(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150008
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】災害対策支援装置、災害対策支援システム、災害対策支援方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058870
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 雅伸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイムライン防災の策定を容易にする災害対策支援装置、災害対策支援システム、災害対策支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】災害対策支援システムS1において、災害対策支援装置10は、災害対策行動を導入する施設の位置に基づいて、当該位置におけるハザードに関するハザード情報を取得するハザード情報識別部112と、少なくともハザード情報と災害対策行動項目とを対応付けて記憶する災害対策行動データベース142から、取得されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する対策行動識別部114と、抽出された災害対策行動項目を含むタイムライン行動一覧を出力部150に出力させる出力処理部116と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害対策行動を導入する施設の位置に基づいて、当該位置におけるハザードに関するハザード情報を取得するハザード情報識別部と、
少なくともハザード情報と災害対策行動項目とを対応付けて記憶する災害対策行動データ記憶部から、取得されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する対策行動識別部と、
抽出された災害対策行動項目を含むタイムライン行動一覧を出力部に出力させる出力処理部と、を備える
災害対策支援装置。
【請求項2】
前記ハザード情報識別部は、ネットワークに接続されたサーバ装置に記憶され、位置ごとのハザード情報を含むハザードマップを参照して、前記施設の位置におけるハザード情報を取得する
請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項3】
前記ハザード情報は、少なくともハザードの種類を含み、
前記災害対策行動データ記憶部は、災害対策行動項目ごとにハザードの種類との関連性と、施設に関連する施設関連情報との関連性を示す関連性情報を記憶し、
前記対策行動識別部は、施設関連情報を取得し、
取得されたハザードの種類と施設関連情報に関連性を有する災害対策行動項目を抽出する
請求項2に記載の災害対策支援装置。
【請求項4】
前記災害対策行動データ記憶部は、災害対策行動項目を追加するとき、追加した災害対策行動項目と、当該災害対策行動項目の前記ハザードの種類と、前記施設関連情報との関連性を示す関連性情報を追加する
請求項3に記載の災害対策支援装置。
【請求項5】
前記施設関連情報は、前記施設を用いる事業の種類を示す種類情報、前記施設の構造情報、前記施設の属性情報、および、前記施設の利用者の属性情報のうち、少なくとも1項目を含む
請求項4に記載の災害対策支援装置。
【請求項6】
コンピュータに請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の災害対策支援装置として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の災害対策支援装置と、前記サーバ装置と、を備える
災害対策支援システム。
【請求項8】
災害対策支援装置が、
災害対策行動を導入する施設の位置に基づいて、当該位置におけるハザードに関するハザード情報を取得するハザード情報識別ステップと、
少なくともハザード情報と災害対策行動項目とを対応付けて記憶する災害対策行動データ記憶部から、取得されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する対策行動識別ステップと、
抽出された災害対策行動項目を含むタイムライン行動一覧を出力部に出力させる出力処理ステップと、を実行する
災害対策支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施形態は、災害対策支援装置、災害対策支援システム、災害対策支援方法、および、プログラムに関する。本実施形態は、例えば、自然災害に対する防災活動計画(タイムライン防災)に関する。
【背景技術】
【0002】
タイムライン防災とは、防災関係機関が災害の発生を前提に起こり得る状況を想定し、各種の災害対策行動を時系列に整理してまとめられた防災計画を指す。タイムライン防災は、防災行動計画、事前防災行動計画など、とも呼ばれる。タイムライン防災では、災害が発生するまでのリードタイムにおいて可能な限り事前対策を講じておき、被害の回避または最小化が図られる。タイムライン防災は、主に地方自治体などの行政機関により先行的に導入されている。タイムライン防災の策定手順も指針としてとりまとめられ、広報されていることが多い。
【0003】
従来から、地方自治体における防災対応を支援するための情報処理システムが開発されている。例えば、特許文献1に記載の防災情報管理システムは、異常発生情報を想定したタイムライン表に部署ごとの防災行動を示す行動項目を設定し、行動項目の防災行動時間を記録し、タイムライン表に記録された防災行動時間を基に、行動項目に対応するリードタイムを予測し、この予測結果を基にタイムライン表の項目並べ替えを提案する。
【0004】
昨今では、個人単位または世帯単位でタイムラインを作成することも推奨されている。ウェブサーバにアクセスし、必要事項を入力してタイムラインを作成する対話型ツールの整備が進められている。例えば、特許文献2には、自治体が管理する防災情報サーバと自治体の住民が所持する情報端末を備えた防災情報システムについて記載されている。情報端末は、災害のフェーズ別に策定された端末の使用者個人の防災行動計画である個人タイムラインを保持している。防災情報サーバは、災害のフェーズを示すフェーズ情報を配信し、情報端末が防災情報サーバからフェーズ情報を受信したことに応じて、フェーズ情報に対応する個人タイムラインを表示する。
【0005】
タイムラインは、企業向けにも提供されている。例えば、特許文献3には、支援の対象場所に対応する気象情報であって、警報または注意報を含む気象情報および対象場所の周辺における対象災害に関連する関連情報を取得し、取得した気象情報および関連情報のうち、推定する予測情報に応じて選択された複数の情報に基づいて、対象災害の被害に関連して予測される予測情報を推定し、推定した予測情報に基づいて、対象災害に対する防災行動を提案し、提案した防災行動に対応して指示情報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-009496号公報
【特許文献2】特開2020-052594号公報
【特許文献3】特開2020-201704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的なタイムラインの策定手順は、
図5に示すようにステップS01~S06の工程を有する。ステップS01は、対象となるハザードの設定である。ステップS01において、策定者は地方自治体から公表されているハザードマップを参照し、対象地点におけるハザード情報を把握することができる。しかしながら、ステップS02、S03において、想定される被害、被害を防ぐために要求される防災行動を明らかにする必要がある。例えば、洪水による浸水が予想される地点では、ステップS02において、いかなる設備や機器が水損するかを特定し、ステップS03において、特定された設備等に対し、いかなる防災行動が必要になるかを割り当てる作業が必要になる。これらの作業は、自然災害や事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)に関する専門知識を必要とし、施設の規模が大きいほど多くの検討項目を考慮しなければならない。そのため、ステップS02、S03は、一般的に困難かつ時間を要する工程となりがちである。他方、特許文献1~3に記載の手法では、ステップS02、03の実行がユーザの作業に委ねられていることを前提としている。このことは、ユーザの資質が作成されるタイムラインの内容や質に顕著に影響することを意味する。
【0008】
上記の課題を鑑み、本実施形態は、タイムライン防災の策定を容易にする災害対策支援装置、災害対策支援システム、災害対策支援方法、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る災害対策支援装置は、災害対策行動を導入する施設の位置に基づいて、当該位置におけるハザードに関するハザード情報を取得するハザード情報識別部と、少なくともハザード情報と災害対策行動項目とを対応付けて記憶する災害対策行動データ記憶部から、取得されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する対策行動識別部と、抽出された災害対策行動項目を含むタイムライン行動一覧を出力部に出力させる出力処理部と、を備える。
【0010】
第2の態様に係る災害対策支援方法は、災害対策支援装置が、災害対策行動を導入する施設の位置に基づいて、当該位置におけるハザードに関するハザード情報を取得するハザード情報識別ステップと、少なくともハザード情報と災害対策行動項目とを対応付けて記憶する災害対策行動データ記憶部から、取得されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する対策行動識別ステップと、抽出された災害対策行動項目を含むタイムライン行動一覧を出力部に出力させる出力処理ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、タイムライン防災の策定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る災害対策支援システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る災害対策行動データベースのデータ構造の例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る災害対策支援処理の例を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係る災害対策支援装置のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【
図5】タイムラインの策定手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る災害対策支援システムS1の機能構成例を説明するための概略ブロック図である。
災害対策支援システムS1は、災害対策支援装置10を備える。災害対策支援装置10は、通信ネットワークNWを経由して他の機器と各種のデータを有線または無線で送受信可能に接続することができる。通信ネットワークNWは、インターネット、公衆ネットワーク、その他の広域ネットワークを含んで構成される。通信ネットワークNWには、各種のハザード情報を保存し、送信可能とする機器が接続される。
図1の例では、通信ネットワークNWにサーバ装置20が接続されている。
【0014】
災害対策支援装置10は、災害対策行動を導入する施設の位置を示す施設位置情報を取得し、指示された施設の位置に係るハザード情報を要求するためのハザード情報要求をサーバ装置20に送信する。災害対策支援装置10は、ハザード情報要求に対する応答として、指示された施設の位置におけるハザードに関するハザード情報を取得する。災害対策支援装置10は、指示された施設に関する施設関連情報を取得する。災害対策支援装置10は、災害対策行動データベースから取得したハザード情報と施設関連情報に関連する対策行動項目を抽出する。災害対策行動データベースには、災害対策行動項目ごとにハザード情報と施設関連情報との関連性と、施設に関連する施設関連情報との関連性を示す関連性情報が記憶される。災害対策支援装置10は、抽出した災害対策項目を含むタイムライン行動一覧を構成し、出力する。災害対策支援装置10は、主に施設の管理者もしくは従事者により管理される。災害対策支援装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、タブレット端末装置、多機能携帯電話機、ワークステーション、などの情報機器として構成されうる。
【0015】
サーバ装置20には、ハザードマップを示すハザードデータが記憶されている。サーバ装置20は、例えば、通信ネットワークNWに接続されている他の機器からアクセス可能なウェブサーバとして構成されうる。サーバ装置20は、自装置へのハザード情報要求を受信するとき、ハザード情報要求において伝達される位置情報に対応するハザード情報をハザードデータから抽出する。サーバ装置20は、ハザード情報要求に対する応答として、送信元となる機器に抽出したハザード情報を送信する。本実施形態では、災害対策支援装置10がハザード情報要求の送信元となる。サーバ装置20は、主に地方自治体、その他の行政機関または委託を受けた者により管理される。サーバ装置20は、例えば、ウェブサーバ、データベースサーバ、などとして構成されうる。なお、本実施形態では「ハザード」とは、主に偶発的な自然災害により直接または間接的に発生しうる被害、損害、または、それらの危険性を意味する。
【0016】
次に、本実施形態に係る災害対策支援装置10の機能構成例について説明する。災害対策支援装置10は、制御部110と、入力部120と、通信部130と、記憶部140と、出力部150と、を備える。
制御部110は、災害対策支援装置10が有する各種の機能の実現およびその機能を制御するための処理を行う。制御部110は、ハザード識別部112と、対策行動識別部114と、出力処理部116と、を備える。
【0017】
ハザード識別部112は、災害対策行動を導入する施設の位置を示す施設位置情報を、入力部120から取得する。ハザード識別部112は、操作入力部158(後述)から施設位置情報を示す操作信号が入力されてもよいし、他の機器から施設位置情報が入力されてもよい。施設位置情報は、例えば、その施設の位置を示す住所で表現されてもよいし、その位置の緯度と経度の組で表現されてもよい。ハザード識別部112は、ハザードデータを参照して、施設位置情報で示される位置に対応するハザード情報を抽出する。ハザードデータは、位置ごと、または、個々の位置が属する地域ごとにハザード情報を表すデータとみなすことができる。
図1の例では、ハザードデータは、ハザードマップとして構成され、サーバ装置20に記憶されている。ハザード識別部112は、施設位置情報で指示される位置に係るハザード情報要求を、通信部130を用いてサーバ装置20に送信する。ハザード識別部112は、送信したハザード情報要求に対応する応答として、サーバ装置20からハザード情報を受信する。ハザード識別部112は、受信したハザード情報を対策行動識別部114に出力する。
【0018】
サーバ装置20は、ハザード情報要求を待ち受ける。サーバ装置20は、災害対策支援装置10からハザード情報要求を受信するとき、自装置に記憶されているハザードデータから、ハザード情報要求で指示される位置に対応するハザード情報を抽出する。サーバ装置20は、抽出したハザード情報を、ハザード情報要求に対する応答として、送信元となる災害対策支援装置10に送信する。
【0019】
取得されるハザード情報には、該当する位置、または、その位置が属する地域において発生する可能性があるハザードの種類(以下の説明では、「ハザード種類」と呼ぶことがある)の情報が含まれる。ハザード種類には、例えば、強風、洪水、高潮、土砂災害、などのいずれか1項目、または、いずれか複数項目の組が含まれうる。ハザード情報には、個々のハザード種類について、そのハザードの詳細情報が含まれてもよい。例えば、ハザード種類が洪水である場合には、詳細情報に浸水深、浸水継続時間の一方または両方が含まれてもよい。ハザード種類が土砂災害である場合には、詳細情報に土砂災害警戒区域が含まれてもよい。
【0020】
対策行動識別部114には、ハザード識別部112からハザード情報が入力される。また、対策行動識別部114は、災害対策行動データベース142から、ハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する。災害対策行動データベース142には、少なくともハザード情報と対策行動項目を対応付けて記憶される。対策行動識別部114は、抽出した災害対策行動項目を示す災害対策行動情報を出力処理部116に出力する。
【0021】
なお、災害対策行動データベース142には、災害対策行動項目ごとに関連性情報が記憶されてもよい。関連性情報には、ハザード種類との関連性の情報が含まれる。関連性情報には、施設に関連する施設関連情報との関連性を示す情報が含まれてもよい。
他方、対策行動識別部114は、施設に関連する施設関連情報を入力部120から取得することができる。対策行動識別部114は、操作入力部158(後述)から施設関連情報を示す操作信号が入力されてもよいし、他の機器から施設関連情報が入力されてもよい。対策行動識別部114は、災害対策行動データベース142に記憶されている関連性情報を参照し、ハザード情報に示されるハザード種類と取得した施設関連情報との関連性を有する災害対策行動項目を特定してもよい。対策行動識別部114は、特定した災害対策行動項目を抽出する。
【0022】
施設関連情報には、事業種類情報、施設構造情報、施設属性情報、利用者属性情報、および、その他関連情報の少なくとも1つ、または、複数からなる組が含まれる。事業種類情報は、施設において営まれる主な事業を示す情報である。事業種類情報では、例えば、事務所(オフィス)、物販、工場、病院、学校、および、工事現場、などが示される。施設構造情報は、施設をなす建造物の構造的特徴を示す情報である。施設構造情報では、例えば、鉄筋コンクリート造(RC:Reinforced Concrete)建築、鉄骨造建築、木造、地下施設、などが示される。施設属性情報は、施設の属性を示す情報である。施設属性情報では、例えば、建造物の階数、築年数、被災歴、などが示される。利用者属性情報は、施設の主な利用者の属性を示す情報である。利用者属性情報では、例えば、一般成人、小児、高齢者、傷病者、などが示される。
【0023】
災害対策行動項目としては、災害の予防、回避、軽減、拡大防止、復旧など、損害の防止または低減に役立つ各種の行動が掲げられる。災害対策行動項目には、例えば、扉・窓の施錠、看板・のぼりの撤去、敷地内の片づけ、足場の撤去・補強、止水板の設置、排水ポンプ稼働、機器の高所への移動、患者の移送、避難者受け入れ、車両の移動、避難・立入禁止措置、操業ラインの停止、などがある。
【0024】
なお、対策行動識別部114は、災害対策行動項目の抽出に用いたハザード情報と施設関連情報の一方または両方を災害対策行動情報と対応付けて出力してもよい。対策行動識別部114は、抽出した災害対策行動項目について事業種類情報、施設構造情報、施設属性情報、利用者属性情報、および、その他関連情報との関連性を示す関連性情報を災害対策行動情報と対応付けて出力処理部116に出力してもよい。
【0025】
出力処理部116には、対策行動識別部114から災害対策行動情報が入力される。出力処理部116は、災害対策行動情報で示される災害対策行動項目を特定する。出力処理部116は、特定した災害対策行動項目を示すタイムライン行動情報を配置した表示画面を構成し、構成した表示画面を示す表示データを出力部150に出力する。出力処理部116は、出力部150をなす表示部(ディスプレイ)に表示データを出力し、災害対策行動項目が配置された表示画面をタイムライン行動一覧として表示させることができる。ユーザは、
図5に例示されるステップS04以降の工程を実践し、タイムライン行動一覧を把握し、個々の災害対策行動項目の所要時間を見積り、担当者を定めることでタイムラインを策定することができる。そのため、タイムライン策定に要する時間が大幅に短縮され、災害発生時に必要な災害対策行動項目をタイムラインにおいて網羅することが可能となる。
【0026】
出力処理部116は、対策行動識別部114から入力されるハザード情報と施設関連情報の一方または両方をさらに配置して表示画面を構成してもよい。タイムライン行動一覧を視認したユーザは、ハザード情報と施設関連情報の一方または両方を災害対策行動項目との関連事項として把握することができる。タイムライン行動一覧に列挙された災害対策項目をハザード情報または施設関連情報の要素となる要素項目を用いて選択することが動機付けられる(絞り込み)。
【0027】
例えば、出力処理部116は、操作入力部158から入力される操作信号で指示される施設関連情報の要素となる要素項目を特定する。出力処理部116は、操作入力部158から入力される操作信号で指示されるハザード種類を特定してもよい。出力処理部116は、特定した要素項目またはハザード種類と関連性を有する災害対策行動項目を選択することができる。よって、表示画面に表示させる災害対策行動項目を、操作により指示された要素項目に関連性を有するものに限定することができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る災害対策行動データベース142のデータ構成例について説明する。
図2は、災害対策行動データベース142のデータ構成の例を示す図である。災害対策行動データベース142は、災害対策行動項目、ハザード情報、施設関連情報、および、関連性情報を保存する。関連性情報は、災害対策行動項目ごとに、ハザード情報、および、施設関連情報のそれぞれの関連性を示す情報である。但し、施設構造情報の一部の要素項目、施設属性情報、利用者属性情報、および、その他関連情報の図示が省略されている。
【0029】
図示の例では、関連性情報は、ハザード情報、および、施設関連情報のそれぞれの要素項目と個々の災害対策行動項目との関連性の有無が、○印の有無をもって表現されている。例えば、
図3の第3行の「扉・窓の施錠」は、ハザード情報(ハザードの種類)として「強風」、「洪水」、「高潮」、および、「土砂」のいずれとも関連性を有する。「扉・窓の施錠」は、事業種類情報(事業の種類)の要素項目として「事務所」、「物販」、「工場」、「病院」、「学校」、および、「工事」のいずれとも関連性を有し、施設構造情報の要素項目として「RC建築」、および、「地下施設」のいずれとも関連性を有する。また、第6行の「足場の撤去・補強」は、ハザード情報の要素項目として「強風」と関連性を有し、その他の要素項目とは関連性を有しない。「足場の撤去・補強」は、事業種類情報の要素項目として「工場」、および、「工事」のいずれとも関連性を有し、その他の要素項目とは関連性を有さず、施設構造情報のいずれの要素項目とも関連性を有しない。
【0030】
次に、災害対策行動データベース142を用いた災害対策行動項目の抽出例について説明する。但し、物販事業者が入居するRC建築であるビルディングを処理対象の施設とし、ハザード種類として「強風」、および、「洪水」が特定される場合を例にする。
この場合、対策行動識別部114は、ハザード種類である「強風」に関して、施設関連情報の要素項目として「物販」と関連性を有する災害対策行動項目として「扉・窓の施錠」、「看板・のぼりの撤去」、および、「敷地内の片付け」の3項目を抽出することができる。
対策行動識別部114は、ハザード種類として「洪水」に関して、施設関連情報の要素項目として「物販」と関連性を有する災害対策行動項目として「扉・窓の施錠」、「看板・のぼりの撤去」、および、「敷地内の片付け」の他、「止水板の設置」、「排水ポンプ稼働」、「機器を高所へ移動」、「車両の移動」、および、「避難・立入禁止措置」の8項目を抽出することができる。よって、全体として8項目の災害対策行動項目がタイムライン行動一覧に現れる。
【0031】
なお、タイムラインの策定過程において災害対策行動データベース142に記録されていない新たな災害対策行動項目の必要性が明らかになる場合がある。記憶部140は、災害対策行動データベース142において新たな災害対策行動項目を追加し、少なくとも追加される災害対策行動項目とハザード種類の関連性を示す情報を上記の関連性情報に追加してもよい。記憶部140は、追加される災害対策行動項目と施設関連情報の各要素項目との関連性を示す情報を関連性情報に追加してもよい。記憶部140は、例えば、出力部150にデータベース更新画面を表示させ、操作入力部158から入力される操作信号で指示される情報を追加すべき情報として特定してもよいし、外部機器から入力部120を経由して追加すべき情報を取得してもよい。これにより、災害対策行動データベース142の増強が図られる。
【0032】
次に、本実施形態に係る災害対策支援処理の例について説明する。
図3は、本実施形態に係る災害対策支援処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS102)ハザード識別部112は、災害対策行動を導入する施設の位置を示す施設位置情報を取得する。
(ステップS104)ハザード識別部112は、ネットワークNWを経由して、ハザードデータ(ハザードマップ)を格納したサーバ装置20にハザード情報要求を送信する。ハザード識別部112は、サーバ装置20からの応答として、ハザード情報要求で伝達される施設位置情報に示される施設の位置に対応するハザード情報を取得する。
【0033】
(ステップS106)対策行動識別部114は災害対策行動を導入する施設に関する施設関連情報を取得する。対策行動識別部114は、取得したハザード情報と施設関連情報に基づき、災害対策行動データベース142からハザード情報に示されるハザード種類と施設関連情報の要素項目と関連性を有する災害対策行動項目を抽出する。
(ステップS108)出力処理部116は、抽出された災害対策行動項目を配置したタイムライン一覧を示す表示データを出力部150に出力する。
【0034】
(ハードウェア構成)
次に、本実施形態に係る災害対策支援装置10のハードウェア構成例について説明する。災害対策支援装置10は、
図1に示す各1個または複数個の機能部をなす専用の部材(例えば、集積回路)を含んで構成されてもよいが、その機能が汎用のハードウェアを備えるコンピュータがプログラムに記述された指令で指示される処理を実行することにより実現されてもよい。なお、本願では、プログラムに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「プログラムを実行する」、「プログラムの実行」などと呼ぶことがある。
【0035】
図4は、本実施形態に係る災害対策支援装置10のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。災害対策支援装置10は、プロセッサ152、ドライブ部156、操作入力部158、情報提示部160、ROM(Read Only Memory)162、RAM(Random Access Memory)164、補助記憶部166、および、インタフェース部168を含んで構成される。プロセッサ152、ドライブ部156、操作入力部158、情報提示部160、ROM162、RAM164、補助記憶部166、および、インタフェース部168は、バスBS(基線)を用いて相互に接続される。
【0036】
プロセッサ152は、例えば、ROM162に記憶されたプログラムや各種のデータを読み出し、当該プログラムを実行して、災害対策支援装置10の動作を制御する。プロセッサ152には、例えば、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)が含まれる。
【0037】
プロセッサ152は、所定のプログラムを実行して、上記の機能部の全部または一部の機能、例えば、制御部110は、ハザード識別部112、対策行動識別部114、および、出力処理部116の機能を実現してもよい。また、プロセッサ152は、ROM162、RAM164、ならびに、補助記憶部166のいずれか、または、いずれかの組と協働して記憶部140の機能を実現してもよい。プロセッサ152は、操作入力部158とインタフェース部168の一方または両方と協働して入力部120と通信部130の機能を実現してもよい。プロセッサ152は、情報提示部160とインタフェース部168の一方または両方と協働して通信部130と出力部150の機能を実現してもよい。
【0038】
記憶媒体154は、各種のデータを記憶する。記憶媒体154は、例えば、光磁気ディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどの可搬記憶媒体である。
ドライブ部156は、例えば、記憶媒体154からの各種データの読み出しと、記憶媒体154への各種データの書き込みの一方または両方を行う機器である。
【0039】
操作入力部158は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じて操作信号を生成し、生成した操作信号をプロセッサ152に出力する入力装置である。操作入力部158は、例えば、マウス、キーボード、タッチセンサなどのポインティングデバイスが該当する。
情報提示部160は、例えば、ディスプレイなどの表示部、スピーカなどの再生部を含んで構成される。
【0040】
ROM162は、例えば、プロセッサ152が実行するためのプログラムを記憶する。
RAM164は、例えば、プロセッサ152で用いられる各種データ、プログラムを一時的に保存する作業領域として機能する。
補助記憶部166は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどの記憶媒体である。
【0041】
インタフェース部168は、他の機器と接続し各種のデータを入力および出力可能とする。インタフェース部168は、例えば、有線または無線でネットワークに接続する通信モジュールを備える。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態に係る災害対策支援装置10は、災害対策行動を導入する施設の位置に基づいて、当該位置におけるハザードに関するハザード情報を取得するハザード情報識別部112を備える。災害対策支援装置10は、少なくともハザード情報と災害対策行動項目とを対応付けて記憶する災害対策行動データ記憶部(例えば、災害対策行動データベース142)から、取得されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を抽出する対策行動識別部114を備える。災害対策支援装置10は、抽出された災害対策行動項目を含むタイムライン行動一覧を出力部150に出力させる出力処理部116と、を備える。
この構成によれば、与えられた施設の位置におけるハザードに関するハザード情報が特定され、特定されたハザード情報に対応する災害対策行動項目を表すタイムライン行動一覧が出力部に出力される。ユーザは、災害対策の知識や経験を十分に有していなくても、災害対策行動を導入する施設の位置を与えることで、対策行動項目を知得することができる。そのため、対策行動項目を用いたタイムライン防災を容易に策定することができる。
【0043】
ハザード情報識別部112は、通信ネットワークNWに接続されたサーバ装置に記憶され、位置ごとのハザード情報を含むハザードマップを参照して、災害対策行動を導入する施設の位置におけるハザード情報を取得してもよい。
この構成によれば、外部のサーバ装置において管理されたハザードマップを参照して施設の位置に対応するハザード情報が取得される。外部のハザードマップを活用することで、社会全体としての導入コストを低減することができる。
【0044】
ハザード情報は、少なくともハザードの種類を含み、災害対策行動データ記憶部は、災害対策行動項目ごとにハザードの種類との関連性と、施設に関連する施設関連情報との関連性を示す関連性情報を記憶してもよい。対策行動識別部114は、施設関連情報を取得し、取得されたハザードの種類と施設関連情報に関連性を有する災害対策行動項目を抽出してもよい。
施設関連情報は、施設を用いる事業の種類を示す種類情報(例えば、事業種類情報)、施設の構造情報(例えば、施設構造情報)、施設の属性情報(例えば、施設属性情報)、および、施設の利用者の属性情報(例えば、利用者属性情報)のうち、少なくとも1項目を含んでいてもよい。
この構成によれば、施設の位置において生じうるハザードの種類について、その施設に関連する災害対策行動項目が抽出される。その施設におけるタイムライン防災に役立つ災害対策行動項目を取得することができるので、タイムライン防災の策定がより容易になされる。
【0045】
災害対策行動データ記憶部は、災害対策行動項目を追加するとき、追加した災害対策行動項目と、当該災害対策行動項目のハザードの種類と、施設関連情報との関連性を示す関連性情報を追加してもよい。
この構成によれば、関連性情報を参照して、追加された災害対策行動項目が、施設の位置に応じたハザード情報と施設に関連する施設関連情報と関連すれば抽出される。そのため、追加された災害対策行動項目のタイムライン防災の策定への活用が図られる。
【0046】
以上、本実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の各構成に限られるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の各構成は、任意に組み合わせることができ、その一部が省略されうる。
【0047】
例えば、災害対策支援装置10は、操作入力部158と情報提示部160の一方または両方を一体に備えた単一の機器として構成されてもよいし、一体に備えていなくてもよい。情報提示部160をなすディスプレイは、操作入力部158をなすタッチセンサと一体化され、タッチパネルとして構成されてもよい。
記憶部140には、ハザードデータを予め記憶させておいてもよい。その場合、ハザード識別部112は、サーバ装置20にハザード情報要求を送信することに代え、記憶部140に記憶されたハザードデータを参照し、施設位置情報で示される位置に対応するハザード情報を抽出してもよい。
【0048】
また、記憶部140には、災害対策行動データベース142の個々の災害対策行動項目に行動内容情報を対応付けて記憶させておいてもよい。行動内容情報には、災害対策行動項目のより詳細な行動内容が記述される。出力処理部116は、タイムライン行動一覧のいずれかの災害対策行動項目への押下を検出し、検出した災害対策行動項目に対応する行動内容情報を記憶部140から読み出してもよい。ここで、「押下」とは、現実に押下することの他、その表示領域内の位置を示す操作信号が操作入力部158から入力されるという意味を含む。出力処理部116は、読み出した行動内容情報を押下検出した災害対策行動項目と対応付けてタイムライン行動一覧をなす表示画面に配置し、出力部150に出力させてもよい。これにより、ユーザは災害対策行動項目を操作により指示し、指示した災害対策行動項目の詳細な行動内容を表示させることができる。
【0049】
記憶部140には、個々の災害対策行動項目に行動項目順序情報を対応付けて記憶させておいてもよい。行動項目順序情報は、例えば、災害対策行動項目の全体における個々の災害対策行動項目を実行する順序を示す通番となる。対策行動識別部114は、災害対策行動データベース142から災害対策行動項目を抽出する際、その災害対策行動項目に対応する行動項目順序情報を読み出し、読み出した行動項目順序情報を出力処理部116に出力してもよい。出力処理部116は、対策行動識別部114から入力される行動項目順序情報に示す順序に従って、その行動項目順序情報に対応する災害対策行動項目を配列してタイムライン行動一覧を構成してもよい。ユーザは、タイムライン行動一覧を視認して災害対策行動項目ごとに実行する順序を把握することができる。
【0050】
行動項目順序情報は、個々の災害種類情報と対応付けて記憶され、その災害種類情報と関連性を有する個々の災害対策行動項目を実行する順序を示す番号であってもよい。出力処理部116は、操作信号により特定の災害種類情報が指示されるとき、指示された災害種類情報と関連性を有する行動項目順序情報を特定してもよい。出力処理部116は、特定した行動項目順序情報に示す順序に従って、その行動項目順序情報に対応する災害対策行動項目を配列してタイムライン行動一覧を構成してもよい。ユーザは、特定した災害種類情報に係るタイムライン行動一覧を視認して災害対策行動項目ごとに実行する順序を把握することができる。
【0051】
記憶部140には、個々の災害対策行動項目に所要時間情報を対応付けて記憶させておいてもよい。所要時間情報は、例えば、災害対策行動に要する標準的な所要時間を示す情報となる。対策行動識別部114は、災害対策行動データベース142から災害対策行動項目を抽出する際、その災害対策行動項目に対応する所要時間情報を読み出し、読み出した所要時間情報を出力処理部116に出力してもよい。出力処理部116は、対策行動識別部114から入力される所要時間情報を対応する災害対策行動項目と関連付けて配列してタイムライン行動一覧を構成してもよい。ユーザは、タイムライン行動一覧を視認して災害対策行動項目ごとの所要時間を把握することができる。
【0052】
記憶部140には、個々の災害対策行動項目に担当者情報を対応付けて記憶させておいてもよい。担当者情報は、例えば、災害対策行動を実行する担当者または主幹となる部署を示す情報となる。対策行動識別部114は、災害対策行動データベース142から災害対策行動項目を抽出する際、その災害対策行動項目に対応する担当者情報を読み出し、読み出した担当者情報を出力処理部116に出力してもよい。出力処理部116は、対策行動識別部114から入力される担当者情報を対応する災害対策行動項目と関連付けて配列してタイムライン行動一覧を構成してもよい。ユーザは、タイムライン行動一覧を視認して災害対策行動項目ごとの担当者または部署を把握することができる。
【0053】
また、出力処理部116は、個々の災害対策行動項目に対応する各種の関連情報、即ち、行動内容情報、行動項目順序情報、所要時間情報、および、担当者情報の一部または全部を操作信号に基づいて追加または変更してもよい。出力処理部116は、追加または変更後の関連情報を対応する災害対策行動項目と対応付けて記憶部140に記憶する。
【符号の説明】
【0054】
S1…災害対策支援システム、10…災害対策支援装置、110…制御部、112…ハザード識別部、114…対策行動識別部、116…出力処理部、120…入力部、130…通信部、140…記憶部、142…災害対策行動データベース、150…出力部、152…プロセッサ、156…ドライブ部、158…操作入力部、160…情報提示部、162…ROM、164…RAM、166…補助記憶部、168…インタフェース部