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特開2023-150095情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150095
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20231005BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H04M11/00 301
H04Q9/00 341A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059005
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、ムーンショット型研究開発事業「企業連係実証実験基盤の開発・運営と企業コンソーシアム活動支援」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】西村 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】宮下 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】内海 章
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽
【テーマコード(参考)】
5K048
5K201
【Fターム(参考)】
5K048BA41
5K048DC01
5K048EB14
5K048EB15
5K048GC01
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA21
5K201BA02
5K201BA20
5K201CA01
5K201CA06
5K201CC04
5K201EB06
5K201EC06
5K201ED07
5K201ED09
5K201EF03
5K201EF05
5K201EF10
(57)【要約】
【課題】 プライバシに配慮した遠隔対話システムの情報処理装置を提供する。
【解決手段】 遠隔対話システム(10)では、ネットワーク(12)によって、移動するロボット(14)、操作者端末(16)およびサーバ(18)が連係する。ロボットは、ディスプレイ(30)にアバタ(28)を表示し、ユーザにサービスを提供する。ロボットが地図上の匿名化エリアに存在するとき、サーバでは、操作者端末のディスプレイ(80)に表示するロボットからの映像データに対して匿名化処理を適用して操作者端末へ送信する。したがって、操作者端末のディスプレイ(80)では、匿名化された映像が表示される。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者端末およびロボットがネットワークを介して連係して、前記操作者端末の操作者が、前記ロボットを通してユーザと対話する遠隔対話システムにおける情報処理装置であって、
前記ロボットのカメラからの映像データを受ける受信手段、
匿名化エリアを含む地図の地図データベース、
前記ロボットの位置を検出する位置検出手段、
前記ロボットが前記地図上の前記匿名化エリアに存在するかどうか判断する第1判断手段、
前記第1判断手段で前記ロボットが前記匿名化エリアに存在すると判断したとき、前記映像データに匿名化処理を適用する匿名化手段、および
前記匿名化手段によって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを前記操作者端末へ送信する送信手段を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記地図には匿名解除エリアが設定されていて、
前記ロボットが前記地図上の前記匿名化エリアに存在するかどうか判断する第2判断手段、および
前記第2判断手段で前記ロボットが前記匿名解除エリアに存在すると判断したとき、前記映像データの匿名化処理を解除する匿名解除手段をさらに備える、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ロボットはマイクを備え、前記受信手段は前記マイクからの音声データを受信し、前記匿名化手段は前記音声データに匿名化処理を適用し、前記送信システムは匿名化処理を適用した音声データを含む送信データを前記操作者端末へ送信する、請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項4】
操作者端末およびロボットがネットワークを介して連係して、前記操作者端末の操作者が、前記ロボットを通してユーザと対話する遠隔対話システムにおける情報処理装置のプログラムであって、
前記情報処理装置は匿名化エリアを含む地図の地図データベースを備え、
前記プログラムは前記情報処理装置のCPUを、
前記ロボットのカメラからの映像データを受ける受信手段、
前記ロボットの位置を検出する位置検出手段、
前記ロボットが前記地図上の前記匿名化エリアに存在するかどうか判断する第1判断手段、
前記第1判断手段で前記ロボットが前記匿名化エリアに存在すると判断したとき、前記映像データに匿名化処理を適用する匿名化手段、および
前記匿名化手段によって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを前記操作者端末へ送信する送信手段として機能させる、情報処理プログラム。
【請求項5】
操作者端末およびロボットがネットワークを介して連係して、前記操作者端末の操作者が前記ロボットを通してユーザと対話する遠隔対話システムにおける情報処理方法であって、
前記情報処理装置は匿名化エリアを含む地図の地図データベースを備え、
前記ロボットのカメラからの映像データを受ける受信ステップ、
前記ロボットの位置を検出する位置検出ステップ、
前記ロボットが前記地図上の前記匿名化エリアに存在するかどうか判断する第1判断ステップ、
前記第1判断ステップで前記ロボットが前記匿名化エリアに存在すると判断したとき、前記映像データに匿名化処理を適用する匿名化ステップ、および
前記匿名化ステップによって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを前記操作者端末へ送信する送信ステップを含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法に関し、特にたとえば、アバタによってユーザにサービスを提供したり、サービスの提供を受けたりする、情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスプレイに操作者の顔画像を表示して移動するロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020‐004182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術をアバタとして機能させる場合、プライバシへの配慮が望まれるところである。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、プライバシに配慮した、情報処理装置、情報処理プログラムおよび情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的のために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために記述する実施形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の実施例は、操作者端末およびロボットがネットワークを介して連係して、操作者端末の操作者が、ロボットを通してユーザと対話する遠隔対話システムにおける情報処理装置であって、ロボットのカメラからの映像データを受ける受信手段、匿名化エリアを含む地図の地図データベース、ロボットの位置を検出する位置検出手段、ロボットが地図上の匿名化エリアに存在するかどうか判断する第1判断手段、第1判断手段でロボットが匿名化エリアに存在すると判断したとき、映像データに匿名化処理を適用する匿名化手段、および匿名化手段によって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを操作者端末へ送信する送信手段を備える、情報処理装置である。
【0009】
第1の実施例では、情報処理装置(18:実施例において対応する部分を例示する参照符号。ただし、限定を意味しない。以下同じ。)は、たとえばネットワーク(12)を介して、ロボット(14)および操作者端末(16)と連係し、操作者端末(16)の操作者が、ロボット(14)を通してユーザと遠隔対話しながら、たとえばユーザに対してサービスを提供する。情報処理装置(18)は、ロボットのカメラからの映像データを受ける受信手段(82、104a、S1)および匿名化エリア(110)を含む地図(108)の地図データベース(106d)を備え、さらに、位置検出手段(82、104b、S3)を設け、この位置検出手段(82、104b、S3)がロボット(14)の現在の位置を検出する。第1判断手段(82、104c、S9)は、ロボット(14)が地図上の匿名化エリア(110)に存在するかどうか判断する。第1判断手段でロボット(14)が地図上の匿名化エリア(110)に存在すると判断したとき、匿名化手段(82、104d、S11)は、ロボット14から受信した映像データに対して匿名化処理を適用する。送信手段(82、104f、S15)は、匿名化手段によって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを操作者端末(16)へ送信する。したがって、操作者端末(16)のディスプレイ(80)には匿名化処理が適用された映像が表示される。
【0010】
第1の実施例によれば、ロボットが匿名化エリアに存在するとき、操作者端末のディスプレイには匿名化処理が適用された映像が表示されるので、プライバシを保護することができる。
【0011】
第2の実施例は第1の実施例に従属する情報処理装置であって、地図には匿名解除エリアが設定されていて、ロボットが地図上の匿名解除エリアに存在するかどうか判断する第2判断手段、および第2判断手段でロボットが匿名解除エリアに存在すると判断したとき、映像データの匿名化処理を解除する匿名解除手段をさらに備える。
【0012】
第2の発明では、地図(108)には匿名解除エリア(112)が設定されていて、判断手段でロボットが匿名解除エリアに存在すると判断したとき、匿名解除手段(82、104c、S13)は、映像データの匿名化処理を解除する。
【0013】
第2の発明によれば、必要のない匿名化処理が解除され、監視区域や警戒区域のような匿名解除が必要な場所で確実に匿名化を解除することができる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に従属する情報処理装置であって、ロボットはマイクを備え、受信手段は前記マイクからの音声データを受信し、匿名化手段は音声データに匿名化処理を適用し、送信手段は匿名化処理を適用した音声データを含む送信データを操作者端末へ送信する。
【0015】
第3の発明では、ロボット(14)はマイク(48)を備え、受信手段(82、104a、S1)はマイクからの音声データを受信し、匿名化手段(82、104d、S11)は音声データに匿名化処理を適用し、送信手段(82、104f、S15)は匿名化処理を適用した音声データを含む送信データを操作者端末(16)へ送信する。
【0016】
第3の発明によれば、音声データも匿名化されるので、プライバシを一層保護することができる。
【0017】
第4の発明は、操作者端末およびロボットがネットワークを介して連係して、操作者端末の操作者が、ロボットを通してユーザと対話する遠隔対話システムにおける情報処理装置のプログラムであって、情報処理装置は匿名化エリアを含む地図の地図データベースを備え、プログラムは情報処理装置のCPUを、ロボットのカメラからの映像データを受ける受信手段、ロボットの位置を検出する位置検出手段、ロボットが地図上の匿名化エリアに存在するかどうか判断する第1判断手段、第1判断手段でロボットが匿名化エリアに存在すると判断したとき、映像データに匿名化処理を適用する匿名化手段、および匿名化手段によって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを操作者端末へ送信する送信手段として機能させる、情報処理プログラムである。
【0018】
第5の発明は、操作者端末およびロボットがネットワークを介して連係して、操作者端末の操作者が、ロボットを通してユーザと対話する遠隔対話システムにおける情報処理装置の情報処理方法であって、情報処理装置は匿名化エリアを含む地図の地図データベースを備え、ロボットのカメラからの映像データを受ける受信ステップ、ロボットの位置を検出する位置検出ステップ、ロボットが地図上の匿名化エリアに存在するかどうか判断する第1判断ステップ、第1判断ステップでロボットが匿名化エリアに存在すると判断したとき、映像データに匿名化処理を適用する匿名化ステップ、および匿名化ステップによって匿名化処理を適用した映像データを含む送信データを操作者端末へ送信する送信ステップを含む、情報処理方法である。
【0019】
第4および第5の実施例によっても、第1の実施例と同様の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、匿名化エリア内にロボットが存在するとき、操作者端末のディスプレイに表示される映像を匿名化するので、プライバシを保護できる。
【0021】
この発明の上述の目的、その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1はこの発明の一実施例を示す遠隔対話システムの概要を示す図解図である。
図2図2図1に示すロボットの電気的な構成を示すブロック図である。である。
図3図3図1に示す操作者端末の電気的な構成を示すブロック図である。
図4図4図1に示すサーバの電気的な構成を示すブロック図である。
図5図5図4に示すサーバのメモリのメモリマップの一例を示す図解図である。
図6図6図4に示すサーバのメモリの地図データベースとして設定される地図の一例を示す図解図である。
図7図7図4に示すサーバの情報処理動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照して、この実施例のアバタ遠隔対話システム10は、遠隔操作者がアバタ(遠隔操作型CGエージェント)を利用してサービスを提供するための基盤システム(プラットフォーム)である、アバタ遠隔操作基盤システム(CA:Cybernetic Avatar)を利用する。
【0024】
しかしながら、この発明は、必ずしもそのアバタ遠隔対話システム上のものである必要はなく、一般的には、ネットワーク12を介してロボット14に操作者端末16の操作者のアバタを表示し、あるいはロボット14自体を操作者のアバタとして機能させて、サーバ18の関与を得て、ユーザが遠隔対話を通してアバタ28によるサービスの提供を受けることができる、システムである。図1の実施例では、サーバ18が上述の基盤システムの機能を果たすように設定されている。
【0025】
この実施例に用いられるロボット14は、たとえばDouble Robotics, Inc.(ダブルロボティクス社)製の商品名「Double 3」のような、自律移動可能な、いわゆるテレプレゼンス(または、テレイグジステンス)ロボットである。ただし、ロボット14はこのような特定のロボットに限られることなく、特許文献1で開示しているようなロボットも利用可能であることを予め指摘しておく。
【0026】
実施例においては、このロボット14は、ネットワーク12に接続(無線または有線)された操作者端末16と通信可能である。操作者端末16は、ロボット14を遠隔操作する操作者が使用する汎用のコンピュータである。操作者は、操作者端末16を用いてロボット14にタスクを実行させるためのコマンドを送信する。また、操作者は、操作者端末16を用いて音声をロボット14に送信し、ロボット14から音声を出力することにより、ロボット14の近傍に存在する人または人物と対話することができる。
【0027】
このロボット14は、ベース20を含み、このベース20の正面には移動用センサの1つである超音波センサ22が設けられる。また、このベース20の両端には左右の移動用車輪24Lおよび24Rが回転自在に設けられる。
【0028】
ベース20の上面には、上方に延びるポール26が設けられ、そのポール26の上端には、操作者のアバタ28を表示することができる、タッチディスプレイ30が設けられる。なお、このタッチディスプレイ(以下、単に「ディスプレイ」という。)30には、カメラやマイク、スピーカ等が設けられるが、詳細は図2に示すブロック図を参照して説明する。また、このロボット14は、バッテリ駆動型のロボットであり、バッテリはたとえばポール26の中に収容されている。
【0029】
この実施例では、ロボット14は、ネットワーク12に接続された操作者端末16と通信可能である。操作者端末16は、ロボット14を遠隔操作する操作者が使用する汎用のコンピュータである。操作者は、たとえば、操作者端末16を用いて映像および音声をロボット14に送信し、ロボット14のディスプレイ30に自分アバタ28(図1)を表示し、ユーザと対話して、サービスを提供する。
【0030】
ここで、「サービス」とは、この実施例のアバタ遠隔対話システム10を利用して提供可能な、たとえば家庭教師、物品販売、観光案内などを含むものであって、後述のサービス管理データベース106a(図5)に事前に登録されている。「操作者」とはこのアバタ遠隔対話システム10で、ディスプレイ30にアバタを表示して、そのアバタを通して販売等のサービスを提供する者であって、後述する操作者管理データベース106b(図5)に事前登録されている者である。また、「ユーザ」とは、実施例のアバタ遠隔対話システム10において、ディスプレイ30に対面して操作者のアバタ28と対話しながらアバタによるサービスの提供を受ける者であって、後述するユーザ管理データベース106c(図5)に事前登録されている人または人物のことである。
【0031】
また、ロボット14から送信される映像データ(動画像または静止画像)および音声データを操作者端末16で受信し、操作者端末16で映像および音声を出力することにより、操作者は、ロボット14の周囲を見たり、ロボット14の周囲の状況を把握したり、ロボット14のディスプレイ30に対面しているユーザと対話することができる。
【0032】
なお、操作者端末16でロボット14の移動等を操作することは既に周知であり、また、この発明にとって本質的な事項ではないため、ここではその遠隔操作についての詳細な説明は省略する。
【0033】
ディスプレイ30には、よく知られているように、映像を表示するディスプレイの表面に(または内蔵されて)タッチパネルが設けられており、タッチすることによって、ディスプレイ30上の位置をポイントすることができる。
【0034】
サーバ18は、コンピュータのような情報処理装置であり、この実施例では、ロボット14が後述する匿名化エリアに存在する場合に、そのロボット14からの映像および/または音声を匿名化する。
【0035】
図2はロボット14のブロック図である。ここでは、実施例の説明に必要な範囲で、図2を参照して、ロボット14を説明する。
【0036】
ロボット14はさらに、CPU32およびメモリ34を含む。メモリ34は、詳細は図示しないが、RAM、ROM、HDD(ハードデイスクドラブ)等を含む。CPU32には、バス36が接続されており、このバス36には、メモリ34のRAM、ROM、HDD等が電気的に接続される。CPU32は、コンピュータプログラムを実行することによって、後述の匿名化処理や自律移動等の動作を実行する。
【0037】
通信部38は、ネットワーク12を介して、操作者端末16およびサーバ18と通信して、映像データおよび音声データを授受する。
【0038】
ロボット14には全方位カメラ40およびユーザカメラ42が設けられ、それらはカメラインタフェース(I/F)を通してバス36に接続される。全方位カメラ40は、図1では図示を省略したがたとえばディスプレイ30の上方に設けられて、ディスプレイ30のアバタ28(図1)と対話するユーザの背景を撮影する。ただし、この全方位カメラ40は必須のものではない。
【0039】
ユーザカメラ42は、たとえば横方向に間隔を隔てた2つのカメラ(ステレオカメラ)であって、ディスプレイ30に対面して操作者のアバタ28(図1)と対話するユーザを撮影する。必要に応じて、パン、チルトおよびズームすることができる。カメラI/F44には、全方位カメラ40やユーザカメラ42において、パン、チルトおよびズームの機能や、ホワイトバランスや露出制御を自動的に実行するプロセサが設けられてもよい。
【0040】
レーザ距離計46は、特定の人を追跡するためなどの目的で設けられるものであり、後述のレーザ距離計56はこのロボット14の自律移動のためのものである。
【0041】
ロボット14はさらに、たとえば6個のマイクを配列して広い範囲の音声を集音できるマイク48を備える。このマイク48は、スピーカ50と同様に、たとえばディスプレイ30に内蔵して設けられる。スピーカ50は、ロボット14の前のユーザと対話する操作者の音声を出力する。マイク48およびスピーカ50は、音声I/F52を介してバス36に接続される。
【0042】
図1に示す超音波センサ22は、移動用センサI/F54を介してバス36に接続される。この移動用センサI/F54にはさらに、レーザ距離計56が接続される。レーザ距離計56は先のレーザ距離計46と兼用されてもよい。つまり、ロボット14の移動中と、ロボット14の移動を停止してアバタ28による対話中とで、1つのレーザ距離計を使い分けるようにしてもよい。
【0043】
慣性計測ユニット58もまた移動用センサI/F54に接続されるが、この慣性計測ユニット58は3次元の慣性運動(直交3軸方向の並進運動および回転運動)を検出する装置であって、加速度センサによって並進運動を検出し、角速度(ジャイロ)センサによって回転運動を検出する。
【0044】
バス36にはさらに、モータドライバ60が接続される。このモータドライバ60は、CPU32の命令に従って、右車輪モータ62Rおよび左車輪モータ62Lを制御する。つまり、CPU34は、移動用センサI/F54およびモータドライバ60から得られる状況を示すデータに基づいて、モータドライバ60によって、右車輪モータ62Rおよび左車輪モータ62Lを制御する。
【0045】
ロボット14はさらに、位置検出装置63を備える。位置検出装置63としては、種々のものが考えられる。たとえば、ロボット14が基本的に室内(館内)での利用を想定されたものであれば、たとえば右車輪モータ62Rおよび左車輪モータ62Lに関連して設けられるエンコーダ(図示せず)からの車輪回転情報を利用して、自身の位置を計算するような位置検出装置が考えられる。
【0046】
さらに、もし室内の床に位置検知用のマットを敷設している場合であれば、ロボット14の位置検出装置63としては、そのような位置検知用マットを検出してその座標位置を特定する位置検出装置が考えられる。
【0047】
また、位置検出装置63は、GPS装置であってよい。
【0048】
いずれタイプの位置検出装置63であっても、その位置検出装置63が検出したロボット14の位置情報(位置データ)は、必要に応じて、通信部38からサーバ18へ送られる。
【0049】
図3は操作者の操作者端末16のブロック図である。操作者端末16は汎用のコンピュータであるが、ここでは、実施例の説明に必要な範囲で、図3を参照して、操作者端末16の構成を説明する。
【0050】
操作者端末16は、CPU64およびメモリ66を含む。メモリ66は、詳細は図示しないが、RAM、ROM、HDD等を含む。CPU64には、バス68が接続されており、このバス68には、メモリ66のRAM、ROM、HDD等が電気的に接続される。CPU64は、コンピュータプログラムを実行することによって、必要な動作を実行する。
【0051】
操作者端末16は、音声I/F70を介してバス68に接続される、マイク72およびスピーカ74を備える。操作部76は、図示しないが、タッチディスプレイやキーボードを含む。これらのマイク72、スピーカ74および操作部76を用いて、操作者はロボット14のディスプレイ30に自身のアバタ28(図1)を表示させて、ディスプレイ30に対面するユーザとの遠隔対話を実行する。
【0052】
操作者端末16には操作者カメラ77が設けられ、この操作者カメラ77はカメラインタフェース(I/F)79を通してバス68に接続される。操作者カメラ77は、たとえば横方向に間隔を隔てた2つのカメラ(ステレオカメラ)であって、ディスプレイ80に対面して操作者を撮影する。必要に応じて、パン、チルトおよびズームすることができる。カメラI/F79には、操作者カメラ77において、パン、チルトおよびズームの機能や、ホワイトバランスや露出制御を自動的に実行するプロセサが設けられてもよい。
【0053】
この操作者カメラ77で撮影した操作者の映像は、後述のようにしてサーバ18によって匿名化処理されまたは匿名化解除され、前述のロボット14のディスプレイ30に表示されることがある。
【0054】
通信部80は、ネットワーク12を介して、ロボット14およびサーバ18と通信して、映像データおよび音声データを授受する。
【0055】
ディスプレイ80には、後述するようにしてサーバ18が匿名化処理した後の、ロボット14の全方位カメラ40やユーザカメラ42が撮影したユーザ等の映像を表示する。
【0056】
図4はサーバ18のブロック図である。サーバ18は汎用のコンピュータであるが、ここでは、実施例の説明に必要な範囲で、図4を参照して、サーバ18の構成を説明する。
【0057】
サーバ18は、CPU82およびメモリ84を含む。メモリ84は、詳細は図示しないが、RAM、ROM、HDD等を含む。CPU82には、バス86が接続されており、このバス86には、メモリ84のRAM、ROM、HDD等が電気的に接続される。CPU82は、コンピュータプログラムを実行することによって、匿名化処理等の必要な動作を実行する。
【0058】
サーバ18は、音声I/F88を介してバス86に接続される、マイク90およびスピーカ92を備える。操作部94は、図示しないが、タッチディスプレイやキーボードを含む。
【0059】
位置検出装置95は、たとえばロボット14が移動する室内に複数設置したカメラを含み、それぞれカメラ(図示せず)の映像を解析して、対象のロボット14の位置を検出する。その他に、位置検出装置64としては、公知のレーザ距離計を用いてロボット14の位置を検出する装置であってもよい。
【0060】
通信部96は、ネットワーク12を介して、ロボット14および操作者端末16と通信して、映像データおよび音声データを授受する。特に、ロボット14から映像データおよび音声データだけでなく、位置検出装置63データ検出したロボット14の位置データを受信し、ロボット14の位置によって必要な場合、匿名化処理を施した映像データおよび音声データを操作者端末16へ送信する。
【0061】
ディスプレイ98には、ロボット14の全方位カメラ40やユーザカメラ42が撮影したユーザ等の映像および操作者端末16の操作者カメラ77が撮影した操作者の映像を表示する。
【0062】
図5図4に示したサーバ18のメモリ84(RAM)のメモリマップの一例を示す図解図である。図5に示すように、メモリ84は、プログラム記憶領域100およびデータ記憶領域102を含む。プログラム記憶領域100は、サーバとして必要なプログラムの他、この発明の匿名化処理に必要なプログラムを記憶する。
【0063】
すなわち、プログラム記憶領域100は、受信プログラム104a、位置検出プログラム104b、照合プログラム104c、匿名化プログラム104dおよび送信プログラム104e等を含む。
【0064】
受信プログラム104aは、通信部96を制御して、ネットワーク12を介してロボット14から映像データおよび音声データや位置データを受信するプログラムである。
【0065】
位置検出プログラム104bは、ロボット14の位置検出装置63によって検出した位置データおよび/または位置検出装置95によってロボット14の位置を検出するためのプログラムである。照合プログラム104cは、位置検出プログラム104bで検出したロボット14の位置データを、後述する地図データと照合して、当該ロボット14が地図上に示された匿名化エリア110(図6)に存在するかどうか、あるいは匿名解除エリア(図6)に存在するかどうかを照合するプログラムである。
【0066】
匿名化プログラム104dは、ロボット14が上述の匿名化エリア110に存在するときそのロボット14のカメラ40、42からの映像およびマイク48が収音した音声および操作者端末16の操作者カメラ77からの映像およびマイク72が収音した音声に対して匿名化処理を適用し、またはロボット14が匿名解除エリア112に存在するとき、そのような匿名処理解除するためのプログラムである。
【0067】
送信プログラム104eは、匿名化プログラム104dによって匿名化処理した映像データや音声データを操作者の操作者端末16およびロボット14に送信するためのプログラムである。
【0068】
また、データ記憶領域102には、サービス管理データベース106a、操作者管理データベース106b、ユーザ管理データベース106c、地図データベース106d、ロボット14から受信した映像および音声の受信データ、および操作者端末16から受信した映像および音声の受信データを一時的に記憶する受信データ領域106eおよび操作者端末16へ送信する送信データを一時的に記憶する送信データ領域106fを含む。
【0069】
サービス管理データベース106aは、前述したように、実施例のアバタ遠隔対話システム10で提供可能な種々のサービスを、サービス提供者である操作者によって事前に登録したデータベースである。
【0070】
操作者管理データベース106bは、前述したように、実施例のアバタ遠隔対話システム10によってユーザにサービスを提供する操作者の各種情報を事前に登録したデータベースである。ただし、操作者の各種情報は、操作者の氏名または名称、住所または居所や操作者IDなどの基本データ、操作者の顔画像等の映像、提供できるサービスなどを含む。また、操作者としては、たとえばサービスが家庭教師であるとすると、各家庭教師だけでなく、家庭教師の運営会社も含む。つまり、操作者管理データベース106bに登録できるのは、個人だけでなく、会社等の団体である。
【0071】
ユーザ管理データベース106cは、前述したように、実施例のアバタ遠隔対話システム10によってアバタを通して提供されるサービスを受ける人の各種情報を事前に登録したデータベースである。ただし、ユーザの各種情報は、ユーザの氏名または名称、住所または居所やユーザIDなどの基本データ、ユーザの顔画像等の映像、提供を受けるサービスなどを含む。また、ユーザとしては、たとえばサービスが物品販売であるとすると、個人だけでなく販売される物品を仕入れる業者等も含む。つまり、ユーザ管理データベース106cに登録できるのは、個人だけでなく、会社等の団体である。
【0072】
地図データベース106dは、たとえば図6に示すような地図108の地図データのデータベースである。この地図108はロボット14が移動できる全部または一部の地図であり、その地図108には、たとえばトイレの出入り口のような匿名化エリア110およびたとえばATM(現金自動預け払い機)の周辺の匿名解除エリア112が表記されている。トイレに関していえば、そこへの出入りは必ずしも他人に知られたい場所ではないので、匿名化エリア110としている。ATMに関していえば、それは監視すべき対象と考えられるので、匿名解除エリア112としている。ただし、匿名化エリア110としてどのような場所を設定するかは任意であり、必ずしもトイレ周辺に限定されるものではない。また、匿名解除エリア112としてどのような場所を設定するかは任意であり、必ずしもATM周辺に限定されるものではない。
【0073】
地図データベース106dは、地図108全体の座標データ(通路、部屋などを含む)と、このような匿名化エリア110および匿名解除エリア112の位置を表す座標データを設定したものである。
【0074】
次に、図7のフローチャートを参照して実施例の動作を説明する。ただし、図6に示す動作は所定時間たとえばフレームレートで繰り返し実行される。
【0075】
実施例のアバタサービス提供システム10において、操作者が操作者端末16を通してサーバ18へログイン操作すると、サーバ18がそのログイン情報に対して操作者管理データベース106bを参照して認証処理を実行し、認証に成功すると操作者端末16がサーバ18にログインできる。一方、ユーザは、たとえばロボット14のディスプレイ30に近づくと、ロボット14のユーザカメラ42がそのユーザの顔を撮影する。その顔画像がサーバ18に送信される。サーバ18ではユーザ管理データベース106cを参照してユーザに対して認証処理を実行し、認証に成功するとユーザがサーバ18にログインできる。そのうえで、操作者が提供しユーザが受けるサービスが確定されるのであるが、ここではサービスの提供自体はこの実施例において重要なことではないので、詳しい説明は省略する。
【0076】
図7の最初のステップS1では、サーバ18は、受信プログラム104aに従って、ロボット14から送信されるカメラ40、42が撮影した映像データおよびマイク48が拾った音声データを受信する。この受信データは受信データ領域106eに一時的に記憶される。
【0077】
そして、続くステップS3において、ロボット14の位置データおよび位置検出装置95(図4)で検出したロボット14の位置データに基づいて、ロボット14の位置を検出する。この位置データも受信データ領域106eに一時的に記憶される。
【0078】
そして、ステップS5で、サーバ18は、照合プログラム104bに従って、ロボット14の位置を地図データベース106dの地図データと照合する。つまり、そのときにロボット14が地図108図6)上のどこに存在するのかを照合する。
【0079】
続くステップS7でサーバ18からその照合結果の情報を操作者端末16に送信する。
【0080】
次いで、サーバ18は、ステップS9においてステップS5で照合した結果、そのロボット14が現在匿名化エリア110内に存在しているかどうか判断する。
【0081】
ステップS9で“YES”を判断したとき、ステップS11で、匿名化プログラム104cに従って、匿名化処理を実行する。ここでいう「匿名化」とは、映像および/または音声によってその人物を認識できなくする(認識できにくくする)処理ということができ。
【0082】
映像を匿名化する具体的な方法としては、一番簡単な方法は、ロボット14のカメラ40および42をオフしてロボット14の周囲を撮影しないようにすることである。ただし、この方法だと、操作者端末16のディスプレイ80には映像が表示されなくなるので、操作者にとって、ロボット14がどこに居るかわからず、操作者に不安を与える惧れがある。
【0083】
別の方法として、ロボット14のカメラ40、42で撮影した人物の映像に対して、モザイク処理を施したり、ぼかし処理を施したりする方法が考えられる。あるいは、その人物の映像に、予め準備しておいたキャラクタ画像あるいはCG画像を重畳したり、その人物の映像をキャラクタ画像あるいはCG画像と置換したりする方法がある。
【0084】
このような匿名化処理であれば、操作者端末16のディスプレイ80には何らかの映像が表示されるので、操作者はロボット14の現在位置を推定することができる。
【0085】
音声を匿名化する具体的な方法としては、音声データのボリューム(音量)の低減、変声データへの置換、あるいは発話内容に応じたミュート処理などが考えられる。
【0086】
ただし、ステップS9で“NO”を判断したとき、つまり、ロボット14が匿名化エリア110に存在しないと判断したとき、上述のような匿名化処理を適用しない。
【0087】
そして、ステップS15で、サーバ18は、匿名化処理済みの映像データおよび音声データを含む送信データを送信データ領域106f(図5)に一時的に保存して、その送信データを操作者端末16へ送信する。
【0088】
操作者端末16では、この送信データを受信し、受信したデータに含まれる音声データに基づく音声をスピーカ74から出力し、受信したデータに含まれる映像データに基づく映像をディスプレイ78で表示する。したがって、操作者端末16のディスプレイ78で表示される映像およびまたはスピーカ74から出力される音声が匿名化処理されたものとなる。
【0089】
ただし、ロボット14の位置データを地図データと照合した結果、ロボット14が匿名解除エリア112に存在するときは、ステップS13において、上述のような匿名化処理は適用されず、匿名化が解除される。したがって、ATMの周辺などの監視区域や警戒区域のような匿名解除が必要な場所で確実に匿名化を解除することができる。
【0090】
匿名解除の具体的な方法としては、前述したようなモザイクやぼかしあるいはCGキャラクタによる書き換えなどの画像処理を解除する方法のほか、操作者端末16のディスプレイ80に表示される映像およびスピーカ74から出力される音声を、操作者カメラ77およびマイク72からの操作者本人の映像および音声に切り替える方法も考えられる。
【0091】
なお、上述の実施例では、地図データベース106dは、事前にメモリ84に設定されている。そして、ロボット14の移動場所が変更されない限り、地図データベース106dのデータは変更されない。
【0092】
しかしながら、このような地図データベース106dは、時間とともに変更されてもよい。たとえば、たとえばショッピングモールの営業時間が終わった夜間の警戒モードにおいては、全館を匿名解除エリアとしたほうがよい。つまり、夜間の警戒モードでは匿名化してしまうと監視できなくなってしまうことが考えられるので、匿名化エリアは設定しないほうがよい。
【0093】
さらに、全体の地図108は変わらなくても、時間によって、匿名化エリア110の場所や匿名解除エリア112の場所を動的に変更するようにしてもよい。
【0094】
なお、上述の実施例のステップS13では、映像および音声に匿名化処理を実行するようにしたが、どちらか一方だけに匿名化処理を施すようにしてもよいし、少なくとも映像だけを匿名化するようにしてもよい。
【0095】
さらに、上述の実施例は、ロボット14に設けたディスプレイ30にアバタ28の画像を表示し、そのアバタ28とユーザとが遠隔対話するシステムとして説明した。
【0096】
しかしながら、この発明は、ロボット14自体を操作者のアバタとして機能させるような遠隔対話システムにも適用できる。たとえばSOTA(https://www.vstone.co.jp/products/sota/)やエリカ(https://www.irl.sys.es.osaka-u.ac.jp/projects/erica)(いずれも商品名)のように、ディスプレイのないロボットを遠隔操作しながらロボットを通して人(ユーザ)と対話することもできる。
【0097】
さらに、この発明は、操作者が遠隔操作するCGキャラクタを画面に表示してその前にいる人(ユーザ)と対話する(CGキャラクタが操作者のアバタの役割)遠隔対話システムにも適用できる。
【符号の説明】
【0098】
10 …遠隔対話システム
12 …ネットワーク
14 …ロボット
16 …操作者端末
18 …サーバ
30 …ディスプレイ
32、64、82 …CPU
63、95 …位置検出装置
104c …匿名化プログラム
106d …地図データベース
108 …地図
110 …匿名化エリア
112 …匿名解除エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7