(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149990
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】係留用ロープ
(51)【国際特許分類】
D07B 1/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D07B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058845
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中塚 宏文
(72)【発明者】
【氏名】小阪 俊之
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA26
3B153AA39
3B153AA45
3B153BB01
3B153CC21
3B153CC27
3B153EE15
3B153FF17
(57)【要約】
【課題】耐久性が高い係留用ロープを提供する。
【解決手段】
係留用ロープ1は、ロープ本体2と、樹脂製の被覆層3と、外筒4とを備えている。ロープ本体2は、複数のストランド21を撚り合わせ又は組み合わせてなる。被覆層3は、ロープ本体2を被覆している。被覆層3は、ストランド21に密着している。外筒4は、被覆層3を被覆している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストランドを撚り合わせ又は組み合わせてなるロープ本体と、
前記ロープ本体を被覆し、前記ストランドに密着した樹脂製の被覆層と、
前記被覆層を被覆した外筒と、
を備えていることを特徴とする係留用ロープ。
【請求項2】
複数の前記ストランドを撚り合わせ又は組み合わせることによって前記ロープ本体に凹凸が形成され、
前記被覆層が、前記ロープ本体の凹凸に沿った凹凸形状を有し、
前記外筒が、前記被覆層の凹凸の凹みに入り込んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の係留用ロープ。
【請求項3】
前記ストランドは、複数のヤーンを含み、
前記被覆層は、前記ヤーンによって形成されるストランドの凹凸の凹みに入り込んでいる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の係留用ロープ。
【請求項4】
前記ストランドは、複数のヤーンを含み、
前記ヤーンは、複数の原糸を含み、
複数の前記原糸により前記ヤーンに凹凸が形成され、
前記被覆層は、前記ヤーンの凹凸の凹みに入り込んでいる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の係留用ロープ。
【請求項5】
前記被覆層は、ポリウレタン系樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の係留用ロープ。
【請求項6】
前記外筒は、繊維がブレード状に組み合わされたものである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の係留用ロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋などにおいて使用される係留用ロープに関するものであり、船舶を岸壁に係留したり、海上構造物を海底に係留したりするときなどに使用される係留用ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維製の係留用ロープが使用されている(特許文献1参照)。繊維製の係留用ロープの多くはポリエステル、ポリプロピレン等の繊維を単純に組み合わせたものである。このようなロープを水中で使用した場合、使用の過程において、ロープ内部又はロープを構成するストランド中に、水中に漂う砂、小石、泥など(以下「砂など」と称する)が侵入する。砂などが侵入した状態でロープに引張荷重が繰り返しかかると、ロープを構成する繊維と砂などが擦れ合うことによるロープの内部摩擦によって、繊維が強い摩耗を受け、強度が低下することにより、さほど大きくない荷重でロープが切断することがある。
【0003】
上記問題を解決するため、特許文献2には、繊維製のロープにたて糸とよこ糸とを織成してなる筒状織物からなるフィルター材を被覆した構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-264884号公報
【特許文献2】特許2016-33269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された構造では織物のフィルターを使用しているが、織物の目ずれが生じた場合、水中の砂などがフィルターを通過し、ロープ内に侵入するおそれがある。そのような状態でロープに引張荷重が繰り返しかかると、ロープを構成する繊維と砂などが擦れ合って繊維が強い摩耗を受けて強度が低下し、やはり最悪の場合、さほど大きくない荷重でロープが切断してしまうおそれがある。また、海水などに油や薬品などの廃棄液体が存在する場合、廃棄液体は織物のフィルターを通過し、ロープに侵入するおそれがある。廃棄液体がロープに侵入した場合、ロープが劣化するおそれがある。これらは係留用ロープの耐久性を低下させる原因となる。
【0006】
本発明の目的は、耐久性が高い係留用ロープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される係留用ロープは、複数のストランドを撚り合わせ又は組み合わせてなるロープ本体と、前記ロープ本体を被覆し、前記ストランドに密着した樹脂製の被覆層と、前記被覆層を被覆した外筒と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によると、耐久性が高い係留用ロープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る係留用ロープの構造を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る係留用ロープの長手方向に沿った断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る係留用ロープの径方向に沿った断面模式図(
図1のIII-III線に沿った断面模式図)である。
【
図4】第2実施形態に係る係留用ロープの径方向に沿った断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
図1に第1実施形態に係る係留用ロープ1を示している。係留用ロープ1は、海洋などにおいて、船舶を岸壁に係留したり、海上構造物を海底に係留したりするときなどに使用される。
【0011】
係留用ロープ1は、
図1に示すように、ロープ本体2と、被覆層3と、外筒4とを備えている。係留用ロープ1の構成を示すため、
図1には、ロープ本体2の外側に被覆層3および/または外筒4がない部分が存在するが、係留用ロープ1には、長手方向全体に亘って、ロープ本体2の外側に被覆層3および外筒4が存在する(
図2参照)。
【0012】
ロープ本体2は、
図1および
図2に示すように、複数のストランド21を撚り合わせ又は組み合わせてなる。複数のストランド21を組み合わせるとは、ロープ本体2の長手方向に対し斜め方向に複数のストランド21を組み合わせることである。後述する「組み合わせ」も同様な意味である。複数のストランド21が撚り合わせ又は組み合わされていることにより、ロープ本体2に凹凸が形成されている。
図1に示すロープ本体2は、2本のストランドを1組とし、4組のストランドを撚り合わせた8打ちロープである。なお、ロープ本体2の構成はこれに限定されない。例えば、ロープ本体2として、3本のストランドを撚り合わせた3打ちロープを使用してもよく、4本のストランドを撚り合わせた4打ちロープを使用してもよく、12本又は16本のストランドを組み合わせたものを使用してもよい。
【0013】
ストランド21は、複数のヤーン121を含む(
図1参照)。複数のヤーン121は、例えば、撚り合わされていてもよく、単に束になっていてもよい。ヤーン121は、複数の原糸を含む。複数の原糸は、例えば、撚り合わされていてもよく、単に束になっていてもよい。
【0014】
図3に係留用ロープ1の断面を模式的に示した図を示している。
図3では、1つのストランド21を模式的に二点鎖線で囲んでいる。
図3に示す係留用ロープ1のロープ本体2は、8つのストランド21を含む。
図3の一部拡大図では、1つのヤーン121を模式的に一点鎖線で囲んでいる。ここでは、一例として、1つのヤーン121が7本の原糸(原糸121a、原糸121b、原糸121cなど)を含む場合を示している。原糸の材質は特に限定されない。原糸は、例えば、ポリアミド系、アラミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロピレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、及びポリウレタン系等の合成繊維でもよい。なお、
図3では係留用ロープ1を模式的に示しているため、ヤーン121とヤーン121との間、原糸と原糸との間などに隙間や空間が存在するが、実際はヤーン121とヤーン121との間、原糸と原糸との間などに隙間及び空間は殆ど存在しない。ストランド21同士が密接し、ヤーン121同士が密接し、原糸同士が密接している。また、
図3に示す模式図では、ヤーン121の断面および原糸の断面が円形であるが、実際は、円形以外の形状、例えば楕円形や扁平形状のことがある。
【0015】
原糸、ヤーン121、ストランド21およびロープ本体2の構成は特に限定されない。例えば、原糸として繊度が1670dTのPET繊維(PET:ポリエチレンテレフタレート)を使用してもよい。ヤーン121として、4本の原糸を下撚りしたもの3本をさらに上撚りして形成されたものを使用してもよい。ストランド21として、18本のヤーンを撚り合わせて形成されたものを使用してもよい。ロープ本体2として、
図1に示すように、8本のストランドを用いて形成された8打ちのものを使用してもよい。ロープ本体2の太さは、特に限定されない。例えば、32mmの太さのロープ本体2を使用してもよい。
【0016】
図1に示すように、ロープ本体2は被覆層3に被覆されている。被覆層3は樹脂製である。被覆層3は、樹脂製だけでなくゴム系の材料など、弾性を有するものであれば適宜使用できる。
【0017】
被覆層3の樹脂は特に限定されない。樹脂は、例えば、エラストマーでもよく、熱可塑性樹脂でもよい。熱可塑性樹脂として、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロピレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、及びポリウレタン系の樹脂が挙げられる。このなかでも、ポリウレタン系樹脂は、柔軟性、伸縮性があり、好ましい。被覆層3の厚さは特に限定されないが、0.5mm以上10mm以下が好適である。また、被覆材3の引張強度は3.0MPa以上、伸度は80%以上が好適である。被覆層3の厚さ、強伸度をこの範囲にすることにより、ロープ本体2が伸縮しやすい。
【0018】
被覆層3は、ロープ本体2の凹凸の凹み(ストランド21により形成された凹凸の凹み)に入り込んでいる(
図2および
図3参照)。本実施形態では、ロープ本体2の全ての凹みに被覆層3が入り込んでいる。被覆層3は、ロープ本体2の凹凸(ストランド21により形成された凹凸)に沿った凹凸形状である。被覆層3は、ロープ本体2のストランド21に密着している。ここでの「密着」とは、被覆層3とストランド21が接し、被覆層3とストランド21との間に微粒子、砂、小石などが侵入できない程度に隙間が殆ど存在しないことである。但し、被覆層3は各ストランド21に接着していない。ここでの「接着」とは、化学的又は物理的に接合していることである。
【0019】
図3の一部拡大図に示すように、被覆層3は、ストランド21の凹凸の凹みに入り込んでいる。「ストランド21の凹凸の凹み」とは、ヤーン121によって形成された凹凸の凹みであり、例えば、
図3の一部拡大図において、隣り合うヤーン121間の凹みによって形成された凹みである。また、「ストランド21の凹凸の凹み」とは、ロープ本体2の最も外側に存在するヤーン121間の凹みでもある。被覆層3は、ストランド21およびヤーン121に密着している。具体的には、被覆層3は、ロープ本体2の最も外側に存在するヤーン121に密着している。このような構成により、被覆層3をロープ本体2から離したとき、被覆層3には、ロープ本体2に密着していた面に、各ヤーン121が嵌まっていた型が形成されている。なお、被覆層3はストランド21およびヤーン121に接着していない。密着および接着の定義は、上記と同様である。
【0020】
被覆層3は、外筒4に被覆されている。外筒4は、
図2および
図3に示すように、被覆層3の凹凸の凹みに入り込んでいる。外筒4は、被覆層3の凹凸に沿った凹凸形状である。外筒4は被覆層3にほぼ密着している。なお、外筒4は被覆層3に接着していない。密着および接着の定義は、上記と同様である。
【0021】
外筒4の構成は特に限定されない。外筒4として、例えば、繊維を撚り合わせたもの、繊維又は帯状の部材を組み合わせて織物や編物などの状態で筒状にしたものや、板状又は布状のものを被覆層の上にスパイラル状に巻き付けたものが挙げられる。
図1に示す外筒4は、複数の繊維をブレード状に組み合わせることによって形成されている。外筒4の材質は、特に限定されない。例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロピレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、及びポリウレタン系等の合成繊維でもよく、金属繊維でもよく、これらの両方を含むものでもよい。一例として、繊度が1670dTのPET繊維を原糸とし、原糸4本を撚り合わせてヤーンを形成し、ヤーン4本又は5本を撚り合わせて形成されたストランドを用いて作製された48打ち又は64打ちの外筒4を使用してもよい。
【0022】
次に、係留用ロープ1の製造方法の一例を説明する。
【0023】
複数のストランド21を撚り合わせ又は組み合わせることによりロープ本体2を作製する。ロープ本体2の外側に樹脂製の被覆層3を形成する。被覆層3は、例えば、公知の押出成形法により形成することができる。
【0024】
被覆層3を形成後、被覆層3の外側に外筒4を形成する(
図1参照)。例えば、以下の方法によって外筒4を形成することができる。
被覆層3に、外筒4となるストランドを組み込んでいくことにより、外筒4が形成される。このとき、ストランドを被覆層3の凹凸に沿わせながら組み込んでいくことにより、外筒4が被覆層3の凹凸の凹みに入り込んでいく。
【0025】
被覆層3および外筒4の形成方法は、上記方法に限定されない。上記以外の方法によって被覆層3および外筒4を形成してもよい。
【0026】
上述した係留用ロープ1(
図1参照)によると、以下の効果が得られる。
【0027】
ロープ本体2を被覆する被覆層3が織物である場合、織物に目ずれが起こることにより、目ずれした部分から被覆層3の内側に海底の微粒子、海中に浮遊する微粒子、砂などが入り込み、ロープ本体2が摩耗するおそれがある。
上記構成によると、ロープ本体2を被覆する被覆層3が樹脂製であるため、目ずれが起こらない。そのため、微粒子や砂などが被覆層3からロープ本体2に入り込むことを抑制できる。また、被覆層3がロープ本体2のストランド21に密着しているため、微粒子や砂などがロープ本体2と被覆層3との間からロープ本体2内に入り込みにくい。また、水中に廃棄液体などが存在する場合、廃棄液体等がロープ本体2と被覆層3との間からロープ本体2内に入り込みにくい。
【0028】
なお、被覆層3が最外層である場合、樹脂製の被覆層3は微粒子や砂などにより損傷を受けやすい。被覆層3が損傷を受けた場合、その部分から微粒子や砂などが入り込むおそれがある。上記構成によると、被覆層3が外筒4に被覆されているため、樹脂製の被覆層3が微粒子や砂などにより損傷を受けることを抑制できる。
【0029】
上記によりロープ本体2の摩耗や劣化を抑制できる。これにより、耐久性が高い係留用ロープ1を提供することができる。
【0030】
なお、被覆層3の外側に外筒4を形成する代わりに、厚い被覆層3を形成することも考えられるが、この場合、被覆層3がロープ本体2の伸縮に追随しにくいため、ロープ本体2の伸縮性能が発揮されにくくなると考えられる。樹脂製の被覆層3とその外側に外筒4を形成することにより、ロープ本体2の伸縮性能を十分に発揮させつつ、耐久性が高い係留用ロープ1を提供することができる。
【0031】
また、
図2および
図3に示すように、被覆層3がロープ本体2の凹凸の凹み(ストランド21を撚り合わせ又は組み合わせることによって形成された凹凸の凹み)に入り込み、ロープ本体2の凹凸に沿った凹凸形状である。そのためロープ本体2が伸縮しやすい。また、被覆層3はロープ本体2の凹凸に沿った凹凸形状であり、外筒4が被覆層3の凹凸の凹みに入り込んでいる。そのため、外筒4が被覆層3からずれにくい。これにより、外筒4と被覆層3との間に微粒子や砂などが入り込みにくいため、樹脂製の被覆層3が損傷を受けることを確実に抑制できる。
【0032】
また、
図1に示すように、ストランド21が複数のヤーン121を含んでいる。
図3の一部拡大図に示すように、ストランド21の凹凸の凹み(ヤーン121によって形成された凹凸の凹み)に被覆層3が入り込んでいる。被覆層3はロープ本体2のストランド21およびヤーン121に密着している。これにより被覆層3がロープ本体2からずれにくく、ロープ本体2と被覆層3との間で摩耗が起こらない。また、鋭利な突起物などにより樹脂製の被覆層3に小さな穴があいても、被覆層3とストランド21が密着しているため、水中生物や砂などがストランド21に沿って内部に入り込む隙間がない。また、ストランド21に含まれるヤーン121が被覆層3に密着することにより、水中生物や砂などがストランド21の内部に入り込むことを確実に抑制できる。これらによりロープ本体2の劣化が確実に抑えられるため、係留用ロープ1の耐久性がより高まる。また、被覆層3はストランド21およびヤーン121と接着していないので、原糸を構成する繊維の伸びを阻害することがなく、ロープ本体2を構成している繊維の強度利用率が下がらない。このため、被覆層3を形成することによる係留用ロープ1の強度低下を抑制できる。
【0033】
被覆層3の樹脂は特に限定されないが、樹脂のなかでもポリウレタン系樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂は柔軟性を有し、伸縮性が高いため、被覆層3がポリウレタン樹脂製である場合、ロープ本体2が伸縮したとき、被覆層3がロープ本体2に追随して伸縮しやすい。そのためロープ本体2の伸縮性を維持しつつ、耐久性が高い係留用ロープ1を提供することができる。
【0034】
外筒4の材質および構成は特に限定されないが、繊維をブレード状に組み合わせたものは柔軟性があり、伸縮性が高いため、ロープ本体2が伸縮しやすい。そのため外筒4が繊維をブレード状に組み合わせたものである場合、ロープ本体の伸縮性を維持しつつ、耐久性が高い係留用ロープ1を提供することができる。また、外筒4に金属製のもの(例えば、金属線、金属繊維)が含まれる場合、外筒4の強度が高い。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について、
図4を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、被覆層203がヤーン121の凹凸の凹みに入り込んでいる点である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0036】
図4に示すように、被覆層203は、ヤーン121の凹凸の凹みに入り込んでいる。「ヤーン121の凹凸の凹み」とは、原糸によって形成された凹凸の凹みであり、例えば、
図4の一部拡大図において、原糸121aと原糸121bによって形成された凹み、原糸121bと原糸121cとによって形成された凹みである。また、「ヤーン121の凹凸の凹み」とは、ロープ本体2の最も外側に存在する隣り合う原糸間の凹み(例えば、原糸121aと原糸121bとの間の凹み、原糸121bと原糸121cとの間の凹み)でもある。被覆層203は、ヤーン121および原糸に密着している。具体的には、被覆層203は、ロープ本体2の最も外側に存在する原糸(例えば、
図4の一部拡大図の原糸121a、原糸121b、原糸121c)に密着している。このような構成により、被覆層203をロープ本体2から離したとき、被覆層203には、ロープ本体2に密着していた面に、原糸1本1本が嵌まっていた型が形成されている。なお、被覆層203はヤーン121および原糸に接着していない。密着および接着の定義は、第1実施形態と同様である。
【0037】
上記構成によると、第1実施形態と同様に、ロープ本体2の摩耗や劣化を抑制できることにより、耐久性が高い係留用ロープ201を提供することができる。
【0038】
また、
図4の一部拡大図に示すように、ヤーン121の凹凸の凹み(原糸によって形成された凹凸の凹み)に被覆層203が入り込んでいる。被覆層203はロープ本体2のヤーン121および原糸(例えば、原糸121a、原糸121b、原糸121c)に密着している。これにより被覆層203がロープ本体2からよりずれにくく、ロープ本体2と被覆層203との間で摩耗が起こらない。また、鋭利な突起物などにより樹脂製の被覆層203に小さな穴があいても、被覆層203とヤーン121が密着しているため、水中生物や砂などがヤーン121に沿って内部に入り込む隙間がない。また、ヤーン121に含まれる原糸(例えば、原糸121a、原糸121b、原糸121c)が被覆層203に密着することにより、水中生物や砂などがヤーン121の内部に入り込むことを確実に抑制できる。これらによりロープ本体2の劣化がより確実に抑えられるため、係留用ロープ1の耐久性がさらに高まる。また、被覆層203は原糸と接着していないので、原糸を構成する繊維の伸びを阻害することがなく、ロープ本体2を構成している繊維の強度利用率が下がらない。このため、被覆層203を形成することによる係留用ロープ201の強度低下を抑制できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について実施例に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0040】
例えば、上記第1実施形態の係留用ロープ1では、
図3の一部拡大図に示すように、被覆層3がストランド21の凹凸の凹みに入り込み、上記第2実施形態の係留用ロープ201では、
図4の一部拡大図に示すように、被覆層203がストランド21の凹凸の凹みに入り込み、さらにヤーン121の凹凸の凹みに入り込んでいる。
本発明の係留用ロープでは、被覆層の一部がストランドの凹凸の凹みに入り込み、被覆層の別の一部がストランドの凹凸の凹みに入り込み、さらにヤーン121の凹凸の凹みに入り込んでいてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1、201 係留用ロープ
2 ロープ本体
3、203 被覆層
4 外筒
21 ストランド
121 ヤーン
121a、121b、121c 原糸