(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149966
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム、眼鏡レンズ加工装置の処理方法、及び眼鏡レンズ加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 9/14 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B24B9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058806
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】内門 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】廣田 征喜
【テーマコード(参考)】
3C049
【Fターム(参考)】
3C049AA03
3C049AA18
3C049AB05
3C049AC02
3C049BA02
3C049BA07
3C049BA09
3C049BB06
3C049BB08
3C049BC03
3C049CA01
3C049CB06
(57)【要約】
【課題】 眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合があった場合にも、その不具合に対して適切に処置を行う。
【解決手段】 制御装置によって実行される眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムであって、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作実行ステップと、不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで不具合状態を自己復旧させる自己復旧ステップと、確認動作の結果に基づいて自己復旧ステップへの移行を判定する判定ステップと、を制御装置に実行させる。さらに、眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良に対する処置の情報を出力する処置出力ステップを制御装置に実行させ、判定ステップでは、確認動作の結果に基づき、処置出力ステップへ移行するか、自己復旧ステップへ移行するか、が判定される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ加工装置を制御する制御装置によって実行される眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムであって、
前記眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作実行ステップと、
前記不具合状態に関係する前記眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで前記不具合状態を自己復旧させる自己復旧ステップと、
前記確認動作の結果に基づいて前記自己復旧ステップへの移行を判定する判定ステップと、
を前記制御装置に実行させることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムにおいて、
さらに、前記眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良に対する処置の情報を出力する処置出力ステップを前記制御装置に実行させ、
前記判定ステップでは、前記確認動作の結果に基づき、前記処置出力ステップへ移行するか、前記自己復旧ステップへ移行するか、が判定されることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項3】
請求項2の眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムにおいて、
前記確認動作の結果に基づいて前記眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良の有無を確認する不良確認ステップを前記制御装置に実行させ、
前記判定ステップでは、前記不良確認ステップで、前記構成要素の動作不良が確認された場合に、前記処置出力ステップへ移行すると判定されること特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項4】
請求項3の眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムにおいて、
前記不良確認ステップで、前記眼鏡レンズ加工装置の構成要素の不良が確認されなかった場合、さらに前記不具合状態に関係する前記眼鏡レンズ加工装置の較正状態を確認する較正確認ステップを前記制御装置に実行させ、
前記判定ステップでは、前記較正状態が正常である場合には、前記自己復旧ステップへの移行は不要と判定されること特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項5】
請求項4の眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムにおいて、
前記判定ステップでは、前記較正確認ステップで前記較正状態が不良であると確認された場合に、前記自己復旧に関係する情報を出力する復旧情報出力ステップが実行されること特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項6】
請求項5の眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムにおいて、
前記復旧情報出力ステップで出力される自己復旧に関係する情報には、操作者に前記較正状態の更新の可否を問い合わせる情報が含まれ、
前記判定ステップでは、操作者からの前記較正状態の更新の許可が出た場合に、前記自己復旧ステップへ移行すると判定されることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項7】
請求項1~6の何れかの眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムにおいて、
前記確認動作実行ステップで実行される確認動作には、眼鏡レンズを挟み込んで保持するレンズ保持軸に沿う方向における不具合に対する確認動作と、前記レンズ保持軸に直交する方向における不具合に対する確認動作と、前記レンズ保持軸を回転させる方向における不具合に対する確認動作と、の少なくとも一つが含まれることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム。
【請求項8】
請求項1~7の何れかの処理プログラムを実行することを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項9】
眼鏡レンズ加工装置を制御する制御装置によって実行される眼鏡レンズ加工装置の処理方法であって、
前記眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作実行ステップと、
前記不具合状態に関係する前記眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで前記不具合状態を自己復旧させる自己復旧ステップと、
前記確認動作の結果に基づいて前記自己復旧ステップへの移行を判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理方法。
【請求項10】
請求項9の眼鏡レンズ加工装置の処理方法において、
さらに、前記眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良に対する処置の情報を出力する処置出力ステップを含み、
前記判定ステップでは、前記確認動作の結果に基づき、前記処置出力ステップへ移行するか、前記自己復旧ステップへ移行するか、が判定されることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム、眼鏡レンズ加工装置の処理方法、及び眼鏡レンズ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡店等で広く使用されている。この種の装置では、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁が加工具によって加工される。眼鏡レンズ加工装置においては、装置の製造時、装置の設置時等に、眼鏡レンズの外形サイズ、眼鏡レンズの軸角度、ヤゲン位置等の眼鏡レンズの仕上げ形状が適正となるように、加工機構部の較正が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合が生じた場合、眼鏡レンズ加工装置に精通した熟練者であれば、不具合が生じた要因を確認することで、適切な処置を行うことも可能である。しかし、現状では、熟練者が携わることができなければ、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合に対して適切な処置を施すことは難しい。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合があった場合にも、その不具合に対して適切に処置できる、眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム、眼鏡レンズ加工装置の処理方法、及び眼鏡レンズ加工装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本開示の第1態様に係る眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムは、眼鏡レンズ加工装置を制御する制御装置によって実行される眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作実行ステップと、前記不具合状態に関係する前記眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで前記不具合状態を自己復旧させる自己復旧ステップと、前記確認動作の結果に基づいて前記自己復旧ステップへの移行を判定する判定ステップと、を前記制御装置に実行させることを特徴とする。
(2) 本開示の第2態様に係る眼鏡レンズ加工装置は、(1)の眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム実行することを特徴とする。
(3) 本開示の第3態様に係る眼鏡レンズ加工装置の処理方法は、眼鏡レンズ加工装置を制御する制御装置によって実行される眼鏡レンズ加工装置の処理方法であって、前記眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作実行ステップと、前記不具合状態に関係する前記眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで前記不具合状態を自己復旧させる自己復旧ステップと、前記確認動作の結果に基づいて前記自己復旧ステップへの移行を判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る眼鏡レンズ加工装置における加工機構部の構成を説明する図である。
【
図3】レンズ外形形状測定ユニットを説明する図である。
【
図4】レンズ外形形状測定ユニットによる眼鏡レンズの外形形状の測定を説明する図である。
【
図5】眼鏡レンズ加工装置の電気的構成を説明する図である。
【
図6】眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合に対する全体処理のフローチャートである。
【
図8】動作不良検知時の問い合わせ画面の例を示す図である。
【
図9】加工された眼鏡レンズのコバ部の拡大断面図である。
【
図10】自己復旧処理移行に係る判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0009】
[概要]
<眼鏡レンズ加工装置>
本開示に係る眼鏡レンズ加工装置(例えば、眼鏡レンズ加工装置1)は、眼鏡レンズの周縁を加工具(例えば、加工具320、面取り加工具360、溝堀加工具436)によって加工する。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸(例えば、レンズ保持軸102)を備える。レンズ保持軸は眼鏡レンズを挟み込んで保持する。
【0010】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、移動手段(例えば、移動ユニット120)を備えていてもよい。例えば、移動手段は、眼鏡レンズと加工具との相対的な位置関係を変える。例えば、移動手段は、レンズ保持軸を軸回りに回転する回転手段(例えば、レンズ回転ユニット120A)を備えていてもよい。例えば、移動手段は、レンズ保持軸の軸方向(例えば、X方向)における眼鏡レンズと加工具との位置関係を変えるための第1移動手段(例えば、第1移動ユニット120B)を備えていてもよい。例えば、移動手段は、レンズ保持軸と加工具の回転軸との軸間距離を変動させる方向(例えば、Y方向)における眼鏡レンズと加工具との位置関係を変えるための第2移動手段(例えば、第2移動ユニット120C)を備えていてもよい。
【0011】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ形状測定手段(例えば、レンズ形状測定ユニット200)を備えていてもよい。例えば、レンズ形状測定手段は、レンズ屈折面形状測定手段(例えば、レンズ屈折面形状測定ユニット200A)を備えていてもよい。例えば、レンズ屈折面形状測定手段は、眼鏡レンズの前屈折面及び後屈折面に接触する測定子(例えば、測定子206F、測定子206R)を有し、眼鏡レンズの前屈折面及び後屈折面の形状を測定するために使用される。例えば、レンズ形状測定手段は、レンズ外形形状測定手段(例えば、レンズ外形形状測定ユニット200B)を備えていてもよい。例えば、レンズ外形形状測定手段は、眼鏡レンズの周縁に接触する(例えば、測定子520)を有し、眼鏡レンズの外形形状を測定するために使用される。
【0012】
<処理プログラム>
本開示における眼鏡レンズ加工装置の処理プログラムは、眼鏡レンズ加工装置を制御する制御装置(例えば、制御部50)によって実行される処理プログラムであって、確認動作実行ステップと、自己復旧ステップと、判定ステップと、を制御装置に実行させる。例えば、確認動作実行ステップは、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を眼鏡レンズ加工装置に実行させる。例えば、自己復旧ステップは、不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで不具合状態を自己復旧させる。例えば、判定ステップは、確認動作実行ステップによる確認動作の結果に基づいて自己復旧ステップへの移行を判定する。これにより、眼鏡レンズ加工装置の状態を適切に管理でき、眼鏡レンズ加工装置の動作に不具合があった場合にも、その不具合に対して適切に処置できる。
【0013】
例えば、処理プログラムは、さらに、眼鏡レンズ加工装置の構成要素(例えば、モータ112、122、142、152、216F、216R、510、原点センサ114、124、144、154、224F、224R、514)の動作不良に対する処置の情報を出力する処置出力ステップを制御装置に実行させてもよい。この場合、例えば、判定ステップでは、確認動作実行ステップによる確認動作の結果に基づき、処置出力ステップへ移行するか、自己復旧ステップへ移行するか、が判定される。例えば、処置出力ステップでは、動作不良に対する処置の情報として、動作不良に対する処置が必要な旨の情報が出力される。例えば、処置が必要な旨の情報として、不良部品の交換、清掃及び点検の何れかを促す情報が出力される。動作不良に対する処置が必要な旨の情報が眼鏡レンズ加工装置に精通した熟練者に知らされることにより、眼鏡レンズ加工装置の不具合に対して適切な処置が行われ易くなる。
【0014】
例えば、処理プログラムは、確認動作実行ステップによる確認動作の結果の取得情報に基づいて眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良の有無を確認する不良確認ステップを制御装置に実行させてもよい。この場合、判定ステップでは、不良確認ステップで、構成要素の動作不良が有ると確認された場合に、処置出力ステップへ移行すると判定される。
【0015】
例えば、処理プログラムは、眼鏡レンズ加工装置の構成要素の不良が確認されなかった場合、さらに不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置の較正状態を確認する較正確認ステップを制御装置に実行させてもよい。この場合、判定ステップでは、較正状態が正常である場合には、自己復旧ステップへの移行は不要と判定される。例えば、較正確認ステップでは、較正用レンズが較正用玉型(例えば、較正用玉型700)に基づいて加工具によって加工される。例えば、較正確認ステップでは、動作確認制御処理で確認された動作不良情報の内容に応じて較正項目(例えば、眼鏡レンズの外形サイズ、レンズ保持軸に沿う方向における眼鏡レンズのヤゲン位置、眼鏡レンズの軸角度)が選定され、較正用玉型にも基づく加工後の眼鏡レンズの形状と較正用玉型とが比較されることにより、選定された較正項目の較正状態が確認される。例えば、較正確認ステップでは、較正用玉型にも基づく加工後の眼鏡レンズの形状と較正用玉型との差分が所定の許容知内にあれば、較正状態が正常であると判定される。
【0016】
例えば、判定ステップでは、較正確認ステップで較正状態が不良である(正常でない)と確認された場合に、自己復旧に関係する情報を出力する復旧情報出力ステップが実行されてもよい。この場合、例えば、復旧情報出力ステップで出力される自己復旧に関係する情報には、操作者に較正状態の更新の可否を問い合わせる情報が含まれていてもよい。この場合、例えば、判定ステップでは、操作者からの較正状態の更新の許可が出た場合に、自己復旧ステップへ移行すると判定されてもよい。もちろん、復旧情報出力ステップでは、操作者に対する較正状態の更新可否の問い合わせが省略され、較正確認ステップで較正状態が不良である(正常でない)と確認された場合に、直接、自己復旧ステップへ移行すると判定されてもよい。この場合、自己復旧に関係する情報には、較正状態を更新するための更新データが含まれる。例えば、更新データは、較正用玉型に基づく加工後の眼鏡レンズの形状と較正用玉型との差分が演算されることにより得られる)
自己復旧ステップへ移行すると判定された場合、更新データに基づいて眼鏡レンズ加工装置の各部(較正項目)における較正状態が更新されることにより、自己復旧処理が実行される。これにより、眼鏡レンズ加工装置に精通した熟練者が携わることができなくても、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合に対して適切な処置が行われる。
【0017】
例えば、確認動作実行ステップで実行される確認動作には、眼鏡レンズを挟み込んで保持するレンズ保持軸に沿う方向における不具合に対する確認動作と、レンズ保持軸に直交する方向における不具合に対する確認動作と、レンズ保持軸を回転させる方向における不具合に対する確認動作と、の少なくとも一つが含まれていてもよい。これらの確認動作は、単独であってもよいし、複数が組み合わせられてもよい。例えば、レンズ保持軸に沿う方向における確認動作には、レンズ保持軸に沿う方向に眼鏡レンズを移動させるモータの動作確認が含まれる。例えば、レンズ保持軸に直交する方向における確認動作には、レンズ保持軸に直交する方向に眼鏡レンズを移動させるモータの動作確認が含まれる。例えば、レンズ保持軸を回転させる方向における確認動作には、眼鏡レンズを回転させるモータの動作確認が含まれる。
【0018】
例えば、確認動作実行ステップでは、動作不良情報取得ステップがさらに実行されてもよい。動作不良情報取得ステップでは、眼鏡レンズ加工装置における動作不要の内容を示す動作不良情報が取得される。動作確認実行ステップでは、取得された動作不良情報が示す動作不良の原因を確認するための確認動作が実行されてもよい。この場合、眼鏡レンズ加工装置における動作不良(例えば、眼鏡レンズ加工装置において実際に発生した動作不良、および、眼鏡レンズ加工装置において発生した可能性がある動作不良等)の原因が、確認動作の結果に基づいて適切に確認される。
【0019】
例えば、確認動作実行ステップでは、複数の確認動作のうち、取得された動作不良情報に対応付けられた(つまり、動作不良情報が示す動作不良の内容(種類)に対応する)、1つまたは複数の確認動作が、眼鏡レンズ加工装置によって実行されてもよい。この場合、単にエラーの出力のみが行われる場合等とは異なり、動作不良の内容に対応する確認動作が眼鏡レンズ加工装置によって実行され、確認動作の結果を示す情報が出力される。従って、動作不良の原因を、確認動作の結果に基づいて推定することが容易になる。
【0020】
例えば、眼鏡レンズ加工装置が、装置内で発生した動作不良を検知した場合、動作不良情報取得ステップでは、検知された動作不良の内容を示す動作不良情報が取得されてもよい。この場合、眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作の内容が、眼鏡レンズ加工装置によって検知された動作不良の内容に応じて自動的に選定される。よって、検知された動作不良の原因が、より適切に推定される。
【0021】
例えば、動作不良情報取得ステップでは、操作者(ユーザ)によって入力された動作不良情報が取得されてもよい。この場合、例えば、動作不良が眼鏡レンズ加工装置によって検知されていない場合等でも、操作者は、実際に加工された眼鏡レンズの出来栄え等を自ら確認することで、発生している動作不良の原因を確認するための確認動作を適切に眼鏡レンズ加工装置に実行させることができる。
【0022】
なお、本開示においては、本実施例に記載した装置に限定されない。例えば、実施形態の機能を行う眼鏡レンズ加工装置の処理プログラム(ソフトウェア)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは眼鏡レンズ加工装置に供給する。そして、システムあるいは眼鏡レンズ加工装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0023】
<処理方法>
例えば、本開示における眼鏡レンズ加工装置の処理方法は、眼鏡レンズ加工装置を制御する制御装置によって実行される処理方法であって、確認動作実行ステップと、自己復旧ステップと、判定ステップと、を含む。例えば、確認動作実行ステップは、眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態を確認するための確認動作を眼鏡レンズ加工装置に実行させる。例えば、自己復旧ステップは、不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置の較正状態を更新させることで不具合状態を自己復旧させる。例えば、判定ステップは、確認動作実行ステップによる確認動作の結果に基づいて自己復旧ステップへの移行を判定する。これにより、眼鏡レンズ加工装置の状態を適切に管理でき、眼鏡レンズ加工装置の動作に不具合があった場合にも、その不具合に対して適切に処置できる。
【0024】
例えば、眼鏡レンズ加工装置の処理方法は、さらに、眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良に対する処置の情報を出力する処置出力ステップを含んでいてもよい。この場合、例えば、判定ステップでは、確認動作の結果に基づき、処置出力ステップへ移行するか、自己復旧ステップへ移行するか、が判定される。
【0025】
例えば、眼鏡レンズ加工装置の処理方法は、確認動作実行ステップによる確認動作の結果の取得情報に基づいて眼鏡レンズ加工装置の構成要素の動作不良の有無を確認する不良確認ステップを含んでいてもよい。この場合、判定ステップでは、不良確認ステップで、構成要素の動作不良が有ると確認された場合に、処置出力ステップへ移行すると判定される。
【0026】
例えば、眼鏡レンズ加工装置の処理方法は、眼鏡レンズ加工装置の構成要素の不良が確認されなかった場合、さらに不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置の較正状態を確認する較正確認ステップを含んでいてもよい。この場合、判定ステップでは、較正状態が正常である場合には、自己復旧ステップへの移行は不要と判定される。
【0027】
例えば、処理方法の判定ステップでは、較正確認ステップで較正状態が不良であると確認された場合に、自己復旧に関係する情報を出力する復旧情報出力ステップを含んでいてもよい。この場合、例えば、判定ステップでは、操作者からの較正状態の更新の許可が出た場合に、自己復旧ステップへ移行すると判定されてもよい。
【0028】
例えば、処理方法の確認動作実行ステップで実行される確認動作には、眼鏡レンズを挟み込んで保持するレンズ保持軸に沿う方向における不具合に対する確認動作と、レンズ保持軸に直交する方向における不具合に対する確認動作と、レンズ保持軸を回転させる方向における不具合に対する確認動作と、の少なくとも一つが含まれていてもよい。これらの確認動作は、単独であってもよいし、複数が組み合わせられてもよい。
【0029】
[実施例]
本開示における典型的な実施例の1つについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係る眼鏡レンズ加工装置1における加工機構部の構成を説明する図である。なお、実施例に係る眼鏡レンズ加工装置1は、加工動作等の各種動作および処理を制御する制御装置を兼ねる。ただし、眼鏡レンズ加工装置1とは別で、眼鏡レンズ加工装置1を制御する制御装置(例えば、パーソナルコンピュータ等)が用いられていてもよい。
【0030】
実施例の眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ保持部100を備える。レンズ保持部100は、被加工レンズである眼鏡レンズ(以下、レンズLE)を保持するレンズ保持軸102(レンズチャック軸)を備える。例えば、レンズ保持軸102は、レンズLEを挟み込んで保持するための2つのレンズ保持軸(レンズチャック軸)102R,102Lを備える。
【0031】
眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ形状測定ユニット200を備える。レンズ形状測定ユニット200は、レンズ屈折面形状測定ユニット200A、レンズ外形形状測定ユニット200Bを備える。
【0032】
眼鏡レンズ加工装置1は、第1加工具ユニット300を備える。第1加工具ユニット300は、レンズLEの周縁を加工するための加工具320を備える。眼鏡レンズ加工装置1は、第2加工具ユニット350を備えていてもよい。第2加工具ユニット350は、例えば、面取り加工具360を備える。眼鏡レンズ加工装置1は、第2加工具ユニット400を備えていてもよい。第2加工具ユニット400は、例えば、レンズLEの屈折面に穴を加工するための穴加工具435,レンズLEの周縁に溝を形成するための溝堀加工具436等を備える。
【0033】
眼鏡レンズ加工装置1は、レンズLEを2つのレンズ保持軸102R,102Lで保持させるためのレンズチャックユニット110を備える。例えば、レンズチャックユニット110は、レンズ保持軸102Rをレンズ保持軸102L側に移動させることで、レンズLEを2つのレンズ保持軸102R,102Lで保持させる。
【0034】
眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ保持軸102に保持されたレンズLEと加工具320との相対的な位置関係を変更する(調整する)ための移動手段の例である移動ユニット120を備える。移動ユニット120は、レンズ回転ユニット120A、第1移動ユニット120B、第2移動ユニット120Cを備える。
【0035】
レンズ回転ユニット120Aは、一対のレンズ保持軸102を軸回りに回転させるために構成されている。第1移動ユニット120Bは、レンズ保持軸102の軸方向(これをX方向とする)におけるレンズLEと加工具320との位置関係を変えるために構成されている。第2移動ユニット120Cは、レンズ保持軸102と加工具320の回転軸361との軸間距離を変動させる方向(これをY方向とする)におけるレンズLEと加工具320との位置関係を変えるために構成されている。また、移動ユニット120は、レンズLEと第2加工具ユニット350が持つ面取り加工具360との相対的な位置関係を変えるためにも使用される。また、移動ユニット120は、レンズLEと第3加工具ユニット400が持つ加工具435,436等との相対的な位置関係を変えるためにも使用される。また、移動ユニット120は、レンズ形状測定ユニット200によるレンズLEの屈折面形状及びレンズ外形形状の測定時にも使用される。
【0036】
以下、眼鏡レンズ加工装置1における各構成の具体例を詳細に説明する。レンズ保持部100は、眼鏡レンズ加工装置1の本体のベース170上に搭載されている。
【0037】
<レンズ回転ユニット>
レンズ回転ユニット120Aについて説明する。レンズ保持部100のキャリッジ101の右腕101Rにレンズ保持軸102Rが回転可能に保持され、キャリッジ101の左腕101Lにレンズ保持軸102Lが回転可能に保持されている。また、レンズ保持軸102R及びレンズ保持軸102Lは、同軸となるように、それぞれ右腕101R及び左腕101Lに保持されている。2つのレンズ保持軸102R,102Lは、左腕101Lに取り付けられたモータ122によってギヤ等の回転伝達機構を介して同期して回転される。また、レンズ保持軸102の回転機構には、レンズ保持軸102の回転の原点位置を検知するための原点センサ124(
図5参照)が配置されている。
【0038】
<チャックユニット>
チャックユニット110は、右腕101Rに取り付けられたモータ112を備える。レンズ保持軸102Rは、モータ112によってレンズ保持軸102L側に移動される。これにより、レンズLEが2つのレンズ保持軸102R,102Lに挟み込まれて保持される。チャックユニット110は、レンズ保持軸102Rの移動の原点位置を検知するための原点センサ114(
図5参照)を備える。
【0039】
<第1移動ユニット>
第1移動ユニット120Bについて説明する。レンズ保持軸102及び加工具回転軸361と平行に延びるシャフト103,104に、X軸移動支基140が設けられている。X軸移動支基140は、X軸移動用モータ142の動力によって、シャフト103,104に沿ってX軸方向に移動することができる。キャリッジ101はX軸移動支基140に搭載されている。X軸移動用モータ142の回転軸にはエンコーダ143が設けられている。エンコーダ143によって、X方向における原点位置に対するレンズ保持軸102(すなわち、レンズLE)の位置が検知される。また、第1移動ユニット120Bは、レンズ保持軸102のX方向の移動の原点位置を検知するための原点センサ144(
図5参照)を備える。
【0040】
<第2移動ユニット>
第2移動ユニット120Cについて説明する。X軸移動支基140には、Y方向に延びる2つのシャフト156、157が固定されている。Y軸移動用モータ152が回転すると、Y方向に延びるボールねじ155が回転する。その結果、キャリッジ101の左腕101L及び右腕101R(すなわちレンズ保持軸102)は、シャフト156、157に沿ってY方向に移動する。Y軸移動用モータ152の回転軸には、Y方向における原点位置に対するレンズ保持軸102の位置を検出するエンコーダ153が設けられている。また、第2移動ユニット120Cは、Y方向の移動の原点位置を検知するための原点センサ154(
図5参照)を備える。
【0041】
<第1加工具ユニット>
第1加工具ユニット300は、加工具回転軸311を回転するためのモータ310を備える。加工具回転軸311は、レンズ保持軸102と平行な位置関係で、回転軸保持ユニット312によって回転可能に保持されている。回転軸保持ユニット312は、ベース170に取り付けられている。加工具回転軸311にレンズLEの周縁を加工するための加工具320が備えられている。例えば、加工具320は、粗砥石322と、高カーブレンズの仕上げ用砥石323と、低カーブレンズの仕上げ用砥石324と、鏡面仕上げ用砥石325と、の少なくとも一つを備える。仕上げ用砥石324は、ヤゲンを形成するV溝(ヤゲン溝)及び平坦加工面を持つ。仕上げ用砥石323は、レンズLEに前ヤゲンを形成するための前ヤゲン加工面と、レンズLEに後ヤゲンを形成するための後ヤゲン加工面と、を持つ。加工具320は、カッターが使用されてもよい。レンズ保持軸102によって保持されたレンズLEの周縁は、加工具320に圧接されて加工される。
【0042】
<第2加工具ユニット>
第2加工具ユニット350は、キャリッジ101に対して第1加工具ユニット300側に配置されている。加工具回転軸361には、面取り加工具360が取り付けられている。面取り加工具360は、レンズ前面用の加工面及びレンズ後面用の加工面を持つ。例えば、面取り加工具360は砥石で構成されるが、カッターであってもよい。加工具回転軸361は、アーム354内の回転伝達機構を介してモータ352により回転される。また、加工具回転軸361は、モータ358により退避位置から、所定の加工位置に移動される。なお、第2加工具ユニット350の構成は、特開2011―73134号公報に記載されている技術を使用できるので、詳細はこれを参照されたい。
【0043】
<第3加工具ユニット>
第3加工具ユニット400は、キャリッジ101に対して第1加工具ユニット300と反対側に配置されている。第2加工具ユニット400は、加工具として、穴あけ加工具435、溝掘り加工具436を備える。穴あけ加工具435及び溝掘り加工具436は、加工具回転軸431に取り付けられている。加工具回転軸431はモータ432(
図5参照)によって回転される。また、加工具回転軸431は、モータ405(
図5参照)によって、X方向及びY方向に直交するZ方向に進退移動される。モータ405が駆動されることにより、穴あけ加工具435及び溝掘り加工具436は、退避位置から加工が可能な位置まで移動される。また、加工具回転軸431は、モータ416(
図5参照)によって、Z方向に延びる軸の軸回りに回転される。これにより、加工具回転軸431の軸方向は、レンズ保持軸102に対する角度が任意に変えられる。このため、穴あけ加工具435によるレンズLEの屈折面への穴加工時に、その穴方向の角度が変えられる。第3加工具ユニット350の構成は、特開2011―73134号公報に記載されている技術を使用できるので、詳細はこれを参照されたい。
【0044】
<レンズ屈折面形状測定ユニット>
レンズ屈折面形状測定ユニット200Aは、キャリッジ101の上方に配置されている。レンズ屈折面形状測定ユニット200Aは、レンズLEの前屈折面(レンズ前面)の形状と、後屈折面(レンズ後面)の形状と、を取得するために使用される。例えば、レンズ屈折面形状測定ユニット200Aは、レンズLEの前屈折面のコバ位置を測定するためのレンズコバ位置測定部200Fと、レンズLEの後屈折面のコバ位置を測定するためのレンズコバ位置測定部200Rと、を備える。レンズ屈折面形状測定ユニット200Aは、眼鏡レンズの厚みを測定するレンズ厚測定部として機能する。
【0045】
図2は、レンズコバ位置測定部200Fの概略構成図である。レンズコバ位置測定部200Fは、レンズLEの前屈折面に接触する測定子206Fを備える。レンズコバ位置測定部200Fは、レンズ保持軸102の軸方向(X方向)における測定子206Fの位置を検知する検知手段の例である検知器213Fを備える。測定子206Fはアーム204Fの先端に取り付けられている。アーム204Fは、X方向に移動可能に、取付支基201Fに保持されている。アーム204Fは、ラック211F等の回転伝達機構を介してモータ216Fに接続されている。モータ216Fの駆動によってアーム204FがX方向に移動され、測定子206FがレンズLEの前屈折面に押し当てられる。ピニオン212Fは、検知器213F(例えば、エンコーダ)の回転軸に取り付けられている。X方向に移動される測定子206Fの位置が検知器213によって検知される。また、レンズコバ位置測定部200Fは、X方向における測定子206Fの移動の原点位置を検知するための原点センサ224F(
図5参照)を備える。
【0046】
レンズコバ位置測定部200Rの構成は、レンズコバ位置測定部200Fと左右対称であるので、その説明は省略する。レンズコバ位置測定部200Rは、後屈折面に接触される測定子206Rと、測定子206RをX方向に移動させるモータ216Rと、測定子206RのX方向における位置を検知する検知器213Rと、原点センサ224R(
図5参照)と、を備える。
【0047】
<レンズ外形形状測定ユニット>
レンズ外形形状測定ユニット200Bは、レンズ保持軸102R側の上側の後方に配置されている。
図3はレンズ外形形状測定ユニット200Bを説明する図である。
図3(a)は、レンズ外形形状測定ユニット200Bの概略構成図である。
図3(b)は、レンズ外形形状測定ユニット200Bが持つ測定子520の正面図である。
【0048】
アーム501の一端にレンズLEのエッジに接触される円柱状の測定子520が固定され、アーム501の他端に回転軸502が固定されている。測定子520の中心軸520a及び回転軸502の中心軸502aは、レンズ保持軸102(X方向)に平行な位置関係に配置されている。回転軸502は中心軸502aを中心に回転可能に保持部503に保持されている。保持部503は
図1のブロック300aに固定されている。また、回転軸502に扇状のギヤ505が固定され、ギヤ505はモータ510によって回転される。また、モータ510の回転軸には検知器としてのエンコーダ511が取り付けられている。また、レンズ外形形状測定ユニット200Bは、測定子520の回転方向の原点位置を検知するための原点センサ514(
図5参照)を備える。
【0049】
測定子520は、レンズLEの外形サイズの測定時に接触される円柱部521aと、レンズLEに形成されたヤゲン位置(ヤゲンのX方向における位置)の測定測時に使用されるV溝521vを含む小径の円柱部521bと、レンズLEに形成された溝位置(溝のX方向における位置)の測定時に使用される突部521cと、を持つ。
【0050】
レンズLEの外形の測定時には、
図4のように、レンズ保持軸102が所定の測定位置(回転軸502を中心にして回転される測定子520の中心軸520aの移動軌跡530上)に移動される。モータ510によってアーム501が回転されることにより、退避位置に置かれていた測定子520がレンズLE側に移動され、測定子520の円柱部521aがレンズLEのコバ(周縁)に接触される。また、モータ510によって測定子520に所定の測定圧が掛けられる。そして、レンズLEが1回転され、このときの測定子520の移動がエンコーダ511によって検知されることにより、レンズ保持軸102を中心にしたレンズLEの外形形状が測定される。
【0051】
なお、レンズ外形形状測定ユニット200Bは、上記のようアーム501の回転機構で構成される他、X方向及びY方向に直交する方向(Z方向)に測定子520が直線移動される機構であっても良い。
【0052】
<電気的構成>
図5は眼鏡レンズ加工装置1の電気的構成を説明する図である。眼鏡レンズ加工装置1は、加工動作等の各種動作および処理を制御する制御装置の例である制御部50を備える。制御部50は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、等を備える。制御部50には、
図1に示したモータ、エンコーダ、原点センサ等の各種デバイスが、バスを介して接続されている。また、制御部50には、操作部55、表示部60、記憶部70、及び外部通信I/F(インターフェイス)75が、バスを介して接続されている。操作部55は、操作者からの各種指示の入力を受け付ける。表示部60は、例えばタッチパネルの機能を備えるディスプレイが使用される。表示部60としてディスプレイが使用される場合、操作部55を含むように構成されていてもよい。記憶部70には、眼鏡レンズ加工装置1の動作を制御するための制御プログラム(例えば、レンズLEの加工に関する加工制御プログラム、状態管理プログラム、各種処理の処理プログラム、等)が記憶されていてもよい。例えば、外部通信I/F75からは、レンズLEの加工目標の形状となる玉型データを取得する玉型形状測定装置、等の外部装置が接続されていてもよい。また、制御部50は、各種情報を出力する出力手段を兼ねていてもよい。
【0053】
<動作>
以上のような構成を備える眼鏡レンズ加工装置1における動作を説明する。
図6は、眼鏡レンズ加工装置1の制御部50によって実行される、眼鏡レンズ加工装置1の動作の不具合に対する全体処理のフローチャートである。
【0054】
処置の全体処理においては、眼鏡レンズ加工装置1の動作の不具合状態を確認するための確認動作制御処理(S1)と、S1の確認動作の結果に基づいて自己復旧処理への移行を判定する判定処理(S2)と、が実行される。S2の判定処理によって自己復旧処理へ移行するか否かが判断され(S3)、自己復旧処理へ移行すると判断された場合、不具合状態を自己復旧させる自己復旧処理(S4)へ移行される。以下、各処理について説明する
<動作確認制御処理>
図7を参照して、制御部50によって実行される確認動作制御処理(S1)について説明する。
図7は、確認動作制御処理のフローチャートである。
【0055】
なお、確認動作とは、眼鏡レンズ加工装置1の不具合状態を極力高い精度で確認するために、眼鏡レンズ加工装置1に実行させる動作である。眼鏡レンズ加工装置の動作の不具合状態とは、眼鏡レンズ加工装置1の動作不良を含む。本実施例における確認動作は、眼鏡レンズ加工装置1において生じている可能性がある動作不良の原因を確認するために、眼鏡レンズ加工装置1によって実行される。より詳細には、本実施例における確認動作は、レンズLEを眼鏡フレームに嵌めるために実際に実施する必要がある眼鏡レンズ加工装置1の動作(例えば、加工動作、測定動作、通信動作等の少なくともいずれか)とは別で実行される動作(つまり、状態確認のための専用の動作)である。詳細には、複数の確認動作の一部には、レンズ保持軸102にレンズLEを保持させていない状態で、複数のモータ(112,122,142,152,216F,216R,510)を駆動させる動作が含まれる。従って、より適切に動作不良の原因が推定される。
【0056】
制御部50は、眼鏡レンズ加工装置1において動作不良が検知されたか否か(例えば、エラーが発生したか否か)を判断する(S10)。制御部50は、例えば、モータ等の各種アクチュエータおよびセンサ等からの信号等に基づいて、装置内で発生した動作不良を検知することができる。動作不良が検知された場合(S10:YES)、制御部50は、検知された動作不良の内容を示す動作不良情報(例えば、エラーコード等)を取得する(S11)。制御部50は、動作不良(エラー)が発生した旨を操作者(ユーザ)に通知すると共に、眼鏡レンズ加工装置1に確認動作を実行させるか否かを操作者に問い合わせる。一例として、本実例では、
図8に示すように、制御部50は、動作不良検知時の問い合わせ画面61を表示部60に表示させる(S12)。例えば、動作不良検知時の問い合わせ画面では、動作不良(エラー)が発生したことを操作者に通知するためのメッセージと、動作不良の内容を示すエラーコードが表示される。さらに、動作不良検知時の問い合わせ画面では、確認動作(「セルフチェック」という場合もある)を実行させるか否かを操作者(ユーザ)に問い合わせるメッセージと、「YES」「NO」のボタンが表示される。操作者は、確認動作を実行させる場合には「YES」のボタンを、実行させない場合には「NO」のボタンを操作する。なお、エラーの通知方法等は、適宜選択できる。例えば、音声によってエラーが通知されてもよい。
【0057】
確認動作を実行させない指示が入力された場合には(S13:NO)、処理はS15へ移行する。確認動作を実行させる指示が入力されると(S13:YES)、制御部50は、検知された動作不良の原因を確認するための確認動作を、実際に実行する確認動作として選定する。詳細には、制御部50は、眼鏡レンズ加工装置1において実行可能な複数の確認動作のうち、S11で取得された動作不良情報(つまり、S10で検知された動作不良の内容)に対応付けられた1つまたは複数の確認動作を、実際に実行する確認動作として選定する(S14)。従って、眼鏡レンズ加工装置1が実行する確認動作が、検知された動作不良の内容に応じて自動的に選定される。
【0058】
動作不良が検知されていない場合には(S10:NO)、制御部50は、操作者によって動作不良情報が入力されたか否かを判断する(S15)。本実施例では、例えば、眼鏡レンズ加工装置1によって実行されたレンズLEの加工に不具合が生じると、操作者は、発生した加工の不具合に関する動作不良情報を、操作部55等を介して眼鏡レンズ加工装置1に入力したうえで、適切な確認動作を実行させることができる。
【0059】
動作不良情報が入力されると(S15:YES)、制御部50は、入力された動作不良情報を取得する(S16)。制御部50は、入力された動作不良情報が示す動作不良の原因を確認するための確認動作を、実際に実行する確認動作として選定する。詳細には、制御部50は、眼鏡レンズ加工装置1において実行可能な複数の確認動作のうち、入力された動作不良情報に対応付けられた1つまたは複数の確認動作を、実際に実行する確認動作として選定する(S17)。S14、およびS17の処理について、より詳細に説明を行う。本実施例では、各々の動作不良情報の種類に対して、実行する確認動作が予め対応付けられている。詳細には、複数の動作不良情報の各々に対して、眼鏡レンズ加工装置に実行させる確認動作の内容を対応付けるデータ(テーブルデータ)が、予めデータベースに記憶されている。制御部50は、取得した動作不良情報に対してテーブルデータで対応付けられている確認動作を、実際に実行する確認動作として選定する。なお、各々の動作不良情報の種類と、実行する確認動作の対応付けは、動作不良の発生原因の分析結果等に応じて、メーカーの操作者等によって適宜アップデートされる。よって、発生した動作不良の内容に応じた適切な確認動作が実行され易い。
【0060】
図9を参照して、動作不良情報の内容に応じて、実際に実行する確認動作を選定する方法の具体例について説明する。
図9は、加工されたレンズLEのコバ部LEPの拡大断面図である。
図9に示す例では、レンズLEを眼鏡フレームに嵌めるためのヤゲンLVが形成されている。ヤゲンLVの基部と、レンズLEの前屈折面LEf及び後屈折面LErの間には、平坦な肩部LKが形成されている。さらに、レンズLEの角部(前屈折面LEf側の陵部及び後屈折面LErの陵部の各々)には、面取り部Lmが形成されている。なお、ヤゲンLVの代わりに溝部が形成される場合もある。
【0061】
ヤゲンLV、肩部LK、面取り部Lm、および溝部の少なくともいずれかを含むコバ部LEPの形状に不具合が生じる原因として、レンズLEと加工具のX軸方向における相対的な移動の不具合が生じている場合、および、レンズLEの厚み測定(屈折面形状測定)の不具合が生じている場合等が考えられる。例えば、
図9に示すように、X軸方向における移動の不具合が生じると、レンズLEに形成されるヤゲンLVの位置がX軸方向にずれる可能性がある。また、レンズLEの厚み測定が正確に行われない場合にも、コバ部LEPに形成されるヤゲンLVの位置がずれる可能性がある。
【0062】
従って、本実施例のS14およびS17では、動作不良情報の内容が、レンズLEのコバ部LEPの加工に関する動作不良(例えば、形状、位置、および大きさの少なくともいずれかの不具合を引き起こす動作不良)である場合、制御部50は、X軸移動用モータ142、およびレンズ屈折面形状測定ユニット200Aの確認動作を、実際に実行する確認動作に含める。その結果、コバ部LEPの加工に関する動作不良の原因が、より適切に推定され易くなる。
【0063】
また、動作不良情報の内容がレンズLEの外形サイズ(仕上がり外形サイズ)の場合、その形状に不具合が生じる原因として、Y方向(X方向に直交する方向)におけるレンズLEと加工具の相対的な移動の不具合が生じている場合、加工具が摩耗している場合、レンズLEのレンズ外形形状測定の不具合が生じている場合等が考えられる。これらの場合、制御部50は、Y軸移動用モータ152、レンズ外形形状測定ユニット200Bの確認動作を、実際に実行する確認動作に含める。また、レンズLEの外形サイズの不良原因として、X軸方向におけるレンズLEと加工具の相対的な移動の不具合が生じている可能性、レンズ保持軸102の回転角度に不具合が生じている可能性、等もある。制御部50は、X軸移動用モータ142、レンズ保持軸102を回転するモータ122、等の確認動作を、実際に実行する確認動作に含めてもよい。
【0064】
また、動作不良情報の内容がレンズLEの外形形状におけるAXIS軸角度の場合、レンズ保持軸102を回転させる方向の不具合が生じている可能性が考えられる。制御部50は、レンズ保持軸102を回転するモータ122の確認動作を、実際に実行する確認動作に含める。
【0065】
また、制御部50は、実際に実行する確認動作として、各原点センサ(114、124、144、154、224F、224R、514)を確認する動作に含めてもよい。
【0066】
図7の説明に戻る。操作者によって動作不良情報が入力されていなければ(S15:NO)、制御部50は、眼鏡レンズ加工装置1において実行可能な複数の確認動作のうち、全ての確認動作を実行させる指示が入力されたか否かを判断する(S18)。例えば、操作者は、眼鏡レンズ加工装置1のメンテナンスを実行する場合等に、全ての確認動作を実行させる指示を、操作部55等を介して入力することができる。入力されていなければ(S18:NO)、処理はS10へ戻る。全ての確認動作を実行させる指示が入力されると(S18:YES)、制御部50は、眼鏡レンズ加工装置1において実行可能な複数の確認動作の全てを、実際に実行する確認動作として選定する(S19)。
【0067】
S14,S17,S19のいずれかで確認動作が選定されると、選定された確認動作が実行される(S21~S23)。詳細には、複数のモータ(112、122、142、152、216F、216R、510)の少なくともいずれかが、確認動作の対象として選定されている場合、対象のモータの移動量確認動作が実行される(S21)。移動量確認動作では、対象のモータに対して、対象物を所定量移動させる指示が行われる。移動される対象物は、レンズLE以外の物体(例えば、キャリッジ、レンズ保持軸、等)であってもよい。また、移動には、直線移動だけでなく、回転移動等も含む。移動量確認動作(S21)が実行された場合、後述するS24の処理では、モータに対して指示された移動量と、実際に移動された対象物の移動量(例えば、エンコーダによって検出された移動量等)の関係を示す情報(例えば、2つの値の差分等)が、確認動作の結果情報として出力される。その結果、動作不良の原因が、モータによる対象物の移動量に関する不具合であるか否かが、動作確認の結果に基づいて適切に判断され易くなる。
【0068】
また、複数のモータ(112、122、142、152、216F、216R、510)の少なくともいずれかが、確認動作の対象として選定されている場合、対象のモータの原点移動確認動作が実行される(S22)。原点移動確認動作では、対象として選定されたモータによって、対象物が原点位置に繰り返し移動される。移動される対象物は、レンズLE以外の物体であってもよい。移動の種類は、直線移動でなく回転移動等であってもよい。原点移動確認動作(S22)が実行された場合、後述するS24の処理では、原点センサによる原点位置の検知結果を示す情報が、確認動作の結果情報として出力される。その結果、加工カス等によって生じやすい原点検知の不具合が適切に解消され易くなる。
【0069】
次いで、制御部50は、選定された確認動作のうち、移動量確認動作および原点移動確認動作以外の確認動作を実行する(S23)。S23では、例えば、各種信号の送受信が適切に行われるか否かを確認する動作等が実行されてもよい。
【0070】
次いで、制御部50は、実行した確認動作の結果を示す結果情報を出力する(S24)。
【0071】
なお、上記の動作確認制御処理において、S10の動作不良検知、S15の操作者による動作不良情報の入力、及びS18の全確認動作の実行指示の入力は、少なくとも一つが実行されればよい。例えば、S15の操作者による動作不良情報の入力のみ実行されてもよい。
【0072】
<自己復旧処理への移行の判定処理>
動作確認制御処理(S1)にて動作確認が行われた後、自己復旧処理への移行の判定処理(S2)が実行される。
図10を参照して、自己復旧処理への移行の判定処理(S2)について説明する。
図10は、自己復旧処理移行に係る判定処理のフローチャートである。
【0073】
制御部50は、S24で出力された確認動作の結果情報を取得する(S201)。次いで、制御部50は、確認動作の結果情報に基づき、眼鏡レンズ加工装置1の構成要素(例えば、モータ、原点センサ等の電気的な構成要素)の動作不良の有無かを確認する(S202)。すなわち、制御部50は、確認動作の結果情報に基づき、後述のステップS203へ移行するか、後述のステップ204に移行するか、を判定する。
【0074】
制御部50は、構成要素の動作不良がある場合(S202:YES)、特定した構成要素に対する処置の情報を出力する(S203)。例えば、モータ(112、122、142、152、216F、216R、510の少なくとも一つ)の不良(故障を含む)が有ると確認された場合、モータの交換を促す情報が表示部60に表示される。例えば、原点センサ(114、124、144、154、224F、224R、514の少なくとも一つ)の不良が確認された場合、加工カスの付着によりセンサが誤反応した可能性があるので、原点センサの清掃等の点検を促す情報、又は交換を促す情報が表示部60に表示される。これにより、眼鏡レンズ加工装置1の不具合に対して適切な処置が行われ易くなる。
【0075】
眼鏡レンズ加工装置1の構成要素が不良の場合、眼鏡レンズ加工装置1に精通した熟練者(サービスマンを含む)による処置が必要とされる。このため、例えば、S203の出力ステップでは、眼鏡レンズ加工装置1に接続されたネットワークを介して、眼鏡レンズ加工装置1が設置された拠点(以下、拠点Aとする)とは異なる拠点(以下、拠点Bとする)の情報処理装置に、構成要素の動作不良の情報が送信されてもよい。拠点Bの情報処理装置には、眼鏡レンズ加工装置1に精通した熟練者がアクセスでき、眼鏡レンズ加工装置1の不具合状態の情報を得ることができる。
【0076】
また、例えば、確認動作の結果情報を示す識別子(例えば、QRコード(登録商標)等)が表示部60に表示されることで、構成要素の動作不良の情報が出力されてもよい。例えば、操作者は、表示部60に表示された識別子を、識別子リーダーに読み取らせる。そして、識別子リーダーに接続された端末装置(例えば、スマートフォン又はタブレット端末等の携帯端末が使用できる)は、識別子を読み取ることで取得した結果情報を、ネットワークを介して拠点Bの情報処理装置に送信する。従って、眼鏡レンズ加工装置1がネットワークに接続されていなくても、動作確認の結果情報(構成要素の動作不良の情報を含む)が適切に拠点Bの情報処理装置に送信される。これにより、眼鏡レンズ加工装置1の不具合に対し、より適切な処置が行われ易くなる。
【0077】
図10の説明に戻る。S202で構成要素の動作不良が確認されなかった場合(S202:NO)、眼鏡レンズ加工装置1の動作の不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置1の較正状態を確認する処理が実行される。例えば、眼鏡レンズ加工装置1の較正状態を確認するために、較正モードを設定する旨、所定の較正用レンズLC(以下、レンズLC)をレンズ保持軸102に保持させる旨、等が表示部70に表示される。操作者は、操作部55のスイッチ操作で較正モードを設定し、レンズLCをレンズ保持軸102に保持させた後、加工スタートスイッチによって較正動作の開始信号を入力する。なお、レンズLCの一例としては、厚みが一定で、一辺が一定長さの正四角形の平板プレートが用いられるとよい。
【0078】
制御部50は、較正状態を確認する処理では、S1の動作確認制御処理で確認された動作不良情報の内容に応じて、較正項目を選定する。もちろん、操作者が、動作不良情報の確認結果を基に、較正項目を選定する信号を操作部55によって入力してもよい。例えば、レンズLEの外形サイズに不具合があり、較正項目として外形サイズが選定された場合、次のように、較正状態を確認する処理が行われる。
【0079】
まず、通常のレンズLEの加工と同様に、較正用玉型700(
図11参照)に基づき、レンズ屈折面形状測定ユニット200AによってレンズLCの前屈折面及び後屈折面のコバ位置が測定される。なお、較正用玉型700は、記憶部70に記憶されており、制御部50によって取得される。
【0080】
図11は、較正用玉型700の例を示す図である。本実施例の較正用玉型700は、中心OC(レンズ保持軸102で保持される中心)を基準とした玉型管理上のx軸及びy軸に平行で、その一辺がサイズW1aの四角形の四隅を、中心OCを中心にした直径D1sでカットした形状に設定されている。そして、較正用玉型700は、x軸に平行な直線領域701a、y軸に平行な直線領域701b及び中心OCを基準とした部分的な円形領域702を持つ。なお、玉型のx軸及びy軸は、
図1で示された眼鏡レンズ加工装置1のX方向及びY方向とは異なり、玉型の管理上の軸であり、レンズ保持軸102の回転角θと所定の関係を持つ軸として設定されている。例えば、x軸方向がレンズ保持軸102の回転角θ=0度として設定されている。
【0081】
レンズLCの前屈折面及び後屈折面のコバ位置が取得されると、制御部50によって、コバ位置情報に基づき、レンズLCの周縁にヤゲンを形成するためのヤゲン軌跡データの演算が行われる。例えば、ヤゲン軌跡データは、コバ厚を5:5の比率で分割する位置にヤゲン頂点の軌跡が配置されるものとして演算される。
【0082】
ヤゲン軌跡データが得られると、制御部50によって移動ユニット120の各モータの駆動が制御され、較正用玉型700に基づいてレンズLCの周縁が粗砥石322によって粗加工される。その後、移動ユニット120の各モータの駆動が制御され、較正用玉型700及びヤゲン軌跡データに基づき、粗加工後のレンズLCの周縁が仕上げ用砥石324によってヤゲン仕上げ加工される。
【0083】
仕上げ加工後、レンズ外形形状測定ユニット200Bが作動される。測定子520が加工済みレンズLCの周縁に接触され、レンズLCが1回転されることにより、レンズLCの外形形状の測定結果が得られる。そして、外形形状の測定結果と較正用玉型700のデータとが比較されることにより、外形サイズに関する較正状態が確認される。より詳しくは、直径D1sの円形領域702における測定結果と較正用玉型700のデータとが比較されることにより、外形サイズに関する較正状態のデータ(両者の比較結果の差分データ)が得られる。
【0084】
また、較正項目として眼鏡レンズの軸角度(眼鏡レンズの回転角度のズレ)が選定されていた場合、加工済みレンズLCの周縁において、較正用玉型700の直線領域701bに対応する部分に測定子520が接触された状態で得られた測定結果と、較正用玉型700のデータと、が比較されることにより、軸角度に関する較正状態が制御部50によって確認される。
【0085】
また、較正項目としてヤゲン位置が選定されていた場合、レンズ外形形状測定ユニット200Bが作動され、次のように較正状態が確認される。
【0086】
まず、加工済みレンズLCのヤゲン頂点が測定子520に形成された小径の円柱部521bに接触された状態で、レンズLCがX方向に移動される。この移動で、レンズLCのヤゲン頂点が溝521vに入ると、エンコーダ511で計測されるレンズ保持中心との距離が変動する。そして、エンコーダ511で計測される距離が最小になったときのX方向の位置が、ヤゲン頂点のX方向における位置として得られる。制御部50によって、ヤゲン頂点の測定結果と、較正用玉型700におけるヤゲン軌跡の設定データと、が比較されることにより、ヤゲン位置に関する較正状態が確認される。
【0087】
以上、較正項目の一例を示したが、較正項目としては、面取り加工具360による面取り加工、溝掘り加工具436による溝堀り加工、穴あけ加工具435による穴加工、等が選定されてもよい。なお、これらの較正状態の詳細な確認方法は、特開2011―73134号公報に記載された技術を使用できる。
【0088】
図10の説明に戻る。S204で不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置1の較正状態が確認された後、その較正状態が正常(例えば、所定の許容値内)であるか否かが確認される(S205)。較正状態が正常である場合(S205:YES)、自己復旧処理(S4)への移行は不要と判定され、較正状態が正常である旨の情報が出力される(S206)。例えば、較正状態が正常である旨の情報が、表示部60に表示される。例えば、外形サイズに不具合があったが、較正状態が正常である場合には、外形サイズに関するパラメータの調整値が影響していることが考えられるため、その調整値を変更する必要性の旨が同時に出力されてもよい。
【0089】
較正状態が不良である場合(S205:NO)、S4で実施される自己復旧に関係する情報が出力される(S207)。例えば、自己復旧に関係する情報は、較正状態を更新するための更新データ(補正データであってもよい)が含まれる。更新データは、加工されたレンズLCの各種の測定結果と、較正用玉型700に基づく基準形状と、の差分が計算されることにより得られる。
【0090】
なお、自己復旧に関係する情報には、操作者に較正状態の更新の可否を問い合わせる情報が含まれていてもよい。例えば、眼鏡レンズ加工装置1の較正状態を更新するか否かの問い合わせが行われる(S208)。例えば、表示部60に、
図8と同様な問合せ画面が表示される。操作者により、較正状態を更新しない旨の応答が入力された場合(S208:NO)、較正状態を更新しない旨の情報が出力される(S209)。操作者により、較正状態を更新する旨の応答が入力された場合(すなわち、較正状態の更新の許可が出た場合)(S208:YES)、自己復旧処理へ移行すると判定され、較正状態の更新データが出力される(S210)。
【0091】
S210で較正状態の更新データが出力されると、制御部50は、更新データに基づいて眼鏡レンズ加工装置1の各部における較正状態を更新(言い換えれば、較正パラメータを更新)することにより、眼鏡レンズ加工装置1の動作の不具合に対する自己復旧処理を実行する(S4)。すなわち、制御部50は、S1の動作確認制御処理で確認された不具合状態に関係する眼鏡レンズ加工装置1の較正状態が適正となるように、較正状態を更新することで、自己復旧処理を実行する。これにより、眼鏡レンズ加工装置1に精通した熟練者が携わることができなくても、眼鏡レンズ加工装置1の動作の不具合に対して適切な処置が行われる。
【0092】
<変容例>
上記実施例で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施例で例示された技術を種々の変容が可能である。例えば、S208における、操作者に較正状態の更新の可否を問い合わせは行われず、較正状態が不良である場合(S205:NO)、自己復旧に関係する情報として較正状態の更新データが出力され、S4の自己復旧処理が実行されてもよい。
【0093】
また、自己復旧処理への移行の判定は2段階で行われてもよい。例えば、1段階目では、S202における眼鏡レンズ加工装置1の構成要素の動作不良があるかを確認する処理が省かれてもよい。その後、S4における自己復旧処理が実行された後、再び、S1における動作確認制御処理の実行で、眼鏡レンズ加工装置1の動作に不具合が無いことが確認されれば、処理が終えられる。もし、2回目の動作確認制御処理の実行で眼鏡レンズ加工装置1の動作に不具合が有れば、S202で眼鏡レンズ加工装置1の構成要素の動作不良があるかを確認する処理が行われればよい。
【符号の説明】
【0094】
1 眼鏡レンズ加工装置
50 制御部
55 操作部
60 表示部
70 記憶部
102 レンズ保持軸
120 移動ユニット
200 レンズ形状測定ユニット
320 加工具
112、122、142、152、216F、216R、510 モータ
114、124、144、154、224F、224R、514 原点センサ
700 較正用玉型