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2023-149906熱可塑性樹脂発泡成形体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149906
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/24 20060101AFI20231005BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B29C44/24
B29C44/00 G
B29C44/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058709
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】秋元 達雄
(72)【発明者】
【氏名】新籾 幸雄
【テーマコード(参考)】
4F214
【Fターム(参考)】
4F214AA03
4F214AA13
4F214AA24
4F214AA45
4F214AA50
4F214AB02
4F214AC01
4F214AG20
4F214UA21
4F214UB01
4F214UB22
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂発泡体に新たな機能を付与する。
【解決手段】基体10と、前記基体10の表面の一部又は全部を覆う被覆体20とを有し、前記基体10は、2つ以上の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成され、前記被覆体20は、2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成され、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成と、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成とは異なることよりなる。前記基体10と前記被覆体20とは、その境界で融着していてもよいし、前記被覆体20は、前記基体10と着脱自在でもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の表面の一部又は全部を覆う被覆体とを有し、
前記基体は、2つ以上の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成され、
前記被覆体は、2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成され、
前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成と、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成とは異なる、熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項2】
前記基体と前記被覆体とは、その境界で融着している、請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項3】
前記被覆体は、前記基体と着脱自在である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項4】
前記基体は、第一の嵌合部を有し、
前記被覆体は、前記第一の嵌合部と相補形をなす第二の嵌合部を有し、
前記第一の嵌合部と前記第二の嵌合部とが嵌め合わされている、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項5】
前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の色調は、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の色調と異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項6】
前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂は、リサイクル原料であり、
前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂は、非再生原料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項7】
内部に収容室を有する容器であり、
前記被覆体は、内面及び外面の少なくとも一方に位置する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、2つ以上の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記基体キャビティ内の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、前記基体を形成し、
前記第一の雄型に代えて、前記第一の雄型よりも小さい第二の雄型を用い、前記第二の雄型と前記基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雄型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雄型側に前記被覆体を成形する、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項9】
前記第二の雄型側に前記被覆体を成形する工程の後、
前記第一の雌型に代えて、前記第一の雌型よりも大きい第二の雌型を用い、前記第二の雌型と前記基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雌型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雌型側に前記被覆体を形成する、請求項8に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、2つ以上の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記基体キャビティ内の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、前記基体を成形し、
前記第一の雌型に代えて、前記第一の雌型よりも大きい第二の雌型を用い、前記第二の雌型と前記基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雌型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雌型側に前記被覆体を形成する、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項11】
前記第二の雌型側に前記被覆体を成形する工程の後、
前記第一の雄型に代えて、前記第一の雄型よりも小さい第二の雄型を用い、前記第二の雄型と前記基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雄型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雄型側に前記被覆体を形成する、請求項10に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【請求項12】
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、2つ以上の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記基体キャビティ内の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して基体を形成する基体成形工程と、
前記基体の表面の少なくとも一部に、被覆体を形成する被覆体成形工程とを有し、
前記被覆体成形工程は、雄型側被覆体成形工程と雌型側被覆体成形工程との少なくとも一方を有し、
前記雄型側被覆体成形工程は、前記第一の雄型に代えて、前記第一の雄型よりも小さい第二の雄型を用い、前記第二の雄型と前記基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子とは組成が異なる2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雄型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雄型側に前記被覆体を形成し、
前記雌型側被覆体成形工程は、前記第一の雌型に代えて、前記第一の雌型よりも大きい第二の雌型を用い、前記第二の雌型と前記基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子とは組成が異なる2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雌型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雌型側に前記被覆体を形成する、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚箱、緩衝材、建材等には、軽量、断熱性及び衝撃吸収性等に優れることから、熱可塑性樹脂発泡成形体が使用されることがある。
熱可塑性樹脂発泡成形体は、発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱して熱可塑性樹脂発泡粒子とし、この熱可塑性樹脂発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、蒸気等で加熱して型内発泡成形して得られる。得られる熱可塑性樹脂発泡成形体においては、熱可塑性樹脂発泡粒子同士が融着している。
従来、強度のさらなる向上や新たな機能の付加を目的して、複合化した熱可塑性樹脂発泡成形体が提案されている。
例えば、特許文献1には、発泡体の表面に非発泡シートを設けた熱可塑性樹脂発泡成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-46230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、非発泡シートを所定の形状に予め成形する必要がある。このため、作業工程が多段階となり、煩雑である。また、例えば、ポリスチレン系樹脂の非発泡シートを深型の容器形状に成形しようとすると、欠損の発生や、厚さが不均一になる。加えて、さらなる強度の向上を図るために、非発泡シートの厚さを増大させると、熱可塑性樹脂発泡成形体の質量が増大し、熱可塑性樹脂発泡成形体の利点が損なわれる。また、非発泡シートでは複雑な形状に対応できない。
そこで、本発明は、新たな機能性を付与できる熱可塑性樹脂成形体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
基体と、前記基体の表面の一部又は全部を覆う被覆体とを有し、
前記基体は、2つ以上の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成され、
前記被覆体は、2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成され、
前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成と、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成とは異なる、熱可塑性樹脂発泡成形体。
<2>
前記基体と前記被覆体とは、その境界で融着している、<1>に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
<3>
前記被覆体は、前記基体と着脱自在である、<1>に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
<4>
前記基体は、第一の嵌合部を有し、
前記被覆体は、前記第一の嵌合部と相補形をなす第二の嵌合部を有し、
前記第一の嵌合部と前記第二の嵌合部とが嵌め合わされている、<1>~<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
<5>
前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の色調は、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の色調と異なる、<1>~<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
<6>
前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂は、リサイクル原料であり、
前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する熱可塑性樹脂は、非再生原料である、<1>~<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
<7>
内部に収容室を有する容器であり、
前記被覆体は、内面及び外面の少なくとも一方に位置する、<1>~<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体。
【0006】
<8>
<1>~<7>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、2つ以上の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記基体キャビティ内の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、前記基体を形成し、
前記第一の雄型に代えて、前記第一の雄型よりも小さい第二の雄型を用い、前記第二の雄型と前記基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雄型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雄型側に前記被覆体を成形する、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
<9>
前記第二の雄型側に前記被覆体を成形する工程の後、
前記第一の雌型に代えて、前記第一の雌型よりも大きい第二の雌型を用い、前記第二の雌型と前記基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雌型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雌型側に前記被覆体を形成する、<8>に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
<10>
<1>~<7>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法であって、
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、2つ以上の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記基体キャビティ内の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、前記基体を成形し、
前記第一の雌型に代えて、前記第一の雌型よりも大きい第二の雌型を用い、前記第二の雌型と前記基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雌型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雌型側に前記被覆体を形成する、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
<11>
前記第二の雌型側に前記被覆体を成形する工程の後、
前記第一の雄型に代えて、前記第一の雄型よりも小さい第二の雄型を用い、前記第二の雄型と前記基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、2つ以上の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雄型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雄型側に前記被覆体を形成する、<10>に記載の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
<12>
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、2つ以上の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記基体キャビティ内の前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して基体を形成する基体成形工程と、
前記基体の表面の少なくとも一部に、被覆体を形成する被覆体成形工程とを有し、
前記被覆体成形工程は、雄型側被覆体成形工程と雌型側被覆体成形工程との少なくとも一方を有し、
前記雄型側被覆体成形工程は、前記第一の雄型に代えて、前記第一の雄型よりも小さい第二の雄型を用い、前記第二の雄型と前記基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子とは組成が異なる2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雄型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雄型側に前記被覆体を形成し、
前記雌型側被覆体成形工程は、前記第一の雌型に代えて、前記第一の雌型よりも大きい第二の雌型を用い、前記第二の雌型と前記基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、前記第一の熱可塑性樹脂発泡粒子とは組成が異なる2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填し、前記雌型側キャビティ内の前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、前記第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、前記第二の雌型側に前記被覆体を形成する、熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂成形体によれば、新たな機能性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る容器の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る容器の製造方法の一例を示す工程図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る容器の製造方法の一例を示す工程図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る容器の製造方法の一例を示す工程図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る容器の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂発泡成形体(以下、単に「発泡成形体」ということがある)は、基体と被覆体とを有する。
また、本発明の発泡成形体の製造方法は、基体成形工程と、被覆体成形工程とを有する。
以下、発泡成形体の実施形態を挙げて説明する。
【0010】
<熱可塑性樹脂発泡成形体>
図1の発泡成形体1は、外形が直方体で内部に直方体の収容室2を有する容器である(以下、発泡成形体1を容器1ということがある)。
即ち、容器1は、平面視四角形の底部9と、底部9の周縁から立ち上がる4枚の側部7とを有し、底部9と4枚の側部7とで収容室2を囲んでいる。
【0011】
容器1は、基体10と、基体10の内面を覆う被覆体20と、を有する。基体10は、容器1の外面6を形成している。被覆体20は、容器1の内面4を形成している。即ち、被覆体20は、収容室2に面している。
【0012】
容器1の大きさは、用途に応じて適宜決定され、例えば、外寸で長さ200~1500mm×幅100~1000mm×高さ50~500mmの容器を例示できる。
【0013】
≪基体≫
基体10は、2つ以上の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着した発泡成形体であり、いわゆるビーズ発泡成形体である。
本実施形態において、基体10の外形は容器1の外形と等しく、基体10の外寸は容器1の外寸と等しい。
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子としては、熱可塑性樹脂を原料とし、発泡粒子形状とできるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡粒子、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子、ポリエステル系樹脂発泡粒子、熱可塑性エラストマー系樹脂発泡粒子等が挙げられる。中でも、容器1の剛性及び汎用性を高める観点から、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子としては、ポリスチレン系樹脂発泡粒子が好ましい。
なお、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子は、一次発泡した粒子の他、発泡前の粒子(発泡性熱可塑性樹脂粒子)を含む概念である。発泡性熱可塑性樹脂粒子を第一の熱可塑性樹脂発泡粒子として用いる場合、発泡性熱可塑性樹脂粒子を金型に充填し、これを成形時に微発泡化させてもよい。
【0014】
ポリスチレン系樹脂発泡粒子は、ポリスチレン系樹脂を含む。ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体;スチレン系モノマーを主成分とし、スチレン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体:スチレン系モノマーとブタジエン等のゴム分との共重合体や、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーとビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン;等が挙げられる。
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
ジエン系のゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン系三次元共重合体等が挙げられる。
これらのポリスチレン系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、中でもポリスチレン単体がより好ましい。
【0015】
ポリスチレン系樹脂としては、市販されているポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたポリスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(非再生原料)でもよいし、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂でもよい。
【0016】
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子がポリスチレン系樹脂発泡粒子である場合、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する樹脂(第一の熱可塑性樹脂)100質量部に対するポリスチレン系樹脂の含有量は、50質量部以上が好ましく、75質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましく、95質量部以上が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量の上限値は、特に限定されず、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対して、100質量部でもよい。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂を含む。
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体や、オレフィン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂は、環境負荷を低減できることから、植物由来樹脂でもよい。植物由来樹脂としては、例えば、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーが挙げられる。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
植物由来樹脂としては、いわゆるバイオPE、バイオPP等、植物由来のポリエチレン系樹脂、植物由来のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0019】
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子がポリオレフィン系樹脂発泡粒子である場合、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対するポリオレフィン系樹脂の含有量は、50質量部以上が好ましく、75質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましく、95質量部以上が特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有量の上限値は、特に限定されず、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対して、100質量部でもよい。
【0020】
ポリエステル系樹脂発泡粒子は、ポリエステル系樹脂を含む。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、石油化学品由来のポリエステル系樹脂でもよいし、いわゆるバイオPET等の植物由来のポリエステル系樹脂でもよいし、これらの混合物でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂が挙げられる。
【0021】
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子がポリエステル系樹脂発泡粒子である場合、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対するポリエステル系樹脂の含有量は、50質量部以上が好ましく、75質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましく、95質量部以上が特に好ましい。ポリエステル系樹脂の含有量の上限値は、特に限定されず、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対して、100質量部でもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂は、いわゆるリサイクル原料を含んでもよい。
リサイクル原料としては、使用済みの発泡成形体(例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレー等)を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの;ポリスチレン樹脂発泡シートにポリスチレン樹脂非発泡シートを積層したものを食品包装用トレーに加熱成形し、食品包装用トレーを打ち抜いた後に生じる端材を粉砕し、溶融混練してリペレット化したもの;等が挙げられる。また、使用することができるリサイクル原料は、使用済みの発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)、事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)等から分別回収された非発泡の発泡成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものが挙げられる。
【0023】
第一の熱可塑性樹脂の総質量に対するリサイクル原料の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がより好ましい。リサイクル原料の含有量が上記下限値以上であると、環境負荷をより低減できる。熱可塑性樹脂の総質量に対するリサイクル原料の含有量の上限は、100質量%でもよいが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。リサイクル原料の含有量が上記上限値以下であれば、基体10の品質の安定性をより高められる。
【0024】
第一の熱可塑性樹脂の質量平均分子量Mwは、第一の熱可塑性樹脂の種類を勘案して決定され、例えば、10万~45万が好ましく、12万~40万がより好ましい。質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準ポリスチレンによる較正曲線に基づき換算した値である。
【0025】
第一の熱可塑性樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、第一の熱可塑性樹脂の種類を勘案して決定され、0.3~15.0g/10minが好ましく、0.5~10.0g/10minがより好ましい。
本明細書において、熱可塑性樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に記載のB法に準拠し、試験温度200℃、試験荷重49.03N、予熱時間5分の条件で測定される値をいう。
【0026】
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素や、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、水等が挙げられ、中でも、ブタン、ペンタンが好ましい。ブタンとしては、ノルマルブタン又はイソブタンがそれぞれ単独で使用されてもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとが任意の割合で併用されてもよい。ペンタンとしては、ノルマルペンタン又はイソペンタンがそれぞれ単独で使用されてもよいし、ルマルペンタンとイソペンタンとが任意の割合で併用されてもよい。これらの発泡剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0027】
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子は、第一の熱可塑性樹脂及び発泡剤以外に他の成分(第一の任意成分)を含んでもよい。第一の任意成分としては、発泡核剤、造核剤、紫外線吸収剤、熱線遮蔽材、酸化防止剤、着色剤、抗菌剤、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0028】
発泡核剤としては、例えば、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、クエン酸等が挙げられ、これらの中でもタルクがより好ましい。
発泡核剤の配合量は、特に限定されないが、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~5質量部が好ましい。
【0029】
第一の熱可塑性樹脂がリサイクル原料を含む場合、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子は、着色剤、熱線遮蔽材を含んでもよい。
着色剤としては、一般にポリスチレン系発泡体に使用する染料、顔料が使用できる。
熱線遮蔽材としては、カーボンブラック、カーボングラファイト等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子における着色剤、熱線遮蔽材の含有量は、第一の熱可塑性樹脂100質量に対して、0.005~10.0質量部が好ましく、0.01~10.0質量部がより好ましく、0.1~8.0質量部がさらに好ましい。
【0030】
基体10の厚さw10は、容器1の内容量等を勘案して適宜決定され、例えば、10~50mmとされる。
【0031】
基体10の密度は、例えば、0.01~0.10g/cmが好ましく、0.012~0.05g/cmがより好ましく、0.012~0.03g/cmがさらに好ましい。密度が上記下限値以上であると、基体10の強度をより高められる。密度が上記上限値以下であると、基体10のさらなる軽量化を図れる。
【0032】
基体10における第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡嵩倍率は、例えば、10~100倍とされる。発泡嵩倍率は、下記式により求められる。
発泡嵩倍率=発泡粒子の嵩体積(cm)÷発泡粒子の質量(g)
【0033】
≪被覆体≫
被覆体20は、2つ以上の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子が融着して形成されたものであり、いわゆるビーズ発泡成形体である。
被覆体20の内部の形状は、容器1の内部の形状(即ち、収容室2の形状)と等しくてもよいし、異なる形状でもよい。
第二の熱可塑性樹脂発泡粒子としては、ポリスチレン系樹脂発泡粒子、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子、ポリエステル系樹脂発泡粒子等が挙げられる。中でも、容器1の剛性を高める観点から、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子としては、ポリスチレン系樹脂発泡粒子が好ましい。
【0034】
なお、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子は、一次発泡した粒子の他、発泡前の粒子(発泡性熱可塑性樹脂粒子)を含む概念である。発泡性熱可塑性樹脂粒子を第二の熱可塑性樹脂発泡粒子として用いる場合、発泡性熱可塑性樹脂粒子を金型に充填し、これを成形時に微発泡化させてもよい。
【0035】
第二の熱可塑性樹脂発泡粒子は、熱可塑性樹脂(第二の熱可塑性樹脂)と発泡剤とを含む。
第二の熱可塑性樹脂は、第一の熱可塑性樹脂と同様である。
第二の熱可塑性樹脂発泡粒子に含まれる発泡剤は、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子に含まれる発泡剤と同様である。
第二の熱可塑性樹脂発泡粒子に含まれる任意成分(第二の任意成分)は、第一の任意成分と同様である。
【0036】
被覆体20の厚さw20は、被覆体20の機能等を勘案して適宜決定され、例えば、1.0~20mmとされる。
【0037】
被覆体20の密度は、特に限定されず、例えば、基体10の密度と同様の範囲である。被覆体20の密度は、基体10の密度と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率は、特に限定されず、例えば、第一の熱苛性樹脂発泡粒子の発泡倍率と同様の範囲である。第二の熱苛性樹脂発泡粒子の発泡倍率は、第一の熱苛性樹脂発泡粒子の発泡倍率と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成は、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の組成と異なる。
「組成が異なる」とは、例えば、下記(a)~(d)及びこれらの組み合わせを例示できる。
(a)原料樹脂の由来が異なる。「原料の由来」とは、非再生原料、リサイクル原料、植物由来原料等である。
(b)樹脂の種類が異なる。樹脂の種類が異なるとは、一方がポリスチレン系樹脂で、他方がポリオレフィン系樹脂である等、樹脂を構成する主たる単量体単位の種類が異なることをいう。
(c)任意成分の種類が異なる。
(d)発泡倍率が異なる。発泡倍率は、熱可塑性樹脂の物性(分子量等)と発泡剤の種類又は量との組み合わせにより、調節できる。
【0040】
(a)の例としては、例えば、第一の熱可塑性樹脂をリサイクル原料とし、第二の熱可塑性樹脂を非再生原料とした組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、収容室2内の物品(例えば食品等)は、リサイクル原料を用いた基体10に触れることがなく、衛生面での印象を高められる。
【0041】
(b)の例としては、例えば、第一の熱可塑性樹脂をポリスチレン系樹脂とし、第二の熱可塑性樹脂をポリオレフィン系樹脂とする組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、基体10と被覆体20との界面は相溶しない(溶着しない)ため、被覆体20を基体10から着脱自在にでき、リサイクル化が容易である。
【0042】
(c)の例としては、例えば、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子に着色剤を配合し、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子に着色剤を配合しない組み合わせ(異なる色調の組み合わせ)を例示できる。かかる組み合わせを採用することで、容器外観の意匠性を向上させ、かつ余分な着色剤を削減することでコスト面に優れる。
また、(c)の例としては、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子にのみ帯電防止剤を配合する組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、収容室2内の物品への静電気の影響を防止できる。
また、(c)の例としては、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子に柔軟性に優れた熱可塑性エラストマーを配合する組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、収容室2内の物品への防傷性を付与できる。
【0043】
(d)の例としては、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率を60~90倍とし、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率を20~60倍で、かつ第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率よりも低くする組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、収容室2の剛性を高めて、容器1全体の強度を高められる。
あるいは、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率を20~60倍とし、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率を60~90倍で、かつ第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の発泡倍率よりも高くする組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、容器1の外面の剛性を高めて、外部から衝撃に対する強度をより高められる。
【0044】
上記(a)~(d)は組み合わされてもよい。
例えば、(a)と(c)とを組み合わせとしては、第一の熱可塑性樹脂をリサイクル原料とし、第二の熱可塑性樹脂を非再生原料とし、かつ第一の熱可塑性樹脂発泡粒子に着色剤を配合し、被覆体20に着色剤を配合しない組み合わせを例示できる。かかる組み合わせを採用することで、収容室2内の物品は、リサイクル原料にも、着色剤にも触れない。
【0045】
≪製造方法≫
発泡成形体の製造方法について、容器1の製造方法を例にして、図2を参照して説明する。
本実施形態の容器の製造方法は、基体成形工程と被覆体成形工程とを有する。
【0046】
基体成形工程は、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を型内発泡成形して基体10とする。
図2(a)に示すように、第一の雌型60aと第一の雄型62aとを有する金型を用い、第一の雌型60aと第一の雄型62aとの間に基体キャビティ61aを形成する。第一の充填機50aのノズル52から、基体キャビティ61aへ第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。
次いで、金型に蒸気を供給して、基体キャビティ61a内の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させつつ、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、基体キャビティ61a内で基体10を成形する(型内発泡成形)。
【0047】
次に、被覆体成形工程で、被覆体20を成形する。図2(b)に示すように、第一の雄型62aを第一の雌型60aから外し、第一の雌型60aに第二の雄型62bを組み合わせ、基体10と第二の雄型62bとの間に雄型側キャビティ61bを形成する。第二の充填機50bのノズル52から雄型側キャビティ61b内に第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。金型に蒸気を供給して、雄型側キャビティ61b内の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させつつ、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、雄型側キャビティ61b内で被覆体20を成形する(型内発泡成形)。
第一の熱可塑性樹脂発泡粒子の熱可塑性樹脂と第二の熱可塑性樹脂発泡粒子の熱可塑性樹脂とに相溶性がある場合、被覆体成形工程において、基体10と被覆体20とはその境界で融着する。
こうして、基体10と被覆体20とが一体化された容器1を得る。
【0048】
本実施形態によれば、基体10と被覆体20とは異なる組成の熱可塑性樹脂発泡粒子で形成されているため、容器1に新たな機能を付与できる。加えて、基体10及び被覆体20は、いずれも発泡樹脂で構成されているため、軽量、断熱性、衝撃吸収性等、発泡成形体に求められる機能が維持される。
加えて、本実施形態によれば、被覆体20を予め成形する必要がないため、容器1を組み立てる工程を省略でき、容易に製造できる。
さらに、本実施形態によれば、ビーズ発泡成形体を被覆体20とするため、複雑な形状の発泡成形体を容易に成形できる。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上述の実施形態に限定されない。
本発明の発泡成形体は、基体と被覆体とにそれぞれ嵌合部を有してもよい。図3(a)に示すように、底部内面に複数の突起73を有する第一の雌型70aと、第一の雄型62aとを有する金型を用い、第一の雌型70aと第一の雄型62aとの間の基体キャビティ71aに第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。次いで、金型に蒸気を供給して、基体キャビティ71a内の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させつつ、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、基体キャビティ71a内で基体10aを成形する(基体成形工程)。図3(b)(図3(a)のA-A断面)に示すように、得られる基体10aには、底部に貫通孔又は凹状である第一の嵌合部13が形成される。
【0050】
図4(a)に示すように、第一の雄型62aを金型から外し、第一の雌型70aに第二の雄型62bを組み合わせ、基体10aと第二の雄型62bとの間に雄型側キャビティ71bを形成する。第二の雄型62bは、第一の雄型62aに比べて外面形状が大きい。雄型側キャビティ71b内に第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。この際、第一の嵌合部13にも第二の熱可塑性樹脂発泡粒子が充填される。金型に蒸気を供給して、雄型側キャビティ71b内の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させつつ、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、雄型側キャビティ71b内で第二の雄型側に被覆体20aを成形して、基体10aと被覆体20aとが一体化された容器1aを得る(被覆体成形工程)。この際、第一の嵌合部13内には、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子が型内発泡成形した凸状の第二の嵌合部23が形成される(図4(b)(図4(a)のB-B断面)参照)。このため、第二の嵌合部23は、第一の嵌合部13の相補形をなし、第一の嵌合部13と第二の嵌合部23とは嵌め合わされる。
【0051】
第一の嵌合部13と第二の嵌合部23とが嵌め合わされていることで、基体10と被覆体20aとが分離するのをより確実に防止できる。加えて、底部に第二の嵌合部23が食い込んでいるため、発泡倍率の低い熱可塑性樹脂発泡粒子を第二の熱可塑性樹脂発泡粒子として用いることで、底部の強度をより高められる。
なお、本例では、第一の嵌合部を凹状、第二の嵌合部を凸状としたが、本発明はこれに限定されない。第一の嵌合部と第二の嵌合部とは相補形であればよく、第一の嵌合部が凹条、貫通孔でもよいし、突起、凸条等の凸状でもよい。
【0052】
本発明の発泡成形体の製造方法は、例えば、図5に示す装置を用いてもよい。図5の金型80は、2つの雌型80aを有している。金型80は、軸線O1を中心に回動可能とされている。金型80において、雌型80aと雌型80aとは底面を突き合せて設けられている。即ち、2つの雌型80aは、互いに相反する方向に開口している。なお、2つの雌型80aの内面形状は、同形状である。
まず、雌型80aに第一の雄型82aを組み合わせ、雌型80aと第一の雄型82aとの間に基体キャビティ81aを形成する。第一の充填機50aのノズル52から基体キャビティ81a内に第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。
次いで、金型80に蒸気を供給して、基体キャビティ81a内の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させつつ、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、基体キャビティ81a内で基体10を成形する(基体成形工程)。
【0053】
次いで、第一の雄型82aを雌型80aから外し、金型80を軸線O1を軸として反転させ、基体10を有する雌型80aに第二の雄型82bを組み合わせ、基体10と第二の雄型82bとの間に雄型側キャビティ81bを形成する。第二の充填機50bのノズル52から雄型側キャビティ81b内に第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。金型80に蒸気を供給して、雄型側キャビティ81b内の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させつつ、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、雄型側キャビティ81b内で第二の雄型側に被覆体20を成形して、基体10と被覆体20とが一体化された容器1を得る(被覆体成形工程)。
被覆体20を成形する間、第一の充填機50aに向いた雌型80aには、第一の雄型82aが組み合わされ、基体10が成形される。
本例の製造方法によれば、2つの雌型が組み合わされた金型を反転することで、基体と被覆体とを連続的に成形でき、生産性をより高められる。
【0054】
上述の実施形態では、被覆体が容器の内面の全部に設けられているが、本発明はこれに限定されず、被覆体が容器の外面に設けられていてもよいし、容器の内面及び外面の双方に設けられていてもよい。あるいは、被覆体は、容器の内面又は外面の一部にのみ設けられていてもよい。
容器の外面に被覆体を設ける場合、以下の製造方法を例示できる。
第一の雄型と第一の雌型との間に形成された基体キャビティ内に、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。基体キャビティ内の第一の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を融着して、基体を成形する(基体成形工程)。
次いで、第一の雌型に代えて、第一の雌型よりも内面形状が大きい第二の雌型を用い、第二の雌型と基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。雌型側キャビティ内の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、第二の雌型側に被覆体を形成する(被覆体成形工程)。こうして、外面に被覆体が設けられた容器を得る。
【0055】
本発明では前記の成形方法を複数回繰り返して2以上の被覆体を形成してもよい。2以上の被覆体は、基体の両面に設けてもよいし、基体の一方の面に2層以上に積層してもよい。2以上の被覆体を設ける場合、各々の被覆体における第二の熱可塑性樹脂発泡粒子は、同じ組成でもよいし、異なる組成でもよい。
【0056】
例えば、雄型側に被覆体を形成した後、雌型側に被覆体を形成する工程を有してもよい。この方法の例としては、雄型側に被覆体を形成した後、第一の雌型に代えて、第一の雌型よりも内面形状が大きい第二の雌型を用い、第二の雌型と基体との間に形成された雌型側キャビティ内に、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。雌型側キャビティ内の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、第二の雌型側に被覆体を形成する(雌型側被覆体成形工程)。こうして、雄型側(内面)及び雌型側(外面)の双方に被覆体が設けられた容器を得る。
【0057】
あるいは、例えば、雌型側に被覆体を形成した後、雄型側に被覆体を形成する工程を有してもよい。この方法の例としては、雌型側に被覆体を形成した後、第一の雄型に代えて、第一の雄型よりも外面形状が小さい第二の雄型を用い、第二の雄型と基体との間に形成された雄型側キャビティ内に、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を充填する。雄型側キャビティ内の第二の熱可塑性樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡しつつ、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子同士を熱融着して、雄型側に被覆体を形成する(雄型側被覆体成形工程)。こうして、雄型側(内面)及び雌型側(外面)の双方に被覆体が設けられた容器を得る。
【0058】
上述の実施形態では、発泡成形体の表面が発泡成形体で形成されているが、本発明はこれに限定されず、表面の一部又は全部に非発泡シートが設けられていてもよい。
【0059】
上述の実施形態では、発泡成形体が容器であるが、本発明はこれに限定されない。本発明の発泡成形体は、平板状の展示ボード、自動車の内装材、電子機器の緩衝材等でもよい。
また、発泡成形体の用途、機能、形状に応じて、被覆体は、基体の任意の領域に設けられていればよい。
【実施例0060】
以下に、実施例を示して本願発明をより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
市場回収されたポリスチレン系発泡魚箱を予備洗浄の後、再度押出機にて溶融させて小孔よりストランド状に押出して水冷し、径1mm、長さ1mmの円柱状にカットした。得られた円柱状のリサイクルポリスチレン粒子に水系懸濁液中にて発泡剤であるペンタンを含浸させて発泡性リサイクルポリスチレン粒子を得た。
この発泡性リサイクルポリスチレンを嵩倍数50倍に予備発泡して、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子とした。
【0062】
スチレンモノマーを水系懸濁液中に分散し、過酸化物にて重合を促進させて重合を完了した。ここに発泡剤であるペンタンを含浸させて、粒子状の発泡性バージンポリスチレン樹脂粒子を得た。即ち、発泡性バージンポリスチレン樹脂粒子の熱可塑性樹脂は非再生原料である。この発泡性バージンポリスチレン粒子を嵩倍数50倍に予備発泡させて、第二の熱可塑性樹脂発泡粒子とした。
【0063】
図2に示す装置を用い、第一の熱可塑性樹脂発泡粒子で基体を成形し、基体の内面に第二の熱可塑性樹脂発泡粒子で被覆体を成形して、容器を得た。
得られた容器は、容器内面には非再生原料を熱可塑性樹脂とする発泡成形体が位置し、その他はリサイクル原料を熱可塑性樹脂とする発泡成形体となっていた。
このため、容器内面は食品と直接接触させることができ、食品輸送に適しており、かつ容器全体としてはリサイクル原料が主体となっており、環境負荷の低減が図られていた。
【符号の説明】
【0064】
1、1a 熱可塑性樹脂発泡成形体
2 収容室
4 内面
6 外面
10、10a 基体
13 第一の嵌合部
20、20a 被覆体
23 第二の嵌合部
60a、70a、80a 雌型
61a、71a、81a 基体キャビティ
61b、71b、81b 雄型側キャビティ
62a、72a、82a、82b 雄型
80 金型
図1
図2
図3
図4
図5