(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149941
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】断熱材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/05 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F16L59/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058774
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 栄二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正行
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 紗也
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC01
3H036AD04
3H036AD06
(57)【要約】
【課題】 本発明は、断熱ボードの製造時に発生する廃棄物を、所望の断熱性を有したまま、外観に優れる新たな断熱材に再生することを目的とする。
【解決手段】 袋状の外装材3に断熱ボード2が収納されてなる断熱材1であって、前記断熱ボード2は、合成樹脂発泡体からなる芯材22を有し、前記外装材3は、前記断熱ボード2を収納する収納部30と、前記断熱ボード2を収納又は取り出し可能な開口部31と、前記開口部31を覆う蓋部32とを有し、前記蓋部32には締め付け調整部材33が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状の外装材に断熱ボードが収納されてなる断熱材であって、
前記断熱ボードは、合成樹脂発泡体からなる芯材を有し、
前記外装材は、前記断熱ボードを収納する収納部と、前記断熱ボードを収納又は取り出し可能な開口部と、前記開口部を覆う蓋部とを有し、
前記蓋部には締め付け調整部材が設けられていることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記外装材の収納部を2つ以上備えることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記断熱ボードが、合成樹脂発泡体からなる芯材と、前記芯材の両面に面材が積層されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記外装材に連結部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や工場内などの空間に吊下げて使用可能な断熱材に関し、簡易的に空間を形成するための間仕切りなどに使用できるものである。
【背景技術】
【0002】
断熱材として、例えば硬質ポリウレタンフォームやポリスチレンフォームなどの合成樹脂発泡体を板状に成形した断熱ボードが知られている。当該断熱ボードは、用途によって必要なサイズに切断して使用される。例えば、建築用の断熱ボードでは、一般的な寸法が幅910mm、長さ1820mmである。
ところが、断熱ボードは、その端部に僅かな欠損があるだけで不良品となってしまう。不良となった原因部分を取り除けばよいが、そうすると寸法が小さくなってしまい市場(主に建築市場)へ出すことができない。このように、断熱ボードの製造時に発生するものであって、所望の断熱性を有してもサイズが適合しない端材や不良品は、廃棄物として処理される。
【0003】
一方、近年では、環境問題への取り組みが加速しており、廃棄物の有効活用や産業廃棄物の削減など環境配慮型のモノづくりがより一層求められている。断熱ボードの製造時に発生する廃棄物の処理方法としても、従来から、当該廃棄物を粉砕して、他の商品に再生する取り組みがなされている。
例えば、断熱ボードの粉砕物と接着剤とを混ぜて板状に固めた再生ボード(特許文献1)が知られている。それ以外にも、特許文献2のように、もみ殻などの廃棄物を吹込み工法の断熱材として用いることが知られており、断熱ボードの粉砕物も同様に吹込み工法の断熱材として用いることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように断熱ボードの粉砕物を用いた再生ボードでは、元の断熱ボードよりも断熱性が劣ることや、粉砕物だと表面が凸凹となり外観が損なわれるため、外観を重視する用途での再利用は難しいものであった。その上、粉砕の工程、接着剤を用いて固める工程や、断熱ボードが面材を有する場合、面材の種類によっては分別する工程が必要となるなど、再生ボードを製造するには煩雑な工程が必要であった。
また、特許文献2のように、廃棄物を粉砕物の状態のまま使用すると、空気層や自重により粉砕物が沈下してしまい、断熱材が充填されない隙間、すなわち断熱欠損が生じてしまう。特許文献2では、適宜仕切り板を設けて沈下を防止する対策が開示されているものの、完全に断熱欠損を抑えることは難しく、所望の断熱性を有することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-282681号公報
【特許文献2】特開2011-021321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、断熱ボードの製造時に発生する廃棄物を、所望の断熱性を有したまま、外観に優れる新たな断熱材に再生することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、袋状の外装材に断熱ボードが収納されてなる断熱材であって、当該断熱ボードは、合成樹脂発泡体からなる芯材を有し、当該外装材は、当該断熱ボードを収納する収納部と、当該断熱ボードを収納又は取り出し可能な開口部と、当該開口部を覆う蓋部とを有し、当該蓋部には締め付け調整部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、断熱ボードの製造時に発生する廃棄物を粉砕などの工程を経ず、そのままの状態で使用することで、所望の断熱性を有することができる。
また、外装材の蓋部及び当該蓋部に設けられた締め付け調整部材により、外装材のシワやよれを抑え、外観に優れる新たな断熱材に再生することができる。
【0009】
また、本発明の断熱材は、断熱ボードを収納する収納部を2つ以上備えてもよい。
本発明によれば、2つ以上の断熱ボードを収納してひとつの断熱材として再生し使用することができる。しかも、一枚物の断熱ボードを収納させた断熱材と比べて適度に屈曲しやすい断熱材となるため、本発明の断熱材を曲面に沿わせて使用することも容易となる。
【0010】
また、当該断熱ボードは、合成樹脂発泡体からなる芯材と、当該芯材の両面に面材が積層されてなるものでもよい。この態様によれば、強度を確保しつつ断熱性を付与できることから、使用範囲が格段に広がる。
【0011】
また、本発明は、外装材に連結部を設けてもよい。連結部を設けることで、複数の断熱材を隙間が生じないよう、並べて設置することが容易となる。また、使用しないときは連結部で折り曲げて又は分離して断熱材を重ねることにより、複数の断熱材をコンパクトに保管できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、断熱ボードの製造時に発生する廃棄物を、所望の断熱性を有したまま、外観にも優れる新たな断熱材に再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施態様を説明する図である。
【
図2】本発明に用いる断熱ボードの切断面を説明する図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様を説明する図であって、(a)は蓋部を開けた状態を正面から見た図、(b)は蓋部を閉じた状態を正面から見た図、(c)は(b)の図中L-L線の切断部端面図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様を2つ並べて使用している状態を説明する図である。
【
図5】本発明の第2の実施態様を説明する図であって、(a)は蓋部を開けた状態を正面から見た図、(b)は蓋部を閉じた状態を正面から見た図、(c)は(b)の図中M-M線の切断部端面図である。
【
図6】本発明の第2の実施態様を説明する図であって、(a)は蓋部を開けた状態を正面から見た図、(b)は蓋部を閉じた状態を正面から見た図、(c)は(b)の図中N-N線の切断部端面図である。
【
図7】本発明の第3の実施態様を使用している状態を説明する図であって、(a)は正面から見た図、(b)は(a)の図中O-O線の切断部端面図である。
【
図8】本発明の第3の実施態様を使用していない状態を説明する図であって、(a)は正面から見た図、(b)は(a)の図中P-P線の切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施態様、
図2は本発明に用いる断熱ボードの切断面、
図3は本発明の第1の実施態様を使用している状態、
図4は第1の実施態様を使用している状態、
図5及び6は本発明の第2の実施態様、
図7は第3の実施態様を使用している状態、
図8は第3の実施態様を使用していない状態、を説明する図である。なお、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。
【0015】
〔第1の実施態様〕
本発明の第1の実施態様は、
図1~4に示すように、袋状の外装材3に断熱ボード2が収納されてなる断熱材1であって、当該断熱ボード2は、合成樹脂発泡体からなる芯材22と、当該芯材22の両面に面材21,23が積層したものである。当該外装材3は、当該断熱ボード2を収納する収納部30と、当該断熱ボード2を収納又は取り出し可能な開口部31と、当該開口部31を覆う蓋部32とを有し、当該蓋部32には締め付け調整部材33が設けられている。
図3(a)は、蓋部32を開けた状態を示しており、本発明の断熱材1を使用する際は、
図3(b)に示す通り、蓋部32で開口部31が覆われている。なお、
図3(a)中の一点鎖線は、蓋部32の折り曲げ線を示している。
【0016】
本発明において、芯材22は、断熱性を有する材料であって、例えば、硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォームなどの合成樹脂発泡体が使用できる。合成樹脂発泡体を芯材22に用いれば、本発明の断熱材1を吊下げて使用した際にも、廃棄物を粉砕物の状態のまま使用したときのような、空気層や自重により粉砕物が沈下して断熱材が充填されない隙間(断熱欠損)が生じることがなく、所望の断熱性を有することできる。
【0017】
芯材22としては、硬質ポリウレタンフォームが好ましい。硬質ポリウレタンフォームは、合成樹脂発泡体の中でも断熱性に優れる材料であり、断熱性の指標となる熱伝導率0.024W/(m・K)以下を達成できる。なお、本発明において、熱伝導率は、JIS A 9521に準拠して測定される値である。
また、硬質ポリウレタンフォームは、80℃前後の高温下でも寸法安定性に優れる材料であるため、高温下で使用しても収縮して断熱性が劣ることや外装材にシワがよって外観が悪くなることを抑制できる。
【0018】
本発明の芯材22は、用途に応じて、所望の断熱性を有しつつ設置しやすい大きさや重さのものを選択することが望ましい。
例えば、芯材22の密度は、JIS A 9521に準拠して測定した値で、15kg/m3以上60kg/m3以下が好ましく、25kg/m3以上50kg/m3以下がより好ましい。
また、芯材22の厚さは、5mm以上100mm以下が好ましく、30mm以上50mm以下がより好ましい。芯材22の厚みが薄すぎると反りやすいため、例えば複数の断熱材を吊下げて使用する間仕切りとしては、隙間が生じやすく使用しにくい。
【0019】
本発明において、面材21,23としては特に限定されるものではなく、芯材22の強度を維持できるものであればよい。
例えば、合成樹脂フィルム、不織布、金属箔又は蒸着フィルム等を単独または複数組み合わせて積層させたものが使用できる。
合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、その他として、無機物を混合した合成紙などが挙げられる。そして、芯材との接着性を向上させるために、例えばコロナ処理等を行ってもよい。
不織布としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオレフィン繊維などの合成繊維、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機繊維から1種、又は2種以上を交絡させたものが使用できる。
金属箔又は蒸着フィルムとして用いる金属には、アルミ、銅、鉄、鉛等が挙げられ、軽量であるアルミ箔が好ましく使用できる。
【0020】
本発明の断熱ボード2は、予め板状に成形された芯材22の両面に面材21,23を貼り合わせて製造することの他、芯材22の成形と同時に面材21,23を積層させて製造してもよい。硬質ポリウレタンフォームを芯材22として用いる場合は、後者で製造可能であって、硬質ポリウレタンフォームが自己接着性を有するため、面材21,23と接着剤を用いることなく積層可能である。
【0021】
硬質ポリウレタンフォームを芯材22として用いる場合の断熱ボード2の製造方法としては、以下の通りである。
(1)ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤(以下、これら2つの主成分と発泡剤を併せて「ポリウレタン原料」ともいう)を混合する。
なお、発泡剤については、予めポリオール成分に添加し混合しておいてもよいし、あるいはポリオール成分とイソシアネート成分とを混合する際に、添加混合してもよい。
(2)次に、ポリウレタン原料を、ノズルから面材に定量供給し、ダブルコンベアで搬送される2枚の面材の間でポリオール成分とイソシアネート成分とを反応・発泡(すなわち、ウレタン反応を生起)させることで、硬質ポリウレタンフォームが2枚の面材の間に密着一体化した状態で得られる。
(3)反応硬化後、適宜サイズに切断する。このときに、所望の断熱性を有してもサイズが適合しない端材や不良品といった廃棄物が発生する。
【0022】
第1の実施態様では、芯材22の両面に面材21,23を積層してなる断熱ボード2について説明したが、本発明では、使用環境に応じて面材21,23を積層していない芯材22を用いてもよい。
【0023】
本発明の断熱ボード2としては、断熱ボードを製造する際に発生する、所望の断熱性を有しながらサイズが適合しない端材や不良品といった廃棄物を使用することができる。ただし、本発明の断熱ボード2から、良品を除外するものではない。
なお、廃棄の断熱ボードを使用する場合は、保管条件などで断熱性が経時によって劣ることもあるが、熱伝導率が0.040W/(m・K)以下、好ましくは0.026W/(m・K)以下であれば、本発明の断熱ボードとして使用可能である。
【0024】
本発明において、袋状の外装材3に断熱ボード2が収納されており、当該外装材3は、当該断熱ボード2を収納する収納部30と、当該断熱ボード2を収納又は取り出し可能な開口部31と、当該開口部31を覆う蓋部32とを有し、当該蓋部32には締め付け調整部材33が設けられている。
【0025】
第1の実施態様では、
図1に示すように、断熱ボード2の形状に倣った収納部30を有し、開口部31が断熱ボード2の長さ方向の形状に沿うように設けられている。開口部31により、断熱ボード2が
図1中の矢印方向に収納又は取り出し可能となり、断熱材1を廃棄する際に、外装材3と断熱ボード2とを分別しやすい。なお、本発明の開口部31は、断熱ボード2の長さ方向の形状に沿うように設ける以外にも、
図1における外装材3の上下端部に断熱ボード2の幅方向の形状に沿うように設けられてもよい。
【0026】
第1の実施態様では、
図3に示すように、外装材3には、開口部31を塞ぐように蓋部32が設けられており、当該蓋部32には、締め付け調整部材33が設けられている。そして、外装材3の蓋部32が閉じられた際に接触する箇所には、当該締め付け調整部材33を固定可能な固定部材34が設けられている。このように、当該開口部31を当該蓋部32によって締め付け具合を調整しながら閉じることにより、外装材3のシワやよれを抑え、外観に優れる新たな断熱材に再生することができる。
【0027】
本発明において、締め付け調整部材33としては、面ファスナー、ベルト、両面テープなどが使用できる。なお、両面テープなど締め付け調整部材33に固定機構を備えていれば、固定部材34を別途設ける必要はない。
締め付け調整部材33が面ファスナーの場合、固定部材34とは対となる面ファスナーであればよい。例えば、蓋部32を幅25mm~50mmの面ファスナーで固定するようにすることで、サイズが多少異なる断熱ボードにも適応可能である。
【0028】
本発明において、外装材3を構成する材料は、使用環境に対して支障のないものであれば、特に限定するものでなく、例えば、防炎性や耐熱性、防水性、遮音性等を備えたものとすることができる。また、使用環境が高温の場所では赤、その他危険な場所は黄色、暗い場所は明るい色を選択する、というように外装材3の色を任意に選択してもよい。
【0029】
具体的には、外装材3を構成する材料として、合成樹脂フィルム又はシート、織布、編布、不織布などの布帛、又はこれらの積層体などの可撓性部材が挙げられる。
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニルや熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを用いたもの、布帛としては、合成繊維や天然繊維、無機繊維の織布、編布及び不織布を用いたものなどが挙げられる。さらに、耐熱性のために金属蒸着フィルムやアルミ箔を積層したもの、その他、機能性を備えた層を積層したものを挙げることができる。
【0030】
外装材3の厚さは、0.25mm以上1.0mm以下が好ましく、0.30mm以上0.60mm以下がより好ましい。外装材3が薄すぎると、締め付け調整部材33を用いても、断熱ボード2を収納した際に外装材3にシワやよれが生じやすくなってしまう。
【0031】
第1の実施態様において、
図1に示すように、外装材3の上下端には、吊下げ用部材4が設けられている。吊下げ用部材4によって、
図4に示すように、複数の本発明の断熱材1を並べて使用箇所に設置することが容易となる。
断熱材1を吊下げて使用する場合は、その上端にのみ吊下げ用部材4を設ければよいが、上下端の両方に設ければ、吊下げて設置することの他にも、天井に沿うように設置することもでき、用途によって適宜選択すればよい。
【0032】
吊下げ用部材4として、断熱材1を吊下げたい箇所に応じて選択すればよく、例えば、ハトメ、磁石、ビス、釘、又はリングやフックといった引掛部を備えた挟持体(クリップ)などが使用できる。
図4には、吊下げ用部材4としてハトメを用いたときの使用例を示している。
【0033】
本発明の断熱材1は、袋状の外装材3に断熱ボード2が収納されている。ここで、本発明において、袋状の外装材3とは、断熱ボード2を収納部30に保持できる形状であればよく、例えば、外装材3を構成する1枚のシートを折り重ねられて、周縁の2辺のシート同士を接合し、残り1辺を開口部31としたものや、外装材3を構成する2枚のシートを重ねて、その周縁の3辺のシート同士を接合し、残り1辺を開口部31としたものなどが挙げられる。シートを接合する方法としては、例えば縫製や接着剤、熱溶着、高周波ウェルダー溶着など公知の方法を用いてればよく、収納部30に断熱ボード2が保持できれば、例えば
図3(c)のようにハトメで固定するといった部分的な接合でも構わない。
【0034】
ところで、本発明の断熱材1は、使用環境にもよるが、外装材3によって断熱ボード2を密封状態で収納する必要はなく、外装材3の収納部30に断熱ボード2が保持できればよい。
例えば、
図3に示すように、断熱材1の上下端部が、外装材3を構成するシート同士をハトメで固定した部分的な接合だけでも、外装材3の収納部30に断熱ボード2が保持されている。このとき、
図3(c)に示すように、断熱材1の上下端部において当該シート同士は接着されておらず通気部Gを有している。当該通気部Gにより、外装材3の収納部30は外部と通気可能となり密封されてはいない。
【0035】
断熱ボード2の芯材22として硬質ポリウレタンフォームを用いる場合には、このような通気部Gを有する外装材3が適している。硬質ポリウレタンフォームは、吸湿性のある材料であるため、湿度の高い環境下で硬質ポリウレタンフォームを長期間使用すると、吸湿して断熱性が低下したり、フォームが劣化したりする原因となってしまう。本発明の断熱材1においても、開口部31を蓋部32で覆ってはいるが、少なからず隙間があるため、湿気が入り込むことを完全に防ぐことは難しい。
それに対し、外装材3の収納部30が外部と通気可能であれば、外装材3の収納部30が換気されることとなり、当該収納部30に湿気が溜まることを防ぐことができる。すなわち、このような通気部Gを有する外装材3であれば、湿気による断熱性の低下やフォームの劣化を抑制できるため、湿度の高い場所でも硬質ポリウレタンフォームを芯材22として用いることが可能となる。
【0036】
〔第2の実施態様〕
本発明の第2の実施態様は、
図5に示すように、外装材3が収納部30を4つ備えており、当該収納部30にそれぞれ断熱ボード2を収納してなる断熱材10である。
当該態様によれば、2つ以上の断熱ボード2を収納してひとつの断熱材10として再生し使用することができる。しかも、一枚物の断熱ボード2を収納させた断熱材1と比べて適度に屈曲しやすい断熱材となるため、本発明の断熱材10を曲面に沿わせて使用することも容易となる。
【0037】
第2の実施態様において、
図5に示すように、収納部30は、外装材3を構成するシート同士を接合して仕切り部35とし、当該仕切り部35によって複数の収納部30を構成している。シート同士を接合する方法としては、例えば縫製や接着剤、熱溶着、高周波ウェルダー溶着など公知の方法を用いてればよい。
このように仕切り部35によって仕切られた複数の収納部30には、それぞれに断熱ボード2を収納又は取り出し可能な開口部31と、当該開口部31を覆う蓋部32が設けられている。
図5では、開口部31のそれぞれに蓋部32を設ける態様を示すが、他の態様として、
図6に示すように、すべての開口部31をひとつの蓋部32で覆うように設けてもよい。なお、
図5(a)及び
図6(a)中の一点鎖線は、蓋部32の折り曲げ線を示している。
【0038】
〔第3の実施態様〕
本発明の第3の実施態様は、
図7に示すように、外装材3に連結部5を有する断熱材11であって、連結部5を有すること以外は、第1の実施態様で説明した通りである。図示しないが、本発明の第2の実施態様である断熱材10にも、連結部5を設けてもよい。
【0039】
第3の実施態様において、
図7に示すように、連結部5は、断熱材11の長さ方向に沿って設けられており、
図8に示すように所謂アコーディオン状に折り曲げることができるよう、連結されている。そのため、連結部5を設けることで、複数の断熱材11が隙間を生じないよう並べて設置することが容易となり、断熱材11を使用しないときには、
図8に示すように折り曲げられるので、邪魔にならない。
このように、使用しないときは連結部5で折り曲げて又は分離して重ねるようにして、複数の断熱材11をコンパクトに保管できる。しかも、連結部5が分離可能であれば、汚れや埃が溜まりやすい連結部分の掃除がしやすく清潔さを保つことができる。
【0040】
本発明において連結部5は、使用時は隣接する断熱材11同士が分離せずに固定され、使用しないときは当該連結部5で折り曲げ可能であるか、又は分離可能となるように設けられていればよい。例えば、外装材3を構成する材料と同じもので帯状のシートとし、当該帯状のシートを隣接する断熱材11間にまたがる様に接着剤や面ファスナーなどで固定する方法が挙げられる。その他、任意の箇所に磁石や面ファスナーを用いて分離可能に固定してもよい。
【0041】
本発明の断熱材1、10、11は、断熱性を必要とする箇所に使用でき、特に室内や工場内などの空間に吊下げて使用可能な断熱材に適している。
例えば、工場、倉庫(冷蔵・冷凍)、装置、冷凍車などの簡易的に空間を形成するための間仕切りや冷気を逃がさないための防護壁として使用できる。また、骨組みと組み合わせることで、休憩室や避難所、精密機器類の設置場所といった各種ブースなどの閉鎖された空間を形成することもできる。
それ以外にも、各種装置の周りを囲うように配置して外部に熱や騒音を出さないための防護壁としての機能を備えたものや、工場、倉庫等の壁や柱の保護材として、ヤケドや衝突など危険個所から人を防護する防護材、さらには日除け材としても使用できる。
【実施例0042】
本発明について、実施例に基づき説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
【0043】
〔実施例1~5〕
表1に示す断熱ボード及び外装材を用いて、おおよその大きさが厚さ50mm、幅450mm、長さ1820mmの断熱材を作成した。外装材には、
図1のように、断熱ボードがひとつ収納可能な袋体を用い、蓋部及び外装材の蓋部が閉じられた際に接触する箇所に、幅25mmの面ファスナーの雄雌(A面、B面ともいう)をそれぞれ取り付けた。なお、実施例1~5は、同じ形状の袋体を使用した。
【0044】
〔比較例1〕
断熱ボードCを用い、
図5のように断熱ボードCを4つ収納可能な外装材を用いて、おおよその大きさが厚さ50mm、幅450mm、長さ1800mmの断熱材を作成した。
【0045】
使用した材料
断熱ボードA:厚さ50mm、幅920mm、長さ1820mmのアキレス社製、商品名「キューワンボード」を幅450mm、長さ1820mmに切断したもので、芯材は硬質ポリウレタンフォーム、面材はアルミ箔を含む。
断熱ボードA´:厚さ45mm、幅920mm、長さ1820mmのアキレス社製、商品名「キューワンボード」を幅420mm、長さ1800mmに切断したもので、芯材は硬質ポリウレタンフォーム、面材はアルミ箔を含む。
断熱ボードB:厚さ50mm、幅920mm、長さ1820mmのアキレス社製、商品名「アキレスボードPE」を幅450mm、長さ1820mmに切断したもので、芯材は硬質ポリウレタンフォーム、面材はアルミ箔を含まない。
断熱ボードC:厚さ0.4mmのポリプロピレン(PP)製であって、サイズが50mm×450mm×450mmの箱の中に、180gの「キューワンボード」の粉砕物を入れたもの。
外装材1:厚さが0.26mmのターポリン(クラレプラスチックス社製、商品名「クラスターE-3000」)
外装材2:厚さが0.35mmのターポリン(クラレプラスチックス社製、商品名「クラスターKE-350」)
外装材3:厚さが0.56mmのターポリン(クラレプラスチックス社製、商品名「SWTR5556」)
【0046】
実施例1~5及び比較例1にて使用した断熱ボードA~Cの断熱性と、得られた断熱材の外観を評価し、その結果を表1に示す。
なお、比較例1では、PP製の箱に充填された粉砕物が自重により沈下したことにより、表面に凹凸が確認された。
【0047】
〔断熱性〕
断熱ボードA、Bから600mm×600mm×50mm、断熱ボードA´から600mm×600mm×45mm、断熱ボードCから、450mm×450mm×50mmの大きさの試験片を切り出し、JISA 9511に準拠して平均温度23℃下における熱伝導率(W/(m/K))を測定した。
【0048】
〔外観〕
得られた断熱材につついて、目視にて以下の通り評価した。
◎ 表面に凹凸がなく、外装材にもシワやよれがほとんど見られない。
〇 表面に凹凸がないが、外装材にはわずかなシワ、よれがある。
△ 表面に凹凸がないが、外装材にはやや目立つシワやよれがある。
× 表面に凹凸がある、又は荷重をかけると変形し、外装材のシワやよれがある。
【0049】
【0050】
〔実施例6〕
厚さ30mm、幅250mm、長さ300mmのポリスチレンフォーム(アキレス社製、商品名「CB3」)を断熱ボードとし、当該断熱ボードを7枚収納可能な外装材を用いて、おおよその大きさが厚さ30mm、幅250mm、長さ2100mmの断熱材を4つ作成した。
得られた断熱材について、以下の評価を行った。
蒸気により高温状態となる高温設備(バッチ式全自動予備発泡機、株式会社新井製作所製、商品名「TSS-7」)と電子機器(動作環境が35℃以下を推奨されているインジェットプリンター、株式会社キーエンス製、商品名「MK―U」)との間を遮断するように、断熱材を4つ並べて設置した。このとき、高温設備と断熱材とは0.1mの距離、断熱材と電子機器とは1.0mの距離であった。発泡機を稼働させ、約2時間後の断熱材の高温設備側の面と電子機器側の面の表面をサーモグラフィカメラ(FLIR社製、商品名「ONE PROLT」)を用いて撮影し、得られた温度分布を示す画像にて各断熱材の表面温度を測定した。4つの断熱材のうち、発泡機の発熱箇所に最も近い断熱材を撮影した画像から、断熱材の上部(上から2枚目)、中央部(上から3枚目)、下部(下から2枚目)の表面温度(高温設備側の面と電子機器側の面の両面)を読み取り、結果を表2に示す。このとき、高温設備が稼働していても、電子機器は問題なく動作することを確認した。
【0051】
【0052】
実施例1~5において、外装材に設けられた蓋部及び締め付け調整部材により、外装材のシワやよれを抑え、外観に優れる新たな断熱材に再生することができることが確認された。
【0053】
また、実施例6から示されるように、本発明によって、高温設備が稼働していても、その熱を遮断することで電子機器の故障を防ぐ効果が確認された。