(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149907
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】微生物情報の提供方法および微生物検査システム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20231005BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20231005BHJP
C12Q 1/6872 20180101ALI20231005BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
C12Q1/04
G01N27/62 V
G01N27/62 D
C12Q1/6872 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058711
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢志
【テーマコード(参考)】
2G041
4B063
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041EA03
2G041FA11
2G041FA13
2G041GA16
2G041JA06
2G041LA07
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】マスペクトルデータを利用した微生物情報の提供方法を提供する。
【解決手段】端末3は、サーバ1に、サンプルの質量分析によって得られたマススペクトルデータを送信する(ステップ(1))。サーバ1は、マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベース(微生物ライブラリ)において、サンプルのマススペクトルデータに関連付けられた、微生物に関する情報を取得する(ステップ(2))。サーバ1は、端末3に、微生物に関する情報を送信する(ステップ(3))。微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と通信可能なコンピュータによって実行される方法であって、
前記端末から、サンプルの質量分析によって得られたマススペクトルデータの入力を受けるステップと、
マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベースにおいて、前記サンプルのマススペクトルデータに関連付けられた、微生物に関する情報を取得するステップと、
前記微生物に関する情報を前記端末へ通知するステップとを備え、
前記微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および前記微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含む、微生物情報の提供方法。
【請求項2】
前記微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報は、遺伝子の全配列、遺伝子検査に用いられるプライマーの配列、遺伝子検査の産物のサイズ、および遺伝子検査の反応条件の中の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項3】
前記端末から、前記プライマーの配列を有するプライマーの合成の発注依頼を受けるステップと、
前記発注依頼に応じて、プライマーを合成するエンティティへ、前記プライマーの配列およびプライマーを合成する指示を送るステップと、をさらに備える、請求項2に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項4】
前記通知される内容に応じて前記通知に対する料金を算出するステップをさらに備え、
前記微生物に関する情報を前記端末へ通知するステップは、前記料金を、前記端末に通知することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項5】
前記微生物に関する情報に基づいて実施された、遺伝子検査の結果の入力を受けるステップをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項6】
前記遺伝子検査の結果に基づいて前記データベースを更新するステップをさらに備える、請求項5に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項7】
前記遺伝子検査の結果の入力に対する対価を、前記遺伝子検査の結果の入力元に対して付与するステップをさらに備える、請求項5または6に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項8】
前記微生物に関する情報は、微生物の生化学性状検査の実施に必要な情報をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項9】
前記微生物に関する情報に対応する、生化学性状検査の結果の入力を受けるステップをさらに備える、請求項8に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項10】
前記端末は、前記データベースにアクセスできない状態にある、請求項1~9のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項11】
前記コンピュータと前記端末とは、ネットワークを介して通信する、請求項1~10のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項12】
前記質量分析に使用されたサンプルは、前記遺伝子検査において再度使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項13】
前記質量分析に使用されたサンプルは、
前記質量分析によって使用されたのち識別子を付された状態で保管装置に保管され、
前記端末が前記微生物に関する情報を受信した際には、前記識別子に基づいて前記保管装置から取り出され、
前記遺伝子検査の実施に必要な情報に基づいて前記遺伝子検査を実施することにより、前記微生物自体を特定する情報が正しいか確認するために使用される、請求項12に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項14】
前記遺伝子検査は、酵素を用いた遺伝子増幅法を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項15】
前記遺伝子検査は、核酸配列解析を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法。
【請求項16】
サーバと、
端末とを備え、
前記端末は、
質量分析器から出力された、サンプルのマススペクトルデータを前記サーバへ送信し、
前記サーバは、
マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベースにおいて、前記サンプルのマススペクトルデータに関連付けられた、微生物に関する情報を取得し、
前記微生物に関する情報を前記端末へ通知し、
前記微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および前記微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含む、微生物検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マススペクトルデータを利用した微生物情報の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子検査の一例として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法を利用した検査がある。PCR法を利用した遺伝子検査を、以下「PCR検査」と称する。PCR検査は、サンプルに所与の微生物が存在するか否かを判断する検査である。PCR検査では、まず、対象の微生物のDNA塩基配列を元に、プライマーと呼ばれる短いオリゴヌクレオチドが設計される。次に、当該プライマーおよびDNAポリメラーゼを用いてそのプライマーで規定される長さのDNAがサンプルにおいて増幅されるか否かが判断され、当該判断の結果に従って、サンプルに対象の微生物が存在するか否かが確認される。すなわち、PCR検査は、対象の微生物が想定されていることを前提として行われる。したがって、対象の微生物が想定されていない場合、PCR検査を行うことができないということになる。
【0003】
微生物の同定について、近年、質量分析法を用いた微生物判別法が着目されている(特開2021-42965号公報(特許文献1)参照)。この方法は、サンプルのマススペクトルデータを、あらかじめ準備された微生物ごとのマススペクトルのデータベースと照合することにより、上記サンプルに含まれる未知の微生物を同定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】MALDI微生物同定試験(Biotyper)、株式会社テクノスルガ・ラボ、https://www.tecsrg.co.jp/services/microbiological/quality-health/maldib/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1について上述されたように、マススペクトルデータによる微生物の同定は、微生物ごとのマススペクトルのデータベースを必要とする。このようなデータベースは、特殊な専用システムとして提供されている。しかしながら、このようなシステムの導入は、以下の理由から、多くのユーザにとって敷居の高いものであった。
【0007】
まず、新たなシステムの導入自体が一般的なユーザにとって敷居が高いことである。また、システムが特殊なものであれば、その導入には多くの要因(たとえば、多額の費用を要すること)が付随することが多いため、導入の敷居はより高くなる。
【0008】
以上より、マススペクトルデータからの微生物の同定という技術は、利用するシステムの導入の敷居が高いという、当該技術の本質的ではない理由から、ユーザにとって利用しにくいものとなっていた。
【0009】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、幅広いユーザがマススペクトルデータから微生物を同定できるようにするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、端末と通信可能なコンピュータによって実行される方法である微生物情報の提供方法に関する。微生物情報の提供法法は、端末から、サンプルの質量分析によって得られたマススペクトルデータの入力を受けるステップと、サンプルのマススペクトルデータを用い、マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベースを検索することによって実行された、サンプルに含まれる微生物の判別の結果を取得するステップと、を備え、判別されたサンプルに含まれる微生物に関する情報を端末へ通知するステップをさらに備える。微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含む。
【0011】
本発明の第2の態様は、サーバと、端末と、を備える微生物検査システムに関する。端末は、質量分析器から出力された、サンプルのマススペクトルデータをサーバへ送信する。サーバは、マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベースにおいて、サンプルのマススペクトルデータに関連付けられた、微生物に関する情報を取得し、微生物に関する情報を端末へ通知する。微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、幅広いユーザに簡便にマススペクトルデータを利用して微生物情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る微生物検査システムの構成を示す概略図である。
【
図2】端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】検査サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図10】微生物検査の処理を説明するフローチャートである。
【
図11】実施の形態2に係る微生物検査システムの構成を示す概略図である。
【
図12】フィードバック画面の一例を示す図である。
【
図16】PCR検査の結果のフィードバックおよび対価に関する情報の送信の処理を説明するフローチャートである。
【
図17】実施の形態3に係る微生物検査システムの構成を示す概略図である。
【
図19】プライマーの発注が必要か否かを問う画面の一例を示す図である。
【
図20】プライマーの発注の依頼がなされなかった場合の処理のフローチャートである。
【
図21】プライマーの発注の依頼がなされた場合の処理のフローチャートである。
【
図23】変型例に係る微生物検査システムの構成を示す概略図である。
【
図24】サンプルの保管状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0015】
[実施の形態1]
[1.微生物検査システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る微生物検査システム100の構成を示す概略図である。
【0016】
図1を参照して、微生物検査システム100は、検査サーバ1、端末3、およびネットワーク5を含む。
【0017】
検査サーバ1は、検査会社によって管理されている。検査サーバ1は、微生物に関する情報とマススペクトルデータとを関連付けるデータベースにアクセスできる。このデータベースは、
図1において「微生物ライブラリ」として記載されている。
【0018】
端末3は、ユーザによって操作される。端末3は、汎用の情報端末によって構成される。汎用の情報端末の一例は、パーソナルコンピュータである。他の例は、スマートフォンなどのタブレット型コンピュータである。端末3は、ネットワーク5を介して検査サーバ1と通信する。
【0019】
ネットワーク5は、一般的には、地球上の多数の政府、企業、公共、私用のネットワークを相互接続したインターネットであるが、これに限定されない。ネットワーク5は、例えば検査会社とユーザ間のプライベートネットワーク(例えばイントラネット)であってもよい。
【0020】
[2.微生物検査システムにおける処理の概要]
図1において、(1)~(4)は、微生物検査システムにおいて実施される処理の順序を示す。以下、これらの処理について説明する。
【0021】
ステップ(1)において、ユーザは、端末3を利用して、検査サーバ1に、微生物検査を依頼する。微生物検査は、未知の微生物を判別するための検査である。当該依頼に伴い、端末3は、検査サーバ1に、未知の微生物を含むサンプルのマススペクトルデータを送信する。以下の説明では、マススペクトルデータは、「MSデータ」とも称される。
【0022】
ステップ(2)において、検査サーバ1は、端末3から送信されたMSデータを用いて微生物ライブラリを検索することにより、微生物検査を実施する。微生物検査を実施することは、微生物検査において、未知の微生物を微生物ライブラリに登録された微生物の中の1つであると判別することを含む。微生物検査を実施することは、さらに、微生物ライブラリから、判別された微生物の「微生物に関する情報」を取得することを含んでいてもよい。
【0023】
微生物に関する情報の一例は、微生物自体を特定する情報である。微生物自体を特定する情報の一例は、属および種である。他の例は、微生物の学名である。さらに他の例は、微生物の系統である。
【0024】
微生物に関する情報の他の例は、遺伝子検査に関する情報、検査料金に関する情報、および/または、生化学性状検査に関する情報である。
【0025】
ステップ(3)において、検査サーバ1は、端末3に、微生物検査の結果を送信する。微生物検査の結果は、ステップ(2)で取得された微生物に関する情報を伴う。
【0026】
ステップ(4)において、ユーザは、微生物検査の内容に応じた検査料金を検査会社に支払う。
【0027】
[3.ハードウェア構成]
(1)端末
図2は、端末3のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2を参照して、端末3は、プロセッサ30、記憶部31、I/O(Input/Output)インターフェイス33、通信インターフェイス35、ディスプレイ36、および入力部37を含む。
【0028】
プロセッサ30は、端末3全体を制御し、例えば少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)で実現される。
【0029】
記憶部31は、プログラム格納領域310およびデータ格納領域311を含む。端末3はプログラム格納領域310のプログラムに従って動作するように構成される。データ格納領域311は、質量分析器38で測定したMSデータを含む。以下の説明では、質量分析器38は、「MS38」とも称される。
【0030】
記憶部31は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置で実現される。ROMは、プロセッサ30にて実行されるプログラムを格納することができる。RAMは、プロセッサ30におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDDは、不揮発性の記憶装置である。HDDに加えて、あるいは、HDDに代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。なお、上記プログラムおよび/またはデータは、プロセッサ30がアクセス可能な外部の記憶装置に格納されていてもよい。
【0031】
通信インターフェイス35は、端末3が検査サーバ1を含む外部の機器と無線または有線で通信するためのインターフェイスである。I/Oインターフェイス33は、端末3への入力または端末3からの出力のインターフェイスである。
図2に示すように、I/Oインターフェイス33は、ディスプレイ36、入力部37、およびMS38に接続される。
【0032】
ディスプレイ36は、表示装置によって実現される。入力部37は、ユーザからの入力を受け付ける入力装置によって実現される。入力部37は、たとえば、キーボード、マウス、および/または、ディスプレイ36の表示画面と一体的に構成されたタッチパネルである。
【0033】
MS38は、サンプルの質量分析を実行し、MSデータを出力する。質量分析は、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析である。
図2の例では、MS38がI/Oインターフェイス33を介して端末3に接続されているが、微生物検査システム100の構成はこれに限定されない。たとえば、端末3は、質量分析器に接続されている必要はなく、MSデータは、ユーザが手動で端末3に入力されてもよい。また、MS38は、端末3と一体的に構成されていてもよい。
【0034】
端末3には、遺伝子検査を実施するための機器を含んでもよい。遺伝子検査を実施するための機器は、例えば、PCR検査を行なうPCR装置である。
【0035】
(2)サーバ
図3は、検査サーバ1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3を参照して、検査サーバ1は、プロセッサ10、記憶部11および通信インターフェイス15を含む。プロセッサ10、記憶部11および通信インターフェイス15は、共通のバスを介して互いに接続されている。
【0036】
プロセッサ10は、例えば少なくとも1つのCPUで実現され、検査サーバ1全体を制御する。
【0037】
記憶部11は、プログラム格納領域110およびデータ格納領域111を含む。検査サーバ1はプログラム格納領域110に記憶されたプログラムに従って動作するように構成される。プログラム格納領域110に格納されるプログラムは、例えば、微生物判別、遺伝子検査に必要な情報判別、または、検査料金計算を実現するためのプログラムである。データ格納領域111に格納されるデータは、例えば、微生物ライブラリ、料金表、または結果表を構成するデータである。
【0038】
記憶部11は、たとえば、ROM、RAM、および/またはHDDによって実現される。ROMは、プロセッサ10にて実行されるプログラムを格納することができる。RAMは、プロセッサ10におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDDは、不揮発性の記憶装置である。HDDに加えて、あるいは、HDDに代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。記憶部11は、検査サーバ1に接続される、外付けの記憶媒体を含んでもよい。なお、上記プログラムおよび/またはデータは、プロセッサ10がアクセス可能な外部の記憶装置に格納されていてもよい。
【0039】
通信インターフェイス15は、検査サーバ1が端末3を含む外部機器と、無線または有線で通信するためのインターフェイスである。
【0040】
検査サーバ1は汎用のコンピュータに相当する機能を含むように構成されてもよい。検査サーバ1は、検査サーバ1への入力または検査サーバ1からの出力に用いられるインターフェイスであるI/Oインターフェイス、表示部および入力部をさらに含んでもよい。
【0041】
[4.PCR検査に必要な情報]
PCR検査等の遺伝子検査を実施するためには、前提として、微生物の想定が必要である。ここでは、未知の微生物を含むサンプルのPCR検査のためにユーザが必要とする情報を、PCR検査の手順およびその準備の具体例とともに検討する。本明細書において、PCR検査は、遺伝子検査の一例である。遺伝子検査は、たとえば、酵素を用いた遺伝子増幅法を含む。遺伝子検査は、たとえば、核酸配列解析を含む。遺伝子検査は、たとえば、核酸精製が不要となる試薬を用いる遺伝子検査を含む。遺伝子検査の他の例は、LAMP法である。
【0042】
PCR検査の準備として、サンプルに含まれる微生物の想定が行われる。この想定は、サンプルに関する準備段階での作業の結果に基づく。これらの結果の一例は、微生物に罹患した組織および個体の観察結果、他の例は、PCR検査以外の生化学性状検査の結果である。さらに他の例は、微生物そのものを顕微鏡で観察した結果である。想定は、微生物の生育条件に基づいて行われることもありうる。
【0043】
次に、想定された微生物に対応するDNA全塩基配列(本明細書では、単に「全配列」とも称する)を取得する。DNA全塩基配列は、例えば、一般に公開されたデータベース、または、所定の団体の内部用のデータベースから取得される。
【0044】
次に、1対のプライマーが準備される。1対のプライマーは、上記全配列の中の一部の配列を含む。この1対のプライマーの配列は、所定の基準を満たすことによってPCRサイクルが適切に進行するように設計される。所定の基準の一例は、各プライマーが約17~25塩基の長さを有し、各プライマーのGC含有率が約40~60%であり、かつ、PCRサイクルにより増幅されるDNA領域が約80~150bpであることである。
【0045】
PCR検査には、上記のように準備されたプライマーが使用される。PCR検査の反応条件は、アニーリングの温度、アニーリングの時間の長さ、および/またはPCRサイクルの回数を含む。PCR検査において、プライマーで規定される長さのDNAが増幅されたことが確認されれば、想定された微生物のDNAがサンプルに含まれていたことが明らかになる。プライマーで規定される長さのDNAが増幅されたことは、微生物の想定が正しかったことを意味する。
【0046】
以上の具体例によれば、全配列、プライマー配列、PCR産物の長さ(上述の「塩基の長さ」)、および、反応条件のそれぞれは、PCR検査に必要な情報の具体例であると言える。なお、上記説明は、PCR検査に必要な情報の検討の単なる一例である。PCR検査に必要な情報の種類は、PCR検査を実施するユーザが必要に応じて選択することができる。
【0047】
[5.微生物ライブラリ]
図4は、微生物ライブラリの一例を示す図である。一実現例では、微生物ライブラリは、あらかじめ検査サーバ1の記憶部11に格納されている。
【0048】
図4に示される微生物ライブラリは、微生物ごとの情報を含む。微生物ライブラリは、項目として、「微生物」「MSデータ」「全配列」「プライマー配列」「PCR産物の長さ」「反応条件」および「実績情報」を含む。
【0049】
項目「微生物」は、微生物自体を特定する情報の一例である。
図4の例では、項目「微生物」の値として「A」が示される。「A」は、微生物自体を特定する情報を表す。
【0050】
また、項目「MSデータ」の値として、「C:\library\ms001.msdata」で特定されるファイルが示される。当該ファイルには、MSデータが記載される。
【0051】
項目「全配列」の値として、「C:\library\ full-lengh-seq001.txt」で特定されるファイルが示される。当該ファイルには、全配列が記載される。
【0052】
項目「プライマー配列」の値として、「C:\library\primer001.txt」で特定されるファイルが示される。当該ファイルには、プライマー配列が記載されている。
【0053】
項目「PCR産物の長さ」の値として、「100bp」が示される。
項目「反応条件」の値として、「C:\library\condition001.txt」で特定されるファイルが示される。当該ファイルには、反応条件が記載されている。
【0054】
項目「実績情報」は、所与の微生物について、微生物ライブラリに挙げられている情報を利用したPCR検査の成功の実績に関連する情報を表す。
図4の例では、項目「実績情報」の値として、「実績:有(5)」が示される。「実績:有」は、微生物ライブラリが、それぞれの微生物について実施されたPCR検査の成功の実績を含むことを意味する。「(5)」は、微生物ライブラリに含まれる成功の実績の数が「5」であることを意味する。
【0055】
一実現例では、所与の微生物について、項目「プライマー配列」の値として登録された情報に基づいて設計されたプライマーを使用したPCR検査において、項目「PCR産物の長さ」の値として登録された長さと一致する長さのPCR産物が得られた場合に、当該微生物について実施されたPCR検査が成功したと判断される。一方、上記PCR検査において、上記長さのPCR産物が得られなかった場合には、上記微生物について実施されたPCR検査が成功しなかったと判断される。
【0056】
以上、
図4を参照して説明されたように、微生物ライブラリは、微生物に関する情報とマススペクトルデータとを関連付ける。この意味において、微生物ライブラリは、マススペクトルデータのデータベースの一例である。
【0057】
[6.料金表]
図5は、料金表の一例を示す図である。この料金表は、
図1のステップ(4)で支払われる検査料金の決定に利用され、あらかじめ検査サーバ1の記憶部11に格納されている。
【0058】
図5に示されるように、料金表は、検査料金を決定するための項目として、「基本料金」「全配列」「プライマー配列」「PCR産物のサイズ」「反応条件」「短納期」および「実績あり」を含む。
図5には、P1円~P7円として、各項目の数値が例示されている。
【0059】
「基本料金」は、未知の微生物を含むサンプルの微生物検査によって、当該未知の微生物自体を特定する情報を取得するための料金を規定する。「全配列」「プライマー配列」「PCR産物のサイズ」「反応条件」「短納期」および「実績あり」のそれぞれは、上記検査によって、オプションとして提供される情報を取得するための料金を規定する。
【0060】
「全配列」「プライマー配列」「PCR産物のサイズ」および「反応条件」のそれぞれは、
図1のステップ(3)において送信される検査の結果(微生物に関する情報)に、オプションとして含まれる情報を表す。
【0061】
「短納期」は、
図1のステップ(1)の検査の依頼から、
図1のステップ(3)の検査の結果の送信までの期間を、微生物検査システム100において予め定められた期間より短くすることを表す。
【0062】
「実績あり」は、
図1のステップ(2)で取得されるプライマー配列を、微生物ライブラリにおいてその成功の実績が含まれるプライマーに限定することを指定する。「実績あり」のオプションが選択されると、ユーザは、他者がPCR検査を成功させた信頼度の高いプライマー配列に基づいてプライマーを設計し、当該プライマーをPCR検査に利用することができる。
【0063】
微生物検査において指定されるオプションの種類は、
図5に示された例に限定されない。オプションは、生化学性状検査に関する情報を含んでもよい。この場合、ユーザは生化学性状検査において必要な情報を自分で探す手間なく入手できる。なお、この場合、生化学性状検査に関する情報は、検査サーバ1の記憶部11に格納されていることが好ましい。
【0064】
[7.結果表]
図6は、結果表の一例を示す図である。結果表は、ステップ(2)における微生物検査の結果を表し、結果表のフォーマットは、あらかじめ検査サーバ1の記憶部11に格納されている。
【0065】
図6の例において、結果表は、項目「検査ID」「検査対象のMSデータ」「判別された微生物」および「計算された検査料金の項目」を含む。
【0066】
「検査ID」は、検査サーバ1における各検査を識別する。一実現例では、検査IDは、
図7を参照して後述されるように、微生物検査を依頼する者によって指定される。
【0067】
「検査対象のMSデータ」は、微生物検査において対象とされるMSデータを識別する。
【0068】
「判別された微生物」は、微生物検査において判別された微生物を表す。
「検査料金」は、「検査ID」で識別される微生物検査の料金を表す。
【0069】
微生物検査が依頼されると、検査サーバ1は、結果表の項目「検査ID」に新たな値を登録する。
図6の例では、「検査ID」の値の一例として、「abc123」が示されている。
【0070】
検査サーバ1は、また、微生物検査の依頼に伴って取得したMSデータを、結果表の項目「検査対象のMSデータ」の値として登録する。登録される値は、MSデータそのものであってもよいし、MSデータのファイルを特定する情報であってもよい。
図6の例では、MSデータのファイルを特定する情報(C:\msdata\ms1111.msdata)が示されている。
【0071】
検査サーバ1は、微生物検査を実施すると、結果表に、当該微生物検査の結果として項目「判別された微生物」の値を登録する。
図6の例では、登録される値の一例として「A」が示されている。「A」は、判別された微生物自体を特定する情報の一例である。
【0072】
微生物検査の結果は、微生物自体を特定する情報以外に、微生物ライブラリに含まれる他の項目(プライマー配列など)を含んでいてもよい。この場合、結果表は、当該他の項目の値も含む。微生物検査の結果に含まれる項目は、後述する依頼画面SC1においてオプションとして選択されてもよい。
【0073】
検査サーバ1は、微生物検査を実施すると、項目「検査料金」の値を登録する。
図6の例では、登録される値の一例として「Pt1」が示されている。
【0074】
[8.ユーザインターフェース]
次に、微生物検査システムにおけるユーザインターフェースを
図7~
図9を用いて説明する。
【0075】
(1)依頼画面
図7は、依頼画面SC1の一例を示す図である。一実現例では、依頼画面SC1は、ユーザが微生物検査を依頼するときに、端末3に表示される。依頼画面SC1は、ユーザが端末3において検査依頼用のアプリケーションプログラムを起動したことに応じて表示されてもよい。
【0076】
依頼画面SC1は、欄SC11、欄SC12、および欄SC13を含む。欄SC11は、未知の微生物を含むサンプルのMSデータを検査サーバ1に送るために利用される。
図7の例では、欄SC11は、MSデータをアップロードするためのフォームを含む。
【0077】
欄SC12は、検査結果のオプションを選択するために利用される。
図7の例において、欄SC12は、オプションとして、PCR検査に必要な情報を表す4つの項目を含む。具体的には、欄SC12は、項目「全配列」「プライマー配列」「PCR産物のサイズ」および「反応条件」を含む。それぞれの項目について、選択することによって発生する料金が示されている。各項目に対応する料金は、料金表(
図5)において設定されている。
【0078】
図7の例によれば、ユーザは、検査の依頼において、オプションを選択するか否かを設定できる。ユーザは、微生物を特定する情報さえ入手できれば、自力で全配列などのその他の情報を取得できる場合、オプションを選択することなく、検査の依頼にかかる費用を抑えることができる。一方、ユーザは、微生物を特定する情報以外にも、PCR検査のための追加の情報(全配列、プライマー配列、PCR産物のサイズ、および/または反応条件)を必要とする場合がある。この場合、オプションを選択することにより、追加の費用さえ支払えば、追加の情報を取得できる。すなわち、
図7の例によれば、ユーザのPCR検査に関するスキルに合わせて、ユーザごとに過不足なく必要とされる情報が提供され得る。さらに、検査の依頼に際して、提供される情報の量に応じて検査料金が設定され得る。すなわち、検査料金が妥当な基準に従って設定され得る。
【0079】
ユーザは、判別した微生物のDNA配列を得られるデータベースの扱いに不慣れであっても、プライマー配列の設計を含むPCR検査には精通している場合、オプションとして「全配列」のみを選択することが想定される。このようなユーザは、プライマー設計以降は自身で行なうことにより、ユーザの時間、お金、および手間をバランスよく使うことができる。
【0080】
欄SC13は、未知の微生物を含むサンプルの検査において、欄SC12に示されたオプション以外のオプションを選択するために利用される。具体的には、欄SC13は、項目「短納期」および「実績あり」を含む。「短納期」は、短納期で検査結果を得るために選択される。「実績あり」は、欄SC12における項目「プライマー配列」を選択したユーザが、さらに、他者がPCR検査を成功させたという実績を有するプライマー配列を取得するために選択される。
【0081】
欄SC13は、さらに、「短納期」および「実績あり」のそれぞれが選択されたことによって発生する料金を含む。各項目の料金は、料金表(
図5)に従って特定される。
【0082】
画面SC1は、欄SC13の下方に、検査の依頼によって発生する料金(「合計Pt1円」と、検査ID(abc123)とをさらに含む。ユーザは、画面SC1において検査IDを指定できる。端末3は、たとえば検査サーバ1の料金表にアクセスし、画面SC1において選択されるオプションの種類に従って上記料金を計算し、画面SC1に表示する。
【0083】
(2)結果画面
図8は、結果画面SC2の一例を示す図である。一実現例では、ユーザが微生物検査の結果を確認するときに、端末3に表示される。結果画面SC2は、検査サーバ1から送信された微生物検査の結果を表示するために、端末3のディスプレイ36に表示される。
【0084】
図8に示された結果画面SC2は、
図7に示された依頼画面SC1に従った検査依頼に対応する微生物検査の結果を表す。このことから、
図8に示された結果画面SC2には、
図7に示された依頼画面SC1と同じ検査IDが表示されている。これにより、ユーザは、
図8に示された結果画面SC2が、
図7に示された依頼画面SC1に従った依頼に対応する微生物検査の結果を表示していることを確認できる。
【0085】
結果画面SC2は、欄SC21および欄SC22を含む。欄SC21は、4項目(「微生物」「全配列」「プライマー配列」「反応条件」)の結果を含む。項目「微生物」は、検査対象の未知の微生物に対して判別された微生物を意味する。結果画面SC2における項目「微生物」以外の項目は、依頼画面SC1においてオプションとして選択された項目である。
【0086】
図8の例では、項目「微生物」に対応する値として「A」が表示されている。項目「全配列」「プライマー配列」「反応条件」のそれぞれに対応する値として、微生物分析の結果においてそれぞれの項目に対応する内容を記述したファイルを特定する情報(「full-lengh-seq001.text」等)が表示されている。それぞれの項目について、さらに、それぞれのファイルをダウンロードするためのボタンが表示されている。
【0087】
結果画面SC2は、ボタンBT21を含む。ボタンBT21は、ディスプレイ36に、
図9を参照して後述する料金画面SC3を表示するために操作される。
【0088】
(3)料金画面
図9は、料金画面SC3の一例を示す図である。支払情報とは、微生物検査の料金を含む。上述の通り、料金画面SC3は、結果画面SC2のボタンBT21を操作することによって表示されるが、結果画面SC2の一部として表示されてもよい。
【0089】
料金画面SC3は、検査IDと、検査料金とを含む。検査IDは、料金画面SC3が対象とする検査を識別する。
【0090】
検査料金(Pt1円)は、基本料金(P1)と依頼画面SC1において選択されたオプションとの合計である。たとえば、オプションとして、
図7に示されたように「全配列」(P2)、「プライマー配列」(P3)、「反応条件」(P5)、および、「実績あり」(P7)が選択されたとする。このとき、検査料金は次の式(1)に従って算出される。
【0091】
Pt1=P1+P2+P3+P5+P7 …(1)
料金画面SC3は、さらに支払い期日を含む。一実現例では、支払い期日は、検査結果として検査料金の支払い方法は、特に限定されない。検査料金の支払いは、たとえば、一般的な電子決済技術に従って実現され得る。
【0092】
[9.処理の流れ]
次に、
図10を参照して、微生物検査における端末3および検査サーバ1において実施される処理の流れを説明する。
【0093】
図10は、微生物検査のフローチャートである。
図10の処理は、端末3のプロセッサ30および検査サーバ1のプロセッサ10のそれぞれが、それぞれの装置に対して準備された所与のプログラムを実行することによって実行される。
【0094】
図10を参照して、ステップS302において、端末3は、MS38において計測されたMSデータを取得する。
【0095】
ステップS304において、端末3は、ユーザから検査依頼に関する情報を受け付ける。例えば、端末3は、依頼画面SC1におけるユーザの入力を受けて、記憶部31に保存する。検査依頼に関する情報は、依頼画面SC1において選択されたオプションの種類を含む。
【0096】
ステップS306において、端末3は、検査サーバ1に、ステップS302において取得したMSデータを送信する。端末3は、検査サーバ1に、さらに、ステップS304において受け付けた検査依頼に関する情報を送信する。ステップS306は、微生物検査の依頼(
図1のステップ(1))に相当する。
【0097】
ステップS102において、検査サーバ1は、ステップS306において端末3から送信されたMSデータおよび検査依頼に関する情報を、記憶部11に格納する。
【0098】
ステップS104において、検査サーバ1は、検査料金を算出する。検査料金は、上述の検査料金Pt1円であり、依頼画面SC1で選択されたオプションに基づいて算出される。
【0099】
ステップS106において、検査サーバ1は、ステップS104において算出された検査料金を記憶部11に格納する。
【0100】
ステップS108において、検査サーバ1は、微生物検査を実施する。
ステップS110において、検査サーバ1は、ステップS108において実施された微生物検査の結果を記憶部11に格納する。これにより、微生物検査の結果が結果表(
図6)に登録される。
【0101】
ステップS112において、検査サーバ1は、支払情報を生成する。
図9を参照して上述したように、支払情報は、検査料金を含む。
【0102】
ステップS114において、検査サーバ1は、端末3に、ステップS110において格納された微生物検査の結果、および、ステップS112において生成された支払情報を送信する。微生物検査の結果は、微生物に関する情報を含む。この意味において、ステップS114は、検査サーバ1が端末3に微生物に関する情報を通知するステップに相当する。また、支払情報が検査料金を含む。この意味において、ステップS114は、端末3への検査料金の通知を含む。なお、検査料金は、微生物に関する情報について選択されたオプションの内容、すなわち、端末3に通知される内容に応じて算出されている。
【0103】
ステップS310において、端末3は、ステップS114において検査サーバ1から送信された微生物検査の結果をディスプレイ36に表示する。表示は、通知の一例である。これにより、ユーザは、微生物検査の結果を認識できる。ユーザは、微生物検査の結果を把握し、PCR検査の実行に活かすことができる。ステップS310では、端末3は、ディスプレイ36に、ステップS114において検査サーバ1から送信された支払情報を表示する。これにより、ユーザは、支払情報を認識できる。
【0104】
ステップS312において、端末3は、ステップS310において検査サーバ1から送信された支払情報に従った支払いを実行し、
図10の処理を終了する。支払情報は、検査料金を含む。したがって、ステップS312は、
図1のステップ(4)に相当する。
【0105】
以上のように、端末3は、未知の微生物のMSデータを検査サーバ1に送信することにより、検査サーバ1から、当該未知の微生物についての、微生物ライブラリを検索することによって実施された微生物検査の結果を取得する。微生物検査の結果は、上記未知の微生物についての、微生物に関する情報を含む。したがって、ユーザは、未知の微生物についての上記微生物に関する情報を取得できる。すなわち、ユーザは、特殊な専用システムとして提供されている微生物ライブラリ(微生物ごとのマススペクトルのデータベース)にアクセスできない場合でも、マススペクトルデータから、微生物の同定のための情報を取得できる。
【0106】
ユーザが利用する端末3が上記微生物ライブラリにはアクセスできない状態の一例は、端末3または端末3がアクセスできる記憶装置に、微生物ライブラリが格納されていない状態である。他の例は、微生物ライブラリが、微生物検査システム100において端末3(のユーザ)がアクセス権限を有していない記憶領域に格納されている状態である。
【0107】
なお、実施の形態1において、検査サーバ1は、端末3からのマススペクトルデータの入力の受け付け、微生物検査の結果(微生物に関する情報)の取得、および端末3への当該結果の通知を実施する。微生物検査の結果を取得するために、検査サーバ1は、当該検査サーバ1自身で微生物検査を実施してもよいし、検査サーバ1以外の装置において実施された微生物検査の結果を当該装置から受信してもよい。この意味において、検査サーバ1によって実行される方法は、微生物検査を実施するステップを含まない場合もあり得る。
【0108】
なお、実施の形態1に係る微生物検査の態様は上記の例に限定されず、検査サーバ1においてMSデータから対応する微生物に関する情報(特に、判別された微生物を特定する情報および遺伝子検査に関する情報)を得られて、当該微生物に関する情報をユーザの端末3に送信できればよい。たとえば、検査サーバ1は2つ以上のサーバを含み、微生物検査は、1つのサーバを用いてMSデータに対応する微生物を判別し、他のサーバを用いて判別した微生物に対応する遺伝子検査に関する情報を取得するように構成されてもよい。
【0109】
[実施の形態2]
[1.微生物検査システムにおける処理の概要]
図11は、実施の形態2に係る微生物検査システム100Bの構成を示す概略図である。実施の形態2では、検査サーバ1と端末3により、実施の形態1に示した処理に加え、ユーザからの遺伝子検査のフィードバックに関する処理、および、その対価に関する処理が実施される。
【0110】
図11には、ステップ(1)~ステップ(6)の順に、実施される処理の流れが示される。実施の形態2のステップ(1)~(4)は、実施の形態1のステップ(1)~(4)に対応するので説明を繰り返さない。
【0111】
ステップ(5)においては、ユーザは、所与の微生物について、PCR検査の結果を、フィードバック情報として、端末3を利用して検査サーバ1に送信する。[5.微生物ライブラリ]においてされたように、ある微生物についてのPCR検査は、PCR産物などを含む種々の情報に従って、成功した、または、成功しなかったと判断される。フィードバック情報は、上記PCR検査が成功した、または、成功しなかったことを表す情報を含む。
【0112】
ステップ(5A)において、検査サーバ1は、端末3から送信されたフィードバック情報を利用して、微生物ライブラリを更新する。一実現例では、検査サーバ1は、フィードバック情報が「成功した」を示す場合、微生物ライブラリの「実績」の値が1加算更新する。微生物ライブラリが、ユーザから提供されたプライマー配列を用いたPCR検査の結果が反映されるので、プライマーのデータベースとしての精度が向上する。
【0113】
ステップ(6)において、検査サーバ1は、フィードバック情報の入力元であるに対する対価(割引クーポン等)に関する情報を、端末3に送信する。ステップ(6)における対価は、端末3のユーザに対し、フィードバック情報を送信するモチベーションを引き出すインセンティブの役割を果たす。
【0114】
ステップ(5)および(6)の情報の送受は、例えばネットワーク5を介して行われるが、これに限定されない。
【0115】
[2.フィードバック画面]
図12は、フィードバック画面SC4の一例を示す図である。フィードバック画面SC4は、
図11のステップ(5)においてフィードバック情報を送信するために、端末3のディスプレイ36に表示される。
【0116】
フィードバック画面SC4は、検査IDを入力する欄を含む。
フィードバック画面SC4は、さらに、PCR検査についての問いを表示し、また、回答を入力する欄を含む。問いは、「お送りいただいたMSデータを有する微生物は、微生物Aであることが確認されましたか?」を含む。回答は、2つの選択肢、すなわち「はい、確認されました。」および「いいえ、確認されませんでした。」を含む。ユーザは、上記PCR検査の結果が「成功した」場合は前者の選択肢を選択し、「成功しなかった」場合は後者の選択肢を選択する。
【0117】
端末3は、フィードバック画面SC4内の送信ボタンが送信されると、選択の結果(フィードバック情報)を、検査サーバ1へ送信される。検査サーバ1は、端末3から選択の結果(フィードバック情報)を受信すると、必要に応じて、微生物ライブラリの「実績」の欄の値を更新する。
【0118】
[3.対価画面]
図13は、対価画面SC5の一例を示す図である。対価画面SC5は、フィードバックが表示される。
【0119】
図13の例では、対価画面SC5は、対価の支払い方法として2つの選択肢を含む。1つ目の選択肢は、方法「謝礼金の振り込み」である。2つ目の選択肢は、「検査料金の割引クーポン」である。それぞれの選択肢に対応してラジオボタンが提示されている。ユーザは、希望する支払い方法に対応するラジオボタンを操作する。検査サーバ1は、選択された方法に従って、端末3のユーザに対価(謝礼金振り込み、または、検査料金の割引クーポン」)として提供する。なお、対価に関する情報は以上の例に限定されず、対価の付与の仕方も以上の例に限定されない。対価の渡し方は、例えば、検査料金の代替として使えるポイントであってもよい。
【0120】
[4.料金表]
図14は、
図6で示した料金表の変形例を示す図である。
図14の料金表は、割引クーポンの情報をさらに含む。割引クーポンの情報は、クーポンコード(cou1)と、割引率(P11)とを含む。
【0121】
[5.料金画面]
図15は、
図9で示した料金画面の別の例を示す図である。
図15に示された料金画面SC6は、支払い時に割引クーポンを使用するという選択肢、および、ユーザがクーポンコードの入力欄を含む。
【0122】
料金画面SC6は、さらに、クーポン使用後の検査料金を含む。クーポン使用後の検査料金(Pt3円)は、検査の依頼によって発生する料金(Pt1)と
図14に示された割引率(P11)との積として、すなわち、式「Pt3=Pt1×P11」に従って、算出される。
【0123】
具体的には、例えば以下のような処理が行われる。
図10のステップS114において、検査サーバ1は、検査料金の情報と共に、クーポンコードの入力欄も端末3に送信する。ステップS310において、端末3は検査料金の情報と共に、クーポンコードの入力欄もディスプレイ36に表示する。クーポンコードがユーザによって入力されると、プロセッサ30は入力されたクーポンコードを検査サーバ1に送信する。検査サーバ1は当該クーポンコードに基づいて検査料金を再計算し、再計算後の検査料金および支払い料金の情報を端末3に送信する。端末3は、再計算された検査料金および支払い料金の情報をディスプレイ36に表示する。続いて、
図10のステップS312と同様に、ユーザは料金の支払いに関する手続きを行なう。
【0124】
なお、
図15の例では、料金画面SC6において割引クーポンを使用する構成としているが、クーポンが使用されるタイミングはこれに限定されず、例えば依頼画面SC1においてクーポンコードを入力して割引クーポンを使用する欄を設けてもよい。この場合、
図10のステップS104においてプロセッサ10が検査料金を算出する際に、クーポンコードに基づく割引が行なわれる。すなわち、検査料金Pt3が、上記の式「Pt3=Pt1×P11」に基づいて算出される。また、ポイント等の別の種類の対価においても支払われるタイミングは特に限定されない。
【0125】
[6.処理の流れ]
図16は、PCR検査の結果のフィードバックおよび対価に関する情報の付与の処理の一例を示すフローチャートである。
図16の処理は、端末3のプロセッサ30および検査サーバ1のプロセッサ10が所定のプログラムを実行することによって実行される。
【0126】
図16を参照して、ステップS332において、端末3は、PCR検査の結果の入力をユーザから受け付ける。PCR検査は、遺伝子検査の一例である。入力される結果は、たとえば、「成功した」または「成功しなかった」である。
図12を参照して説明されたように、PCR検査の結果は、端末3に、微生物検査を特定する情報(検査ID)とともに入力されてもよい。
【0127】
ステップS334において、プロセッサ30は、入力されたPCR検査の結果を検査サーバ1に送信する。
【0128】
ステップS132において、検査サーバ1は、受信したPCR検査の結果を記憶部11に格納する。
【0129】
ステップS134において、検査サーバ1は、PCR検査の結果を微生物ライブラリに反映する。一実現例では、検査サーバ1は、所与の検査IDについてのPCR検査の結果として「成功した」を受信した場合、結果表(
図6)において、当該検査IDに関連付けられた「判別された微生物」を特定する。次に、検査サーバ1は、当該「判別された微生物」と同じ「微生物」を、微生物ライブラリ(
図4)において検索する。そして、検査サーバ1は、微生物ライブラリにおいて、当該「微生物」に関連付けられた実績情報の中の数値を1加算更新する。これにより、所与の検査IDについて端末3から送信されたPCR検査の結果が微生物ライブラリにおいて反映される。
【0130】
ステップS136において、検査サーバ1は、端末3に、対価(たとえば、
図14のクーポンコード)を送信する。
【0131】
ステップS336において、端末3のプロセッサ30は、検査サーバ1から受信した対価に関する情報を記憶し、表示する。
【0132】
ステップS338において、プロセッサ30は対価に関する情報への返信を受け付け、検査サーバ1に送信する。
【0133】
ステップS138において、プロセッサ10は受信した情報を記憶し、対価の提供に関する手続きを行ない、処理を終了する。具体的には、プロセッサ10は、対価の提供に関する手続きとして、例えば、ユーザ情報に紐付けて、割引クーポンが有るか無いかおよび割引額、謝礼金が有るか無いかおよび金額等を記憶部11に格納する。また、例えばプロセッサ10は、謝礼金の支払いを管理する別の端末に支払いの指示を送信する。なお、検査会社の対価の提供の方法および手段は上記の例に限定されず、公知の他の方法および手段であってもよい。
【0134】
以上のように、実施の形態2に係る微生物検査システムにおいては、検査会社はユーザからの遺伝子検査結果のフィードバック情報を集めることで、提供したプライマー配列に対する評価を行なうことができる。また、その結果、検査会社はユーザに対し、実績あるプライマーを提供できる機会が増える。加えて、ユーザは検査会社からの対価を受け取ることができる。この対価は、ユーザに対して遺伝子検査の結果をフィードバックするモチベーションを引き出すインセンティブとなり、検査会社にフィードバックが集まることを助長する。
【0135】
なお、本実施の形態2に従う微生物検査システム100Bでは、検査会社が提供したプライマー配列に基づいたプライマーをユーザがPCR検査に利用した場合の、PCR検査の結果のフィードバックおよび対価の提供を主眼として例示した。しかし、ユーザがPCR検査に利用したプライマーが必ずしも検査会社が提供したプライマー配列に基づいたものでなくても、PCR検査の結果のフィードバックおよび対価の提供を行なうように構成してもよい。この場合、PCR検査に利用されたプライマー配列に関わらず、PCR検査の結果が、微生物検査の結果と合致したか否かの情報が検査サーバ1に集められる。また、合わせて検査サーバ1が当該情報を分析し、分析した結果を微生物検査システム100Bの内容または評価に反映できるように構成してもよい。例えば、PCR検査において、微生物検査の結果と合致した確率を算出することで、微生物検査の信頼度が推定できる。また、推定した信頼度をユーザに公表すれば、ユーザにとっても微生物検査システム100Bの信頼度が理解できるのでメリットとなる。また、PCR検査の結果を検査サーバ1に集めるときに、合わせてそのとき使用したプライマー配列を入力するように構成してもよい。このように構成すれば、PCR検査の結果をプライマー配列ごとの実績情報に反映できるので、その結果を微生物検査の内容または評価に反映できる。
【0136】
また、本実施の形態2に従う微生物検査システム100Bにおいて、端末3は、検査サーバ1は、PCR検査の結果のフィードバックの代わりに、または加えて、ある微生物についての生化学性状検査の結果のフィードバックを受けてもよい。この場合、検査サーバ1は、フィードバックされた生化学性状検査の結果に基づいて、微生物ライブラリを更新してもよい。具体的には、例えば、検査サーバ1は、微生物ライブラリにおいて、対象の微生物に関連付けられた実績情報の値を1加算更新してもよい。
【0137】
[実施の形態3]
[1.微生物検査システムの構成]
図17は、実施の形態3に係る微生物検査システム100Cの構成を示す概略図である。実施の形態3に係る微生物検査システム100Cでは、検査サーバ1がプライマーの発注をユーザの代理として実行する構成が追加されている。
【0138】
図17を参照して、微生物検査システム100Cは、
図1に示した微生物検査システム100と同様に、微生物検査を行なう検査サーバ1、微生物検査を依頼する端末3およびネットワーク5を含む。また、微生物検査システム100Cは、合成サーバ7および合成機器9をさらに含む。合成機器9は、プライマーを合成する。
【0139】
図17の例では、端末3、検査サーバ1および合成サーバ7は、ネットワーク5を通して互いに通信可能に構成されているが、各要素間の通信方法はこれに限定されない。
【0140】
合成会社は、プライマーを合成するエンティティの一例である。より具体的には、合成会社は、合成機器9によりプライマーを合成し、販売する。
【0141】
合成サーバ7は、合成会社に属し、プライマーの注文および合成の管理を行なう。合成サーバ7は、例えば、CPU等で構成されるプロセッサ、ROM、RAM、HDD等により実現される記憶領域、および、検査サーバ1を含む外部と通信するための通信インターフェイス等を含む。合成サーバ7は一般的なコンピュータに相当する機能を含んで構成することができる。合成サーバ7は、合成サーバ7への入力または合成サーバ7からの出力のインターフェイスであるI/Oインターフェイス、表示部および入力部をさらに含んでもよい。
【0142】
[2.微生物検査システムにおける処理の概要]
図17には、ステップ(1)~ステップ(9)の順に、実施される処理の流れが示される。実施の形態3のステップ(1)~(3)は、実施の形態1のステップ(1)~(3)に対応するので説明を繰り返さない。
【0143】
ステップ(4)において、ユーザは、端末3を利用して、検査サーバ1から提示されたプライマー配列情報に基づいたプライマーを合成会社に発注するよう検査サーバ1に依頼を送信する。
【0144】
ステップ(5)において、検査会社の検査サーバ1は、合成会社の合成サーバ7に、当該プライマー配列情報を送信する。
【0145】
ステップ(6)において、合成機器9は、合成サーバ7の指示に従ってプライマーを合成する。
【0146】
ステップ(7)において、合成会社は、合成したプライマーをユーザに納品する。
ステップ(8)において、ユーザは、検査会社に、検査料金とともに合成に関する料金を支払う。
【0147】
ステップ(9)において、検査会社と合成会社との間で、合成に関する料金の精算が行なわれる。
図17の例では、検査会社は、合成に関する料金から、ユーザのプライマーの発注を代理した手数料と合成会社へのユーザの紹介料とを差し引いた金額を合成会社に支払う。ただし、合成に関する料金の精算はこれに限定されず、例えば紹介料はなくてもよい。
【0148】
[3.料金表]
図18は、
図5で示した料金表の一部を示す図である。
図18の例では、プライマー合成料金およびプライマー合成の発注代行の手数料という項目と、それぞれの項目に対応する金額(P21円およびP22円)が対応付けられている。
【0149】
[4.発注画面]
図19は、発注画面SC7の一例を示す図である。プライマーの発注の要否を入力するために構成される。この画面は、例えば、
図8の結果画面SC2の次に表示される。発注画面SC7においては、ユーザはプライマーの発注を検査会社に依頼するか否かを選択することができるように構成される。
図19の例では、プライマーを発注するか否かを選択するための選択肢の表示と、当該選択肢のどちらかを選択できるラジオボタンが設けられている。
【0150】
よって、ユーザはプライマーの発注の代理を希望しない場合(例えば、検査サーバ1から付与された微生物に関する情報を基にPCR検査を行わないと判断した場合、または、PCR検査は行なうがプライマーの発注はユーザ自身で行なう場合)には、プライマーの発注は行わず、そのまま検査料金のみを支払うことができる。
【0151】
一方、ユーザはプライマーの発注の代理を希望する場合がある。たとえば、ユーザは、検査サーバ1から付与された微生物に関する情報を基にPCR検査を行なうと判断しても、自身でプライマーの発注を行なう時間および手間をかけたくないと考える可能性がある。このような場合であっても、ユーザは、プライマーの発注画面に対する簡易な操作だけで、プライマーを発注できる。
【0152】
なお、本実施の形態3に係る微生物検査システム100Cは、ユーザが、プライマーの合成料金、プライマーの発注の代理のための手数料と合わせて検査料金を後日まとめて支払うように構成されている。このような構成においては、ユーザに検査料金と合成料金と手数料とを一度に支払うことができるので、ユーザの支払いにかける時間および手間を短縮できる。
【0153】
[5.プライマーの発注に関する処理の流れ]
図20は実施の形態3において、プライマーの発注の依頼がなされなかった場合の処理のフローチャートである。
図20の処理は、たとえば、端末3のプロセッサ30および検査サーバ1のプロセッサ10の各々が所定のプログラムを実行することによって実施される。
【0154】
図20のフローチャートにおいて、ステップS302~S306およびステップS102~S110は
図10のステップS302~S306およびステップS102~S110に対応するため、説明は省略する。検査サーバ1において検査結果が記憶されると(ステップS110)、ステップS1122において、検査サーバ1のプロセッサ10は、プライマーの発注に関する情報を作成する。プライマーの発注に関する情報とは、例えば、
図19に示した発注画面の内容である。ステップS1124において、プロセッサ10は、当該プライマーの発注に関する情報を、端末3に送信する。
【0155】
端末3のプロセッサ30は、ステップS3082において、検査サーバ1から受信した情報を記憶し、表示する。ステップS3084において、端末3は、ユーザからプライマーの発注が必要か否かの選択を受け付ける。例えば、ユーザが端末3のディスプレイ36に表示される発注画面SC7にて当該必要か否かの選択を入力する。ステップS3086において、プロセッサ30は当該ユーザの選択を検査サーバ1に送信する。
【0156】
ステップS1126において、プロセッサ10は、ユーザからプライマーの発注の依頼があったか否かを判定する。プライマーの発注の依頼が選択されていなかった場合(ステップS1126においてNO)、プロセッサ10は、ステップS114に進み、支払い情報を作成する。
図20において、以降のステップS114~S116およびステップS310~S312は、それぞれ
図10のステップS114~S116およびステップS310~S312に対応するため、説明は省略する。
【0157】
一方、プライマーの発注の依頼が選択された場合(ステップS1126においてYES)、プロセッサ10は、
図21のステップS122へ処理を進める。
【0158】
図21は実施の形態3において、プライマーの発注の依頼がなされた場合の処理のフローチャートである。
図21の処理は、たとえば、端末3のプロセッサ30、検査サーバ1のプロセッサ10および合成サーバ7のプロセッサの各々が所定のプログラムを実行することによって実施される。
【0159】
プライマーの発注の依頼が選択された場合(ステップS1126においてYES)、ステップS122において、検査サーバ1のプロセッサ10は、微生物検査の結果によって得られたプライマー配列情報を合成会社の合成サーバ7に送信し、合成会社に対して、当該プライマー配列情報に基づいてプライマーを合成するよう注文する。
【0160】
ステップS124において、プロセッサ10は、検査料金、プライマーの合成料金、手数料、紹介料等に基づいて支払い情報を作成する。ステップS126において、プロセッサ10は当該支払い情報を端末3に送信する。ステップS322において、端末3のプロセッサ30は、当該支払い情報を端末3の記憶部31に記憶し、ディスプレイ36に表示することで、ユーザに支払い情報を通知する。
【0161】
ステップS502において、合成会社の合成サーバ7のプロセッサは検査サーバ1から送信されたプライマー配列情報および合成の注文情報を格納する。ステップS504において、合成会社の合成サーバ7のプロセッサは当該配列情報に基づきプライマーを合成する指示を合成機器9に送信する。ステップS506において、合成サーバ7のプロセッサは、合成されたプライマーをユーザに納品するよう指示を出力する。
【0162】
ステップS324において、端末3のプロセッサ30は、プライマーをユーザに納品後、検査料金および合成に関する料金の支払いに関する手続きを行ない、処理を終了する。例えば、端末3のプロセッサ30は、支払いを担当する別の端末に支払い情報を転送する。
【0163】
ステップS128において、プロセッサ10は、ユーザの支払いを確認後、合成に関する料金の精算に関する手続きを行ない、処理を終了する。例えば、プロセッサ10は、ユーザの支払い金額から、検査料金、手数料およびユーザの紹介料を差し引いた金額を、合成会社の口座に振り込む指示を、料金の精算を担当する他の端末に転送し、振り込みを実行させる。
【0164】
ステップS508において、合成会社の合成サーバ7のプロセッサは、料金が精算されたことを合成サーバ7の記憶部に記憶し、処理を終了する。その結果、料金の精算に関する情報をディスプレイの表示等により担当者に通知することが可能となる。
【0165】
プライマーが納品されたことの確認のために、端末3から検査サーバ1および/または合成サーバ7にプライマーの納品が完了したことを通知するように構成してもよい。例えば、検査サーバ1は、プライマーの納品確認を行なう画面を端末3に提供するようにしてもよい。具体的には、例えば、プロセッサ30は、当該プライマーの納品確認の画面をディスプレイ36に表示する。プロセッサ30は、ユーザが納品を確認した内容の入力をユーザから受け付ける。プロセッサ30は当該納品確認の情報を、検査サーバ1に送信する。検査サーバ1は、当該納品確認の情報を記憶し、合成サーバ7にさらに転送する。このように構成すると、検査サーバ1および合成サーバ7においても、プライマー納品までステータスが進んだことを自動的に確認できる。
【0166】
料金の支払いが完了したことを確認するために、端末3から検査サーバ1および/または合成サーバ7に料金の支払いの完了を通知するように構成してもよい。例えば、検査サーバ1は、支払い完了の確認を行なう画面を端末3に提供するようにしてもよい。具体的には、例えば、プロセッサ30は、支払い完了の確認の画面をディスプレイ36に表示する。プロセッサ30は、ユーザが支払いを完了した内容の入力をユーザから受け付ける。プロセッサ30は当該支払い完了の情報を、検査サーバ1に送信する。検査サーバ1は、当該支払い完了の情報を記憶し、合成サーバ7にさらに転送する。このように構成すると、検査サーバ1および合成サーバ7においても、支払い完了までステータスが進んだことを自動的に確認できる。
【0167】
以上のように、実施の形態3に係る微生物検査システム100Cにおいては、ユーザはプライマーの発注にかける手間および時間を削減することができる。検査会社は、ユーザから、プライマーの発注の手数料を得ることができる。
【0168】
また、PCR検査において、ライブラリに登録されたプライマー配列に基づくプライマーが使用される確率が上がる。したがって、実施の形態2の特徴と組み合わせられることにより、実施の形態3に係る微生物検査システム100Cは、当該プライマーに関するフィードバックを得る確率を高めることができ、その結果、当該プライマーの実績に関する情報をより多く収集することができる。
【0169】
なお、実施の形態3において、ユーザによる検査料金および合成に関する料金の支払いは、合成会社に対して行われてもよい(
図22のステップ(8)参照)。この場合も合成会社と検査会社の間で、検査料金と合成に関する料金の精算が行われる(
図22のステップ(9)参照)。この場合の、料金の精算は、例えば、合成会社から検査会社に、検査料金、手数料およびユーザの紹介料を合計した金額が支払われる。
【0170】
[変形例]
上記のように、実施の形態1~3に係る微生物検査システム100においては、未知の微生物を含むサンプルを質量分析して得られたMSデータを端末3から検査サーバ1に送信する。検査サーバ1は、当該未知の微生物を判別し、端末3に当該未知の微生物を特定する情報(たとえば学名)および遺伝子検査に関する情報(たとえばプライマー配列)を送信する。ユーザは端末3において受信した遺伝子検査に関する情報に基づいて、遺伝子検査を行なうことにより、未知の微生物を特定する情報が正しいかを確認できる。
【0171】
当該遺伝子検査を行なう際には、質量分析を実施したサンプルと同じ微生物の遺伝子検査用のサンプルが必要である。このときに、ユーザが誤って、質量分析を実施したサンプルと異なる微生物を用いて遺伝子検査用のサンプルを作成してしまう可能性がある。この取り違えは、特に、質量分析を行なってから遺伝子検査を行なうまでの時間が長い場合、および、質量分析と遺伝子検査との実施者が異なる場合等に、発生することが危惧される。
【0172】
このような実情を鑑みて、実施の形態1~3に係る変型例に従う微生物検査システムにおいては、質量分析に使用したサンプルがそのまま保管され、遺伝子検査において再度使用される。サンプルの保管および再度の使用時にサンプルを取り違えるおそれを低減するために、サンプルには識別子が付される。
【0173】
図23は、変型例に係る微生物検査システム100Dの構成を示す概略図である。
図1と比較して、
図23においては、保管装置300が追加されている。保管装置300は、たとえば、サンプルを低温で安定的に保管できる装置であり、一般的に実験室で用いられる冷蔵庫または冷凍庫であってもよい。ただし、保管装置300は、これに限定されず、質量分析に用いられたサンプルを、遺伝子検査に再度用いることが可能な品質で保管できればよい。
【0174】
図23を参照して、ユーザは端末3のMS38においてサンプルの質量分析を行ないMSデータを取得した後、当該サンプルに識別子が付された状態でサンプルを保管装置300に保管する。識別子は、サンプルを識別できる情報を含む。サンプルを識別できる情報とは、たとえば、ユーザが付したサンプルの整理番号である。識別子は、サンプルのMSデータと関連付けられる情報も含む。サンプルのMSデータと関連付けられる情報は、たとえば、検査ID(
図7の「検査ID」参照)である。識別子は保管装置300内の保管場所の情報を含むように構成されてもよい。一実施例においては、識別子は、サンプルの整理番号であり、端末3には、サンプル毎に、識別子と、MSデータと、保管場所とを対応付けた形で記憶する。
【0175】
図24はサンプルの保管状態の一例を示す図である。
図24を参照して、サンプルは、MS38においてMSデータを取得するために用いられたサンプルプレート2のウェル21に設置されたままの状態で保管装置300に保管される。
図24の例では、サンプルプレートには、サンプルを識別するための識別子として、プレート識別子24,25およびウェル識別子22,23が付されている。プレート識別子24,25のそれぞれは、たとえば、サンプルプレート2を識別するためのプレート番号およびバーコードである。ウェル識別子22,23のそれぞれは、例えばサンプルプレート2内のウェルの位置を示すウェルの行、列を示す文字または数字である。
図24の例では、プレート識別子24,25と、ウェル識別子22,23を用いることにより、どのサンプルプレート2のどのウェル21かが識別できる。ユーザはサンプルを設置したサンプルプレート2のプレート識別子24,25およびウェル21のウェル識別子22,23を端末3に記録する。これにより、プレート識別子24,25と、ウェル識別子22,23は識別子としての機能を果たす。
【0176】
端末3が検査サーバ1から上記サンプルの微生物検査の結果を受信すると、ユーザは検査結果画面(
図7)において、検査ID、微生物を特定する情報、遺伝子検査に関する情報を取得する。端末3は、ユーザの操作に応じて、検査IDに対応する識別子を表示する。このときに、端末3は、サンプルの保管場所を表示してもよい。ユーザは、識別子またはサンプルの保管場所の情報を用いて、保管装置300から受信した微生物検査の結果に対応するサンプルが設置されたサンプルプレート2を取り出す。そして、ユーザは、当該サンプルに対し、受信した遺伝子検査に関する情報に基づいて、遺伝子検査を行ない、受信した微生物を特定する情報が正しいかを確認する。具体的には、たとえば、ユーザがサンプルが設置されたウェル21に核酸を溶解する試薬を加え、核酸を含む当該試薬を取り出し、遺伝子検査を行なうための試薬と混和した後、遺伝子検査を行うための装置(たとえばPCR装置)に設置し、遺伝子検査を実行し、その結果に応じて、受信した微生物を特定する情報が正しいか否かを判断する。
【0177】
以上のように、変型例に係る微生物検査システム100Dにおいては、ユーザが質量分析に使用したサンプルをそのまま保管し、遺伝子検査に用いることができる。よって、ユーザは、再度サンプルを調製する手間が省ける上に、サンプルの調整時の取り違えの可能性も低減できる。また、目的の微生物を含むサンプルが、質量分析に用いたサンプルプレート上のものしか残っていない場合においても、遺伝子検査を実施できる。加えて、サンプルに識別子を付して管理することで、サンプルの保管、取り出し時にサンプルを取り違え、異なる微生物について遺伝子検査を行なってしまう可能性が低減される。
【0178】
換言すると、完全に同一のサンプルから質量分析による結果および遺伝子検査による結果の両方が得られるので、ユーザは、サンプルの調整および管理の手間を軽減し、サンプルの取り違えのリスクを低減できる。よって、ユーザは、検査サーバ1における微生物検査の結果が正しいか確認するための遺伝子検査を簡便に実行できる。すなわち、ユーザにとって、当該微生物検査を利用しやすくなる。よって、幅広いユーザが、当該微生物検査システムを用いて、マススペクトルデータから微生物を同定できるようになる。
【0179】
なお、識別子、および、識別子とサンプルのMSデータとの関連付けは、上記の例に限定されず、識別子を用いてサンプルを識別できる情報を端末3に記憶させること、および、出力させること、ならびに、端末3が微生物検査の結果を受信した際に、当該識別子を用いてサンプルを保管装置300から取り出すことが可能であればよい。
【0180】
保管装置300へのサンプルの保管および取り出しも上記の例に限定されず、例えば、サンプルの識別子に応じてサンプルを保管および取り出しする全自動装置(図示せず)により行なわれてもよい。
【0181】
また、質量分析に用いたサンプルの遺伝子検査の態様も上記の例に限定されず、保管装置300に保管されたサンプルが遺伝子検査に使用されればよい。
【0182】
(実施例)
まず、サンプルプレート2上のウェル21に、微生物由来のサンプルを設置する。
【0183】
次に、MS38において、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法を用いて、サンプルのMSデータを取得する。
【0184】
次に、サンプルのMSデータおよびウェル識別子を、端末3に記憶する。サンプルは、保管装置300に保管される。
【0185】
次に、端末3を用いてMSデータを検査サーバ1に送信する。そして、端末3が、判別された微生物を特定する情報および遺伝子検査に関する情報を検査サーバ1から受信すると、これらの情報が端末3に記憶される。ここで、判別された微生物に関する情報は、サンプルの学名を含む。遺伝子検査に関する情報は、遺伝子検査に用いるプライマー配列およびPCR産物のサイズを含む。端末3は、当該情報と対応する識別子とを対応させ、対応させた状態で端末3に表示する。
【0186】
次に、端末3の表示に基づいて、保管装置300から、対応するサンプルを含むサンプルプレート2を取り出す。そして、対応するサンプルを設置したウェルに、アンプダイレクトバッファ(株式会社島津製作所製)を滴下する。5分放置した後、サンプルを回収し、回収したサンプルにPCR反応液を加え、混合する。そして、受診したプライマー配列を基に設計されたプライマーを用いて、PCR装置においてPCR反応を行なう。PCR反応後のサンプルを電気泳動し、受信したPCR産物のサイズに対応する特異的なバンドが検出されるか否かを確認することにより、微生物検査の結果が正しいかを確認する。
【0187】
[付記]
実施の形態1~3および変形例に係る微生物検査システム100において、端末3、検査会社の検査サーバ1、合成会社の合成サーバ7の各々は、1つのコンピュータによって構成される必要はなく、複数のコンピュータによって構成されてもよい。すなわち、端末3、検査サーバ1、および合成サーバ7のそれぞれにおいて実施される処理は、複数のコンピュータによって分散して実施されてもよい。
【0188】
また、実施の形態1~3および変形例に係る微生物検査システム100において、端末3、検査会社の検査サーバ1、合成会社の合成サーバ7の間での情報の送受は以上で示したネットワークに限定されず、コンピュータに関する周知の技術を利用されるものであればよい。例えば、各種情報は、USBメモリ、CD-ROM等の記憶媒体に記憶され、手渡しまたは郵送で送受されてもよい。また、例えば、検査サーバ1に対する情報の送受信専用に開発された子機を端末3としてもよい。
【0189】
以上に説明したように、本実施の形態および変型例に係る微生物検査システム100は、マススペクトルデータのデータベースを用いた微生物の判別を、データベースにアクセスできないユーザに対しても簡易に提供することができる。また、微生物検査システム100は、判別した微生物に関する情報を幅広いユーザに適切に提供することができる。
【0190】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0191】
(第1項)一態様に係る微生物情報の提供方法は、端末と通信可能なコンピュータによって実行される方法であって、前記端末から、サンプルの質量分析によって得られたマススペクトルデータの入力を受けるステップと、マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベースにおいて、前記サンプルのマススペクトルデータに関連付けられた、微生物に関する情報を取得するステップと、前記微生物に関する情報を前記端末へ通知するステップとを備えていてもよい。前記微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および前記微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含んでよい。
【0192】
第1項に記載の微生物情報の提供方法によれば、幅広いユーザに簡便にマススペクトルデータを利用した微生物情報を提供できる。より詳細には、データベースの検索により判別された微生物を直接的に指し示す情報をユーザに通知することができる。また、ユーザは微生物の遺伝子検査に必要な情報を簡便に入手することができる。
【0193】
(第2項)第1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報は、判別された微生物の遺伝子の全配列、遺伝子検査に用いられるプライマーの配列、遺伝子検査の産物のサイズ、および遺伝子検査の反応条件の中の少なくとも1つを含んでよい。
【0194】
第2項に記載の微生物情報の提供方法によれば、ユーザは、自身の都合およびスキルに鑑みて、1つまたは複数の遺伝子検査に必要な情報を入手することができる。
【0195】
(第3項)第2項に記載の微生物情報の提供方法において、前記端末から、前記プライマーの配列を有するプライマーの合成の発注依頼を受けるステップと、前記発注依頼に応じて、プライマーを合成するエンティティへ、前記プライマーの配列およびプライマーを合成する指示を送るステップと、をさらに備えてよい。
【0196】
第3項に記載の微生物情報の提供方法によれば、ユーザはプライマーを合成する会社にユーザ自身でプライマーを発注する手間と時間を節約できる。
【0197】
(第4項)第1~3項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記通知される内容に応じて前記通知に対する料金を算出するステップをさらに備え、前記微生物に関する情報を前記端末へ通知するステップは、前記料金を、前記端末に通知することを含んでもよい。
【0198】
第4項に記載の微生物情報の提供方法によれば、サーバは、通知する微生物に関する情報の内容に応じた料金を計算できる。
【0199】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記微生物に関する情報について実施された、遺伝子検査の結果の入力を受けるステップをさらに備えてよい。
【0200】
第5項に記載の微生物情報の提供方法によれば、サーバは、微生物に関する情報に基づいて実施された、遺伝子検査の結果を取得できる。
【0201】
(第6項)第5項に記載の微生物情報の提供方法において、前記遺伝子検査の結果に基づいて前記データベースを更新するステップをさらに備えてよい。
【0202】
第6項に記載の微生物情報の提供方法によれば、遺伝子検査の結果に基づいてデータベースの内容を変更できる。その結果、例えば、遺伝子検査の結果と微生物検査の結果が合致した確率を算出することで、微生物検査の信頼度が推定できる。この場合、推定した信頼度を公表すると、ユーザも微生物検査の信頼度が理解できる。また、例えば、データベースにおけるプライマー配列の実績に関する情報をより増やすことができる。この場合、ユーザは実績のあるプライマー配列を選択的に入手できる。
【0203】
(第7項)第5項または第6項に記載の微生物情報の提供方法において、前記遺伝子検査の結果の入力に対する対価を、前記遺伝子検査の結果の入力元に対して付与するステップ(S138)をさらに備えてよい。
【0204】
第7項に記載の微生物情報の提供方法によれば、ユーザは、遺伝子検査の結果の入力への対価を得られる。対価がインセンティブとなり、ユーザが遺伝子検査の結果を返すモチベーションが上がるので、データベースにおけるプライマーの実績に関する情報がより充実することが期待される。
【0205】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記微生物に関する情報は、微生物の生化学性状検査の実施に必要な情報をさらに含んでよい。
【0206】
第8項に記載の微生物情報の提供方法によれば、ユーザは判別した微生物に対する生化学性状検査の実施に必要な情報を容易に得られるので、生化学性状検査の実施が容易になる。
【0207】
(第9項)8項に記載の微生物情報の提供方法において、前記サンプルに含まれる微生物について、生化学性状検査の結果の入力を受けるステップをさらに備えてよい。
【0208】
第9項に記載の微生物情報の提供方法によれば、サーバは生化学性状検査検査の結果が、サーバによる微生物の判別結果と合致するかを確認できる。
【0209】
(第10項)第1項~第19項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記端末は、前記データベースにアクセスできない状態にあってもよい。アクセスできない状態とは、例えば、データベースは、端末または端末がアクセスできる記憶装置に格納されていない状態であり、かつ、データベースは、サーバにおいて端末がアクセス権限を有していない記憶領域に格納されている状態である。
【0210】
第10項に記載の微生物情報の提供方法によれば、データベースを保有せず、かつ、データベースへのアクセス権がないユーザも、サンプルの判別が必要な状況になったときにのみ、マススペクトルを用いた微生物の判別および判別された微生物の遺伝子検査に関する情報等を取得できる。
【0211】
(第11項)第1項~第10項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記コンピュータと前記端末とは、ネットワークを介して通信してよい。
【0212】
第11項に記載の微生物情報の提供方法によれば、サーバと端末とは、インターネット、イントラネット等のネットワークを介して簡易に情報を送受信できる。
【0213】
(第12項)第1項~第11項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記質量分析に使用されたサンプルは、前記遺伝子検査において再度使用されてもよい。
【0214】
第12項に記載の微生物情報の提供方法によれば、完全に同一のサンプルから質量分析による結果および遺伝子検査による結果の両方が得られるので、ユーザは、サンプルの調整および管理の手間を軽減し、サンプルの取り違えのリスクを低減できる。よって、ユーザは、サーバにおける微生物検査の結果が正しいか確認するための遺伝子検査を簡便に実行できる。すなわち、ユーザにとって、当該微生物検査を利用しやすくなる。よって、幅広いユーザが、当該微生物検査システムを用いて、マススペクトルデータから微生物を同定できるようになる。
【0215】
(第13項)第12項に記載の微生物情報の提供方法において、前記質量分析に使用されたサンプルは、前記質量分析によって使用されたのち識別子を付された状態で保管装置に保管され、前記端末が前記微生物に関する情報を受信した際には、前記識別子に基づいて前記保管装置から取り出され、前記遺伝子検査の実施に必要な情報に基づいて前記遺伝子検査を実施することにより、前記微生物自体を特定する情報が正しいか確認するために使用されてもよい。
【0216】
第13項に記載の微生物情報の提供方法によれば、サンプルの保管、取り出し時にサンプルを取り違え、異なる微生物について遺伝子検査を行なってしまう可能性が低減される。
【0217】
(第14項)第1項~第13項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記遺伝子検査は、酵素を用いた遺伝子増幅法を含んでよい。
【0218】
第14項に記載の微生物情報の提供方法によれば、酵素を用いた遺伝子増幅法を用いて簡便に遺伝子検査を行なえるので、ユーザにとって当該微生物検査が利用しやすくなり、幅広いユーザが微生物検査システムを利用できるようになる。
【0219】
(第15項)第1項~第14項のいずれか1項に記載の微生物情報の提供方法において、前記遺伝子検査は、核酸配列解析を含んでよい。
【0220】
第15項に記載の微生物情報の提供方法によれば、核酸配列解析を用いて簡便に遺伝子検査を行なえるので、ユーザにとって当該微生物検査が利用しやすくなり、幅広いユーザが微生物検査システムを利用できるようになる。
【0221】
(第16項)一態様に係る微生物判別システムは、サーバと、端末とを備え、前記端末は、質量分析器から出力されたマススペクトルデータを前記サーバへ送信し、前記サーバは、マススペクトルデータと微生物とを関連付けるデータベースにおいて、前記サンプルのマススペクトルデータに関連付けられた、微生物に関する情報を取得し、前記微生物に関する情報を前記端末へ通知し、前記微生物に関する情報は、微生物自体を特定する情報および前記微生物の遺伝子検査の実施に必要な情報を含んでもよい。
【0222】
第16項に記載の微生物判別システムによれば、幅広いユーザに簡便にマススペクトルデータを利用した微生物情報を提供できる。
【0223】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0224】
1 検査サーバ、2 サンプルプレート、3 端末、5 ネットワーク、7 合成サーバ、9 合成機器、10,30 プロセッサ、11,31 記憶部、15,35 通信インターフェイス、21 ウェル、22,23 ウェル識別子、24,25 プレート識別子、33 インターフェイス、36 ディスプレイ、37 入力部、38 MS、100,100B,100C 微生物検査システム、110,300 保管装置、310 プログラム格納領域、111,311 データ格納領域、SC1 依頼画面、SC2 結果画面、SC3 料金画面、SC4 フィードバック画面、SC5 対価画面、SC7 発注画面。