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特開2023-149889タッチパネル用電極保護膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149889
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】タッチパネル用電極保護膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20231005BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05K3/28 D
G06F3/041 460
G06F3/041 660
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058685
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】南 佳苗
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA32
5E314AA33
5E314AA41
5E314CC15
5E314DD07
5E314EE03
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF05
5E314GG11
5E314GG14
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、耐汗性と、基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル用電極保護膜の形成方法を提供することである。
【解決手段】基材上のタッチパネル用電極を有する側の面に、(A)カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するバインダーポリマーと、(B)光重合開始剤と、(C)ブロック化イソシアネートを含有し、かつ(D)多官能(メタ)アクリレートモノマーを実質的に含まない感光性樹脂層を貼り付け、該感光性樹脂層に対して像様に露光を行い、非露光部をアルカリ現像液によって除去して基材上に開口部を有する保護膜を形成することを特徴とするタッチパネル用電極保護膜の形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネル用電極を有する基材上のタッチパネル用電極を有する側の面に、(A)カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するバインダーポリマーと、(B)光重合開始剤と、(C)ブロック化イソシアネートを含有し、かつ(D)多官能(メタ)アクリレートモノマーを実質的に含まない感光性樹脂層を貼り付け、該感光性樹脂層に対して像様に露光を行い、非露光部をアルカリ現像液によって除去して基材上に開口部を有する保護膜を形成することを特徴とするタッチパネル用電極保護膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル用電極保護膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、あるいはカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段としてタッチパネルセンサーが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルセンサーには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、抵抗膜方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等があり、上記したディスプレイ用途においては抵抗膜方式と投影型静電容量方式が好適に利用されている。抵抗膜方式のタッチパネルセンサーは、支持体上に光透過性導電層を有する光透過性電極を2枚利用し、これら光透過性電極を、ドットスペーサーを介して対向配置した構造を有しており、タッチパネルセンサーの1点に力を加えることにより光透過性導電層同士が接触し、各光透過性導電層に印加された電圧をもう一方の光透過性導電層を通して測定することで、力の加えられた位置の検出を行うものである。一方、投影型静電容量方式のタッチパネルセンサーは、2層の光透過性導電層を有する光透過性電極を1枚、または1層の光透過性導電層を有する光透過性電極を2枚利用し、指等を接近させた際の光透過性導電層間の静電容量変化を検出し、指を接近させた位置の検出を行うものである。後者は可動部分がないため耐久性に優れる他、多点同時検出ができることから、スマートフォンやタブレットPC等で、とりわけ広く利用されている。
【0004】
投影型静電容量方式のタッチパネルセンサーにおいては、支持体上に光透過性導電層をパターニングすることで得られた複数のセンサーからなるセンサー部を配することで、多点同時検出や移動点の検出を可能にしている。このセンサー部が検出した静電容量の変化を電気信号として外部に取り出すため、光透過性電極が有する全てのセンサーと、外部に電気信号を取り出すために設けられる複数の端子からなる端子部との間には、これらを電気的に接続する複数の周辺配線からなる周辺配線部が設けられる。通常、前述した光透過性導電層はディスプレイ上に位置し、周辺配線部や端子部はディスプレイの外、いわゆる額縁部に位置する。従来技術においては、光透過性導電層はインジウム-錫酸化物(ITO)導電膜により形成されるのが一般的であり、周辺配線部や端子部は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属により形成されるのが一般的である。
【0005】
このようなタッチパネルセンサーは、指先が接触する際に水分や塩分などの腐食成分が付着すると、光透過性導電層や金属配線が腐食して、電気抵抗の増加や断線する問題があった。光透過性導電層や金属配線の腐食を防ぐために、タッチパネルセンサーに硬化した感光性樹脂層を保護膜として有する投影型タッチパネルセンサーが開示されている(例えば特許文献1、2)
【0006】
タッチパネルは様々な電子機器に搭載され、より身近なものになってきていることから、水分や塩分などの腐食成分に対する高い腐食防止効果を有する、所謂耐汗性により優れたタッチパネル用電極保護膜が望まれている。しかしながら、上記した特許文献1や特許文献2に記載されるような既存技術では、耐汗性を向上させようとすると、保護膜の基材に対する密着性が低下する場合があり、耐汗性と、基材に対する密着性のバランスに優れた保護膜が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/84883号パンフレット
【特許文献2】特開2018-77490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、耐汗性と、基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル用電極保護膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の発明によって達成される。
【0010】
タッチパネル用電極を有する基材上のタッチパネル用電極を有する側の面に、(A)カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するバインダーポリマーと、(B)光重合開始剤と、(C)ブロック化イソシアネートを含有し、かつ(D)多官能(メタ)アクリレートモノマーを実質的に含まない感光性樹脂層を貼り付け、該感光性樹脂層に対して像様に露光を行い、非露光部をアルカリ現像液によって除去して基材上に開口部を有する保護膜を形成することを特徴とするタッチパネル用電極保護膜の形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐汗性と、基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル用電極保護膜の形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のタッチパネル用電極保護膜の形成方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明に係わる(A)カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するバインダーポリマー(以下、成分(A)と表記する場合がある)としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の側鎖または末端に、カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するポリマーが挙げられる。アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシ基を含有する単量体と他のエチレン性不飽和基を有する単量体の共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等を付加させたものが挙げられる。他のエチレン性不飽和基を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂にアクリル酸やメタクリル酸などを付与し、さらにカルボン酸やその無水物を付与したものを使用できる。該エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノール型、テトラフェノール型、フェノール-キシリレン型、グリシジルエーテル型あるいはそれらのハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。使用する酸無水物としては無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが使用できる。
【0014】
(A)カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するバインダーポリマーの市販品としては、例えば、Z200M、Z230AA、Z250、Z251、Z254F、Z300、Z320(以上、サイクロマー(登録商標)P、ダイセル・オルネクス(株)製)、CCR-1291H、CCR―1235、ZAR―1035、ZAR-2000、ZFR-1401H、ZFR-1491H、ZCR-1569H、ZCR-1601H、ZCR-1797H、ZCR-1798H、UXE-3000、UXE-3024(以上、KAYARAD(登録商標)、日本化薬(株)製)、MAP-4050、MAP-7000、RA―4101(以上ART-CURE(登録商標)、根上工業(株)製)等が挙げられる。
【0015】
成分(A)の酸価は30~500mgKOH/gであることが好ましく、50~300mgKOH/gであることがより好ましい。この酸価が、30mgKOH/g未満ではアルカリ現像の時間が長くなる傾向があり、一方、500mgKOH/gを超えると、Tgが高くなり、被膜としてひび割れが発生しやすくなる。また、成分(A)の質量平均分子量は、2000~200000であることが好ましく、4000~60000であることがより好ましい。質量平均分子量が2000未満の場合、感光性樹脂層を被膜状態に形成するのが困難になることがあり、一方、200000を超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明に係わる(B)光重合開始剤(以下、成分(B)と表記する場合がある)としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル;ベンゾフェノン、N,N,N′,N′-テトラメチル-4,4′-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N′,N′-テトラエチル-4,4′-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0017】
本発明に係わる(C)ブロック化イソシアネート(以下、成分(C)と表記する場合がある)とは、イソシアネート基がブロック剤で保護されている化合物であり、イソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を反応させることで得られる。また、本発明に係わる(C)ブロック化イソシアネート化合物は、常温では安定であるが、ある一定条件下で熱処理すると、ブロック剤が開裂してイソシアネート基が発生する化合物である。熱処理によって発生したイソシアネート基は、成分(A)中のカルボキシ基および/または水酸基と熱架橋して強固な結合を形成する。これにより密着性と耐汗性に優れた保護膜を得ることができる。熱処理の条件は、成分(C)の種類や感光性樹脂層の厚さ等によって適宜選択することができる。
【0018】
ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p-エチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のフェノール系;エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系;アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系;その他イミド系;アミン系;イミダゾール系;ピラゾール系;尿素系;カルバミン酸系;イミン系;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系;ラクタム系等がある。
【0019】
イソシアネート化合物としては、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体、トリマー体等のプレポリマーが挙げられる。
【0020】
本発明に係わる(D)多官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、成分(D)と表記する場合がある)とは、2つ以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物であって、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等の2つのアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物や、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3つ以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物を例示することができる。
【0021】
本発明に係わる感光性樹脂層は、成分(D)を実質的に含有しない。ここでいう「実質的に」とは、感光性樹脂層の全質量に対して3質量%未満であることを言い、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0質量%である。成分(D)の含有量が3質量%以上であると、感光性樹脂層を硬化させて得られる保護層の基材に対する密着性が低下する。
【0022】
本発明に係わる感光性樹脂層には、必要に応じて、上記成分(A)~(C)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、溶剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、減色材、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、撥水剤および撥油剤等が挙げられ、各々成分(A)~(C)の合計量に対して0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明における感光性樹脂層において、前記した成分(A)の含有量は、成分(A)、(B)、および(C)の合計量に対して70~95質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましい。成分(A)の含有量が70質量%未満では、アルカリ現像の際に感光性樹脂層が膨潤して表面が粗くなる場合がある。成分(A)の含有量が95質量%を超えると、耐汗性が低下する場合がある。
【0024】
成分(B)の含有量は、成分(A)、(B)、および(C)の合計量に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。成分(B)の含有量が0.05質量%未満では、光重合性が不十分となりアルカリ現像で感光性樹脂層が膨潤して表面が粗くなる場合がある。一方、10質量%を超えると、感光性樹脂層の色味が濃くなり、タッチパネルの視認性が損なわれる問題が発生する場合がある。
【0025】
成分(C)の含有量は、成分(A)、(B)、および(C)の合計量に対して2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。成分(C)の含有量が2質量%未満では、耐汗性が不十分となる場合がある。一方、20質量%を超えると、感光性樹脂層とタッチパネル用電極基材との密着性が悪化する傾向にある。
【0026】
本発明に係わるタッチパネル用電極が有する基材としては、プラスチック、ガラス、ゴム、セラミックス等が好ましく用いられる。これら基材は全光線透過率が60%以上であるものが好ましい。プラスチックの中でも、フレキシブル性を有する樹脂フィルムは、取扱い性が優れている点で好適に用いられる。基材として使用される樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ環状オレフィン樹脂等からなる厚さ50~300μmの樹脂フィルムが挙げられる。基材には易接着層など公知の層が設けられていても良い。基材上にはセンサー部、配線部、端子部等を構成する金属パターンが形成されている。本発明においてタッチパネル用電極のパターンを形成する金属としては、品質面および性能面から、特にITOおよび銅を用いることが好ましい。
【0027】
本発明に係わる感光性樹脂層は、支持体上に上述した各成分を含有する塗工液を塗工、乾燥することで形成することができる。さらに、感光性樹脂層の上にカバーフィルムを有する積層体とし、感光性樹脂層をタッチパネル用電極基材へ貼り付ける際は、該カバーフィルムを剥離してから、露出した感光性樹脂層の面を該基材へ貼り付けて使用することもできる。支持体としては、活性光線を透過させる透明フィルムが好ましい。該透明フィルムの全光線透過率は60%以上が好ましく、ヘーズ値は10%以下が好ましい。また、支持体の厚みは、薄い方が光の屈折が少ないので好ましく、厚い方が塗工安定性に優れるため好ましいが、5~50μmが好ましい。このようなフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のフィルムが挙げられる。カバーフィルムとしては、未硬化又は硬化した感光性樹脂層を剥離できればよく、離型性の高い樹脂のフィルムが用いられる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコン等の離型剤が塗工されたポリエチレンフィルム等が挙げられる。
【0028】
感光性樹脂層の厚みは、2~20μmであることが好ましく、4~15μmであることがより好ましい。感光性樹脂層が厚すぎると、解像性の低下、コスト高等の問題が発生しやすくなる。逆に薄すぎると、密着性および耐汗性が低下する場合がある。
【0029】
タッチパネル用電極基材へ感光性樹脂層を貼り付ける方法としては、ラミネータ等を用いて、感光性樹脂層を加熱しながらタッチパネル用電極基材に圧着することにより積層する方法等が挙げられる。この際、感光性樹脂層の加熱温度は70~130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1~1.0MPaとすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、上記のように感光性樹脂層を70~130℃に加熱すれば、予めタッチパネル用電極基材を予熱処理することは必要ではないが、密着性をさらに向上させるために、タッチパネル用電極基材の予熱処理を行うこともできる。
【0030】
このようにしてタッチパネル用電極基材上に感光性樹脂層を形成した後に、貼り付けた感光性樹脂層に対してマスク材を介して露光を行い、所定箇所に光硬化部を形成する。露光の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等、紫外線を有効に放射するものを用いることができる。紫外線の照射量および照射時間は、感光性樹脂層に応じて適宜設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを密着させて露光する接触露光法、マスクパターンをドライフィルムに密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法などが挙げられる。
【0031】
非露光部をアルカリ現像液によって除去する方法は、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像して除去する方法を例示することができる。アルカリ現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられ、例えば、20~50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(0.5~2.0質量%水溶液)等が用いられる。
【実施例0032】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1~6、比較例1~3)
表1に示す各成分の配合比率となるように、感光性樹脂層用の塗工液を作製した。表1における各成分配合量の単位は、質量部を表す。成分(A)~(D)は、溶剤を除いた固形分の質量部を表す。また、メチルエチルケトンとジプロピレングリコールモノメチルエーテルを50:50の割合で混合した溶剤を、塗工液の濃度が30質量%となるように添加した。作製した塗工液を、ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(16μm厚、全光線透過率88%、ヘーズ値2%)上に塗工し、70℃で5分間乾燥し、PETフィルムの片面上に感光性樹脂層(乾燥膜厚:9μm)を設け、該感光性樹脂層の上にカバーフィルムとしてポリプロピレンフィルム(25μm厚)を貼合して、実施例1~6および比較例1~3のPETフィルム上に感光性樹脂層とカバーフィルムをこの順に有する積層体を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
表1において、各成分は以下の通りである。
<成分(A):カルボキシ基および(メタ)アクリロイル基を有するバインダーポリマー>
(A-1);KAYARAD UXE-3000(日本化薬(株)製、質量平均分子量10000、酸価98mgKOH/g)
(A-2);KAYARAD UXE-3024(日本化薬(株)製、質量平均分子量10000、酸価60mgKOH/g)
(A-3);KAYARAD ZAR-1035(日本化薬(株)製、質量平均分子量13000、酸価98mgKOH/g)
(A-4);KAYARAD ZAR-2000(日本化薬(株)製、質量平均分子量13000、酸価98mgKOH/g)
(A-5);サイクロマーP Z251(ダイセル・オルネクス(株)製、質量平均分子量14000、酸価66mgKOH/g)
(A-6);サイクロマーP Z250(ダイセル・オルネクス(株)製、質量平均分子量22000、酸価69mgKOH/g)
(A-7);サイクロマーP Z300(ダイセル・オルネクス(株)製、質量平均分子量56000、酸価111mgKOH/g)
<成分(B):光重合開始剤>
(B-1);(1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]
<成分(C):ブロック化イソシアネート>
(C-1);Trixene BI7960((株)GSIクレオス製、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット、ブロック剤:3,5-ジメチルピラゾール、ブロック剤解離温度:120℃)
(C-2);Trixene BI7982((株)GSIクレオス製、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー、ブロック剤:3,5-ジメチルピラゾール、ブロック剤解離温度:120℃)
<成分(D):多官能(メタ)アクリレートモノマー>
(D-1);ペンタエリスリトールトリアクリレート
(D-2);ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
【0036】
<ITO基材の作製>
ポリ環状オレフィン樹脂基材上にITO層が積層されたITO基材(サイズ10cm×10cm)のITO層面に、実施例および比較例の積層体のカバーフィルムを剥離して露出した感光性樹脂層面を、ラミネータを用いて温度100℃、圧力0.2MPa、速度1m/minの条件で熱圧着して貼り付けた。次に、PETフィルム側から感光性樹脂層に対して一辺1cmの四角形パターンを有するフォトマスクを介して露光した。続いて、PETフィルムを剥離し、30℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液にてアルカリ現像を実施し、非露光部の感光性樹脂層を除去した。次に、150℃30分の熱処理を行い、硬化した感光性樹脂層で形成された保護膜を有するITO基材を作製した。
【0037】
<ITO/銅基材の作製>
上述したITO基材の作製において、ポリ環状オレフィン樹脂基材上にITO層が積層されたITO基材(サイズ10cm×10cm)を、ポリ環状オレフィン樹脂基材上にITO層および銅層がこの順に積層されたITO/銅基材(サイズ10cm×10cm)に変更し、保護膜をITO/銅基材の銅層上に形成した以外は同様にして、保護膜を有するITO/銅基材を作製した。
【0038】
<密着性の評価>
上記のように作製した保護膜を有するITO基材、および保護膜を有するITO/銅基材について、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に準じた碁盤目試験を実施し、保護膜の密着性を評価した。碁盤目の剥離個数を数え、下記評価基準にて評価した。結果を表2に示す。実用可能レベルはB以上である。
<密着性評価基準>
A:碁盤目の剥離個数が0個。
B:碁盤目の剥離個数が全体の0%を超えて5%以下。
C:碁盤目の剥離個数が全体の5%を超えて15%以下。
D:碁盤目の剥離個数が全体の15%を超えて35%以下。
E:碁盤目の剥離個数が全体の35%を超える。
【0039】
【表2】
【0040】
<耐汗性の評価>
100質量部の純水に対して、5質量部の塩化ナトリウム、5質量部のりん酸水素二ナトリウム・12水和物および2.1質量部の99%酢酸を混合した人工汗液を作製した。次に上記保護膜を有するITO/銅基材の保護膜上に、該人工汗液をスポイトで20カ所に滴下し、室温で乾燥させた。次に、乾燥させた該ITO/銅基材を60℃95%RHの雰囲気下で100時間保存し、銅表面の変色具合を観察した。結果を表2に示す。実用可能レベルはB以上である。また、本発明においては、保護膜を有するITO/銅基材の耐汗性評価がB以上の場合、保護膜を有するITO基材の耐汗性についても実用可能レベルとした。
<耐汗性評価基準>
A:銅表面に変色が認められない。
B:銅表面に黒い変色が1カ所認められる。
C:銅表面に黒い変色が2~5カ所認められる。
D;銅表面に黒い変色が6~20カ所認められる。
【0041】
表2の結果から、本発明によって、耐汗性と、基材に対する密着性のバランスに優れたタッチパネル用保護膜を形成できることが判る。