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特開2023-150024パラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150024
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】パラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B29C70/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058890
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洋樹
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AR07
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HC02
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK19
4F205HK23
(57)【要約】
【課題】原点復帰後のパラレルリンク機構の動作を正確に制御することができるパラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置を提供する。
【解決手段】直動シリンダ54をアクチュエータとして有するパラレルリンク機構50において、パラレルリンク機構50により位置調節される被調節部40を固定治具80に押し当てた状態で得られた各直動シリンダ54の位置情報を各直動シリンダ54の原点位置として設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動シリンダをアクチュエータとして有するパラレルリンク機構において、前記パラレルリンク機構により位置調節される被調節部を固定治具に押し当てた状態で得られた各前記直動シリンダ位置情報を各前記直動シリンダの原点位置として設定することを特徴とする、パラレルリンク機構の原点位置設定方法。
【請求項2】
前記固定治具は、前記パラレルリンク機構の移動自由度のうち一部を拘束するよう前記被調節部と接触する第1の拘束機構と、前記被調節部と第1の拘束機構が接触した状態から残りの移動自由度を拘束することにより前記被調節部を固定する第2の拘束機構と、を有することを特徴とする、請求項1に記載のパラレルリンク機構の原点位置設定方法。
【請求項3】
前記押し当ては、各前記直動シリンダを動作させ、前記被調節部を前記固定治具方向に移動させるステップと、全ての前記直動シリンダが停止状態となることを監視するステップと、各前記直動シリンダに付随するエンコーダの位置をゼロリセットするステップと、あらかじめ定める目標姿勢から現在のシリンダ長を計算するステップと、計算された前記シリンダ長を、各前記直動シリンダの補正量として登録するステップと、を有することを特徴とする、請求項1もしくは2に記載のパラレルリンク機構の原点位置設定方法。
【請求項4】
直動シリンダをアクチュエータとして有するパラレルリンク機構の原点位置設定装置であって、
前記パラレルリンク機構により位置調節される被調節部を押し当てた状態で固定する固定治具と、
各前記直動シリンダ位置情報を取得する制御部と、
を備え、
前記制御部は、被調節部を固定治具に押し当てた状態で得られた各前記直動シリンダ位置情報を各前記直動シリンダの原点位置として設定することを特徴とする、パラレルリンク機構の原点位置設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたとえばテープ貼付装置のようなパラレルリンク機構を有する装置におけるパラレルリンク機構を構成する各シリンダの原点位置設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め樹脂が含浸された炭素繊維等の繊維束をテープ状に成形したもの(プリプレグテープ、UDテープなどとも呼ぶ)を被貼付面に貼付けてゆくことで、所望の形状をした繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)成形品を製造する方法が知られている。
【0003】
これらの製法は、ATL(Auto Tape Layup)、ATW(Auto Tape Welding)、AFP(Auto Fiber Placement)など種々の称呼があるが、これらは厳密に区別されているものでない。本明細書に於いては、テープを押圧しながら被貼付面に貼付けていく製法を総称してATLと呼び、その装置(テープ貼付装置)をATL装置と呼ぶこととする。
【0004】
従来のATL装置の一例が下記の特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1記載のATL装置は、多関節ロボットのアーム先端にATLヘッドが取り付けられている。前記ATLヘッドは、テープを保持搬送するフィーダー、テープ及び/又はワークの被貼付面を加熱するヒータ、及びテープを被貼付面に貼り付ける押圧ローラを含んで構成されている。
【0006】
前記ワークは、例えば、熱可塑性樹脂の射出成型品であって、様々な形状(3次元形状)を有しており、設計上の形状、寸法に対して形状誤差を有していることが多い。
【0007】
そのため、特許文献1に開示されたような前記多関節ロボットによる前記ATLヘッドの姿勢制御では、前記押圧ローラによる前記ワークの被貼付面への押圧が不十分な箇所が生じたりして、押圧状態にばらつきが生じることがあり、前記被貼付面に対する押圧ローラの押圧状態を一定に保つことが難しいという課題があった。
【0008】
係る課題を解決するために本出願人らは、下記の特許文献2に開示されたATL装置を提案した。特許文献2記載のATL装置は、ATLヘッドが、押圧部と、パラレルリンク機構とを備えた構成となっている。
【0009】
特許文献2記載のATL装置によれば、前記パラレルリンク機構の動作制御により、ワークの被貼付面にテープを押し付ける前記押圧部の押圧位置及び/又は押圧姿勢を前記被貼付面の形状に倣うように動作させることが可能となり、前記ワークが幾らかの形状誤差を有している場合であっても、前記被貼付面に対する前記押圧部の押圧状態を一定に保つことが可能となり、前記テープの貼付性能を高めることが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-149730号公報
【特許文献2】特開2020-147035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献2に明示されるパラレルリンク機構を構成するエアシリンダのような直動機器を動作させるにあたり、まず原点復帰が行われる。この原点復帰により得られる原点位置情報をもとに、パラレルリンクを所望の位置および姿勢にするための各エアシリンダの移動量が設定される。
【0012】
エアシリンダにおける従来の原点復帰方式を図8(a)乃至(c)に示す。図8(a)は、エアシリンダ100のピストン102の移動によってピストン102に固定された当て止め部103がシリンダ101に当接させる、いわゆる当て止め方式であり、当て止め部103がシリンダ101に当接した位置を図示しないエンコーダのゼロ位置とすることで原点復帰がなされる。
【0013】
図8(b)は、ピストン102に固定された検出部材104をシリンダ101に固定されたセンサである検出器105が検出する位置を図示しないエンコーダのゼロ位置とする方式である。
【0014】
図8(c)は、アブソリュート型エンコーダ106が用いられる方式であり、あらかじめ登録されているアブソリュート型エンコーダ106の座標を機械原点とする方式である。
【0015】
一方、上記の従来の原点復帰方式には欠点もあった。たとえば図8(a)に示した押し当て方式では、図9(a)に示すように経年により当て止め部103の位置ずれや変形が生じる場合があり、その場合、原点位置が所定位置からずれてしまう。また、図8(b)に示した検出方式では、図9(b)に示すように検出器105の検出精度が劣っている場合には検出器105が検出部材104を検知する位置にばらつきが生じ、原点復帰後のピストン102の位置制御精度に悪影響を及ぼす可能性があった。また、図8(c)に示したアブソリュート型エンコーダ106を用いた方式では、複数のパルス信号の組み合わせでピストン102の現在位置を計算するため、本方式で用いるリニアスケールが大型化し、すなわちパラレルリンク機構が大型化するおそれがあった。
【0016】
本願発明は、上記問題点を鑑み、原点復帰後のパラレルリンク機構の動作を正確に制御することができるパラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法は、直動シリンダをアクチュエータとして有するパラレルリンク機構において、前記パラレルリンク機構により位置調節される被調節部を固定治具に押し当てた状態で得られた各前記直動シリンダ位置情報を各前記直動シリンダの原点位置として設定することを特徴としている。
【0018】
本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法では、パラレルリンク機構と別個に設けられた固定治具を用いて当て決めでパラレルリンク機構の原点位置設定を行うことにより、パラレルリンク機構を大型化させることなく、また、センサを用いた場合のようなばらつきがなく原点位置設定を行うことができる。
【0019】
また、前記固定治具は、前記パラレルリンク機構の移動自由度のうち一部を拘束するよう前記被調節部と接触する第1の拘束機構と、前記被調節部と第1の拘束機構が接触した状態から残りの移動自由度を拘束することにより前記被調節部を固定する第2の拘束機構と、を有すると良い。
【0020】
こうすることにより、一度に全ての移動自由度を拘束する方式と比べて容易に被調節部を固定させることができる。
【0021】
また、前記押し当ては、各前記直動シリンダを動作させ、前記被調節部を前記固定治具方向に移動させるステップと、全ての前記直動シリンダが停止状態となることを監視するステップと、各前記直動シリンダに付随するエンコーダの位置をゼロリセットするステップと、あらかじめ定める目標姿勢から現在のシリンダ長を計算するステップと、計算された前記シリンダ長を、各前記直動シリンダの補正量として登録するステップと、を有すると良い。
【0022】
また、上記課題を解決するために本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法は、直動シリンダをアクチュエータとして有するパラレルリンク機構の原点位置設定装置であって、前記パラレルリンク機構により位置調節される被調節部を押し当てた状態で固定する固定治具と、各前記直動シリンダ位置情報を取得する制御部と、を備え、前記制御部は、被調節部を固定治具に押し当てた状態で得られた各前記直動シリンダ位置情報を各前記直動シリンダの原点位置として設定することを特徴としている。
【0023】
本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定装置では、パラレルリンク機構と別個に設けられた固定治具を用いて当て決めでパラレルリンク機構の原点位置設定を行うことにより、パラレルリンク機構を大型化させることなく、また、センサを用いた場合のようなばらつきがなく原点位置設定を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置により、原点復帰後のパラレルリンク機構の動作を正確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定装置を用いるテープ貼付装置を説明する図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかる固定治具を説明する図である。
図3】本発明の第1実施形態にかかる固定治具によるパラレルリンク機構の被調節部の固定方式を説明する図である。
図4】本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法を説明するフロー図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかる固定治具を説明する図である。
図6】本発明の第2実施形態にかかる固定治具によるパラレルリンク機構の被調節部の固定方式を説明する図である。
図7】本発明の第2実施形態にかかる固定治具によるパラレルリンク機構の被調節部の固定方式を説明する図である。
図8】従来のエアシリンダの原点復帰方式を説明する図である。
図9】従来のエアシリンダの原点復帰方式において生じうる問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定装置を用いる装置の一実施形態である、テープ貼付装置(ATL装置)について、図1を参照して説明する。図1(a)は正面図であり、図1(b)は図1(a)におけるAA矢視図である。なお、以下の説明では、テープ1の貼付方向をY軸方向、これと水平面で直交する方向をX軸方向、X軸及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明する。
【0027】
ATL装置10は、ワーク2の被貼付面2a上にテープ1を所定の貼付方向(Y軸方向)に貼り付けることにより、テープ1で補強された成型品を製造するための装置であり、ATLヘッド20およびフィーダー35を含んで構成されている。
【0028】
テープ1は、例えば、繊維束の少なくとも一部に予め樹脂を含浸させてテープ状にしたものであり、熱可塑性の樹脂が含浸されたもの(UDテープとも呼ばれる)や、熱硬化性の樹脂が含浸されたもの(プリプレグテープとも呼ばれる)などが適用され得る。テープ1は、炭素繊維を含むものでもよいし、樹脂テープに多数の短い繊維が混ぜ込まれたものでもよい。テープ1は、ワーク2の材質などに応じて、その種類が適宜選択され得る。また、テープ1は、複数のテープが並列に配置された形態のものであってもよい。
【0029】
ワーク2は、例えば、3次元形状を有する成型品であり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂製の成型品であってもよいし、金属製の成型品などであってもよい。
【0030】
ATLヘッド20は、ハンドリングロボット70に取り付けられており、このハンドリングロボット70によってATLヘッド20全体をワーク2に離接させる。ハンドリングロボット70は、少なくとも1軸方向に対象物を移動させる汎用産業用ロボット、例えば、ガントリ構造体(直交座標形機構ともいう)で構成してもよいし、多関節ロボット(シリアル多関節機構ともいう)で構成してもよい。ハンドリングロボット70は、ATLヘッド20を少なくともXYZ軸方向に並進運動可能な機構(3自由度)を備えているものが好ましい。ハンドリングロボット70の動作制御は、ロボット制御部70aにより実行される。
【0031】
ATLヘッド20は、押圧部30と、エンド部40と、パラレルリンク機構50と、ベース部60とを含んで構成されている。
【0032】
押圧部30は、フィーダー35によって搬送されたテープ1をワーク2の被貼付面2aとの間に挟持、押圧しつつテープ1を被貼付面2aに貼り付けるものである。
【0033】
エンド部40は、押圧部30を保持する矩形状の平板であり、エンド部40のパラレルリンク機構50が取り付けられた面とは反対側の面に押圧部30が取り付けられている。
【0034】
パラレルリンク機構50は、エンド部40を変位させ、押圧部30の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aに倣うように動作するものである。ここで、本説明では、パラレルリンク機構50により位置調節される上記のエンド部40および押圧部30を被調節部とも呼ぶ。
【0035】
ベース部60は、パラレルリンク機構50のエンド部40側とは反対側を保持するものであり、ベース部60にハンドリングロボット70が取り付けられている。
【0036】
押圧部30は、テープ1を押圧するローラ31を有し、さらにローラ31を回転軸31a周りに回転可能に支持するローラ支持部32を備えている。ローラ支持部32は、ローラ31の長手(回転軸31a)方向両側に配設されている。
【0037】
ローラ31は、テープ1の特性、又はワーク2の材質などに応じて、樹脂製ローラ、弾性ローラ、又は金属性ローラなどで構成され得る。ローラ31のサイズ(直径、幅)は、使用するテープ1の種類やサイズ、ワーク2の種類や形状に応じて適宜選択され得る。なお、別の構成例では、ローラ31に代えて、押圧シュー等の押圧部材が用いられてもよい。
【0038】
パラレルリンク機構50は、ベース部60とエンド部40との間に並列に設けられる複数のリンク部51を備えている。これら各リンク部51は、両端に自在継手52、53と、これら自在継手52、53の間に設けられるアクチュエータとしてのエアシリンダ54とを含んで構成されている。リンク部51の本数は特に限定されない。例えば、リンク部51は4本で構成されてもよいし、3本~6本で構成されてもよい。
【0039】
エアシリンダ54は、例えば、シリンダ部54aと、シリンダ部54a内の圧力に応じて進退するロッド部54bと、シリンダ部54a内の圧力を検出する圧力センサ54cと、ロッド部54bの変位を検出する変位センサ54dとを備えている。
【0040】
シリンダ部54aは、圧力センサ54cを介してサーボバルブ54eに接続されている。サーボバルブ54eは、シリンダ部54a内への空気の流入量や排気量を調整し、シリンダ部54aの両室の差圧を制御する。サーボバルブ54eは、コンプレッサなどの圧縮した空気を出力する空気圧供給部54fに接続されている。圧力センサ54cで検出された圧力信号と、変位センサ54dで検出された変位信号とは、それぞれATLヘッド制御部54gに出力される。
【0041】
ATLヘッド制御部54gは本説明における制御部にあたり、ATLヘッド制御部54gには、ワーク2の被貼付面2aの3次元座標データの他、これら3次元座標データ、圧力信号、変位信号などに基づいてATLヘッド20各部の動作を制御するプログラムなどが記憶されている。ATLヘッド制御部54gは、汎用のコンピューター装置で構成されてもよい。また、ATLヘッド制御部54gとロボット制御部70aとが1つの制御部で構成されてもよい。
【0042】
パラレルリンク機構50は、複数のリンク部51の各々の長さをエアシリンダ54でそれぞれ制御することにより、エンド部40の位置(並進)及び/又は姿勢(回転)を変化させて、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢を被貼付面2aの形状に倣うように動作させる機能を備えている。
【0043】
なお、パラレルリンク機構50には、エンド部40を変位させることにより、ローラ31を少なくともロール(θy)方向、及びピッチ(θx)方向に回動可能な自由度を有するものを採用することが好ましい。また、パラレルリンク機構50の自由度は、ハンドリングロボット70の動作機能(自由度)を考慮して設定してもよい。また、ハンドリングロボット70の動作機能に関わらずに、パラレルリンク機構50が、6自由度機構、すなわち、6方向(並進3方向、回転3方向)に運動させる機構を備えてもよい。
【0044】
ATLヘッド制御部54gは、各エアシリンダ54の圧力センサ54cや変位センサ54dから取り込んだ検出信号を用いて、各エアシリンダ54のサーボバルブ54eの動作(加圧動作又は減圧動作)を制御する。そして、ATLヘッド制御部54gは、サーボバルブ54eの動作制御により、各エアシリンダ54のシリンダ部54a内の圧力及び/又はロッド部54bの変位を制御して、ローラ31の押圧位置及び/又は押圧姿勢が被貼付面2aの形状に倣うようにエンド部40の変位を制御する処理を実行する。
【0045】
ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の変位制御において、望ましいコンプライアンス特性を得る観点からインピーダンス制御を行うように構成されていることが好ましい。前記インピーダンス制御では、エンド部40に慣性、粘性、剛性からなる機械的インピーダンスを仮想的に実現させるようアクチュエータ推力が制御される。例えば、前記インピーダンス制御では、目標インピーダンスである慣性、粘性、剛性のパラメータが設定される。そして、エンド部40の位置及び姿勢の目標値に対するエンド部40の変位を計測し、エンド部40の変位とエンド部40が外部へ与える力との関係が所定の関係(インピーダンス制御則)を満たすようにパラレルリンク機構50の動作を制御する。
【0046】
また、ATLヘッド制御部54gは、エンド部40の変位を制御する際に、目標とするエンド部40の位置及び姿勢を実現するための各エアシリンダ54のロッド部54bの長さ(変位)を計算する。そして、これら計算値が各エアシリンダ54のロッド部54bの長さの目標値として記憶される。ATLヘッド制御部54gは、これら記憶された目標値と、貼付動作時における各エアシリンダ54の変位センサ54dの出力値とを比較して、目標値になるようにフィードバック制御が行ってもよい。なお、前記目標値には、ワーク2の形状誤差が加味された、各エアシリンダ54のロッド部54bの長さが設定されてもよい。また、目標とするエンド部40の位置及び姿勢は、ワーク2の3次元座標データに基づく動作軌跡に対し、直交する方向(法線方向)からローラ31で被貼付面2aを押圧するためのエンド部40の位置及び姿勢である。
【0047】
次に、本発明にかかる固定治具について説明する。
【0048】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態にかかる固定治具を説明する図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は下面図である。
【0049】
固定治具80は、パラレルリンク機構50が有する被調節部のうちエンド部40を押し当てにより固定するものであり、上下に貫通する開口を有する。この開口は、側面接触部81、底面接触部82、押圧部逃がし穴83、およびスロープ84を有している。また、本実施形態では、この固定治具80はATL装置10の所定の位置に固定されており、パラレルリンク機構50の原点復帰が必要な際、ハンドリングロボット70によってATLヘッド20が固定治具80へ接近する。また、固定治具80自身も図示しない移動機構を有していても良い。
【0050】
また、固定治具80はたとえばステンレスなど硬質の部材で構成されていることが好ましい。これにより、経年のエンド部40との当接による変形を防ぐことができる。
【0051】
側面接触部81は、エンド部40の外形(図2におけるXY平面上の形状)とほぼ同じ形状である矩形の断面を有する開口である。この側面接触部81をエンド部40が通過する際、エンド部40の移動自由度のうちZ軸方向を除く5自由度(X、Y、θx、θy、θz軸方向)が拘束される。
【0052】
底面接触部82は、側面接触部81の下端部に設けられた内向きの段差である。この底面接触部82にエンド部40の底面が当接した際、エンド部40の移動自由度のうちZ軸方向が拘束される。
【0053】
押圧部逃がし穴83は、底面接触部82とつながってさらに下方に延びる開口であって、その断面積は側面接触部81の開口面積より小さい。この押圧部逃がし穴83は、エンド部40を押し当てる際に押圧部30が干渉することを防ぐために押圧部30を収めるスペースである。
【0054】
スロープ84は、側面接触部81の上端部とつながる傾斜面であり、下に行くほど開口面積が小さくなる形状を有する。
【0055】
次に、この第1実施形態にかかる固定治具によるパラレルリンク機構の被調節部の固定方式を、図3を用いて説明する。
【0056】
図3に示す実施形態では、図3(a)に矢印で示すように、エアシリンダ54を伸ばすことによりエンド部40の押し当てを行うため、各エアシリンダ54は、充分に縮まった状態から押し当てを開始する。一方、この形態とは異なり、固定治具80を上昇させることによってエンド部40の押し当てを行うようにしても良い。
【0057】
なお、図3(a)の状態ですでに押圧部30は押圧部逃がし穴83に差し掛かっている状態であるが、ハンドリングロボット70がATLヘッド20全体を移動させることにより、この状態を形成させる。
【0058】
図3(a)のように押圧部30およびエンド部40が固定治具80に充分接近した状態が形成された後、各エアシリンダ54が伸びる方向に動作し、エンド部40が下方に変位する。エンド部40の下方への変位にともない、エンド部40は側面接触部81に差し掛かり、そこからエンド部40はZ軸方向を除く5自由度(X、Y、θx、θy、θz軸方向)が拘束された状態で変位を続ける。
【0059】
エンド部40の変位が続き、図3(b)のようにエンド部40の底面が底面接触部82に当接したとき、エンド部40の移動自由度のうち最後のZ軸方向の自由度も拘束され、エンド部40の固定治具80への押し当てが完了する。このときの各シリンダ54の位置情報を、制御部(ATLヘッド制御部54g)が原点位置として取得し、以降のパラレルリンク機構50の制御に反映させる。
【0060】
このようにパラレルリンク機構50とは別個の固定治具80を用いてパラレルリンク機構50の原点復帰が行われることにより、パラレルリンク機構50を大型化させることなく、また、センサを用いた場合のようなばらつきがなく原点位置設定を行うことができる。
【0061】
ここで、本実施形態においてエンド部40が側面接触部81を通過する際、一気に5自由度が拘束されるが、側面接触部81の配置位置に対したとえばエンド部40がX軸方向やY軸方向にずれていたりθz方向に傾いていたりしていれば、エンド部40は容易に側面接触部81に突入していけない。
【0062】
これに対し、本実施形態ではスロープ84が設けられており、上記のずれや傾きがあった場合、エンド部40の端部がスロープ84と接触し、その状態でエンド部40の下降が継続するのとあわせてエンド部40が側面接触部81に突入可能な体勢をとれるよう、スロープ84がエンド部40のいくつかの移動自由度を拘束しつつエンド部40を誘導する。
【0063】
このスロープ84が設けられることにより、一度に全ての移動自由度を拘束する方式と比べて容易に被調節部を固定させることができる。なお、本説明では、スロープ84のように被調節部(エンド部40)の全ての移動自由度を拘束する前に一部の移動自由度を拘束するものを第1の拘束機構とよび、また、側面接触部81および底面接触部82のように被調節部の残りの移動自由度を拘束して被調節部を固定するものを第2の拘束機構と呼ぶ。
【0064】
次に、本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法について、図4のフロー図を用いて説明する。
【0065】
まず、図3(a)のように押圧部30およびエンド部40が固定治具80に充分接近した状態が形成された後、各エアシリンダ54が固定治具80の方向(伸びる方向)に変位し、エンド部40が下方に変位する(ステップS1)。このとき、最初に仮原点位置として固定治具80から遠い方向(縮む方向)に各エアシリンダ54が限界まで変位し、初期体勢をとる制御が入っていても良い。また、各シリンダ54の変位速度は、等速となるよう制御されることが好ましい。
【0066】
ステップS1が行われている間は、各エアシリンダ54の圧力センサ54cの値がATLヘッド制御部54gにより監視され、全てのエアシリンダ54が停止状態となっているか(これ以上変位することができないか)否かが判断される(ステップS2)。全てのエアシリンダ54が停止状態となるまで、各シリンダ54の変位が続けられる。
【0067】
図3(b)に示すようにエンド部40が底面接触部82に当接し、全てのエアシリンダ54が停止状態となった時、各エアシリンダ54における図示しないエンコーダがゼロリセットされる(ステップS3)。なお、このエンコーダはインクリメント型でも良く、アブソリュート型でも良い。
【0068】
次に、全てのエアシリンダ54が停止状態となった状態におけるエンド部40の姿勢から、ATLヘッド制御部54gによって各エアシリンダ54の長さが計算される(ステップS4)。
【0069】
最後に、各エアシリンダ54のシリンダ長さ計算値が補正量としてATLヘッド制御部54gに認識、設定され、パラレルリンク機構の原点位置設定が完了する(ステップS5)。なお、この補正量は、固定治具80が定める各エアシリンダ54の先端位置から逆運動学により計算されると良い。
【0070】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態にかかる固定治具を説明する図であり、図5(a)は正面図、図2(b)は下面図である。
【0071】
固定治具90は、前述の固定治具80と同様、パラレルリンク機構50が有する被調節部のうちエンド部40を押し当てにより固定するものであり、底面接触部91と、側面接触部92a乃至92dを有する。
【0072】
また、固定治具90はたとえばステンレスなど硬質の部材で構成されていることが好ましい。これにより、経年のエンド部40との当接による変形を防ぐことができる。
【0073】
底面接触部91は、エンド部40の底面の一部と当接可能な当接面を有するブロックであり、中央に押圧部逃がし穴93を有する。押圧部逃がし穴93は、エンド部40を底面接触部91に押し当てる際に押圧部30が干渉することを防ぐために押圧部30を収めるスペースであり、その断面積はエンド部40の底面接触部91に対する対向面の面積より小さく、エンド部40が押圧部逃がし穴93を貫通することは無い。
【0074】
側面接触部92a乃至92dは、エンド部40が底面接触部91に当接した状態においてエンド部40の各側面と対向する部材である。これら側面接触部92a乃至92dは、図示しない直動機構により底面接触部91と連結されており、底面接触部91のエンド部40との当接面の面方向(図5(a)、(b)におけるXY軸方向)において底面接触部91と離接可能となっている。
【0075】
また、本実施形態では、固定治具90を少なくとも上下方向に移動させる移動機構が設けられている。
【0076】
次に、この第2実施形態にかかる固定治具によるパラレルリンク機構の被調節部の固定方式を、図6および図7を用いて説明する。
【0077】
図6に示す実施形態では、図6(a)に矢印で示すように、固定治具90がエンド部40に向かって移動し、エアシリンダ54が縮むことによりエンド部40の押し当てが行われるため、各エアシリンダ54は、充分に伸びた状態から押し当てを開始する。一方、この形態とは異なり、ハンドリングロボット70によってパラレルリンク機構50ごとエンド部40を固定治具90へ接近させることによってエンド部40の押し当てを行うようにしても良い。
【0078】
図6(a)のように固定治具90がATLヘッド20の下方に位置する状態から、まず、図6(a)の矢印で示すように固定治具90全体がATLヘッド20のエンド部40に向かって上昇する。この固定治具90の上昇は、図6(b)に示すように底面接触部91がエンド部40の底面と当接し、さらに各エアシリンダ54がある程度押し込まれる状態となるまで継続される。この動作により、エンド部40の移動自由度のうちZ軸方向、θx軸方向、θy軸方向の自由度が拘束される。
【0079】
次に、図6(b)に示すように底面接触部91がエンド部40の底面と当接し、さらに各エアシリンダ54がある程度押し込まれる状態となった後、図6(b)に矢印で示すように側面接触部92a乃至92dが底面接触部91に接近する方向へ移動し、図7に示すようにエンド部40の各側面と当接する。これにより、エンド部40の残りの移動自由度(X軸方向、Y軸方向、θz方向)も拘束され、エンド部40の全移動自由度が拘束されて固定治具90に固定される状態が形成され、エンド部40の固定治具90への押し当てが完了する。このときの各シリンダ54の位置情報を、制御部(ATLヘッド制御部54g)が原点位置として取得し、以降のパラレルリンク機構50の制御に反映させる。
【0080】
このようにパラレルリンク機構50とは別個の固定治具90を用いてパラレルリンク機構50の原点復帰が行われることにより、パラレルリンク機構50を大型化させることなく、また、センサを用いた場合のようなばらつきがなく原点位置設定を行うことができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、底面接触部91が本説明の第1の拘束機構であって、側面接触部92a乃至92dが第2の拘束機構であり、容易に被調節部(エンド部40)を固定させることができる。
【0082】
以上のパラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置により、原点復帰後のパラレルリンク機構の動作を正確に制御することが可能である。
【0083】
ここで、本発明のパラレルリンク機構の原点位置設定方法およびパラレルリンク機構の原点位置設定装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では固定治具はエンド部を押し当てているが、これに限らず、押圧部など、パラレルリンク機構で位置制御されるものであればエンド部以外のもので押し当てが行われても構わない。
【符号の説明】
【0084】
1 テープ
2 ワーク
2a 被貼付面
10 ATL装置
20 ATLヘッド
30 押圧部
31 ローラ
31a 回転軸
32 ローラ支持部
35 フィーダー
40 エンド部
50 パラレルリンク機構
51 リンク部
52 自在継手
53 自在継手
54 エアシリンダ
54a シリンダ部
54b ロッド部
54c 圧力センサ
54d 変位センサ
54e サーボバルブ
54f 空気圧供給部
54g ATLヘッド制御部
60 ベース部
70 ハンドリングロボット
80 固定治具
81 側面接触部
82 底面接触部
83 押圧部逃がし穴
84 スロープ
90 固定治具
91 底面接触部
92a 側面接触部
92b 側面接触部
92c 側面接触部
92d 側面接触部
93 押圧部逃がし穴
100 エアシリンダ
101 シリンダ
102 ピストン
103 当て止め部
104 検出部材
105 検出器
106 アブソリュート型エンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9