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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149961
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】缶蓋、缶体および充填缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/353 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65D17/353
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058799
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 維王
(72)【発明者】
【氏名】小南 敦嗣
【テーマコード(参考)】
3E093
【Fターム(参考)】
3E093AA02
3E093AA03
3E093AA04
3E093BB02
3E093BB03
3E093CC02
3E093CC03
3E093EE20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開口時にスコアの破断音を断続的に発する缶蓋を提供する。
【解決手段】パネル部材10と、前記パネル部材に設けられた開口部20と、前記パネル部材に設けられ、前記開口部を開口するためのタブ30と、前記タブを初期位置から引き起こして破断される初期破断部41と、前記初期破断部を破断した後の開口操作時に破断される後期破断部42とを有する主スコア40と、前記後期破断部の破断音を断続的に生じさせるように発振する発振部60a~60eと、を備える缶蓋を提供する。前記缶蓋と、前記缶蓋が取り付けられた容器本体部と、を備える缶体を提供してよい。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部材と、
前記パネル部材に設けられた開口部と、
前記パネル部材に設けられ、前記開口部を開口するためのタブと、
前記タブを初期位置から引き起こして破断される初期破断部と、前記初期破断部を破断した後の開口操作時に破断される後期破断部とを有する主スコアと、
前記後期破断部の破断音を断続的に生じさせるように発振する発振部と、
を備える缶蓋。
【請求項2】
前記後期破断部は、予め定められた第1の厚みを有し、
前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記第1の厚みと異なる第2の厚みを有する
請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記第2の厚みは、前記第1の厚みより厚く、前記第1の厚みの105%以上、130%以下である
請求項2に記載の缶蓋。
【請求項4】
前記第2の厚みは、前記第1の厚みより薄く、前記第1の厚みの80%以上、95%以下である
請求項2に記載の缶蓋。
【請求項5】
前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記第1の厚みと異なる第2の厚みと、前記第1の厚みおよび前記第2の厚みと異なる第3の厚みを有する
請求項2から4のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項6】
前記後期破断部は、予め定められた第1の幅を有し、
前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記第1の幅と異なる第2の幅を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項7】
前記発振部は、前記パネル部材に設けられ、前記パネル部材のおもて面または裏面に張り出した張り出し部を有する
請求項1から6のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項8】
前記発振部は、前記後期破断部に設けられた段差である段差部を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項9】
前記発振部の少なくとも一部は、前記パネル部材に設けられる
請求項1から8のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項10】
前記パネル部材の裏面に設けられ、予め定められた第4の厚みを有する裏面被覆層を備え、
前記発振部は、前記裏面被覆層において、前記後期破断部の裏面側の対応する位置に設けられ、前記第4の厚みと異なる第5の厚みを有する
請求項1から9のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項11】
前記パネル部材の裏面に設けられ、予め定められた第1の材料を有する裏面被覆層を備え、
前記発振部は、前記裏面被覆層において、前記後期破断部の裏面側の対応する位置に設けられ、前記第1の材料と強度が異なる第2の材料を有する
請求項1から10のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項12】
前記発振部は、前記パネル部材に設けられ、前記後期破断部と接続された分岐スコアを有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項13】
前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記パネル部材の平面上から見たとき、略直線部と略頂点部を有する
請求項1から12のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項14】
前記発振部は、
前記後期破断部に沿って、予め定められた間隔で前記破断音を発振する第1発振領域と、
前記後期破断部に沿って、前記第1発振領域と異なる間隔で前記破断音を発振する第2発振領域と、
を有する請求項1から13のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項15】
前記後期破断部は、前記タブの開口操作時にそれぞれ破断される第1の経路および第2の経路を有し、
前記発振部は、前記第1の経路および前記第2の経路の破断音をそれぞれ発振する
請求項1から14のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項16】
前記初期破断部の破断音と、前記後期破断部の破断音とで構成される開口音を発する
請求項1から15のいずれか一項に記載の缶蓋。
【請求項17】
請求項1から11のいずれか一項に記載の缶蓋と、
前記缶蓋が取り付けられた容器本体部と、
を備える缶体。
【請求項18】
請求項17に記載の缶体に、予め定められた内容物が充填された充填缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋、缶体および充填缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タブを操作して開口する缶蓋が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開平11-334735号公報
[特許文献2] 特公平8-029779号公報
[特許文献3] 特開平2-008401号公報
[特許文献4] 特開平10-101104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
開口時にスコアの破断音を断続的に発する缶蓋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、パネル部材と、前記パネル部材に設けられた開口部と、前記パネル部材に設けられ、前記開口部を開口するためのタブと、前記タブを初期位置から引き起こして破断される初期破断部と、前記初期破断部を破断した後の開口操作時に破断される後期破断部とを有する主スコアと、前記後期破断部の破断音を断続的に生じさせるように発振する発振部と、を備える缶蓋を提供する。
【0005】
前記後期破断部は、予め定められた第1の厚みを有してよい。前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記第1の厚みと異なる第2の厚みを有してよい。
【0006】
前記第2の厚みは、前記第1の厚みより厚く、前記第1の厚みの105%以上、130%以下であってよい。
【0007】
前記第2の厚みは、前記第1の厚みより薄く、前記第1の厚みの80%以上、95%以下であってよい。
【0008】
前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記第1の厚みと異なる第2の厚みと、前記第1の厚みおよび前記第2の厚みと異なる第3の厚みを有してよい。
【0009】
前記後期破断部は、予め定められた第1の幅を有してよい。前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記第1の幅と異なる第2の幅を有してよい。
【0010】
前記発振部は、前記パネル部材に設けられ、前記パネル部材のおもて面または裏面に張り出した張り出し部を有してよい。
【0011】
前記発振部は、前記後期破断部に設けられた段差である段差部を有してよい。
【0012】
前記発振部の少なくとも一部は、前記パネル部材に設けられてよい。
【0013】
前記缶蓋は、前記パネル部材の裏面に設けられ、予め定められた第4の厚みを有する裏面被覆層を備えてよい。前記発振部は、前記裏面被覆層において、前記後期破断部の裏面側の対応する位置に設けられ、前記第4の厚みと異なる第5の厚みを有してよい。
【0014】
前記缶蓋は、前記パネル部材の裏面に設けられ、予め定められた第1の材料を有する裏面被覆層を備えてよい。前記発振部は、前記裏面被覆層において、前記後期破断部の裏面側の対応する位置に設けられ、前記第1の材料と強度が異なる第2の材料を有してよい。
【0015】
前記発振部は、前記パネル部材に設けられ、前記後期破断部と接続された分岐スコアを有してよい。
【0016】
前記発振部は、前記後期破断部に設けられ、前記パネル部材の平面上から見たとき、略直線部と略頂点部を有してよい。
【0017】
前記発振部は、前記後期破断部に沿って、予め定められた間隔で前記破断音を発振する第1発振領域と、前記後期破断部に沿って、前記第1発振領域と異なる間隔で前記破断音を発振する第2発振領域と、を有してよい。
【0018】
前記後期破断部は、前記タブの開口操作時にそれぞれ破断される第1の経路および第2の経路を有してよい。前記発振部は、前記第1の経路および前記第2の経路の破断音をそれぞれ発振してよい。
【0019】
前記缶蓋は、前記初期破断部の破断音と、前記後期破断部の破断音とで構成される開口音を発してよい。
【0020】
本発明の第2の態様においては、前記缶蓋と、前記缶蓋が取り付けられた容器本体部と、を備える缶体を提供する。
【0021】
本発明の第3の態様においては、前記缶体に、予め定められた内容物が充填された充填缶を提供する。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】缶体200の構成の一例を示す。
図1B】缶蓋100の断面の一例を示す。
図2A】初期破断部41および後期破断部42を説明するための図である。
図2B】初期破断部41の破断前後の状態を説明するための図である。
図2C】後期破断部42の破断前後の状態を説明するための図である。
図3A】缶体200の変形例を示す。
図3B】後期破断部42の近傍における断面の一例を示す。
図3C】後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。
図3D】側壁部62を有する発振部60の断面の一例を示す。
図4A】後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。
図4B】缶蓋100の開口時に発する開口音の音声波形の一例である。
図5A】比較例の後期破断部542の破断が進行する様子を説明するための図である。
図5B】比較例の缶蓋の開口時に発する開口音の音声波形の一例である。
図6A】缶体200の変形例を示す。
図6B】後期破断部42の近傍における断面の一例を示す。
図6C】後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。
図6D】後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。
図7A】缶体200の変形例を示す。
図7B】後期破断部42の近傍における断面の一例を示す。
図7C】後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。
図8A】缶体200の変形例を示す。
図8B】後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。
図8C】張り出し部63の変形例を示す。
図9A】缶体200の変形例を示す。
図9B】後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。
図10A】缶体200の変形例を示す。
図10B】缶体200の変形例を示す。
図11】缶体200の変形例を示す。
図12】缶体200の変形例を示す。
図13】缶体200の変形例を示す。
図14A】缶体200の変形例を示す。
図14B】缶体200の斜視図の一例を示す。
図15】初期破断部41および補助破断部43の破断前後の状態を説明するための図である。
図16】缶体200の変形例を示す。
図17】缶体200の一例を示す。
図18】充填缶300の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1Aは、缶体200の構成の一例を示す。缶体200は、容器本体部210および缶蓋100を備える。本例の缶体200は、飲料用の金属缶であるがこれに限定されない。缶体200は、食品用の金属缶であってもよい。
【0026】
缶蓋100は、容器本体部210に取り付けられ、開口可能な缶体200用の蓋として機能する。容器本体部210は、缶体200の缶胴部である。容器本体部210には、底蓋が設けられてよい。缶蓋100は、パネル部材10と、開口部20と、タブ30と、リベット35と、主スコア40と、副スコア50とを備える。
【0027】
パネル部材10は、容器本体部210の上面に設けられる略板状の部材である。パネル部材10は、内パネル部12および外パネル部14を有する。内パネル部12は、外パネル部14の内側に設けられる。外パネル部14は、タブ30および主スコア40等が設けられる領域の外周を囲って設けられる。内パネル部12を設けることで、主スコア40などのスコア形成時による歪みを抑制することができる。なお、パネル部材10には、凹凸をつけることによって、任意の文字および図形が記載されてよい。
【0028】
開口部20は、パネル部材10に設けられ、タブ30の開口操作に応じて開口される。即ち、缶蓋100は、缶切りが不要なイージーオープンエンドの缶蓋として機能する。開口部20は、缶体200に充填された飲料を飲むための飲み口として機能してよい。開口部20は、内パネル部12の一部であってよい。開口部20には、剛性を高めるために環状の凸部が形成されてよい。
【0029】
タブ30は、パネル部材10に設けられ、開口部20を開口するために用いられる。タブ30は、パネル部材10に設けられたリベット35によってパネル部材10に固定されている。タブ30を初期位置から引き起こす際に指を掛けやすくするために、タブ30の近傍に凹部16が設けられてよい。
【0030】
主スコア40は、タブ30を初期位置から引き起こし、開口操作する際に破断するスコアである。主スコア40は、パネル部材10を加工することによって形成される。主スコア40は、初期破断部41および後期破断部42を有する。
【0031】
初期破断部41は、タブ30を初期位置から引き起こす際に破断される。初期破断部41は、リベット35の近傍の主スコア40である。初期破断部41を設けることにより、開口部20の開口時に、缶体200の内容物が噴出するのを防止できる。初期破断部41については後述する。
【0032】
後期破断部42は、初期破断部41を破断した後の開口操作時に破断される。開口操作とは、タブ30を引き起こして初期破断部41を破断した後に、さらにタブ30を引き起こすことによって開口部20を開口することを指す。後期破断部42は、初期破断部41と接続されてよい。
【0033】
副スコア50は、主スコア40に隣接して設けられたスコアである。本例の副スコア50は、主スコア40の内側に設けられる。副スコア50は、内パネル部12に設けられてよい。副スコア50を設けることにより、主スコア40の近傍の剛性が向上して、開口部20を開口しやすくなる。
【0034】
発振部60は、後期破断部42の破断音を断続的に生じさせるように発振する。本例の発振部60は、後期破断部42に沿った5つの発振部60a~発振部60eを含む。発振部60は、後期破断部42に沿って任意の間隔で配置されてよい。発振部60の具体的な構造については後述する。
【0035】
発振部60は、後期破断部42よりも破断しにくい難破断部であってもよいし、後期破断部42よりも破断が容易な易破断部であってもよい。後期破断部42の破断容易性を変えることで、開口音の音圧(音の大きさ)、音程(音の高さ)および音色などを変化させて、任意の開口音を缶蓋100から発することができる。例えば、破断音の発生間隔が短い場合は開口音が高くなり、破断音の発生間隔が長い場合は開口音が低くなる。
【0036】
図1Bは、缶蓋100の断面の一例を示す。缶蓋100は、カール部70と、パネル壁部72と、環状溝74とを有する。
【0037】
カール部70は、二重巻締によって容器本体部210と接合する。二重巻締では、カール部70が容器本体部210のフランジ部を巻き込んで圧着されることにより、缶蓋100と容器本体部210とが接合する。パネル壁部72は、カール部70とパネル部材10との間に設けられ、缶蓋100の側壁を構成する。環状溝74は、パネル部材10の外周に設けられ、炭酸飲料などの内圧が高い内容物が充填された場合に、缶蓋100の変形を抑制する。
【0038】
図2Aは、初期破断部41および後期破断部42を説明するための図である。本図では、初期破断部41を図示するためにタブ30を省略している。
【0039】
初期破断部41は、リベット35に隣接して設けられる。本例の初期破断部41は、リベット35の外周に沿った半円形の形状を有する。本例の初期破断部41は、主スコア40のうち、点P1と点P2との間の領域である。本例の点P1および点P2は、主スコア40の進行方向が変化する点であるが、点P1および点P2の位置はこれに限定されない。即ち、初期破断部41は、タブ30を引き起こした際に最初に破断する箇所であればよく、初期破断部41の端部は、点P1および点P2に限定されない。
【0040】
後期破断部42は、主スコア40のうち、初期破断部41が破断した後に破断する領域である。本例の後期破断部42は、主スコア40が破断する方向において、点P2の後に設けられる。後期破断部42は、初期破断部41と連続的に設けられたスコアであってよい。本例の後期破断部42は、飲み口に沿って略円形状に形成されているが、これに限定されない。
【0041】
図2Bは、初期破断部41の破断前後の状態を説明するための図である。本図は、タブ30およびリベット35の周辺を拡大した断面図である。
【0042】
タブ30を引き起こしてリベット35を持ち上げると、てこの原理によって開口部20が下に押し下げられる。初期破断部41の破断前においては、タブ30の先端が支点となってリベット35が作用点となっている。初期破断部41は、開口部20が押し下げられることと、リベット35が持ち上げられることにより生じたせん断応力によって破断する。初期破断部41が破断する前では、パネル部材10に切れ込みが生じていないので、初期破断部41を破断させるためには強い力が必要となる。よって、初期破断部41の破断前には、開口部20を含むパネル部材10に大きな弾性ひずみが生じる。初期破断部41の破断時にはこのひずみが解放されることでパネル部材10に振動が生じ、大きな破断音が生じる。また、缶体200に、炭酸飲料などの内圧が高い内容物が充填されている場合には、初期破断部41が破断すると、急速に内部のガスが流出する。このとき、破断音と同時にガスの流出音が生じる。
【0043】
なお、タブ30を引き起こして初期破断部41が破断された後であって、開口部20の開口操作前においては、後期破断部42が破断されていなくてよい。初期破断部41が破断した後は、リベット35が支点となってタブ30の先端が作用点となり、後期破断部42が破断される。
【0044】
図2Cは、後期破断部42の破断前後の状態を説明するための図である。本図は、後期破断部42の周辺を拡大した断面図である。
【0045】
パネル部材10は、内側パネル部111および外側パネル部112を含む。内側パネル部111は、後期破断部42に対して開口部20が設けられる側のパネル部材10である。外側パネル部112は、後期破断部42に対して外パネル部14が設けられる側のパネル部材10である。外側パネル部112は、内パネル部12の一部を含んでよい。
【0046】
本明細書においては、XYZ軸を用いて缶蓋100の断面を説明する場合がある。X軸方向は、主スコア40が破断する方向であってよい。主スコア40の位置に応じて、主スコア40の破断が進行する方向が変化するので、X軸方向も主スコア40の位置に応じて変化し得る。Y軸方向は、X軸方向と垂直な方向であってよい。主スコア40に対して外側パネル部112が設けられる側をY軸方向の正側としてよく、主スコア40に対して内側パネル部111が設けられる側をY軸方向の負側としてよい。Z軸方向は、缶体200の高さ方向であってよい。即ち、Z軸方向は、パネル部材10の上面または下面と垂直な方向であってよい。本例では、缶体200において缶蓋100が設けられる側をZ軸方向の正側としている。
【0047】
タブ30の先端によって内側パネル部111が押し下げられると、後期破断部42の周辺において弾性ひずみEsが生じる。後期破断部42がせん断応力によって破断すると、後期破断部42の周辺の弾性ひずみが戻るときの振動によって破断音が発生する。缶蓋100は、発振部60を設けることにより、このような弾性ひずみの発生と解放による破断音を意図的に発生させることができる。この時、発生した弾性ひずみが大きいほど、大きな破断音が発生しやすくなる。また、弾性ひずみの解放量が大きいほど、大きな破断音が発生しやすくなる。
【0048】
図3Aは、缶体200の変形例を示す。本例の発振部60は、発振加工部61を有する。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0049】
発振加工部61は、後期破断部42の近傍に設けられる。本例の発振部60は、後期破断部42に沿って任意の間隔で設けられた複数の発振部60を有する。複数の発振部60は、後期破断部42に沿って等間隔に設けられてもよいし、異なる間隔で設けられてもよい。複数の発振部60は、後期破断部42に沿って徐々に間隔が大きくなるように配置されてもよいし、徐々に間隔が小さくなるように配置されてもよい。
【0050】
発振部60の少なくとも一部は、パネル部材10に設けられてよい。本例の発振加工部61は、後期破断部42よりも外側に設けられる。発振加工部61は、後期破断部42よりも内側に設けられてもよい。発振加工部61の具体的な構造については後述する。
【0051】
図3Bは、後期破断部42の近傍における断面の一例を示す。本図は、後期破断部42のうち発振部60が設けられていない領域の断面図である。
【0052】
後期破断部42は、予め定められた刃先形状のスコア刃を用いて、パネル部材10に設けられた凹部であってよい。本例の後期破断部42は、YZ断面において、上底が下底よりも大きな台形状の断面を有するが、これに限定されない。後期破断部42は、台形のように直線の組み合わせによって形成される多角形の断面形状を有してもよいし、曲線を用いて形成される断面形状を有してもよい。
【0053】
パネル部材10は、予め定められた厚みD10を有する。パネル部材10の厚みD10は、0.1mm以上、0.6mm以下であってよい。例えば、パネル部材10の厚みD10は、0.235mmである。内側パネル部111および外側パネル部112の厚みは、いずれも厚みD10であってよい。
【0054】
後期破断部42は、予め定められた第1の厚みD1を有する。本例の後期破断部42は、パネル部材10の厚みD10よりも薄い第1の厚みD1を有する。第1の厚みD1は、0.05mm以上、0.5mm以下であってよい。第1の厚みD1は、0.1mmであってよく、0.09mmであってよく、0.08mmであってよい。
【0055】
発振部60の厚みを後期破断部42よりも厚くすると破断しにくくなるので、蓄積される弾性ひずみが増加して、大きな破断音が生じやすくなる。
【0056】
図3Cは、後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。本例の発振部60は、発振加工部61を有する。
【0057】
発振加工部61は、後期破断部42と隣接して設けられた凹状の領域である。発振加工部61を設けることにより、パネル部材10の材料が寄せられて、後期破断部42の厚みが増加するように変形する。発振加工部61は、後期破断部42を形成した後に、パネル部材10をコイニング加工することで形成されてよい。コイニング加工時に後期破断部42に圧縮の力を発生させて、後期破断部42に第2の厚みD2を形成する。これにより、発振部60として、他の後期破断部42よりも破断しにくい難破断部を形成することができる。本例の発振加工部61は、外側パネル部112に形成されるが、内側パネル部111に形成されてもよい。
【0058】
第2の厚みD2は、後期破断部42における発振部60の厚みである。第2の厚みD2は、第1の厚みD1と異なる厚みである。第2の厚みD2は、第1の厚みD1より厚くてよい。第2の厚みD2は、第1の厚みD1の105%以上、130%以下であってよい。第2の厚みD2は、0.06mm以上、0.6mm以下であってよい。第2の厚みD2は、0.11mmであってよく、0.099mmであってよく、0.088mmであってよい。
【0059】
なお、発振部60は、第1の厚みD1および第2の厚みD2と異なる第3の厚みD3を有してもよい。発振部60a~発振部60eは、それぞれ異なる厚みを有してもよい。発振部60a~発振部60eは、破断が進行するにつれ徐々に厚みが厚くなるように設定されてもよいし、破断が進行するにつれ徐々に厚みが第1の厚みD1に近づくように設定されてもよい。破断が進行するにつれて徐々に後期破断部42が破断しにくくなるので、発振部60の厚みを薄くすることにより、音量のバランスを取ることもができる。
【0060】
図3Dは、側壁部62を有する発振部60の断面の一例を示す。本図は、発振部60のXZ断面を示す。後期破断部42は、第1の厚みD1と第2の厚みD2の領域を有する。
【0061】
側壁部62は、第1の厚みD1である領域と、第2の厚みD2である領域との境界に設けられる。即ち、後期破断部42は、側壁部62を有するように、第1の厚みD1から第2の厚みD2に変化する厚みを有してよい。XY平面に対する側壁部62の傾きは、一定であってもよいし、変化してもよい。
【0062】
図4Aは、後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。本例では、発振部60が後期破断部42よりも破断しにくい難破断部である場合について説明する。
【0063】
状態(a)において、タブ30の開口操作によって、後期破断部42の破断に必要な応力F42と拮抗する応力Fが後期破断部42の破断先端領域に生じている。状態(b)において、発振部60の破断進行に必要な応力F60が作用するまでは、タブ30の開口操作によって更に大きな応力Fが加えられ、後期破断部42の近傍に弾性ひずみが蓄積する。状態(c)において、発振部60の破断進行に必要な応力F60よりも大きな応力Fがかかると、発振部60の破断が進行する。発振部60の破断が進行すると、その先の後期破断部42も含めて破断が進行するので、蓄積された弾性ひずみが急激に解放されて、破断音が形成される。
【0064】
図4Bは、缶蓋100の開口時に発する開口音の音声波形の一例である。縦軸は音量を、横軸は時間を示している。缶蓋100の開口音は、初期破断部41の破断音と後期破断部42の破断音とで構成されてよい。
【0065】
初期開口音S41は、初期破断部41の破断時に発する破断音である。初期開口音S41には、缶体200の内容物が炭酸を含む飲料の場合、「プシュ」というガスの放出音を含んでもよい。
【0066】
後期開口音S60は、発振部60の近傍における後期破断部42の破断時に発する破断音である。後期開口音S60は、単発音として知覚される音であってよい。本例の缶蓋100は、発振部60a~発振部60eの近傍において、破断音S60a~S60eをそれぞれ発する。例では後期開口音S60は複数の破断音S60a~S60eから構成されるが、約0.055秒という短時間で発し終わるため、単発音として知覚される。破断音S60a~S60eは、略等間隔で発生してよい。例えば、約0.014秒の間隔で破断音が生じる場合、約70Hzの周波数を構成する。破断音の間隔を短くすることにより、より高い音程の開口音を発生できる。破断音の間隔を長くすることにより、より低い音程の開口音を発生できる。なお、缶蓋100の開口音は、後期破断部42の破断が終了し、開口部20が押し下がることによって生じる音S20を含んでもよい。
【0067】
破断音S60は、後期破断部42の破断の進行に伴い、徐々に大きくなる場合がある。即ち、タブ30によってパネル部材10を押し下げる位置から、発振部60が遠くなることにより、パネル部材10による拘束力が減少し、スコアへの応力集中が緩和され破断しにくくなる。そのため、スコアが破断するために必要なタブ30の操作量が増えるため、スコアが破断するまでのひずみ量が増加して破断音が大きくなる傾向にある。
【0068】
缶蓋100は、後期破断部42における発振部60の厚みを変更することによりさらに開口音の音色を調整してもよい。発振部60の厚みを変更することにより、後期破断部42の破断の進行時の弾性ひずみ量を変更できるため、弾性ひずみが解放される際に発生する破断音の音量を調整できる。例えば、後期破断部42における発振部60b~60eの第3の厚みD3を、発振部60aの第2の厚みD2から、徐々に第1の厚みD1に近づけるように変化させることで、本例において差が生じていた破断音S60a~S60eの音量を一定に調整することができる。
【0069】
このように、缶蓋100は、発振部60の形状と配置を調整することにより、任意の破断音で構成される開口音を発することができる。なお、缶蓋100は、難破断部または易破断部を設けることにより開口音の音圧、音程および音色を調整することができるので、発振部60の構造は厚みを調整するものに限定されない。
【0070】
図5Aは、比較例の後期破断部542の破断が進行する様子を説明するための図である。比較例のパネル部材510には、後期破断部542が形成されている。本例においても、タブ30で開口部520を押し下げることにより、後期破断部542を破断させて開口部520を開口することができる。
【0071】
状態(a)において、タブ30の開口操作によって、後期破断部542の破断に必要な応力F542と拮抗する応力Fが後期破断部542の破断先端領域に生じている。状態(b)において、タブ30を引き起こすことによって、後期破断部542の近傍に微小な弾性ひずみが発生する。但し、状態(c)において、後期破断部542には発振部60が設けられていないので、弾性ひずみが微小なうちにスコアの破断によって解放されてしまう。このように、比較例の後期破断部542では、後期破断部542の破断進行に必要な応力F542と略釣り合った応力Fがかかっている状態となり、連続的にスコアの破断が進行して、「メリメリ」といったわずかな破断音が連続的に発生する。
【0072】
図5Bは、比較例の缶蓋の開口時に発する開口音の音声波形の一例である。比較例では、初期開口音S41が発生した後に、後期破断部542の破断によって発生した破断音S542が短時間で発生する。その後、後期破断部542の破断が終了し、開口部20が押し下がることによって音S20が発生する。本例では、ひずみエネルギーが蓄積しないので、急激な弾性ひずみの解放に伴う破断音が発生しない。
【0073】
図6Aは、缶体200の変形例を示す。本例の発振部60は、後期破断部42と断面形状の異なる構造を有する。
【0074】
発振部60は、発振部60aおよび発振部60bの2つの領域を有する。本例の発振部60は、他の後期破断部42よりも破断しやすい易破断部であってよい。即ち、発振部60は、後期破断部42よりも薄い厚みを有してよい。発振部60は、後期破断部42に沿って延伸して設けられてよい。発振部60の少なくとも1つの領域は、後期破断部42の長さの5%以上、30%以下の長さであってよく、10%以上、20%以下の長さであってよい。
【0075】
図6Bは、後期破断部42の近傍における断面の一例を示す。本図は、後期破断部42のうち発振部60が設けられていない領域の断面図である。本例の後期破断部42の第1の厚みD1は、図3Bの実施例よりも厚くてよい。第1の厚みD1は、パネル部材10の厚みD10の半分よりも厚くてよい。
【0076】
図6Cは、後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。本例の発振部60は、後期破断部42よりも破断しやすい易破断部として機能する。発振部60は、後期破断部42の第1の厚みD1と異なる第2の厚みD2を有する。
【0077】
第2の厚みD2は、第1の厚みD1よりも薄くてよい。第2の厚みD2は、第1の厚みD1の80%以上、95%以下であってよい。第2の厚みD2は、第1の厚みD1の80%以上、90%以下であってよい。第2の厚みD2は、0.04mm以上、0.45mm以下であってよい。第2の厚みD2は、0.09mmであってよく、0.075mmであってよく、0.06mmであってよい。
【0078】
発振部60は、後期破断部42と同一の工程で形成してもよいし、後期破断部42を形成した後の工程で形成してもよい。発振部60は、後期破断部42を形成した後に、レーザー加工でスコアのメタル材料を焼くことにより、第1の厚みD1よりも薄い第2の厚みD2を形成してよい。また、発振部60は、後期破断部42を形成するための金型に部分的に凸部を設けることにより、発振部60の厚みを後期破断部42よりも薄くしてよい。
【0079】
図6Dは、後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。本例では、発振部60が後期破断部42よりも破断しやすい易破断部である場合について説明する。
【0080】
状態(a)において、タブ30の開口操作によって、後期破断部42の破断に必要な応力F42と拮抗する応力Fが後期破断部42の破断先端領域に生じている。状態(b)において、後期破断部42の近傍に弾性ひずみが蓄積される。状態(c)において、後期破断部42の破断に必要な応力F42は、発振部60の破断進行に必要な応力F60よりも大きいので、発振部60までスコアの破断が進行すると、発振部60が一気に破断する。易破断部である発振部60が破断すると、弾性ひずみが大きく解放されるので、大きな破断音が生じる。このように、発振部60が後期破断部42よりも破断しやすい易破断部である場合であっても、破断音を発生することができる。
【0081】
発振部60aと発振部60bの厚みを変えてよい。発振部60の厚みを変えることで、発振部60の破断速度を調整できるため、破断音の音量を調整できる。前述の通り、後期破断部42の破断位置がタブ30から遠ざかるにつれ、スコアへの応力集中が緩和し、破断位置周辺の弾性ひずみ量は増加する。そのため、発振部60bの第3の厚みを発振部60aの第2の厚みよりも厚くすることにより、発振部60aと発振部60bでの破断速度を合わせ、破断音の音量を揃えることができる。
【0082】
図7Aは、缶体200の変形例を示す。本例の発振部60は、後期破断部42と異なる幅を有する。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0083】
発振部60は、3つの発振部60a~発振部60cを有する。発振部60は、後期破断部42よりも大きな幅を有しており、後期破断部42よりも破断しにくい難破断部として機能する。発振部60の幅を後期破断部42よりも狭くすることにより、後期破断部42よりも破断しやすい易破断部として機能してもよい。本例の発振部60は、後期破断部42に沿った3つの発振部60a~発振部60cを含む。発振部60は、後期破断部42に沿って任意の間隔で配置されてよい。発振部60の具体的な構造については後述する。
【0084】
図7Bは、後期破断部42の近傍における断面の一例を示す。本図は、後期破断部42のうち発振部60が設けられていない領域の断面図である。本例の後期破断部42は、予め定められた第1の幅W1を有する。
【0085】
第1の幅W1は、パネル部材10の上面における後期破断部42のY軸方向の幅である。パネル部材10の上面とは、内側パネル部111の上面であってもよいし、外側パネル部112の上面であってもよい。後期破断部42が台形状の断面を有する場合、第1の幅W1は、後期破断部42の台形の上底に対応する。但し、第1の幅W1は、後期破断部42の台形の下底の大きさとしてもよい。
【0086】
図7Cは、後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。本例の発振部60は、後期破断部42に設けられ、後期破断部42の第1の幅W1と異なる第2の幅W2を有する。本例の第2の幅W2は、第1の幅W1よりも大きい。即ち、本例の発振部60は、後期破断部42よりも破断しにくい難破断部として機能する。本例の発振部60は、U字型の断面形状を有するが、これに限定されない。
【0087】
図8Aは、缶体200の変形例を示す。本例の発振部60は、張り出し部63を有する。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0088】
張り出し部63は、パネル部材10のおもて面または裏面に張り出している。張り出し部63は、パネル部材10に設けられる。張り出し部63は、後期破断部42よりも内側に設けられてもよいし、後期破断部42よりも外側に設けられてもよい。本例の張り出し部63は、副スコア50と後期破断部42との間に設けられる。張り出し部63は、後期破断部42を形成する前に張り出し加工すればよく、比較的容易に形成することができる。
【0089】
本例の缶蓋100は、張り出し部63を設けることにより、後期破断部42の破断容易性を変化させることができる。張り出し部63を設けることにより、後期破断部42に隣接するパネル部材10の強度を向上させることができる。これにより、破断音が発生する際の振動数を上げて、より高い音を発生させやすくすることができる。
【0090】
図8Bは、後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。本例では、発振部60が張り出し部63を有する場合について説明する。本例の張り出し部63は、内側パネル部111において、パネル部材10のおもて面側に張り出している。
【0091】
状態(a)において、タブ30の開口操作によって、後期破断部42の破断に必要な応力F42と拮抗する応力Fが後期破断部42の破断先端領域に生じている。状態(b)において、発振部60の破断進行に必要な応力F60が作用するまでは、タブ30の開口操作によって更に大きな応力Fが加えられ、後期破断部42の近傍に弾性ひずみが蓄積する。また、張り出し部63が設けられた領域においては、その他の後期破断部42よりも強度が高いので、微小区間において連続的に破断が進行しない。状態(c)において、発振部60の破断進行に必要な応力F60よりも大きな応力Fがかかると、発振部60の破断が進行する。しかしながら、張り出し部63の張り出しに応じてスコアが同時に破断する応力が必要になるので、後期破断部42よりも大きな応力が必要となる。
【0092】
図8Cは、張り出し部63の変形例を示す。本例の張り出し部63は、外側パネル部112に設けられている。張り出し部63が外側パネル部112に設けられる場合、張り出し部63が内側パネル部111に設けられる場合と逆に作用する。即ち、張り出し部63が外側パネル部112に設けられる場合、外側パネル部112のたわみが減少して、後期破断部42に応力集中しやすくなるので、発振部60が破断しやすくなる。
【0093】
このように、缶蓋100は、張り出し部63を設ける位置を変更することにより、発振部60の破断容易性を変化させることができる。缶蓋100は、発振部60を後期破断部42よりも破断しにくい難破断部として機能させてもよいし、後期破断部42よりも破断しやすい易破断部として機能させてもよい。
【0094】
図9Aは、缶体200の変形例を示す。本例の缶体200は、段差部64を有する。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0095】
段差部64は、後期破断部42に設けられた段差である。段差部64は、後期破断部42に設けられた凸部であってもよいし、凹部であってもよい。発振部60の少なくとも一部は、パネル部材10に設けられてよい。段差部64は、後期破断部42よりも内側または後期破断部42よりも外側まで延伸して設けられてもよい。本例の段差部64は、後期破断部42よりも内側から後期破断部42よりも外側に向けて、後期破断部42を横断するように設けられている。本例の缶蓋100は、発振部60a~発振部60cに対応した3つの段差部64a~段差部64cを備える。
【0096】
図9Bは、後期破断部42の破断が進行する様子を説明するための図である。本例では、段差部64が後期破断部42に設けられる場合について説明する。本例の段差部64は、内側パネル部111および外側パネル部112に設けられる。本例では、段差部64がヒンジのように変形することで、後期破断部42に発生する応力が緩和され、後期破断部42が破断しにくくなる。
【0097】
図10Aは、缶体200の変形例を示す。本図は、後期破断部42のうち発振部60が設けられた領域の断面の一例を示す。本例の缶蓋100は、パネル部材10の裏面に裏面被覆層80を備える。
【0098】
裏面被覆層80は、内側パネル部111および外側パネル部112の裏面に設けられる。裏面被覆層80は、予め定められた第4の厚D4を有する。裏面被覆層80は、任意の塗料または被覆樹脂であってよい。例えば、裏面被覆層80の材料は、ポリエチレンテレフタレートである。
【0099】
発振部60は、裏面被覆層80に設けられる。発振部60は、裏面被覆層80において、後期破断部42の裏面側の対応する位置に設けられ、第4の厚みD4と異なる第5の厚みD5を有する。第5の厚みD5は、第4の厚みD4よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。発振部60は、裏面被覆層80を厚く塗布することにより形成されてよい。発振部60は、裏面被覆層80を形成した後に切り込みを入れることにより薄く形成されてもよい。本例の発振部60は、後期破断部42よりも裏面被覆層80を厚く形成することにより、後期破断部42よりも破断しにくい難破断部として機能する。
【0100】
図10Bは、缶体200の変形例を示す。本例の缶蓋100は、パネル部材10の裏面に裏面被覆層80を備える。本例の裏面被覆層80は、第1の材料81および第2の材料82で構成される。
【0101】
第1の材料81は、パネル部材10の裏面に設けられる。本例の第1の材料81は、内側パネル部111および外側パネル部112の裏面に設けられる。第1の材料81は、パネル部材10の裏面の略全域を覆うように設けられてよい。
【0102】
第2の材料82は、第1の材料81と強度が異なる材料である。第2の材料82は、裏面被覆層80において、後期破断部42の裏面側の対応する位置に設けられてよい。第2の材料82は、第1の材料81より強度が高くてもよいし、低くてもよい。本例の第2の材料82は、第1の材料81よりも強度が高い。本例の発振部60は、裏面被覆層80の強度を高めることにより、後期破断部42よりも破断しにくい難破断部として機能する。
【0103】
図11は、缶体200の変形例を示す。本例の缶蓋100は、分岐スコア65を備える。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0104】
分岐スコア65は、パネル部材10に設けられ、後期破断部42と接続されている。分岐スコア65は、後期破断部42の破断進行を分岐スコア65に分岐させることにより、タブ30からの力を後期破断部42と分岐スコア65へ分散することができる。分岐スコア65の破断進行が分岐スコア65の末端に達すると、タブ30からの力は再び後期破断部42の破断進行へ集中するため、破断の急激な進行とひずみの解放による破断音が生じる。本例の缶蓋100は、発振部60a~発振部60cに対応する3つの分岐スコア65a~分岐スコア65cを備える。本例の発振部60は、分岐スコア65へ応力を逃がすことで、後期破断部42よりも破断しにくい難破断部として機能する。分岐スコア65の個数は、本例に限定されない。本例の分岐スコア65は、1本のスコアを2本に分岐させるが、1本のスコアを3本以上に分岐させてもよい。
【0105】
図12は、缶体200の変形例を示す。本例の缶蓋100は、略直線部66および略頂点部67を備える。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0106】
略直線部66は、後期破断部42に設けられ、パネル部材10の平面上から見たとき、略直線となる領域である。略直線とは、完全な直線だけでなく、比較的曲率半径が大きな曲線を含んでもよい。略直線部66は、後期破断部42の破断の進行が安定して進む領域であり、比較的軽い応力で破断が進行する領域であってよい。即ち、略直線部66は、易破断部であってよい。本例の発振部60は、複数の略直線部66を含む。複数の略直線部66の長さは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0107】
略頂点部67は、後期破断部42に設けられ、パネル部材10の平面上から見たとき、略頂点となる領域である。略頂点部67は、略直線部66に挟まれた領域であってよい。略頂点部67では、後期破断部42の破断に必要な応力方向成分が急変するので、スコアの破断の進行が阻害される。即ち、略頂点部67は、難破断部であってよい。略頂点部67は、狭曲な曲線、即ち曲率半径の小さな曲線を含んでもよい。本例の発振部60は、5つの略直線部66a~略直線部66eと、4つの略頂点部67a~略頂点部67dを含んでいる。但し、略直線部66および略頂点部67の個数はこれに限定されない。
【0108】
図13は、缶体200の変形例を示す。本例の缶蓋100は、発振部60の間隔が異なる第1発振領域68および第2発振領域69を備える。本例では、図1Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0109】
第1発振領域68は、後期破断部42に沿って、予め定められた間隔で破断音を発振する。本例の第1発振領域68は、5つの発振部60a~発振部60eを有する。第1発振領域68のそれぞれの発振部60は、同一の間隔で配置されてもよいし、異なる間隔で配置されてもよい。
【0110】
第2発振領域69は、後期破断部42に沿って、第1発振領域68と異なる間隔で破断音を発振する。第2発振領域69は、後期破断部42の破断方向において、第1発振領域68よりも後に設けられる。第2発振領域69は、第1発振領域68よりも発振部60の間隔が大きくなるように設けられてよい。本例の第2発振領域69は、3つの発振部60f~発振部60hを有する。第2発振領域69のそれぞれの発振部60は、同一の間隔で配置されてもよいし、異なる間隔で配置されてもよい。第1発振領域68および第2発振領域69において、発振部60のそれぞれの間隔は、徐々に変化させてもよい。
【0111】
本例の缶蓋100は、発振部60を粗密に配置することで、開口音の音圧、音程および音色を調整することができる。例えば、缶蓋100は、発振部60を粗密に配置することで、うなりのある開口音を形成することができる。缶蓋100は、発振部60の間隔を調整することで、徐々に低い音にするなどのように音色を変化させることができる。本例の発振部60は、後期破断部42よりも大きな幅を有するが、発振部60の種類はこれに限定されない。
【0112】
図14Aは、缶体200の変形例を示す。本例の缶体200は、食品用の金属缶の一例である。缶体200は、容器本体部210および缶蓋100を備える。
【0113】
缶蓋100は、パネル部材10と、開口部20と、タブ30と、リベット35と、主スコア40と、副スコア50とを備える。本例のパネル部材10は、タブ30の開口操作によって、全周に形成された主スコア40が破断して、缶蓋100から分離される。即ち、パネル部材10の全体が開口部20として機能する。缶蓋100は、補助破断部43を備えてよい。
【0114】
補助破断部43は、主スコア40が破断する前に破断するスコアである。即ち、補助破断部43は、タブ30を引き起こすことにより、初期破断部41が破断する前に破断する。補助破断部43を設けることにより、タブ30を持ち上げる際に必要な力を低減することができる。これにより、初期破断部41を容易に破断させやすくなる。
【0115】
後期破断部42は、第1の経路142および第2の経路242を有する。第1の経路142および第2の経路242は、タブ30の開口操作時にそれぞれ破断される。第1の経路142は、初期破断部41の破断後に、缶蓋100の上面からみて反時計回りに破断が進む。第2の経路242は、初期破断部41の破断後に、缶蓋100の上面からみて時計回りに破断が進む。
【0116】
発振部60は、第1の経路142および第2の経路242の破断音をそれぞれ発振してよい。本例の発振部60は、第1の経路142および第2の経路242において、対称に設けられてよい。対称に設けられるとは、第1の経路142および第2の経路242の破断が進行した際に、それぞれ略同時に破断するように発振部60が配置されることを指してよい。これにより、缶蓋100は、和音を発生させることができる。但し、発振部60は、第1の経路142および第2の経路242において、非対称に設けられてよい。
【0117】
缶蓋100は、第1の経路142において、4つの発振部60a~発振部60dを備える。缶蓋100は、第2の経路242において、4つの発振部60a'~発振部60d'を備える。4つの発振部60a~発振部60dは、それぞれ4つの発振部60a'~発振部60d'と対称に設けられてよい。4つの発振部60a~発振部60dは、4つの発振部60a'~発振部60d'と同一の構造を有してもよいし、異なる構造を有してもよい。
【0118】
凸部18は、他の缶体200の底部と接触することで、缶体200を安定して積み重ねるためのものである。本例の缶蓋100は、4つの凸部18を備えるが、これに限定されない。
【0119】
図14Bは、缶体200の斜視図の一例を示す。缶蓋100は、カール部70およびパネル壁部72を備えてよい。カール部70は、二重巻締工程によって容器本体部210のフランジ部と接合されてよい。
【0120】
図15は、初期破断部41および補助破断部43の破断前後の状態を説明するための図である。本図は、タブ30およびリベット35の周辺を拡大した断面図である。
【0121】
状態(a)では、タブ30が初期位置に配置されている。状態(b)において、タブ30を引き起こしてリベット35を持ち上げると、てこの原理によってパネル部材10が下に押し下げられて、補助破断部43が破断する。状態(c)では、補助破断部43が破断されるとタブ30が持ち上げられやすくなり、さらにパネル部材10を下に押し下げることにより初期破断部41が破断する。初期破断部41が破断された後であって、開口部20の開口操作前においては、後期破断部42が破断されていなくてよい。
【0122】
図16は、缶体200の変形例を示す。本例の缶体200は、非対称に設けられた発振部60を備える点で、図14Aの缶体200と相違する。本例では、図14Aの缶体200と相違する点について特に説明する。
【0123】
缶蓋100は、第1の経路142において、12個の発振部60a~発振部60lを備える。缶蓋100は、第2の経路242において、6個の発振部60a'~発振部60f'を備える。12個の発振部60a~発振部60lは、6個の発振部60a'~発振部60f'と非対称に設けられてもよいし、一部が対称に設けられてもよい。第1の経路142と第2の経路242とで発振部60の構造が同一であってもよいし、異なっていてもよい。本例の缶体200は、和音を含ませるなど、音色に変化を持たせて、任意の開口音を形成することができる。
【0124】
図17は、缶体200の一例を示す。缶体200は、缶蓋100および容器本体部210を含む。缶蓋100は、容器本体部210に取り付けられてよい。缶体200は、容器本体部210に缶蓋100が取り付けられる前の状態であってもよい。缶体200は、2ピース缶であってよく、3ピース缶であってもよい。缶体200は、アルミニウム缶であってよく、スチール缶であってよい。
【0125】
缶体200が複数の部材で構成される場合は、各部材が接合されていなくてもよい。例えば、缶体200が底蓋、缶胴体部および天蓋の3つの部材で構成される場合、底蓋が缶胴体部に取り付けられていなくてよい。底蓋は、内容物が充填された後に缶胴体部に接合されてよい。容器本体部210には、任意の画像が印刷されてよい。
【0126】
図18は、充填缶300の構成の一例を示す。充填缶300は、缶体200に予め定められた内容物310が充填されている。内容物310は、飲料であってよく、食品であってよく、その他の物品であってよい。
【0127】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0128】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0129】
10・・・パネル部材、12・・・内パネル部、14・・・外パネル部、16・・・凹部、18・・・凸部、20・・・開口部、30・・・タブ、35・・・リベット、40・・・主スコア、41・・・初期破断部、42・・・後期破断部、43・・・補助破断部、50・・・副スコア、60・・・発振部、61・・・発振加工部、62・・・側壁部、63・・・張り出し部、64・・・段差部、65・・・分岐スコア、66・・・直線部、67・・・頂点部、68・・・第1発振領域、69・・・第2発振領域、70・・・カール部、72・・・パネル壁部、74・・・環状溝、80・・・裏面被覆層、81・・・第1の材料、82・・・第2の材料、100・・・缶蓋、111・・・内側パネル部、112・・・外側パネル部、142・・・第1の経路、200・・・缶体、210・・・容器本体部、242・・・第2の経路、300・・・充填缶、310・・・内容物、510・・・パネル部材、520・・・開口部、542・・・後期破断部
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18