(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150045
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電動ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/0215 20130101AFI20231005BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20231005BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058929
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】野間 秀樹
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL18
(57)【要約】
【課題】磁気センサの検出精度を低下させることなく、安価に小型化することができる電動ステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】駆動機構部50は、駆動源100によりロック部材40を駆動し、ロック部材40を、車両のステアリングシャフトSSに係合するロック位置と、係合を解除するアンロック位置との間を移動させる。ロック位置およびアンロック位置に対応する位置には磁気センサ240aおよび240bが配設され、磁石420には、磁気センサ240aおよび240bに対向する側に凹部が設けられ、ホルダ430は、磁石420の凹部に嵌合する凸部を有し、磁石420の一部を露出させる開口部が磁気センサ240aおよび240bに対向する面側に設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
前記ロック部材と一体移動可能に設けられた磁石と、
前記磁石を前記ロック部材に保持するホルダと、
前記ロック部材を移動させる駆動力を生じる駆動源と、
前記駆動源の出力により前記ロック部材を駆動する駆動機構部と、
前記ロック位置および前記アンロック位置に対応する位置に配設された磁気センサと、
を備え、
前記磁石には、前記磁気センサに対向する側に凹部が設けられ、
前記ホルダは、前記磁石の凹部に嵌合する凸部を有し、前記磁石の一部を露出させる開口部が前記磁気センサに対向する面側に設けられていることを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
前記磁石の凹部は、前記磁石の一面側の中央部に形成され、前記ホルダの開口部は前記ホルダの凸部を挟むように二ヶ所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項3】
前記駆動機構部を収容するベースボディ部を有し、
前記ベースボディ部には、前記ロック部材が移動可能に収容される駆動孔部と、
前記駆動孔部に連通し、前記ホルダの開口部を有している一面側を露出するように開口させた長溝孔部と、
が形成され、
前記長溝孔部に対向する位置に前記磁気センサが配設されていることを特徴とした請求項1または2に記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記ロック部材を挟持するように保持する係合爪部を有し、前記係合爪部は、前記長溝孔部の側壁により着脱方向への移動が阻止されることを特徴とした請求項3に記載の電動ステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には盗難防止の目的で、駐車時にステアリングホイールの回転を制限するための電動ステアリングロック装置を備えるものがある。
この電動ステアリングロック装置は、例えば、運転者がエンジンスタートスイッチをOFFにした場合に、駆動源(電動モータ)によってロック部材を移動させて車両のステアリングシャフトに係合させることによりステアリングホイールの回転をロックする。
また、運転者がエンジンスタートスイッチをONにした場合には、駆動源によってロック部材を移動させて車両のステアリングシャフトへの係合を解除し、ステアリングホイールの回転をアンロックする。
【0003】
このような電動ステアリングロック装置において、ステアリングホイールのロックおよびアンロックを電動で行うためには、ロック部材がロック位置あるいはアンロック位置にあるか否かを検知して駆動源を駆動制御する必要がある。
この種の対応手法として、例えば、ロック部材や該ロック部材を移動させる連動部材に磁石を取り付け、ロック位置およびアンロック位置に対応する箇所に磁気センサをそれぞれ配置し、これらの磁気センサによって磁石の磁力を検出することにより、ロック部材がロック位置あるいはアンロック位置にあるか否かを検知する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1で開示される技術は、磁石の脱落あるいはがた防止のために、ホルダは、磁石を覆うようにロック部材に嵌装されている。
そのため、ホルダに金属の部材が使用された場合には、ホルダの変形防止と、磁石のがた止めを行うために、ホルダは、大きなばね形状で構成させる必要があった。
一方、ホルダに樹脂等の部材が使用された場合には、ホルダは、剛性を持たせるために肉厚を厚く構成させる必要があった。
そのため、ホルダが大きくなることにより、電動ステアリングロック装置も大型化し、重量の増加、組付け性の悪化などが生じるという課題があった。
また、ホルダの肉厚が厚くなることにより、磁石と磁気センサとの距離が離れてしまうために、磁石は、強磁力の磁石あるいは複数の磁石である必要があり、コストアップになるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、磁気センサの検出精度を低下させることなく、安価に小型化することができる電動ステアリングロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、前記ロック部材と一体移動可能に設けられた磁石と、前記磁石を前記ロック部材に保持するホルダと、前記ロック部材を移動させる駆動力を生じる駆動源と、前記駆動源の出力により前記ロック部材を駆動する駆動機構部と、前記ロック位置および前記アンロック位置に対応する位置に配設された磁気センサと、を備え、前記磁石には、前記磁気センサに対向する側に凹部が設けられ、前記ホルダは、前記磁石の凹部に嵌合する凸部を有し、前記磁石の一部を露出させる開口部が前記磁気センサに対向する面側に設けられていることを特徴とする電動ステアリングロック装置を提案している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、磁気センサの検出精度を低下させることなく、安価に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるベースボディ部の斜視図であり、(a)は前方の斜め上方から見た斜視図であり、(b)は前方の斜め下方から見た斜視図であり、(c)は後方の斜め下方から見た斜視図であり、(d)は背面図である。
【
図3】
図1に示されるロック部材を示す斜視図であり、(a)は前方の斜め上方から見た斜視図であり、(b)は前方の斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示される磁石の三面図および底面図である。
【
図5】
図3に示される磁石を装着したホルダを示した正面図、側面図、底面図である。
【
図6】
図3に示されるロック部材を平面AAにて前後方向に切断し後方斜め下方から見た断面斜視図である。
【
図7】
図1に示される電動ステアリングロック装置を、カバー、ハウジング、ギアカバーを取外した状態で示す駆動機構部の斜視図であり、(a)は前方の斜め上方から見た斜視図であり、(b)は前方の斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】
図7に示される駆動機構部を、ベースボディ部を取外した状態で示す三面図である。
【
図9】
図8に示されるウォームホイールの斜視図であり、(a)は前方の斜め上方から見た斜視図であり、(b)は前方の斜め下方から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る電動ステアリングロック装置をカバー、ハウジング、ギアカバー、ベースボディ部を取外した状態で示す側面図であり、(a)はアンロック状態を示し、(b)はロック状態を示す。
【
図11】
図6に示されるロック部材の変形例を示す後方斜め下方から見た断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、
図1から
図10を用いて、本実施形態に係る電動ステアリングロック装置1について説明する。
なお、図面に適宜示される矢印FRは、電動ステアリングロック装置1の前方を示し、矢印UPは上方を示し、矢印RHは右方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、電動ステアリングロック装置1の上下方向、前後方向、左右方向を示すものとする。
【0011】
<電動ステアリングロック装置1の構成>
電動ステアリングロック装置1は、
図1に示すように、カバー10と、ハウジング20と、ベースボディ部30と、ロック部材40と、を含んで構成されている。また、カバー10の内部に、ベースボディ部30に収容された駆動機構部50が配置されている。車両のステアリングシャフトSSをロック状態にする場合には、ロック部材40の先端部がハウジング20から前方側へ突出し車両のステアリングシャフトSSに係合する。
【0012】
カバー10は、前側へ開放された中空の略直方体箱状を成しており、金属、樹脂等で形成されている。カバー10は、左右側面に、ベースボディ部30の爪部と嵌合可能な貫通した略長方形の開口部を有している。
【0013】
ハウジング20は、前方側に延在された中空の略直方体形状であり、金属、樹脂等で形成されている。ハウジング20の前方側の端面は、略矩形に開口されており、内部にロック部材40を移動可能に収容する略直方体の空間を有している。また、ハウジング20の後方側の端面には、ベースボディ部30と接合可能な溝が外周を囲うように成形されており、ハウジング20は、ベースボディ部30の前面側に略矩形の開口部の周囲に設けられたコの字型の嵌合口に、下方側からスライドして嵌合する。
【0014】
ベースボディ部30は、樹脂等で一体に形成された収容ケースであり、駆動源100と、回路基板200と、ウォームホイール300と、ロック部材40と、を含んで構成された後述する駆動機構部50を収容する。また、ベースボディ部30は、カバー10と、ハウジング20を、爪止め等により固定する。また、ベースボディ部30は、
図2の破線で示すように、収容空間として、駆動源収容孔部MAと、ホイール収容孔部WAと、駆動孔部LAと、基板収容部CAと、長溝孔部SAとが形成されている。
【0015】
駆動源収容孔部MAは、
図2(a)に示すように、ベースボディ部30の上方側に、後述する駆動源100が収容される略長方形に上方側を開口させた収容孔と、駆動源100の回転軸およびウォームギア110が収容される略長方形に上方側を開口させた収容孔とを連通させ、駆動源100およびウォームギア110が収容される孔である。駆動源100のウォームギア110とウォームホイール300とのギア同士が嵌合する箇所は、駆動源収容孔部MAとホイール収容孔部WAとが連通している。
【0016】
ホイール収容孔部WAは、ベースボディ部30の上方側に、上方側を開口させた略円筒形に形成されたウォームホイール300が収容される孔である。ホイール収容孔部WAの円形状を成す底面には、図示しないギアカバーの凸部を嵌合させる略円筒形の凹部が中心部に形成されている。また、駆動源収容孔部MAとホイール収容孔部WAの上方側には、駆動源収容孔部MAとホイール収容孔部WAを覆うように図示しないギアカバーが、ベースボディ部30にビス止め等により固定される。
【0017】
駆動孔部LAは、
図2(b)に示すように、ロック部材40が移動可能に収容される孔である。駆動孔部LAは、ベースボディ部30の前面側に略矩形の開口部を有し、前後方向に略直方体の孔を形成している。
【0018】
基板収容部CAは、
図2(c)に示すように、ベースボディ部30の下部に、カバー10とベースボディ部30との間に挟まれる空間であり、回路基板200が収容される。
【0019】
長溝孔部SAは、
図2(c)および
図2(d)に示すように、駆動孔部LAと連通し、ロック部材40に組付けられているホルダ430の開口部をベースボディ部30から露出させるように開口している孔である。具体的には、長溝孔部SAは、ベースボディ部30の後方側に略矩形の開口部を有し、前後方向に略直方体の孔を形成している。また、長溝孔部SAは、下方側に略長方形の開口部を有している。長溝孔部SAには後述するスライダ410が摺動可能に収容される。長溝孔部SAの左右方向の側壁は、ロック部材40のホルダ430の係合爪部470が隣接して挿入され、ロック部材40の左右方向の動きが制限される。
【0020】
<ロック部材40の構成>
ロック部材40は、車両のステアリングシャフトSSに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動する。ロック部材40は、
図3(a)および
図3(b)に示すように、ロックシャフト400と、スライダ410と、を含んで構成されている。また、ロック部材40は、駆動孔部LAおよび長溝孔部SAに収容される。
【0021】
ロックシャフト400は、上下方向を板厚方向とし、左右方向を長手方向とする略矩形プレート状に形成されている。ロックシャフト400の前方先端部には、テーパが形成されている。ロックシャフト400は、ハウジング20およびベースボディ部30の前面側の開口部に設けられた駆動孔部LAに、前後方向に移動可能に収容される。ロックシャフト400の後方側にはL字に形成された凸部が構成され、後述するスライダ410の凹部に摺動可能に密接している。そして、ロックシャフト400は、後述する駆動機構部50の動きに連係して、車両のステアリングシャフトSSに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能に構成されている。
【0022】
スライダ410は、前後方向に延在した略直方体状を成しており、金属、樹脂等で形成されている。スライダ410の前方には、右側面側に開口部を有する凹部が形成されており、ロックシャフト400の後方側のL字に形成された凸部が、当該凹部内に収容されている。ロックシャフト400は、図示しない付勢部材によって前側へ付勢されており、凸部が凹部の前面に当接し、ロックシャフト400がスライダ410と前後方向に一体移動可能に構成されている。また、スライダ410の後端部には、下方側へ突出した下方凸部450が設けられている。下方凸部450の下面には、後述する磁石420を収容するための磁石収容部HAが形成されており、磁石収容部HAには、下側へ開放された凹状に形成されている。また、後方側の側方側両面には、ホルダ430の係合爪部470と嵌合させるための凹部が形成されている。また、後方側の上方側には、上方に突出した上方凸部440が形成されており、ウォームホイール300に形成されたカム溝340と嵌合する。これにより、ウォームホイール300の回転に連動して、スライダ410(ロック部材40)が前後方向に移動する。
【0023】
<磁石420の構成>
磁石420は、スライダ410の磁石収容部HAに収容されて、ロック部材40(ロックシャフト400およびスライダ410)と一体移動可能に構成されている。磁石420は、
図4に示すように、前後方向を長手方向とする略直方体状を成したフェライト磁石等の永久磁石である。磁石420は、磁気センサ240aあるいは240bに対向する面側(下面側)に凹部としての嵌合溝421が形成されている。嵌合溝421は断面が略台形の形状であり、磁石420の下面側中央部に左右方向に延在されるとともに、左右方向に貫通している。また、磁石420の下面には、嵌合溝421を挟むように二ヶ所に平面422aおよび422bが形成されている。
【0024】
<ホルダ430の構成>
ホルダ430は、
図5に示すように、磁石420の嵌合溝421に嵌合する凸部としての嵌合部431を有し、磁石420の平面422aおよび422bを露出させる開口部OAが磁気センサ240aあるいは240bに対向する面側(下面側)に設けられている。ホルダ430は、樹脂材等によって構成されている。ホルダ430は、上側へ開放された略有底矩形筒状に形成され、磁石420をロック部材40に保持する。ホルダ430には、左右一対の取付片460が形成されており、取付片460は、ホルダ430から上側へ突出している。取付片460の上端部には、左右方向内側へ突出した係合爪部470が一体に形成されている。そして、ホルダ430が、磁石収容部HAを閉塞するように、スライダ410の下方凸部450に下側から組付けられている。このとき、取付片460の係合爪部470がスライダ410に係合して、ホルダ430がスライダ410に組付けられている。
【0025】
ホルダ430の底壁には、断面が略台形の左右方向に延在した棒状の形状をした嵌合部431が、ホルダ430の両側壁と一体に形成されている。嵌合部431は、一対の開口部OAの間に、左右方向に延在された凸部として形成されている。また、嵌合部431の傾斜面は、ホルダ430を磁石420に組み付ける際に、ホルダ430を磁石420に密接させる位置に導く。そして、嵌合部431は、隙間なく嵌合溝421に係合する。
【0026】
また、ホルダ430の底壁には、嵌合部431を挟むように二ヶ所の開口部OAが貫通形成されている。開口部OAは、左右方向を長手方向とする略長孔状に形成されている。そして、ホルダ430は、嵌合部431と、開口部OAの側面SW1および側面SW2とによって嵌合溝421を挟み込み、磁石420をスライダ410の所定位置に保持している。また、ホルダ430の前方端の形状と、後方端の形状とを非対称とし、一方の側面SW1側に三角リブ432を形成し、ホルダ430をSW2側に寄せてがたつきを防止し、磁石の位置決めを確実にすることにより、スライダ410に対するホルダ430の前後方向の誤った組み立てを防止するとともに、磁石の保持位置がずれることを防止できる構造となっている。
【0027】
また、ホルダ430は、磁石420の平面422aおよび422bをホルダ430の下面と面一に配置させ、開口部OAから下方側へ露出させている。そして、ホルダ430は、磁石420の平面422aおよび422bを磁気センサ240aあるいは240bと上下方向に対向して配置させる。
【0028】
<駆動機構部50の構成>
駆動機構部50は、駆動源100の出力によりロック部材40を駆動する。
駆動機構部50は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、ハッチングで示すベースボディ部30と、ロック部材40と、駆動源100と、回路基板200と、ウォームホイール300と、を含んで構成されている。駆動源100およびウォームホイール300は、駆動源収容孔部MAおよびホイール収容孔部WAに収容され、ロック部材40は、駆動孔部LAおよび長溝孔部SAに移動可能に収容されている。回路基板200は、ベースボディ部30下面側の基板収容部CAに収容されている。また、ロック部材40が、駆動孔部LAおよび長溝孔部SAに収容されることにより、回路基板200と、ロック部材40との上下方向の位置が固定され、さらに、長溝孔部SAの左右の側壁によりロック部材40の左右方向への移動が阻止される。
【0029】
駆動源100は、駆動源100の回転軸の先端部に、ウォームギア110が一体回転可能に設けられ、ベースボディ部30の駆動源収容孔部MAに収容されている。駆動源100の回転軸(矢印A方向)は、水平面と平行して設定され、また、
図7の矢印Aおよび矢印Bに示すように、駆動源100の回転軸と、ウォームホイール300の回転軸(矢印B方向)とは、略直交している。
【0030】
回路基板200は、
図8に示すように、上下方向を板厚方向とした略矩形板状に形成され、ベースボディ部30の下面側の基板収容部CAにビス止め等により固定されている。具体的には、回路基板200が、ベースボディ部30の固定ボス(図示省略)の下側に隣接して配置されるとともに、ロック部材40のホルダ430の下側に離間して配置されている。回路基板200には、コネクタ210と、端子ホルダ220と、一対のターミナル230と、磁気センサ240aおよび240bを含んだ電気回路と、が設けられている。コネクタ210は、カバー10の側方側に形成された切欠部に配置されている。コネクタ210には、図示しない車両側のコネクタが嵌合されて、図示しない車両側のハーネスを介して、回路基板200が車両の制御部に電気的に接続されている。また、端子ホルダ220には、一対のターミナル230が保持されている。そして、駆動源100の一対の電極部130は、一対のターミナル230を介して回路基板200と電気的に接続されている。また、磁気センサ240aおよび240bは、長溝孔部SAに対向する位置に回路基板200の前後方向に直線的に配置されている。つまり、ロック部材40に構成されている磁石420が移動する際、磁気センサ240aおよび240bの真上を磁石420が通過する位置である。磁気センサ240aは、ロック部材40がアンロック状態となる位置に配設され、磁気センサ240bは、ロック部材40がロック状態となる位置に配設される。
【0031】
ウォームホイール300は、
図9(a)および
図9(b)に示すように、金属あるいは樹脂等の部材で、上下方向を軸方向とした略円筒状に形成され、中央部には略円筒状に設けられた凹部310が形成され、中心部には上下方向に貫通した円筒形の孔320を有している。ウォームホイール300は、ベースボディ部30のホイール収容孔部WA内に収容される。また、凹部310は、ベースボディ部30の上部にビス等で固定される図示しないギアカバーの凸部と回転可能に嵌合する。ギアカバーの凸部は二段の円筒形が階段状に形成されており、円筒形の孔320には、ギアカバーの一段目の凸部が回転可能に貫通して挿入され、当該凸部とベースボディ部30の底面に設けられた凹部とが嵌合する。また、ウォームホイール300の上方外周部には、ギア部330が周方向全周に亘って形成され、ギア部330はウォームギア110と嵌合する。これにより、駆動源100が駆動して出力軸が回転することにより、ウォームホイール300が自身の軸回りに回転する構成になっている。
【0032】
また、ウォームホイール300の下方側には、
図9(b)に示すように、ロック部材40と嵌合し駆動させる螺旋状のカム溝340が形成されている。カム溝340は、
図9(b)のハッチングで示す壁面に沿った溝で形成されている。カム溝340には、ロック部材40の上部に形成されている上方凸部440が嵌合し、ウォームホイール300の回転に連動して、スライダ410(ロック部材40)を前後方向に移動させる。
【0033】
<作用・効果>
上記のように構成された電動ステアリングロック装置1は、車両のステアリングシャフトSSをロックおよびアンロックする。電動ステアリングロック装置1は、アンロック状態では、
図10(a)に示すように、ロック部材40がロック解除位置に配置されて、ロックシャフト400の先端部がハウジング20から前方側へ突出していない状態になっている。これにより、車両のステアリングシャフトSSの回転が許可された状態になっている。このとき、磁石420は磁気センサ240aの上方に位置している。
【0034】
そして、車両のエンジンを停止させると、回路基板200の回路は、回路基板200のコネクタ210を介して接続されている車両の制御部から、ロック状態にする旨の信号を受信する。回路基板200の回路は、駆動源100に電圧を印加し出力軸を回転させ、出力軸の先端部に設けられたウォームギア110を回転させる。そして、ウォームギア110に噛合したウォームホイール300は、平面視で時計回りに回転する。ウォームホイール300は、カム溝340に摺動可能に嵌合したロック部材40のスライダ410の凸部を押圧することにより、ウォームホイール300の回転に連動して、ロック部材40を前方に移動させる。前方へ移動したロック部材40は、ロック部材40に一体に固定されている磁石420を前方側へ移動させる。そして、磁石420は、ロック状態となる位置に配設されている磁気センサ240bの上方を通過する。
図10(b)に示すように、磁石420が磁気センサ240bの上方を通過した際には、磁気センサ240bは、磁石420が発生させている磁力を、長溝孔部SAを介して検知し、磁束密度に応じた電圧を発生させ、ロック部材40が、ロック状態となる位置まで移動したことを知らせるロック検知信号を発生させる。回路基板200の回路がロック検知信号を受信すると、駆動源100への電圧印加を停止させ、ロック部材40をロック状態となる位置で停止させることができる。
【0035】
一方で、車両のエンジンを停止状態から起動状態にすると、回路基板200の回路は、車両の制御部から、アンロック状態にする旨の信号を受信する。回路基板200の回路は、駆動源100に電圧を印加し出力軸を回転させ、ウォームホイール300を平面視で半時計回りに回転させる。ウォームホイール300は、カム溝340に摺動可能に嵌合したロック部材40に構成されるスライダ410の凸部を押圧することにより、ウォームホイール300の回転に連動して、ロック部材40を後方に移動させる。後方へ移動したロック部材40は、磁石420を後方側へ移動させる。そして、磁石420は、アンロック状態となる位置に配設されている磁気センサ240aの上方を通過する。
図10(a)に示すように、磁石420が磁気センサ240aの上方を通過した際には、磁気センサ240aは、磁石420が発生させている磁力を、長溝孔部SAを介して検知し、磁束密度に応じた電圧を発生させ、ロック部材40が、アンロック状態となる位置まで移動したことを知らせるアンロック検知信号を発生させる。回路基板200の回路がアンロック検知信号を受信すると、駆動源100への電圧印加を停止させ、ロック部材40をアンロック状態となる位置で停止させることができる。
【0036】
このとき、磁気センサ240aあるいは240bは、磁石420が近接した場合には、検出した磁束密度や磁束の向きに応じた電圧を発生させる。ここで、磁束密度B[Wb/m2]の強さは、磁力(磁荷)の強さに比例し、また、磁力の発生源である磁石420からの距離の二乗に反比例することは自明である。すなわち、磁気センサ240aあるいは240bの磁石420の近接検知に必要な磁束密度B[Wb/m2]を確保するには、磁石420の磁力で調整するか、あるいは磁力の発生源である磁石420から磁気センサ240aあるいは240bまでの距離を調整することが必要になる。磁石420の磁力を強くするには、磁気センサ240aあるいは240bに対向する側の面積を広くする手法、あるいは、磁石420の上下方向の高さ寸法を大きくする手法、あるいは、磁石の素材を変更する手法等が考えられるが、いずれの手法も磁石の大型化、あるいは、コストアップになる虞がある。そこで、磁石420から磁気センサ240aあるいは240bまでの距離を小さくする。
【0037】
本実施形態に係る電動ステアリングロック装置1は、磁石420には、磁気センサ240aあるいは240bに対向する側に嵌合溝421が形成され、ホルダ430は、磁石420の嵌合溝421に嵌合する嵌合部431を有し、磁石420の一部を露出させる開口部OAが磁気センサ240aあるいは240bに対向する面側に設けられている。また、磁石420の嵌合溝421は、磁石420の一面側の中央部に形成され、ホルダ430の開口部OAはホルダ430の嵌合部431を挟むように二ヶ所に形成されている。また、
図4に示すように、磁石420の下方側の中心部には、左右方向に貫通した嵌合溝421が設けられている。また、ホルダ430は、磁石420の嵌合溝421に嵌合する嵌合部431を有し、磁石420の嵌合溝421を挟むように二ヶ所に形成された平面422aおよび422bを磁気センサ240aあるいは240bに対向して露出させる開口部OAが設けられている。つまり、ホルダ430の開口部OAに面している磁石420と、磁気センサ240aあるいは240bと間には、例えば、ホルダ430の板厚等の構造物が存在しない構成とすることができる。また、ホルダ430の開口部OAは、ホルダ430の嵌合部431を挟むように二か所形成されている。そして、磁石を露出させた側、すなわち、磁気センサ240aあるいは240bに対向する側の磁石420の面積を広くすることにより、磁石420の磁力を強くすることができる。また、磁石420と、磁気センサ240aあるいは240bと間には構造物が存在しないことにより、磁石420と、磁気センサ240aあるいは240bとが接触しない程度に近接させた寸法で構成させることができる。そして、磁石を露出させることによって、磁石420の平面422aおよび422bをホルダ430の下面と面一に配置し、磁石420と磁気センサ240aあるいは240bまでの距離を小さくすることにより、磁束密度Bを強くすることができる。そのため、磁気センサの検出精度を低下させることなく、安価に小型化することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る電動ステアリングロック装置1は、駆動機構部50を収容するベースボディ部30を有し、ベースボディ部30には、ロック部材40が移動可能に収容される駆動孔部LAと、駆動孔部LAに連通し、ホルダ430の開口部を有している一面側を露出するように開口させた長溝孔部SAと、が形成され、長溝孔部SAに対向する位置に磁気センサ240aあるいは240bが配設されている。ベースボディ部30は、
図2の破線で示すように、駆動源収容孔部MAと、ホイール収容孔部WAと、駆動孔部LAと、長溝孔部SAと、基板収容部CAを有している。また、ベースボディ部30は、
図3に示すように、ロック部材40を、駆動孔部LAと、長溝孔部SAとに収容し、駆動源100を駆動源収容孔部MAに収容し、回路基板200を基板収容部CAに配設し、ウォームホイール300をホイール収容孔部WAに収容している。また、長溝孔部SAに対向して回路基板200を基板収容部CAに配設し、回路基板200には、長溝孔部SAに対向する位置に磁気センサ240aあるいは240bが配設されている。つまり、ベースボディ部30に駆動機構部50を構成する全ての機能部を収容させるとともに、相互の位置関係を固定させることができる。そのため、磁気センサの検出精度を低下させることなく、安価に小型化することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る電動ステアリングロック装置1は、ホルダ430は、ロック部材40を挟持するように保持する係合爪部470を有し、係合爪部470は、長溝孔部SAの側壁により着脱方向への移動が阻止される。
図5に示すように、ホルダ430は、上方側にロック部材40を挟持するように保持する係合爪部470を有し、ホルダ430の係合爪部470をスライダ410の凹部に嵌合させることにより、磁石420を保持しロック部材40に固定する。また、
図6(a)および
図6(b)に示すように、ロック部材40は、長溝孔部SAに摺動可能に収容され、長溝孔部SAの左右方向の側壁は、ロック部材40のホルダ430の係合爪部470が隣接して挿入される。つまり、ホルダ430の係合爪部470は、長溝孔部SAに挿入された際には、長溝孔部SAの側壁がホルダ430の左右方向に隣接していることにより、ロック部材40の左右方向の動きが制限されるとともに、係合爪部470の脱方向への移動が阻止される。そして、ロック部材40が前後方向に駆動された際には、ホルダ430は、磁石420を安定して保持し、磁石420と磁気センサ240aあるいは240bとの位置の誤差を少なくすることができる。そのため、磁気センサの検出精度を低下させることなく、安価に小型化することができる。
【0040】
<変形例>
上記に説明した実施形態のホルダ430において、ホルダ430の底壁に、上下方向に二ヶ所貫通させて開口している開口部OAを例示したが、ホルダ430Aの開口部OA1を一ヶ所貫通させて形成してもよい。この場合には、
図11に示されるように、ロック部材40Aにおいて、ホルダ430Aには、ホルダ430Aの底壁に開口部OA1を設け、嵌合部431Aをホルダ430Aの前後方向の両端部に設ける。そして、ホルダ430Aは、磁石420Aの前後方向の両端部に設けた嵌合溝421Aを挟み込み、磁石420Aをスライダ410の所定位置に保持させることができる。
【0041】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1;電動ステアリングロック装置
10;カバー
20;ハウジング
30;ベースボディ部
40;ロック部材
40A;ロック部材
50;駆動機構部
100;駆動源
110;ウォームギア
200;回路基板
300;ウォームホイール
330;ギア部
340;カム溝
400;ロックシャフト
410;スライダ
420;磁石
420A;磁石
421;嵌合溝
421A;嵌合溝
430;ホルダ
430A;ホルダ
431;嵌合部
431A;嵌合部
440;上方凸部
450;下方凸部
460;取付片
CA;基板収容部
HA;磁石収容部
LA;駆動孔部
MA;駆動源収容孔部
OA;開口部
OA1;開口部
SA;長溝孔部
SS;ステアリングシャフト
SW1;側面
SW2;側面
WA;ホイール収容孔部