IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2023-150009太陽電池サブモジュール及び太陽電池サブモジュール製造方法
<>
  • 特開-太陽電池サブモジュール及び太陽電池サブモジュール製造方法 図1
  • 特開-太陽電池サブモジュール及び太陽電池サブモジュール製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150009
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】太陽電池サブモジュール及び太陽電池サブモジュール製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20231005BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L31/04 124
H01L31/04 112Z
H01L31/04 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058872
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小西 克典
(72)【発明者】
【氏名】三島 良太
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA15
5F151EA03
5F151EA09
5F151EA10
5F151EA11
5F151EA16
5F151FA04
5F151GA03
5F151GA05
5F151GA06
(57)【要約】
【課題】光電変換効率の高い太陽電池サブモジュールを提供すること。
【解決手段】本発の一態様に係る太陽電池サブモジュールは、樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の主面側に積層される酸化シリコンからなる保護層と、前記保護層に積層される透明導電性酸化物からなる第1電極層と、前記第1電極層に積層される単分子膜からなる第1電荷輸送層と、前記第1電荷輸送層に積層されるペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層に積層される第2電荷輸送層と、前記第2電荷輸送層に積層される第2電極層と、を備え、前記第1電極層を切断するよう形成される第1分離溝と、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層及び前記第2電荷輸送層を切断するよう形成される第2分離溝と、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層、前記第2電荷輸送層及び前記第2電極層を切断するよう形成される第3分離溝と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、
前記樹脂基材の一方の主面側に積層される酸化シリコンからなる保護層と、
前記保護層に積層される透明導電性酸化物からなる第1電極層と、
前記第1電極層に積層される単分子膜からなる第1電荷輸送層と、
前記第1電荷輸送層に積層されるペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、
前記光電変換層に積層される第2電荷輸送層と、
前記第2電荷輸送層に積層される第2電極層と、
を備え、
前記第1電極層を切断するよう形成される第1分離溝と、
前記第1電荷輸送層、前記光電変換層及び前記第2電荷輸送層を切断するよう形成される第2分離溝と、
前記第1電荷輸送層、前記光電変換層、前記第2電荷輸送層及び前記第2電極層のうち少なくとも前記第2電極層を切断するよう形成される第3分離溝と、
を有する、太陽電池サブモジュール。
【請求項2】
前記樹脂基材と前記保護層との間に積層される反射層をさらに備える、請求項1に記載の太陽電池サブモジュール。
【請求項3】
前記反射層は、前記保護層に隣接する窒化シリコンからなる高屈折率層を含む、請求項2に記載のサブモジュール。
【請求項4】
樹脂基材の一方の主面側に酸化シリコンからなる保護層を積層する工程と、
前記保護層に透明導電性酸化物からなる第1電極層を積層する工程と、
レーザ照射により、前記第1電極層を切断する第1分離溝を形成する工程と、
前記第1電極層に単分子膜からなる第1電荷輸送層を積層する工程と、
前記第1電荷輸送層にペロブスカイト化合物を含む光電変換層を積層する工程と、
前記光電変換層に第2電荷輸送層を積層する工程と、
レーザ照射により、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層及び前記第2電荷輸送層を切断する第2分離溝を形成する工程と、
前記第2電荷輸送層に第2電極層を積層する工程と、
レーザ照射により、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層、前記第2電荷輸送層及び前記第2電極層のうち少なくとも前記第2電極層を切断する第3分離溝を形成する工程と、
を備える、太陽電池サブモジュール製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池サブモジュール及び太陽電池サブモジュール製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1枚の基材上に複数の太陽電池サブセルを電気的に直列に接続した状態で形成した太陽電池サブモジュールが知られている。太陽電池をサブモジュール化することにより、サブセル間は無効領域となるため有効面積は低下するが、特に受光面側の電極における抵抗損を軽減できる。太陽電池を適切にサブモジュール化すれば、有効面積の低下よりも抵抗損の軽減による光電変換効率向上効果が上回る。
【0003】
太陽電池サブモジュールは、基材に第1電極層を積層する工程、第1電極層を第1のレーザ照射により切断する工程、第1電荷輸送層、光電変換層及び第2電荷輸送層を積層する工程、第1電荷輸送層、光電変換層及び第2電荷変換層を第2のレーザ照射により切断する工程、第2電極層を積層する工程、並びに第1電荷輸送層、光電変換層、第2電荷輸送層及び第2電極層を第3のレーザ照射により切断する工程をこの順願に行い、第1のレーザ照射、第2のレーザ照射及び第3のレーザ照射の位置を順番に少しずつずらすことにより、電気的に直列に接続された複数の太陽電池サブセルを形成する方法により製造され得る(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-189408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可撓性を有する薄型の太陽電池サブモジュールを得るために、基材として樹脂フィルム、第1電極層として透明導電性酸化物、第1電荷輸送層として単分子膜、光電変換層としてペロブスカイト化合物を含む有機材料層を用いる構成も想定される。この場合、親水性の第1電極層を第1のレーザ照射により切断することで疎水性の樹脂フィルムが露出する。このため、単分子膜により第1電荷輸送層を形成する際に樹脂フィルムが自己組織化単分子膜形成材料を含む塗工液をはじくことがあるため、第1電荷輸送層に欠陥を生じて得られる太陽電池サブモジュールの光電変換効率が低下するおそれがある。また、第1のレーザ照射により樹脂フィルムの表層の材料が飛散して第1電極層に付着することによっても、第1電荷輸送層に欠陥を生じ、太陽電池サブモジュールの光電変換効率を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、光電変換効率の高い太陽電池サブモジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池サブモジュールは、樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の主面側に積層される酸化シリコンからなる保護層と、前記保護層に積層される透明導電性酸化物からなる第1電極層と、前記第1電極層に積層される単分子膜からなる第1電荷輸送層と、前記第1電荷輸送層に積層されるペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層に積層される第2電荷輸送層と、前記第2電荷輸送層に積層される第2電極層と、を備え、前記第1電極層を切断するよう形成される第1分離溝と、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層及び前記第2電荷輸送層を切断するよう形成される第2分離溝と、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層、前記第2電荷輸送層及び前記第2電極層のうち少なくとも前記第2電極層を切断するよう形成される第3分離溝と、を有する。
【0008】
上述の太陽電池サブモジュールは、前記樹脂基材と前記保護層との間に積層される反射層をさらに備えてもよい。
【0009】
上述の太陽電池サブモジュールにおいて、前記反射層は、前記保護層に隣接する窒化シリコンからなる高屈折率層を含んでもよい。
【0010】
本発明の別の態様に係る太陽電池サブモジュール製造方法は、樹脂基材の一方の主面側に酸化シリコンからなる保護層を積層する工程と、前記保護層に透明導電性酸化物からなる第1電極層を積層する工程と、レーザ照射により、前記第1電極層を切断する第1分離溝を形成する工程と、前記第1電極層に単分子膜からなる第1電荷輸送層を積層する工程と、前記第1電荷輸送層にペロブスカイト化合物を含む光電変換層を積層する工程と、前記光電変換層に第2電荷輸送層を積層する工程と、レーザ照射により、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層及び前記第2電荷輸送層を切断する第2分離溝を形成する工程と、前記第2電荷輸送層に第2電極層を積層する工程と、レーザ照射により、前記第1電荷輸送層、前記光電変換層、前記第2電荷輸送層及び前記第2電極層のうち少なくとも前記第2電極層を切断する第3分離溝を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光電変換効率の高い太陽電池サブモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池サブモジュールの構成を示す模式断面図である。
図2図1の太陽電池サブモジュールの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態の太陽電池サブモジュール1の構成を示す模式断面図である。なお、図において、各構成要素の寸法等は分かりやすいように修正されている。
【0014】
太陽電池サブモジュール1は、樹脂基材11と、樹脂基材11の一方の主面側(本実施形態では光が入射する側)に積層される反射層12と、反射層12に積層される保護層13と、保護層13に積層される第1電極層14と、第1電極層14に積層される第1電荷輸送層15と第1電荷輸送層15に積層される光電変換層16と、光電変換層16に積層される第2電荷輸送層17と、第2電荷輸送層17に積層される第2電極層18と、を備える。本実施形態の太陽電池サブモジュール1は、第2電極層18側から受光する。
【0015】
また、太陽電池サブモジュール1は、第1電極層14を切断するよう形成される複数の第1分離溝21と、第1電荷輸送層15、光電変換層16及び第2電荷輸送層17を切断するよう形成される複数の第2分離溝22と、第1電荷輸送層15、光電変換層16、第2電荷輸送層17及び第2電極層18のうち少なくとも第2電極層18を切断するよう形成される複数の第3分離溝23と、を有する。第1分離溝21、第2分離溝22及び第3分離溝23は、この順番に互いに接近して形成され、近接する第1分離溝21、第2分離溝22及び第3分離溝23の組がそれぞれサブセルの分離及び電気的接続を行う中間構造部C1を形成し、この中間構造部C1の間の部分がそれぞれ独立した光電変構造を有するサブセル部C2を形成する。
【0016】
樹脂基材11は、太陽電池サブモジュール1の強度を担保する構造部材である。本実施形態において、樹脂基材11は、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂から形成され得る。また、樹脂基材11は、可撓性を有する太陽電池サブモジュール1を形成するために、可撓性を有する樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0017】
反射層12は、樹脂基材11と反対側(受光面側)の各層を透過した光を反射して、光電変換層16に再度入射させることにより、太陽電池サブモジュール1の光電変換効率を向上する。反射層12は、保護層13を透過した光を効率よく反射するために、保護層13に隣接する高屈折率層121を含むことが好ましく、高屈折率層121と低屈折率層122とを交互に有するブラッグ反射層であることがより好ましい。
【0018】
高屈折率層121は、窒化シリコン(SiN)から形成されることが好ましい。保護層13に隣接する高屈折率層121を窒化シリコンにより形成することにより、保護層13と反射層12との界面での反射率を向上できる。また、窒化シリコンから形成される高屈折率層121は、水分の透過を抑制し、光電変換層16を劣化させることを防止する保護層13の効果を向上することができる。低屈折率層122は、酸化シリコン(SiO)から形成されることが好ましい。低屈折率層122を酸化シリコンにより形成することによって、光電変換層16の水分による劣化を防止する効果をさらに向上できる。また、高屈折率層121を窒化シリコンで形成し、低屈折率層122を酸化シリコンで形成することにより、多層の反射層12を比較的容易に形成できる。
【0019】
保護層13は、反射層12を介して樹脂基材11の一方の主面側に積層される。保護層13は、酸化シリコンから形成される。保護層13は、第1分離溝21の形成時にレーザから樹脂基材11を保護する。また、保護層13は、樹脂基材11を透過した水分をブロックし、光電変換層16の水分による劣化を防止できる。さらに、保護層13は、第1分離溝21の奥部に第1電極層14を形成する透明導電性酸化物と同程度の親水性を有する面を形成することによって、第1電荷輸送層15の形成を容易にする。
【0020】
保護層13の厚みの下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、保護層13の厚みの上限としては、100nmが好ましく、50nmがより好ましい。保護層13の厚みを前記下限以上とすることによって、第1分離溝21の形成時に樹脂基材11を確実に保護できる。また、保護層13の厚みを前記上限以下とすることによって、不必要なコスト増や可撓性の低下を防止できる。
【0021】
第1電極層14は、第1電荷輸送層15を通して光電変換層16で生成された第1の電荷を収集して隣接するサブセル部C2又は外部に出力する。第1電極層14は、正孔を収集する正極である。第1電極層14は、透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)から形成される。第1電極層14を形成する透明導電性酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン及びそれらの複合酸化物等を用いることができる。これらの中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましい。さらに、信頼性又はより高い導電率を確保するために、インジウム酸化物にドーパントを添加することが好ましい。ドーパントとしては、例えば、Sn、W、Zn、Ti、Ce、Zr、Mo、Al、Ga、Ge、As、Si、S等が挙げられる。特に好適な例として、インジウム酸化物にスズが添加されたITO(Indium Tin Oxide)が広く知られている。
【0022】
第1電極層14の厚みの下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、第1電極層14の厚みの上限としては、100nmが好ましく、50nmがより好ましい。第1電極層14の厚みを前記下限以上とすることによって、電気抵抗を小さくすることにより光電変換効率を向上できる。また、第1電極層14の厚みを前記上限以下とすることによって、不必要なコスト増や可撓性の低下を防止できる。第1電極層14は、例えば多結晶ITO層と非晶質ITO層との積層構造等の多層構造を有してもよい。
【0023】
第1電荷輸送層15は、光電変換層16で発生する第1の極性の電荷を通過させる層であり、本実施形態では正孔を第1電極層14に伝達する正孔輸送層(HTL)が企図されている。第1電荷輸送層15は、自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayers)から形成される。自己組織化単分子膜からなる第1電荷輸送層15は、例えば2PACz([2-(9H-Carbazol-9-yl)ethyl]phosphonic Acid)、MeO-2PACz([2-(3,6-Dimethoxy-9H-carbazol-9-yl)ethyl]phosphonic Acid)、Me-4PACz([4-(3,6-Dimethyl-9H-carbazol-9-yl)butyl]phosphonic Acid)等によって形成され得る。
【0024】
光電変換層16は、入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する。光電変換層16は、ペロブスカイト化合物を含む。光電変換層16に含まれるペロブスカイト化合物としては、1価の有機アンモニウムイオン及びアミジニウム系イオンのうちの少なくとも1種を含む有機原子A、2価の金属イオンを生成する金属原子B、及びヨウ化物イオンI、臭化物イオンBr、塩化物イオンCl、及びフッ化物イオンFのうちの少なくとも1種を含むハロゲン原子Xを含み、ABXで表される化合物を用いることができる。中でも、光電変換層16を蒸着法(ドライプロセス)により形成する場合、有機原子AとしてはメチルアンモニウムMA(CHNH)が好ましく、金属原子Bとしては鉛Pbが好ましく、ハロゲン原子Xとしてはヨウ化物I、臭化物イオンBr及び塩化物イオンClのうちの少なくとも1つが好ましい。
【0025】
具体的に、好ましいペロブスカイト化合物としては、メチルアンモニウムハロゲン化鉛MAPbX(CHNHPbX)、MAPbI、MAPbBr、MAPbCl等が挙げられる。なお、ハロゲン原子Xとしては複数種類を含んでもよい。ヨウ化物Iと他のハロゲン原子Xとを含むペロブスカイト化合物としては、例えばメチルアンモニウムヨウ化鉛MAPbI(3-y)(CHNHPbI(3-y))、MAPbIBr(3-y)、MAPbICl(3-y)等が挙げられる(yは任意の正の整数)。
【0026】
光電変換層16の厚みとしては、形成材料等にもよるが、光の吸収率を大きくしつつ、生成する電荷の移動距離を小さくするために、100nm以上1000nm以下とすることが好ましい。
【0027】
第2電荷輸送層17は、光電変換層16で発生する第2の極性の電荷を通過させる層であり、本実施形態では電子を第2電極層18に伝達する電子輸送層(ETL)である。電子輸送層である第2電荷輸送層17の主材料としては、例えば、PTAA(Poly(bis(4-phenyl)(2,4,6-trimethylphenyl)amine))、Spiro-MeOTAD、フラーレン等が挙げられる。フラーレンとしては、例えばC60、C70、これらの水素化物、酸化物、金属錯体、アルキル基等を付加した誘導体、例えば、PCBM([6,6]-Phenyl-C61-Butyric Acid Methyl Ester)などが挙げられる。特に第2電荷輸送層17をリチウムLiを内包させたフラーレンを含む材料から形成することにより、電子の輸送効率を向上することができる。また、第2電荷輸送層17は、多層構造を有してもよい。
【0028】
第2電荷輸送層17の厚みとしては、その材料、隣接する層の構成等により大きく異なり得るが、例えば3nm以上30nm以下とされ得る。
【0029】
第2電極層18は、第1電極層14と対をなす電極であり、本実施形態では負極である。第2電極層18は、第1電極層14と同様に、透明導電性酸化物から形成され得る。第2電極層18の厚みも、第1電極層14と同様とすることができる。
【0030】
第2電極層18の厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。一方、第2電極層18の厚みの上限としては、200nmが好ましく、100nmがより好ましい。第2電極層18の厚みを前記下限以上とすることによって、集電抵抗を十分に小さくできる。また、第2電極層18の厚みを前記上限以下とすることによって、第3分離溝23の形成が容易となる。
【0031】
第1分離溝21は、サブセル部C2の間で第1電極層14を分離する。第1分離溝21の幅としては、後述するように、レーザアブレーションにより形成することを考慮すると、10μm以上200μm以下とされることが好ましく、20μm以上100μm以下とされることがより好ましい。これにより、サブセル部C2間の確実な分離とサブセル部C2の有効面積の確保とが可能となる。
【0032】
第2分離溝22は、第1電極層14と第2電極層18とを電気的に接続するために形成される。このため、第2分離溝22は、少なくとも内面が第2電極層18によって被覆され、好ましくは内部空間略全体に第2電極層18の形成材料が充填される。第2分離溝22の幅は、第1分離溝21の幅と同様とされる。
【0033】
第3分離溝23は、サブセル部C2の間で第1電荷輸送層15、光電変換層16、第2電荷輸送層17及び第2電極層18のうち少なくとも第2電極層18を分離する。
【0034】
太陽電池サブモジュール1は、図2に示す、本発明に係る太陽電池サブモジュール製造方法の一実施形態により製造することができる。
【0035】
本実施形態に係る太陽電池サブモジュール製造方法は、樹脂基材11に反射層12を積層する工程(S01:反射層積層工程)と、反射層12に保護層13を積層する工程(S02:保護層積層工程)と、保護層13に第1電極層14を積層する工程(S03:第1電極層積層工程)と、レーザ照射により第1電極層14を切断する第1分離溝21を形成する工程(S04:第1分離溝形成工程)と、第1電極層14に第1電荷輸送層15を積層する工程(S05:第1電荷輸送層積層工程)と、第1電荷輸送層15に光電変換層16を積層する工程(S06:光電変換層積層工程)と、光電変換層16に第2電荷輸送層17を積層する工程(S07:第2電荷輸送層積層工程)と、レーザ照射により第1電荷輸送層15、光電変換層16及び第2電荷輸送層17を切断する第2分離溝22を形成する工程(S08:第2分離溝形成工程)と、第2電荷輸送層17に第2電極層18を積層する工程(S09:第2電極層積層工程)と、レーザ照射により、第1電荷輸送層15、光電変換層16、第2電荷輸送層17及び第2電極層18のうち少なくとも第2電極層18を切断する第3分離溝23を形成する工程(S10:第3分離溝形成工程)と、を備える。
【0036】
S01の反射層積層工程では、樹脂基材11の表面(受光する側の面)に、反射層12(高屈折率層121及び低屈折率層122)を積層する。反射層12は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法などの方法で積層され得る。なお、樹脂基材11は、裏面(受光面と反対側の面)が例えばガラス基板等の支持体に支持されていてもよい。この場合、支持体上に太陽電池サブモジュール1が形成され、最後に完成した太陽電池サブモジュール1を支持体から剥離することで、中間製品のハンドリング及び各層の精密な形成が容易となる。
【0037】
S02の保護層積層工程では、反射層12の表面に、酸化シリコンを積層することにより保護層13を形成する。保護層13は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法などの方法で積層され得る。
【0038】
S03の第1電極層積層工程では、反射層12の表面に、透明導電性酸化物を積層することによって第1電極層14を形成する。第1電極層14は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法などの方法で積層され得る。
【0039】
S04の第1分離溝形成工程では、レーザアブレーションにより、第1電極層14を複数の平行な線状に除去することによって、複数の第1分離溝21を形成する。このとき、第1電極層14に下に保護層13が存在することによって、樹脂基材11の材料が除去されないため、樹脂が飛散して第1電極層14の表面に付着することを防止できる。
【0040】
S05の第1電荷輸送層積層工程では、第1電極層14の表面に自己組織化単分子膜を形成することによって第1電荷輸送層15を積層する。自己組織化単分子膜は、自己組織化単分子膜形成材料を例えばエタノール、イソプロパノール等の有機溶媒に溶解してなる単分子膜形成材料溶液の塗工及び乾燥によって形成される。単分子膜形成材料溶液の塗工は、例えばスピンコート法等によって行うことが好ましい。
【0041】
ここで、透明導電性酸化物から形成される第1電極層14と第1分離溝21に露出する酸化シリコンから形成される保護層13とはともに親水性であり、単分子膜形成材料溶液に対して近似する良好な濡れ性を示す。これにより、単分子膜形成材料溶液の均一な塗膜を形成することができるので、欠陥のない第1電荷輸送層15を比較的容易に形成できる。また、保護層13が第1分離溝形成工程における樹脂材料の飛散による第1電極層14の表面への異物の付着を抑制していることによって、単分子膜形成材料溶液の均一な塗膜形成が阻害されず、欠陥のない第1電荷輸送層15をより確実に形成できる。
【0042】
S06の光電変換層積層工程では、第1電荷輸送層15の表面に光電変換層16を積層する。ペロブスカイト化合物を含む光電変換層16は、ペロブスカイト化合物がメチルアンモニウムハロゲン化鉛(MAPbX(CHNHPbX))である場合、光電変換層16は、ハロゲン化鉛(PbX)材料及びハロゲン化メチルアンモニウム(MAX)材料を順に製膜し、これらの材料の薄膜を反応温度で反応させることにより形成され得る。例えば、ペロブスカイト化合物がメチルアンモニウムヨウ化鉛(MAPbI(3-y)(CHNHPbI(3-y)))である場合、光電変換層16は、例えばハロゲン化鉛(PbX2)材料及びヨウ化メチルアンモニウム(MAI)材料を順に製膜し、これらの材料の薄膜を反応温度で反応させることにより形成される。また、光電変換層16は、例えば液相の塗膜内でペロブスカイト化合物を合成するゾルゲル法、予め合成されたペロブスカイト化合物を含む溶液を塗布する塗布法等の方法によっても形成され得る。
【0043】
S07の第2電荷輸送層積層工程では、光電変換層16の表面に第2電荷輸送層17を積層する。第2電荷輸送層17は、例えばゾルゲル法、塗布法等の方法により形成され得る。
【0044】
S08の第2分離溝形成工程では、レーザアブレーションにより、第1電荷輸送層15、光電変換層16及び第2電荷輸送層17を複数の平行な線状に除去することによって、複数の第2分離溝22を形成する。
【0045】
S09の第2電極層積層工程では、第2電荷輸送層17の表面に第2電極層18を積層する。第2電極層18は、第2分離溝22の奥部において第1電極層14に接触するよう積層される。第2電極層18は、スパッタリング法、真空蒸着法等の方法により積層され得る。
【0046】
S10の第3分離溝形成工程では、レーザアブレーションにより、第1電荷輸送層15、光電変換層16、第2電荷輸送層17及び第2電極層18のうち少なくとも第2電極層18を複数の平行な線状に除去することによって、複数の第3分離溝23を形成する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る太陽電池サブモジュール製造方法では、保護層13を形成することによって、欠陥のない第1電荷輸送層15を形成できるため、光電変換効率の高い太陽電池サブモジュールを製造できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例として、本発明に係る太陽電池サブモジュールは、反射層を省略することにより樹脂基材側から受光できるように構成されてもよく、この場合、第2電極層は導電性ペースト、金属メッキ等から形成される透光性を有しないものであってもよい。また、本発明に係る太陽電池サブモジュールは、例えば反射防止膜等のさらなる構成を備えてもよい。
【実施例0049】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
試作例1として、ポリイミドで形成した樹脂基材に直接ITOからなる第1電極層を積層し、第1電極層に塗工によって単分子膜からなる第1電荷輸送層を積層し、さらに光電変換層、第2電荷輸送層及び第2電極層を積層した太陽電池サブモジュールを試作した。
【0051】
試作例2として、ポリイミドで形成した樹脂基材に酸化シリコンからなる保護層を積層した上に、試作例1と同様の第1電極層、第1電荷輸送層、光電変換層、第2電荷輸送層及び第2電極層を積層した太陽電池サブモジュールを試作した。
【0052】
試作例3として、ポリイミドで形成した樹脂基材に酸化シリコンと窒化シリコンを交互に積層したブラッグ反射層を形成した上に、試作例2と同様の保護層、第1電極層、第1電荷輸送層、光電変換層、第2電荷輸送層及び第2電極層を積層した太陽電池サブモジュールを試作した。
【0053】
太陽電池サブモジュールの試作例1~3について、リーク発生率を測定した。なお、「リーク」とは、太陽電池サブモジュールを1sunの光照射下で評価したI-V曲線において、シャント抵抗が10Ω以下であることを意味する。この結果、試作例1のリーク発生率は35%、試作例2のリーク発生率は9%、試作例3のリーク発生率は4%であった。
【0054】
試作例2では、第1電極層の下部に酸化シリコンからなる保護層が存在することにより、第1分離溝を形成したときに樹脂基材の露出を防止し、塗工により単分子膜からなる第1電荷輸送層を積層する際に単分子膜形成材料を均一に塗布できたことで、リークの発生を低減できたと考えられる。さらに、試作例3では保護層の下にブラッグ反射層を形成することにより、第1分離溝の形成による樹脂基材の露出をさらに低減でき、これにより、試作例2よりもさらにリーク発生率を低下することができたと考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 太陽電池サブモジュール
11 樹脂基材
12 反射層
13 保護層
14 第1電極層
15 第1電荷輸送層
16 光電変換層
17 第2電荷輸送層
18 第2電極層
21 第1分離溝
22 第2分離溝
23 第3分離溝
C1 中間構造部
C2 サブセル部
図1
図2