(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150083
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】軽量気泡セメント質硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058987
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 芳宙
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆人
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆之
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA21
4G056CB31
(57)【要約】
【課題】より多くの量の二酸化炭素が固定化された軽量気泡セメント質硬化体を製造することができる方法を提供する。
【解決手段】セメントの一部と、第一のセメント含有混練物用の水を混練して、第一のセメント含有混練物を得る工程と、第一のセメント含有混練物の中に炭酸ガスを供給して、炭酸化混練物を得る工程と、炭酸化混練物と、セメントの残部と、水の一部であって第二のセメント含有混練物用の水を混練して、又は、炭酸化混練物と、セメントの残部を混練して、第二のセメント含有混練物を得る工程と、起泡剤と起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る工程と、第二のセメント含有混練物と、気泡を混練して、未硬化のセメント組成物を得る工程と、未硬化のセメント組成物を硬化させて、軽量気泡セメント質硬化体を得る工程を含む軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、起泡剤、及び水を含み、かつ、二酸化炭素を固定させてなる軽量気泡セメント質硬化体を製造するための方法であって、
上記セメントの一部と、上記水の一部であって第一のセメント含有混練物用の水を混練して、第一のセメント含有混練物を得る第一のセメント混練工程と、
上記第一のセメント含有混練物の中に、固定の対象である上記二酸化炭素の気体の状態である炭酸ガスを供給して、炭酸化混練物を得る炭酸化混練物調製工程と、
上記炭酸化混練物と、上記セメントの残部と、上記水の一部であって第二のセメント含有混練物用の水を混練して、又は、上記炭酸化混練物と、上記セメントの残部を混練して、第二のセメント含有混練物を得る第二のセメント混練工程と、
上記起泡剤と上記水の一部であって起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る気泡調製工程と、
上記第二のセメント含有混練物と、上記気泡を混練して、未硬化のセメント組成物を得るセメント組成物調製工程と、
上記未硬化のセメント組成物を硬化させて、軽量気泡セメント質硬化体を得る硬化工程、
を含むことを特徴とする軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【請求項2】
上記軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含まず、かつ、
上記セメント組成物調製工程において、上記未硬化のセメント組成物の密度が0.30~1.00g/cm3となるように、上記気泡の量を調整する請求項1に記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【請求項3】
上記軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含み、かつ、
上記骨材を、上記第一のセメント混練工程及び上記第二のセメント混練工程のいずれか一方又は両方で、供給して、混練し、
上記セメント組成物調製工程において、上記未硬化のセメント組成物の密度が0.70~2.50g/cm3となるように、上記気泡の量を調整する請求項1に記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【請求項4】
上記軽量気泡セメント質硬化体がセメント分散剤を含み、かつ、
上記セメント分散剤を、上記第一のセメント混練工程及び上記第二のセメント混練工程のいずれか一方又は両方で、供給して、混練する請求項1~3のいずれか1項に記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【請求項5】
上記軽量気泡セメント質硬化体中の二酸化炭素の割合が、3.5~15.0質量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡セメント質硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。
これに関連して、セメント製造工場で発生する排ガス等から回収された二酸化炭素を、コンクリート等に固定化する技術が検討されている。
排ガス等の二酸化炭素含有ガスを、カルシウム含有粉末を含むスラリーに吹き込むことで、二酸化炭素をカルシウム含有粉末に固定化する工程を含む方法として、例えば、特許文献1には、セメントクリンカー粉末、石膏粉末、及び、炭酸化したカルシウム含有粉末を含むセメント粉末組成物を製造するための方法であって、炭酸化前の上記カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーの中に、二酸化炭素含有ガスを供給して、炭酸化処理されたスラリーを得る炭酸化工程と、セメント製造用の仕上げミルの中に、セメントクリンカー、石膏、及び、上記炭酸化処理されたスラリーを供給して粉砕し、上記セメント粉末組成物を得る粉砕工程、を含むことを特徴とするセメント粉末組成物の製造方法が記載されている。
また、自然環境において優れた二酸化炭素吸収能力を発揮する気泡モルタルとして、特許文献2には、水、粉体、気泡、混和剤を配合したモルタル混練物であって、水の体積単位量(L/m3)と粉体の体積単位量(L/m3) の 合 計をVp、 気 泡 の 体 積 単 位 量(L/ m3)をVsoと 表すとき、Vp:Vsoが2:8~6:4であり、 粉 体 成 分としてセメントおよびγビ ーライトを含有し、粉体に占めるγビーライトの割合が20~70質量%である気泡モルタル 混練物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-152631号公報
【特許文献2】特開2012-188319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より多くの量の二酸化炭素が固定化された軽量気泡セメント質硬化体を製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントと水を混練して、第一のセメント含有混練物を得る工程と、第一のセメント含有混練物の中に炭酸ガスを供給して、炭酸化混練物を得る工程と、炭酸化混練物とセメントと水を混練して、又は、炭酸化混練物とセメントを混練して、第二のセメント含有混練物を得る工程と、起泡剤と上記水の一部である起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る工程と、第二のセメント含有混練物と、気泡を混練して、未硬化のセメント組成物を得る工程と、未硬化のセメント組成物を硬化させて、軽量気泡セメント質硬化体を得る工程を含む方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] セメント、起泡剤、及び水を含み、かつ、二酸化炭素を固定させてなる軽量気泡セメント質硬化体を製造するための方法であって、上記セメントの一部と、上記水の一部であって第一のセメント含有混練物用の水を混練して、第一のセメント含有混練物を得る第一のセメント混練工程と、上記第一のセメント含有混練物の中に、固定の対象である上記二酸化炭素の気体の状態である炭酸ガスを供給して、炭酸化混練物を得る炭酸化混練物調製工程と、上記炭酸化混練物と、上記セメントの残部と、上記水の一部であって第二のセメント含有混練物用の水を混練して、又は、上記炭酸化混練物と、上記セメントの残部を混練して、第二のセメント含有混練物を得る第二のセメント混練工程と、上記起泡剤と上記水の一部であって起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る気泡調製工程と、上記第二のセメント含有混練物と、上記気泡を混練して、未硬化のセメント組成物を得るセメント組成物調製工程と、上記未硬化のセメント組成物を硬化させて、軽量気泡セメント質硬化体を得る硬化工程、を含むことを特徴とする軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【0006】
[2] 上記軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含まず、かつ、上記セメント組成物調製工程において、上記未硬化のセメント組成物の密度が0.30~1.00g/cm3となるように、上記気泡の量を調整する前記[1]に記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
[3] 上記軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含み、かつ、上記骨材を、上記第一のセメント混練工程及び上記第二のセメント混練工程のいずれか一方又は両方で、供給して、混練し、上記セメント組成物調製工程において、上記未硬化のセメント組成物の密度が0.70~2.50g/cm3となるように、上記気泡の量を調整する前記[1]に記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
[4] 上記軽量気泡セメント質硬化体がセメント分散剤を含み、かつ、上記セメント分散剤を、上記第一のセメント混練工程及び上記第二のセメント混練工程のいずれか一方又は両方で、供給して、混練する前記[1]~[3]のいずれかに記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
[5] 上記軽量気泡セメント質硬化体中の二酸化炭素の割合が、3.5~15.0質量%である前記[1]~[4]のいずれかに記載の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、より多くの量の二酸化炭素が固定化された軽量気泡セメント質硬化体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の軽量気泡セメント質硬化体の製造方法は、セメント、起泡剤、及び水を含み、かつ、二酸化炭素を固定させてなる軽量気泡セメント質硬化体を製造するための方法であって、上記セメントの一部と、上記水の一部であって第一のセメント含有混練物用の水を混練して、第一のセメント含有混練物を得る第一のセメント混練工程と、第一のセメント含有混練物の中に、固定の対象である二酸化炭素の気体の状態である炭酸ガスを供給して、炭酸化混練物を得る炭酸化混練物調製工程と、炭酸化混練物と、上記セメントの残部と、上記水の一部であって第二のセメント含有混練物用の水を混練して、又は、炭酸化混練物と、上記セメントの残部を混練して、第二のセメント含有混練物を得る第二のセメント混練工程と、起泡剤と上記水の一部であって起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る気泡調製工程と、第二のセメント含有混練物と、気泡を混練して、未硬化のセメント組成物を得るセメント組成物調製工程と、未硬化のセメント組成物を硬化させて、軽量気泡セメント質硬化体を得る硬化工程を含むものである。
以下、工程ごとに詳しく説明する。
【0009】
[第一のセメント混練工程]
本工程は、セメントの一部と、水の一部であって第一のセメント含有混練物用の水を混練して、第一のセメント含有混練物を得る工程である。
上記セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、汎用性等の観点から、普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0010】
セメントの全量(軽量気泡セメント質硬化体に含まれるセメントの全量)中の上記セメントの一部の量の割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは8~25質量%、さらに好ましくは10~20質量%、特に好ましくは12~18質量%である。上記割合が1質量%以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量がより多くなる。上記割合が50質量%以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度がより大きくなる。
【0011】
水としては、特に限定されず、例えば、上水道水、スラッジ水等が挙げられる。
第一のセメント含有混練物用の水(以下、「第一の混練水」ともいう。)とは、軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の全量の一部であって、本工程において、供給、混練される水(第一のセメント含有混練物に含まれる水)を意味する。
水の全量(軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の全量)中の第一の混練水の割合は、好ましくは50~99質量%、より好ましくは55~95質量%、さらに好ましくは60~90質量%、特に好ましくは65~80質量%である。上記割合が50質量%以上であれば、第一のセメント含有混練物の流動性が向上し、作業性が向上する。また、後述の炭酸化混練物調製工程において、第一のセメント含有混練物に、均質に炭酸ガスを供給しやすくなる。上記割合が99質量%以下であれば、相対的に起泡剤含有水に含まれる水の量が多くなり、気泡の量をより大きくすることができる。
【0012】
本工程における、第一のセメント含有混練物の水セメント比は、好ましくは40~500%、より好ましくは100~450%、さらに好ましくは150~400%、さらに好ましくは200~350%、特に好ましくは250~330%である。上記比が40%以上であれば、第一のセメント含有混練物の流動性がより向上し、作業性が向上する。また、後述の炭酸化混練物調製工程において、第一のセメント含有混練物に、均質に炭酸ガスを供給しやすくなる。上記比が500%以下であれば、相対的に起泡剤含有水に含まれる水の量が大きくなり、気泡の量をより大きくすることができる。
なお、水セメント比とは、水とセメントの質量比(水/セメント)を百分率(%)で表したものである。
本工程において、セメントの一部と、第一の混練水を混練する方法は特に限定されず、例えば、撹拌槽等にセメントの一部を投入し、次いで、第一の混練水を投入した後、混練してもよく、撹拌槽等にセメントの一部と第一の混練水を同時に投入した後、混練してもよい。
【0013】
[炭酸化混練物調製工程]
本工程は、第一のセメント混練工程で得られた第一のセメント含有混練物の中に、固定の対象である二酸化炭素の気体の状態である炭酸ガスを供給して、炭酸化混練物を得る工程である。
本工程において、第一のセメント含有混練物に均質に炭酸ガスを供給する観点から、第一のセメント含有混練物(以下、「第一の混練物」ともいう。)を流動させながら炭酸ガスを供給することが好ましい。
第一の混練物の中に炭酸ガスを供給する方法としては、例えば、以下の(i)~(iii)の方法等が挙げられる。
(i) 第一の混練物を得るための撹拌槽内に、第一の混練物中に炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段を設置し、第一の混練物の中に炭酸ガスを供給する方法。
より具体的な例としては、セメントの一部と、第一の混練水を撹拌し混練して第一の混練物を得るための撹拌槽と、該撹拌槽の中の混練物収容用空間内に配設された、炭酸ガス供給手段(例えば、散気板)を備えた装置内において、上記第一の混練物を撹拌しながら、該第一の混練物の中に、上記炭酸ガス供給手段を用いて炭酸ガスを吹き込んで、炭酸化混練物を得る方法が挙げられる。
【0014】
(ii) 第一の混練物を、第一の混練物を収容するための撹拌槽から、炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段(例えば、散気板)を有する装置内に移送した後、該装置内で第一の混練物中に炭酸ガスを吹き込んで、炭酸化混練物を得て、次いで、該炭酸化混練物を、炭酸化混練物を収容するための炭酸化混練物槽に移送する方法。
なお、上記撹拌槽と上記炭酸化混練物槽は、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0015】
より具体的な例としては、セメントの一部と、第一の混練水を撹拌し混練して第一の混練物を得るための撹拌槽内に収容された、第一の混練物を、炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段を有する装置内に、ポンプ等を用いて、上記撹拌槽の中の第一の混練物を上記装置内に供給するための第一の流通路を通して移送した後、上記装置内において、第一の混練物を撹拌しながら、第一の混練物の中に炭酸ガスを供給し、次いで、炭酸ガス供給後の第一の混練物(炭酸化混練物)を、上記撹拌槽に、ポンプ等を用いて、上記装置内の炭酸化混練物を上記撹拌槽に供給するための第二の流通路を通して移送して、炭酸化混練物を得る方法が挙げられる。
また、上記第一の混練物を、十分な量の炭酸ガスが供給されるまで、上記撹拌槽、上記第一の流通路、上記装置、及び、上記第二の流通路の順に繰り返し循環させてもよい。
さらに、炭酸化混練物を得た後、炭酸化混練物を、炭酸化混練物槽とは異なる、炭酸化混練物を貯蔵するための貯蔵槽に一旦貯蔵して、該貯蔵槽から、炭酸化混練物を、適宜、炭酸化混練物槽に供給してもよい。
【0016】
(iii) 第一の混練物を、第一の混練物を収容するための撹拌槽から、炭酸化混練物を収容するための炭酸化混練物槽に移送する際に、第一の混練物の中に炭酸ガスを吹き込む方法。
より具体的な例としては、セメントの一部と、第一の混練水を撹拌し混練して第一の混練物を得るための撹拌槽内に収容された、第一の混練物を、上記撹拌槽から供給された第一の混練物を流通させるための管路内で流通させながら、第一の混練物の中に炭酸ガスを供給かつ撹拌して、炭酸化混練物を得た後、該炭酸化混練物を上記炭酸化混練物槽に移送する方法が挙げられる。
【0017】
上記管路としては、例えば、上記管路内を流通している第一の混練物に上記炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給口を有し、第一の混練物と上記炭酸ガスを撹拌して混合することのできる形態を有するものが挙げられる。具体的には、管路内に、上記炭酸ガスを供給するための散気手段(例えば、散気板)、及び、撹拌手段(例えば、ラインミキサーやスタティックミキサー)を配設したものが挙げられる。
また、第一の混練物の中に炭酸ガスを供給した後、炭酸化混練物を、炭酸化混練物槽に移送せずに、上記撹拌槽に戻してもよい。さらに、第一の混練物を、上記撹拌槽、及び、上記管路内の順に繰り返し循環させて、十分な量の炭酸ガスを供給した後、第一の混練物を炭酸化混練物として、炭酸化混練物槽に移送してもよい。
また、上記方法において、炭酸化混練物を得た後、炭酸化混練物を貯蔵するための炭酸化混練物貯蔵槽に一旦貯蔵して、該貯蔵槽から、上記炭酸化混練物を、適宜、上記炭酸化混練物槽に供給してもよい。
【0018】
第一の混練物に固定化される二酸化炭素の量を増加させる観点から、炭酸ガスの供給は、第一の混練物の液面の加圧下(例えば、第一の混練物を収容してなるタンクの内部圧力を、大気圧を超える1,200hPa以上に高めるなど)で行ってもよい。
このことから、炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段は加圧できる構造のものが好ましい。
【0019】
また、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)は、炭酸ガスのみからなる気体として、第一の混練物に供給されてもよいが、入手の容易性等の観点から、炭酸ガスを含む気体として、第一の混練物に供給されてもよい。
炭酸ガスを含む気体中の炭酸ガスの割合は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。該割合が5体積%以上であれば、第一の混練物に固定化される二酸化炭素の量をより増やすことができる。また、炭酸ガスの供給に要する時間を短くすることができる。
炭酸ガスを含む気体の例としては、セメント製造工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、製鉄工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、火力発電工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約10体積%)、及び、これらの排ガスからの分離回収ガス(炭酸ガス濃度:約100体積%)等が挙げられる。
【0020】
炭酸ガスの供給は、炭酸化してなる第一の混練物(炭酸化混練物)のpHが、好ましくは5.0~11.5、より好ましくは5.5~11.0、さらに好ましくは6.0~10.0、特に好ましくは6.5~9.5の範囲内となるように行われる。上記pHが5.0以上となるように炭酸ガスの供給を行った場合、軽量気泡セメント質硬化体の強度がより大きくなる。また、炭酸ガスの供給に要する時間が短くなり、製造効率がより向上する。上記pHが11.5以下となるように炭酸ガスの供給を行った場合、第一の混練物に固定化される二酸化炭素の量がより多くなる。なお、炭酸ガスを供給することによって、第一の混練物のpHは低下する。
第一の混練物に固定化される二酸化炭素の量を十分に多くするために必要な、炭酸ガスの供給時間は、水セメント比、炭酸ガス供給手段、該手段を用いて供給される炭酸ガスを含む気体の炭酸ガス濃度等によって変わる。このため、炭酸ガスの供給を終了するタイミングは、炭酸化混練物のpHの実測値を基に定めることが好ましい。
【0021】
[第二のセメント混練工程]
本工程は、炭酸化混練物調製工程で得られた炭酸化混練物と、セメントの残部と、水の一部(軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の一部)であって第二のセメント含有混練物用の水を混練して、又は、上記炭酸化混練物と、セメントの残部を混練して、第二のセメント含有混練物(以下、「第二の混練物」ともいう。)を得る工程である。
セメントの全量(軽量気泡セメント質硬化体に含まれるセメント全量)中のセメントの残部の量の割合は、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~97質量%、さらに好ましくは70~95質量%、さらに好ましくは75~92質量%、さらに好ましくは80~90質量%、特に好ましくは82~88質量%である。上記割合が50質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記割合が99質量%以下であると、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量がより多くなる。
【0022】
第二のセメント含有混練物用の水(以下、「第二の混練水」ともいう。)とは、軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の全量の一部であって、本工程において、供給、混練される水(第二のセメント含有混練物に含まれる水から、第一のセメント含有混練物に含まれる水を除いた水)を意味する。
本工程において、炭酸化混練物と、セメントの残部と、第二の混練水を混練する場合、水の全量(軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の全量)中の第二の混練水の量の割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~40質量%、さらに好ましくは3~30質量%、特に好ましくは4~25質量%である。上記割合が1質量%以上であれば、第二の混練物に含まれる空気量が多くなり、第二の混練物の流動性が向上する。上記割合が50質量%以下であると、第一の混練物の流動性が、相対的に向上し、第一の混練物に、均質に炭酸ガスを供給することがより容易になる。
【0023】
本工程において、炭酸化混練物と、セメントの残部と、第二の混練水を混練する場合、各材料を混練する順番は特に限定されるものではなく、例えば、(i)撹拌槽において、炭酸化混練物とセメントの残部を混練した後、次いで、混練物に第二の混練水を投入して混練する方法、(ii)撹拌槽において、炭酸化混練物と第二の混練水を混練した後、次いで、混練物にセメントの残部を投入して混練する方法(iii)撹拌槽において、各材料を同時に投入して混錬する方法等が挙げられる。中でも、第二の混練物の流動性の向上の観点から、(i)炭酸化混練物とセメントの残部を混練した後、次いで、混練物に第二の混練水を投入して混練する方法が好ましい。
【0024】
[気泡調製工程]
本工程は、起泡剤と軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の一部であって起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る工程である。
起泡剤としては、特に限定されるものではなく、市販のエアモルタル用の起泡剤や、エアルク用の起泡剤等を用いることができる。
起泡剤の種類としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等の界面活性剤系起泡剤、蛋白質系起泡剤等が挙げられる。
本工程の「軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の一部である起泡剤含有水用の水」の語における「水の一部」とは、軽量気泡セメント質硬化体に含まれるセメントと混練する水の全量の一部(水の全量から、第一のセメント含有混練物用の水及び第二のセメント含有混練物用の水を除いたもの)を意味する。
【0025】
起泡剤及び水の配合量は、目標とする未硬化のセメント組成物の密度、質量、起泡剤の発泡倍率、及び起泡剤の希釈倍率等に応じて適宜定められる。
具体的には、以下の(i)~(ii)の手順に従って算出することができる。
(i)セメント組成物調製工程(後述)で得られる未硬化のセメント組成物の量を1m3と考えた場合において、未硬化のセメント組成物の体積(1m3)から、第二のセメント混錬工程で得られる第二のセメント含有混練物の体積を減じた体積(気泡の体積)を算出する。
(ii)気泡の体積と、起泡剤の発泡倍率及び希釈倍率から、以下の式を用いて、起泡剤の量を算出することができる。
起泡剤の量(kg)=気泡の体積/起泡剤の発泡倍率/希釈倍率×1000
なお、水の量は、起泡剤の量と希釈倍率から算出することができる。
例えば、未硬化のセメント組成物1m3を製造する場合において、第二のセメント含有混練物の体積が0.34m3である場合、気泡の体積は0.66m3(660リットル)となる。ここで、発泡倍率が20倍でかつ希釈倍率が20倍である起泡剤を用いる場合、起泡剤の量は1.65kg(0.66/20/20×1000=1.65kg)である。
【0026】
起泡剤と軽量気泡セメント質硬化体に含まれる水の一部であって起泡剤含有水用の水を混合してなる起泡剤含有水と、ガスを混合することによって、気泡を得る方法の例としては、発泡装置の中で、水、起泡剤及びガス(通常、圧縮ガス)を混合(混練)することによって、気泡を調製する方法等が挙げられる。ここで、圧縮ガス(通常、圧縮空気)は、コンプレッサー等のガスを圧縮することができる装置を用いて作製することができる。
【0027】
[セメント組成物調製工程]
本工程は、第二のセメント混練工程で得られた第二のセメント含有混練物と、上記気泡調製工程で得られた気泡を混練して、未硬化のセメント組成物を得る工程である。
第二のセメント混練工程で得られた第二のセメント含有混練物と、気泡調製工程で得られた気泡は、通常、別々に調製した後、ミキサ等の混練手段を用いて混練される。
一方、混練手段と、気泡吐出装置を組み合わせた装置を用いてセメント組成物調製工程を行ってもよい。具体的には、第二のセメント混練工程行った後、第二のセメント含有混練物を、混練手段を用いて混錬しつつ、第二のセメント含有混練物に、気泡吐出装置から起泡剤及び圧縮空気を添加し、混練しながら第二のセメント含有混練物中に気泡を生じさせる方法が挙げられる。このような形態も本発明に含まれるものとする。この場合、第二のセメント混練工程、気泡調製工程、及びセメント組成物調製工程は、同一の装置内で連続的に行われることになる。また、この場合、第二のセメント含有混練物に含まれる水が、起泡剤含有水用の水として用いられる。
【0028】
軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含まない場合における、未硬化のセメント組成物の密度は、好ましくは0.30~1.00g/cm3、より好ましくは0.34~0.95g/cm3、より好ましくは0.38~0.90g/cm3、さらに好ましくは0.40~0.80g/cm3、さらに好ましくは0.42~0.70g/cm3、特に好ましくは0.45~0.65g/cm3である。上記密度が0.30g/cm3以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度をより大きくすることができる。上記密度が1.00g/cm3以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量をより多くすることができる。また、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより少なくすることができる。
【0029】
また、軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含まない場合における、未硬化のセメント組成物の空気の量は、好ましくは40~80体積%、より好ましくは42~78体積%、さらに好ましくは45~75体積%、さらに好ましくは55~72体積%、特に好ましくは62~70体積%である。上記ガスの量が40体積%以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量をより多くすることができる。また、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより少なくすることができる。上記ガスの量が80体積%以下であれば、起泡剤の使用量をより少なくすることができる。
【0030】
軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含む場合における、未硬化のセメント組成物の密度は、好ましくは0.70~2.50g/cm3、より好ましくは1.00~2.30g/cm3、さらに好ましくは1.20~2.10g/cm3、特に好ましくは1.50~2.00g/cm3である。上記密度が0.70g/cm3以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度をより大きくすることができる。上記密度が2.50g/cm3以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量をより多くすることができる。また、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより少なくすることができる。
【0031】
また、軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含む場合における、未硬化のセメント組成物のガス(通常、空気)の量は、好ましくは10~60体積%、より好ましくは12~50体積%、さらに好ましくは15~40体積%、さらに好ましくは16~30体積%、特に好ましくは17~25体積%である。上記ガスの量が10体積%以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量をより多くすることができる。また、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより少なくすることができる。上記ガスの量が60体積%以下であれば、起泡剤の使用量をより少なくすることができる。
本工程で混錬される気泡含有水の量を調整することで、未硬化のセメント組成物の密度及びガスの量を調整することができる。
【0032】
セメント組成物の水セメント比(セメント組成物に含まれる水の全量とセメントの水セメント比)は、好ましくは40~500%、より好ましくは50~300%、さらに好ましくは60~200%、特に好ましくは70~100%である。上記比が40%以上であれば、セメント組成物の流動性がより向上し、打設等における作業性がより向上する。上記比が500%以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度がより大きくなる。また、材料分離がより起こりにくくなる。
【0033】
セメント組成物は、骨材を含んでいてもよい。骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。また、天然骨材、人工骨材、再生骨材のいずれも用いることができる。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材、又は、これらの中から選ばれる2種以上からなる混合物等が挙げられる。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材、又は、これらの中から選ばれる2種以上からなる混合物等が挙げられる。
骨材の配合量は特に限定されず、軽量気泡セメント質硬化体における一般的な配合量であればよい。例えば、骨材の配合量(細骨材と粗骨材を含む場合は、その合計量)は、セメント100質量部に対して、好ましくは10~350質量部、より好ましくは100~300質量部、特に好ましくは150~250質量部である。上記配合量が10質量部以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度がより大きくなる。上記配合量が350質量部以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより小さくすることができる。
セメント組成物が骨材を含む場合、骨材は、第一のセメント混練工程、炭酸化混練物調製工程、第二のセメント混練工程、セメント組成物調製工程のいずれの工程において供給、混練されてもよいが、製造の効率性等の観点から、第一のセメント混練工程及び第二のセメント混練工程のいずれか一方又は両方で供給して、混練されることが好ましく、第二のセメント混練工程で供給して、混練されることがより好ましい。
【0034】
セメント組成物は、セメント組成物の流動性の向上等の観点から、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等のセメント分散剤を含んでいてもよい。特に、第二のセメント混練工程において、水を供給し、混錬しない場合、セメント組成物の流動性を向上させて、装置内の閉塞を防ぐ等の観点から、セメント組成物はセメント分散剤を含むことが好ましい。
セメント組成物がセメント分散剤を含む場合、セメント分散剤は、第一のセメント混練工程、炭酸化混練物調製工程、第二のセメント混練工程、セメント組成物調製工程のいずれの工程において供給、混練されてもよいが、製造の効率性等の観点から、第一のセメント混練工程及び第二のセメント混練工程のいずれか一方又は両方で供給して、混練されることが好ましく、第二のセメント混練工程で供給して、混練されることがより好ましい。
セメント分散剤の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは0.1~5.0質量部、より好ましくは0.4~3.0質量部、特に好ましくは0.6~1.50質量部である。
【0035】
セメント組成物は、必要に応じて、(i)フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和材、(ii)AE剤、消泡剤、流動化剤等の各種混和剤(セメント分散剤を除く)(iii)土等を含んでいてもよい。各種混和材、混和剤、土の混合方法は、特に限定されないが、製造の効率性等の観点から、第二のセメント混練工程において供給、混練されることが好ましい。
また、土としては、軽量気泡セメント質硬化体を軽量盛土として用いる場合、軽量盛土が形成される場所で得られる現地発生土等を使用することができる。軽量気泡セメント質硬化体中の上記土の割合は、軽量気泡セメント質硬化体の強度発現性等の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは5~40質量%、特に好ましくは10~30質量%である。
【0036】
[硬化工程]
本工程は、未硬化のセメント組成物を硬化させて、軽量気泡セメント質硬化体を得る工程である。
例えば、未硬化のセメント組成物を、型枠等に流し込んで成型した後、一般的な養生方法で養生し、脱型することで、軽量気泡セメント質硬化体を得ることができる。
軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含まない場合における、軽量気泡セメント質硬化体の密度は、好ましくは0.30~1.00g/cm3、より好ましくは0.32~0.95g/cm3、より好ましくは0.38~0.90g/cm3、さらに好ましくは0.40~0.80g/cm3、さらに好ましくは0.42~0.70g/cm3、特に好ましくは0.45~0.65g/cm3である。上記密度が0.30g/cm3以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度をより大きくすることができる。上記密度が1.00g/cm3以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量をより多くすることができる。また、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより少なくすることができる。
【0037】
また、軽量気泡セメント質硬化体が骨材を含む場合における、軽量気泡セメント質硬化体の密度は、好ましくは0.70~2.50g/cm3、より好ましくは1.00~2.30g/cm3、さらに好ましくは1.20~2.10g/cm3、特に好ましくは1.50~2.00g/cm3である。上記密度が0.70g/cm3以上であれば、軽量気泡セメント質硬化体の強度をより大きくすることができる。上記密度が2.50g/cm3以下であれば、軽量気泡セメント質硬化体に固定化される二酸化炭素の量をより多くすることができる。また、軽量気泡セメント質硬化体の質量をより少なくすることができる。
なお、軽量気泡セメント質硬化体の密度は、上述した未硬化のセメント組成物の密度よりも小さいものとなる。
【0038】
軽量気泡セメント質硬化体中の二酸化炭素の割合(軽量気泡セメント質硬化体に固定化された二酸化炭素の割合)は、好ましくは3.5~15.0質量%、より好ましくは
4.0~14.0質量%、さらに好ましくは5.0~13.0質量%、さらに好ましくは6.0~12.0質量%、さらに好ましくは7.0~11.0質量%、特に好ましくは8.0~10.0質量%である。上記割合が5.0質量%以上であれば、より多くの二酸化炭素を固定化して、二酸化炭素の排出量をより低減することができる。上記割合が15.0質量%を超える軽量気泡セメント質硬化体は、製造が困難となる場合がある。
軽量気泡セメント質硬化体の「JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮試験方法)」に準拠して測定された、材齢7日の圧縮強度は、好ましくは50~12,000kN/m2、より好ましくは60~10,000kN/m2、さらに好ましくは100~3,000kN/m2、さらに好ましくは200~2,900kN/m2、さらに好ましくは400~2,800kN/m2、特に好ましくは600~2,700kN/m2である。
得られた軽量気泡セメント質硬化体は、軽量盛土、軽量盛土用構造物、軽量気泡コンクリート、断熱材等として使用することができる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント;太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント
(2)起泡剤;陰イオン界面活性剤、小野田ケミコ社製、商品名:「OFA-S」
(3)AE減水剤;ポゾリスソリューションズ社製、商品名「マスターポリヒード15S」
(4)細骨材;密度:2.57g/cm3
(5)粗骨材;密度:2.65g/cm3
(6)水;上水道水
【0040】
[実施例1~5]
第一のセメント混練工程として、セメントの一部と第一のセメント含有混練物用の水を、容器内でハンドミキサを用いて60秒間混練して混練物(第一のセメント含有混練物、温度:23℃)を得た。なお、セメントの一部と第一のセメント含有混練物用の水は、水セメント比が300%となる量(上記セメントの一部の単位量は、60.5kg/m3とし、セメント含有混練物用の水の一部の単位量は181.6kg/m3)とした。
炭酸化混練物調製工程として、上記容器内の混練物(pH:11.5)に、二酸化炭素ガスの濃度が99.6体積%である二酸化炭素含有ガス(温度:20℃)を、エアポンプを用いて、30リットル/分の量で供給した。二酸化炭素含有ガスの供給は、上記混練物のpHが9.0となるまで行い、炭酸化混練物を得た。
第二のセメント混練工程として、容器内の炭酸化混練物に、セメントの残部を投入し、ハンドミキサを用いて60秒間混練して混練物を得た。次いで、ミキサの内壁に付着した上記混練物を掻き落とした後、第二のセメント含有混練物用の水と、表1に示す量のAE減水剤を予め混合した液状物を添加して、ハンドミキサを用いて60秒間混練し、第二のセメント含有混練物を得た。なお、セメントの残部と第二のセメント含有混練物用の水の量は、第二のセメント含有混練物の水セメント比が64%となる量(上記セメントの残部の単位量は、292.5kg/m3とし、セメント含有混練物用の水の残部の単位量は45.4kg/m3)とした。
なお、「単位量」とは、軽量気泡セメント質硬化体の単位体積1m3当たりの質量基準の配合量をいう。
【0041】
一方、気泡含有水調製工程として、起泡剤と起泡剤含有水用の水を混合して起泡剤含有水を得た後、該起泡剤含有水に発泡機を用いて圧縮空気を送り込みながら混練することで、気泡を調製した。
なお、起泡剤及び起泡剤含有水の量は、各々、1.65kg/m3、31.35kg/m3)に定めた。
次いで、セメント組成物調製工程として、第二のセメント含有混練物に、気泡を、未硬化のセメント組成物の密度(表1中、「未硬化」と示す。)が表1に示す数値となるような量で混合して、未硬化のセメント組成物を得た。
得られた未硬化のセメント組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0042】
[ハンドリング性の評価]
未硬化のセメント組成物を、カップに入れた後カップを傾け、未硬化のセメント組成物が連続的に流下するものを「〇」、不連続に流下又は流下しないものを「×」と評価した。
[未硬化のセメント組成物の密度の算出]
未硬化のセメント組成物を、容積が1リットル(1,000cm3)であるマスに充填し、表面を平らにならした後、質量を測定し、得られた質量を容積(1リットル)で除することで、密度(g/cm3)を算出した。
[未硬化のセメント組成物の空気量の測定]
未硬化のセメント組成物の空気量を、日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHS A 313-1992)」に準拠して測定した。
【0043】
[圧縮強度の測定]
未硬化のセメント組成物を、型枠に打設した後、常温(約20~25℃)の環境下に静置することで、20cm×40cm×8cmの軽量気泡セメント質硬化体を作製した。得られた軽量気泡セメント質硬化体の材齢7日の圧縮強度を、「JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した。
[軽量気泡セメント質硬化体の密度の算出]
圧縮強度の測定に用いた軽量気泡セメント質硬化体の密度(表1中、「硬化体」と示す。)を算出した。
[軽量気泡セメント質硬化体中の二酸化炭素の割合の算出]
圧縮強度を測定するために用いた軽量気泡セメント質硬化体のモルタル部分の二酸化炭素の割合(質量%)を、熱重量-示差熱分析(TG-DTA)を用いて求めた。具体的には、軽量気泡セメント質硬化体を粉砕した後、試料(モルタル部分)について、熱重量-示差熱分析(TG-DTA)を行い、測定結果から、550~800℃付近の吸熱ピーク範囲における質量の減少を、上記モルタル部分に含まれている炭酸カルシウムの脱炭酸によるものと判断し、上記減少の量から、モルタル部分の二酸化炭素の割合(質量%;炭酸カルシウムの二酸化炭素換算の値)を算出した。
【0044】
[実施例6]
実施例1と同様に調製した炭酸化混練物に、細骨材を725kg/m3、粗骨材を877kg/m3を投入し、気泡を未硬化のセメント組成物の密度が表1に示す数値となるような量を混合した以外は、実施例1と同様に行い、未硬化のセメント組成物を得た。
得られた未硬化のセメント組成物を用いて、実施例1と同様にして、ハンドリング性の評価等を行った。
なお、実施例6の軽量気泡セメント質硬化体中の二酸化炭素の割合は、軽量気泡セメント質硬化体(コンクリート)を破砕して、粗骨材を取り除いた後、粉砕してなる試料(モルタル部分)を用いて算出されたものである。
【0045】
[比較例1]
セメントと水を、容器内でハンドミキサを用いて60秒間混練して混練物(温度:23℃)を得た。なお、セメントと水は、水セメント比が64%となる量(上記セメントの単位量は、353kg/m3とし、水の単位量は227kg/m3)とした。
一方、起泡剤と起泡剤含有水用の水を混合して起泡剤含有水を得た後、該起泡剤含有水に発泡機を用いて圧縮空気を送り込みながら混練することで、気泡を調製した。
なお、起泡剤及び起泡剤含有用の水の量は、各々、1.65kg/m3、31.35kg/m3)に定めた。
次いで、上記混練物に、気泡を、未硬化のセメント組成物の密度が表1に示す数値となるような量で混合して、未硬化のセメント組成物を得た。
得られた未硬化のセメント組成物を用いて、実施例1と同様にして、ハンドリング性の評価等を行った。
【0046】
[比較例2]
発泡機を用いて、圧縮空気の代わりに、圧縮した二酸化炭素を送り込みながら混練する以外は比較例1と同様にして、未硬化のセメント組成物を得た。
得られた未硬化のセメント組成物を用いて、実施例1と同様にして、ハンドリング性の評価等を行った。
【0047】
【0048】
表1から、実施例1~6と比較例1~2を比較すると、実施例1~6の二酸化炭素の割合(3.86~9.05質量%)は、比較例1~2の二酸化炭素の割合(3.28~3.45質量%)よりも大きく、本発明によれば、より多くの二酸化炭素が固定された軽量気泡セメント質硬化体を得ることができることがわかる。