(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015003
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】炭素粒子
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20230124BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C01B32/05
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112939
(22)【出願日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021118638
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阪下 晋平
(72)【発明者】
【氏名】杉野 遼介
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB01
4G146AB04
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC14A
4G146AC14B
4G146AD21
4G146AD37
4G146BA18
4G146BC03
4G146BC33B
4G146CB09
4J002AA011
4J002AA021
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BC061
4J002BG031
4J002BG101
4J002BN151
4J002CB001
4J002CC011
4J002CC041
4J002CC151
4J002CC181
4J002CC211
4J002CD051
4J002CD061
4J002CF051
4J002CF211
4J002CG001
4J002CH071
4J002CH091
4J002CH121
4J002CK021
4J002CL001
4J002CM021
4J002CM041
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】着色剤として使用可能な着色力を有しながらも、比抵抗値が高く、封止材に混錬した際に硫酸イオンの溶出が少ない炭素粒子が提供される。
【解決手段】本発明の炭素粒子は、炭素元素の含有比率が80%以上98%以下であり、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、硫黄含有量が150ppm以下である、炭素粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素元素の含有比率が80%以上98%以下であり、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、
硫黄含有量が150ppm以下である、炭素粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素粒子において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折法により測定された、横軸を2θ、縦軸を回折強度とするX線回折スペクトルにおいて、以下<方法>によって選択された直線をバックグラウンドとして除去した後に求められる、当該炭素粒子の(002)面のc軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが50Å以下である、炭素粒子。
<方法>
(1) 横軸を2θ、縦軸を回折強度とする前記X線回折スペクトルにおいて、2θ=10°の点または2θ=15°の点のいずれか1つと、2θ=30°の点または2θ=35°の点のいずれか1つとを選択し、選択された2点を直線で結び、計4本の直線を作成する。
(2)前記(1)で作成した4本の直線のうちの一つを選択する。
(3)2θが10°以上35°以下の領域において、前記(2)で選択した直線と、当該直線の下側に位置する前記X線回折スペクトルとで囲まれる面積Sを求める。
(4)前記(1)で作成した4本の直線のそれぞれについて、前記(2)および(3)のステップを繰り返し、得られた前記面積Sが最小となる直線Lを特定する。
(5)前記直線Lをバックグラウンド直線とする。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭素粒子において、
CIE1976L*a*b*表色系により規定されるb*の値が、-4以上+6以下である、炭素粒子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の炭素粒子において、
20kNの荷重を加えた際の比抵抗値が1.0×101Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である、炭素粒子。
【請求項5】
請求項1または2に記載の炭素粒子において、
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂および重合性高分子量体から選択される1種または2種以上の材料の炭化物を含む、炭素粒子。
【請求項6】
請求項1または2に記載の炭素粒子において、
塩素含有量が50ppm以下である、炭素粒子。
【請求項7】
請求項1または2に記載の炭素粒子において、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数がそれぞれ10%、50%、90%である粒子径D10、D50、D90を用いて、以下の式(1)から算出される粒径分布が0.5~2.0である、炭素粒子。
粒径分布=(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
成形材料用の黒色着色剤としては、カーボンブラックやチタン系黒色顔料、黒色酸化鉄(鉄黒)をはじめとする遷移金属化合物などが使用されている。
【0003】
一例として、特許文献1には、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などの特性に優れることに加えて、電気絶縁性を確保しつつ、封止成形物の表面抵抗率を半導電性領域に厳密に制御することができる封止用樹脂組成物が記載されている。
別の例として、特許文献2には、レーザーマーク性や電気特性に優れ、パッド間やワイヤー間距離が狭い半導体装置等の電子部品装置においても、導電性物質によるショート不良が発生せず、かつ成形性、信頼性、パッケージ表面の外観に優れた封止用エポキシ樹脂組成物及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-97282号公報
【特許文献2】特開2001-335677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明者らが上記文献に記載されている樹脂組成物に用いられている着色剤としての炭素粒子の検討を行ったところ、着色力、比抵抗値および封止材に混錬した際の電気絶縁性の観点からさらに改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、着色剤として使用可能な着色力を有しながらも、比抵抗値が高く、封止材に混錬した際に硫酸イオンの溶出が少ない炭素粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0008】
[1]
炭素元素の含有比率が80%以上98%以下であり、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、
硫黄含有量が150ppm以下である、炭素粒子。
[2]
上記[1]に記載の炭素粒子において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折法により測定された、横軸を2θ、縦軸を回折強度とするX線回折スペクトルにおいて、以下<方法>によって選択された直線をバックグラウンドとして除去した後に求められる、当該炭素粒子の(002)面のc軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが50Å以下である、炭素粒子。
<方法>
(1) 横軸を2θ、縦軸を回折強度とする前記X線回折スペクトルにおいて、2θ=10°の点または2θ=15°の点のいずれか1つと、2θ=30°の点または2θ=35°の点のいずれか1つとを選択し、選択された2点を直線で結び、計4本の直線を作成する。
(2)前記(1)で作成した4本の直線のうちの一つを選択する。
(3)2θが10°以上35°以下の領域において、前記(2)で選択した直線と、当該直線の下側に位置する前記X線回折スペクトルとで囲まれる面積Sを求める。
(4)前記(1)で作成した4本の直線のそれぞれについて、前記(2)および(3)のステップを繰り返し、得られた前記面積Sが最小となる直線Lを特定する。
(5)前記直線Lをバックグラウンド直線とする。
[3]
上記[1]または[2]に記載の炭素粒子において、
CIE1976L*a*b*表色系により規定されるb*の値が、-4以上+6以下である、炭素粒子。
[4]
上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の炭素粒子において、
20kNの荷重を加えた際の比抵抗値が1.0×101Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である、炭素粒子。
[5]
上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の炭素粒子において、
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂および重合性高分子量体から選択される1種または2種以上の材料の炭化物を含む、炭素粒子。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の炭素粒子において、
塩素含有量が50ppm以下である、炭素粒子。
[7]
上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の炭素粒子において、
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数がそれぞれ10%、50%、90%である粒子径D10、D50、D90を用いて、以下の式(1)から算出される粒径分布が0.5~2.0である、炭素粒子。
粒径分布=(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着色剤として使用可能な着色力を有しながらも、比抵抗値が高く、封止材に混錬した際に硫酸イオンの溶出が少ない炭素粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。本明細書中、「電子装置」とは、半導体チップ、半導体素子、半導体装置、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられ、回路基板上に半導体素子、抵抗、インダクタ等の電子部品が搭載された構造体を封止用樹脂組成物で一括封止した構造のものも含む。
【0012】
<炭素粒子>
まず、本実施形態の炭素粒子について説明する。
【0013】
本実施形態における炭素粒子は、炭素元素の含有比率が80%以上98%以下であり、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、硫黄含有量が150ppm以下である。
【0014】
従来の着色剤としてはカーボンブラックやチタン系黒色顔料、黒色酸化鉄(鉄黒)をはじめとする遷移金属化合物などが使用されており、その中でも特にカーボンブラックが好ましく使用されている。一方、カーボンブラックやチタン系黒色顔料では絶縁性が不十分であるために、封止材やブラックマトリックスなどに適用した場合、上記着色剤の導電性のために電子部品間の短絡を起こす可能性がある。また、上記着色剤の製法によっては、封止材などに適用した際に、着色剤の原料樹脂組成物または着色剤の製造過程において用いた硫酸などの硫黄元素を含む化合物由来の硫黄やハロゲンの溶出が発生し、封止した電子部品および配線を腐食させてしまうリスクがあった。
【0015】
一方、本実施形態における炭素粒子は炭素元素の含有比率が80%以上98%以下であり、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50が0.1μm以上30μm以下であり、硫黄含有量が150ppm以下であることにより、着色剤として使用可能な着色力を有しながらも、封止材に混錬した際に電子部品や配線の短絡および腐食を抑制することができる。
【0016】
以下、本実施形態における炭素粒子について、さらに詳細に説明する。
【0017】
本実施形態における炭素粒子の炭素元素の含有比率の下限値は80%以上であり、より好ましくは82%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。炭素元素の含有比率が上記下限値以上であることにより、炭素粒子の黒色度がより好適なものとなり、樹脂組成物に混錬した際の着色力がより良好なものとなる。
また、上記炭素元素の含有比率の上限値は98%以下であり、好ましくは97%以下であり、より好ましくは95%以下である。炭素元素の含有比率が上記上限値以下であることにより、炭素粒子の導電性の発現を抑えることができ、樹脂組成物に混錬した際の電気絶縁性がより良好なものとなる。
【0018】
本実施形態における炭素粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が50%である粒子径D50の下限値が、0.1μm以上であり、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。上記D50が上記下限値以上であることで、炭素粒子の黒色度がより好適なものとなるほか、樹脂組成物に混練した際の分散性が向上する。
また、上記粒子径D50の上限値は、30μm以下であり、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。上記D50が上記上限値以下であることで、炭素粒子の着色力がより好適なものとなるほか、炭素粒子を樹脂組成物に混練した際に、樹脂組成物の表面粗さをより良好にすることができる。
【0019】
本実施形態における炭素粒子は、炭素粒子中の硫黄含有量の上限値が150ppm以下であり、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。上記硫黄含有量が上記上限値以下であることにより、炭素粒子を混錬した封止用樹脂組成物で電子部品を封止した際に、封止構造内部の電子部品および配線の腐食を抑制することができ、たとえば、CuワイヤとAlパッドの接合部の腐食を高度に抑制できる。
また、上記硫黄含有量の下限値は特に限定されないが、例えば0ppm以上である。ここで、0ppmとは検出下限以下の数値も含む。
硫黄含有量は公知の方法で測定されていればよく、例えば、ダイオネクスICS2000型イオンクロマトグラフを用いて、測定試料中の硫酸イオンを検量線法により定量し、試料中の元素含有量に換算して炭素粒子中の硫黄含有量とすることで測定できる。
このような炭素粒子は、原料樹脂組成物または炭素粒子の製造過程において、硫酸などの硫黄元素を含む化合物を用いない、もしくは用いたとしても少量とすることにより製造することができる。
【0020】
本実施形態における炭素粒子は、線源としてCuKα線を用いたX線回折法により測定された、横軸を2θ、縦軸を回折強度とするX線回折スペクトルにおいて、以下<方法>によって選択された直線をバックグラウンドとして除去した後に求められる(002)面のc軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcの上限値が50Å以下であることが好ましく、40Å以下であることがより好ましく、30Å以下であることが特に好ましい。
【0021】
<方法>
(1) 横軸を2θ、縦軸を回折強度とする上記X線回折スペクトルにおいて、2θ=10°の点または2θ=15°の点のいずれか1つと、2θ=30°の点または2θ=35°の点のいずれか1つとを選択し、選択された2点を直線で結び、計4本の直線を作成する。
(2)上記(1)で作成した4本の直線のうちの一つを選択する。
(3)2θが10°以上35°以下の領域において、上記(2)で選択した直線と、当該直線の下側に位置する上記X線回折スペクトルとで囲まれる面積Sを求める。
(4)上記(1)で作成した4本の直線のそれぞれについて、上記(2)および(3)のステップを繰り返し、得られた面積Sが最小となる直線Lを特定する。
(5)上記直線Lをバックグラウンド直線とする。
【0022】
上記Lcが上記上限値以下であることにより、炭素粒子を混錬した封止用樹脂組成物を用いて成形体を作製した際に、成形品表面で欠け・剥離が生じにくくなり、装置汚染を防止できるという効果を得ることができる。これは、難黒鉛タイプの炭素は結晶性の黒鉛より硬く炭素層が剥離しにくいことに起因すると思われる。
また、上記Lcの上限値が40Å以下であることにより、封止用樹脂組成物に混錬した際に、封止用樹脂組成物の内部の配線における短絡リスクを好適に抑制することができる。
上記Lcの下限値は特に限定されないが、例えば3Å以上であり、5Å以上であり、6Å以上であり、7Å以上であり、8Å以上であり、9Å以上である。
【0023】
結晶子の大きさLcは、X線回折測定から求められるスペクトルにおける(002)面ピークの半値幅と回折角から次のScherrerの式を用いて決定することができる。
Lc=0.94λ/(βcosθ) (Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長(CuKα線を線源とした場合、λ=0.15418nm)
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
ここで、ピークの半値幅βおよびスペクトルの反射角度θは以下の手順で求められる。
(I)2θが15~30°の範囲における最も強度が大きいピークを(002)面ピークとする。また、(002)面ピークのピークトップにおける2θの値を(002)面ピークの2θとし、(002)面ピークの2θを2で割った値をスペクトルの反射角度θとする。
(II)上記(002)面ピークのピークトップの半分の強度を示し、かつ、小角側、広角側それぞれにおいて最も2θに近い点を、それぞれP1(小角側)およびP2(広角側)とし、P1およびP2における2θの値を2θ1および2θ2とする。そして、2θ1および2θ2の差分(2θ2-2θ1)をピークの半値幅βとする。
炭素粒子におけるX線回折スペクトルは、公知のいずれのX線回折装置により測定されてもよい。公知のX線回折装置としては、例えば株式会社リガク製・X線回折装置「SmartLab」などが挙げられる。
【0024】
(002)面のc軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが上記数値範囲内である炭素粒子は、(i)最高炭化温度、(ii)保持時間を高度に制御することによって製造することができる。
【0025】
本実施形態における炭素粒子は、CIE1976L*a*b*表色系により規定されるb*の値が、-4以上+6以下であることが好ましく、-3以上+5以下であることがより好ましく、-2以上+4以下であることがさらに好ましく、-2以上+3以下であることがさらに好ましく、-1以上+3以下であることがさらに好ましい。b*が上記数値範囲内であることにより、炭素粒子の黒色度がより好適なものとなり、樹脂組成物に混錬した際の着色力がより良好なものとなる。
【0026】
CIE1976L*a*b*表色系により規定されるb*の値が上記数値範囲内である炭素粒子は、(i)最高炭化温度、(ii)保持時間、(iii)炭素粒子の粒子径D50を高度に制御することによって製造することができる。
【0027】
本実施形態における炭素粒子の20kNの荷重を加えた際の比抵抗値の下限値は1.0×101Ω・cm以上が好ましく、より好ましくは1.0×102Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×103Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×105Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×106Ω・cm以上である。上記比抵抗値が上記下限値以上であることにより、封止用樹脂組成物に混錬した際に、封止用樹脂組成物の内部の配線における短絡リスクを好適に抑制することができる。
また、上記炭素粒子の比抵抗値の上限値は特に限定されないが、例えば1.0×1014Ω・cm以下であり、1.0×1013Ω・cm以下であり、1.0×1012Ω・cm以下である。
【0028】
本実施形態における炭素粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が10%である粒子径D10が0.01μm~15μmであることが好ましく、0.02μm~10μmであることがより好ましく、0.05μm~5μmであることがさらに好ましい。
D10が上記数値範囲内にあることで、炭素粒子の黒色度がより好適なものとなるほか、樹脂組成物に混練した際の分散性が向上する。
【0029】
本実施形態における炭素粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数が90%である粒子径D90が0.5μm~50μmであることが好ましく、0.88μm~45μmであることがより好ましく、1μm~40μmであることがさらに好ましい。
D90が上記数値範囲内にあることで、炭素粒子の着色力がより好適なものとなるほか、炭素粒子を樹脂組成物に混練した際に、樹脂組成物の表面粗さをより良好にすることができる。
【0030】
本実施形態における炭素粒子において、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積度数分布曲線において累積度数がそれぞれ10%、50%、90%である粒子径D10、D50、D90を用いて、下記式(1)で表される粒径分布は、0.5~2.0であることが好ましく、0.6~1.9であることがより好ましく、0.7~1.8であることがさらに好ましい。
粒径分布=(D90-D10)/D50 ・・・(1)
粒径分布が上記数値範囲内であることで、炭素粒子の黒色度がより好適なものとなり、樹脂組成物に混練した際の分散性が向上するほか、炭素粒子の着色力がより好適なものとなり、炭素粒子を樹脂組成物に混練した際に、樹脂組成物の表面粗さをより良好にすることができる。
【0031】
本実施形態における炭素粒子は、炭素粒子中の塩素含有量の上限値が50ppm以下であることが好ましく、40ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましい。上記塩素含有量が上記上限値以下であることにより、炭素粒子を混錬した封止用樹脂組成物で電子部品を封止した際に、封止構造内部の電気配線の腐食を抑制することができ、たとえば、CuワイヤとAlパッドの接合部の腐食を高度に抑制できる。
また、上記塩素含有量の下限値は特に限定されないが、例えば0ppm以上である。ここで、0ppmとは検出下限以下の数値も含む。
塩素含有量は公知の方法で測定されていればよく、例えば、ダイオネクスICS2000型イオンクロマトグラフを用いて、測定試料中の塩素イオンを検量線法により定量し、試料中の元素含有量に換算して炭素粒子中の塩素含有量とすることで測定できる。
このような炭素粒子は、原料樹脂組成物または炭素粒子の製造過程において、塩酸などの塩素元素を含む化合物を用いない、もしくは用いたとしても少量とすることにより製造することができる。
【0032】
[炭素粒子の製造方法]
続いて、本実施形態の炭素粒子の製造方法について説明する。
【0033】
本実施形態における炭素粒子は、好ましくは以下の2つの工程を含む製造方法により製造することができる。
即ち、原料樹脂を炭化して炭化物を得る炭化工程と、
上記炭化物を粉砕して炭素粒子を得る粉砕工程と、を有することが望ましい。
【0034】
(炭化工程)
まず、炭化工程では、原料樹脂組成物を炭化することによって原料樹脂組成物の炭化物を得る。原料樹脂組成物の炭化物を得る方法としては、好ましくは不活性ガス雰囲気下で熱処理可能な設備を用いる。上記不活性ガスとしては窒素、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの公知の気体が使用できる。
【0035】
上記炭化工程における最高炭化温度は、炭素粒子の比抵抗値の制御という観点から、400℃~800℃が好ましく、450℃~750℃がより好ましく、500℃~700℃がさらに好ましい。
【0036】
上記炭化工程における最高炭化温度を保持する時間(以下、「保持時間」と呼称する)は、炭素粒子の比抵抗値の制御という観点から、好ましくは0時間~24時間であり、より好ましくは0時間~18時間であり、さらに好ましくは0時間~12時間である。
【0037】
上記炭素粒子は、原料樹脂組成物として熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂および重合性高分子量体(以下、単に「主成分樹脂類」ということがある)から選択される1種または2種以上の材料の炭化物を含むことが好ましい。
また、これらの原料樹脂組成物の形状は、例えば粉体、硬化物、液状などであってもよい。
なお、本発明の原料樹脂組成物は、主成分樹脂類として一種類の樹脂のみを用いる場合もあるが、便宜上、これも原料樹脂組成物と呼称することとする。
【0038】
ここで、熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;アニリン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネート樹脂などの含窒素樹脂;ケトン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ウレタン樹脂あるいはフラン樹脂などが挙げられる。また、これらが種々の成分で変性された変性物であってもよい。
また、熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはポリフタルアミドなどが挙げられる。
その他の高分子材料としては特に限定されないが、例えば、エチレン製造時に副生する石油系のタールまたはピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分またはピッチ、および石炭の液化により得られるタールまたはピッチ等の石油系または石炭系の材料、前述する石油系または石炭系の材料を架橋処理したもの、紡糸用ピッチ等の重合性高分子量体などが挙げられる。
上記主成分樹脂類は、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
【0039】
原料樹脂組成物においては、このような主成分樹脂類として熱硬化性樹脂を用いる場合には、その硬化剤を併用することができる。
熱硬化性樹脂の硬化剤としては特に限定されないが、例えばノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン;レゾール型フェノール樹脂;ポリアセタール;またはパラホルムなどを用いることができる。またエポキシ樹脂の場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのポリアミン化合物;酸無水物;イミダゾール化合物;ジシアンジアミド;ノボラック型フェノール樹脂;ビスフェノール型フェノール樹脂;またはレゾール型フェノール樹脂などを用いることができる。
なお、通常硬化剤を併用する熱硬化性樹脂であっても、本発明の原料樹脂組成物においては、硬化剤を併用しないで用いることができる。
【0040】
原料樹脂組成物においては、上記主成分樹脂類のほか、添加剤を配合することができる。
ここで添加剤としては特に限定されないが、例えば、黒鉛及び黒鉛変性剤、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物、及び、非鉄金属元素などを挙げることができる。
上記添加剤は、用いる主成分樹脂類の種類や性状などにより、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
【0041】
本実施形態の炭化工程において使用できる熱処理可能な設備としては、特に限定されるものではなく、公知の設備を選択することができる。公知の設備としては、例えば回分式の電気炉もしくはロータリーキルン、ローラーハースキルン等の連続炉が挙げられる。
上記設備は、上記炭素粒子に求める物性や上記炭素粒子の製造効率などにより、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
【0042】
(粉砕工程)
次いで、粉砕工程を行う。粉砕工程では、炭化工程で得られた炭化物を粉砕し、炭素粒子を得る。この際、粉砕効率の向上という観点から、炭化物を予め砕く予備粉砕と、目的の炭素粒子の粒径となるまで砕く本粉砕を併用しても良い。
【0043】
予備粉砕および本粉砕を問わず、粉砕工程に用いる装置は特に限定されず、炭化物を粉砕できればいずれの方法を用いても良い。粉砕工程に用いる装置としては、例えばロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、サイクロンミル、ローラーミル、ピンミル、ハンマーミル等の乾式粉砕装置;および高圧ホモジナイザーおよびビーズミル等の湿式粉砕装置などの公知の装置を用いることができる。
粉砕処理において、これらの装置を1種または2種以上使用し、または、1種の装置で複数回粉砕して用いてもよい。
【0044】
粉砕工程においてビーズミルを使用する場合、乾式粉砕および湿式粉砕を問わずに、用いるビーズの材質は特に限定されず、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ジルコンビーズ、ガラスビーズ、高クロム炭素鋼ビーズなどの公知の材質のビーズを用いることができる。この中でも、金属コンタミ、耐摩耗性、粉砕効率の観点からはジルコニアビーズを用いることが好ましい。
【0045】
また、上記ビーズ径としては、炭化物の粒径や硬度に応じて選択してよく、例えば0.015mm~5mmである。また、粒径の異なるビーズを2種類以上併用してもよい。
【0046】
粉砕工程において湿式粉砕をする場合、炭化物を分散し、炭素材スラリーとする分散媒としては、水、有機溶剤もしくはその混合物を用いることが好ましい。上記有機溶剤としては沸点が120℃以下の公知の有機化合物を使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等のアルコール類、アセトン、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類が挙げられる。
【0047】
湿式粉砕時の炭素材スラリーの濃度としては、1重量%~50重量%が好ましく、1重量%~40重量%がより好ましく、1重量%~30重量%がさらに好ましい。
炭素材スラリーの濃度が上記上限以下であることによって、炭素材スラリーの流動性が増し、炭化物をより良好に粉砕できるため好ましい。また、炭素材スラリーの濃度が上記下限以上であることによって、炭化物の粉砕効率が向上するため好ましい。
【0048】
上記設備を2種類以上併用する場合、炭素粒子の粒径の均一化および炭素粒子のハンドリング性という観点から、設備変更の間において篩かけ工程を含んでも良い。
【0049】
(その他工程)
上記粉砕工程を湿式粉砕にて行った場合、粉砕工程の後に乾燥により炭素材スラリーから炭素粒子を回収する乾燥工程を含んでも良い。また、上記粉砕工程の後に、炭素粒子のさらなる黒色化を目的として、炭素粒子をさらに熱処理する二次炭化工程を含んでも良い。
さらに、上記粉砕工程もしくは上記二次炭化工程の後に、炭素粒子の粒径の均一化および炭素粒子のハンドリング性の向上という観点から篩かけを行っても良い。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0051】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0052】
<原料樹脂組成物の調製>
炭素粒子の原料樹脂組成物は以下の方法で調製した。
【0053】
(合成例1:原料ノボラック型フェノール樹脂)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた3つ口フラスコ中に、フェノール100質量部、37質量%ホルムアルデヒド水溶液64.5質量部、および触媒としてシュウ酸3質量部を入れ、100℃で3時間反応させた。反応後、昇温脱水することにより、ノボラック型フェノール樹脂90質量部を得た。
【0054】
(合成例2:原料レゾール型フェノール樹脂)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた3つ口フラスコ中に、フェノール1000質量部、37質量%ホルムアルデヒド水溶液を1204質量部、および触媒として50質量%NaOH水溶液20質量部を入れ、80℃で3時間反応させた。反応後、5000Paで真空蒸留を行い80℃に達した時に、メチルアルコールを添加し、25℃における粘度を200mP・sとした。以上の操作により、レゾール型フェノール樹脂を1621質量部得た。
【0055】
(合成例3:原料硫黄含有ノボラック型フェノール樹脂)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた3つ口フラスコ中に、フェノール1000質量部、37質量%ホルムアルデヒド水溶液710質量部、および25質量%硫酸10質量部を入れ、100℃で3時間反応後、昇温脱水し、硫黄含有ノボラック型フェノール樹脂900質量部を得た。
【0056】
(合成例4:原料硫黄含有レゾール型フェノール樹脂)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた3つ口フラスコ中に、フェノール1000質量部、37質量%ホルムアルデヒド水溶液を1200質量部、触媒として50質量%NaOH水溶液20質量部を添加し、80℃で3時間反応させた。反応後、40℃に冷却し、25質量%硫酸を添加し、pH7.0となるように中和した。その後、5000Paで真空蒸留を行い80℃に達した時に、メチルアルコールを添加し、25℃における粘度を200mP・sとした。以上の操作により、硫黄含有レゾール型フェノール樹脂を1950質量部得た。
【0057】
(炭素粒子の作製)
上記合成例1~4の原料樹脂組成物を用いて、バッチ炉を用いて表1に示す条件で炭化を行い、実施例1~7および比較例1~3の炭化物を得た。その後、各実施例および比較例の炭化物を表1に示す方法によって予備粉砕および本粉砕を行うことで炭素粒子を得た。
このとき、実施例3および比較例1では、得られた炭化物5重量部を水95重量部に分散して湿式粉砕を行った。その後、150℃で24時間乾燥させたのち、乳鉢を用いて後粉砕した。
また、乾式ビーズミルではΦ1.5mmジルコニアビーズを、湿式ビーズミルではΦ1.0mmジルコニアビーズを用いた。
【0058】
【0059】
(評価)
各実施例および各比較例で得られた炭素粒子の各物性を、以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0060】
(炭素元素の含有比率)
ガスクロマトグラフ質量分析計(住化分析センター社製、スミグラフNC-22)を用いて、各実施例および各比較例で得られた炭素粒子5mgを830℃で完全燃焼させた。その際に発生したCO2を定量し、CO2の発生量から各実施例および各比較例で得られた炭素粒子に含まれる炭素元素の含有比率を算出した。
【0061】
(D10、D50、D90、粒径分布)
各実施例および各比較例で得られた炭素粒子0.05gをポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(キシダ化学社製、ツイーン20)の重量100倍希釈液1ccおよび水5ccの混合液に入れ、超音波分散することで測定試料を調製した。上記測定試料を用いて、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920)を用いて相対屈折率1.5-0.01iの条件で測定された体積基準の累積度数分布曲線において、累積度数がそれぞれ10%、50%、90%の際の粒子径D10、D50、D90を測定した。
また、測定した粒子径D10、D50、D90を用いて、粒径分布を以下の式(1)から算出した。
粒径分布=(D90-D10)/D50 ・・・(1)
【0062】
(硫黄含有量、塩素含有量)
各実施例および各比較例で得られた炭素粒子10mgを、酸素置換した密閉系のフラスコ内で完全燃焼させた。この時生成したガスをあらかじめフラスコ内に添加していた過酸化水素アルカリ吸収液に捕集したのち、50mlに定容後測定試料とした。ダイオネクスICS2000型イオンクロマトグラフを用いて、上記測定試料中の硫酸イオンおよび塩素イオンを検量線法により定量し、試料中の元素含有量に換算して炭素粒子中の硫黄含有量および塩素含有量とした。
【0063】
(色味b*)
透明な筒の片方の開口部に透明プロピレンフィルム(リガク社製、3399N013、厚み4μm)をセットし、容器とした。この容器に各実施例および各比較例で得られた炭素粒子を入れ、タッピングを行って炭素粒子層の厚みが5mmとなるように炭素粒子を充填した。次いで、色彩色差計(コニカミノルタジャパン社製、CR-20)について、付属の校正用白色板ユニットを用いて校正を行った。その後、校正後の色彩色差計を用いてフィルム側から色味を測定し、測定位置を変えながら10点で測定したCIE1976L*a*b*表色系におけるb*値の平均値を代表値とした。
【0064】
(比抵抗値)
粉体抵抗測定システム抵抗計(日東精工アナリテック社(旧社名:三菱ケミカルアナリテック社)製、ハイレスタUX/ロレスタGP、MCP-PD51型)に各実施例および各比較例で得られた炭素粒子1gをセットし、20kN荷重をかけた際の比抵抗値を測定した。
【0065】
(着色性)
各実施例および各比較例で得られた炭素粒子および事前希釈したポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(キシダ化学社製、ツイーン20)水溶液を、炭素粒子とポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートの重量比が2:1となるように混合し、混合物とした。この混合物に炭素濃度が50ppmとなるように純水を加え、超音波分散することで測定溶液を調製した。その後、以下の2点について評価を行った。
【0066】
(i:着色力)
二重十字標識板を透視度計の底面に設置し、上記透視度計に測定溶液を溢れる直前まで注いだ。その後、上記透視度計の下部から測定溶液をゆっくり抜き、二重十字標識板の二重十字線がはっきり読み取れた際の液面高さが30cm(透視度計のメモリ上限値)未満のものをAと評価し、その際の液面高さを読み取った。また、液面高さが30cmでも二重十字線が読み取れたものをBと評価した。
【0067】
(ii:色味)
上記測定溶液の色味を目視で以下2段階から評価した。
A:測定試料の色味が黒色
B:測定試料の色味が黒色以外
【0068】
(溶出硫酸イオン量)
ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000K)2質量部、ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エア・ウォーター社製、HE910-20)1質量部および各実施例および各比較例で得られた炭素粒子1質量部を、混練装置を用いて100℃で混錬することで評価用樹脂組成物を得た。低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記封止用樹脂組成物をトランスファー成形することにより直径50mm、厚さ3mmの封止用樹脂組成物の硬化物を得た。次いで、上記硬化物を凍結粉砕により粉砕し、粉末試料2gをプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、試料を水と馴染ませた。121℃に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離及びフィルターろ過したものを検液とする。上記検液をイオンクロマト法により分析した。分析結果を以下2段階から評価した。
A:検液中の硫酸イオン量が15ppm未満
B:検液中の硫酸イオン量が15ppm以上
【0069】
(Lc)
各実施例および各比較例で得られた炭素粒子について、株式会社リガク製のX線回折装置「SmartLab」を用い、CuKα線を線源とした粉末X線回折測定を行うことで横軸を2θ、縦軸を回折強度とするX線回折スペクトルを得た。粉末X線回折測定は、炭素粒子を充填した試料ホルダーをX線回折装置の観測台にセットし、走査軸2θ/θとし、サンプリング幅0.01°、およびスキャンスピード2°/minの条件で行った。得られたX線回折スペクトルについて、以下<方法>に従って選択した直線をバックグラウンドとして除去した。
【0070】
<方法>
(1) 横軸を2θ、縦軸を回折強度とする上記X線回折スペクトルにおいて、2θ=10°の点または2θ=15°の点のいずれか1つと、2θ=30°の点または2θ=35°の点のいずれか1つとを選択し、選択された2点を直線で結び、計4本の直線を作成する。
(2)上記(1)で作成した4本の直線のうちの一つを選択する。
(3)2θが10°以上35°以下の領域において、上記(2)で選択した直線と、当該直線の下側に位置する上記X線回折スペクトルとで囲まれる面積Sを求める。
(4)上記(1)で作成した4本の直線のそれぞれについて、上記(2)および(3)のステップを繰り返し、得られた面積Sが最小となる直線Lを特定する。
(5)上記直線Lをバックグラウンド直線とする。
【0071】
次いで、2θが15~30°の範囲における最も強度が大きいピークを(002)面ピークとした。また、(002)面ピークのピークトップにおける2θの値を(002)面ピークの2θとし、(002)面ピークの2θを2で割った値をスペクトルの反射角度θとした。
さらに、上記(002)面ピークのピークトップの半分の強度を示し、かつ、小角側、広角側それぞれにおいて最も2θに近い点を、それぞれP1(昇格側)およびP2(広角側)とし、P1およびP2における2θの値を2θ1および2θ2とした。そして、2θ1および2θ2の差分(2θ2-2θ1)をピークの半値幅βとした。
その後、得られた(002)面ピークの半値幅βとスペクトルの反射角度θから、結晶子の大きさLcを次のScherrerの式を用いて決定した。
Lc=0.94λ/(βcosθ) (Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:0.15418nm
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
【0072】
【0073】
表2に示すように、実施例1~7では着色剤として使用可能な着色力を有しながらも、比抵抗値が高く、硫酸イオンの溶出が少ない炭素粒子が得られた。