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特開2023-149939設計支援システム、設計支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149939
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】設計支援システム、設計支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20231005BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20231005BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F113:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058768
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】大籔 直孝
(72)【発明者】
【氏名】新子 忠
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146DC01
5B146DE11
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】設計図の配管構造に対する配管部材の割り当てが適切に行われるようにする。
【解決手段】設計図の配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出し、検出された分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得し、所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径の組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルを記憶し、前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、前記参照テーブルにおいて、設計図から取得したのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行うように設計支援システムを構成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計図において示される配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出する検出部と、
前記検出部が検出した分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得する口径パターン取得部と、
所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径との組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルを記憶する参照テーブル記憶部と、
前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、前記参照テーブルにおいて前記口径パターン取得部により取得されたのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行う変換部と
を備える設計支援システム。
【請求項2】
前記参照テーブルは、
配管ユニットごとに対応するチーズ・エルボ間寸法として、特定の1つの長さが定められた第1寸法と、前記第1寸法よりも大きい最小長さ以上であることが定められた第2寸法とを格納し、
前記変換部は、
前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法が、前記第2寸法の最小長さ未満である場合に前記変換処理を行う
請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記変換部は、前記変換処理にあたり、設計図において、配管ユニットのチーズとエルボのうち、チーズの位置を固定とし、エルボの位置を変換されたチーズ・エルボ間寸法に応じて移動させる
請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記変換部は、
前記参照テーブルにおいて前記口径パターン取得部により取得されたのと同じ口径パターンが格納されていない場合、前記変換処理を行わない
請求項1から3のいずれか一項に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記参照テーブルは、配管ユニットを構成する樹脂製の配管部材の規格に応じて口径パターンごとに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する
請求項1から4のいずれか一項に記載の設計支援システム。
【請求項6】
設計支援システムにおける設計支援方法であって、
設計図において示される配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出する検出ステップと、
前記検出ステップが検出した分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得する口径パターン取得ステップと、
前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、参照テーブル記憶部に記憶され、所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径との組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルにおいて、前記口径パターン取得ステップにより取得されたのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行う変換ステップと
を含む設計支援方法。
【請求項7】
設計支援システムにおいて備えられるコンピュータを、
設計図において示される配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出する検出部、
前記検出部が検出した分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得する口径パターン取得部、
前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、参照テーブル記憶部に記憶され、所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径の組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルにおいて、前記口径パターン取得部により取得されたのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行う変換部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援システム、設計支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の設計内容が示されるCADデータにおける資機材の配置を変更可能とされた設計装置の構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-077200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設計図において示される配管構造において分岐が生じる分岐部位に対して、規格等の事情で寸法の変更に制約のある配管部材を割り当てる処理(配管部材割当処理)が必要となる場合がある。
本発明は、設計図の配管構造に対する配管部材の割り当てが適切に行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、設計図において示される配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出する検出部と、前記検出部が検出した分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得する口径パターン取得部と、所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径の組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルを記憶する参照テーブル記憶部と、前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、前記参照テーブルにおいて前記口径パターン取得部により取得されたのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行う変換部とを備える設計支援システムである。
【0006】
また、本発明の一態様は、設計支援システムにおける設計支援方法であって、設計図において示される配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出する検出ステップ、前記検出ステップが検出した分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得する口径パターン取得ステップと、前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、参照テーブル記憶部に記憶され、所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径の組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルにおいて、前記口径パターン取得ステップにより取得されたのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行う変換ステップとを含む設計支援方法である。
【0007】
また、本発明の一態様は、設計支援システムにおいて備えられるコンピュータを、設計図において示される配管構造において、チーズの枝管側にエルボが組み合わされた形態の分岐部位を検出する検出部、前記検出部が検出した分岐部位におけるチーズ主管の口径とエルボの口径とによる口径パターンを前記設計図から取得する口径パターン取得部、前記設計図における前記分岐部位のチーズ・エルボ間寸法を、参照テーブル記憶部に記憶され、所定規格のチーズの枝管側に所定規格のエルボを組み合わせた配管ユニットのチーズ主管の口径とエルボの口径の組み合わせである口径パターンに対応して定められたチーズ・エルボ間寸法を格納する参照テーブルにおいて、前記口径パターン取得部により取得されたのと同じ口径パターンに対応して格納されているチーズ・エルボ間寸法に変換する変換処理を行う変換部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設計図の配管構造に対する配管部材の割り当てが適切に行われるようになるとの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る設計支援装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係る参照テーブルの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る短管タイプの樹脂製配管ユニットの態様例を示す図である。
図4】本実施形態に係る長管タイプの樹脂製配管ユニットの態様例を示す図である。
図5】本実施形態に係る設計支援装置が、配管部材割当処理での樹脂製配管ユニットUNの割り当てに対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る樹脂製配管ユニットの割り当ての具体例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態の設計支援装置システムが対応する設計支援装置100の構成例を示している。本実施形態の設計支援装置100は、配管部材割当処理を実行する。
まず、配管部材割当処理の概要について説明する。
建築物を設計するにあたっては設計図が作成される。作成される設計図には建築物における排水・給水に応じた配管構造の設計内容も含まれる。なお、本実施形態の設計支援装置100が対応する設計図の形式については特に限定されないが、例えばBIM(Building Information Modeling)の技術により設計対象の建築物を3次元モデル化した形式であってよい。なお、本実施形態の設計支援装置100は、例えば設計図作成のアプリケーションがインストールされることで、設計図を作成可能とされていてもよい。
設計図における配管構造の設計は、例えば配管部材が鋼管であることを前提に作成される。一方で、現場での配管の施工にあたっては、配管部材として鋼管ではなく樹脂製のものを採用する場合がある。この場合、設計図における配管構造を構成する配管部材について、鋼管から樹脂製のものに品番等を置き換える必要が生じる。このように設計図における配管構造を構成する配管部材を鋼管から品番に置き換えることが配管部材割り当てである。配管部材割当処理は、設計支援装置100が実行する配管部材割り当てに応じた処理である。
【0011】
そのうえで、鋼管の場合、配管部材の長さについては例えば施工時の切断等の加工により調整が可能である。このため、設計図において設計された配管構造における各部の長さは設計者の任意の判断で設定されている。
一方で、現場での配管の施工にあたっては、配管部材として鋼管ではなく樹脂製のものを採用する場合がある。樹脂製の配管部材は樹脂成形によって製造される。このような事情から、樹脂製の配管部材は、成形や構造等の事情で予め設定した規格ごとに応じて仕様としての寸法が定められており、施工に際しても切断により任意に長さを調整することに制約のあるものも含まれる。このため、樹脂製の配管部材のうちには、施工において予め定められた寸法のまま用いる必要のある配管部材がある。このため、例えば配管構造において分岐が生じる部位(分岐部位)に対応してチーズ(主管と当該主管に合流する枝管とを有する配管部材)とエルボ(例えば90度で流路が屈曲された配管部材)とを含む所定の配管部材を組み合わせて構成される樹脂製配管ユニットとしても、用いられた配管部材の寸法が固定であったり最小寸法より短くできなかったりするといったように、寸法の変更に制約がある。
このため、配管部材割り当てにあたっては、設計図にて鋼管に対応して設計された分岐部位の寸法に対して、最も適合する寸法の樹脂製配管ユニットを割り当てるようにすることが求められる。本実施形態の設計支援装置100は、配管部材割当処理において、上記のような樹脂製配管ユニットの割り当てを実行可能に構成される。
【0012】
図1の設計支援装置100は、ユーザインターフェース部101、制御部102、及び記憶部103を備える。同図の構成に対応する設計支援装置100としての機能は、設計支援装置100に対応するハードウェアとしてのコンピュータがプログラムを実行することにより実現される。
【0013】
ユーザインターフェース部101は、例えばマウス、キーボード等の入力デバイスやディスプレイデバイス、音声出力デバイス等の出力デバイスを含み、ユーザと設計支援装置100との間での情報のやりとりを実現する部位である。
【0014】
制御部102は、設計支援装置100における各種制御を実行する。制御部102は、樹脂製配管ユニットの割り当てに関連する機能部として、検出部121、口径パターン取得部122、変換部123を備える。
【0015】
検出部121は、樹脂製配管ユニットの割り当てに対応して、設計図における配管構造から分岐部位を検出する。
【0016】
口径パターン取得部122は、検出部121により検出された分岐部位について設計図にて設定されている口径パターンを取得する。分岐部位は配管構造において主管から枝管が分岐する部位である。口径パターン取得部122が取得する口径パターンは、分岐部位において配置されるチーズにおける主管(チーズ主管)の口径と、当該チーズの枝管側に接続されるエルボの口径との組み合わせである。
【0017】
変換部123は、具体的に、樹脂製配管ユニットの割り当てとして、設計図において鋼管を前提に設計された分岐部位のチーズ・エルボ間寸法(チーズからエルボまでに対応する寸法)を、樹脂製配管ユニットのチーズ・エルボ間寸法に変換する処理(変換処理)を行う。
【0018】
記憶部103は、設計支援装置100が対応する情報を記憶する。記憶部103は、配管部材マスタ記憶部131、参照テーブル記憶部132、及び設計図記憶部133を備える。
【0019】
配管部材マスタ記憶部131は、設計図への割り当て対象となる樹脂製の配管部材ごとの規格に応じた寸法の仕様を示す情報である。また、配管部材マスタ記憶部131は、所定の規格のチーズ、エルボを有して構成される配管ユニット(樹脂製配管ユニット)としての寸法の仕様を示す情報を含んでもよい。
【0020】
参照テーブル記憶部132は、参照テーブルを記憶する。参照テーブルは、変換部123が変換処理を行うにあたり利用する情報である。参照テーブルは、樹脂製配管ユニットの仕様ごとに応じた寸法を示す。
【0021】
設計図記憶部133は、設計図のデータを記憶する。設計図記憶部133は、データインターフェースやネットワーク経由の通信を経由して取得した設計図のデータを記憶してもよい。あるいは、設計支援装置100に設計図作成機能を有するアプリケーションがインストールされていることで設計支援装置100自体が設計図の作成機能を有する場合には、設計支援装置100が作成した設計図のデータを記憶してよい。
【0022】
図2は、参照テーブル記憶部132が記憶する参照テーブルの一例を示している。参照テーブルは、樹脂製配管ユニットの口径パターンごとに対応する短寸法(第1寸法の一例)と長寸法(第2寸法の一例)とを格納する。
樹脂製配管ユニットの仕様は、口径パターンとして示すチーズ主管の口径とエルボ(末端)の口径の組み合わせパターンと、チーズ・エルボ間寸法とにより定まる。樹脂製配管ユニットは、口径パターンごとに、チーズ主管からエルボまでの間の寸法(チーズ・エルボ間寸法)として、チーズ・エルボ間寸法m1(第1寸法の一例)とチーズ・エルボ間寸法m2との2つが定められる。
つまり、本実施形態の樹脂製配管ユニットは、1つの口径パターンに対して、チーズ・エルボ間寸法m1を有する短管タイプとチーズ・エルボ間寸法m2を有する長管タイプとの2種類の仕様が定められている。
【0023】
図3図4を参照して、短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sと長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lとについて説明する。なお、以降の説明において、樹脂製配管ユニットUN-Sと樹脂製配管ユニットUN-Lとで特に区別しない場合には樹脂製配管ユニットUNと記載する。
【0024】
図3は、或る口径パターンに対応する短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sを示している。樹脂製配管ユニットUNの仕様における口径パターンは、チーズTEにおける主管の口径TとエルボEBの口径Lとの組み合わせ(T×L)によって定まる。
短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sは、チーズTE(チーズ枝管TEbを含む)、エルボEB、直管ST2、及びジョイント雄ねじJTの各配管部材を図のように組み合わせて構成される。
上記のチーズTE(チーズ枝管TEbを含む)、エルボEB、直管ST2、及びジョイント雄ねじJTは、それぞれ、口径パターンに応じて定まる特定の寸法を有する。このように短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sを構成する配管部材は、それぞれ寸法が定まっている。このため、樹脂製配管ユニットUN-Sのチーズ・エルボ間寸法m1についても、1つの寸法が定まる。
【0025】
図4は、図3の樹脂製配管ユニットUN-Sと口径パターンが同じ長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lを示している。
長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lは、チーズTE(チーズ枝管TEbを含む)、ソケットSK、直管ST12、エルボEB、直管ST13、及びジョイント雄ねじJTの各配管部材を図のように組み合わせて構成される。
長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lでは、チーズTEとエルボEBとの間に介在する直管ST12を長いものに交換できる。このため、長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lのチーズ・エルボ間寸法m2(長寸法)は、長さの上限は規定されない。
ただし、ソケットSKの長さは固定であり、直管ST12については、使用可能な直管としての最小の長さが規定される。このため、長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lのチーズ・エルボ間寸法m2には最小長さが規定される。チーズ・エルボ間寸法m2の最小長さは、短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sについて定められたチーズ・エルボ間寸法m1よりも大きい。
【0026】
一例として、図2の参照テーブルの1行目の口径パターン(T20×L20)の樹脂製配管ユニットの場合、短管タイプのチーズ・エルボ間寸法m1は130mmであり、長管タイプのチーズ・エルボ間寸法m2は237mm以上である。
【0027】
図5のフローチャートを参照して、本実施形態の設計支援装置100が、配管部材割当処理での樹脂製配管ユニットUNの割り当てに対応して実行する処理手順例について説明する。
【0028】
ステップS100:設計支援装置100において、検出部121は、設計図記憶部133が記憶する設計図のデータから配管構造の設計内容を抽出する。
【0029】
ステップS102:検出部121は、ステップS100により抽出した配管構造が線分の接続により表されるように線分化を行う。
【0030】
ステップS104:検出部121は、線分化された配管構造(線分化配管構造)から1つの分岐部位を処理対象として検出する。当該ステップS104にて検出される分岐部位は、配管構造においてチーズTEと当該チーズから延伸される枝管にエルボEBが接続された構造部分に対応する線分の部分である。
ステップS106:口径パターン取得部122は、処理対象の分岐部位に対応して設計図において設定されている口径パターン(チーズ主管の口径とエルボの口径)を、設計図から取得する。
【0031】
ステップS108:変換部123は、参照テーブルにおいてステップS106により取得されたのと同じ口径パターンの樹脂製配管ユニットUNがあるか否かを判定する。
【0032】
ステップS110:同じ口径パターンの樹脂製配管ユニットUNがあると判定された場合、変換部123は、設計図における処理対象の分岐部位のチーズ・エルボ間寸法m3を計算する。
変換部123は、参照テーブルから処理対象の分岐部位と同じ口径パターンが対応付けられた長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lのチーズ・エルボ間寸法m2を取得する。変換部123は、計算により得られた分岐部位のチーズ・エルボ間寸法m3が、取得したチーズ・エルボ間寸法m2未満であるか否かを判定する。
【0033】
ステップS112:ステップS110にて計算により得られた分岐部位のチーズ・エルボ間寸法が、取得したチーズ・エルボ間寸法m2未満であると判定された場合、変換部123は、参照テーブルから処理対象の分岐部位と同じ口径パターンが対応付けられた短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sのチーズ・エルボ間寸法m1を取得する。変換部123は、設計図における処理対象の分岐部位のチーズ・エルボ間寸法m3を、取得したチーズ・エルボ間寸法m1に変換する。このようなチーズ・エルボ間寸法の変換は、設計図における処理対象の分岐部位に対して設計図において示されていたのと同じ口径パターンによる短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sを割り当てたことに相当する。
【0034】
また、変換部123は、ステップS112にて処理対象の分岐部位のチーズ・エルボ間寸法m3をチーズ・エルボ間寸法m1に変更するにあたり、チーズの位置を固定し、エルボEBの位置を移動させるようにしてよい。このようにエルボEBの位置を移動させたことにより、移動されたエルボEBの中心線が当該エルボEBに接続される配管の中心線と一致せずにずれる状態となる。この段階では、変換部123は、例えば割り当てを行った短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sのジョイント雄ねじJTの端部にて、ジョイント雄ねじJTより下流の配管と分断させてよい。
分断された箇所は、例えばその後の設計図の修正にて、例えばジョイント雄ねじJTより下流の配管を変更することで、樹脂製配管ユニットUN-Sと配管とが接続されるようにしてよい。あるいは、設計図における配管の変更は行わず、施工にあたって樹脂製配管ユニットUN-Sと配管とを可撓性を有する配管部材を用いて接続するようにしてもよい。
【0035】
ステップS114:変換部112は、ステップS106により取得したのと同じ口径パターンを有する短管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Sを、設計図における処理対象の分岐部位に割り当てる。この際、変換部112は、例えば配管部材マスタ記憶部131が記憶する配管部材マスタから、登録対象の樹脂製配管ユニットUN-Sを示す配管部材IDを取得し、取得した配管部材IDを設計図における処理対象の分岐部位に対応付けてよい。
【0036】
ステップS116:ステップS110にてチーズ・エルボ間寸法m3がチーズ・エルボ間寸法m2以上であると判定された場合、変換部123は、ステップS106により取得したのと同じ口径パターンを有し、設計図において処理対象の分岐部位に設定されていたチーズ・エルボ間寸法m3を有する長管タイプの樹脂製配管ユニットUN-Lを、設計図における処理対象の分岐部位に割り当てる。
【0037】
ステップS118:ステップS108にて参照テーブルにおいてでステップS106により取得された口径パターンと一致するものがないと判定された場合、変換部123は、配管部材マスタ記憶部131に記憶される樹脂製の配管部材のうちから、ステップS106にて取得された口径パターンに対応する樹脂製の配管部材を、設計図における処理対象の分岐部位に割り当てる。具体的に、変換部123は、ステップS106にて取得された口径パターン(チーズ主管の口径とエルボの口径)と同じ口径が仕様として定められた樹脂製のチーズとエルボとを、処理対象の分岐部位に割り当ててよい。
【0038】
ステップS120:ステップS114、S116、S118の処理の後、変換部123は、設計図における全ての分岐部位を対象とする樹脂製配管ユニットの割り当てが完了したか否かを判定する。未だ、樹脂製配管ユニットの割り当ての対象とされていない分岐部位が残っている場合には、ステップS104に処理が戻されることで、次の分岐部位を対象に樹脂製配管ユニット割り当ての処理が行われる。そして、全ての分岐部位について樹脂製配管ユニットの割り当てが完了したと判定されると、同図の処理が終了される。
【0039】
図6を参照して、図5のフローチャートの処理手順に応じた樹脂製配管ユニットの割り当ての具体例について説明する。また、以降の説明にあたっては、樹脂製配管ユニットUNは、図2の参照テーブルにおいて示されているものである場合を例に挙げる。
同図においては、ステップS102により線分化された配管構造に含まれている分岐部位のうち、6つの分岐部位BR(BR1~BR6)が示されている。同図において、分岐部位BRの口径パターンについては、チーズ主管の口径が20mm、エルボの口径が20mmである場合、それぞれT20×L20のように表記する。
【0040】
分岐部位BR(BR1~BR6)のそれぞれに対応して鋼管配管ユニットMUN(MUN1~MUN6)が示されている。鋼管配管ユニットMUN1~MUN6は、それぞれ設計図の配管構造において分岐部位BR1~BR6が対応する位置にて割り当てられている鋼管配管ユニットである。交換配管ユニットは、鋼管である配管部材によって構成される。
鋼管配管ユニットMUN1~MUN6は、チーズとエルボと直管とにより構成されてよい。この場合、同図の鋼管配管ユニットMUN5、MUN6は、継手により直管が見えていない状態である。あるいは、鋼管配管ユニットMUN1~MUN6のうち、鋼管配管ユニットMUN1~MUN4がチーズとエルボと直管とにより構成され、鋼管配管ユニットMUN5、MUN6は、直管を備えずチーズにエルボを接続して構成されてもよい。
【0041】
同図においては、鋼管配管ユニットMUNごとに対応の分岐部位BRのチーズ・エルボ間寸法m3が示されている。鋼管配管ユニットMUNのうち、鋼管配管ユニットMUN1~MUN4は、口径パターンについてはT20×L20で同じであるが、チーズ・エルボ間寸法m3については100mm、150mm、200mm、250mmで異なっており、鋼管配管ユニットMUN5、MUN6は、口径パターンはT100×L100で同じであるが、チーズ・エルボ間寸法が200mm、250mmで異なっている。
【0042】
ステップS104にて図6の分岐部位BR1~BR4のいずれかが検出された場合、ステップS108においては、参照テーブルにおいてステップS106にて取得されたのと同じ口径パターンの樹脂製配管ユニットUNがあると判定される。具体的に、参照テーブルにおいて、ステップS106にて取得されたのと同じ口径パターンの樹脂製配管ユニットUNは、図2の1行目の口径パターン(20×20)の樹脂製配管ユニットUNとなる。
この場合において、さらにステップS104にて検出された分岐部位が分岐部位BR1~BR3のうちのいずれかであった場合には、ステップS110にて、分岐部位のチーズ・エルボ間寸法m3が、参照テーブルから取得したチーズ・エルボ間寸法m2未満であると判定される。具体的に、この場合の分岐部位のチーズ・エルボ間寸法m3は、100mm、150mm、200mmのいずれかであり、チーズ・エルボ間寸法m2は、237mmである。
この場合には、ステップS112、S114による樹脂製配管ユニットUNの割り当てが行われる。つまり、分岐部位BR1~BR3に対しては、それぞれ、図6に示されるように、いずれも、口径パターンがT2×L20であり130mmのチーズ・エルボ間寸法m1を有する短管タイプの樹脂製配管ユニットUN1が割り当てられる。
【0043】
本実施形態では、上記のように分岐部位BR1~BR3(鋼管配管ユニットMUN1~MUN3)に対応して樹脂製配管ユニットUN1を割り当てるにあたり、設計図においては、樹脂製配管ユニットUN1におけるチーズを対応の分岐部位BR1~BR3における対応の線分から移動させずに固定し、エルボのほうをチーズ・エルボ間寸法の変更に応じて移動させるようにする。
一方、ステップS104にて検出された分岐部位が分岐部位BR4であった場合には、ステップS110にてチーズ・エルボ間寸法m3がチーズ・エルボ間寸法m2以上であると判定される。この場合には、ステップS116による樹脂製配管ユニットの割り当てが行われる。つまり、分岐部位BR4に対しては、図6に示されるように、口径パターンがT20×L20であり、分岐部位BR4のチーズ・エルボ間寸法m3と同じ250mmのチーズ・エルボ間寸法m2による長管タイプの樹脂製配管ユニットUN4の割り当てが行われる。
【0044】
また、ステップS104にて図6における分岐部位BR5、BR6のいずれかが検出された場合には、ステップS108にて、ステップS106にて取得されたのと同じ口径パターンの樹脂製配管ユニットUNが参照テーブルには含まれないと判定される。この場合には、参照テーブルにおいて示される樹脂製配管ユニットのうちで分岐部位BR5またはBR6に割り当て可能なものはない。
そこで、変換部123は、ステップS118により樹脂製配管ユニットの割り当てを行う。この場合、変換部123は、配管部材マスタから、口径パターンとチーズ・エルボ間寸法とが合致する樹脂製配管ユニットを形成可能な配管部材を選択する。
また、配管部材マスタにおいて、口径パターンとチーズ・エルボ間寸法とが分岐部位BR5またはBR6と合致する樹脂製配管ユニットが存在しない場合がある。この場合には、変換部123は、例えば分岐部位BR5またはBR6に対して寸法が近似する樹脂製配管ユニットを形成可能な配管部材を選択する。具体的に、変換部123は、樹脂製の配管部材について定められる口径のうちから、分岐部位BR5またはBR6の口径より大きく、かつ最も近い口径を設定してよい。変換部123は、ステップS108にて設定した口径に対応する樹脂製配管ユニットUNがあるか否かを判定するようにされてよい。
変換部123は、上記のように選択した配管部材による樹脂製配管ユニットを割り当てる。
具体的に、ステップS104にて分岐部位BR5が検出されていた場合、変換部123は、図6の樹脂製配管ユニットUN5として示すように、チーズ主管の口径がT100のチーズと、L100の口径のエルボとの2つの配管部材により樹脂製配管ユニットUN5を分岐部位BR5に対して割り当ててよい。ただし、ここでは上記の配管部材の組み合わせでは、チーズ・エルボ間寸法は200mmを越える場合の例を挙げている。この場合、変換部123は、設計図上では、上記の2つの配管部材によりエルボ間寸法は200mmの樹脂製配管ユニットUN5があるものとして割り当てるようにされる。
【0045】
また、ステップS104にて分岐部位BR6が検出されていた場合、変換部123は、図6の樹脂製配管ユニットUN6として示すように、チーズ主管の口径がT100のチーズと、L100の口径のエルボとの2つの配管部材により構成される樹脂製配管ユニットUN6を分岐部位BR6に対して割り当てる。
【0046】
なお、図5の処理手順例においては、ステップS102により設計図の配管構造を線分化して分岐部位を検出するようにされていた。このような処理に代えて、設計支援装置100は、例えば設計図における配管構造の情報に基づいて継手が配置された箇所を特定し、特定された継手の箇所の口径パターンとチーズ・エルボ間寸法に対応する樹脂製配管ユニットを割り当てるようにしてよい。
なお、設計図への割り当て対象となる配管部材は樹脂製のものに限定されるものではなく、規格に応じた寸法の仕様が定められ、切断等による長さの調節に制約のあるような配管部材であれば対象となる。
【0047】
なお、例えば本実施形態における樹脂製配管ユニットの割り当てを含む設計支援の構成は、例えばネットワーク上のサーバと、当該サーバと通信可能に接続される端末とによるシステムとして構成されてよい。この場合、端末は、設計支援対応のアプリケーションまたはウェブブラウザによりサーバにアクセスし、設計図のデータもしくは設計図における配管構造を抽出したデータ(線分化したデータでもよい)をサーバにアップロードする。サーバは、図1における制御部102と記憶部103と同等の機能を備える。
【0048】
なお、上述の設計支援装置100としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の設計支援装置100としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 設計支援装置、101 ユーザインターフェース部、102 制御部、103 記憶部、112 変換部、121 検出部、122 口径パターン取得部、123 変換部、131 配管部材マスタ記憶部、132 参照テーブル記憶部、133 設計図記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6