例2を示す。この変形例2は、
図1Aのものと比較して、突出部3が前方斜め下方に傾斜している。従って、突出部3の前端からも水を排水することができ、突出部3に水が溜まりにくくなって防水性が向上する。
【0031】
(変形例3)
図2Bに本実施形態の変形例3を示す。この変形例3は、
図1Aのものと比較して、突出部3が前後方向の略中央部でく字状に屈曲している。このため、突出部3は屈曲点32に向かって前方及び後方から下り傾斜して形成されている。従って、突出部3の屈曲点32付近の孔部31から水を排水しやすくなり、突出部3に水が溜まりにくくなって防水性が向上する。
【0032】
(変形例4)
図3に本実施形態の変形例4を示す。この変形例4は、
図1Aのものと比較して、底面部4の後端に上方に突出する補強部40を全長にわたって設け、補強部40の上端が軒天井材103の下面104に当接している。この場合、補強部40により底面部4の補強をすることができる。また底面部4の上面と軒天井材103の下面104との間に隙間が生じ、毛細管現象による水の浸入を低減することができる。
【0033】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係るオーバーハング部役物1は、建物のオーバーハング部100に設けられる。オーバーハング部役物1は、オーバーハング部100の壁下地101と、壁下地101の前方に配置されるオーバーハング部100の胴縁102との間で固定される固定部2と、固定部2から前方に突出して胴縁102の下方に配置される突出部3と、を備える。突出部3は、オーバーハング部100の軒天井材103の下面104よりも胴縁102に近い高さに位置するように構成される。
【0034】
この態様によれば、突出部3が軒天井材103の下面104よりも上方に位置するため、目立ちにくくなり、オーバーハング部100の外観を損ないにくい、という利点がある。また、胴縁102の上下方向の位置が突出部3により決めやすく、施工性が向上する、という利点がある。
【0035】
第2の態様は、第1の態様のオーバーハング部役物1であって、固定部2は、軒天井材103の前端面105に当接するように構成される。
【0036】
この態様によれば、軒天井材103の前後方向の位置が固定部2により決めやすく、施工性が向上する、という利点がある。
【0037】
第3の態様は、第1又は2の態様のオーバーハング部役物1であって、固定部2の下端21は、軒天井材103の下面104よりも低い高さに位置し、固定部2の下端21から軒天井材103の下面104に当接しつつ後方に延びる底面部4を更に備える。
【0038】
この態様によれば、底面部4により軒天井材103への水の浸入を抑えつつ、固定部2の下方への突出量を抑えて、オーバーハング部100のスマートな外観を実現することができる、という利点がある。
【0039】
第4の態様に係るオーバーハング部構造は、前記オーバーハング部役物1と、壁下地101と、胴縁102と、軒天井材103と、を備えるオーバーハング部構造であって、固定部2は、壁下地101と壁下地101の前方に配置される胴縁102との間で固定され、突出部3は、固定部2から前方に突出して胴縁102の下方に配置され、軒天井材103の下面104よりも胴縁102に近い高さに位置する。
【0040】
この態様によれば、突出部3が軒天井材103の下面104よりも上方に位置するため、目立ちにくくなり、オーバーハング部100の外観を損ないにくい、という利点がある。また、胴縁102の上下方向の位置が突出部3により決めやすく、施工性が向上する、という利点がある。
【符号の説明】
【0041】
1 オーバーハング部役物
2 固定部
21 下端
3 突出部
4 底面部
100 オーバーハング部
101 壁下地
102 胴縁
103 軒天井材
104 下面
105 前端面