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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150041
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】耐熱材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20231005BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B7/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058923
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 敦紀
(72)【発明者】
【氏名】大田 英生
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH06
4F100AH06C
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AK52
4F100AK52C
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DJ01
4F100DJ01C
4F100EH31
4F100GB32
4F100GB41
4F100JA13
4F100JJ03
4F100JJ03A
4F100JK02
(57)【要約】
【課題】 発火時の十分な断熱性能を有する耐熱材を提供する。
【解決手段】 耐熱層と、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱層と、
直接又は他の層を介して、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と
を有する耐熱材であって、
前記耐熱層を炎で600秒加熱した後における、前記耐熱層とは反対側の面の温度が、500℃以下である
ことを特徴とする耐熱材。
【請求項2】
耐熱層と、
直接又は他の層を介して、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と
を有する耐熱材であって、
前記耐熱層における面方向及び厚み方向の熱伝導率が、いずれも0.2W/m・K未満であることを特徴とする耐熱材。
【請求項3】
耐熱層と、前記耐熱層に直接積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材。
【請求項4】
前記耐熱層が、無機繊維と無機粉体とを含む材料からなる層である、請求項1~3のいずれか一項記載の耐熱材。
【請求項5】
前記シリコーンフォーム層と前記耐熱層とが一体成形されている、請求項1、2又は4記載の耐熱材。
【請求項6】
車載用又は電池用である、請求項1~5のいずれか一項記載の耐熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱材、例えば、車載用や電池用として用いられる耐熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
ある部品(又はある部分)が発熱又は発火すると、周辺部品(又は部分)に悪影響を及ぼし得る。該悪影響を無くすか軽減するため、各種耐熱材が提案されている。例えば、リチウムイオンバッテリーの課題として、短絡や過充電・過放電等の原因で急激な温度上昇による熱暴走が挙げられる。これに対し、熱暴走したバッテリーの熱から、隣接するバッテリーを保護するために、様々な耐熱材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-163538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、従来技術では、発火時の断熱性能が不十分であるとの知見を得た。そこで、本発明は、発火時でも十分な断熱性能を有する耐熱材を提供することを主課題とする。更に、用途によっては、凹凸面へ使用する場合もある。この場合、組付け時に凹凸面への追従性がないと亀裂が発生する。この結果、生じた亀裂より熱が伝播し、必要性能が満足できない可能性がある。そこで、本発明は、凹凸面への追従性を有する耐熱材を提供することを副課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、耐熱層と、直接又は他の層を介して、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材であって、前記耐熱層を炎で600秒加熱した後における、前記耐熱層とは反対側の面の温度が、500℃以下であることを特徴とする耐熱材である。
【0006】
また、本発明の別態様は、耐熱層と、直接又は他の層を介して、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材であって、前記耐熱層における面方向及び厚み方向の熱伝導率が、いずれも0.2W/m・K未満であることを特徴とする耐熱材である。
【0007】
更に、本発明の別態様は、耐熱層と、前記耐熱層に直接積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発火時でも十分な断熱性能を有する耐熱材を提供することが可能となる。更に、本発明によれば、凹凸面への追従性を有する耐熱材を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、耐熱層/シリコーンフォーム層/耐熱層から構成される耐熱材の一例である。
図2図2は、セルとセルとの間に耐熱材を介在させた分解図である。
図3図3は、一方のセルが熱暴走(800℃)した際の、耐熱材におけるシリコーンフォーム層表面温度(<300℃)の様子を示した概念図である。
図4図4は、複数のセルから構成されるモジュールを複数備えたバッテリーパックを示した図である。
図5図5は、耐火試験(耐熱層を炎で600秒加熱した後における、シリコーンフォーム層の温度を測定)の概要図である。
図6図6は、実施例における耐火試験の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態に係る耐熱材は、耐熱層と、直接又は他の層を介して、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材である。以下、該耐熱材、該耐熱材の製造方法及び該耐熱材の用途について、順に詳述する。
【0011】
<<<耐熱材>>>
<<全体構造>>
<層構成>
本形態に係る耐熱材は、耐熱層と、直接又は他の層を介して、前記耐熱層上に積層されているシリコーンフォーム層と、を有する耐熱材である。ここで、該シリコーンフォーム層は、耐熱層に直接積層されていることが好適である。また、本形態に係る耐熱材は、耐熱層とシリコーンフォーム層とを有する限り、他にどのような層を有していてもよい。例えば、耐熱層とシリコーンフォーム層との間に他の層を介在させていてもよい。他の層の例示としては、耐熱層とシリコーンフォーム層とが直接接合していない場合、該耐熱層と該シリコーンフォーム層とを接合する接着層を挙げることができる。ここで、該接着剤は、好適には無機耐熱性接着剤である。具体例としては、金属アルコキシドをバインダーとした無機接着剤であるスリーボンド社3700シリーズ、アルミナ等の耐火性セラミックと無機ポリマーとを主成分とした一液性熱硬化型接着剤である東亜合成社アロンセラミック(登録商標)、窒化アルミ、アルミナ、シリカ又はジルコニアをベースにした無機接着剤であるオーデック社セラマボンド、クオーツをベースにした耐熱セラミック系接着剤である太陽金網社レスボンド等である。また、耐熱層及びシリコーン層以外の層としては、上述した接着層の他、熱拡散層(例えば、熱伝導率が5~400W/m・K)等も挙げることができる。
【0012】
更に、本形態に係る耐熱材は、耐熱層及びシリコーンフォーム層のいずれか一方又は両方を複数有していてもよい。具体例としては、耐熱層/シリコーンフォーム層、耐熱層/シリコーンフォーム層/耐熱層、耐熱層/シリコーンフォーム層/耐熱層/シリコーンフォーム層/耐熱層、を挙げることができる。例えば、図1は、耐熱層1a/シリコーンフォーム層1b/耐熱層1aからなる耐熱材1を図示したものである。尚、図1は概略図であり、大きさや厚さ等はこれに限定されるものではない。また、本形態に係る耐熱材は、前記例のような、耐熱材のいずれか一面又は両面が耐熱層である態様のみならず、両面がシリコーンフォーム層であってもよい(例えば、シリコーンフォーム層/耐熱層/シリコーンフォーム層)。熱暴走側のシリコーンフォームが熱劣化して断熱層として機能しなくても、残りの耐熱層/シリコーンフォーム層で裏面温度を500℃以下にできるからである。
【0013】
<厚さ>
本形態に係る耐熱材は、総厚が20mm以下であることが好適である。ここで、上限値としては、例えば、20mm以下、15mm以下、10mm以下、7.5mm以下、7mm以下、5mm以下であり、下限値としては、例えば、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、3mm以上である。具体例としては、セルとセルの間に介在させる用途の場合、0.1mm以上20mm以下であることが好適である。また、複数のセルから構成されるセル群(モジュール、サブユニット、パック等)における該セル群外壁及び/又は該セル群を収納する箱に配置される用途の場合、3mm以上7mm以下であることが好適である。
【0014】
本形態に係る耐熱材の形状は、特に限定されず、例えば、方形、円形、耐熱対象の形状に合わせたもの等を挙げることができる。
【0015】
<<物性>>
本形態に係る耐熱材は、耐熱層を炎{例えば、800℃(例えば先端部)の炎}で600秒加熱した後における、シリコーンフォーム層の温度が、好適には、500℃以下、475℃以下、450℃以下、400℃以下、350℃以下、325℃以下、300℃以下である。この測定法を下記に詳述する。
【0016】
(測定法)
熱源:アルコールランプを使用(ハリオ製、アルコールランプ AL-5DB、燃料用アルコール)
炎の温度:Kタイプ熱電対にて測定
測定手順:一方に耐熱層を積層したサンプルを作製し、サイズ:10cm×10cmに加工する。サンプルを図5のようにセットする。耐熱層側からサンプル中央を炎で10分間加熱する。10分経過時の裏面の表面温度を赤外温度計にて測定する{赤外温度計:HORIBA製、ハンディ型赤外線放射温度計(IT-340)}。
【0017】
<<耐熱層>>
<材質>
本形態に係る耐熱層は、UL94 V-0を充足する層である。ここで、好適な耐熱層は、無機繊維と無機粉体とを含む材料からなる層である。この好適な耐熱層における無機繊維としては、グラスウール、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維及びジルコニア繊維等のセラミックス系繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維及びウォラストナイト等の鉱物系繊維等を挙げることができる。また、この好適な耐熱層における無機粉体としては、セピオライト、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト等の珪酸塩鉱物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ハードクレー、焼成クレー、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ウォラストナイト、重炭酸ナトリウム、ホワイトカーボン・溶融シリカ等の合成シリカ、珪藻土等の天然シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ等を挙げることができる。
【0018】
<厚み>
本形態に係る耐熱層の厚みは、特に限定されず、下限値は、例えば、0.05mm以上、0.075mm以上、0.1mm以上、0.2mm以上、上限値は、例えば、10mm以下、7.5mm以下、5mm以下、2.5mm以下、2mm以下、1mm以下である。
【0019】
<物性>
(熱伝導率)
本形態に係る耐熱層における面方向及び厚み方向の熱伝導率は、例えば、上限値として、いずれも0.2W/m・K未満、いずれも0.175W/m・K以下、いずれも0.15W/m・K以下、いずれも0.1W/m・K以下である。また、下限値は、特に限定されず、例えば、0.01W/m・K以上である。ここで、熱伝導率は、キセノンフラッシュ法を用いて、JIS-R1611「セラミックスの熱拡散率測定」に準拠した方法により測定可能である。
【0020】
(引張強度)
本形態に係る耐熱層の引張強度は、下限値として、例えば、0.1MPa以上、0.5MPa以上、1.0MPa以上、1.5MPa以上であり、上限値として、例えば、20.0MPa以下、15.0MPa以下、10.0MPa以下である。該例示範囲内であると、より好適な追従性を発揮し得る。ここで、引張強度は、JIS K6251:2010に準拠して測定された値である。
【0021】
<<シリコーンフォーム層>>
本形態に係るシリコーンフォーム層は、特に限定されず、例えば、固体状原料タイプのシリコーンフォーム(ミラブルシリコーンフォーム等)や、液体状原料タイプのシリコーンフォーム(2液型シリコーンフォーム等)や、エマルジョンを利用したシリコーンフォームが挙げられる。ミラブルシリコーンフォームとは、オルガノポリシロキサンを主原料とし、各種添加剤(充填剤、分散剤、加硫剤等)を配合して混練し、熱硬化させて得られるシリコーンフォームである。添加剤として発泡剤(化学発泡剤)を使用することで、フォーム状のシリコーン樹脂とすることができる。また、2液型シリコーンフォームとは、2液の液状シリコーン材料を混合・撹拌することによって硬化時に発生したガス(水素)により発泡し、気泡(セル)が形成された発泡体である。更に、エマルジョンを利用したシリコーンフォームとは、シリコーンと水とを乳化してエマルジョン組成物を作製し、当該エマルジョン組成物を機械的に発泡させた後、硬化(乾燥)する工程を経て形成することで得られる発泡体である。
【0022】
<厚さ>
発泡層の厚さは、特に限定されず、下限値としては、例えば、0.5mm以上、1.0mm以上、1.5mm以上であり、上限値としては、例えば、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下である。
【0023】
<密度>
発泡層の密度の下限値は、例えば、100kg/m以上、200kg/m以上、300kg/m以上である。一方、発泡層の密度の上限値は、例えば、900kg/m以下、800kg/m以下、700kg/m以下である。
【0024】
<発泡シートの製造方法1>
シリコーンフォームを形成する方法としては、2液型の液状シリコーンを混合及び撹拌して発泡及び硬化反応を実施する手法が挙げられる。具体的には、白金触媒等の触媒存在下で行われる以下の反応により発泡させ(発生した水素ガスによる)且つ硬化することにより、自己発泡反応型シリコーンフォームを得ることができる。
【0025】
反応1:ヒドロキシ基末端ポリジメチルシロキサン等のシラノール基含有オルガノポリシロキサン又は水酸基含有化合物(発泡助剤)と、両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、の反応
反応2:両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン等のビニル基含有オルガノポリシロキサンと、両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、の反応
【0026】
尚、2液型の液体シリコーン原料を混合・撹拌する際に空気、窒素等の不活性ガスを添加してもよい。これによれば、不活性ガスが発泡核となることにより、より均一なセルを形成することができる。
【0027】
白金触媒の具体例としては、クロロ白金酸、元素白金、クロロ白金酸六水和物、sym-ジビニルテトラメチルジシロキサンとのクロロ白金酸の錯体、ジクロロ-ビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、シス-ジクロロービス(アセトニトリル)白金(II)、ジカルボニルジクロロ白金(II)、塩化白金、酸化白金、0価白金金属錯体、例えば、Karstedt触媒、[Cp*Ru(MeCN)]PF、[PtCl(シクロオクタジエン)]、担体に支持された固体白金(例えば、アルミナ、シリカ又はカーボンブラック)、白金-ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)及びPt[(MeViSiO)}、白金-ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh及びPt(PBU3)}及び白金-ホスファイト錯体{例えば、Pt[P(Oph)及びPt[P(Obu)}を挙げることができる。ここで、上式中、「Me」はメチルを表し、「Bu」はブチルを表し、「Vi」はビニルを表し、そして「Ph」はフェニルを表し、c及びdは整数を表す。
【0028】
水酸基含有化合物(発泡助剤)として、ベンジルアルコール、エタノール等のアルコール類、水を用いることができる。この場合、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(メインポリマー)、水酸基含有化合物(発泡助剤)及び触媒を含む原液をA液とし、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(メインポリマー)及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)を含む原液をB液として用意し、A液とB液とを混合・撹拌することにより、泡化反応及び硬化反応を進行させてもよい。上記メインポリマーの数平均分子量は、500~100000が好ましく、1000~70000がより好ましく、1500~50000が更に好ましい。尚、数平均分子量は、標準ポリスチレンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。上述のようにA液及びB液からなる2液を用いる場合、A液とB液との混合比(質量比)は、得ようとする発泡体の密度やセルの形態にもよるが、典型的には、100:1~100:50である。
【0029】
上述のA液は、補強材として、シリカを含んでもよい。シリカの添加量は特に限定されないが、A液の全質量を基準として、0超~40質量%である。また、A液は、粘度調整用、及び/又は、強度、難燃性等の機能性付与用のフィラーとして、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等を含んでもよい。これらのフィラー全体の含有量は、特に限定されないが、A液の全質量を基準として、0超~50質量%である。
【0030】
水素発生時の反応時間は、得ようとする発泡体の密度やセルの形態によって適宜調節される。通常は1~10分、好ましくは2~6分である。混合温度は、得ようとする発泡体の密度やセルの形態によって適宜調節される。通常は常温である。
【0031】
尚、発泡層の密度は、硬化発泡(成型)時の温度、発泡助剤の量、A液とB液との比率(Si-Hの添加量)を最適化することにより調節することができる。
【0032】
<発泡シートの製造方法2>
発泡シートは、シリコーンエマルジョン組成物を発泡/硬化することによっても得ることができる。
【0033】
ここで、シリコーンエマルジョン組成物に用いられるシリコーン系樹脂としては、シラン化合物を原料モノマーとして含む限り特に限定されず、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、各種変性シリコーン(例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンエマルジョン、アルキル変性シリコーンエマルジョン、フッ素変性シリコーン等)を使用することができる。シリコーンエマルジョン組成物は、例えば、水性媒体中に樹脂成分の原料モノマーを配合し、乳化剤、重合開始剤等の各種添加剤の存在下で、原料モノマーを乳化重合させることで、製造することができる。尚、シリコーンエマルジョン組成物は、シリコーン系樹脂以外の樹脂、例えば、アクリル樹脂・ポリウレタン樹脂・ポリエステル樹脂・ポリエポキシ樹脂等を含んだエマルジョンをブレンドして用いてもよい。
【0034】
前述した各原料を混合することで、発泡シートの原料混合物であるシリコーンエマルジョン組成物を調製する(調製工程)。混合手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、各成分を混合する混合タンク等の容器内で撹拌しながら混合すればよい。その後、調製工程で得られたシリコーンエマルジョン組成物に所定の発泡用気体を添加し、これらを十分に混合させてシリコーンエマルジョン組成物中に気泡が多数存在する状態(発泡エマルジョン組成物)にする(発泡・硬化工程)。この発泡・硬化工程は、通常は、原料調製工程で得られた液状の発泡シートの原料混合物と発泡用気体とを、ミキシングヘッド等の混合装置により十分に混合することで実施される。ここで、攪拌・発泡工程でエマルジョン組成物に混合される発泡用気体は、発泡体中の気泡(セル)を形成するものであり、この発泡用気体の混入量によって、得られる発泡体の密度が決まる。発泡シートの密度を調整するためには、所望の発泡シートの密度と、発泡シートの原料の体積(例えば、発泡シートの原料が注入される成形型の内容積)とから、必要な発泡シートの原料の重量を算出し、この重量において所望の体積となるように発泡用気体の量を決定すればよい。また、発泡用気体の種類としては、主に空気が使用される。その他にも、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用することもできる。また、発泡方法としては、メカニカルフロス(機械発泡)法が挙げられる。メカニカルフロス法は、シリコーンエマルジョン組成物を攪拌羽根等で攪拌することにより、大気中の空気をエマルジョン組成物に混入させて発泡させる方法である。撹拌装置としては、メカニカルフロス法に一般に用いられる撹拌装置を特に制限なく使用可能であり、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機等を使用することができる。シリコーンエマルジョン組成物と空気との混合時間は、得たい発泡体の密度によって適宜調節され、通常は1~10分、好ましくは2~6分である。混合温度は、得たい発泡体の密度やセルの形態によって適宜調節され、通常は常温である。混合における攪拌速度は、気泡を細かくするために200rpm以上が好ましく(500rpm以上がより好ましく)、発泡機からの発泡物の吐出をスムーズにするために2000rpm以下が好ましい(800rpm以下がより好ましい)。
【0035】
<<<耐熱材の製造方法>>>
本形態に係る耐熱材は、シリコーンフォーム層が耐熱層に直接積層されていること、換言するとシリコーンフォーム層と耐熱層とが一体成型された積層体であることが好適である。該好適な耐熱材は、未硬化のシリコーンフォーム原料(上述の<発泡シートの製造方法1>及び<発泡シートの製造方法2>参照)を耐熱層上に直接適用(例えば、塗布)した後、発泡及び硬化することにより製造可能である。また、該製造方法によれば、接着剤を使用して耐熱層とシリコーンフォーム層とを接合する場合と対比し、接着剤も不要であり、且つ、加工工数も減らすことができるため、コストを低減させることが可能となる。
【0036】
<<耐熱材の用途>>
本形態に係る耐熱材は、高い断熱性が求められる各種用途にて有用である(例えば、車載用及び電池用)。ここで、電池用の耐熱材として用いる場合を詳述する。電池は、構成単位として、例えば、セル(例えば、円筒形セル、角形セル、ラミネートパウチ形セル)、複数のセルを含むモジュール(例えば、円筒形モジュール、角形モジュール、ラミネートパウチ形モジュール)、複数のモジュール(又は複数のセル)を含むパック(例えば、円筒形パック、角形パック、ラミネートパウチ形パック)に分類できる。ここで、本形態に係る耐熱材の一使用態様は、隣接するセル間に配置される態様である。例えば、図2は、セル4aとセル4bとの間及びセル4bとセル4cとの間に、それぞれ耐熱材1を介在させた分解図である。図3は、セル4aが熱暴走し該セルの表面温度が800℃近くとなっているにも拘わらず、耐熱材1が介在していることで、隣接するセル4bには熱伝播しない様子(一例)を示している{図3の例では、耐熱材1のシリコーンフォーム層の表面温度は300℃未満;したがって、耐熱材1の耐熱層(セル4b側)の表面温度も300℃未満}。また、本形態に係る耐熱材の別使用態様は、複数のセルから構成されるモジュール、サブユニット及びパックから選択されるセル群における、該セル群外壁及び/又は該セル群を収容する箱に配置される態様である。例えば、図4は、複数のセルから構成されるモジュールAを複数備えたバッテリーパックAを示した図である。バッテリーパックAは、複数のモジュールAと、上部カバーAと、下部ケースAと、を有している。ここで、本形態に係る耐熱材(例えば、耐熱層/シリコーンフォーム層からなる耐熱材)10は、上部カバーAの裏面に、耐熱層がモジュールと対向するよう配置されている。これにより、パックA内のモジュールA(内のセル)の熱暴走による、パック外の他の部材に与える影響を低減することが可能となる。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
室温(25℃)環境下で下記の表に示した2液(A液及びB液)をA:B=100:10(質量比)で混合し、回転速度100rpm、撹拌時間30秒の撹拌条件にて攪拌装置を用いて撹拌した。続いて、耐熱層となる基材に上記の攪拌原料をのせ、金型(厚み0.5mm)を配置した。その上に、PET基材(表面未処理:プレーン)を配置した。ステンレス製のロールでPET基材の上から、シート状になるよう攪拌原料を引き伸ばした。その後、加熱温度60℃、加熱時間3分の条件で反応させた後、PET基材を剥がした状態で、加熱温度120℃、加熱時間3分の条件で更に反応させることにより、発泡層(シリコーンフォーム層)を形成した後、金型を外して、実施例1~2及び4に係る一体成型された耐熱材を得た。他方、実施例3に係る耐熱材は、実施例1~2及び4と同様の手法(但し、上記攪拌原料を耐熱材上に載せる工程は無し)にてシリコーンフォーム層を形成させた後、無機耐熱性接着剤を用いて基材と接合することにより得た。尚、使用した耐熱層(基材)は、基材1(原料:セルロース、ガラス質繊維、ベントナイト、融剤焼成珪藻土、結晶性シリカ、難燃剤等)、基材2(原料:セルロース、ガラス質繊維、ゼオライト、融剤焼成珪藻土、結晶性シリカ、難燃剤等)、基材3{原料:アルカリアースシリケート繊維(SiO、CaO+MgO)等}、基材4(原料:バーミキュライト、アラミド繊維、PPS繊維、セルロース等)、である。また、いずれの基材の熱伝導率も、面方向及び厚み方向共に0.15W/m・K以下である。
【0039】
【表1】
【0040】
(発泡層の密度)
各耐熱材の発泡層の密度を、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定した。
【0041】
(耐熱層の引張強度)
上述した、耐熱層の(引張強度)に記載された方法にて測定した。
【0042】
(各層の厚さ)
各層の厚さを、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定した。
【0043】
(熱平衡温度)
上述した、耐熱材の(測定法)に記載された方法にて測定した。尚、開始から120秒までは10秒間隔で、120秒(2分)から10分までは30秒間隔で裏面温度を測定した。また、10分経過時の裏面温度を熱平衡温度とした。
【0044】
(追従性)
イマダフォースゲージ(500N用)にてアタッチメントA型A-4(山型の治具)を用いて20Nで積層体を5秒間押し解放し、表面状態を目視で観察した。外観上特に変化なしを「A(優良)」と評価し、亀裂が発生した場合を「B(良)」と評価した。
【0045】
実施例1~4に係る耐熱材の評価結果を表2及び図6に示す。
【0046】
【表2】

図1
図2
図3
図4
図5
図6