(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150037
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】マイクロニードルシートを使用する美容方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20231005BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20231005BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20231005BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231005BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20231005BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/02
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/25
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022058913
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲シュ▼
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラヴ・アガルワル
(72)【発明者】
【氏名】飯間 雄介
【テーマコード(参考)】
4C083
4C267
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB222
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC121
4C083AD111
4C083AD112
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC02
4C083DD50
4C083EE07
4C267AA72
4C267BB41
4C267CC01
4C267GG21
4C267HH19
(57)【要約】
【課題】皮膚及び唇等のケラチン物質に、顔料により、長く続いて均一な着色効果をもたらすことができる美容方法を提供すること。
【解決手段】皮膚及び唇等のケラチン物質のための美容方法であって、ケラチン物質上に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物を塗布する工程と、組成物が塗布されたケラチン物質上に、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートを、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用して、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する工程とを含む、方法を提供する。本発明によれば、マイクロニードルは、ケラチン物質中に侵入して、疎水性顔料により、ケラチン物質の上層に、長く続いて均一な着色効果をもたらすことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚及び唇等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質上に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物を塗布する工程と、
前記組成物が塗布されたケラチン物質上に、基材シート及び基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートを、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用して、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する工程と
を含む、美容方法。
【請求項2】
マイクロニードルが、10~500ミクロン、好ましくは30~300ミクロン、より好ましくは50~150ミクロンの高さを有する、請求項1に記載の美容方法。
【請求項3】
マイクロニードルが、角錐体の形状にある、請求項1又は2に記載の美容方法。
【請求項4】
マイクロニードルの底部が、10~500ミクロン、好ましくは10~300ミクロン、より好ましくは10~100ミクロンの幅を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項5】
マイクロニードルの(マイクロニードルの高さ)/(マイクロニードルの底部の幅)の比が、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項6】
マイクロニードルが、無機材料、好ましくは金属又は非金属、より好ましくはケイ素から作製される、請求項1から5のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項7】
マイクロニードルがケラチン物質中に繰り返して、好ましくはマイクロニードルシートの振動又はタッピングに基づいて、侵入することができる、請求項1から6のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項8】
疎水性顔料が、少なくとも1種の疎水性コーティングを有し、好ましくは酸化鉄、二酸化チタン、及びこれらの混合物から選択され、少なくとも1種の疎水性コーティングを有する、より好ましくはモノアルキルトリアシルチタネートで処理された酸化鉄、二酸化チタン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項9】
生理的に許容される媒体が、少なくとも1種のポリオール、好ましくはジオール、より好ましくはプロピレングリコール及び/又はジプロピレングリコールを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項10】
疎水性顔料の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.1質量%~45質量%、より好ましくは1質量%~40質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項11】
マイクロニードルシートが、ケラチン物質上の組成物を乾燥させる工程なしで、ケラチン物質上に適用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項12】
皮膚及び唇等のケラチン物質を着色するためのキットであって、
基材シート及び基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと、
マイクロニードルシートを、ケラチン物質上に、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用するためのデバイスと、
少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物と
を含む、キット。
【請求項13】
デバイスが、マイクロニードルシートを繰り返し適用することができる、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
デバイスが、マイクロニードルシートを振動させることができる又はタッピングすることができる少なくとも1つの要素を備える、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
皮膚及び唇等のケラチン物質に長く続いて均一な色を付与するための、基材シート及び基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと組み合わせた、少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物の使用であって、
マイクロニードルシートがケラチン物質中に侵入することができ、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚及び唇等のケラチン物質の美容トリートメントのための、複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚又は唇のための、長く続く着色効果を達成するための可能な選択肢のうちの1つは、皮膚又は唇の内部に着色剤を送達することである。
【0003】
しかしながら、着色剤を含む配合物の局所適用は、皮膚又は唇中への着色剤の十分な侵入をもたらすことができない。皮膚又は唇の角質層の薄層は、物質の、皮膚又は唇中への侵入にとって主要なバリアである。したがって、着色剤を、皮膚又は唇の内部に送達するために最も重要な点は、角質層を通ることである。また、皮膚又は唇の内部での着色剤の均一な分散も重要である。
【0004】
着色材料の皮膚中での深い送達のために、単一のニードルデバイス、又はタトゥーデバイスとして知られるデバイスの使用が周知である。US9393395 B2は、このようなデバイスの一例である。これらのデバイスは、熟練者、又はタトゥーアーティストとして知られる人々によって注意深く使用され、その理由は、単一のニードルが高周波数で振動し(oscillate)又は振動し(vibrate)、熟練及び時間が、単一のニードルを用いてタトゥーの正しいパターンを作製するのに必要なためである。
【0005】
WO2021/125067は、皮膚の長く続く着色のために、皮膚の上層中への着色剤の送達を伴うマイクロニードルアレイの使用を開示している。着色剤として、水溶性染料が、WO2021/125067において実際に使用されている。
【0006】
有機又は無機顔料の使用が、例えば、皮膚のトーンを変えるために、且つ顔をメイクアップするために、美容産業において周知である。いくつかの場合、顔料の使用は、例えば、ヒトの皮膚に近い色合いを創製する可能性があるために、且つそれらの良好な安全性プロファイルのために、染料よりも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US9393395 B2
【特許文献2】WO2021/125067
【特許文献3】FR2679771
【特許文献4】US-B-4,578,266
【特許文献5】JP-A-H07-196946
【特許文献6】米国特許第5,725,882号
【特許文献7】米国特許第5,209,924号
【特許文献8】米国特許第4,972,037号
【特許文献9】米国特許第4,981,903号
【特許文献10】米国特許第4,981,902号
【特許文献11】米国特許第5,468,477号
【特許文献12】米国特許第5,219,560号
【特許文献13】EP0388582
【特許文献14】US-B-5,246,694
【特許文献15】EP0486135
【特許文献16】JP H05-86984
【特許文献17】米国特許出願公開第2005/0019284号
【特許文献18】米国特許第6,219,574号
【特許文献19】カナダ特許出願第2,226,718号
【特許文献20】米国特許第6,652,478号
【特許文献21】WO2011/115602
【特許文献22】US-A-2012/0209294
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ullmann' Encyclopedia
【非特許文献2】Witucki、「A silane Primer, Chemistry and Applications of Alkoxy Silanes、Journal of Coatings Technology、65、822、57~60頁、1993年」
【非特許文献3】C. M. Hansenによる論文「The three-dimensional solubility parameters」、J.Paint Technol. 39、105(1967年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、皮膚及び唇等のケラチン物質に、顔料により、長く続いて均一な着色効果をもたらすことができる美容方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、皮膚及び唇等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質上に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物を塗布する工程と、
該組成物が塗布されたケラチン物質上に、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートを、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用して、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する工程と
を含む、美容方法によって達成することができる。
【0011】
マイクロニードルは、10~500ミクロン、好ましくは30~300ミクロン、より好ましくは50~500ミクロンの高さを有してよい。
【0012】
マイクロニードルは、角錐体の形状にあってよい。
【0013】
マイクロニードルの底部は、10~500ミクロン、好ましくは10~300ミクロン、より好ましくは10~100ミクロンの幅を有してよい。
【0014】
マイクロニードルの(角錐体の高さ)/(角錐体の底部の幅)の比は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であってよい。
【0015】
マイクロニードルは、無機材料、好ましくは金属又は非金属、より好ましくはケイ素から作製することができる。
【0016】
マイクロニードルは、ケラチン物質中に繰り返して、好ましくはマイクロニードルシートの振動又はタッピングに基づいて、侵入することができる場合がある。
【0017】
疎水性顔料は、少なくとも1種の疎水性コーティングを有してよい。疎水性顔料が、酸化鉄、二酸化チタン、及びこれらの混合物から選択され、少なくとも1種の疎水性コーティングを有することが好ましい場合がある。疎水性顔料が、モノアルキルトリアシルチタネートで処理された、酸化鉄、二酸化チタン、及びこれらの混合物から選択されることが、より好ましい場合がある。
【0018】
生理的に許容される媒体は、少なくとも1種のポリオール、好ましくはジオール、より好ましくはプロピレングリコール及び/又はジプロピレングリコールを含んでよい。
【0019】
疎水性顔料の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.1質量%~45質量%、より好ましくは1質量%~40質量%であってよい。
【0020】
マイクロニードルシートは、ケラチン物質上の組成物を乾燥させる工程なしで、ケラチン物質上に適用することができる。
【0021】
本発明はまた、皮膚及び唇等のケラチン物質を着色するためのキットであって、
基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと、
該マイクロニードルシートを、ケラチン物質上に、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用するためのデバイスと、
少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物と
を含む、キットにも関する。
【0022】
上記キット中のデバイスは、マイクロニードルシートを繰り返し適用させることができる場合がある。
【0023】
上記キット中のデバイスは、マイクロニードルシートを振動させることができる又はタッピングすることができる少なくとも1つの要素を備えていてよい。
【0024】
本発明はまた、皮膚又は唇等のケラチン物質に長く続いて均一な色を付与するための、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと組み合わせた、少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物の使用であって、
該マイクロニードルがケラチン物質中に侵入することができ、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のために好ましく使用されるデバイスの模式図である。
【
図2】参照例1、実施例1及び比較例1における、処理された皮膚の断面の写真である。
【
図3A】参照例2、実施例2及び比較例2における、処理された皮膚の表面の写真である。
【
図3B】参照例2、実施例2及び比較例2における、処理された皮膚の表面の写真である。
【
図3C】参照例2、実施例2及び比較例2における、処理された皮膚の表面の写真である。
【
図3D】参照例2、実施例2及び比較例2における、処理された皮膚の表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
顔料の堆積、詳細には皮膚の上層、例えば角質層中の顔料の堆積が、顔料の特性、及び顔料を皮膚中に送達する方法に依存することが見出された。
【0027】
鋭意検討の結果、発明者らは、顔料が疎水性であり且つマイクロニードルシートが使用される場合に、顔料により、皮膚及び唇等のケラチン物質に、長く続いて均一な着色効果をもたらすことができる美容方法を提供することが可能であることを発見した。
【0028】
そのため、本発明の一態様は、皮膚及び唇等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質上に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物を塗布する工程と、
上記組成物が塗布されたケラチン物質上に、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートを、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用して、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する工程と
を含む、
美容方法である。
【0029】
本発明によれば、マイクロニードルは、ケラチン物質中に侵入して、疎水性顔料により、ケラチン物質に、長く続いて均一な着色効果をもたらすことができる。
【0030】
具体的には、マイクロニードルは、皮膚又は唇の表面に穿刺して、それを通って少なくとも1種の疎水性顔料が皮膚又は唇中に行くことができる微細な穴又は通路を創製することができる。そのため、疎水性顔料は、微細な穴又は通路を通って、それが角質層中に行くことができるように、且つ/又はそれが角質層の底部に到達できるように、皮膚又は唇中に侵入することができる。更に、疎水性顔料は、角質層を通って、グラニュラー層、有棘層及び基底層等の、表皮のより下の層のうちの任意の1つに到達することができる。したがって、疎水性顔料は、長時間、皮膚又は唇中に残留することができる。このことは、長く続く着色効果をもたらすことができる。
【0031】
また、角質層を通る疎水性顔料は、表皮上に又は表皮中に比較的容易に拡散して、皮膚又は唇中に均一に分布することができる。したがって、このことは、均一な着色効果をもたらすことができる。
【0032】
驚くべきことに、マイクロニードルシートとの組合せで使用されたとき、疎水性顔料の使用は、親水性顔料の使用よりも良好な着色効果をもたらすことができる。
【0033】
マイクロニードルが痛みを一切引き起こさないため、本発明による美容方法は、痛みなしで、美容トリートメントを付与することができる。
【0034】
加えて、本発明による美容方法は、比較的短時間で実施することができる。
【0035】
そのため、本発明は、美容トリートメント又は非治療的トリートメントにとって好都合である。例えば、本発明は、2、3日から2、3週間等の長期間にわたり、黒い点及び細孔等の皮膚の不完全さを隠す非侵襲的方法として使用することができる。
【0036】
これ以降、本発明による美容方法、キットなどを、詳細に説明する。
【0037】
[美容方法]
皮膚及び唇等のケラチン物質のための本発明による美容方法は、
ケラチン物質上に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物を塗布する工程と、
該組成物が塗布されたケラチン物質上に、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードを備えたマイクロニードルシートを、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用して、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する工程と
を含む。
【0038】
ケラチン物質上に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物を適用する工程は、ブラシ等の任意の塗布器具を用いることによって実施することができる。
【0039】
生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物が、組成物のケラチン物質との良好な接触のために、且つケラチン物質の所望の部位上の良好な着色のために、織布又は不織布等の少なくとも1種の多孔質シートとの組合せにおいてケラチン物質上に適用されることが好ましい場合がある。
【0040】
多孔質シートは、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物を吸収し維持することができる。したがって、多孔質シートを適用することは、組成物が、ケラチン物質と良好に接触することを容易にすることができ、且つこれは、ケラチン物質の良好な着色に寄与することができる。
【0041】
上記の組合せの種類は限定されない。そのため、多孔質シートは、組成物をケラチン物質上に塗布する前に、ケラチン物質上に適用されうる。別法では、多孔質シートは、組成物をケラチン物質上に塗布した後で、ケラチン物質上に適用されうる。
【0042】
マイクロニードルシートをケラチン物質上に適用する工程が、ケラチン物質上の所望の領域のために実施されることが好ましい。例えば、マイクロニードルシートの適用する部位が、ケラチン物質の表面上で動けることが好ましく、但しマイクロニードルがケラチン物質上の所望の領域中に侵入できることを条件とする。
【0043】
マイクロニードルシートが、ケラチン物質上の組成物を乾燥させる工程なしで、ケラチン物質上に適用されることが好ましい。換言すれば、マイクロニードルシートが、組成物が乾燥される前に又はケラチン物質が湿っている間にマイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように、ケラチン物質上に適用されることが好ましい。
【0044】
本発明による美容方法は、ケラチン物質の表面からマイクロニードルを取り除く工程を更に含んでよい。
【0045】
ケラチン物質の表面からマイクロニードルを取り除く工程の後、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物が、ケラチン物質の表面から除去されてよい。
【0046】
本発明による美容方法が、ケラチン物質の表面からマイクロニードルを取り除く工程の後に、且つケラチン物質の表面から組成物を除去する工程の前に、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物をケラチン物質上に維持する又は残す工程を更に含むことが好ましく、その理由は、該組成物が、マイクロニードルにより、ケラチン物質上に且つケラチン物質中に形成された穴を介して、ケラチン物質中に効果的に侵入できるためである。
【0047】
本発明による美容方法は、皮膚及び唇、好ましくは皮膚、より好ましくは顔の皮膚等のケラチン物質の、美容トリートメント用であることが意図されてよい。
【0048】
本発明による美容方法は、例えばケラチン物質を着色することによって、ケラチン物質の審美的外観を改善するのに用いることができる。
【0049】
本発明による美容方法は、ケラチン物質に、長く続いて均一な着色効果をもたらすことができる。したがって、例えば、本発明による美容方法によってもたらされるメイクアップ効果は、皮脂又は汗が顔の上に存在する場合又は雨が顔の上に降る場合であってさえ、例えば顔の上に、長時間維持されうる。
【0050】
しかしながら、本発明による美容方法は、半恒久的着色である皮膚タトゥーには該当せず、その理由は、皮膚タトゥーが痛みを伴うためである。また、本発明による美容方法は、皮膚及び唇等のケラチン物質の上層を着色し、したがって、本発明による美容方法によって付与された色は、例えば2、3週間のみしか続かず、これは、半恒久的着色には該当しない。
【0051】
これ以降、本発明による美容方法のために使用される組成物、マイクロニードルシートなど、及び本発明による美容方法をどのように実施するかの例を、詳細に説明する。
【0052】
{組成物}
本発明による美容方法のために使用される組成物は、生理的に許容される媒体中に分散された少なくとも1種の疎水性顔料を含む。
【0053】
該組成物は、ケラチン物質のための前処理組成物として使用することができる。
【0054】
本発明による美容方法のために使用される組成物が、周囲圧力(760mmHg)下、室温(例えば25℃)にて液体の形態にあり、これが、1000cP未満、好ましくは500cP未満、より好ましくは200cP未満の粘度を有することが好ましい。
【0055】
(疎水性顔料)
本発明による美容方法のために使用される組成物は、少なくとも1種の疎水性顔料を含む。単一の疎水性顔料、又は複数の異なる疎水性顔料の組合せを使用することができる。
【0056】
本発明では、用語「顔料」は、生理的に許容される媒体に不溶性であり、且つ皮膚及び唇等のケラチン物質を着色することが意図されている、白色又は着色された、任意の形状の無機又は有機粒子を意味すると理解されるべきである。
【0057】
疎水性顔料のサイズが100nm超であることが好ましい。本発明の目的のために、粒子の「サイズ」は、平均体積直径を意味する。平均体積直径は、光回析によって、例えばMalvern Mastersizer等のレーザー粒径分析機を用いて評価することができ、ここで、評価される粒子は、液体媒体中に、例としてはネオペンタン酸オクチルドデシル中に分散される。本発明の一実施形態によれば、疎水性顔料のサイズは、100nm~25μm、好ましくは200nm~10μmの範囲であってよい。
【0058】
疎水性顔料が、疎水性コーティング顔料から選択されることが好ましい。用語「疎水性コーティング顔料」は、少なくとも1種の親油性又は疎水性化合物でコーティングされた任意の顔料を意味する。用語「親油性化合物」は、油に可溶性又は分散性である任意の化合物を意味する。用語「疎水性化合物」は、水に不溶性である任意の化合物を意味する。
【0059】
本発明の特定の実施形態によれば、少なくとも1種の親油性又は疎水性化合物でコーティングされる顔料は、無機及び有機顔料から選ばれる。
【0060】
用語「無機顔料」は、Ullmann' Encyclopediaの無機顔料の章の定義と一致する任意の顔料を意味することが意図される。無機顔料の中で、金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色若しくは赤色)又は酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、及びフェリックブルー、並びに金属粉末、例えばアルミナム粉末及び銅粉末を挙げることができる。これらの無機顔料は、詳細には、金属酸化物から選ぶことができる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による美容方法のために使用される組成物中に存在する無機顔料、特定すると金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化鉄から選ばれる。無機顔料としての酸化チタンが、0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更により好ましくは0.3μm以上の粒径を有することが好ましい場合がある。
【0062】
用語「有機顔料」は、Ullmann' Encyclopediaの有機顔料の章の定義と一致する任意の顔料を意味することが意図される。有機顔料は、具体的には、ニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン及びフタロシアニンの各化合物、金属錯体型の化合物、並びにイソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインディゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン及びキノフタロンの各化合物から選ぶことができる。
【0063】
有機顔料は、例えば、カルミン、カーボンブラック、アニリンブラック、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、ソルガムレッド、参照番号CI42090、69800、69825、73000、74100及び74160で色指数に体系化されている青色顔料、参照番号CI11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000及び47005で色指数に体系化されている黄色顔料、参照番号CI61565、61570及び74260で色指数に体系化されている緑色顔料、参照番号CI11725、15510、45370及び71105で色指数に体系化されている橙色顔料、参照番号CI12085、CI12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915及び75470で色指数に体系化されている赤色顔料、並びにFR2679771に記載されているインドール又はフェノール誘導体の酸化重合により得られる顔料から選ぶことができる。
【0064】
顔料のコーティング:
疎水性顔料は、少なくとも1種の親油性又は疎水性化合物を含む少なくとも1種のコーティングを有してよい。この親油性又は親水性コーティングは、疎水性顔料の最外表面上に存在することができる。
【0065】
本発明の目的のために、顔料の「コーティング」は、一般に、前記顔料上に吸収される、吸着される又はグラフトされる、表面処理剤での、顔料の全体的な又は部分的な表面処理を示す。そのため、疎水性顔料は、表面処理顔料であってよい。
【0066】
表面処理顔料は、当業者に周知の、化学的、電気的、機械化学的又は機械的な性質の表面処理技術を用いて調製することができる。市販の製品もまた、表面処理顔料として使用することができる。
【0067】
表面処理剤は、溶媒の蒸発、化学反応、及び共有結合の創製によって、顔料上に、吸収されうる、吸着されうる又はグラフトされうる。
【0068】
一変形形態によれば、表面処理は、顔料のコーティングから構成される。
【0069】
疎水性顔料はまた、少なくとも1種の非親油性又は非疎水性化合物、例えば少なくとも1種の親水性化合物を含む少なくとも1種のコーティングを有してよい。例えば、非親油性又は非疎水性化合物は、金属水酸化物、例えば水酸化アルミナム、及び金属塩化物、例えば塩化マグネシウムから選択することができる。この非親油性又は非疎水性コーティングは、顔料それ自体と、親油性又は疎水性コーティングとの間に存在することができる。
【0070】
コーティングは、コーティング顔料の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、特定すると0.5質量%~5質量%を占めてよい。
【0071】
コーティングは、例えば、粒子を、本発明のために使用される組成物の他の成分中に組み込む前に、任意選択で加熱しながら、粒子と前記表面処理剤とを撹拌しながら単純に混合することにより、固体顔料粒子の表面上に液体表面処理剤を吸着させることによって実施することができる。
【0072】
コーティングは、例えば、表面処理剤を固体顔料粒子の表面と化学反応させて、表面処理剤と粒子との間に共有結合を創製することによって実施することができる。この方法は、特に、US-B-4,578,266に記載されている。
【0073】
化学的表面処理は、揮発性溶媒中で表面処理剤を希釈すること、この混合物に顔料を分散させること、及び次いで表面処理剤が顔料の表面に堆積するように揮発性溶媒をゆっくり蒸発させることからなっていてもよい。
【0074】
親油性又は疎水性化合物:
本発明の特定の実施形態によれば、顔料は、以下に説明されるように、ケイ素系表面処理剤、フルオロ表面処理剤、フルオロシリコーン表面処理剤、金属石鹸、脂肪酸、N-アシルアミノ酸又はその塩、レシチン及びその誘導体、モノアルキルトリアシルチタネート、例えばイソプロピルトリイソステアリルチタネート、セバシン酸イソステアリル、天然の植物性又は動物性ワックス、極性合成ワックス、脂肪エステル、リン脂質、並びにこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の親油性又は疎水性化合物でコーティングすることができる。
【0075】
ケイ素系表面処理剤:
本発明の特定の実施形態によれば、顔料は、ケイ素系化合物、すなわちケイ素系表面処理剤で全体的に又は部分的に表面処理することができる。
【0076】
ケイ素系表面処理剤は、以下に説明されるように、オルガノポリシロキサン、シラン誘導体、シリコーン-アクリレート(コ)ポリマー、シリコーン樹脂、及びこれらの混合物から選ぶことができる。
【0077】
用語「オルガノポリシロキサン」は、ケイ素原子と酸素原子とを交互に含み、且つケイ素原子に連結した有機基を含む構造を有する化合物を意味する。
【0078】
i)オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンが、非エラストマー系オルガノポリシロキサンから選択されることが好ましい。
【0079】
特に挙げることができる非エラストマー系オルガノポリシロキサンには、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルヒドロゲノシロキサン及びポリアルコキシジメチルシロキサンが含まれる。
【0080】
アルコキシ基は、R-O-基(Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル若しくはオクチル、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル若しくは3,3,3-トリフルオロプロピルの各基、フェニル、トリル若しくはキシリル等のアリール基、又はフェニルエチル等の置換アリール基を表す)によって表すことができる。
【0081】
ポリメチルヒドロゲノシロキサンを用いて表面処理顔料を調製する一方法は、有機溶媒に顔料を分散させること、及び次いでシリコーン化合物を添加することからなる。該混合物を加熱することにおいて、シリコーン化合物と顔料の表面との間に共有結合を創製することができる。
【0082】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ケイ素系表面処理剤は、特にポリジメチルシロキサンから選ばれる非エラストマー系オルガノポリシロキサンであってよい。
【0083】
特定の一形態によれば、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、例えば信越化学工業株式会社から名称KF9908(登録商標)で販売されている市販製品を使用することができる。
【0084】
ii)シラン誘導体
シラン誘導体が、アルキルシラン及びアルコキシシランから選択されることが好ましい。
【0085】
アルコキシ官能基を有するシランは、特に、Wituckiにより、「A silane Primer, Chemistry and Applications of Alkoxy Silanes、Journal of Coatings Technology、65、822、57~60頁、1993年」において説明されている。
【0086】
参照名Silquest A-137(OSI Specialities社)及びProsil 9202(PCR社)で販売されているアルキルトリエトキシシラン及びアルキルトリメトキシシラン等のアルコキシシランを、顔料をコーティングするために使用することができる。
【0087】
アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はイミノ等の反応性末端基を有するアルキルポリシロキサンの使用が、特許出願JP-A-H07-196946に記載されている。それらはまた、顔料を処理するのにも好適である。
【0088】
iii)シリコーン-アクリレート(コ)ポリマー
米国特許第5,725,882号、第5,209,924号、第4,972,037号、第4,981,903号、第4,981,902号及び第5,468,477号に記載されている、且つ米国特許第5,219,560号及びEP0388582に記載されている、シリコーン骨格を有するグラフトされたシリコーン-アクリル(コ)ポリマーを使用することができる。
【0089】
他のシリコーン-アクリレート(コ)ポリマーは、それらの構造中に、式(I):
【0090】
【0091】
(式中、G1基は、同一であっても異なっていてもよく、水素若しくはC1~C10アルキル基、或いはフェニル基を表し; G2基は、同一であっても異なっていてもよく、C1~C10アルキレン基を表し; G3は、少なくとも1種のエチレン性不飽和アニオン性モノマーの(単独)重合から得られたポリマー残基を表し; G4は、少なくとも1種のエチレン性不飽和疎水性モノマーの(単独)重合から得られたポリマー残基を表し; m及びnは、0又は1に等しく; aは、0~50の範囲の整数であり; bは、10から350の間でありうる整数であり; cは、0~50の範囲の整数であり; 但しパラメーターa及びcのうちの1つが0以外であることを条件とする)
の単位を含むシリコーン(コ)ポリマーであってよい。
【0092】
好ましくは、上の式(I)の単位は、以下の特徴:
- G1基は、アルキル基、好ましくはメチル基を表す、
- nは、非ゼロであり、G2基は、C1~C3二価基、好ましくはプロピレン基を表す、
- G3は、エチレン性不飽和カルボン酸型の少なくとも1種のモノマー、好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸の(単独)重合から得られたポリマー基を表す、
- G4は、好ましくはイソブチル又はメチル(メタ)アクリレート等の、(C1~C10)アルキル(メタ)アクリレート型の少なくとも1種のモノマーの(単独)重合から得られたポリマー基を表す
のうち少なくとも1つ、更により優先的には全てを有する。
【0093】
式(I)に相当するシリコーン(コ)ポリマーの例は、特に、チオプロピレン型の連結鎖単位を介して、その上にポリ(メタ)アクリル酸型及びポリメチル(メタ)アクリレート型の混合ポリマー単位がグラフトされているポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0094】
式(I)に相当するシリコーン(コ)ポリマーの他の例は、特に、チオプロピレン型の連結鎖単位を介して、その上にポリイソブチル(メタ)アクリレート型のポリマー単位がグラフトされているポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0095】
iv)シリコーン樹脂
ケイ素系表面処理剤は、シリコーン樹脂から選ぶことができる。
【0096】
用語「樹脂」は、三次元構造体を意味する。
【0097】
シリコーン樹脂は、シリコーンオイルに可溶性であっても膨潤性であってもよい。これらの樹脂は、架橋ポリオルガノシロキサンポリマーである。
【0098】
シリコーン樹脂の命名法は、名称「MDTQ」で知られ、該樹脂は、それが含む多様なシロキサンモノマー単位の機能として記載され、文字「MDTQ」のそれぞれは、単位の種類を特徴づける。
【0099】
文字Mは、式(CH3)3SiO12の単官能性単位を表し、このケイ素原子は、この単位を含むポリマー中の1個のみの酸素原子に結合している。
【0100】
文字Dは、二官能性単位(CH3)2SiO2(式中、ケイ素原子は、2個の酸素原子に結合している)を意味する。
【0101】
文字Tは、式(CH3)SiO3/2の三官能性単位を表す。
【0102】
上で定義した単位M、D及びTにおいて、メチル基のうちの少なくとも1つは、メチル基以外のR基、例えば2~10個の炭素原子を含有する炭化水素系基(特にアルキル)、若しくはフェニル基、或いはヒドロキシル基で置換されていてよい。
【0103】
最後に、文字Qは、四官能性単位SiO4/2(式中、ケイ素原子は、ポリマーの残部に結合している)を意味する。
【0104】
異なる性質を有する多種の樹脂を、これらの異なる単位から得ることができ、これらのポリマーの性質は、モノマー(又は単位)の種類の関数、置換基の種類及び数の関数、ポリマー鎖の長さの関数、分枝度の関数、並びに側鎖のサイズの関数として多様である。
【0105】
挙げることができるこれらのシリコーン樹脂の例には、以下が含まれる:
- シロキシシリケート、これは、式[(CH3)3XSiXO]xX(SiO4/2)y(MQ単位)(式中、x及びyは、50~80の範囲の整数である)のトリメチルシロキシシリケートでありうる、
- 式(CH3SiO3/2)x(T単位)(式中、xは、100超であり、メチル基のうち少なくとも1つは、上に定義したR基で置換されうる)のポリシルセスキオキサン、
及び
- ポリメチルシルセスキオキサン、これは、メチル基のいずれもが別の基で置換されていないポリシルセスキオキサンである。このようなポリメチルシルセスキオキサンは、US-B-5,246,694に記載されている。
【0106】
市販のポリメチルシルセスキオキサン樹脂の例として、以下を挙げることができる:
- Wacker社により参照名Resin MK(登録商標)で販売されているもの、例えば、Belsil PMS MK(商標登録)、すなわちCH3SiO3/2繰り返し単位(T単位)を含むポリマーであって、1質量%までの(CH3)2SiO2/2単位(D単位)を含むこともでき、約10000の平均分子量を有するポリマー、
及び
- 信越化学工業株式会社により参照名KR-220L(登録商標)で販売されているもの[式CH3SiO3/2のT単位から構成され、Si-OH(シラノール)末端基を含有する]、参照名KR-242Aで販売されているもの[T単位98%及びジメチルD単位2%を含み、Si-OH末端基を含有する]、或いは参照名KR-251で販売されているもの[T単位88%及びジメチルD単位12%を含み、Si-OH末端基を含有する]。
【0107】
挙げることができるシロキシシリケート樹脂には、任意選択で粉末の形態にあるトリメチルシロキシシリケート(TMS)樹脂が含まれる。このような樹脂は、General Electric社により参照名SR1 000(登録商標)、E 1 170-002(登録商標)若しくはSS 4230(登録商標)で販売されており、又はWacker Silicone Corporation社により参照名TMS 803(登録商標)、Wacker 803(登録商標)及び804(登録商標)で販売されている。
【0108】
シクロメチコーン等の溶媒中で販売されているトリメチルシロキシシリケート樹脂もまた挙げることができ、信越化学工業株式会社により名称KF-7312J(登録商標)で、又はDow Corning社によりDC 749(登録商標)及びDC 593(登録商標)で販売されている。
【0109】
シリコーン化合物で処理されている顔料の市販参照名の例として、三好化成株式会社により参照名SA-C 338075-10(登録商標)で販売されている赤色酸化鉄/ジメチコンを挙げることができる。
【0110】
フルオロ表面処理剤:
顔料は、フルオロ性の化合物、すなわちフルロオ表面処理剤で、全体的に又は部分的に表面処理されうる。
【0111】
フルオロ表面処理剤は、リン酸ペルフルオロアルキル、ペルフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロポリエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロアルキルシラザン、ポリヘキサフルオロプロピレンオキシド、及びペルフルオロアルキルペルフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサンから選ぶことができる。
【0112】
用語「ペルフルオロアルキル基」は、水素原子の全てがフッ素原子で置き換えられているアルキル基を意味する。
【0113】
ペルフルオロポリエーテルは、具体的には、特許出願EP0486135に記載されており、Montefluos社により商品名Fomblin(登録商標)で販売されている。
【0114】
リン酸ペルフルオロアルキルは、具体的には、特許出願JP H05-86984に記載されている。AGC株式会社(旭硝子)により参照名AsahiGuard AG530(登録商標)で販売されているリン酸ペルフルオロアルキルジエタノールアミンを使用することができる。
【0115】
直鎖状ペルフルオロアルカンの中でも、ペルフルオロシクロアルカン、ペルフルオロ(アルキルシクロアルカン)、ペルフルオロポリシクロアルカン、芳香族ペルフルオロ炭化水素(ペルフルオロアレーン)、及び少なくとも1個のヘテロ原子を含む炭化水素系ペルフルオロ有機化合物を挙げることができる。
【0116】
ペルフルオロアルカンの中でも、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロノナン又はペルフルオロデカン等の直鎖状アルカンシリーズを挙げることができる。
【0117】
ペルフルオロシクロアルカン及びペルフルオロ(アルキルシクロアルカン)の中でも、Rhodia社により名称Flutec PP5 GMP(登録商標)で販売されているペルフルオロデカリン、ペルフルオロ(メチルデカリン)、及びペルフルオロ(ブチルシクロヘキサン)等のペルフルオロ(C3~C5アルキルシクロヘキサン)を挙げることができる。
【0118】
ペルフルオロポリシクロアルカンの中でも、ペルフルオロトリメチルビシクロ[3.3.1]ノナン等のビシクロ[3.3.1]ノナン誘導体、ペルフルオロジメチルアダマンタン等のアダマンタン誘導体、及びテトラコサフルオロテトラデカヒドロフェナントレン等の水素添加ペルフルオロフェナントレン誘導体を挙げることができる。
【0119】
ペルフルオロアレーンの中でも、ペルフルオロナフタレン誘導体、例としてはペルフルオロナフタレン及びペルフルオロメチル-1-ナフタレンを挙げることができる。
【0120】
フルオロ化合物で処理された顔料の市販参照名の例として、以下を挙げることができる:
- 大東化成工業株式会社により参照名PF 5 Yellow 601(登録商標)で販売されている、黄色酸化鉄/ペルフルオロアルキルホスフェート、
- 大東化成工業株式会社により参照名PF 5 Red R 516L(登録商標)で販売されている、赤色酸化鉄/ペルフルオロアルキルホスフェート、
- 大東化成工業株式会社により参照名PF 5 Black BL100(登録商標)で販売されている、黒色酸化鉄/ペルフルオロアルキルホスフェート、
- 大東化成工業株式会社により参照名PF 5 TiO2 CR 50(登録商標)で販売されている、二酸化チタン/ペルフルオロアルキルホスフェート、
- Toshiki社により参照名Iron oxide yellow BF-25-3(登録商標)で販売されている、黄色酸化鉄/ペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテル、
- Cardre Inc.社により参照名D&C Red 7 FHC(登録商標)で販売されている、DC Red 7/ペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテル、及び
- Warner-Jenkinson社により参照名T 9506(登録商標)で販売されている、DC Red 6/PTFE。
【0121】
フルオロシリコーン表面処理剤:
顔料は、フルオロシリコーン性の化合物、すなわちフルオロシリコーン表面処理剤で全体的に又は部分的に表面処理することができる。
【0122】
フルオロシリコーン化合物は、ペルフルオロアルキルジメチコン、ペルフルオロアルキルシラン及びペルフルオロアルキルトリアルコキシシランから選ぶことができる。
【0123】
挙げることができるペルフルオロアルキルシランには、信越シリコーン社により販売されている製品LP-IT(登録商標)及びLP-4T(登録商標)が含まれる。
【0124】
ペルフルオロアルキルジメチコンは、式:
【0125】
【0126】
(式中、
- Rは、1~6個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状二価アルキル基、好ましくは二価のメチル、エチル、プロピル又はブチルの各基を表し、
- Rfは、1~9個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を含有するペルフルオロアルキル基を表し、
- mは、0から150の間、好ましくは20~100から選ばれ、
- nは、1から300の間、好ましくは1~100から選ばれる)
によって表すことができる。
【0127】
フルオロシリコーン化合物で処理された顔料の市販参照名の例として、Advanced Dermaceuticals International Inc.社により参照名Fluorosil Titanium dioxide 100TA(登録商標)で販売されている、二酸化チタン/フルオロシリコーンを挙げることができる。
【0128】
他の親油性表面剤:
疎水性処理剤はまた、以下から選ぶこともできる:
i)金属石鹸、例えばジミリスチン酸アルミナム及び水素添加タローグルタメートのアルミナム塩;特に挙げることができる金属石鹸には、12~22個の炭素原子を含有する、特定すると12~18個の炭素原子を含有する脂肪酸の金属石鹸が含まれる。金属石鹸の金属は、特に亜鉛又はマグネシウムであってよい。使用することができる金属石鹸には、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛、並びにこれらの混合物が挙げられる、
ii)ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸等の脂肪酸、
iii)8~22個の炭素原子を含有するアシル基、例としては2-エチルヘキサノイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイルの各基を含みうるN-アシルアミノ酸又はその塩。アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニンであってよい。これらの化合物の塩は、アルミナム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、ナトリウム又はカリウムの各塩であってよい。そのため、本発明の特に好ましい実施形態によれば、N-アシルアミノ酸誘導体は、特にグルタミン酸誘導体及び/又はその塩、より特定するとグルタミン酸ステアロイル、例としてはステアロイルグルタミン酸アルミナムであってよい。これは、例えば、ミヨシ油脂株式会社によって販売されているNAI表面処理剤である、
iv)レシチン及びその誘導体、例えば水素添加レシチン、例としてはLCW社により販売されているHLC表面処理剤、
v)モノアルキルトリアシルチタネート。モノアルキルトリアシルチタネートは、モノアルキルチタネートとも称され、式RO-Ti-(OR')3(式中、Rは、アルキルであり、R'は、アシル基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい)によって表すことができる。モノアルキルトリアシルチタネートの一定の実施形態では、前記アルキルは、C1~5アルキル基であり、特定するとC1~4アルキル基であり、前記アシルは、アクリル酸から誘導され、又はアクリル酸誘導体、例えばメタクリル酸から誘導され、又は脂肪酸から誘導される。アシル基は、具体的には、C6~30脂肪酸、より特定するとC12~24脂肪酸、更により特定するとC16~20脂肪酸から誘導される。このような脂肪酸は、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシルステアリン酸、オレイン酸であってよい。これらのトリアシルチタネート中のアシル基は、同一であっても異なっていてもよい。好ましい実施形態は、モノイソプロピルトリアシルチタネートであり、米国特許出願公開第2005/0019284号(具体的には段落[0038]~[0052])を参照されたい。別の好ましい実施形態によれば、モノアルキルトリアシルチタネートは、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(ITT)、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネートであってよい。好ましくは、モノアルキルトリアシルチタネートは、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(ITT)であってよく、これはまた、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(INCI名:トリイソステアリン酸イソプロピルチタン)とも称されうる。モノアルキルトリアシルチタネート処理顔料は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理顔料であってよい。モノアルキルトリアシルチタネート処理顔料は、少なくともモノアルキルトリアシルチタネートで処理された顔料である。モノアルキルトリアシルチタネート処理顔料は、モノアルキルトリアシルチタネートのみで処理されていてもよく、又はモノアルキルトリアシルチタネートと、少なくとも1種の更なる表面処理剤、例えばフッ素化表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤、例えばポリジメチルシロキサンとで処理されていてもよい。例えば、イロプロピルトリイソステアロイルチタネート処理顔料は、少なくともイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(ITT)で処理された顔料である。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理顔料は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(ITT)のみで処理されていてもよく、又はイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(ITT)と、少なくとも1種の更なる表面処理剤、例えばフッ素化表面処理剤又はシリコーン系表面処理剤、例えばポリジメチルシロキサンとで処理されていてもよい。トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(ITT)処理顔料の例として、Kobo社により、市販参照名BTD-401(登録商標)(二酸化チタンCI177891及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BBO-12(登録商標)(酸化鉄CI77499及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BYO-12(登録商標)(酸化鉄CI77492及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、並びにBRO-12(登録商標)(酸化鉄CI77491及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)で販売されているものを挙げることができる、
vi)セバシン酸イソステアリル、
vii)天然の植物性若しくは動物性ワックス、又は極性合成ワックス、
viii)脂肪エステル、具体的にはホホバエステル、
ix)リン脂質、並びに
x)これらの混合物。
【0129】
先に挙げられたワックスは、以下に定義される通り、化粧料中で一般に使用されるものであってよい。
【0130】
これらは特に、エステル又はヒドロキシル官能基を任意選択で含む、炭化水素、シリコーン及び/又はフルオロの各ワックスであってよい。それらはまた、天然起源であっても合成起源であってもよい。
【0131】
用語「極性ワックス」は、少なくとも1つの極性基を含む化学的化合物を含有するワックスを意味する。極性基は、当業者に周知であり、それらは、例えばアルコール、エステル又はカルボン酸の各基でありうる。ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト及びフィッシャー-トロプシュワックスは、極性ワックスの中には含まれない。
【0132】
詳細には、極性ワックスは、δa>0(J/cm3)1/2、なおもより良好にはδa>1(J/cm3)1/2であるような、25℃での平均ハンセン溶解度パラメーターδa:
【0133】
【0134】
(式中、δp及びδhは、それぞれ、ハンセン溶解度パラメーターに特異的な極性寄与率及び相互作用型の寄与率である)
を有する。
【0135】
ハンセンによる三次元溶解度空間における溶媒の定義は、C. M. Hansenによる論文「The three-dimensional solubility parameters」、J.Paint Technol. 39、105(1967年)に記載され:
- δhは、特定の相互作用力(水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプターなど)を特徴とし、
- δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力、及びまた誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴とする。
【0136】
可溶性パラメーターは、HSPiP v4.1ソフトウェアで算出される。
【0137】
パラメーターδp及びδhは、(J/cm3)1/2で表される。
【0138】
極性ワックスは、特に、それらの化学構造中の炭素及び水素原子以外に、ヘテロ原子(例えばO、N及びP)を含む分子から形成される。
【0139】
特に挙げることができるこれらの極性ワックスの非限定的例証には、天然の極性ワックス、例えばミツロウ、ラノリンワックス、オレンジワックス、レモンワックス及びイボタロウ、米糠ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、オーリキュリーワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビワックス、木ロウ、ハゼロウ及びモンタンワックスが挙げられる。
【0140】
本発明の特定の一実施形態によれば、顔料は、N-アシルアミノ酸又はその塩、イソプロピルトリイソステアリルチタネート;シリコーン表面剤;天然の植物性又は動物性ワックス;水素添加レシチン、脂肪エステル;及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物でコーティングされてよい。
【0141】
本発明のより特に好ましい実施形態によれば、顔料は、N-アシルアミノ酸及び/又はその塩、特定するとグルタミン酸誘導体及び/又はその塩、特にグルタミン酸ステアロイル、例としてはステアロイルグルタミン酸アルミナムでコーティングされていてよい。
【0142】
本発明のより特に好ましい一実施形態によれば、ステアロイルグルタミン酸アルミナムでコーティングされた二酸化チタン及び酸化鉄から選ばれる疎水性コーティング顔料を使用することになり、これは、例えば三好化成株式会社により参照名NAI(登録商標)で販売されている。
【0143】
本発明のより特に好ましい一実施形態によれば、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(ITT)でコーティングされた二酸化チタン及び酸化鉄から選ばれる疎水性コーティング顔料を使用することになり、Kobo社により、市販参照名BTD-401(登録商標)(二酸化チタンCI177891及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BBO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77499及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BYO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77492及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、並びにBRO-I2(登録商標)(酸化鉄CI77491及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)で販売されているものを挙げることができる。
【0144】
本発明による美容方法のために使用される組成物中の疎水性顔料の量は、限定されない。
【0145】
本発明による美容方法のために使用される組成物中の疎水性顔料の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってよい。
【0146】
本発明による美容方法のために使用される組成物中の疎水性顔料の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であってよい。
【0147】
そのため、本発明による美容方法のために使用される組成物中の疎水性顔料の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.1質量%~45質量%、より好ましくは1質量%~40質量%の範囲であってよい。
【0148】
(生理学的に許容される媒体)
本発明による美容方法のために使用される組成物は、ビヒクルとして機能することができる生理的に許容される媒体を含む。
【0149】
用語「生理的に許容される媒体」は、化粧料として又は皮膚科的に許容される媒体、例えば臭い又は不快な外観を欠く媒体、及び局所塗布に適合する媒体を意味すると理解される。
【0150】
本発明による美容方法のために使用される組成物中の生理的に許容さる媒体の種類は、限定されない。
【0151】
例えば、生理的に許容される媒体は、水、親水性媒体、疎水性媒体、及びこれらの混合物から選択される1種を含んでよい。
【0152】
親水性媒体は、アルコール、特に一価アルコール、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びジプロピレングリコール;他のポリオール、例えばグリセロール、糖及び糖アルコール;並びにエーテル、例えばエチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、並びにブチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル;並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0153】
疎水性媒体は、油から選択することができる。
【0154】
本発明の一部の実施形態では、本発明による美容方法のために使用される組成物が、無水物であることが好ましい場合がある。
【0155】
本発明による美容方法のために使用される組成物中の生理的に許容される媒体の量は、限定されない。
【0156】
本発明のために使用される組成物中の生理的に許容される媒体の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上であってよい。
【0157】
本発明のために使用される組成物中のビヒクルの量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下であってよい。
【0158】
本発明のために使用される組成物中のビヒクルの量は、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは55質量%~85質量%、より好ましくは60質量%~80質量%の範囲であってよい。
【0159】
(任意選択の成分)
本発明による美容方法のために使用される組成物は、前述の成分に加えて、化粧料中で典型的に利用される任意選択の成分、具体的には、界面活性剤又は乳化剤、親水性又は親油性増粘剤、動物又は植物由来の天然抽出物、抗酸化剤、美白剤、脱色剤などを、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでよい。
【0160】
本発明による美容方法のために使用される組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでよい。
【0161】
(調製)
本発明のために使用される組成物は、上に説明したように、例えば、必須成分としての疎水性顔料及び生理的に許容される媒体と、必要に応じて任意選択の成分とを混合して調製することができる。
【0162】
上記の必須成分と任意選択の成分とを混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合して、本発明のために使用される組成物を調製することができる。
【0163】
{マイクロニードルシート}
本発明による方法のために使用されるマイクロニードルシートは、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備える。
【0164】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートは、美容デバイス、好ましくはケラチン物質用の美容デバイス、より好ましくは皮膚用、特定すると顔の皮膚用、及び唇用の美容デバイスであってよい。
【0165】
(マイクロニードル)
本発明のために使用されるマイクロニードルシートは、複数のマイクロニードルを備える。
【0166】
マイクロニードルは、基材シートの表面上に存在する。マイクロニードルは、基材シートの表面のうちの50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上に存在することができる。
【0167】
マイクロニードルが、基材シートの表面のうちの一方の上に存在することが好ましい。
【0168】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルが、皮膚の、特定すると顔の皮膚及び唇の、角質層内へ侵入する、すなわち、入り込むように設計されていることが好ましい。
【0169】
マイクロニードルは、角質層を穿刺するのに好適な任意のサイズ及び形状であることができる。マイクロニードルが、角質層を穿刺し横断するように設計されていることが好ましい場合がある。マイクロニードルは、角質層中に開口部又は通路を創製することが可能でありうる。
【0170】
必要に応じて、マイクロニードルの高さは、皮膚の表皮及び/又は真皮への、好ましくは表皮への、より好ましくは表皮中の層のうちの任意の1つへの侵入を可能にするように調整することができる。
【0171】
マイクロニードルの形状は、その形状が「針」である限り限定されない。本発明のためのマイクロニードルが、角錐体、円錐体、棒状及び/又は柱状が含まれるがこれらに限定されない任意の合理的な形状を取りうることが、当業者には明らかとなる。そのため、マイクロニードルは、先端部が底部と同一の直径を有していてもよく、又は直径が底部から先端部の方向に先細りしていてもよい。
【0172】
例えば、マイクロニードルの形状は、三角形の角錐体、四角形の角錐体、又は五角形の角錐体の形態にあってよい。或いは、マイクロニードルは、好ましくは、円柱を斜め切りして形成しうる先端部を有する円柱の形態にあってよい。マイクロニードルの断面は、円形、三角形、四角形、長方形、多面体、規則的又は不規則的な各形態などを含めた任意の幾何学的形態を取ってよい。本発明の一実施形態では、マイクロニードルの群は、中空のマイクロキャピラリーの形態を取ってよい。しかしながら、本発明については、中実(非中空)のマイクロニードルが好ましい場合がある。
【0173】
そのため、利用されている一種の微細突起又は微細突出として「マイクロニードル」が参照される。多くの場合、同一の発明原理が、皮膚に侵入する他の微細突起又は微細突出の使用に該当することが当業者には理解されよう。他の微細突起又は微細突出には、例えば、米国特許第6,219,574号及びカナダ特許出願第2,226,718号に記載されているマイクロブレード、並びに米国特許第6,652,478号に記載されているエッジ付きマイクロニードルが挙げられうる。
【0174】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの高さ又は長さは、10~500ミクロン、好ましくは30~300ミクロン、より好ましくは50~150ミクロンであってよい。
【0175】
本発明の一実施形態によれば、マイクロニードルは円錐体の形態にある。
【0176】
円錐体は、先端部及び底部等の遠位端を含みうる。底部の形状は、円形又は楕円形であってよい。
【0177】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの円錐体の高さ又は長さは、10~500ミクロン、好ましくは30~300ミクロン、より好ましくは50~150ミクロンであってよい。
【0178】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの円錐体の底部は、10~500ミクロン、好ましくは10~300ミクロン、より好ましくは10~100ミクロンの直径又は幅を有してよい。本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの円錐体の底部が楕円形又は長円形の形状にある場合、楕円形の主軸の長さ又は幅は、10~500ミクロン、好ましくは10~300ミクロン、より好ましくは10~100ミクロンであってよい。
【0179】
マイクロニードルは、少なくとも約3:1、少なくとも約2:1、又は少なくとも約1:1のアスペクト比(底部における長さ/幅)を有しうる。マイクロニードルの(円錐体の高さ)/(円錐体の底部の直径)の比は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であってよい。
【0180】
本発明の別の実施形態によれば、マイクロニードルは、角錐体、例えば三角形の角錐体及び四角形の角錐体の形態にある。
【0181】
角錐体は、先端部及び底部等の遠位端を含みうる。底部の形状は、三角形又は四角形であってよい。
【0182】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの角錐体の高さ又は長さは、10~500ミクロン、好ましくは30~300ミクロン、より好ましくは50~150ミクロンであってよい。
【0183】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの角錐体の底部は、10~500ミクロン、好ましくは10~300ミクロン、より好ましくは10~100ミクロンの幅を有してよい。本発明のために使用されるマイクロニードルシートのマイクロニードルの角錐体の底部が三角形又は四角形の形状にある場合、三角形又は四角形の側長又は幅は、10~500ミクロン、好ましくは10~300ミクロン、より好ましくは10~100ミクロンであってよい。
【0184】
マイクロニードルは、少なくとも約3:1、少なくとも約2:1、又は少なくとも約1:1のアスペクト比(底部における長さ/幅)を有しうる。マイクロニードルの(角錐体の高さ)/(角錐体の底部の幅)の比は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であってよい。
【0185】
マイクロニードルが、200ミクロン以下、好ましくは180ミクロン以下、より好ましくは160ミクロン以下の深さまで、皮膚及び唇等のケラチン物質中へ侵入することができることが好ましい場合がある。
【0186】
マイクロニードルの非常に狭いピッチは、十分な表面積を有するマイクロニードルを付与することができず、その結果、マイクロニードルは皮膚の内側に侵入することができない。他方、広すぎるピッチもまた、個々のマイクロニードルが、侵入するのに十分な圧力を得られないことがあるという問題を引き起こしうる。そのため、マイクロニードルアレイのピッチが、400~700ミクロン、より好ましくは400~500ミクロンであることが好ましい場合がある。
【0187】
マイクロニードルの数、及びマイクロニードル同士の間のピッチは、所望の色パターン及びマイクロニードルの幅等のいくつかの要因に依存する。例えば、0.5ミクロン幅を有する色パターンが所望である場合、0.5mmピッチのマイクロニードルアレイ(2×2)を有するマイクロニードルシートの使用が、最も適当でありうる。
【0188】
本発明の一実施形態では、マイクロニードルの密度は、100~2000マイクロニードル/cm2、好ましくは200~1000マイクロニードル/cm2、更により好ましくは200~500マイクロニードル/cm2であってよい。
【0189】
マイクロニードルが溶解性でないことが好ましい。
【0190】
「溶解性でない」マイクロニードルは、マイクロニードルが、例えば自然の湿潤因子又は外部水分によって、皮膚及び唇等のケラチン物質の内部で破壊され得ない又は崩壊され得ないことを意味する。
【0191】
マイクロニードルが水溶性でないことが、より好ましい。
【0192】
マイクロニードルは、有機又は無機材料から作製することができる。有機材料の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン及びフォトレジスト、生分解性プラスチック、セルロース誘導体、及びこれらの混合物を含めた合成ポリマーを挙げることができる。無機材料の例として、ステンレス鋼を含めた金属、ケイ素、ガラス及びセラミクス等の非金属、並びにこれらの混合物を挙げることができる。また、皮膚中又は体中に埋め込み可能である任意の他の材料も使用することができる。
【0193】
マイクロニードルが、使用前に滅菌である又は滅菌されていることが好ましい。マイクロニードルが、1回のみ使用され、したがって使い捨てであることがより好ましい。
【0194】
マイクロニードルが、無機材料、より好ましくは金属又は非金属、更により好ましくはケイ素(特に単一結晶ケイ素)から作製されることが好ましい。
【0195】
マイクロニードルが、中実である(中空ではない)こともまた好ましい。
【0196】
マイクロニードルそれら自体は、色を一切有していなくてよい。但し、マイクロニードルが、ケラチン物質を着色するために着色剤を一切含まないことが好ましい場合がある。
【0197】
(基材シート)
本発明のために使用されるマイクロニードルシートは、その上にマイクロニードルが存在している又は置かれている基材シートを備える。
【0198】
基材シートとマイクロニードルとは、分離されていても一体化されていてもよい。
【0199】
例えば、基材シートとマイクロニードルとは、少なくとも1種の共通の材料を含みうる。そのため、本発明の一実施形態では、基材シートとマイクロニードルとは、少なくとも1種の共通の材料を含む単一の要素であることができる。好ましくは、単一の要素は、同じ材料を使用して調製することができる。
【0200】
その一方で、基材シートは、マイクロニードルと異なっていてもよく別個であってもよい。例えば、基材シートとマイクロニードルとは、異なる材料から作製されてよい。この場合、基材シートは、例えば、マスク、ワイプ、パッチ、及び一般に全ての種類の多孔質基材シートから選ぶことができる。好ましくは、これらの基材シートは長円構造を有し、すなわち、それらが画定される平面の寸法よりも小さい厚さを有する。
【0201】
基材シートは、パッチ、ディスク、マスク、タオル、グローブ、プレカットロールの形態、又は美容用途に好適な任意の他の形態であるように切断されてよい。
【0202】
(調製)
本発明のために使用されるマイクロニードルシートをどのように調製するかに関して限定はない。本発明のために使用されるマイクロニードルシートを、成型、3Dプリンティング、金属加工など等の従来技術に基づいて調製することが可能である。
【0203】
本発明のために使用されるマイクロニードルシートの形状は限定されず、それは、マイクロニードルシートを適用する標的に応じて、唇の形状、又は目の下への適用に好適な形状等の任意の形状にあってよい。
【0204】
{デバイス}
本発明による美容方法では、マイクロニードルシートは、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入することできるように皮膚及び唇等のケラチン物質上に適用される。
【0205】
マイクロニードルが、ケラチン物質中に繰り返し侵入できることが好ましい。
【0206】
マイクロニードルのケラチン物質中への繰り返しの侵入をどのように実施するかに限定はない。例えば、繰り返しの侵入は、基材シートの前面上のマイクロニードルがケラチン物質中に繰り返し侵入できるように、マイクロニードルシートの基材シートの裏面を指で数回タッピングすることによって実施することができる。
【0207】
更に、皮膚及び唇等のケラチン物質に向けて振動を用いることによって、マイクロニードルの繰り返しの侵入を実施することが好ましい。
【0208】
例えば、
図1に示すように、マイクロニードルシート1は、ケラチン物質の表面に向けての振動を生成できる振動子2に接続することができ、これは
図1中の上の方向及び下の方向に相当する。振動子2の種類は、それが振動を生成することができる限り、限定されない。例えば、振動子2は、圧電素子によって構成されてよい。当然ながら、ケラチン物質に向かって繰り返し動くことができる、好ましくは振動することができる、任意の他のアクチュエータを、振動子2の代わりに使用することができる。
【0209】
図1において、マイクロニードルシート1は、振動子2によって引き起こされる振動に基づいて上下に動くことができ、したがって、マイクロニードルシート1上のマイクロニードルは、皮膚及び唇等のケラチン物質中に繰り返し侵入することができる。
【0210】
振動子2がマイクロニードルシート1のレセプタとして機能できるヘッドに連結していること、及びマイクロニードルシート1の基材シートがヘッドに付着していることが好ましい。そのため、振動子2によって引き起こされた振動は、ヘッドに伝達されうる。次いで、マクロニードルシート1はまた、ヘッドを介して振動することができる。
【0211】
マクロニードルシート1を振動させるためにデバイスを使用することが好ましい。例えば、デバイスは、振動子2、及び振動子2に連結しているヘッド、並びに振動子2、及び振動子2によって引き起こされる振動の周波数を制御する制御手段を駆動できる乾電池等のバッテリーを備えうる。例として、その内容が参照により本明細書に組み込まれるWO2011/115602に開示されているデバイスを、上記デバイスとして使用することができる。
【0212】
上記デバイスを使用するとき、マクロニードルシート1は、デバイスのヘッド上に載せることができ、且つマイクロニードルシート1のマイクロニードルがケラチン物質中に繰り返し侵入できるように皮膚及び唇等のケラチン物質上に適用することができる。
【0213】
振動又はタッピングの周波数は限定されない。例えば、周波数は、1分当たり1000~10000、好ましくは1分当たり1000~8000、より好ましくは1分当たり3000~6000であってよい。
【0214】
マイクロニードルをケラチン物質中に侵入させるのに使用される圧力を制御することが、好ましい場合がある。該圧力は、マイクロニードルの種類及び着色の種類等のいくつかの要因に依存しうる。
【0215】
タッピングする又は振動するマイクロニードルの侵入は、連続的で安定な皮膚穿刺を可能にし、マイクロニードルをケラチン物質中に駆動するのに必要とされる力を減少させることができる。それは、ケラチン物質の処理される領域にマッサージ効果を更に付与して、疎水性顔料のケラチン物質中へのより良好な拡散又は分散を可能にすることができる。
【0216】
[キット、方法及び使用]
本発明はまた、皮膚及び唇等のケラチン物質を着色するためのキットであって、
基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと、
該マイクロニードルシートを、ケラチン物質上に、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるように適用するための装置と、
少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物と
を含む、キットにも関する。
【0217】
本発明による美容方法のためのマイクロニードルシート及び組成物についての上記説明はまた、本発明によるキットにおける説明にも該当させることができる。加えて、本発明による美容方法のために使用されうる上記デバイスに関する説明はまた、本発明によるキットにおける説明にも該当させることができる。
【0218】
少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物は、美容目的のために一般に使用される容器(vessel)等の任意の容器(container)中に収容されてよい。
【0219】
キットは、好ましくは、本発明による美容方法を実施するのに使用することができる。
【0220】
本発明によるキット中のデバイスが、マイクロニードルシートを繰り返し適用させることができることが好ましい。例えば、該デバイスは、マイクロニードルシートを振動させることができる又はタッピングすることができる少なくとも1つの要素を備えていてよい。この要素は、ケラチン物質中へのマイクロニードルの侵入を繰り返すのに指でのタッピングが用いられる場合、基材シートの裏面に対応することができ、且つ振動がケラチン物質中へのマイクロニードルの侵入を繰り返すのに用いられる場合、上に説明した振動子2に対応することができる。
【0221】
本発明はまた、皮膚又は唇等のケラチン物質に長く続いて均一な色を付与するための、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと組み合わせた、少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物の使用であって、
該マイクロニードルがケラチン物質中に侵入することでき、それにより疎水性顔料をケラチン物質の上層中に送達する、使用に関する。
【0222】
具体的には、本発明による使用は、
ケラチン物質上への、少なくとも1種の疎水性顔料を含む少なくとも1種の組成物の第1の適用と、
皮膚又は唇等のケラチン物質に、長く続いて均一な着色を付与するための、該組成物が適用されたケラチン物質上への、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートの、マイクロニードルがケラチン物質中に侵入できるようにする第2の適用と
を含んでよい。
【0223】
マイクロニードルが、繰り返しケラチン物質中に侵入できることが好ましい。繰り返しは、マイクロニードルシートの振動又はタッピングに基づくことができる。
【0224】
本発明による使用の別の態様は、基材シート及び該基材シート上の複数のマイクロニードルを備えたマイクロニードルシートと組み合わせて皮膚及び唇等のケラチン物質の長く続いて均一な着色に使用するための、少なくとも1種の疎水性顔料を含む組成物であって、
該マイクロニードルが、好ましくは繰り返して、より好ましくはマイクロニードルシートの振動又はタッピングに基づいて繰り返して、ケラチン物質中に侵入することができる、組成物であることができる。
【0225】
本発明による上記キット及び使用によれば、マイクロニードルシートのマイクロニードルは、疎水性顔料を皮膚及び唇等のケラチン物質の上層中に送達して、ケラチン物質に、長く続く着色をもたらすことができる。また、本発明による上記キット及び使用は、皮膚及び唇等のケラチン物質の上層に、均一の着色を付与することができる。
【実施例0226】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な例証として提示する。
【0227】
組成物
配合物1(F1)及び配合物2(F2)のための組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合して調製した。成分の量についての数値は、全て、活性原料の「質量%」に基づく。
【0228】
【0229】
マイクロニードルデバイス
5×5mmのサイズを有する四角形のマイクロニードルシートを使用した。マイクロニードルシートは、基材シート上に225本のマイクロニードルを有していた。各マイクロニードルは、長さ又は高さが80μmで底部の直径が15μmの角錐体の形状を有していた。マイクロニードルは、単結晶ケイ素から作製した。
【0230】
四角形のマイクロニードルシートを、WO2011/115602に示すようにデバイスのヘッド(第1の端部)上に載置し、ここで、該ヘッドは、デバイスの軸に沿って振動して、皮膚に向かう垂直振動動作を伴ってマイクロニードルシートを皮膚上に適用することができるマイクロニードルデバイスを、マイクロニードルがケラチン物質中に繰り返し侵入できるように準備することができる。
【0231】
(参照例1)
第1に、1.5cm×1.5cm四方の形状を有するヒト死体皮膚を用意した。
【0232】
第2に、配合物1による、液体の形態にある組成物0.1gを、皮膚の部位上に塗布した。
【0233】
第3に、上記組成物を上記皮膚部位上に15分間残して維持した。次いで、上記組成物を、乾いたティッシュで、拭うのに使用した乾いたティッシュ上に顔料が観察されなくなるまで皮膚部位から拭い取った。
【0234】
次に、皮膚部位を、水を含めた湿った消毒綿で2回洗浄し、続いて、乾いた消毒綿で拭った。次いで、皮膚を解剖し、O.C.T.(凍結組織包埋剤)化合物(Sakura Finetek社製)中に入れ、-20℃未満にて凍結させた。5~15μmの厚さを有する参照例1による皮膚の断面サンプルをクリオスタットで調製した。参照例1による断面サンプルを顕微鏡(SEM)で観察し、それらの写真を撮った。参照例1による断面サンプルの写真を
図2に示す。
【0235】
図2(cf.
図2中の参照例1)に示すように、配合物1について顔料堆積はほとんどない。
【0236】
(実施例1及び比較例1)
第1に、1.5cm×1.5cm四方の形状を有するヒト死体皮膚を用意した。
【0237】
第2に、配合物1(実施例1として)又は配合物2(比較例1として)による、液体の形態にある組成物0.1gを、皮膚の部位上に塗布した。
【0238】
第3に、マイクロニードルデバイスを使用して、マイクロニードルが上記皮膚部位中に1分当たり5000回の周波数の垂直振動で5分間繰り返し侵入するように、マイクロニードルシートを上記皮膚部位上に適用した。マイクロニードルシートを皮膚部位上で動かして、皮膚部位の全体領域を、8秒/通過で、総計で5サイクル、スキャンした。
【0239】
マイクロニードルシートの適用後、上記組成物を上記皮膚部位上に15分間残して維持した。次いで、上記組成物を、乾いたティッシュで、拭うのに使用した乾いたティッシュ上に顔料が観察されなくなるまで皮膚部位から拭い取った。
【0240】
次に、皮膚部位を、水を含めた湿った消毒綿で2回洗浄し、続いて、乾いた消毒綿で拭った。次いで、皮膚を解剖し、O.C.T.( 凍結組織包埋剤)化合物(Sakura Finetek社製)中に入れ、-20℃未満で凍結させた。5~15μmの厚さを有する、実施例1又は比較例1による皮膚の断面サンプルをクリオスタットで調製した。実施例1又は比較例1による断面サンプルを顕微鏡(SEM)で観察し、それらの写真を撮った。実施例1及び比較例1による断面サンプルの写真を
図2に示す。
【0241】
図2中の実施例1及び比較例1についての写真は、皮膚中への、およそ4μmの深さにおける顔料の浅い侵入を示している。侵入の深さの点で多くの差はないが、疎水性処理した顔料を含む配合物1を使用した実施例1は、非コーティング親水性顔料を含む配合物2を使用した比較例1よりもはるかに多量の顔料堆積、及び比較例1よりもはるかに均一な顔料の堆積を付与した。
【0242】
(参照例2)
第1に、1.5cm×1.5cm四方の形状を有するヒト死体皮膚を用意した。皮膚の表面の写真を
図3A(cf.参照例2)に示す。
【0243】
第2に、配合物1による、液体の形態にある組成物0.1gを、該皮膚の部位上に塗布した。
【0244】
第3に、上記組成物を上記皮膚部位上に15分間残して維持した。次いで、上記組成物を乾いたティッシュで、拭うのに使用した乾いたティッシュ上に顔料が観察されなくなるまで皮膚部位から拭い取った。皮膚部位の表面の写真を撮った。写真を
図3B(cf.参照例2)に示す。
【0245】
次に、皮膚部位を、水を含めた湿った消毒綿で洗浄し、その表面の写真を撮った。写真を
図3C(cf.参照例2)に示す。
【0246】
次いで、皮膚部位を、5質量%の濃度のSLES(ラウレス硫酸ナトリウム)溶液を含めた湿った消毒綿で再度洗浄して、配合物1を更に除去し、続いて水で洗浄してSLES溶液を濯ぎ落とし、その表面の写真を撮った。写真を
図3D(cf.参照例2)に示す。
【0247】
図3D(cf.参照例2)に示すように、配合物1について顔料堆積はほとんどない。
【0248】
(実施例2及び比較例2)
第1に、1.5cm×1.5cm四方の形状を有するヒト死体皮膚を用意した。皮膚の表面の写真を
図3A(cf.実施例2及び比較例2)に示す。
【0249】
第2に、配合物1による、液体の形態にある組成物0.1gを、皮膚の部位上に塗布した。
【0250】
第3に、実施例2のために、マイクロニードルデバイスを用いて、マイクロニードルシートを、マイクロニードルが上記皮膚部位中に1分当たり5000回の周波数の垂直振動を伴って5分間繰り返し侵入するように、上記皮膚部位上に適用した。マイクロニードルシートを皮膚部位上で動かして、皮膚部位の全体領域を、8秒/通過の速度で、総計で5サイクル、スキャンした。
【0251】
他方、比較例2のために、垂直振動なしの、US-A-2012/0209294に示すダイアモンド先端ベースの研磨ツール(Riiviva Microderm Device)を用いた。研磨ツールを皮膚部位上で動かして、皮膚部位の全体領域を、8秒/通過の速度で、総計で5サイクル、スキャンした。
【0252】
マイクロニードルシート又は研磨ツールの適用後、上記組成物を上記皮膚部位上に15分間残して維持した。次いで、上記組成物を、乾いたティッシュで、拭うのに使用した乾いたティッシュ上に顔料が観察されなくなるまで皮膚部位から拭い取った。皮膚部位の表面の写真を撮った。実施例2及び比較例2の写真を
図3B(cf.実施例2及び比較例2)に示す。
【0253】
次に、皮膚部位を、水を含めた湿った消毒綿で洗浄し、その表面の写真を撮った。実施例2及び比較例2の写真を
図3C(cf.実施例2及び比較例2)に示す。
【0254】
次いで、皮膚部位を、5質量%の濃度のSLES(ラウレス硫酸ナトリウム)溶液を含めた湿った消毒綿で再度洗浄して、配合物1を更に除去し、続いて水で洗浄してSLES溶液を濯ぎ落とし、その表面の写真を撮った。実施例2及び比較例2の写真を
図3D(cf.実施例2及び比較例2)に示す。
【0255】
図3B~
図3D中の写真に示すように、実施例2は、比較例2よりも多い量の顔料堆積、及び比較例2よりも均一な顔料堆積を示した。
【0256】
更に、実施例2は、参照例2、実施例2及び比較例2の中で最良であった。
【0257】
上記実験は、振動又はタッピング動作を有するマイクロニードルデバイスが、疎水性顔料の局所適用のみと比べて、又は振動又はタッピング動作を一切もたない研磨ツールでの疎水性顔料の局所適用と比べて、皮膚中の疎水性顔料の堆積を増強できることを明示した。