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特開2023-150075水中不分離性コンクリートの打設工法
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  • 特開-水中不分離性コンクリートの打設工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150075
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】水中不分離性コンクリートの打設工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/04 20060101AFI20231005BHJP
   E02D 23/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02D15/04
E02D23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058976
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518208716
【氏名又は名称】ポゾリス ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】土師 康一
(72)【発明者】
【氏名】澤村 淳美
(72)【発明者】
【氏名】柴田 靖
(72)【発明者】
【氏名】堀 直
(72)【発明者】
【氏名】竹下 永造
【テーマコード(参考)】
2D045
【Fターム(参考)】
2D045AA04
2D045BA04
2D045CA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】温度応力よるひび割れの発生を抑制等できる水中不分離性コンクリートの打設工法を提供する。
【解決手段】オープンケーソンの底版を構築する水中不分離性コンクリートの打設工法であって、底版コンクリートの構築予定箇所に、増粘剤および遅延剤を該構築現場にて添加した流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを、下記工程に従い打設する。
(A)最下層となる第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する、第1次打設工程、
(B)第1層の流動性が保持されている間に、その表層部にトレミー管を挿入し、第2層を打設する、第2次打設工程、
(C)以降、第n層の流動性が保持されている間に、その表層部にトレミー管を挿入し、第n+1層を打設して積層する、逐次積層工程
(D)最上層となる水中不分離性コンクリートを、その下層の流動性が保持されている間に、その表層部にトレミー管を挿入し、打設する、最終打設工程
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンケーソンの底版コンクリートを構築するための水中不分離性コンクリートの打設工法であって、
前記底版コンクリートの構築予定箇所に、増粘剤および遅延剤を該構築現場にて添加した流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを、少なくとも下記(A)~(D)工程に従い打設することを特徴とする、水中不分離性コンクリートの打設工法。
(A)最下層となる第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する、第1次打設工程
(B)前記第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、第2層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する、第2次打設工程
(C)前記(B)工程以降、第n層(ただし、nは2以上の自然数である。)の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該第n層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、第n+1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設して逐次積層していく、逐次積層工程
(D)最上層となる水中不分離性コンクリートを、その下層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該下層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、最上層となる水中不分離性コンクリートを打設する、最終打設工程
【請求項2】
前記流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性保持時間が、20~100時間であることを特徴とする、請求項1に記載の水中不分離性コンクリートの打設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンケーソンの底版コンクリートを構築するための、水中不分離性コンクリートの打設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンケーソン工法は、水中や軟弱地盤等に大規模構造物を構築する工法であり、筒や箱等の中空筒体(ケーソン)を地中に埋めて、ケーソンの刃口部(下端部)の地盤を掘削してケーソンの自重によりケーソンを沈下させ、このケーソンの沈下と継足しを順次繰り返して、所定の支持地盤まで掘り下げる工法である。前記底版コンクリートに水中不分離性コンクリートを用いる場合、非特許文献1に記載の水中不分離性コンクリートの規定に従うことになる。該規定は、具体的には、(1)受注者は、せん断力の小さい位置に打継目を設け、新旧コンクリートが十分に密着するように処置しなければならず、(2)受注者は、打継面を高圧ジェット、水中清掃機械等を用い清掃し、必要に応じて補強鉄筋等により補強しなければならない、としている。したがって、この規定を満たすために、従来、水中不分離性コンクリートを用いたオープンケーソン工法では、底版コンクリートにコールドジョイントが生じないように、水中不分離性コンクリートを、昼夜を通して打設し続ける場合があった。
【0003】
しかし、近年、構造物の大型化により底版コンクリートの厚みや大きさが増したため、セメントの水和熱による温度応力が高くなり、底版コンクリートのひび割れが生じ易くなった。また、コンクリートの打設が1日で終了しないため、打設を翌日に持ち越す場合、打継目にコールドジョイントが生じるおそれがあった。さらに、大深度地下空間の工事では、打継目は大深度の閉塞空間内にあるため、前記(2)の規定を履行できない場合があった。その結果、例えば、非特許文献2に記載の明石海峡大橋の主塔基礎の施工例では、遠隔操作ができる打継目処理装置を開発して、該装置をコンクリートの打設後にその上面を走行させて、該上面に沈殿したレイタンスの除去と該上面の目荒しを行っている。しかし、この施工例は、前記の特殊な装置を要することと、工期が遅延することから、汎用性に欠ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“第13節 水中不分離性コンクリート 4.打継ぎ”、土木工事共通仕様書、1-77頁、国土交通省、令和2年3月
【非特許文献2】坂本光重ら、“水中不分離性コンクリートの大規模打設における流動・合流・打継ぎについての研究”、土木学会論文集、No.492/VI-23、pp.67-76、1994.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、オープンケーソン工法において、水中不分離性コンクリートを用いた底版コンクリートの施工では、以下の課題が挙げられる。
1)温度応力よるひび割れの発生
2)打継面に生じたレイタンスの除去
3)特殊な打継目地処理装置の導入による施工コストの増大
4)水中不分離性コンクリートの少量打設に限定される結果、打設回数の増加による施工の長期化
よって、本発明は、前記の課題を解決できる水中不分離性コンクリートの打設工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的にかなう打設工法について鋭意検討したところ、下記の構成を有する水中不分離性コンクリートの打設工法は、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1]オープンケーソンの底版コンクリートを構築するための水中不分離性コンクリートの打設工法であって、
前記底版コンクリートの構築予定箇所に、増粘剤および遅延剤を該構築現場にて添加した流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを、少なくとも下記(A)~(D)工程に従い打設することを特徴とする、水中不分離性コンクリートの打設工法。
(A)最下層となる第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する、第1次打設工程
(B)前記第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、第2層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する、第2次打設工程
(C)前記(B)工程以降、第n層(ただし、nは2以上の自然数である。)の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該第n層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、第n+1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設して逐次積層していく、逐次積層工程
(D)最上層となる水中不分離性コンクリートを、その下層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該下層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、最上層となる水中不分離性コンクリートを打設する、最終打設工程
[2]前記流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性保持時間が20~100時間であることを特徴とする、前記[1]に記載の水中不分離性コンクリートの打設工法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中不分離性コンクリートの打設工法は、下記i)~vi)の効果を奏する。
i)温度応力よるひび割れの発生を抑制できる。
ii)打継面にレイタンスが生じない。
iii)打継目地処理装置は不要である。
vi)水中不分離性コンクリートの少量打設に限定されず大量打設が可能なため、施工(工期)は長期化しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】トレミー管を用いて、流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記のとおり、オープンケーソンの底版コンクリートを構築するための水中不分離性コンクリートの打設工法であって、底版コンクリートの構築予定箇所に、増粘剤および遅延剤を該構築現場にて添加した流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを、少なくとも(A)第1次打設工程、(B)第2次打設工程、(C)逐次積層工程、および(D)最終打設工程に従い打設する、水中不分離性コンクリートの打設工法等である。なお、本発明の打設工法は、前記(A)~(D)工程のほかに、他の任意の行程を含んでもよい。
以下、本発明について、必須の行程である(A)第1次打設工程、(B)第2次打設工程、(C)逐次積層工程、および(D)最終打設工程に分けて詳細に説明する。
【0011】
(A)第1次打設工程
該工程は、最下層となる第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する工程である。
ここで、前記流動性保持時間とは、本発明の打設方法に適した水中不分離性コンクリートの流動性が保持される時間であり、具体的には、スランプフローが目標設定値の範囲内に保持される時間である。スランプフローの目標設定値は、好ましくは500~650mmである。また、流動性保持時間は、好ましくはコンクリート混練後20~100時間に設定する。
本発明における水中不分離性コンクリートは、オープンケーソンの底版コンクリートの構築現場の施工状況に応じて、所定の流動性保持時間となるよう、構築現場にて、増粘剤および遅延剤をコンクリートに添加する。第1層の流動性保持時間は、第2層の水中不分離性コンクリートを打設するときまで、流動性を保持できるように調製する。これによって、第2次打設工程は、第1次打設工程後、翌日以降の打設が可能となる。なお、前記水中不分離性コンクリートの打設は、該コンクリートの品質低下を防ぐため、トレミー管(打設管)やコンクリートポンプを用いて行うとよい。
【0012】
流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートに用いる遅延剤は、通常、コンクリートに使用されているものであれば特に限定されないが、水中不分離性コンクリートの凝結時間を遅らせ、その流動性を長時間保持し、かつ硬化後の強度発現性に大きな影響を及ぼさないものであり、後述する増粘剤は含まれない。遅延剤は、凝結遅延性を有する成分および/または流動性を保持する成分が、適宜、選択したおよび/または組み合わせた1剤または2剤以上を添加する。このような遅延剤としては、芳香族エーテル系縮合物、リグニンスルホン酸化合物、オキシカルボン酸化合物、ナフタレンスルホン酸化合物、メラミンスルホン酸化合物、単糖類、多糖類ケイフッ化物およびホウ酸から選ばれる1種以上であり、これらの中でも好ましくは、オキシカルボン酸化合物および/またはオキシカルボン酸化合物との複合体(混合物)である。
また、前記遅延剤の添加量は、遅延剤の種類や遅延効果により、一義的には定まらないが、遅延時間と硬化時間のバランス(流動性保持時間の適正化)をとる上で、好ましくはセメントの質量に対して0.1~5.0質量%であり、要求される流動性保持時間に応じて、これらの範囲の中から添加量を選択するとよい。
【0013】
また、流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートに用いる増粘剤は、通常、コンクリートに使用されるものであれば特に制限されないが、コンクリートに増粘性を付与し、水中に投入された場合に材料の分離抵抗性に優れたものが望まれる。そのような増粘剤は、例えば、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤およびガム系増粘剤等が挙げられる。これらの中でセルロース系増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。また、アクリル系増粘剤は、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。また、ガム系増粘剤は、ローカストビーンガム、キサンタンガムおよびジェランガム等が挙げられる。これらの中では、特にセルロース系増粘剤が好ましい。これらの増粘剤は、市販の水中不分離性混和剤が使用できる。増粘剤は、遅延剤と同様に、現場にて添加する。
【0014】
本発明による流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートは、好ましくは、さらに分散剤を添加する。本発明で用いる分散剤は、一般的にモルタルやコンクリートの製造に使用されるセメント用の分散剤である。そのような分散剤は、例えば、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤および流動化剤等が挙げられる。具体的には、これらの分散剤を化合物名で示せば、メラミンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤およびナフタレンスルホン酸系分散剤等が挙げられる。これらの中では、特にポリカルボン酸系の分散剤が好ましい。前記分散剤(製品として)の単位量は、好ましくはセメントの質量に対して0.5~4.0%(C×0.5~4.0%)である。
【0015】
また、流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートに用いるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントおよび低熱ポルトランドセメント、またはポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ等を混合した混合セメントから選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、水中不分離性コンクリートの流動性が長時間保持できることから、高炉セメントが好ましい。セメントの配合量は、使用するセメントの種類および単位水量によって適宜設定することができるが、好ましくは、単位量で300~550kg/mである。
【0016】
また、流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートに用いる骨材は、特に制限されず、通常のコンクリートの製造に用いる細骨材および粗骨材の何れも使用できる。そのような細骨材および粗骨材は、例えば川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材および再生粗骨材等が挙げられる。骨材の配合量は、発熱および乾燥収縮の抑制ならびにワーカビリティ確保のバランスの観点から、単位量で、好ましくは1400~2000kg/m、より好ましくは1500~1800kg/mである。
【0017】
また、流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートに用いられる水は、特に制限されるものではなく、通常のコンクリートの製造に使用される水道水等を用いることができる。水の配合量(単位水量)は、180~250kg/mとすることが、材料分離抵抗性を高め、かつ、乾燥収縮を抑制することから好ましい。
【0018】
流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの混練には、通常のコンクリートの製造に使用されているコンクリートミキサ等を用いることができ、例えば、パン型ミキサ、二軸強制練りミキサ等が挙げられる。
【0019】
(B)第2次打設工程
該工程は、図1に示すように、前記第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間(凝結前)に、該第1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、第2層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設する工程である。これにより、未硬化の第1層と第2層の水中不分離性コンクリートが一体化できるため、従来行われていた、水中不分離性コンクリートの打設後のコンクリート上面のレイタンスの除去や目荒し等の打継処理が不要になる。また、未硬化の段階で第1層と第2層の水中不分離性コンクリートを一体化できるから、温度応力ひび割れの発生を抑制でき、コンクリートの大量打設が可能で、工期の大幅な短縮や工費の低減、さらには構造物の品質向上に資することができる。
【0020】
(C)逐次積層工程
該工程は、図1に示すように、前記(B)工程以降、第n層(ただし、nは2以上の自然数である。)の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該第n層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、第n+1層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを打設して逐次積層していく工程である。
これにより、前記(B)工程と同様に、未硬化の第n層と第n+1層の水中不分離性コンクリートが一体化するため、水中不分離性コンクリートの打設後のコンクリート上面のレイタンスの除去や目荒し等の打継処理が不要になり、温度応力ひび割れの発生を抑制でき、コンクリートの大量打設が可能で、工期の大幅な短縮や工費の低減、さらには構造物の品質向上に資することができる。
【0021】
(D)最終打設工程
該工程は、最上層となる水中不分離性コンクリートを、その下層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの流動性が保持されている間に、該下層の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの表層部にトレミー管を挿入し、最上層となる水中不分離性コンクリートを打設する工程である。ここで、最上層に打設する水中不分離性コンクリートは、一般的な水中不分離性コンクリートを使用できる。なお、上記の流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートのように、流動性保持時間を長く調整するために、必ずしも遅延剤を添加する必要はない。
これにより、前記(B)および(C)工程と同様に、未硬化の最上層とその下層の水中不分離性コンクリートが一体化するため、水中不分離性コンクリートの打設後のコンクリート上面のレイタンスの除去や目荒し等の打継処理が不要になり、また、温度応力ひび割れの発生を抑制でき、コンクリートを大量打設が可能で、工期の大幅な短縮や工費の低減、さらには構造物の品質向上に資することができる。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は当該実施例に限定されない。
1.使用材料
使用した材料は表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
2.流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートの製造
表2に示す配合に従い、室温が20℃の試験室内において、セメント、細骨材および粗骨材を、パン型ミキサに投入して30秒間空練りした後、前記分散剤(PC)を溶かした一次添加水を添加して1分間混錬しコンクリートを得た。
次に、前記コンクリートに、表2に示す添加量に従い、前記増粘剤(L)および遅延剤(R1およびR2)を溶かした二次添加水を添加(後添加)して75秒間混錬し、流動性保持時間制御型水中不分離性コンクリートを製造した。なお、前記一次添加水と二次添加水の水量の比は9:1(質量比)である。
水中不分離性コンクリートのスランプフローの目標範囲は575±50mmとした。また、コンクリート配合Aは流動性保持時間が24時間以上となるように、コンクリート配合Bは流動性保持時間が48時間以上となるように、またコンクリート配合Cは流動性保持時間が96時間以上となるように調製した。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表3に示すように、コンクリート配合A、BおよびCの流動性保持時間は、それぞれ24時間、48時間および96時間確保されていることを確認した。したがって、本発明の水中不分離性コンクリートの打設工法において必要な流動性保持時間に調製でき、優れた施工性が得られることが分かる。

図1