(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150103
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】シート包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
B26D 1/40 20060101AFI20231005BHJP
B65D 83/08 20060101ALI20231005BHJP
B31B 70/14 20170101ALI20231005BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B26D1/40 502B
B65D83/08 B
B31B70/14
B26D1/40 502K
B26D3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059019
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏彦
【テーマコード(参考)】
3E014
3E075
【Fターム(参考)】
3E014LB01
3E075BA48
3E075CA02
3E075DB02
3E075DB19
3E075GA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダイカットロールの刃の接触摩擦の進行を抑制して、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる包装袋の製造方法を提供する。
【解決手段】シート取出口を形成する開裂用切目線を有するシート包装袋の製造方法であって、細長形状の長手方向の一対の開裂用切目線50は、ダイカットロール200の刃400とアンビルロール300とが接触状態と非接触状態とを繰返すことで包装袋の基材100に形成される切目線形成工程を有し、切目線形成工程は、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である、交互切目線形成工程を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数枚のシートが収容され、天面に設けられ、開裂すると幅方向の最大長さよりも長手方向の長さが長い細長形状のシート取出口を形成する開裂用切目線を有するシート包装袋の製造方法であって、
前記細長形状の長手方向の一対の開裂用切目線は、一対のダイカットロールの刃とアンビルロールとが接触状態と非接触状態とを繰返すことで前記包装袋の基材に形成される切目線形成工程を有し、
前記切目線形成工程は、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である、交互切目線形成工程を含む、シート包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記交互切目線形成工程は、前記長手方向の一対の開裂用切目線において、幅方向の長さが増加する又は減少する場合を含む、請求項1に記載のシート包装袋の製造方法。
【請求項3】
前記交互切目線形成工程は、前記長手方向の一対の開裂用切目線において、幅方向の長さが一定の場合を含む、請求項1又は2に記載のシート包装袋の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、プラスチックフィルム基材、紙基材、紙とプラスチックとの積層体基材のいずれかを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルやティシューペーパー等のシートが収容されたシート包装袋は、樹脂フィルム製の包装袋に複数枚のシートが収容された状態で流通され、使用される(例えば、特許文献1)。近年、CO2排出に伴う地球温暖化やマイクロプラスチック等の海洋汚染等の環境負荷を抑制する等の観点から、シート包装袋に用いる包装袋を樹脂製から紙製に変更し、包装袋における樹脂の使用量を低減する動きが活発になっている。
【0003】
しかしながら、樹脂フィルム製の包装袋は、高い柔軟性や軽量性から依然として高い需要がある。
【0004】
特許文献1に開示のフィルム包装ティッシュペーパーは、天面に開封用ミシン目が形成され、当該ミシン目を開封することでスリット形状の取出口が形成される。スリット形状の取出口を形成するために、長手方向に一対の開封用ミシン目が形成される。開封用ミシン目は、包装袋を構成する基材が繋がっている部分のタイと、切断されている部分のカットとが交互に配置されて形成される。一対の開封用ミシン目のタイとカットは、長手方向と直交する幅方向において、一方のミシン目のタイから他方のミシン目を見ると、同じくタイが形成されている。また一方のカットから他方のミシン目を見るとカットが形成されている。すなわち、細長形状の長手方向の開封ミシン目は、幅方向ではタイがタイに対向し、スリットがスリットに対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細長形状のスリットを形成するために開封用ミシン目(開裂用切目線)をロータリー式ダイカット装置で形成する場合、ダイカットロールの周面上に形成した刃とアンビルロールとの間に包装袋の基材を挿入される。ダイカットロールの刃とアンビルロールとが接触する状態では基材にカットが形成される。ダイカットロール周面上に刃は形成されていない部分とアンビルロールとの間で間隙が形成される場合は基材にはタイが形成される。このとき一対の開裂用切目線を基材の進行方向(MD)に形成する場合、カット形成時は、一対のダイカットロールの刃とアンビルロールとが同時に接触し、タイ形成時には、ダイカットロールとアンビルロールとは同時に間隙が形成されている状態になる。
【0007】
このために、一対の(2本の)開裂用切れ目線を形成する場合、周期的に二つの箇所(2点)での接触と非接触状態が生じるので機械振動が大きくなり、接触で生じるダイカットロールの刃の摩耗の進行が早まり、ダイカットロールの刃の寿命が短くなりがちになる。
【0008】
実施の形態の課題は、ロータリー式ダイカット装置におけるダイカットロールの刃の接触摩擦の進行を抑制して、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる包装袋の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の発明の第1の実施の形態は、積層された複数枚のシートが収容され、天面に設けられ、開裂すると幅方向の最大長さよりも長手方向の長さが長い細長形状のシート取出口を形成する開裂用切目線を有するシート包装袋の製造方法であって、前記細長形状の長手方向の一対の開裂用切目線は、一対のダイカットロールの刃とアンビルロールとが接触状態と非接触状態とを繰返すことで前記包装袋の基材に形成される切目線形成工程を有し、前記切目線形成工程は、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である、交互切目線形成工程を含む。
【0010】
第1の実施の形態によると、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である。
【0011】
このため、刃とアンビルロールとは、2か所同時に接触が開始されるのではなく、交互に接触が開始されることになるので、接触も1か所となる場合が含まれる。したがって、接触により生じる衝撃は小さくなり、機械振動を小さくすることができるので、接触摩耗の進行を抑制することができる。その結果、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる。
【0012】
開示の発明の第2の実施の形態は、前記交互切目線形成工程は、前記長手方向の一対の開裂用切目線において、幅方向の長さが増加する又は減少する場合を含む、シート包装袋の製造方法である。
【0013】
プラスチック製のシート包装袋において、収容されたペーパータオルやティッシュペーパーをポップアップ方式で取り出す際に、取出し後のペーパータオルやティッシュぺーパーの落ち込みを改善するために、取出口の中央から端部側に膨出する開口を形成する場合がある(
図1、
図2)。このような取出口の中央から細長形状の端部側に向かうに従って幅方向の長さが増加するまたは減少する領域では、開裂する力を加える方向と開裂用切目線とは角度を有することになる。
【0014】
そのような取出口の形成する場合であっても、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である。
【0015】
このため、同様に、接触摩耗の進行を抑制することができ、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる。
【0016】
開示の発明の第3の実施の形態は、前記交互切目線形成工程は、前記長手方向の一対の開裂用切目線において、幅方向の長さが一定の場合を含む、シート包装袋の製造方法である。
【0017】
第3の実施の形態においても、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である。
【0018】
このため、同様に、接触摩耗の進行を抑制することができ、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる。
【0019】
開示の発明の第4の実施の形態は、前記基材は、プラスチックフィルム基材、紙基材、紙とプラスチックとの積層体基材のいずれかを含む、シート包装袋の製造方法である。
【0020】
包装袋の基材として、柔軟なプラスチックフィルムを用いる場合だけでなく、従来から使用されている厚みのある紙基材(厚紙)を用いたティッシュペーパー用カートンの場合や、あるいは、紙基材とプラスチックフィルムとの積層体基材を用いる場合がある。そのような基材を用いる場合であっても、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である。
【0021】
このため、同様に、接触摩耗の進行を抑制することができ、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
開示の発明の一態様によれば、ロータリー式ダイカット装置におけるダイカットロールの刃の接触摩擦の進行を抑制して、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】シート包装袋の使用態様を説明する斜視図である。
【
図3】タイ部とカット部とが対向している開裂用切目線を形成するためのロータリー式ダイカット装置の概略とダイカットロールの刃とアンビルロールの位置関係を説明する図である。
【
図4】実施の形態の製造方法で製造された、取出口を形成するための開裂用切目線の一例を説明する図である。
【
図5】
図4の開裂用切目線の、幅方向の長さが増加する箇所(拡幅部)と幅が一定の箇所(幅狭部)におけるタイとカットの関係の説明図である。
【
図6】
図5と同じ箇所であって、タイとタイ及びカット部とカット部とが対向している場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<シート包装袋>
本発明の実施の形態のシート包装袋の製造方法の説明に先立ち、シート包装袋について、図面を参照しながら説明する。各図において、共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、各図において、各部の縮尺は実際とは異なる場合がある。なお、各図では、包装袋の長手方向をX方向とし、幅方向をY方向とし、高さ方向をZ方向としている。
【0025】
図1は、実施の形態に係るシート包装袋を説明する斜視図である。
図2はシート包装袋の使用態様を説明する斜視図である。
【0026】
シート包装袋1は、
図1に示すように、略直方体形状を有し、内部に積層された複数枚のシート(シート積層体)が収納される。シート積層体が収納されている状態で、二つの短側面(妻面)4A、二つの長側面4B、天面(上面)4C及び底面(下面)4Dを有している。
図1に示す包装袋は二つの短側面(妻面)4Aを封止面としたガゼット包装の実施の形態を示しており、マチ付のピロー包装である。なお、本実施の形態において、封止面はガゼッ包装に限らず、短側面がフラップを重ねて融着されるキャラメル包装(オーバーラップ包装)の形態とすることもできる。
図1において、4Xはプラスチックフィルムでガゼット包装を行う際に、筒型に巻いて重畳する部分で、通常、ヒートシールで接合される。
【0027】
図2に示すように、収納されているシート積層体は、シート包装袋1の天面4Cに形成された取出口6を通してシート(衛生薄葉紙)2が1組ずつ引き出せる。
【0028】
シート積層体の形態は、特に限定されず、例えば、シートが折りたたまれた状態で積層されたもの、各シートが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体)、複数枚のシートが単に積層されたもの等を採用することができる。
【0029】
シート積層体の寸法は、包装袋10の長手方向(X方向)の長さを150~250mm程度、包装袋10の長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の幅を70~150mm程度、高さ方向(Z方向)の高さを20~100mm程度とすることができる。このような薄葉紙の積層体は、例えば、ロータリー式又はマルチスタンド式インタフォルダによって製造することができる。
【0030】
シート積層体の密度は、0.09g/cm3以上0.50g/cm3以下であり、好ましくは0.13g/cm3以上0.40g/cm3以下、より好ましくは0.15g/cm3以上0.30g/cm3以下である。シート積層体の密度は、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0031】
シート積層体の態様は、特に限定されず、例えば、ペーパータオル、キッチンペーパー、ティシューペーパー、トイレットペーパー等の衛生薄葉紙に適用可能である。これらの衛生薄葉紙には、保湿成分を含んだ衛生薄葉紙(例えば、ローションティシュー等)も含まれる。
【0032】
また、シート積層体の用途は、特に限定されず、産業用、家庭用、携帯用のいずれも適用できる。なお、本実施形態におけるシート積層体としては、これらの中でも、家庭用、携帯用のペーパータオルが好適に用いられる。
【0033】
積層体のシートのプライ数は、特に限定されないが、1プライ以上にすることができ、好ましくは1プライまたは2プライ(2枚重ね)である。また、シート2の形状は、特に限定されないが、例えば、2プライのシートが折りたたまれた状態で輪郭形状が四角形(長方形、正方形等)のものであることが好ましい。
【0034】
シートの材質は、特に限定されないが、例えば、紙、不織布または布等のシートを用いることができ、好ましくは紙(紙シート)である。なお、シートが紙の場合、パルプを主原料とする原紙が用いられる。パルプ組成は、紙シートにおける公知の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を、50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%とすることができる。
【0035】
また、シート(紙シート)におけるパルプ組成は、特に限定されない。例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを、任意の比率で使用することができる。
【0036】
なお、シート(紙シート)において、広葉樹パルプと針葉樹パルプの比は、限定されないが、好ましくは10:90~80:20であり、より好ましくは広葉樹パルプに対して針葉樹パルプの比率がより多いパルプ組成である。また、シートS(紙シート)に含まれるパルプには、古紙パルプを用いても良い。
【0037】
シートの坪量は、特に限定されないが、プライ数に応じて、紙の場合は5g/m2以上80g/m2以下であり、好ましくは10g/m2以上60g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上45g/m2以下である。また、不織布の場合は20g/m2以上100g/m2以下のものが望ましい。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0038】
また、シートの厚みは、特に限定されず、JIS P 8111(1998)の環境下で測定された紙厚を採用することができる。例えば、シートSが紙の場合、紙厚は、2プライあたり、50μm以上600μm以下であり、好ましくは60μm以上500μm以下、より好ましくは130μm以上400μm以下である。
【0039】
また、シートには、エンボス加工が施されていてもよい。このようなエンボス加工は、公知のエンボス付与方法により実施することができる。
【0040】
シート包装袋1の形態は、特に限定されない。本実施の形態では、天面4C、底面4D、二つの長側面4B、二つの短側面(妻面)4Aを有する。なお、本実施の形態の包装袋1では、天面4Cと底面4Dが上下方向に対向し、長側面4Bが幅方向(Y方向)に対向し、短側面4Aが長手方向(X方向)に対向する。また、短側面4Aは、天面4C、底面4D、側面4Bのいずれにも連続する(
図1、
図4)。
【0041】
シート包装袋1の寸法は、特に限定されない。例えば、包装袋1の長手方向(X方向)の長さは150~250mm程度、包装袋1の長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の幅は70~150mm程度、高さ方向の高さは20~100mm程度とすることができる(
図1)。なお、シート包装袋1の寸法は、包装袋1にシート積層体2が収容された状態での寸法を示す。
【0042】
シート包装袋1の天面4Cには、長手方向(X方向)に延びる細長形状の取出口6(
図2)を形成するための開裂用切目線50が形成されている。開裂用切目線50で囲まれる部分が取出口形成部5となり、取出口形成部5を除去することで取出口6が形成される。
【0043】
本発明の実施の形態は、この開裂用切目線の形成工程を含むシート包装袋の製造方法である。
【0044】
<開裂用切目線の形成方法>
シート包装袋や介護用・ベビー用おむつ、生理用ナプキンなどで用いられる樹脂フィルム、不織等に切目線あるいはエンボス模様など形成する際、多くの場合、ロータリー式ダイカット装置が用いられている。
【0045】
ロータリー式ダイカット装置では、ダイカットロールの周面に加工用のダイカット刃を設け、回転するダイカットロールとアンビルロールとの間で、基材の切断やエンボス加工等が、連続的に行われる。
【0046】
開裂用切目線を形成する場合、ダイカットロールの周面上にカットを形成するための刃が設けられ、ダイカットロールとアンビルロールとの間に樹脂フィルムや紙などの基材が送りこまれる。二つのロールの回転により、ダイカットロールの刃がアンビルロール表面に接触する場合は、基材にカットが形成される。ダイカットロール周面とアンビルロールとの間に間隙を生じる場合は、基材は切断されないので、タイが形成される。
【0047】
ダイカットロールの周面には、ロールの回転により基材に所定の切目線が形成されるように、切目線のカットに対応する位置に刃が設けられていて、ダイカットロールとアンビルロールの回転により、連続的に所定の形状の開裂用切目線が形成される。開裂用切目線が形成された基材は、次の加工工程に送られる。
【0048】
なお、ダイカットロール周面の刃とアンビルロールとが接触せず、両者の間に間隙を生じる場合とは、ダイカットロールの周面上に刃が形成されている部分と形成されていない部分が交互に配置されている場合の他、次の場合も含まれる。
【0049】
高さの高い刃とそれよりも高さの低い刃が交互に配置されている場合、あるいは刃と、刃は形成されていないが刃よりわずかに低い高さの突状体が交互に配置されている場合等である。
【0050】
図3(a)はロータリー式ダイカット装置の1例の概観図である。
図3(b)はダイカットロールとアンビルロールにより、切目線が形成される工程を模式的に示すものである。
【0051】
図3(b)において、ダイカットロール200の周面には、例えば、周面を展開すると
図1の開裂用切目線50が形成されるように刃400が設けられている。ダイカットロール200及びアンビルロール300の回転により、ダイカットロールの刃400とアンビルロールとが接触すると、接触した位置に対応する位置の基材にカットが形成される。ダイカットロール200の周面に刃が形成されていない状態で、アンビルロール300と接触するか、僅かに間隙が形成されている場合は、当該位置では基材はカットされないので、タイ(非カット)が形成される。基材がダイカットロール及びアンビルロールにより送られる方向がMD(Machine Direction)方向で、基材及び加工品の流れ方向を示す。本実施の形態においては、MD方向がシート包装袋の長手方向(X方向)となる。
【0052】
図1に示す開裂用切目線50を、例えば樹脂フィルム基材100に形成する場合、2本の切目線がY方向に並んでX方向(MD方向)に延びている。そして、この2本の切目線は、ダイカットロールとアンビルロールとにより同時に形成されることから、ダイカットロールの周面にはMD方向に一対の刃の列が形成されている。
【0053】
このとき、Y方向に対向している2本の開裂用切目線におけるタイとカットとの関係は、従来は、一方のタイから見た他方の切目線にはタイが、一方のカットから見た他方の切目線にはカットが形成されている(
図6)。このために、2本の切目線上においては、ダイカットロール周面上の一対の刃が同時にアンビルロールに接触してカットが形成される。ダイカットロール周面の刃と、アンビルロールとの間に間隙が形成される場合は、カットは形成されず同時にタイが形成される。
【0054】
このようにダイカットロールの刃とアンビルロールとの接触が2か所で同時で、周期的に連続する場合、接触の衝撃もその分大きくなる。そのためにダイカットロール装置に機械的な振動が発生し、刃の接触摩擦が大きくなる。その結果、刃の寿命が短くなる傾向になる。さらに、時間当たりの生産量を高めるために、ダイカットロール回転の高速化を進めるに従い、接触摩擦の進行はより早まり、刃の寿命はさらに短くなる。
【0055】
本実施の形態においては、一対の開裂用切目線を形成する際、一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態であり、前記他方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとが非接触状態のときに、前記一方の開裂用切目線においてダイカットロールの刃とアンビルロールとは接触状態である。
【0056】
したがって、刃とアンビルロールとは、2か所同時に接触が開始されるのではなく、交互に接触が開始されることになり、接触も1か所となる場合が含まれる。したがって、接触により生じる衝撃は小さくなり、機械振動を小さくすることができるので、接触摩耗の進行を抑制することができる。その結果、ダイカットロールの刃の寿命を長くすることができる。
【0057】
図4は本実施の形態の製造方法で作製した開裂用切目線の一例である。
【0058】
図4に示す開裂用切目線50は、二つの切目線が幅狭で一定の幅(平行)の幅狭部51と、幅狭部51の両端側に、端部側に向かうに従い幅方向の長さが増加する拡幅部52と、拡幅部52に連続してX方向の外側に向かって凸に膨出する湾曲凸部53とを有している。この拡幅部52と湾曲凸部53とにより、中央部分が幅狭で両端側に膨出部を備えた瓢箪型の開裂用切目線50が形成される。
【0059】
なお、拡幅部は、細長形状の長手方向の中央からそれぞれ端部側に向かうに従い幅方向の長さが増加する範囲の一例である。また、幅狭部は、幅方向の長さが一定である範囲の一例である。
【0060】
図4に示す例では、開裂用切目線50は、幅狭部、拡幅部および湾曲膨出部のすべてにおいて、ミシン目で構成されており、環状の開裂用切目線を形成している。開裂用切目線50(ミシン目)のタイ50Uとカット50Cの比は、任意であるが、例えば、1:1~1:5とすることができ、好ましくは1:2~1:4、より好ましくは1:2.5~1:3.5である。
【0061】
拡幅部のタイ50Uとカット50Cの比は、1:4以上が好ましく、拡幅部の幅方向の長さが増加する割合が大きい場合(長手方向からの傾斜角が大きい場合)は、例えば、1:8以上とするのが好ましい。
【0062】
図4に示すように、開裂用切目線50は、拡幅部52において、長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の一方の切目線に位置するタイ、と対向する他方に位置する切目線のカットとが対向して配置されている。言い換えると、一対の切目線において、一方の切目線に位置するのがタイの場合、直交方向の他方の切目線にはカットが位置している。その反対に、他方の切目線にタイが位置する場合は、一方の切目線にはカットが位置している。
【0063】
一方の切目線のタイの位置と他方の切目線のカットの位置とが対向する関係は、タイの位置がカットの長さ方向のほぼ中央に位置するのが好ましい。このタイとカットとの関係は、ダイカットロール周面上の2列の刃の配列においては、一方の配列におけるタイを形成する隙間は、対向する刃の配列における刃の長さのほぼ中央に対向して配置されている場合である。間隙が、対向する刃の配列における刃の長さのほぼ中央に対向して配置されることにより、刃とアンビルロールとの接触は一定の間隔で繰り返されるので、接触により生じる摩擦の変動を少なくすることができ好ましい。
【0064】
間隙が対向する刃の長さ方向の中央から回転方向の前後方向にずれても、接触開始の間隔は規則的間隔から若干の不規的間隔となるが、刃とアンビルロールとは、交互に接触が開始されることになり、接触も1か所となる場合が含まれる。したがって、そのように前後方向にずれても、同様に接触により生じる衝撃は小さくなり、装置の機械的振動を小さくすることができる。
【0065】
なお、拡幅部52等のような曲線上にタイとカットとを配置する場合は、当該曲線状の開裂用切目線を長手方向上に投影した状態でのタイとカットとの対向関係とすればよい。
【0066】
図5は、
図4に示す、本実施の形態で作製された開裂用切目線50の拡幅部52の部分を(a)に、幅狭部51の切目線を(b)に示したものである。
図6は、タイはタイに対向し、カットはカットに対向する従来の開裂用切目線を
図5に対応させて示したものである。
【0067】
表1は、
図5(a)に示す拡幅部52を本実施の態様の、タイとカットとが対向するように配置された実施例1と、
図6(a)に示す、拡幅部52を従来のタイとタイが対向し、カットとカットが対向するように配置された比較例1の、刃替えまでのショット数を比較したものである。対象とした基材は、ポリエチレン(PE)を用いた。なお、PEとポリプロピレン(PP)を主基材とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)とPPのラミネート基材を用いてもよい。
【0068】
【0069】
表1に示す刃替えまでのショット数の回数は、一方側のタイは他方側のカットと対向し、他方側のタイは一方側のカットと対向するカットとタイが非対称である場合の方が、タイとタイ、カットとカットが対向する対称の場合よりも倍以上になっている。このことから、非対称の配置は、対称の配置よりも機械的振動の発生が抑制されて、接触摩擦も抑制され、刃の寿命(耐久性)は高めることができることを示している。
【0070】
なお、機械的振動の発生を抑制できることは、刃の寿命を長くできるだけでなく、ダイカットロール装置全体に対する微小振動の発生を抑制できるので、装置自体の耐久性を高めることなる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 シート包装袋
2 シート積層体(衛生薄用紙)
3C 天面
6 シート取出口
50 開裂用切目線(ミシン目)
50C カット
50U タイ
51 幅狭部(幅方向の長さが一定)
52 拡幅部(幅方向の長さが増加)
100 基材
200 ダイカットロール
300 アンビルロール
400 ダイカットロールの刃