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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149980
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ガス遮断装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01F3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058826
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222211
【氏名又は名称】東洋ガスメーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅木 輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】岩本 龍志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】志村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】浅田 昭治
(72)【発明者】
【氏名】松井 彰
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】水越 靖
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 彰
(72)【発明者】
【氏名】段 祐司
(72)【発明者】
【氏名】和田 雄志
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CB02
2F030CC13
2F030CE04
2F030CE09
2F030CE17
2F030CF10
2F030CF11
(57)【要約】
【課題】実際に流れる流量がマイナス側にシフトしているか否かを所定時間ごとに監視することで、より正確にマイナス側の流量のシフトを検知することができるガス遮断装置を提供する。
【解決手段】流量計測部により計測した瞬時流量から流量演算部で流量値を算出し、算出された流量値を積算部で所定期間である単位積算期間積算バッファに積算し、次に、所定期間である単位積算期間が経過した時点で、前記第一判定部で積算された流量値が所定値未満と判定された回数をカウントし、その累積回数が所定回数以上である場合を成立とし、その成立が所定回連続した場合、流量がマイナス側にシフトしていると判定するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に接続され、ガス流量の瞬時流量を所定間隔で計測する流量計測部と、
前記流量計測部で計測された瞬時流量から流量値を算出する流量演算部と、
前記流量演算部の流量値を所定間隔ごとに積算する積算部と、
前記積算部で第1所定期間に積算された積算流量値が所定流量未満か否かを判定する第一判定部と、
前記第一判定部で積算流量値が所定流量未満であると判定させた回数が第1所定回数以上か否かを判定する第二判定部と、
第2所定期間内に、前記第二判定部でカウントした回数が第1所定回数以上であると判定した場合に、前記第2所定期間内の流量がマイナス側に流量シフトしていると判定し、その流量シフトの判定が第2所定回数成立した場合に流量シフト確定とする流量シフト判定部と、
を備えたことを特徴とするガス遮断装置。
【請求項2】
前記流量シフト判定部は、流量シフトの判定が第2所定回数連続して成立した場合に流量シフト確定することを特徴とする請求項1に記載のガス遮断装置。
【請求項3】
前記流量シフト判定部は、第3所定期間において、流量シフトの判定が第2所定回数成立した場合に流量シフト確定することを特徴とする請求項1に記載のガス遮断装置。
【請求項4】
前記流量シフト判定部と、前記流量シフト判定部と異なる判定方法でマイナス側の流量シフトを判定する少なくとも1つの流量シフト判定部を有し、
前記流量シフト判定部および前記少なくとも1つの流量シフト判定部で判定された1つ、若しくは複数の判定結果を用いて、マイナス側の流量シフトを判定することを特徴とする請求項1~3に記載のガス遮断装置。
【請求項5】
前記複数の流量シフト判定部の判定の実行を所定の条件で切り換え、もしくは、並行して行うことを設定する判定方式選択部を備えることを特徴とする請求項4に記載のガス遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量シフトの有無を検出するガス遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス遮断装置ではガスの漏洩を検知して警報や遮断を行う機能がある。
【0003】
例えば、ガス配管内の流量を監視し、所定条件によってガス流量の有無を判定し、流量なしを判定した際は漏洩判定タイマをクリアし、流量ありを判定した際は漏洩判定タイマをカウントして、漏洩判定タイマが所定期間(例えば、30日間)経過したときに漏洩していると判定し、警報や遮断を行うものが一般的な動作である。
【0004】
また、都市ガスにおいては、ガス供給圧の変動や、ガスエンジン、ヒートポンプ、若しくはエアコンなどのガス機器を使用することによる圧力変動(以下、脈動という)、日中の温度変化(上昇・低下)などの影響によるガス配管内の圧力変動に起因する長時間にわたるガスの流れ(以下、呼吸現象という)、又は、センサ特性や電子回路特性の経年変化等によって、流量のゼロ点のシフトが発生し、流量全体がプラス側或いはマイナス側にシフトしていることがある。
【0005】
流量全体がプラス側にシフトしていると、漏洩を判定する閾値(例えば、1.1L/h)を超えやすくなり、正確に流量なし判定ができず、漏洩していないにもかかわらず漏洩していると判定し、誤警報・遮断を起こす可能性がある。また、流量全体がマイナス側にシフトしていると、漏洩を判定する閾値を超えにくくなり、正確に流量あり判定ができず、実際は漏洩しているにもかかわらず、漏洩していないと判定し、警報・遮断を行わず、不安全となる可能性がある。
【0006】
このように漏洩判定においては、流量のゼロ点あるいは流量全体がシフトしているか否かを正しく判定することが重要であり、その検討がなされている。
【0007】
例えば、特許文献1では、区間平均流量(例えば、2分間の平均流量)から所定区間内(例えば、20分間)の移動平均流量を算出する。そして、前記所定区間内の最大移動平均流量と最小移動平均流量の差が所定範囲(例えば、0.5L/h)内である場合で、区間平均流量が所定範囲(例えば、±11L/h)内であって、区間平均流量を算出した瞬時流量の最大値と最小値の差が所定範囲(例えば、50L/h)内である、移動平均流量に含まれている区間平均流量をM個(例えば、30個)累積し平均した累積平均流量を取得する。取得した累積平均流量が、所定期間(例えば、30日)に所定流量(例えば、-3.5L/h)を所定回数(例えば、10回)下回った場合に、流量がマイナス側にシフトしていると判定される。流量がマイナス側にシフトしていると判定された場合は、漏洩判定タイマをクリアしない。
【0008】
漏洩判定タイマをクリアしないことで、所定期間経過すれば、漏洩ありと判定され、警報・遮断を行うため安全性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-205245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、流量がマイナス側にシフトしている際に、脈動による瞬時流量の変動により大きなばらつきが生じた場合、区間平均流量の算出に用いた瞬時流量の最大値と最小値の差が所定範囲外になることや、最大移動平均流量と最小移動平均流量の差が所定範囲外になることがある。そのため、瞬時流量の最大値と最小値の差および最大移動平均流量と最小移動平均流量の差のうちいずれかが所定範囲外になると、流量がシフトしているか否かを正しく判定できない可能性があるという課題があった。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、実際に流れる流量がマイナス側にシフトしているか否かを所定時間ごとに監視することで、より正確に流量のマイナス側シフトを検知することができるガス遮断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るガス遮断装置は、ガス供給管に接続され、ガス流量の瞬時流量を所定間隔で計測する流量計測部と、前記流量計測部で計測された瞬時流量から流量値を算出する流量演算部と、前記流量演算部の流量値を所定間隔ごとに積算する積算部と、前記積算部で第1所定期間に積算された積算流量値が所定流量未満か否かを判定する第一判定部と、前記第一判定部で積算流量値が所定流量未満であると判定させた回数が第1所定回数以上か否かを判定する第二判定部と、第2所定期間内に、前記第二判定部でカウントした回数が第1所定回数以上であると判定した場合に、前記第2所定期間内の流量がマイナス側に流量シフトしていると判定し、その流量シフトの判定が第2所定回数成立した場合に流量シフト確定とする流量シフト判定部と、を備えたものである。
【0013】
これによって、実際にはガスの使用がないのにもかかわらず、脈動による圧力変動に起因して、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動することを、所定時間ごとに流量計測部で測定することができる。そして、測定される瞬時流量に正若しくは負の変動又はばらつきがあった場合でも、流量計測部で計測された瞬時流量(L/h)を流量演算部で流量値(L)に変換し、その流量値を積算部で積算流量値を求めることで、実際に配管内を移動したガスの体積を把握することが可能になる。これによって、より正確に流量シフトが判定可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガス遮断装置を用いることにより、実際にはガスの使用がないのにもかかわらず、脈動による圧力変動に起因して、配管内のガスが上流側、もしくは下流側に移動して戻ってくる場合でも、実際に配管内を移動したガスの体積を把握することが可能になる。そして、積算部で積算された積算流量値に基づき、第一判定部、第二判定部および流量シフト判定部で流量がマイナス側にシフトしているか否かを判定することで、より正確に流量シフトが判定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1におけるガスメータのブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1における流量シフトの有無を判定する動作手順を示す図である。
図3】本発明の実施の形態2におけるガスメータのブロック図である。
図4】本発明の実施の形態2における流量シフトの有無を判定する動作手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、ガス供給管に接続され、ガス流量の瞬時流量を所定間隔で計測する流量計測部と、前記流量計測部で計測された瞬時流量から流量値を算出する流量演算部と、前記流量演算部の流量値を所定間隔ごとに積算する積算部と、前記積算部で第1所定期間に積算された積算流量値が所定流量未満か否かを判定する第一判定部と、前記第一判定部で積算流量値が所定流量未満であると判定させた回数が第1所定回数以上か否かを判定する第二判定部と、第2所定期間内に、前記第二判定部でカウントした回数が第1所定回数以上であると判定した場合に、前記第2所定期間内の流量がマイナス側に流量シフトしていると判定し、その流量シフトの判定が第2所定回数成立した場合に流量シフト確定とする流量シフト判定部と、を備えたものである。
【0017】
これにより、実際には流量がないのにもかかわらず、脈動による圧力変動に起因して、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動することを、所定時間ごとに流量計測部で測定し、測定された瞬時流量に正若しくは負の変動又はばらつきがあった場合でも、流量計測部で計測することができる。そして、計測された瞬時流量(L/h)を流量演算部で流量値(L)に変換し、その流量値を積算部で積算バッファに積算することで、実際に配管内を移動したガスの体積を把握することが可能になる。積算部で積算されたバッファ値に基づき、第一判定部、第二判定部および流量シフト判定部で流量がマイナス側にシフトしているか否かを判定することで、より正確に流量のシフトが判定可能となる。
【0018】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記流量シフト判定部は、流量シフトの判定が第2所定回数連続して成立した場合に流量シフト確定することを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記流量シフト判定部は、第3所定期間において、流量シフトの判定が第2所定回数成立した場合に流量シフト確定することを特徴とする。
【0020】
第4の発明は、第1~3の発明において、前記流量シフト判定部と、前記流量シフト判定部と異なる判定方法で流量のシフトを判定する少なくとも1つの流量シフト判定部を有し、前記流量シフト判定部および前記少なくとも1つの流量シフト判定部それぞれで流量がマイナス側にシフトしているか否かを判定することを特徴とする。これにより、設置状況に応じて流量シフト判定を最適化できる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明において、前記流量シフト判定部は、前記複数の流量シフト判定部の判定の実行を所定の条件で切り換え、もしくは、並行して行うことを設定する判定方式選択部を備えるものである。
【0022】
これにより、複数の流量シフト判定部を所定の条件で切り換え、もしくは、並行に処理することを設定することができるため、市場で環境や状況に応じた判定方法を選択することが可能となる。
【0023】
以下、図面を参照しながら、ガス遮断装置の具体例としてガスメータを例に、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0024】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガスメータのブロック図を示すものである。
【0026】
図1において、ガスメータ1は、ガス供給管aに設置され、その下流側の配管には、各ユーザー宅に設置された1台以上のガス器具が接続されている(図示せず)。また、ガスメータ1は、遮断部2、流量計測部3、流量演算部4、積算部5、第一判定部6、第二判定部7、流量シフト判定部8、制御部9、外部通信部10により構成されている。
【0027】
流量計測部3は、ガス供給管aに設置され、超音波信号を用いてガス供給管a内のガス流量により生じる伝搬時間差を求め、当該伝搬時間差に基づきガスの瞬時流量を検出するものである。
【0028】
流量演算部4は、流量計測部3により一定時間間隔で検出された瞬時流量を基に、ガス流量を算出するものである。この流量計測部3と流量演算部4により流量計測の機能を実現する。
【0029】
積算部5は、流量演算部4が算出した流量値を当該積算部5が有する積算バッファ(図示せず)に積算して積算流量値を取得するものである。
【0030】
第一判定部6は、積算部5で積算バッファに積算された時間を計時し、その積算された時間が単位積算期間を経過した時点で、積算部5の積算された積算流量値が所定流量未満か否かを判定するものである。
【0031】
第二判定部7は、第一判定部6により判定された、積算された流量値が所定流量未満である回数が、所定回数以上か否かを判定するものである。
【0032】
流量シフト判定部8は、第二判定部7の判定結果に基づき流量がマイナス側にシフトしているか否かを判定するものであり、詳細は後述する。
【0033】
制御部9は、ガスメータ1内の各部の動作制御の他、流量シフト判定部8による流量シフトの有無の判定結果による警告およびガスの遮断などの保安処理などを行うものである。
【0034】
外部通信部10は、第一判定部6による所定の積算判定値、第二判定部7による所定回数、および流量シフト判定部8による所定期間の設定変更の他、マイナス側の流量シフトが確定した際に警告又は遮断情報などを外部に通知を行うものである。
【0035】
遮断部2は、ガス供給管aの経路中に接続され、制御部9からの指示に基づいてガス供給管aを閉塞してガスの供給を遮断するものである。
【0036】
図2は、実施の形態1においてガスメータ1が実施する流量シフトの有無を判定する概略フローチャートである。以下、図1図2を用いて、ガスメータ1が実施する流量シフトの有無を判定する動作について説明する。
【0037】
図1図2において、流量計測部3の瞬時流量の計測間隔を例えば2秒とする。
【0038】
先ず、流量計測部3によりガス供給管aに流れる瞬時流量を計測する(ステップS1)。
【0039】
次に、流量演算部4が流量計測部3により計測した瞬時流量から流量値を算出する(ステップS2)。
【0040】
次に、積算部5は、第1の所定期間である単位積算期間(例えば、60分)における流量値を積算するための上記の積算バッファを有しており、流量演算部4からの流量値を前記積算バッファに積算して積算流量値を取得する(ステップS3)。
【0041】
次に、第一判定部6は、第1所定期間である単位積算期間を計時するタイマT1(図示せず)を有しており、タイマT1での計時が単位積算期間を経過したか否かを判定する(ステップS4)。
【0042】
タイマT1での計時が単位積算期間を経過していない場合(ステップS4:No)、積算部5による前記積算バッファへの積算を継続し、流量計測(ステップS1)に戻る。一方、タイマT1での計時が単位積算期間を経過した場合(ステップS4:Yes)、第一判定部6は前記積算バッファの積算流量値がシフト判定値である所定の流量(例えば、‐3.5L)未満か否かを判定する(ステップS5)。
【0043】
前記積算バッファの積算流量値が所定の流量以上であれば(ステップS5:No)、積算部5による前記積算バッファのゼロクリア及び第一判定部6によるタイマT1のリスタートが実行され、流量計測(ステップS1)に戻る。
【0044】
一方、第二判定部7は、第一判定部6により前記積算バッファの積算流量値が所定の流量未満であると判定された場合(ステップS5:Yes)を1回としてカウントする(ステップS6)。そして、第二判定部7は、前記のカウント値C1が所定の回数判定値(例えば、2回)以上か否かを判定する(ステップS7)。
【0045】
第2の所定期間である流量シフト判定期間(例えば、30日)に前記のカウント値C1が所定の回数判定値に達しなかった場合(ステップS7:No)、積算部5による前記積算バッファのゼロクリア及び第一判定部6によるタイマT1のリスタートが実行され、流量計測(ステップS1)に戻る。
【0046】
一方、前記流量シフト判定期間にカウント値C1が所定の回数判定値に達した場合(ステップS7:Yes)、後述するように、流量シフト判定部8はその流量シフト判定期間においてマイナス側の流量シフトありと判定し、流量シフトありの判定回数C2を1回とする。
【0047】
流量シフト判定部8は、前記流量シフト判定期間に第二判定部7の判定でマイナス側の流量シフトありの判定が成立すると(ステップS7:Yes)、カウント値C1をゼロクリアする(ステップS8)。そして、流量シフト判定部8は、マイナス側の流量シフトありの判定回数C2が、所定の回数(例えば、2回)連続で判定されたか否かを判定する(ステップS9)。
【0048】
所定回連続でマイナス側の流量シフトありと判定されていない場合(ステップS9:No)、流量シフト判定部8は直前の判定期間内の流量シフトあり成立済みとし(図示せず)、積算部5による前記積算バッファのゼロクリア及び第一判定部6による前記タイマT1のリスタートが実行され、流量計測(ステップS1)に戻る。一方、所定回連続でマイナス側の流量シフトありと判定された場合(ステップS9:Yes)、流量シフト判定部8はマイナス側の流量シフトを確定する(ステップS10)。
【0049】
なお、ここで積算部5における単位積算期間、第一判定部6における流量シフト判定値、第二判定部7におけるカウント値C1の所定の回数判定値、および流量シフト判定部8における判定回数C2の所定の回数は、例示された値に限定されず、最適な値に設定できるものであり、外部通信部10によって外部から設定することを可能にしてもよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態1においては、実際には流量がないのにもかかわらず、脈動による圧力変動に起因して、配管内のガスが上流側から下流側の順方向あるいは逆方向に移動することを、所定時間ごとに流量計測部で測定することができる。そして、測定された瞬時流量に正若しくは負の変動又はばらつきがあった場合でも、流量計測部3で計測された瞬時流量(L/h)を流量演算部4で流量値(L)に変換し、その流量値を積算部5で積算バッファに積算することで、実際に配管内を移動したガスの体積を把握することが可能になる。そして、積算部5で積算されたバッファ値に基づき、第一判定部6、第二判定部7および流量シフト判定部8で流量がマイナス側にシフトしているか否かを判定することで、より正確に流量のシフトが判定可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態では、所定回数連続でマイナス側の流量シフトありと判定された場合に、マイナス側の流量シフトを確定するようにしたが、これに限定されない。流量シフト判定期間の複数期間(例えば、3期間)において複数回(例えば、2回)マイナス側の流量シフトありと判定された場合に、マイナス側の流量シフトを確定するようにしても良い。
【0052】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2におけるガスメータのブロック図を示すものである。
【0053】
図3において、ガスメータ1は、上述した図1の構成に加え、判定方式選択部11と、第一流量シフト判定部12と、第二流量シフト判定部13と、をさらに備えている。
【0054】
また、第一流量シフト判定部12は積算部5と、第一判定部6と、第二判定部7と、流量シフト判定部8と、から構成されており、実施の形態1の図1および図2で説明した動作を行うものである。
【0055】
一方、第二流量シフト判定部13は、第一流量シフト判定部12とは異なる方法で流量シフトの有無を判定するものである。具体的には、第二流量シフト判定部13は、例えば、特許文献1に記載されたように、区間演算手段、移動平均流量演算手段、該当流量判定手段、第一判定手段、第二判定手段、流量シフト判定手段(何れも、図示せず)から構成されている。
【0056】
そして、第一流量シフト判定部12と第二流量シフト判定部13は共に流量シフトの有無の判定結果を制御部9に伝える構成になっている。
【0057】
判定方式選択部11は、外部通信部10によって外部から設定された所定の条件をもとに、第一流量シフト判定部12と、第二流量シフト判定部13と、のどちらかを使用して処理させるかを切り換えるか、又は第一流量シフト判定部12および第二流量シフト判定部13を並行に使用して処理させるかの設定を行うものである。なお、上記所定の条件は、一例として、ガスメータ1の設置環境における脈動の起き易さを当該ガスメータ1ごとに数値化し、当該数値と閾値との比較に基づき規定付けられるものである。
【0058】
以下、本実施の形態の第二流量シフト判定部13における処理について、図3を用いて説明する。
【0059】
図3において、第二流量シフト判定部13は、まず、区間演算手段にて流量計測部3で計測された瞬時流量を第1所定区間蓄積して区間平均流量を演算し、移動平均流量演算手段にて区間平均流量の連続するN個から移動平均を算出し、第2所定区間分保持する。
【0060】
次に、該当流量判定手段にて、第2所定区間の移動平均流量の最大値と最小値の差が閾値未満か否かを判定し、閾値未満と判定された区間平均流量を保持する。
【0061】
次に第一判定手段にて、区間平均流量の算出に用いた流量値を求めた瞬時流量の最大値と最小値の差が第1所定範囲内か否かを判定する。第二判定手段にて、該当流量判定手段で保持されている区間平均流量が第2所定範囲内か否かを判定する。
【0062】
次いで、流量シフト判定手段にて、第一判定手段で第1所定範囲内かつ、第二判定手段で第2所定範囲内と判定された区間平均流量を蓄積し、流量シフト判定手段でM個の区間平均流量が蓄積された場合に蓄積された区間平均流量から蓄積平均流量を算出する。そして、流量シフト判定手段にて、前記の蓄積平均流量が平均判定流量未満となった回数が所定回数以上となる回数が所定回連続して発生したとき、マイナス側の流量シフトありと確定するものである。
【0063】
図4は、実施の形態2においてガスメータ1が実施する流量シフトの有無判定の概略フローチャートである。以下、図3図4を用いて、ガスメータ1が実施する流量シフトの有無判定の動作について説明する。
【0064】
先ず、外部通信部10により外部から設定された所定の条件をもとに、判定方式選択部11にて第一流量シフト判定部12の処理を行うか否かの判定(ステップS11)を行う。第一流量シフト判定部12の処理を行う場合(ステップS11:Yes)、第一流量シフト判定部12で第一シフト判定を行う(ステップS12)。一方、第一流量シフト判定部12の処理を行わない場合(ステップS11:No)、後記のステップS15の処理に進む。
【0065】
次に、第一流量シフト判定部12にて流量シフトの有無を判定し(ステップS13)、第一流量シフト判定部12にてマイナス側の流量シフトありと判定された場合(ステップS13:Yes)、流量シフト判定部8はマイナス側の流量シフトあり確定の処理を行う(ステップS14)。一方、第一流量シフト判定部12にてマイナス側の流量シフトなしと判定された場合(ステップS13:No)、判定方式選択部11で第二流量シフト判定部13の処理を行うか否かの判定をする(ステップS15)。
【0066】
第二流量シフト判定部13の処理を行う場合(ステップS15:Yes)、第二流量シフト判定部13で第二シフト判定を行う(ステップS16)。一方、第二流量シフト判定部13の処理を行わない場合(ステップS15:No)、処理を終了する。
【0067】
次に、第二流量シフト判定部13にて流量シフトの有無を判定し(ステップS17)、第二流量シフト判定部13にてマイナス側の流量シフトありと判定された場合(ステップS17:Yes)、マイナス側の流量シフトあり確定の処理を行う(ステップS18)。一方、第二流量シフト判定部13にてマイナス側の流量シフトなしと判定された場合(ステップS17:No)、処理を終了する。
【0068】
上記説明において、流量シフトあり確定の処理は、実施の形態1で説明したように、マイナス側の流量シフトありの判定が連続して成立した場合、或いは、所定期間におけるマイナス側の流量シフトありの判定回数に基づいて行う処理を意味する。
【0069】
以上のように本実施の形態2においては、第一流量シフト判定部12と第二流量シフト判定部13による2つの流量シフト判定部を設けているので、この2つの流量シフト判定方法を所定の条件で切り換え、もしくは、並行に処理し、どちらか一方において、マイナス側の流量シフトありと判定できるようになる。これによって、全体としてマイナス側の流量シフトありと判定することができ、より正確にセンサ異常の警報・遮断を行うことが可能となる。
【0070】
また、判定方法を切り換え、もしくは並行に設定できるため、市場で環境や状況に応じた判定方法を選択可能になる。
【0071】
例えば、脈動が起きやすい環境下では、瞬時流量に大きなばらつきが生じるため、第二流量シフト判定部13の処理では瞬時流量の最大値と最小値の差が所定範囲外となりやすくなり、流量シフトの有無の判定がされない可能性がある。そのため、判定方式選択部11により第一流量シフト判定部12を処理させるように設定することで、正負の瞬時流量のばらつきを流量値に変換し、積算することが可能となる。これにより、正および負の変動並びにばらつきを相殺できるようになり、より正確にマイナス側の流量シフトの有無を判定することが可能になる。
【0072】
また、長時間にわたるガスの流れが発生する呼吸現象では、第二流量シフト判定部13を選択することで、長時間安定している流量を監視することができる。これにより、より正確にマイナス側の流量シフトの有無を判定することが可能となる。
【0073】
更に、第一流量シフト判定部12と第二流量シフト判定部13を並列で実行する場合には、どちらか一方の判定で流量シフトなしと誤判定しても、もう一方の判定で流量シフトありの判定がされることで、より正確に流量シフトの有無を判定することが可能になる。
【0074】
なお、本実施の形態では、第一流量有無判定部10および第二流量有無判定部11の2つの流量有無判定部で説明したが、この2つの判定方法と異なる他の流量有無判定部を加えて、判定方式選択部12が、これら複数の流量有無判定部を選択、或いは組み合わせるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係るガス遮断装置は、脈動が発生しているような環境下であってもマイナス側の流量シフトを判定できることから、本発明の対象はこれに限定されず、他の可燃性ガス、非可燃性ガス等も含み、水や気体の漏れを検出する方式にも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 ガスメータ
2 遮断部
3 流量計測部
4 流量演算部
5 積算部
6 第一判定部
7 第二判定部
8 流量シフト判定部
9 制御部
10 外部通信部
11 判定方式選択部
12 第一流量シフト判定部(流量シフト判定部)
13 第二流量シフト判定部(流量シフト判定部)
図1
図2
図3
図4