(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149894
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】学習装置、学習方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/91 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01S13/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058691
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 栄一
(72)【発明者】
【氏名】中林 昭一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC19
5J070AE01
5J070AF01
5J070AH14
(57)【要約】
【課題】車両の種別の識別精度を向上させることを可能とする技術が提供されることが望まれる。
【解決手段】第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得する車両情報取得部と、センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づける紐づけ処理部と、前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部と、を備える、学習装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得する車両情報取得部と、
センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づける紐づけ処理部と、
前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部と、
を備える、学習装置。
【請求項2】
前記第1の車両の種別は、前記第1の車両が大型車両であるという種別または大型車両以外であるという種別を含み、
前記第2の車両の種別は、前記第2の車両が大型車両であるという種別または大型車両以外であるという種別を含む、
請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記種別情報は、前記第1の車両の車種および車長の少なくともいずれか一方を含む、
請求項1または2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記学習部は、前記種別情報に対応する前記第1の車両の種別を判定し、前記第1の車両の種別を教師データとし、前記代表値を訓練データとして、前記パラメータを学習する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の学習装置。
【請求項5】
前記代表値は、前記受信電力の最大値、中央値または平均値である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の学習装置。
【請求項6】
前記学習部は、前記代表値と前記距離と前記種別情報とに基づいて、前記パラメータを学習する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の学習装置。
【請求項7】
前記紐づけ処理部は、前記距離および前記方向に基づいて、物体の位置を算出し、前記物体の位置と前記位置情報が示す前記第1の車両の位置との差分が第1の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づける、
請求項1~6のいずれか1項に記載の学習装置。
【請求項8】
前記車両情報は、前記第1の車両の速度を含み、
前記センサ情報は、物体の速度を含み、
前記紐づけ処理部は、前記物体の位置と前記第1の車両の位置との差分が前記第1の閾値より小さい場合、かつ、前記物体の速度と前記第1の車両の速度との差分が第2の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づける、
請求項7に記載の学習装置。
【請求項9】
前記車両情報は、前記第1の車両の車長を含み、
前記センサ情報は、あらかじめ設定された車両走行方向に沿った物体の長さを含み、
前記紐づけ処理部は、前記物体の位置と前記第1の車両の位置との差分が前記第1の閾値より小さい場合、かつ、前記物体の長さと前記第1の車両の車長との差分が第3の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づける、
請求項7に記載の学習装置。
【請求項10】
前記車両情報は、前記位置が検出された第1の時刻を含み、
前記センサ情報は、前記距離および前記方向が検出された第2の時刻を含み、
前記紐づけ処理部は、前記物体の位置と前記第1の車両の位置との差分が前記第1の閾値より小さい場合、かつ、前記第1の時刻と前記第2の時刻との差分が第4の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づける、
請求項7に記載の学習装置。
【請求項11】
第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得することと、
センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得することと、
前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づけることと、
前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習することと、
を備える、学習方法。
【請求項12】
コンピュータを、
第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得する車両情報取得部と、
センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づける紐づけ処理部と、
前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部と、
を備える学習装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、学習方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、センサによって得られたセンサデータに基づいて、車両の種別を識別する技術が知られている。車両の種別の例としては、車両が大型車両であるという種別、車両が大型車両以外であるという種別などが挙げられる。例えば、レーダによって照射されて物体によって反射された信号の、レーダによる受信強度に基づいて、車両の種別を識別する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両の種別の識別精度を向上させることを可能とする技術が提供されることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両の種別の識別精度を向上させることを可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得する車両情報取得部と、センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づける紐づけ処理部と、前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部と、を備える、学習装置が提供される。
【0007】
前記第1の車両の種別は、前記第1の車両が大型車両であるという種別または大型車両以外であるという種別を含んでもよく、前記第2の車両の種別は、前記第2の車両が大型車両であるという種別または大型車両以外であるという種別を含んでもよい。
【0008】
前記種別情報は、前記第1の車両の車種および車長の少なくともいずれか一方を含んでもよい。
【0009】
前記学習部は、前記種別情報に対応する前記第1の車両の種別を判定し、前記第1の車両の種別を教師データとし、前記代表値を訓練データとして、前記パラメータを学習してもよい。
【0010】
前記代表値は、前記受信電力の最大値、中央値または平均値であってもよい。
【0011】
前記学習部は、前記代表値と前記距離と前記種別情報とに基づいて、前記パラメータを学習してもよい。
【0012】
前記紐づけ処理部は、前記距離および前記方向に基づいて、物体の位置を算出し、前記物体の位置と前記位置情報が示す前記第1の車両の位置との差分が第1の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づけてもよい。
【0013】
前記車両情報は、前記第1の車両の速度を含んでもよく、前記センサ情報は、物体の速度を含んでもよく、前記紐づけ処理部は、前記物体の位置と前記第1の車両の位置との差分が前記第1の閾値より小さい場合、かつ、前記物体の速度と前記第1の車両の速度との差分が第2の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づけてもよい。
【0014】
前記車両情報は、前記第1の車両の車長を含んでもよく、前記センサ情報は、あらかじめ設定された車両走行方向に沿った物体の長さを含んでもよく、前記紐づけ処理部は、前記物体の位置と前記第1の車両の位置との差分が前記第1の閾値より小さい場合、かつ、前記物体の長さと前記第1の車両の車長との差分が第3の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づけてもよい。
【0015】
前記車両情報は、前記位置が検出された第1の時刻を含んでもよく、前記センサ情報は、前記距離および前記方向が検出された第2の時刻を含んでもよく、前記紐づけ処理部は、前記物体の位置と前記第1の車両の位置との差分が前記第1の閾値より小さい場合、かつ、前記第1の時刻と前記第2の時刻との差分が第4の閾値より小さい場合に、前記種別情報と前記代表値とを紐づけてもよい。
【0016】
また、本発明のある観点によれば、第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得することと、センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得することと、前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づけることと、前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習することと、を備える、学習方法が提供される。
【0017】
また、本発明のある観点によれば、コンピュータを、第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得する車両情報取得部と、センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づける紐づけ処理部と、前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部と、を備える学習装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、車両の種別の識別精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るレーダ装置の信号処理部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0022】
[概要の説明]
続いて、本発明の実施形態の概要を説明する。
【0023】
近年、センサによって得られたセンサデータに基づいて、車両の種別を識別する技術が知られている。車両の種別の例としては、車両が大型車両であるという種別、車両が大型車両以外であるという種別などが挙げられる。例えば、レーダによって照射されて物体によって反射された信号の、レーダによる受信強度に基づいて、車両の種別を識別する技術が開示されている。
【0024】
本明細書においては、車両の種別の識別精度を向上させることを可能とする技術について主に提案する。より詳細に、レーダによって照射されて物体によって反射された光の、レーダによる受信強度は、アンテナの指向性、アンテナの向き、アンテナが設置される環境などによって変化し得る。そのため、単にレーダによる受信強度に基づいて、車両の種別を識別するだけでは、車両の種別の識別精度を向上させるのが困難である。
【0025】
そこで、本明細書においては、アンテナの指向性、アンテナの向き、アンテナが設置される環境などに応じて、車両の種別を識別するためのパラメータを適切な値に自動的に調整する技術を提案する。車両の種別を識別するためのパラメータが適切な値に自動的に調整されることによって、調整後のパラメータを用いて車両の種別の識別精度を向上させることが可能になる。
【0026】
以上、本発明の実施形態の概要を説明した。
【0027】
[実施形態の詳細]
続いて、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0028】
(構成の説明)
本発明の実施形態に係る技術では、レーダ装置について説明する。レーダ装置は、情報処理装置の例としての学習装置として機能し得る。レーダ装置には、センサの例としてのアンテナが搭載されている。以下の説明においては、センサの例として、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダが用いられる場合について説明する。しかし、後の変形例においても説明するように、レーダ装置に搭載されるセンサは、FMCWレーダに限定されない。
【0029】
(通信システムの構成例)
図1は、本発明の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る通信システムは、レーダ装置101と、車両103と、路側機102とを備える。車両103と路側機102とは、無線信号によって通信を行うことが可能である。また、路側機102とレーダ装置101とは、LAN(Local Area Network)ケーブル113を介して通信を行うことが可能である。
【0030】
(車両の構成例)
車両103は、道路平面上を走行する。例えば、車両103は、道路平面上をあらかじめ定められた車両走行方向に沿って走行する。車両103には、車載機104が搭載されている。車載機104は、車両アンテナ111と接続されており、車両アンテナ111を介して車両(第1の車両)に関する情報(以下、「車両情報」とも言う。)を送信する。車載機104が車両情報を送信するタイミングは特に限定されない。一例として、車載機104は、車両情報を定期的に送信してもよい。
【0031】
なお、後にも説明するように、車載機104によって送信される車両情報に含まれる具体的な情報の種類は限定されない。ここでは、一例として、車両情報が、車両の位置情報と、車両の種別に応じた種別情報とを含む場合を主に想定する。
【0032】
なお、車両の位置は、位置検出センサによって検出され得る。典型的には、位置検出センサとして、GPS(Global Positioning System)センサが用いられ得る。しかし、位置検出センサは、GPSセンサに限定されない。
【0033】
また、車両の種別は、車両が大型車両であるという種別または大型車両以外であるという種別を含み得る。ここでは、種別情報が、車両の種類(以下、「車種」とも言う。)、および、車両の前後方向の長さ(以下、「車長」とも言う。)の双方を含む場合を主に想定する。しかし、種別情報は、車種および車長の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。車種および車長は、あらかじめ車載機104に設定されていてよい。
【0034】
(路側機の構成例)
路側機102は、道路を基準とした所定の位置に設置される。路側機102は、路側機アンテナ112と接続されており、路側機アンテナ112を介して車載機104から車両情報を受信する。路側機102は、車載機104から受信した車両情報を、LANケーブル113を介してレーダ装置101に送信する。
【0035】
(レーダ装置の構成例)
レーダ装置101は、信号生成部105(シンセサイザ)と、送信アンテナ106と、受信アンテナ107と、ミキサ108と、ADC(Analog-Digital Converter)109と、信号処理部110と、車両情報記憶部114と、パラメータ生成部115とを備える。
【0036】
信号処理部110およびパラメータ生成部115は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置(プロセッサ)を含み、ROM(Read Only Memory)により記憶されているプログラムが演算装置によりRAMに展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。このとき、当該プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な記録媒体も提供され得る。あるいは、これらのブロックは、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。
【0037】
車両情報記憶部114は、メモリによって構成されており、路側機102からLANケーブル113を介してレーダ装置101によって受信された車両情報を記憶する。
【0038】
信号生成部105は、信号を生成する。より詳細に、信号生成部105は、チャープ信号と呼ばれる時間的に周波数が変化する信号を生成する。信号生成部105は、送信アンテナ106と接続されており、生成した信号を送信アンテナ106に出力する。送信アンテナ106は、信号生成部105によって生成された信号を送信する。送信アンテナ106によってチャープ信号が送信されると、チャープ信号が物体において反射される。受信アンテナ107は、物体において反射された信号を受信する。物体には、車両が含まれる他、車両以外の物体も含まれ得る。
【0039】
ミキサ108は、送信アンテナ106および受信アンテナ107それぞれと接続されており、ミキサ108には、送信アンテナ106によって送信された信号と、受信アンテナ107によって受信された信号とが入力される。ミキサ108は、送信アンテナ106によって送信された信号と、受信アンテナ107によって受信された信号とに基づいて、IF(Intermediate Frequency)信号を生成する。
【0040】
より詳細に、ミキサ108は、送信信号と受信信号とを乗算し、送信信号と受信信号の周波数の差に相当する周波数を持ったIF信号を生成する。ミキサ108は、生成したIF信号をADC109に出力する。ADC109は、ミキサ108から出力されたIF信号の形式をアナログ形式からデジタル形式に変換し、デジタル形式のIF信号を信号処理部110に出力する。
【0041】
信号処理部110は、ADC109から出力されたデジタル形式のIF信号に対して信号処理を行うことにより、レーダ装置101から物体までの距離、物体の速度、および、レーダ装置101の位置を基準とした物体の方向(以下、物体の「方向」を物体の「角度」と言う場合もある。)を検出する。ここで、レーダ装置101から物体までの距離、物体の速度、および、レーダ装置101の位置を基準とした物体の方向の検出例について簡単に説明する。
【0042】
まず、信号処理部110は、IF信号に対して距離FFTを行うことにより、周波数スペクトルを得る。信号処理部110は、このようにして得られた周波数スペクトルに基づいて、レーダ装置101と物体との距離を検出する。より詳細に、信号処理部110は、周波数スペクトルからピークを抽出する。そして、信号処理部110は、ピークを取る周波数を距離に換算することによって、レーダ装置101から物体までの距離を検出する。
【0043】
障害物の速度を検出するには、チャープフレームと呼ばれる時間的に連続したチャープ信号の集まりを利用する。送信アンテナ106によってチャープフレームが送信され、ミキサ108によって各チャープに対するIF信号が得られる。信号処理部110は、それぞれのIF信号に対する距離FFTを行い、それぞれのIF信号に対する周波数スペクトルを得る。周波数スペクトルには物体の存在を示すピークが現れる。
【0044】
信号処理部110は、チャープフレーム内における同様の位置に存在するピークのデータ全体に対して、さらにFFT(速度FFT)をかける。これによって、信号処理部110は、角周波数スペクトルを得る。信号処理部110は、角周波数スペクトルに基づいて、物体の速度を検出する。より詳細に、信号処理部110は、角周波数スペクトルからピークを抽出する。そして、信号処理部110は、ピークを取る角周波数を速度に換算することによって、物体の速度を検出する。
【0045】
レーダ装置101の位置を基準とした物体の方向を検出するには、複数の受信アンテナ107を利用する。信号処理部110は、複数の受信アンテナ107それぞれに対応する速度FFTの結果に対して、さらにFFT(角度FFT)をかける。これによって、信号処理部110は、スペクトルを得る。
【0046】
信号処理部110は、このようにして得られたスペクトルからピークを抽出する。このピークは、複数の受信アンテナ107間における位相差に該当する。そこで、信号処理部110は、この位相差を角度に換算することによって、レーダ装置101の位置を基準とした物体の方向を検出する。
【0047】
以上、レーダ装置101から物体までの距離、物体の速度、および、レーダ装置101の位置を基準とした物体の方向の検出例について簡単に説明した。その他、レーダ装置101は、物体によって反射されて受信アンテナ107によって受信された信号の受信電力を同一の物体ごとに計測する。そして、信号処理部110は、物体ごとに受信電力の代表値を算出する。例えば、レーダ装置101による計測間隔における位置変化が所定の移動量よりも小さい物体は、同一の物体とみなされてよい。なお、受信電力の代表値は、受信電力の最大値、中央値または平均値であってもよい。
【0048】
信号処理部110は、レーダ装置101から物体までの距離、レーダ装置101の位置を基準とした物体の方向、物体によって反射された信号の受信電力の代表値を、センサ情報として物体ごとに取得するセンサ情報取得部の例として機能する。なお、センサ情報に物体の速度も含まれる場合については、後の変形例において詳細に説明する。さらに、信号処理部110は、車両情報記憶部114から車両情報を取得する車両情報取得部の例として機能する。
【0049】
さらに、信号処理部110は、車両情報とセンサ情報との紐づけを行う紐づけ処理部の例として機能する。ここでは、信号処理部110は、車両情報に含まれる車両の位置情報と、センサ情報に含まれる距離および方向とに基づいて、車両情報に含まれる種別情報と、センサ情報に含まれる受信電力の代表値とを紐づける場合を主に想定する。
【0050】
より詳細に、レーダ装置101の位置情報は、あらかじめ計測され、レーダ装置101に設定されていてもよい。かかる場合には、信号処理部110は、あらかじめ設定されたレーダ装置101の位置情報と、センサ情報に含まれる距離および方向とに基づいて、レーダ装置101の位置を基準とした物体の位置の位置を検出し得る。
【0051】
そして、信号処理部110は、物体の位置と、車両の位置情報が示す車両の位置との差分を算出する。信号処理部110は、物体の位置と車両の位置との差分が、あらかじめ設定された第1の閾値より小さい場合に、物体と車両とが同一の対象であると判定して、車両情報とセンサ情報とを紐づければよい。すなわち、信号処理部110は、車両の種別情報と受信電力の代表値とを紐づければよい。
【0052】
パラメータ生成部115は、信号処理部110によって紐づけられた、受信電力の代表値と車両の種別情報とに基づいて、車両(第2の車両)の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部の例として機能する。また、学習段階に係る車両(第1の車両)の種別と同様に、識別段階に係る車両(第2の車両)の種別は、車両が大型車両であるという種別または大型車両以外であるという種別を含み得る。
【0053】
より詳細に、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報に対応する車両(第1の車両)の種別を判定する。種別情報と種別とはあらかじめ対応付けられていてよい。例えば、「車種=車種A」かつ「車長≧L1」に対して、「種別=大型車両」が対応付けられている場合を想定する。このとき、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報が示す車種が「車種A」である場合、かつ、車長がL1以上である場合には、車両の種別を「大型車両」として判定すればよい。
【0054】
一方、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報が示す車種が「車種A以外」である場合、または、車長がL1未満である場合には、車両の種別を「大型車両以外」として判定すればよい。そして、パラメータ生成部115は、判定した車両の種別を教師データとし、受信電力の代表値を訓練データとして、パラメータを学習する。
【0055】
これによって、レーダ装置101が備えるアンテナの指向性、アンテナの向き、アンテナが設置される環境なども考慮された上で、車両の種別を識別するためのパラメータが自動的に調整され得る。したがって、調整後のパラメータを用いて車両の種別の識別精度を向上させることが可能になる。
【0056】
パラメータ生成部115は、レーダ装置101から物体までの距離と受信電力の代表値と車両の種別情報とに基づいて、パラメータを学習してもよい。このとき、パラメータ生成部115は、判定した車両の種別を教師データとし、レーダ装置101から物体までの距離および受信電力の代表値を訓練データとして、パラメータを学習する。これによって、レーダ装置101から物体までの距離も考慮された学習が行われ得る。
【0057】
なお、パラメータは、訓練データを教師データごとに分ける境界線を決めるためのパラメータであってよい。また、機械学習アルゴリズムの種類は特に限定されない。一例として、機械学習アルゴリズムとして、SVM(Support Vector Machine)が用いられてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係る通信システムの構成例について説明した。
【0059】
(動作の説明)
続いて、本発明の実施形態に係るレーダ装置101の信号処理部110の動作例について説明する。
【0060】
図2は、本発明の実施形態に係るレーダ装置101の信号処理部110の動作例を示すフローチャートである。
図2に示されるように、信号処理部110は、車両情報記憶部114から1または複数の車両情報を取得する(S201)。そして、信号処理部110は、取得した1または複数の車両情報に対応する各車両に関して、繰り返し処理(S202~S206)を実行する。
【0061】
まず、信号処理部110は、車両情報に関連するセンサ情報を抽出する(S203)。より詳細に、信号処理部110は、あらかじめ設定されたレーダ装置101の位置情報と、センサ情報に含まれる距離および方向とに基づいて、レーダ装置101の位置を基準とした物体の位置を検出する。そして、信号処理部110は、物体の位置と、車両の位置情報が示す車両の位置との差分を算出する。
【0062】
信号処理部110は、物体の位置と車両の位置との差分が、あらかじめ設定された第1の閾値より小さい場合に、物体と車両とが同一の対象であると判定して、車両情報に関連するセンサ情報を抽出すればよい。信号処理部110は、抽出したセンサ情報から受信電力の代表値を抽出する(S204)。
【0063】
そして、信号処理部110は、センサ情報に含まれる、レーダ装置101から物体までの距離と、車両情報に含まれる、車長および車種と、センサ情報から抽出した受信電力の代表値との組を生成し、生成した組をパラメータ生成部115に出力する(S205)。各車両に関する繰り返し処理(S202~S206)が終了すると、パラメータ生成部115によって、信号処理部110から出力された各組に基づくパラメータの学習が行われる。
【0064】
以上、本発明の実施形態に係るレーダ装置101の信号処理部110の動作例について説明した。
【0065】
以上、本発明の実施形態の詳細について説明した。
【0066】
[効果の説明]
以上に説明したように、本発明の実施形態によれば、第1の車両の位置情報と前記第1の車両の種別に応じた種別情報とを含んだ車両情報を取得する車両情報取得部と、センサからの距離および方向と前記センサにおける受信電力の代表値とを含んだセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記位置情報と前記距離および前記方向とに基づいて、前記種別情報と前記代表値とを紐づける紐づけ処理部と、前記代表値と前記種別情報とに基づいて、第2の車両の種別を識別するためのパラメータを学習する学習部と、を備える、学習装置が提供される。
【0067】
さらに、本発明の実施形態によれば、レーダ装置が備えるアンテナの指向性、アンテナの向き、アンテナが設置される環境なども考慮された上で、車両の種別を識別するためのパラメータが自動的に調整され得る。したがって、調整後のパラメータを用いて車両の種別の識別精度を向上させることが可能になる。
【0068】
[変形例の説明]
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
(センサの変形例)
上記では、レーダ装置101に搭載される物体検出用のセンサの例として、FMCWレーダを例に挙げて説明した。しかし、レーダ装置101に搭載される物体検出用のセンサは、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置101に搭載される物体検出用のセンサは、他の方式によるレーダであってもよいし、LiDAR(Light Detection and Ranging)であってもよいし、他のセンサであってもよい。
【0070】
(種別情報の変形例)
上記では、種別情報が、車種および車長の双方を含む場合について主に説明した。しかし、種別情報は、車種を含み、車長を含まなくてもよい。例えば、「車種=車種A」に対して、「種別=大型車両」が対応付けられている場合を想定する。このとき、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報が示す車種が「車種A」である場合、車両の種別を「大型車両」として判定してもよい。一方、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報が示す車種が「車種A以外」である場合、車両の種別を「大型車両以外」として判定してもよい。
【0071】
あるいは、種別情報は、車種を含まずに、車長を含んでもよい。例えば、「車長≧L1」に対して、「種別=大型車両」が対応付けられている場合を想定する。このとき、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報が示す車長がL1以上である場合、車両の種別を「大型車両」として判定してもよい。一方、パラメータ生成部115は、車両情報に含まれる種別情報が示す車長がL1未満である場合、車両の種別を「大型車両以外」として判定してもよい。
【0072】
(マッチングの変形例1)
上記では、車両情報とセンサ情報とのマッチングに、車両の位置を用いる場合について主に説明した。しかし、車両情報とセンサ情報とのマッチングには、車両の位置だけでなく、他の付加的な情報が用いられてもよい。例えば、付加的な情報は、車両の速度を含んでもよい。
【0073】
より詳細に、車載機104から送信される車両情報には、車両(第1の車両)の速度が含まれる場合があり得る。また、上記したように、信号処理部110によって物体の速度が検出される場合があり得る。すなわち、レーダ装置101によって得られるセンサ情報には、物体の速度が含まれる場合があり得る。かかる場合には、信号処理部110は、センサ情報に含まれる物体の速度と車両情報に含まれる車両(第1の車両)の速度との差分を算出すればよい。
【0074】
そして、信号処理部110は、センサ情報に含まれる物体の位置と、車両情報に含まれる車両(第1の車両)の位置との差分があらかじめ設定された第1の閾値より小さい場合、かつ、センサ情報に含まれる物体の速度と車両情報に含まれる車両(第1の車両)の速度との差分があらかじめ設定された第2の閾値より小さい場合に、物体と車両とが同一の対象であると判定して、車両情報とセンサ情報とを紐づければよい。すなわち、信号処理部110は、車両の種別情報と受信電力の代表値とを紐づければよい。
【0075】
(マッチングの変形例2)
あるいは、付加的な情報は、車長を含んでもよい。
【0076】
より詳細に、車載機104から送信される車両情報には、車両(第1の車両)の車長が含まれる場合があり得る。また、信号処理部110によってあらかじめ設定された車両走行方向に沿った物体の長さが検出される場合があり得る。すなわち、レーダ装置101によって得られるセンサ情報には、車両走行方向に沿った物体の長さが含まれる場合があり得る。かかる場合には、信号処理部110は、センサ情報に含まれる物体の長さと車両情報に含まれる車両(第1の車両)の車長との差分を算出すればよい。
【0077】
そして、信号処理部110は、センサ情報に含まれる物体の位置と、車両情報に含まれる車両(第1の車両)の位置との差分があらかじめ設定された第1の閾値より小さい場合、かつ、センサ情報に含まれる物体の長さと車両情報に含まれる車両(第1の車両)の車長との差分があらかじめ設定された第3の閾値より小さい場合に、物体と車両とが同一の対象であると判定して、車両情報とセンサ情報とを紐づければよい。すなわち、信号処理部110は、車両の種別情報と受信電力の代表値とを紐づければよい。
【0078】
(マッチングの変形例3)
あるいは、付加的な情報は、時刻を含んでもよい。
【0079】
より詳細に、車載機104から送信される車両情報には、車両(第1の車両)の位置が検出された時刻(第1の時刻)が含まれる場合があり得る。また、信号処理部110によって距離および方向が検出された時刻(第2の時刻)が取得される場合があり得る。すなわち、レーダ装置101によって得られるセンサ情報には、距離および方向が検出された時刻が含まれる場合があり得る。かかる場合には、信号処理部110は、センサ情報に含まれる時刻と車両情報に含まれる時刻との差分を算出すればよい。
【0080】
そして、信号処理部110は、センサ情報に含まれる物体の位置と、車両情報に含まれる車両(第1の車両)の位置との差分があらかじめ設定された第1の閾値より小さい場合、かつ、センサ情報に含まれる時刻(第1の時刻)と車両情報に含まれる時刻(第2の時刻)との差分があらかじめ設定された第4の閾値より小さい場合に、物体と車両とが同一の対象であると判定して、車両情報とセンサ情報とを紐づければよい。すなわち、信号処理部110は、車両の種別情報と受信電力の代表値とを紐づければよい。
【符号の説明】
【0081】
101 レーダ装置
102 路側機
103 車両
104 車載機
105 信号生成部
106 送信アンテナ
107 受信アンテナ
108 ミキサ
109 ADC
110 信号処理部
111 車両アンテナ
112 路側機アンテナ
113 LANケーブル
114 車両情報記憶部
115 パラメータ生成部