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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149973
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20231005BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20231005BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
G16H10/60
A61M5/142 530
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058818
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 航一
【テーマコード(参考)】
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
5L099AA23
5L099AA24
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】各ポンプにおける薬液の流量の設定値または投与速度の設定値を他の装置によって変更することが可能なシステムを提供する。
【解決手段】各々が薬液を患者に投与可能な複数のポンプのうちの1つの輸液ポンプ70Aは、患者に対して投与する投与薬液の識別情報と第1の設定値とを含む処方オーダを端末装置60から受信し、かつ、第1の設定値に基づき患者に投与薬液を投与する。第1の設定値は、投与薬液の流量の設定値または投与速度の設定値である。端末装置60は、流量の設定値または投与速度の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更する指示を受け付けたことに基づき、輸液ポンプ70Aに対して、第2の設定値を送信する。輸液ポンプ70Aは、第2の設定値を受信した後に第1の操作を受け付けたことを条件に、流量の設定値または投与速度の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更する。輸液ポンプ70Aは、第2の設定値に基づき患者に投与薬液を投与する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が薬液を患者に投与可能な複数のポンプと、
前記複数のポンプの各々と通信可能な情報処理装置とを備え、
前記複数のポンプのうちの1つは、患者に対して投与する投与薬液の識別情報と第1の設定値とを含む処方オーダを前記情報処理装置から受信し、かつ、前記第1の設定値に基づき前記患者に前記投与薬液を投与し、前記第1の設定値は、前記投与薬液の流量の設定値または投与速度の設定値であり、
前記情報処理装置は、前記流量の設定値または前記投与速度の設定値を前記第1の設定値から第2の設定値に変更する指示を受け付けたことに基づき、前記投与薬液を投与しているポンプに対して、前記第2の設定値を送信し、
前記投与薬液を投与しているポンプは、
前記第2の設定値を受信した後に第1の操作を受け付けたことを条件に、前記流量の設定値または前記投与速度の設定値を前記第1の設定値から前記第2の設定値に変更し、
前記第2の設定値に基づき前記患者に前記投与薬液を投与する、システム。
【請求項2】
前記情報処理装置が、前記複数のポンプのうちから前記投与薬液を投与しているポンプを指定する第2の操作を受け付けると、前記投与薬液を投与しているポンプに、予め定められた信号を送信し、
前記投与薬液を投与しているポンプは、前記予め定められた信号を受信すると、予め定められた報知を開始し、
前記情報処理装置は、前記報知の開始後に第3の操作をさらに受け付けたことを条件に、前記投与薬液を投与しているポンプに前記第2の設定値を送信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記投与薬液を投与しているポンプは、前記第2の設定値を受信すると、前記報知を終了する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
サーバをさらに備え、
前記サーバは、前記流量の設定値または前記投与速度の設定値を前記第1の設定値から第2の設定値に変更する指示を前記情報処理装置に送信する、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
各々が薬液を患者に投与可能な複数のポンプのうちの1つが、患者に対して投与する投与薬液の識別情報と第1の設定値とを含む処方オーダを情報処理装置から受信し、かつ、前記第1の設定値に基づき前記患者に前記投与薬液を投与するステップとを備え、前記第1の設定値は、前記投与薬液の流量の設定値または投与速度の設定値であり、
前記複数のポンプの各々と通信可能な情報処理装置が、前記流量の設定値または前記投与速度の設定値を前記第1の設定値から第2の設定値に変更する指示を受け付けたことに基づき、前記投与薬液を投与しているポンプに対して、前記第2の設定値を送信するステップと、
前記投与薬液を投与しているポンプが、前記第2の設定値を受信した後に第1の操作を受け付けたことを条件に、前記流量の設定値または前記投与速度の設定値を前記第1の設定値から前記第2の設定値に変更するステップと、
前記投与薬液を投与しているポンプが、前記第2の設定値に基づき前記患者に前記投与薬液を投与するステップとをさらに備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療装置として、患者に薬液を投与する各種の医療用ポンプが知られている。
【0003】
特表2009-531146号公報(特許文献1)には、薬剤を患者に投与するために、医療装置をプログラミングするシステムが開示されている。当該システムは、医療用装置と、ポイントオブケア(POC)システムに結合させることができるスキャナと、薬剤管理ユニット(MMU)とを備える。POCシステム内のコンピュータは、完全な「5つの正しい」チェック(正しい時に正しい装置通路または経路を通して正しい用量または速度で正しい薬剤が、正しい患者に投与されることのチェック)の後にMMUの許可で医療用装置を直接プログラミングすることができる。看護師は、注入ポンプで設定を再プログラミングすることによって、設定を変更することもできる。
【0004】
特表2018-518265号公報(特許文献2)には、機能セットに従って複数の輸液ポンプを設定する方法が開示されている。当該方法は、患者に薬品を投与するように各々が設定された複数の輸液ポンプを実装するステップと、医薬品セットを定める少なくとも1つの機能セットを含む医薬品ライブラリを実装するステップと、少なくとも1つの機能セットのうちの1つに関連する入力データを受信するステップと、入力データに対応する医薬品ライブラリから特定の薬品セットを取得するステップと、薬品セットに従って複数の輸液ポンプをプログラミングし、複数の輸液ポンプで患者に輸液するステップと、を含む。特許文献2では、輸液ポンプの複雑かつ/または退屈なプログラミングをむしろ簡単かつ効率的に行わせることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009-531146号公報
【特許文献2】特表2018-518265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポンプには、当該ポンプにセットされた薬液についての流量の設定値または投与速度の設定値が記憶される。このような設定値は、患者の容態等に応じて、医師の指示に基づき変更され得る。当該設定値の変更は、看護師等がポンプに新たな数値を直接入力することにより行なわれる。
【0007】
看護師等の医療従事者が流量の設定値または投与速度の設定値を手入力で変更することは、手間であり、かつ、誤入力を招く可能性もある。特に、複数のポンプの各々に異なる薬液をセットしている場合には、医療従事者は、どの薬液をどのポンプにセットしたのかを各ポンプにて確認の上、対象となる薬液の設定値の変更を当該薬液がセットされたポンプに対して行なう必要がある。このため、使用するポンプの台数が増すにつれ、手間が増し、かつ、誤入力を招く可能性も高くなる。
【0008】
特許文献1および特許文献2では、医療装置および輸液ポンプに対するプログラミングを開示している。しかしながら、特許文献1および特許文献2では、各ポンプにセットされる薬液の流量の設定値を他の装置によって変更するための具体的な手法については開示されていない。
【0009】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、各ポンプにおける薬液の流量の設定値または投与速度の設定値を他の装置によって変更することが可能なシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面に従うと、システムは、各々が薬液を患者に投与可能な複数のポンプと、複数のポンプの各々と通信可能な情報処理装置とを備える。複数のポンプのうちの1つは、患者に対して投与する投与薬液の識別情報と第1の設定値とを含む処方オーダを情報処理装置から受信し、かつ、第1の設定値に基づき患者に投与薬液を投与する。第1の設定値は、投与薬液の流量の設定値または投与速度の設定値である。情報処理装置は、流量の設定値または投与速度の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更する指示を受け付けたことに基づき、投与薬液を投与しているポンプに対して、第2の設定値を送信する。投与薬液を投与しているポンプは、第2の設定値を受信した後に第1の操作を受け付けたことを条件に、流量の設定値または投与速度の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更する。投与薬液を投与しているポンプは、第2の設定値に基づき患者に投与薬液を投与する。
【0011】
本開示の他の局面に従うと、方法は、各々が薬液を患者に投与可能な複数のポンプのうちの1つが、患者に対して投与する投与薬液の識別情報と第1の設定値とを含む処方オーダを情報処理装置から受信し、かつ、第1の設定値に基づき患者に投与薬液を投与するステップとを備える。第1の設定値は、投与薬液の流量の設定値または投与速度の設定値である。複数のポンプの各々と通信可能な情報処理装置が、流量の設定値または投与速度の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更する指示を受け付けたことに基づき、投与薬液を投与しているポンプに対して、第2の設定値を送信するステップと、投与薬液を投与しているポンプが、第2の設定値を受信した後に第1の操作を受け付けたことを条件に、流量の設定値または投与速度の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更するステップと、投与薬液を投与しているポンプが、第2の設定値に基づき患者に投与薬液を投与するステップとをさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
上記の開示によれば、各ポンプにおける薬液の流量の設定値または投与速度の設定値を他の装置によって変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ネットワークシステムの概略構成を示した図である。
図2】通信システムにおける通信の概要を説明するための図である。
図3】薬剤ライブラリデータの概略構成を示した図である。
図4】処方リストデータの概略構成を示した図である。
図5】サーバのハードウェア構成例を示した図である。
図6】端末装置のハードウェア構成例を示した図である。
図7】ポンプのハードウェア構成例を示した図である。
図8】ポンプの操作パネルの一例を示した図である。
図9】通信システムにおいて実行される処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
図10】端末装置で表示される操作画面を表した図である。
図11図10に基づき説明した設定値の変更処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0015】
[実施の形態1]
以下、図面を参照しつつ、本開示の各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0016】
<A.システム構成>
図1は、本実施の形態のネットワークシステム1の概略構成を示した図である。
【0017】
図1に示されるように、ネットワークシステム1は、端末装置10と、電子カルテを記録するサーバ20と、薬剤部門のサーバ30と、薬剤部門とは異なる部門のサーバ40と、通信システム2とを備える。通信システム2は、サーバ50と、ラックシステム(システム)3とを含む。ラックシステム3は、端末装置(情報処理装置)60と、複数の輸液ポンプ70A,70Bと、複数のシリンジポンプ70C,70D,70Eとを有する。ラックシステム3は、看護師9または医師によって操作される。
【0018】
端末装置10は、典型的には有線にて、サーバ20と通信可能に接続されている。サーバ20は、典型的には有線にて、端末装置10とサーバ30とに通信可能に接続されている。サーバ30は、典型的には有線にて、サーバ20とサーバ50とに通信可能に接続されている。
【0019】
サーバ50は、典型的には有線にて、サーバ30とサーバ40とに通信可能に接続されている。サーバ50は、典型的には無線にて、ラックシステム3の端末装置60と通信可能にさらに接続されている。
【0020】
端末装置10は、典型的には、医師によって利用される。端末装置10は、患者に対して処方される1つ以上の薬剤に関する情報の入力を、患者毎に受け付ける。以下では、端末装置10を用いて一人の患者に対して入力された情報(処方された1以上の薬剤に関する情報)を、便宜上、「処方リストデータ」とも称する。すなわち、端末装置10は、患者別に処方リストデータの入力を受け付ける。端末装置10は、入力された処方リストデータをサーバ20に送信する。なお、処方リストデータの具体的構成については、後述する(図4)。
【0021】
サーバ20は、処方リストデータを端末装置10から受信する。サーバ20は、患者の電子カルテに、受信した処方リストデータの内容を記録する。
【0022】
サーバ30は、薬剤ライブラリデータ(薬液データ)を予め記憶している。サーバ30は、薬剤ライブラリデータをサーバ50に送信する。サーバ30において薬剤ライブラリの更新がなされると、サーバ30は、サーバ50の薬剤ライブラリを更新するための更新用データをサーバ50に送る。サーバ30は、更新用データとして、更新後の薬剤ライブラリデータそのものを送信してもよいし、更新がされた箇所のみのデータを送信してもよい。
【0023】
サーバ30は、薬剤師等の入力操作に基づき、指定された患者の処方リストデータをサーバ20から取得する。サーバ30は、これから治療を開始する患者(以下、「対象患者」とも称する)の処方リストデータをサーバ50に送信する。
【0024】
以上の処理により、サーバ50には、対象患者の処方リストデータと、最新の薬剤ライブラリデータとが記憶される。なお、サーバ50は、サーバ40から他の各種のデータを取得する。たとえば、サーバ50は、サーバ40から、対象患者の麻酔に関するデータを取得する。
【0025】
本例では、シリンジポンプ70C,70Eにシリンジ90がセットされている。シリンジ90は、バレル91と、プランジャロッド92とを含む。プランジャロッド92は、フランジ921を有する。シリンジポンプ70C,70D,70Eは、押圧面741を有する駆動部74を備える。輸液ポンプ70A,70Bおよびシリンジポンプ70C,70D,70Eの各々は、ディスプレイ772,773を有する。
【0026】
図2は、図1に示した通信システム2における通信の概要を説明するための図である。
【0027】
図2に示されるように、サーバ50は、本例では無線にて端末装置60と通信する。サーバ50は、典型的には、無線LAN(Local Area Network)にて端末装置60と通信する。
【0028】
端末装置60は、本例では無線にて、輸液ポンプ70A,70Bと、シリンジポンプ70C,70D,70Eと通信する。詳しくは、端末装置60は、無線LANまたはNFC(Near Field Communication)によって、輸液ポンプ70A,70Bと、シリンジポンプ70C,70D,70Eと通信する。なお、以下では、輸液ポンプ70A,70Bおよびシリンジポンプ70C,70D,70Eのうち任意の1つのポンプ(医療用ポンプ)を、「ポンプ70」とも称する。
【0029】
サーバ50は、サーバ20から各々取得した薬剤ライブラリデータと対象患者の処方リストデータとを、端末装置60に送信する。これにより、ラックシステム3の端末装置60に、薬剤ライブラリデータと対象患者の処方リストデータとが記憶される。
【0030】
サーバ50の薬剤ライブラリデータが更新されると、端末装置60の薬剤ライブラリデータも更新される。これにより、サーバ20(図1)、サーバ50、端末装置60の各々において、同じ薬剤ライブラリデータが記憶されることになる。なお、サーバ20の薬剤ライブラリデータがマスタデータである。
【0031】
<B.データ>
図3は、図1で示した薬剤ライブラリデータの概略構成を示した図である。
【0032】
図3に示されるように、薬剤ライブラリデータD3には、少なくとも、薬剤識別情報に関連付けて、少なくとも、流量(mL/h)の閾値と、投与量(mL)の閾値と、投与速度(μg/kg/min)の閾値とが記憶されている。投与量は、「予定量」とも称される。
【0033】
薬剤識別情報は、たとえば、薬剤番号と薬剤名(薬液名)とを含む。流量の閾値は、流量の上限値と、流量の下限値とを含む。投与量の閾値は、投与量の上限値と、投与量の下限値とを含む。投与速度の閾値は、投与速度の上限値と、投与速度の下限値とを含む。なお、薬剤ライブラリデータD3は、各薬液に関して、各上限値および各下限値の全てが必ずしも記憶されている必要はない。
【0034】
このような薬剤ライブラリデータD3は、上述したように、サーバ20と、サーバ50と、端末装置60とに記憶される。上述したように、サーバ20の薬剤ライブラリデータD3が更新されると、サーバ50の薬剤ライブラリデータD3と端末装置60の薬剤ライブラリデータD3とが更新される。
【0035】
図4は、図1で示した処方リストデータの概略構成を示した図である。
【0036】
図4に示されるように、処方リストデータD41は、対象患者を識別するための患者IDと、1つ以上の処方オーダ#1,#2,#3…を含む。
【0037】
本例では、処方オーダ#1,#2,#3…の各々は、薬剤識別情報と、流量の設定値と、投与量の設定値とを含む。流量の設定値および投与量の設定値は、医師によって指定された設定値である。当該設定値は、端末装置10において入力された値である。処方オーダ#1,#2,#3…の各々は、投与速度の設定値を含んでいてもよい。
【0038】
処方オーダとしては、「生理食塩水500mLを20mL/hで投与」のような例が挙げられる。この場合、薬剤識別情報としての「生理食塩水」と、流量の設定値としての「20mL/h」と、投与量の設定値としての「500mL」とが処方オーダに含まれる。
【0039】
薬剤部門は、流量の設定値(あるいは投与速度の設定値)および投与量の設定値の各々が、予め定められた範囲内であるか否かをチェックする。仮に設定値が適切でない場合には、薬剤部門は、担当医師(処方リストデータを作成した医師)に数値の確認を行ない、担当医師に設定値の修正を促す。それゆえ、サーバ50および端末装置60に送信される流量の設定値(あるいは投与速度の設定値)と投与量の設定値とは、通常、上記予め定められた範囲内となる。
【0040】
詳しくは、上記予め定められた範囲は、下限値と上限値との少なくとも一方で規定される。薬剤ライブラリデータD3(図3参照)には、このような上限値と下限値とが、薬液毎に記録されている。
【0041】
<C.装置構成>
通信システム2(図1参照)を構成する、サーバ50と、端末装置60と、ポンプ70との具体的構成について説明する。
【0042】
(c1.サーバ)
図5は、サーバ50のハードウェア構成例を示した図である。
【0043】
図5に示されるように、サーバ50は、制御ユニット51と、通信IF(Interface)52と、時計53とを備える。制御ユニット51は、プロセッサ511と、メモリ512とを含む。プロセッサ511と、メモリ512と、通信IF52と、時計53とは、典型的には、マザーボード(図示せず)に取り付けられている。
【0044】
メモリ512は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体で構成される。メモリ512は、対象患者毎に作成された処方リストデータD41,D42,D43,D44…を記憶している。
【0045】
処方リストデータD41は、患者IDが「0001」の患者のデータである。同様に、処方リストデータD42は、たとえば患者IDが「0002」の患者のデータである。処方リストデータD43は、たとえば患者IDが「0003」の患者のデータである。
【0046】
通信IF52は、サーバ30,40および端末装置60との間で通信するためのインターフェイスである。通信IF52によって、サーバ50は、薬剤ライブラリデータD3、および処方リストデータD41等を取得することができる。
【0047】
時計53は、時刻を計時する。計時された時刻の情報は、制御ユニット51に送られる。
【0048】
制御ユニット51は、サーバ50の全体的な動作を制御する。具体的には、プロセッサ511が、メモリ512に記憶されたオペレーティングシステム(図示せず)および各種のアプリケーションプログラム(図示せず)を実行することにより、サーバ50は各種の動作を実行する。
【0049】
(c2.端末装置)
図6は、端末装置60のハードウェア構成例を示した図である。
【0050】
図6に示されるように、端末装置60は、制御ユニット61と、タッチスクリーン62と、通信IF(Interface)63と、時計64とを備える。制御ユニット61は、プロセッサ611と、メモリ612とを含む。タッチスクリーン62は、タッチパネル621と、ディスプレイ622とを含む。タッチパネル621は、ディスプレイ622上に設置されている。プロセッサ611と、メモリ612と、通信IF63と、時計64とは、典型的には、マザーボード(図示せず)に取り付けられている。
【0051】
メモリ612は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の記憶媒体で構成される。メモリ612は、一人の対象患者(本例の局面では、患者IDが「0003」の患者)の処方リストデータD43を記憶している。詳しくは、看護師9が、患者IDが「0003」の患者の処方リストデータD43をサーバ50から取得する操作を端末装置60にて行なったため、端末装置60のメモリ612には処方リストデータD43が記憶されている。
【0052】
端末装置60が、処方リストデータD43そのものを取得する必要はなく、処方オーダ#1と処方オーダ#2とを別々に、患者IDと関連付けて取得してもよい。少なくとも、端末装置60が、処方オーダ#1と、処方オーダ#2とを、サーバ50から取得できればよい。取得の際のユーザ操作については特に限定されるものではない。以下の説明では、端末装置60が、処方オーダ#1と処方オーダ#2とを個別に取得する場合を例に挙げて説明する。
【0053】
通信IF63は、サーバ50および複数のポンプ70との間で通信するためのインターフェイスである。通信IF63によって、端末装置60は、薬剤ライブラリデータD3と、処方リストデータD43とを取得することができる。
【0054】
時計64は、時刻を計時する。計時された時刻の情報は、制御ユニット61に送られる。
【0055】
タッチスクリーン62は、ユーザの入力を受け付け、かつ、各種の表示を行なう。ディスプレイ622は、プロセッサ611からの出力に基づき、各種の画面を表示する。タッチパネル621は、当該画面が表示されている状態でユーザ入力(典型的には、看護師9によるタッチ操作)を受け付けと、当該入力基づく信号をプロセッサ611に送信する。
【0056】
制御ユニット61は、端末装置60の全体的な動作を制御する。具体的には、プロセッサ611が、メモリ612に記憶されたオペレーティングシステム(図示せず)および各種のアプリケーションプログラム(図示せず)を実行することにより、端末装置60は各種の動作を実行する。
【0057】
(c3.ポンプ)
図7は、ポンプ70のハードウェア構成例を示した図である。
【0058】
図7に示されるように、制御ユニット71と、通信IF72と、時計73と、駆動部74と、スピーカ75と、警報ランプ76と、操作パネル77とを備える。制御ユニット71は、プロセッサ711と、メモリ712とを含む。操作パネル77は、操作ボタン771と、ディスプレイ772,773とを含む。プロセッサ711と、メモリ712と、通信IF72と、時計73とは、典型的には、マザーボード(図示せず)に取り付けられている。
【0059】
メモリ712は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の記憶媒体で構成される。メモリ712は、一人の対象患者(本例の局面では、患者IDが「0003」の患者)の処方リストデータD43に含まれている処方オーダ#1(図6参照)を記憶している。詳しくは、看護師9が、処方リストデータD43の処方オーダ#1をポンプ70に送信する操作を端末装置60にて行なったため、ポンプ70のメモリ712には処方リストデータD43の処方オーダ#1が記憶されている。
【0060】
さらに、メモリ712は、処方リストデータD43の処方オーダ#1に記載された薬液(以下、「投与薬液」とも称する)の流量の閾値と当該投与薬液の投与量の閾値とが記憶されている。なお、1つの処方オーダには、上述したように、1つの薬液の情報が記載されている。
【0061】
詳しくは、看護師9が、処方リストデータD43の処方オーダ#1をポンプ70に送信する操作を端末装置60にて行なったことに基づき、当該処方オーダ#1に記載された投与薬液の流量の閾値と当該投与薬液の投与量の閾値とが端末装置60からポンプ70に送信され、かつメモリ712に記憶される。
【0062】
制御ユニット71は、ポンプ70の全体的な動作を制御する。具体的には、プロセッサ711が、メモリ712に記憶されたオペレーティングシステム(図示せず)および各種のアプリケーションプログラム(図示せず)を実行することにより、ポンプ70は各種の動作を実行する。
【0063】
通信IF72は、端末装置60と通信するためのインターフェイスである。通信IF72によって、ポンプ70は、処方オーダ#1と、流量の閾値と、投与量の閾値とを取得することができる。
【0064】
時計73は、時刻を計時する。計時された時刻の情報は、制御ユニット71に送られる。
【0065】
駆動部74は、ポンプ70にセットされた薬液を患者に投与するための機構である。駆動部74は、制御ユニット71からの指令により動作する。ポンプ70がシリンジポンプである場合、駆動部74は、シリンジ90(図1参照)のプランジャロッド92をシリンジ90のバレル91内で移動させるための機構である。詳しくは、駆動部74は、フランジ921を押圧面741で押すことにより、プランジャロッド92をバレル91方向に移動させる。これにより、薬液が患者に投与される。
【0066】
スピーカ75は、制御ユニット71からの指令により所定の報知(音声での報知)を行なう。
【0067】
警報ランプ76は、制御ユニット71からの指令により所定の報知(発光による報知)を行なう。警報ランプ76は、インジケータとも称される。
【0068】
操作パネル77は、看護師9による操作を受け付け、かつ、各種の表示を行なう。詳しくは、操作ボタン771は、看護師9による操作を受け付ける。操作ボタン771は、典型的には、複数の操作ボタンを含む。受け付けた操作内容に応じた指示が操作パネル77から制御ユニット71に送られる。
【0069】
ディスプレイ772,773(図1参照)は、プロセッサ711からの出力に基づき、各種の画面を表示する。ディスプレイ772には、たとえば、投与速度等が表示される。ディスプレイ773には、たとえば、流量等の情報が表示される。
【0070】
図8は、ポンプ70の操作パネル77の一例を示した図である。
【0071】
図8に示されているように、操作パネル77は、上述した操作ボタン771の具体例として、電源ボタン771Aと、メニューボタン771B,771Cと、積算量クリアボタン771Dと、流量設定ボタン771E,771Fと、ボーラスボタン771Gと、開始ボタン771Hと、停止または消音ボタン771Iと、決定ボタン771Jとを含む。操作パネル77は、上述したように、ディスプレイ772と、ディスプレイ773とを備える。
【0072】
ポンプ70は、操作パネル77の両側に、2つの警報ランプ76を備える。なお、警報ランプ76の位置は、当該位置に限定されず、ポンプのユーザに発光していることを視認可能となる位置であればよい。
【0073】
電源ボタン771Aは、ポンプ70の電源をオンおよびオフさせるためのボタンである。メニューボタン771Bは、ディスプレイ772に各種のメニューを表示させるためのボタンである。メニューボタン771Cは、ディスプレイ773に各種のメニューを表示させるためのボタンである。
【0074】
積算量クリアボタン771Dは、投与された薬液の投与量の積算値のデータ(ログデータ)を、ポンプのメモリから消去するためのボタンである。流量設定ボタン771Eは、薬液の流量の設定値を上げるためのボタンである。流量設定ボタン771Fは、薬液の流量の設定値を下げるためのボタンである。ポンプ70に、ボーラス投与を実行させるためのボタンである。
【0075】
開始ボタン771Hは、ポンプによる薬液の投与を開始させるためのボタンである。開始ボタン771Hの押下により、駆動部74(図7)が動作する。停止または消音ボタン771Iは、薬液の投与を停止させ、またはスピーカ75が音を発しないようにするためのボタンである。停止または消音ボタン771Iの押下により、どちらの機能が実行されるかは、ポンプ70の状態に基づく。決定ボタン771Jの操作タイミングおよび機能については、後述する。
【0076】
ディスプレイ772,773上には、タッチパネルが設置されてもよい。すなわち、操作パネル77は、ディスプレイ772とタッチパネルとを有するタッチスクリーンと、ディスプレイ773とタッチパネルとを有するタッチスクリーンとを備えていてもよい。タこのような構成によれば、ディスプレイ772,773に表示された各種の項目(メニュー内の項目)をタッチ操作により選択することが可能となる。また、操作パネル77は、メニュー内の項目を選択するための物理的なボタンを別途備えていてもよい。
【0077】
<D.処理の流れ>
以下では、説明の便宜上、患者IDが「0003」の患者の処方リストデータD43に着目して説明する。また、説明の便宜上、5つのポンプ70のうち、輸液ポンプ70Aと輸液ポンプ70Bとに着目して説明する。処方リストデータD43および輸液ポンプ70A,70Bは、一例であって、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、以下の例では、説明を簡略化する観点から、図3に示した流量の閾値と投与量の閾値と投与速度の閾値とのうち、流量の閾値に着目して説明する。なお、流量の下限値と、投与量の閾値と、投与速度の閾値についても、端末装置60は、同様の処理を実行し得る。
【0079】
図9は、通信システム2において実行される処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
【0080】
図9に示されるように、シーケンスSQ1において、サーバ50は、処方リストデータD43に含まれる処方オーダ#1を端末装置60に送信する。なお、処方オーダ#1は、上述したように、少なくとも薬剤識別情報と流量の設定値(医師によって設定された値)とを含む。
【0081】
シーケンスSQ2において、端末装置60は、受信した処方オーダ#1に記載された薬液#1の流量の閾値をメモリ612から読み出す。具体的には、端末装置60は、メモリ612に記憶された薬剤ライブラリデータD3(図6参照)から薬液#1の流量の閾値を読み出す。
【0082】
シーケンスSQ3において、端末装置60は、看護師9の入力操作に基づき、処方オーダ#1と輸液ポンプ70Aとを関連付ける。すなわち、端末装置60は、処方オーダ#1と輸液ポンプ70Aとを紐付ける。シーケンスSQ4において、端末装置60は、看護師9の入力操作に基づき、処方オーダ#1と薬液#1の流量の閾値とを、処方オーダ#1に関連付けられた輸液ポンプ70Aに送信する。
【0083】
以上により、輸液ポンプ70Aに、処方オーダ#1と、処方オーダ#1に記載された薬液#1の流量の閾値とが設定される。輸液ポンプ70Aは、看護師9等によって薬液#1の流量の設定値が変更されない限り、開始ボタンの押下をトリガーとして、薬液#1の流量の設定値に基づいて薬液#1を患者に投与することを開始する。
【0084】
シーケンスSQ5において、サーバ50は、処方リストデータD43に含まれる処方オーダ#2を端末装置60に送信する。なお、処方オーダ#2は、上述したように、少なくとも薬剤識別情報と流量の設定値とを含む。
【0085】
シーケンスSQ6において、端末装置60は、受信した処方オーダ#2に記載された薬液#2の流量の閾値をメモリ612から読み出す。具体的には、端末装置60は、メモリ612に記憶された薬剤ライブラリデータD3から薬液#2の流量の閾値を読み出す。
【0086】
シーケンスSQ7において、端末装置60は、看護師9の入力操作に基づき、処方オーダ#2と輸液ポンプ70Bとを関連付ける。すなわち、端末装置60は、処方オーダ#2と輸液ポンプ70Bとを紐付ける。シーケンスSQ8において、端末装置60は、看護師9の入力操作に基づき、処方オーダ#2と薬液#2の流量の閾値とを、処方オーダ#2に関連付けられた輸液ポンプ70Bに送信する。
【0087】
以上により、輸液ポンプ70Bに、処方オーダ#2と、処方オーダ#2に記載された薬液#2の流量の閾値とが設定される。輸液ポンプ70Bは、看護師9等によって薬液#2の流量の設定値が変更されない限り、開始ボタンの押下をトリガーとして、薬液#2の流量の設定値に基づいて薬液#2を患者に投与することを開始する。
【0088】
ラックシステム3について小括すると、以下のとおりである。ラックシステム3は、薬液を患者に投与可能なポンプ70(たとえば、輸液ポンプ70A)と、ポンプ70と通信可能であって、かつ、複数の薬液の各々の識別情報に流量の閾値が関連付けられた薬剤ライブラリデータD3を記憶した端末装置60とを備える。
【0089】
端末装置60は、ラックシステム3の外部機器であるサーバ50から、上記複数の薬液のうち患者(たとえば、患者IDが「0003」の患者)に対して投与する投与薬液(たとえば、薬液#1)の識別情報と、上記患者に対して設定された投与薬液の流量の設定値とを含む処方オーダ(たとえば、処方オーダ#1)を取得する。端末装置60は、薬剤ライブラリデータD3から、投与薬液の流量の閾値を取得する(具体的には、閾値を読み出す)。端末装置60は、ポンプ70に対して、処方オーダと、投与薬液の流量の閾値とを送信する。
【0090】
このような構成によれば、薬剤ライブラリデータD3を各ポンプ70に送信する必要はなくなる。それゆえ、各ポンプ70における薬液データの更新処理が不要となる。さらに、各ポンプ70は、処方オーダのみならず、ポンプ70にセットされる投与薬液の流量の閾値も得ることができる。
【0091】
図10は、端末装置60で表示される操作画面を表した図である。
【0092】
図10に示されるように、端末装置60は、ユーザ操作等に基づき、操作画面66をディスプレイ622に表示させる。たとえば後述するオーダ変更ボタン669がユーザのタッチ操作で選択されることにより、端末装置60は、操作画面66をディスプレイ622に表示させる。
【0093】
操作画面66は、複数のタブ661(詳しくは、タブ661A~661E)を含む。各タブ661には、ポンプ70が対応付けられている。タブ661Aには、輸液ポンプ70Aが対応付けられている。同様に、タブ661B~661Eには、それぞれ、輸液ポンプ70B、シリンジポンプ70C、シリンジポンプ70D、シリンジポンプ70Eが対応付けられている。
【0094】
さらに、各タブ661には、異なる薬液の情報が対応付けられている。本例では、タブ661A~661Eには、薬液として、それぞれ、プロポフォール、ロクロニウム、ミダゾラム、フェンタニル、エフェドリンが対応付けられている。
【0095】
図10の例では、タブ661Aが選択された状態となっており、輸液ポンプ70Aにセットされたプロポフォールに関する情報が表示されている。操作画面66は、選択されたタブ661の薬液の現在の流量の設定値(第1の設定値)を表示する表示領域662と、変更後の設定値を表示する表示領域663と、テンキーボタン664と、決定ボタン665と、変更ボタン666と、オーダ変更ボタン669とを有する。なお、テンキーボタン664と、決定ボタン665と、変更ボタン666と、オーダ変更ボタン669とは、それぞれ、ソフトウェアキーである。
【0096】
タブ661Aが選択された状態では、輸液ポンプ70Aにセットされたプロポフォールの流量の設定値が変更可能となる。ユーザは、テンキーボタン664を用いて、新たな設定値(第2の設定値,変更後の設定値)を入力する。本例では、ユーザは、流量が30mL/hとなるように、“30”を入力している。これにより、表示領域663に、入力された数値“30”が表示される。ユーザが決定ボタン665を選択することにより、流量の新たな設定値が決定する。
【0097】
その後、ユーザが変更ボタン666を押下することにより、端末装置60は、プロポフォールを投与している輸液ポンプ70Aに対して変更指示を送信する。具体的には、端末装置60は、輸液ポンプ70Aに対して、新たな設定値を含む指示を送信する。
【0098】
このような一連の操作によれば、各ポンプ70における薬液の流量の設定値を他の装置を用いてポンプ70を取り違えることなく変更することができる。
【0099】
図11は、図10に基づき説明した設定値の変更処理の流れを説明するためのシーケンス図である。
【0100】
図11に示されるように、シーケンスSQ11において、端末装置60は、輸液ポンプ70Aを指定(選択)する操作を受け付ける。具体的には、端末装置60は、図10に示したタブ661Aを選択するタッチ操作を受け付ける。なお、タブ661Aが既にアクティブ状態(選択状態)となっている場合には、当該タッチ操作は不要である。
【0101】
シーケンスSQ12において、端末装置60は、薬液#1(本例では、プロポフォール)の流量の設定値の変更操作を受け付ける。具体的には、テンキーボタン664と、決定ボタン665とに対する操作を受け付ける。端末装置60は、決定ボタン665が選択されると、シーケンスSQ13において、予め定められた信号(通知信号)を輸液ポンプ70Aに送信する。
【0102】
輸液ポンプ70Aは、通知信号を受信すると、シーケンスSQ14において、予め定められた報知を実行する。典型的には、輸液ポンプ70Aは、警報ランプ76を点灯する。たとえば、輸液ポンプ70Aは、警報ランプ76を所定のパターンで点滅させる。輸液ポンプ70Aは、警報ランプ76の点灯とともに、スピーカ75から所定の音声出力を行ってもよい。輸液ポンプ70Aは、報知を開始すると、シーケンスSQ15において、予め定められた信号(通知信号)を端末装置60に送信する。
【0103】
端末装置60は、シーケンスSQ16において、通知信号を輸液ポンプ70Aから受信したことを条件に、上記新たな設定値を送信する操作を受け付ける。具体的には、端末装置60は、操作画面66の変更ボタン666の押下操作を受け付け可能とする。
【0104】
端末装置60は、上記新たな設定値を送信する操作を受け付けと、シーケンスSQ17において、当該新たな設定値を含む情報を輸液ポンプ70Aに送信する。輸液ポンプ70Aは、上記新たな設定値を含む情報を受信すると、シーケンスSQ18において、報知を終了する。
【0105】
輸液ポンプ70Aは、シーケンスSQ19において、ユーザが操作パネル77の決定ボタン771Jを押下したことを検知すると、シーケンスSQ20において、流量の設定値の変更(更新)を行なう。具体的には、輸液ポンプ70Aは、端末装置60において入力された値となるように、流量の設定値を現在の設定値から上記新たな設定値に変更する。その後、シーケンスSQ21において、輸液ポンプ70Aは、変更後の設定値で薬液#1を患者に投与する。すなわち、輸液ポンプ70Aは、端末装置60から指示された新たな設定値で、薬液#1を患者に投与する。
【0106】
なお、シーケンスSQ15に示した処理は必須ではない。すなわち、シーケンスSQ13で通知信号を送信したことを条件に、上記新たな設定値を送信する操作を受け付けるように、端末装置60を構成してもよい。あるいは、シーケンスSQ12の処理またはシーケンスSQ13の処理の後、所定の時間経過後に、シーケンスSQ16に操作を受け付け可能とするように、端末装置60を構成してもよい。
【0107】
上記においては、輸液ポンプ70Aの流量の設定値の変更を例に挙げて説明したが、他のポンプ70(輸液ポンプ70B、シリンジポンプ70C,70D,70E)における設定値の変更も輸液ポンプ70Aの場合と同様に行なわれる。
【0108】
本実施の形態の通信システム2を小括すると、以下のとおりである。
【0109】
(1)通信システム2は、各々が薬液を患者に投与可能な複数のポンプ70と、複数のポンプ70の各々と通信可能な端末装置60とを備える。複数のポンプ70のうちの1つは、患者に対して投与する投与薬液の識別情報(典型的には、名称)と投与薬液の流量の第1の設定値(現在の設定値)とを含む処方オーダを端末装置60から受信し、かつ、第1の設定値に基づき患者に投与薬液を投与する。
【0110】
端末装置60は、流量の設定値を第1の設定値から第2の設定値(新たな設定値)に変更する指示を受け付けたことに基づき(シーケンスSQ12)、当該投与薬液を投与しているポンプ70に対して、第2の設定値を送信する(シーケンスSQ17)。
【0111】
当該投与薬液を投与しているポンプ70は、第2の設定値を受信した後に決定ボタン771Jに対する操作(第1の操作)を受け付けたことを条件に(シーケンスSQ19)、流量の設定値を第1の設定値から第2の設定値に変更する(シーケンスSQ20)。当該投与薬液を投与しているポンプ70は、第2の設定値に基づき患者に投与薬液を投与する(シーケンスSQ21)。
【0112】
このような構成によれば、各ポンプ70における薬液の流量の設定値を端末装置60によって変更できる。すなわち、ポンプ70に対して、新たな設定値を直接入力する必要がなくなる。また、端末装置60で、複数のポンプ70の流量の設定値を変更可能となる。
【0113】
(2)端末装置60が、複数のポンプ70のうちから投与薬液を投与しているポンプ70を指定する操作(第2の操作)を受け付けると(シーケンスSQ11)、当該投与薬液を投与しているポンプ70に、予め定められた信号を送信する(シーケンスSQ13)。当該投与薬液を投与しているポンプ70は、上記予め定められた信号を受信すると、予め定められた報知を開始する(シーケンスSQ14)。端末装置60は、報知の開始後に変更ボタン666に対する操作(第3の操作)をさらに受け付けたことを条件に、当該投与薬液を投与しているポンプ70に第2の設定値を送信する(シーケンスSQ17)。
【0114】
このような構成によれば、上記報知により、ユーザは、どのポンプ70の設定値を変更しようとしているか否かを、ポンプ70において容易に確認できる。それゆえ、上記報知が行なわれない構成に比べて、ユーザの操作ミスを低減できる。
【0115】
(3)上記投与薬液を投与しているポンプ70は、第2の設定値を受信すると、上記報知を終了する(シーケンスSQ18)。このような構成によれば、ユーザは、手動で報知を終了させる必要がなくなるとともに、ポンプ70が第2の設定値を受信したことを判別できる。
【0116】
<変形例>
(1)流量の設定値を現在の設定値(第1の設定値)から新たな設定値(第2の設定値)に変更する指示をサーバ50が端末装置60に送信するように、通信システム2を構成してもよい。この場合、端末装置60は、新たな設定値をポンプ70に送信することになる。ポンプの指定は、サーバ50によってなされてもよいし、あるいは、端末装置60によってなされてもよい。
【0117】
(2)いずれかのポンプ70において異常が発生じた場合、どのポンプ70で異常が発生したかをラックシステム3のユーザが判断しやすいように、異常が発生しているポンプ70の警報ランプ76が発光するように、各ポンプ70を構成してもよい。この場合、端末装置60は、異常が発生しているポンプ70からの通知により、異常が発生したポンプ70の識別情報(名称等)とポンプ70に異常が発生していることとを報知(表示および/または音声出力)することが好ましい。また、端末装置60は、異常の内容(警報の種類)も報知することが好ましい。
【0118】
さらに、端末装置60は、警報の種類だけではなく、異常の原因を除去するためのガイダンスをディスプレイ622に表示することが好ましい。なお、ガイダンスを表示するためのデータは、端末装置60のメモリ612に予め記憶されていてもよい。あるいは、端末装置60が、都度、当該データをサーバ50等から取得してもよい。
【0119】
(3)図9においては、流量の上限値および下限値をポンプ70に送信する場合を例に挙げて説明したが、上限値および下限値のうちの一方の値を送信するように、端末装置60を構成してもよい。
【0120】
また、図8においては、「流量の閾値」と「投与量の閾値」と「投与速度の閾値」との3種類の閾値のうち、流量の閾値のみをポンプ70に送信する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。当該3種類の閾値のうち、少なくとも1種類の閾値を端末装置60がポンプ70に送信する構成であればよい。たとえば、流量の閾値と投与量の閾値とをポンプ70に送信するように、端末装置60を構成してもよい。
【0121】
流量の閾値と同様、投与量の閾値のうち上限値および下限値の少なくとも一方をポンプ70に送信するように、端末装置60を構成してもよい。同様に、投与速度の閾値のうち上限値および下限値の少なくとも一方をポンプ70に送信するように、端末装置60を構成してもよい。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
1 ネットワークシステム、2 通信システム、3 ラックシステム、9 看護師、10,60 端末装置、20,30,40,50 サーバ、51,61,71 制御ユニット、53,64,73 時計、62 タッチスクリーン、66 操作画面、70A,70B 輸液ポンプ、70C,70D,70E シリンジポンプ、74 駆動部、75 スピーカ、76 警報ランプ、77 操作パネル、90 シリンジ、91 バレル、92 プランジャロッド、511,611,711 プロセッサ、512,612,712 メモリ、621 タッチパネル、622,772,773 ディスプレイ、661,661A,661E タブ、662,663 表示領域、664 テンキーボタン、665,771J 決定ボタン、666 変更ボタン、669 オーダ変更ボタン、741 押圧面、771 操作ボタン、771A 電源ボタン、771B,771C メニューボタン、771D 積算量クリアボタン、771E,771F 流量設定ボタン、771G ボーラスボタン、771H 開始ボタン、771I 停止または消音ボタン、921 フランジ、D3 薬剤ライブラリデータ、D41,D42,D43,D44 処方リストデータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11