(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149979
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ガス遮断装置
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01F3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058825
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222211
【氏名又は名称】東洋ガスメーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅木 輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】岩本 龍志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】志村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】浅田 昭治
(72)【発明者】
【氏名】松井 彰
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】水越 靖
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 彰
(72)【発明者】
【氏名】段 祐司
(72)【発明者】
【氏名】和田 雄志
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CB02
2F030CC13
2F030CD08
2F030CE17
(57)【要約】
【課題】脈動や呼吸現象による瞬時流量の変動で漏洩と判定する誤判定を抑制できるガス遮断装置を提供する。
【解決手段】流量計測部により計測した瞬時流量から流量演算部により算出した流量値を流量積算部で所定間隔ごとに積算し、流量出現判定部で積算流量値が所定流量以上と判定された場合、流量算出部で判定されるまでに積算された積算流量値とそれまでに要した時間とから流量を算出し、口火流量登録・出現判定部で算出された流量が登録口火流量か否かの判定を行うことで正確に流量有無を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に接続され、ガス流量の瞬時流量を所定間隔で計測する流量計測部と、
前記流量計測部で計測された瞬時流量から流量値を算出する流量演算部と、
前記流量演算部の流量値を単位積算期間の間積算する流量積算部と、
前記流量積算部で積算された積算流量値を基に流量が出現したか否かを判定する流量出現判定部と、
前記流量出現判定部の判定で流量が出現したと判定された場合、前記流量積算部で積算された積算流量値と前記積算流量値が所定の積算判定値を超えるまでに要した時間から流量を算出する流量算出部と、
前記流量算出部で算出された流量が予め設定された所定流量範囲内である場合、口火流量の登録、もしくは口火流量出現と判定する口火流量登録・出現判定部と、
前記流量出現判定部の判定結果と前記口火流量登録・出現判定部の判定結果からガスが漏洩しているか否かを判定する漏洩判定部と、を備え、
前記漏洩判定部は、所定時間の間に、口火流量出現したと判定されなかった場合、漏洩と判定することを特徴とするガス遮断装置。
【請求項2】
前記流量算出部を有する流量出力部と、前記流量算出部と異なる方法で流量の算出を行う流量算出部を有する少なくとも1つの流量出力部を有し、
前記口火流量登録・出現判定部は、前記流量出力部および前記少なくとも1つの流量出力部で得られた流量に基づき、口火流量の登録、もしくは口火流量出現と判定することを特徴とする請求項1に記載のガス遮断装置。
【請求項3】
前記複数の流量出力部による流量の算出の実行を所定の条件で切り換え、若しくは、並行して行うことを設定する判定方式選択部を備えることを特徴とする請求項2に記載のガス遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩の有無を検出するガス遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス遮断装置ではガスの漏洩を検知して警報や遮断を行う機能がある。
【0003】
その漏洩検知は、例えば、ガス配管内の流量を監視し、所定条件によってガス流量の有無を判定し、流量なしを判定した際は漏洩判定タイマをクリアし、流量ありを判定した際は漏洩判定タイマをカウントして、漏洩判定タイマが所定期間(例えば、30日間)経過したときに漏洩ありと判定し、警報や遮断を行うものが一般的な動作である。従って、漏洩有無判定においては、流量有無を確実に判定することが必要となる。
【0004】
また、都市ガスにおいては、ガス供給圧の変動、ガスエンジン・ヒートポンプ・エアコンなどのガス機器を使用することによる圧力変動(以下、脈動という)、又は、日中の温度変化(上昇・低下)などの影響によるガス配管内の圧力変動に起因する長時間にわたるガスの流れ(以下、呼吸現象という)が発生する。そのため、それらを考慮した上で流量有無を判定して、漏洩有無を判定することが検討されたり、口火のあるガス機器の使用時に、あらかじめ口火流量を登録しておき、登録した口火流量と実際のガス流量との比較を流量有無の判定に加味することで、ガスの漏洩と誤検知しないようにしたものがある。
【0005】
例えば、特許文献1は、計測した瞬時流量から算出した区間平均流量(例えば、2分間の平均流量)が登録流量範囲(例えば、5.5L/h~51.82L/h)に収まっている場合で、区間平均流量を算出した瞬時流量の最大値と最小値の差が所定値(例えば、15L/h)未満かつ、連続した2回の区間平均流量の差が所定値(例えば、1.5L/h)である場合に、2回の区間平均流量の平均流量を口火登録流量として登録するものである。
【0006】
そして、計測した区間平均流量と口火登録流量との差が登録流量の所定比率(例えば、5%)、または平均判定流量(例えば、1.5L/h)以内となった場合に、流量なしと判定するとともに漏洩判定タイマを初期化し、それ以外は流量ありと判定する。流量ありの状態で漏洩判定タイマが所定時間継続した場合に漏洩ありと確定することで漏洩警告の誤判定を防止したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ガス配管にガスの漏洩がなく、ガス未使用の状態であっても、脈動による瞬時流量の変動に基づく大きなばらつきが生じた場合、口火流量が登録できず、口火のあるガス機器を使用した際に漏洩ありと誤判定してしまう可能性がある。或いは、口火流量が登録できたとしても本来の口火流量ではない流量を登録してしまい、脈動が収まった時に口火流量を流量ありと誤判定し、漏洩警告が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、漏洩検知の誤判定を抑制できるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るガス遮断装置は、ガス供給管に接続され、ガス流量の瞬時流量を所定間隔で計測する流量計測部と、前記流量計測部で計測された瞬時流量から流量値を算出する流量演算部と、前記流量演算部の流量値を単位積算期間積積算する流量積算部と、前記流量積算部で積算された積算流量値を基に流量が出現したか否かを判定する流量出現判定部と、前記流量出現判定部の判定で流量が出現したと判定された場合、前記流量積算部で積算された積算流量値と積算流量値が所定の積算判定値を超えるまでに要した時間から流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部で算出された流量が予め設定された所定流量範囲内である場合、口火流量の登録、もしくは口火流量出現と判定する口火流量登録・出現判定部と、前記流量出現判定部の判定結果と前記口火流量登録・出現判定部の判定結果からガスが漏洩しているか否かを判定する漏洩判定部と、を備え、前記漏洩判定部は、所定時間の間に、口火流量出現したと判定されなかった場合、漏洩と判定することを特徴とするものである。
【0011】
これによって、実際にはガスの使用がないのにもかかわらず、脈動によって、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動することで、所定時間ごとに流量計測部で測定された瞬時流量に正又は負のばらつきがあった場合でも、以下のようにすることができる。即ち、流量計測部で計測された瞬時流量(L/h)を流量演算部で流量値(L)に変換し、その流量値を流量積算部で積算流量値として積算することで、実際に配管内を移動したガスの体積を把握することが可能になる。また、積算流量値および積算に要した時間に基づいて算出した流量を用いることで、より正確に口火流量の登録および口火流量の出現判定ができるようになり、より正確に流量有無を判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス遮断装置を用いることにより、実際にはガスの使用がないのにもかかわらず、脈動によって、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動した場合でも、実際に配管内を移動したガスの体積量を流量積算部で積算することが可能になる。また、流量積算部で積算された積算流量値と、流量出現判定部で積算された積算流量値が所定の積算判定値を超えるまでに要した時間に基づき、流量算出部で流量を算出し、その算出した流量に基づき口火流量登録・出現判定部で口火流量登録、出現判定を行う。これによって、より正確に口火流量登録や出現を判定することができ、より正確に流量有無の判定ができるようになり、漏洩の誤判定を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるガスメータのブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における口火流量登録、出現判定の動作手順を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態2におけるガスメータのブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態2における口火流量出現判定の動作手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、ガス供給管に接続され、ガス流量の瞬時流量を所定間隔で計測する流量計測部と、前記流量計測部で計測された瞬時流量から流量値を算出する流量演算部と、前記流量演算部の流量値を単位積算期間積算する流量積算部と、前記流量積算部で積算された積算流量値を基に流量が出現したか否かを判定する流量出現判定部と、前記流量出現判定部の判定で流量が出現したと判定された場合、前記流量積算部で積算された積算流量値と積算流量値が所定の積算判定値を超えるまでに要した時間から流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部で算出された流量が予め設定された所定流量範囲内である場合、口火流量の登録、もしくは口火流量出現と判定する口火流量登録・出現判定部と、前記流量出現判定部の判定結果と前記口火流量登録・出現判定部の判定結果からガスが漏洩しているか否かを判定する漏洩判定部と、を備え、前記漏洩判定部は、所定時間の間に、流量なしと判定されなかった場合、漏洩と判定することを特徴とするものである。
【0015】
これにより、実際にはガスの使用がないのにもかかわらず、脈動によって、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動した場合でも、実際に配管内を移動したガスの体積量を流量積算部で積算することが可能になる。また、流量出現判定部で積算されたバッファ値が所定の積算判定値を超えるまでに要した時間に基づき、流量算出部で流量を算出し、その算出した流量に基づき口火流量登録・出現判定部で口火流量登録、出現判定を行う。これによって、より正確に口火流量登録および口火流量の出現を判定することができ、より正確に流量有無の判定ができるようになり、漏洩の誤判定を防止することが可能となる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記流量算出部を有する流量出力部と、前記流量算出部と異なる方法で流量の算出を行う流量算出部を有する少なくとも1つの流量出力部を有し、前記口火流量登録・出現判定部は、この複数の流量出力部で得られた流量に基づき、口火流量の登録、もしくは口火流量出現と判定することを特徴とする。これにより、設置状況に応じて流量有無判定を最適化できる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、前記複数の流量出力部による流量の算出の実行を所定の条件で切り換え、若しくは、並行して行うことを設定する判定方式選択部を備えることを特徴とする。これにより、複数の流量の出現判定や、流量の算出方法を所定の条件で切り換え、もしくは、並行に処理することを設定することができるため、市場で環境や状況に応じた判定方法を選択可能となる。
【0018】
以下、図面を参照しながら、ガス遮断装置の具体例としてガスメータを例に、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0019】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガスメータのブロック図を示すものである。
【0021】
図1において、ガスメータ1は、ガス供給管aに設置され、その下流側の配管には、各ユーザー宅に設置された1台以上のガス器具が接続されている(図示せず)。また、ガスメータ1は、流量計測部2、流量演算部3、流量積算部4、流量出現判定部5、流量算出部6、口火流量登録・出現判定部7、漏洩判定部8、制御部9、外部通信部10により構成されている。
【0022】
流量計測部2は、ガス供給管aに設置され、超音波信号を用いてガス供給管a内のガス流量により生じる伝搬時間差を求め、当該伝搬時間差に基づきガスの瞬時流量を検出するものである。
【0023】
流量演算部3は、流量計測部2により一定時間間隔で検出された瞬時流量を基に、ガス流量値を算出するものである。この流量計測部2と流量演算部3により流量計測の機能を実現する。
【0024】
流量積算部4は、流量演算部3が算出した流量値を当該流量積算部4が有する積算バッファ(図示せず)に積算して積算流量値を取得するものである。
【0025】
流量出現判定部5は、流量積算部4で積算された積算流量値が所定の積算判定値以上か否かを判定し、積算バッファに積算された時間を計時し、その積算された時間が単位積算期間を経過したか否かを判定することで流量が出現したか否かを判定するものである。
【0026】
流量算出部6は、流量出現判定部5で流量が出現したと判定された場合、流量積算部4の積算流量値が所定の積算判定値を超えるまでに要した時間と、それまでの積算流量値とから、流量を算出するものである。
【0027】
口火流量登録・出現判定部7は、流量算出部6で算出された流量が口火登録流量範囲内か否かを判定することで、出現した流量が口火登録流量か否かを判定するものである。また、この判定結果により、漏洩判定部8で用いる流量有無の判定も行う。
【0028】
漏洩判定部8は、所定時間の間に流量なしと判定されなかった場合に漏洩と判定するものである。詳細には、漏洩判定部8は、口火流量登録・出現判定部7において、流量算出部6で算出した流量が所定の登録口火流量範囲内と判定された場合は、次の処理を行う。即ち、漏洩判定部8は、流量積算部4で得られた積算流量値を口火流量によるものと判断し、漏洩判定部8で用いる流量有無の判定としては流量なしと見做して、所定時間を計時する漏洩判定タイマをリスタートする。一方、漏洩判定部8は、流量算出部6で算出した流量が所定の登録口火流量範囲内ではないと判定された場合は、次の処理を行う。即ち、漏洩判定部8は、漏洩判定部8で用いる流量有無の判定としては流量ありと見做して、漏洩判定タイマをカウントし、漏洩判定タイマによる計時が所定時間経過したか否かを判定することで漏洩有無判定を行う。この場合、漏洩判定部8は漏洩判定タイマによる計時が所定時間経過した場合に漏洩ありと確定する。
【0029】
制御部9は、ガスメータ1内の各部の動作制御の他、口火流量登録・出現判定部7による口火流量か否かの判定結果および漏洩判定部8の漏洩判定の確定に基づき警告又はガスの遮断などの保安処理などを行うものである。
【0030】
外部通信部10は、流量出現判定部5における所定の積算判定値および単位積算期間の設定変更の他、漏洩判定部8による漏洩判定が確定した際に警告又は遮断情報などを外部に通知するものである。
【0031】
図2は、実施の形態1においてガスメータ1が実施する口火流量出現の判定動作手順の概略フローチャートである。以下、
図1と
図2を用いて、ガスメータ1が実施する口火流量出現判定動作について説明する。
【0032】
図1と
図2において、流量計測部2の瞬時流量の計測間隔を例えば2秒とする。また、以降の説明で、計時タイマT1(図示せず)は単位積算期間(例えば、60分)を計時するもので、漏洩判定タイマT2(図示せず)は所定時間(例えば、30日)を計時するものである。
【0033】
先ず、流量計測部2によりガス供給管aに流れる瞬時流量を計測する(ステップS1)。
【0034】
次に、流量演算部3が流量計測部2により計測した瞬時流量から流量値を算出する(ステップS2)。
【0035】
次に、流量積算部4は、所定期間である単位積算期間(例えば、60分)における流量値を積算するための上記の積算バッファを有しており、流量演算部3からの流量値を前記積算バッファに積算して積算流量値を取得する(ステップS3)。
【0036】
次に、流量出現判定部5は、前記積算バッファの積算流量値が所定の積算判定値(例えば、1.1L)以上か否かを判定する(ステップS4)。
【0037】
前記積算バッファの積算流量値が前記所定の積算判定値未満の場合(ステップS4:No)、流量は出現していないと判定し、単位積算期間の計時タイマT1をカウントし(図示せず)、計時タイマT1による計時が単位積算期間を経過したか否かの判定を行う(ステップS5)。計時タイマT1による計時が単位積算期間を経過していない場合(ステップS5:No)、前記単位積算期間の計時タイマT1のカウントを継続し(図示せず)、瞬時流量計測(ステップS1)に戻る。一方、計時タイマT1による計時が単位積算期間を経過した場合(ステップS5:Yes)、後記のステップS8の処理に進む。
【0038】
次に、流量算出部6は、前記積算バッファの積算流量値が前記所定の積算判定値以上になった場合(ステップS4:Yes)、流量が出現したと判定し、積算バッファ値と計時タイマT1の経過時間とから流量Qtを算出する(ステップS6)。
【0039】
次に、口火流量登録・出現判定部7は、流量Qtが所定の登録口火流量範囲内であるか否かの判定を行う(ステップS7)。流量Qtが所定の登録口火流量範囲内である場合(ステップS7:Yes)、流量Qtは登録口火流量であると判定し、流量Qtが所定の登録口火流量範囲内でない場合(ステップS7:No)、流量Qtは登録口火流量でないと判定する。
【0040】
そして、漏洩判定部8は、流量出現判定部5で積算流量値が所定の積算判定値未満である時間が単位積算期間経過した場合(ステップS5:Yes)、もしくは口火流量登録・出現判定部7で流量Qtが登録口火流量であると判定された場合(ステップS7:Yes)、流量なしと見做して、漏洩判定タイマT2をリスタートする(ステップS8)。
【0041】
一方、漏洩判定部8は、流量Qtが登録口火流量でないと判定された場合、(ステップS7:No)、流量ありと見做して、漏洩判定タイマT2のカウントを継続し(図示せず)、漏洩判定タイマT2が所定時間(例えば、30日)経過したか否かを判定し(ステップS9)する。
【0042】
漏洩判定タイマT2による計時が所定時間経過していない場合(ステップS9:No)は、瞬時流量計測(ステップS1)に戻る。一方、漏洩判定タイマT2による計時が所定時間経過した場合(ステップS9:Yes)、漏洩判定部8は、漏洩ありと確定する(ステップS10)。
【0043】
なお、ここで流量積算部4の単位積算期間を最適な値に設定できるようにしてもよく、外部通信部8によって外部から設定することを可能にしてもよい。
【0044】
以上のように本実施の形態1においては、実際にはガスの使用がないのにもかかわらず、脈動によって、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動したことで、所定時間ごとに流量計測部2で測定された瞬時流量に正又は負のばらつきがあった場合でも、以下のようにすることができる。即ち、流量計測部2で計測された瞬時流量(L/h)を流量演算部3で流量値(L)に変換し、その流量値を流量積算部4で積算流量値として積算することで、実際に配管内を移動したガスの体積量を把握することが可能になる。また、流量算出部6による積算流量値および積算に要した時間に基づいた流量を、口火流量登録・出現判定部7において用いることで、より正確に口火流量登録や出現を判定することができる。そのため、より正確に流量有無の判定ができるようになり、漏洩の誤判定を防止することが可能となる。
【0045】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2におけるガスメータのブロック図を示すものである。
【0046】
図3において、ガスメータ1は、上述した
図1の構成に加え、第一流量出力部11と、第二流量出力部12と、判定方式選択部13と、をさらに備えている。
【0047】
また、第一流量出力部11は、流量積算部4と、流量出現判定部5と、流量算出部6と、から構成されており、実施の形態1の
図1および
図2で説明した動作を行うものである。
【0048】
一方、第二流量出力部12は、第一流量出力部11とは異なる方法で流量の出現判定や、流量の算出を行うものである。具体的には、第二流量出力部12は、例えば、特許文献1に記載されたように、区間演算手段、移動平均流量演算手段、流量判定手段、第一判定手段、第二判定手段、流量有無判定手段(何れも、図示せず)から構成されている。
【0049】
そして、第一流量出力部11と第二流量出力部12は、流量が出現したと判定された場合の流量を口火流量登録・出現判定部7に伝える構成になっている。
【0050】
判定方式選択部13は、外部通信部10によって外部から設定された所定の条件をもとに、第一流量出力部11と、第二流量出力部12と、のどちらかを使用して処理させるかを切り換えるか、もしくは第一流量出力部11および第二流量出力部12を並行に使用して処理させるかの設定を行うものである。なお、上記所定の条件は、一例として、ガスメータ1の設置環境における脈動の起き易さを当該ガスメータ1ごとに数値化し、当該数値と閾値との比較に基づき規定付けられるものである。
【0051】
以下、本実施の形態の第二流量出力部12における処理について、
図4を用いて説明する。
【0052】
図4において、第二流量出力部12は、まず、区間演算手段にて流量計測部2で計測された瞬時流量を第1所定区間蓄積して区間平均流量を演算し、移動平均流量演算手段にて区間平均流量の連続するN個から移動平均を算出し、第2所定区間分保持する。
【0053】
次に、該当流量判定手段にて、第2所定区間の移動平均流量の最大値と最小値の差が閾値未満か否かを判定し、閾値未満と判定された区間平均流量を保持する。
【0054】
次に、第一判定手段にて、該当流量判定手段で保持されている区間平均流量が第1所定範囲内か否かを判定する。第二判定手段にて、区間平均流量の算出に用いた流量を求めた瞬時流量の最大値と最小値の差が第2所定範囲内か否かを判定する。第一判定手段で第1所定範囲内かつ、第二判定手段で第2所定範囲内と判定された区間平均流量を蓄積し、流量有無判定手段でM個の区間平均流量が蓄積された場合に蓄積された区間平均流量から蓄積平均流量を算出する。そして、流量有無判定手段にて、前記の蓄積平均流量が平均判定流量未満の場合に流量なしと判定し、平均判定流量以上の場合は流量が出現したと判定するものである。
【0055】
図4は、実施の形態2においてガスメータ1が実施する口火流量出現の判定動作手順の概略フローチャートである。以下、
図3と
図4を用いて、ガスメータ1が実施する口火流量出現判定動作について説明する。
【0056】
先ず、外部通信部10により外部から設定された所定の条件をもとに、判定方式選択部13にて第一流量出力部11の処理を行うか否かの判定(ステップS11)を行う。第一流量出力部11の処理を行う場合(ステップS11:Yes)、第一流量出力部11で第一流量出力処理を行う(ステップS12)。一方、第一流量出力部11の処理を行わない場合(ステップS11:No)、後記のステップS15の処理に進む。
【0057】
次に、第一流量出力部11の処理における結果より、口火流量登録・出現判定部7で登録口火流量か否かを判定することで流量有無を判定する(ステップS13)。流量なしと判定された場合(ステップS13:Yes)、漏洩判定部8の漏洩判定タイマT2をリスタートし(ステップS14)、判定方式選択部13で第二流量出力部12の処理を行うか否かの判定をする(ステップS15)。一方、流量なしと判定されなかった場合(ステップS13:No)、前記のステップS15の処理に進む。
【0058】
第二流量出力部12の処理を行う場合(ステップS15:Yes)、第二流量出力部12で第二流量出力処理を行い(ステップS16)、第二流量出力部12の処理における結果より、口火流量登録・出現判定部7で登録口火流量か否かを判定することで流量有無を判定する(ステップS17)。流量なしと判定された場合(ステップS17:Yes)、漏洩判定部8の漏洩判定タイマT2をリスタートする(ステップS18)。一方、第二流量出力部12の処理を行わない場合(ステップS15:No)、および流量なしと判定されなかった場合(ステップS17:No)、後記のステップS19の処理に進む。
【0059】
そして、漏洩判定部8の漏洩判定タイマの経過を判定し(ステップS19)、所定時間(例えば、30日)が経過した場合、漏洩ありの判定を確定する(ステップS20)。
【0060】
以上のように本実施の形態2においては、第一流量出力部11と第二流量出力部12による2つの流量出力部を設けている。これにより、この2つの流量の出現判定や、流量の算出方法を所定の条件で切り換え、もしくは、並行に処理し、どちらか一方において、流量なしの判定をすると、漏洩判定部8の漏洩判定タイマT2のリスタートを行う。また、第一流量出力部11および第二流量出力部12が両方とも流量ありを判定することにより、漏洩判定部8の漏洩判定タイマT2のカウントが継続され、漏洩判定タイマT2が所定時間経過することにより、より正確に漏洩の検知をすることができ、漏洩の誤警報或いは誤遮断を防ぐことが可能になる。また、判定方法を切り換え、もしくは並行に設定できるため、市場で環境や状況に応じた判定方法を選択可能になる。
【0061】
例えば、脈動が起きやすい環境下では、瞬時流量に大きなばらつきが生じるため、第二流量出力部12の処理では瞬時流量の最大値と最小値の差が所定範囲外となりやすくなり、流量なしと判定されず、流量ありと誤判定される可能性や、算出された流量が口火流量範囲内であるか否かを正確に判定できない可能性がある。そのため、判定方式選択部12により第一流量出力部11を処理させるように設定することで、正負の瞬時流量のばらつきを流量値に変換し積算することが可能となる。このように積算することで正又は負のばらつきを相殺できるようになり、より正確に流量の出現判定および口火流量であるか否かの判定を行うことができ、漏洩の誤警報或いは誤遮断を防ぐことが可能になる。
【0062】
また、長時間にわたるガスの流れが発生する呼吸現象では、長時間安定している流量を監視できる第二流量出力部12による処理の方が優位であることから、第二流量出力部12を選択することで、より正確に流量有無および口火流量であるか否かを判定することが可能となる。
【0063】
更に、第一流量出力部11と第二流量出力部12を並列で実行する場合には、どちらか一方の判定で流量ありと誤判定した場合や、流量ありとなった流量が登録口火流量範囲外であると判定した場合でも、もう一方の判定で流量なしの判定、または登録口火流量範囲内であると判定される。このことで、漏洩判定タイマがリスタートされ、より正確に漏洩の検知をすることができ、漏洩の誤警報或いは誤遮断を防ぐことが可能になる。
【0064】
なお、本実施の形態では、第一流量出力部11および第二流量出力部12の2つの流量出力部で説明したが、この2つの判定方法と異なる他の流量出力部を加えて、判定方式選択部13が、これら複数の流量出力部を選択、或いは組み合わせるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係るガス遮断装置は、脈動が発生しているような環境下であっても流量の出現判定および口火流量であるか否かの判定を行うことができることから、本発明の対象はこれに限定されず、他の可燃性ガス、非可燃性ガス等も含み、水や気体の漏れを検出する方式にも適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 ガスメータ
2 流量計測部
3 流量演算部
4 流量積算部
5 流量出現判定部
6 流量算出部
7 口火流量登録・出現判定部
8 漏洩判定部
9 制御部
10 外部通信部
11 第一流量出力部
12 第二流量出力部
13 判定方式選択部