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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001499
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】吸音板、遮音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102266
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】笠見 智大
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆
(72)【発明者】
【氏名】浦田 容輔
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB01
2D001CB02
2D001CC02
2D001CD01
(57)【要約】
【課題】支柱の固定構造(アンカーボルト等)の保守点検作業を容易にすると共に、遮音性能にも考慮された吸音板の提供。
【解決手段】支柱2の間に設置される、パネル体の内部に吸音材を備える吸音板であって、パネル体の長手方向の端部における下端部において、正面側に開口する開口部A1と、支柱2を固定するための固定部材22を、開口部A1から視認できるように形成された空間部と、開口部A1を覆うように、着脱可能若しくは開閉可能に設置された、400Hzの音に対して25dB以上、及び、1000Hzの音に対して30dB以上の音量透過損失を生じさせ、光透過性の部材によって形成された透光板13と、を備えることを特徴とする吸音板。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱間に設置される、パネル体の内部に吸音材を備える吸音板であって、
前記パネル体の長手方向の端部における下端部において、正面側に開口する開口部と、
前記支柱を固定するための固定部材を、前記開口部から視認できるように形成された空間部と、
前記開口部を覆うように、着脱可能若しくは開閉可能に設置された、400Hzの音に対して25dB以上、及び、1000Hzの音に対して30dB以上の音量透過損失を生じさせ、光透過性の部材によって形成された透光板と、
を備えることを特徴とする吸音板。
【請求項2】
前記空間部が前記パネル体の背面に背面開口部を形成し、
前記背面開口部を開閉させる若しくは着脱可能に設置される背面開閉蓋を備えることを特徴とする請求項1に記載の吸音板。
【請求項3】
前記背面開閉蓋が、ヒンジ構造を有して外側へと開くように前記パネル体の背面に取り付けられており、
前記背面開閉蓋の閉状態を保持する閉保持部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の吸音板。
【請求項4】
前記空間部が前記パネル体の、背面アンカー側の底面部に底面開口部を形成していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の吸音板。
【請求項5】
前記底面開口部を開閉させる若しくは着脱可能に設置される底面開閉蓋を備えることを特徴とする請求項4に記載の吸音板。
【請求項6】
前記固定部材によって固定され、所定間隔で立設された前記支柱と、
前記支柱間に積み上げられるように設置された吸音板と、
前記積み上げられた吸音板のうち、最下段の吸音板が請求項1から5の何れかに記載の吸音板であることを特徴とする遮音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路等の道路脇に設けられる遮音壁に使用される吸音板、若しくは当該吸音板を備える遮音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の走行音による騒音を低減するため、高速道路等において、道路脇に遮音壁を設置することが行われている。
高速道路等に設けられる遮音壁は、高欄に支柱状に設けられた複数のH形鋼のフランジ間に複数の吸音板が挟まれるように設置される(段積みされる)ことで壁状に形成されているものが、一つの代表的な構造である。
吸音板は、吸音材を内部に有するパネル体を備え、パネル体にはルーバー等の穴が形成されている。このような構造により、パネル体内部へと伝達された騒音を吸音材で吸収するものである。
吸音板を支持する支柱は、アンカーボルト等によって高欄に固定されており、遮音壁の保守点検の際には、支柱の固定構造(アンカーボルト等)についても、点検及び必要に応じて増し締め等をする必要がある。
このような、支柱の固定構造(アンカーボルト等)の保守点検作業を容易にするための技術が、特許文献1~4で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-115572号公報
【特許文献2】特開2019-078103号公報
【特許文献3】特開2020-190169号公報
【特許文献4】特開2021-042657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示される技術は、パネル体の背面側に開口部が形成され、この開口部を開閉させるカバーが設けられており、当該カバーを開けることによって支柱の固定構造(アンカーボルト等)にアクセス可能とさせる技術であるが、その前提として吸音材の取り外しを要するものであり、その点で作業の煩雑さを伴うものである。
特許文献2で開示される技術は、パネル体の下側両端に切欠き部を設け、当該切欠き部にカバー部材を設けるようにしている。このような構成の場合、パネル体の下側両端に形成された切欠き部による遮音性能の低下が懸念される。また、カバー部材が、H形支柱よりも民地側(道路側の反対側)に回りこむように形成されるものであり、特許文献2の図5からも理解されるように、H形支柱の形状(寸法)に対する自由度が小さくなる(支柱の仕様が違うと使用できない)おそれがあるものである。
特許文献3及び特許文献4で開示される技術は、パネル体の下側両端に、正面側(道路側)に開口し、パネル体の背面板の一部を背壁部とする点検部が形成されている。このような構成の場合、特許文献2と同様に、点検部における遮音性能の低下が懸念される。また、パネル体の背面板の下部を、H形鋼の支柱よりも民地側(道路側の反対側)に膨出させた構造であり、これも特許文献2と同様に、H形支柱の形状(寸法)に対する自由度が小さくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、支柱の固定構造(アンカーボルト等)の保守点検作業を容易にすると共に、遮音性能にも考慮された吸音板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
支柱間に設置される、パネル体の内部に吸音材を備える吸音板であって、前記パネル体の長手方向の端部における下端部において、正面側に開口する開口部と、前記支柱を固定するための固定部材を、前記開口部から視認できるように形成された空間部と、前記開口部を覆うように、着脱可能若しくは開閉可能に設置された、400Hzの音に対して25dB以上、及び、1000Hzの音に対して30dB以上の音量透過損失を生じさせ、光透過性の部材によって形成された透光板と、を備えることを特徴とする吸音板。
【0007】
(構成2)
前記空間部が前記パネル体の背面に背面開口部を形成し、前記背面開口部を開閉させる若しくは着脱可能に設置される背面開閉蓋を備えることを特徴とする構成1に記載の吸音板。
【0008】
(構成3)
前記背面開閉蓋が、ヒンジ構造を有して外側へと開くように前記パネル体の背面に取り付けられており、前記背面開閉蓋の閉状態を保持する閉保持部材を備えることを特徴とする構成2に記載の吸音板。
【0009】
(構成4)
前記空間部が前記パネル体の、背面アンカー側の底面部に底面開口部を形成していることを特徴とする構成1から3の何れかに記載の吸音板。
【0010】
(構成5)
前記底面開口部を開閉させる若しくは着脱可能に設置される底面開閉蓋を備えることを特徴とする構成4に記載の吸音板。
【0011】
(構成6)
前記固定部材によって固定され、所定間隔で立設された前記支柱と、前記支柱間に積み上げられるように設置された吸音板と、前記積み上げられた吸音板のうち、最下段の吸音板が構成1から5の何れかに記載の吸音板であることを特徴とする遮音壁。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸音板によれば、支柱の固定構造(アンカーボルト等)の保守点検作業を容易にすると共に、遮音性能の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の吸音板を示す斜視図
図2】実施形態の吸音板を示す図
図3】実施形態の吸音板を示す断面図
図4】パネル体正面側の両端部の下端付近に形成された開口部を示す図
図5】吸音板を遮音壁として組付けた状態におけるパネル体正面側の両端部の下端付近を示す図
図6】パネル体背面側の両端部の下端付近に形成された背面開口部を示す図
図7】実施形態の吸音板を用いた遮音壁の保守点検の様子を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0015】
図1~3は、本発明に係る実施形態の吸音板を示す図であり、図1は斜視図(ただし、下部部材17は取り付けられていない状態)、図2(a)は側面図、図2(b)は正面/背面図(中心を境に、左側が正面図、右側が背面図)、図2(c)は底面図、図3図2(b)のA-A線に沿った断面図である。
また、図4は、パネル体正面側の両端部の下端付近に形成された開口部の一方を拡大して示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は斜視図である。図5は、遮音壁として組付けられた状態における開口部を示す斜視図である。
図6は、パネル体背面側の両端部の下端付近に形成された背面開口部の一方を示す図であり、図6(a)は背面図(背面開閉蓋が無い状態の図)、図6(b)は斜視図である。
なお、以下の説明において、パネル体の長手方向(図2(b)における左右方向であり、道路脇に設置された際には、道路に沿った方向)を単に“長手方向”といい、この長手方向及び鉛直方向に直交する方向(図3における左右方向であり、道路脇に設置された際には、道路の幅方向)を“厚さ方向”という。
また、吸音板を道路脇に設置された際に道路側となる吸音板の面を“正面”若しくは“前面”、民地側となる面を“背面”という。
【0016】
本実施形態の吸音板1は、支柱間に設置され、パネル体の内部に吸音材を備える吸音板であって、道路脇に設置される遮音壁に用いられるものである。
吸音板1は、その基本的な態様として、ルーバー12等の穴が形成された前面部111と背面部112と側面部113によって構成される箱状のパネル体11の内部に吸音材14を備えている。これらの基本的な構成自体は従来のものと同様であり、ここでのこれ以上の詳しい説明を省略する。
【0017】
遮音壁は、高欄3に支柱2として所定間隔で立設された複数のH形鋼のフランジ間に複数の吸音板が挟まれるように設置される(積み上げられる)ことで壁状に形成されているものである。支柱2は、下端に固定(溶接)されたベースプレート21が、高欄3に打設されたアンカーボルトと締結されることで、高欄3に固定されている(図5参照)。これらの遮音壁の基本的な構成自体についても従来のものと同様であり、ここでのこれ以上の詳しい説明を省略する。
本実施形態の吸音板1は、遮音壁として積み上げられる際に、その最下段に設置されるものであり、その下端に下部部材17を有している。下部部材17は、図5に示されるように、ベースプレート21に形成されたリブ23等に干渉しないように吸音板1を持ち上げて設置させるためのものである。下部部材17自体は、従来のものと同様であり、ここでのこれ以上の詳しい説明を省略する。
なお、吸音板1の上に段積みされる吸音板は、従来の任意の吸音板であってよく、これに関する説明は省略する。
【0018】
図1~6に示されるように、本実施形態の吸音板1は、
パネル体11の長手方向の両端部における下端部において、正面側に開口する開口部A1(図5参照)と、
遮音壁の支柱2(H形鋼)を固定するための固定部材22(アンカーボルトやナット等)を、開口部A1から視認できるように形成された空間部と、
開口部A1を覆うように、着脱可能に設置される光透過性の透光板13と、を備えている。
【0019】
「固定部材22(アンカーボルトやナット等)を、開口部A1から視認できるように形成された空間部」とは、図5からも理解されるように、吸音板1の存在によって本来であれば道路側からは見えなくなる固定部材22Aを、道路側からも見えるように、吸音板1に設けられた、開口部A1から連通する貫通構造部分である。
本実施形態における「空間部」は、前面部111に形成された開口部A1からそのまま奥行方向(厚さ方向)へと延びた空間であり、パネル体11の背面側に形成された背面開口部A2(図6(a)参照)と連通し、また、パネル体11の、背面アンカー(固定部材22のアンカーの内、背面側に位置するアンカー)側の底面部に形成された底面開口部A3(図2(c)参照)と連通している。
【0020】
図4に示されるように、本実施形態における「空間部」は、上面部材131、底面部材133、側面部材132、134によって画定されている。
上面部材131、底面部材133、側面部材132、134は、それぞれ、パネル体11の厚さ方向に延在して、パネル体内部に設けられる板状の部材であり、当該板状部材のそれぞれの前面側と背面側に、略直角に折り曲げられた折り曲げ部分が設けられている(断面視で略コ字状の部材である)。当該折り曲げ部分は、パネル体の前面部111と背面部112に接して、パネル体11に対する取り付け部となる(リベット止め等される)部分であり、また、透光板13を受ける額縁状の突き当たり凹部を形成する。即ち、上面部材131、底面部材133、側面部材132、134のそれぞれの前面側の折り曲げ部分が、開口部A1よりも内側にせり出すように設置されており、且つ、前面部111の厚さの部分だけ奥まった位置となるため、額縁状の突き当たり凹部が形成されるものである。
【0021】
透光板13は、本実施形態では、厚さ12mmのアクリル板(透明)によって形成されている。これにより外部から内部(空間部を通して、固定部材22)を視認可能であると共に、400Hzの音に対して25dB以上、及び、1000Hzの音に対して30dB以上の音量透過損失を生じさせる遮音機能を有している。
前述のように、透光板13は、開口部A1において、上面部材131、底面部材133、側面部材132、134によって構成される額縁状の突き当たり凹部に対してはめ込まれるように設置され、ボルト135によってネジ止めされる(着脱可能に設けられる)。透光板13には、ボルト135のネジ部分を挿通させる穴が形成され、上面部材131の前面側の折り曲げ部分にはボルト135を螺合させるネジ穴が形成されている。当該ネジ穴の配置のため、上面部材131の折り曲げ部分が開口部A1よりも内側にせり出す幅は、底面部材133、側面部材132、134のせり出し幅よりも大きく形成されている。
【0022】
図6に示されるように、パネル体11の背面(背面部112)の長手方向の両端部における下端部において、背面開口部A2が形成されている(図6では一端部側のみ示している)。前述のごとく、背面開口部A2は、固定部材22Aを道路側からも見えるようにするための「空間部」を構成するものである。背面開口部A2には、これを開閉させる背面開閉蓋15が備えられる。
背面開閉蓋15は、外側へと開くように、上端側でヒンジ151によって背面(背面部112)に取り付けられる。
また、背面部112の背面開閉蓋15と対向する領域内に、磁石152が設けられる。背面開閉蓋15は磁性体(高耐候性めっき鋼板)であり、これにより、「背面開閉蓋の閉状態を保持する閉保持部材」が構成される。
上記構成により、作業者が開口部A1側(正面側)から手を入れた際に、そのまま背面開閉蓋15を押し開くことができ、また、手を戻せば背面開閉蓋15が自重で閉まり、且つ、磁石152によって、閉状態が保持される。
【0023】
図2(c)に示されるように、パネル体11の長手方向の両端部における底面において、底面開口部A3が形成されている。前述のごとく、底面開口部A3は、固定部材22Aを道路側からも見えるようにするための「空間部」を構成するものである。
【0024】
図3は、「空間部」が形成される部分(図2(b)のA-A線)における断面図である。図3に示されるように、「空間部」が形成される箇所においては、吸音材14が「空間部」の分だけ短く形成される。従って、この部分では吸音効果が低下するが、本実施形態の吸音板1によれば、遮音機能を有する透光板13が設けられているため、遮音性能を維持することができる。
なお、「空間部」が無い部分においては、従来通り、上端付近から下端付近に至るまで吸音材14が配置される。
【0025】
図7は、本実施形態の吸音板1を用いた遮音壁の保守点検の様子を説明する説明図である。
図7(a)に示されるように、先ず、透光板13を外すために、ボルト135を外す。なお、図7(a)からも理解されるように、透光板13が光透過性であることにより、透光板13が取り付けられている状態においても、固定部材22を外部(道路側)から目視で点検することが可能である。
次に、図7(b)、図7(c)(何れも背面側からみた図)に示されるように、背面開閉蓋15を押し開くことによって、簡単にパネル体11の背面側へのアクセスが可能となる。これにより、固定部材22(アンカーボルトやナット等)に直接触れての確認、取り換え作業及びゆるんだナットの増し締めなどを容易に行うことができる。
なお、背面開口部A2は、手や工具を通すことや、手を通した状態の作業性に鑑みて、その大きさ(背面開口部A2が底面開口部A3と連通している場合には両者を合わせた大きさ)が100mm×150mm以上であることが好ましい(本実施形態では、背面開口部A2が幅105mm、高さ158.7mmであり、底面開口部A3が幅125mm、奥行35mm)。また、開口部A1は、パネル体の前面側から、背面開口部A2へと挿入した手の自由度を高くするために、背面開口部A2(若しくは底面開口部A3)よりも大きく形成することが好ましい(本実施形態では、幅201mm、高さ151mm)。
【0026】
以上のごとく、本実施形態の吸音板1(及びこれを用いた遮音壁)によれば、支柱の固定構造(アンカーボルト等)の保守点検作業を容易にすると共に、遮音性能の低下を低減することが可能となる。
実施形態の吸音板1を用いて形成した試験体(試料寸法:500×1,960×95mm)に対する音響透過損失試験の試験結果として、中心周波数400Hzの音における音響透過損失は26.3dBであり、中心周波数1000Hzの音における音響透過損失は35.4dBであった。なお、音源は1/3oct.帯域雑音を用い、残響室は、JIS A 1416 5.1Aに規定するタイプ(残響室(音源室):容積201m3 表面積206m2、残響室(受音室):容積201m3 表面積206m2、試験体取付開口部寸法 3.70m×2.74m(垂直面))を使用した。
また、同様の試験体に対する同様の音源を使用した残響室法吸音率の試験の試験結果として、中心周波数400Hzの音における吸音率は1.08であり、中心周波数1000Hzの音における吸音率は0.86であった。なお、残響室の条件は、不整形で内壁面は人工石研ぎ出しの残響室で、室容積:513m3、表面積:382m2、床面積:72m2である。
このように、本実施形態の吸音板1によって、十分な防音機能が得られることが示された。
【0027】
また、本実施形態の吸音板1(及びこれを用いた遮音壁)によれば、図2(a)や図3等からも理解されるように、パネル体の厚さを従来通りのものとすることができる(即ち、H形鋼のフランジ間に収まる)。従って、引用文献2~4のごとく、パネル体の背面板の下部が、H形鋼の支柱よりも民地側(道路側の反対側)に膨出させた構造であることによる、設計上の自由度の低さ(膨出部が他の部材に干渉するおそれ)といった問題もない。
パネル体としてのサイズを、従来のパネル体と同様にできることにより、設置済みの遮音壁における老朽化した吸音板の更新(取り換え)においても、問題無くスムーズに行うことができ(上記のような他の部材への干渉等のおそれがない)、設置後の違和感もないという優れた作用効果を奏するものである。
【0028】
加えて、本実施形態の吸音板1(及びこれを用いた遮音壁)によれば、開口部A1が透光板13によって塞がれ、背面開口部A2が背面開閉蓋15によって塞がれる構成となるため、鳥などの生き物やゴミなどの侵入が低減されるという優れた作用効果も得られる。特に鳥などの小動物が侵入しやすい構造であると、そこに巣をつくるようなことも考えられ、保守点検の妨げになるだけでなく、安全上も好ましくないが、本実施形態によればこのような問題も低減されるため好適である。
【0029】
なお、透光板13として、本実施形態ではアクリル板を用いるものを例としたが、本発明をこれに限るものでは無く、所定の防音機能(遮音機能若しくは吸音機能)を有する任意の部材を用いることができる。
所定の防音機能とは、400Hzの音に対して25dB以上、及び、1000Hzの音に対して30dB以上の音量透過損失を生じさせる遮音機能や、400Hzの音に対して0.7以上、及び、1000Hzの音に対して0.8以上の吸音率を有する吸音機能であることが好ましい。
【0030】
実施形態では、「空間部」が、背面開口部A2と連通し、かつ、底面開口部A3と連通しているものを例としたが、本発明をこれに限るものでは無い。例えば、パネル体の下側となる位置に固定部材が位置しないような場合には、底面開口部A3を設けないようにするものであってもよい。
【0031】
実施形態では、底面開口部には蓋部材を設けないようにしているが、底面開口部を開閉させる底面開閉蓋を備えさせるようにしてもよい。
【0032】
実施形態では、透光板13が、開口部A1に対して着脱可能に設けられるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、背面開閉蓋15と同じように、ヒンジ構造によって開閉可能に設けられるもの等であってもよい。「着脱可能」或いは「開閉可能」とするための構成については任意のものを利用することができる。例えば、磁石を用いて「着脱可能」に取り付けるもの等であってもよい。
【0033】
「着脱可能」或いは「開閉可能」の任意の構造を採用して良い点は、背面開閉蓋や底面開閉蓋についても同様である。
【0034】
実施形態では、背面開閉蓋の閉状態を保持する閉保持部材として、磁石を利用するものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、フック等の係合部を設けることで閉保持部材を構成するもの等であってよい。
透光板13や底面開閉蓋を、「開閉可能」な構成とする場合には、これらにおいても「閉状態を保持する閉保持部材」を設けるようにしてもよい。
【0035】
実施形態では、遮音壁として、道路脇(高速道路等)に設置されるものを例としたが、本発明に係る遮音壁の用途を道路に限るものでは無く、任意の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1...吸音板
11...パネル体
13...透光板
14...吸音材
15...背面開閉蓋
151...ヒンジ
152...磁石(閉保持部材)
2...支柱
22...固定部材
A1...開口部
A2...背面開口部
A3...底面開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7