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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150112
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/22 20060101AFI20231005BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231005BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231005BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20231005BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20231005BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20231005BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231005BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231005BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05B33/22 Z
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/26 Z
H05B33/28
G09F9/30 338
G09F9/30 365
G09F9/00 338
G09F9/30 349Z
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059038
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】三村 智紀
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC36
3K107CC45
3K107DD23
3K107DD27
3K107DD89
3K107FF15
3K107GG06
3K107GG24
5C094AA43
5C094BA27
5C094DA13
5C094EA04
5C094EB02
5C094FA02
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】開口率の低下を抑制しつつ高輝度化が図られる有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置は、基板と、基板上に位置する複数の画素と、複数の画素のそれぞれを区画する第1隔壁と、複数の画素が位置する表示領域に位置し、第1隔壁よりも高い第2隔壁と、を備える。複数の画素に含まれる第1画素は、第1電極と、第1電極上に位置する有機発光層と、有機発光層上に位置する第2電極とを有し、第1隔壁は、撥液性を示し、第2隔壁の底面は、基板と第1電極との少なくとも一方に接する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置する複数の画素と、
前記複数の画素のそれぞれを区画する第1隔壁と、
前記複数の画素が位置する表示領域に位置し、前記第1隔壁よりも高い第2隔壁と、
を備え、
前記複数の画素に含まれる第1画素は、第1電極と、前記第1電極上に位置する有機発光層と、前記有機発光層上に位置する第2電極とを有し、
前記第1隔壁は、撥液性を示し、
前記第2隔壁の底面は、前記基板と前記第1電極との少なくとも一方に接する、
有機EL表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素に含まれる第2画素は、第1方向において前記第1画素に対して隣り合い、
前記第2画素は、前記第1電極と、前記第1電極上に位置する別の有機発光層と、前記別の有機発光層上に位置する別の第2電極とを有し、
前記第1隔壁のうち前記第1方向において前記第1画素と前記第2画素との間に位置する第1部分の底面と、前記第2隔壁のうち前記第1方向において前記第1画素と前記第2画素との間に位置する第2部分の底面とのそれぞれは、前記第1電極に接する、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素に含まれる第2画素は、第1方向において前記第1画素に対して隣り合い、
前記第2画素は、前記第1電極と、前記第1電極上に位置する別の有機発光層と、前記別の有機発光層上に位置する別の第2電極とを有し、
前記第1隔壁のうち前記第1方向において前記第1画素と前記第2画素との間に位置する第1部分の底面と、前記第2隔壁のうち前記第1方向において前記第1画素と前記第2画素との間に位置する第2部分の底面とのそれぞれは、前記第1電極上に位置する下地膜に接する、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記表示領域において、前記第2隔壁は、前記第1方向に交差する第2方向の一端から他端まで延在する、請求項2または3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第2方向から見た前記第2隔壁は、オーバーハング形状を有する、請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1隔壁の一部は、前記第2隔壁に重なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第1隔壁と前記第2隔壁とは、互いに接している、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の一部を露出する第1開口部、及び前記第1開口部とは異なる第2開口部を有する第1隔壁を形成する工程と、
前記第2開口部に第2隔壁を形成する工程と、
前記第1開口部内に有機層を湿式法にて形成する工程と、
前記有機層上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に第2電極を形成する工程と、
を備え、
前記第1隔壁は、撥液性を示し、
前記第2隔壁の底面は、前記基板と前記第1電極との少なくとも一方に接する、
有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つとして、有機EL材料(EL:Electro-Luminescence)を発光物質として用いた有機EL表示装置が挙げられる。例えば下記特許文献1には、凸版印刷法により有機発光層を形成してなる有機EL素子が開示されており、当該有機EL素子に含まれる各画素は、隔壁で区画されている。加えて、下記特許文献1では、上記隔壁で区画された画素間の中央部に第二の隔壁が設けられる。これにより、画素外へ流出した有機発光層のインク溜まりが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-105694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、インク溜まりに有機発光層に含まれる材料が過剰に流出してしまうことがある。この場合、有機EL素子が良好に発光しないおそれなどがある。
【0005】
本発明の一側面の目的は、有機発光層の形成時に湿式法を利用する場合であっても、有機発光層に含まれる材料を所定の領域へ留めることが可能な有機EL表示装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る有機EL表示装置は、基板と、基板上に位置する複数の画素と、複数の画素のそれぞれを区画する第1隔壁と、複数の画素が位置する表示領域に位置し、第1隔壁よりも高い第2隔壁と、を備え、複数の画素に含まれる第1画素は、第1電極と、第1電極上に位置する有機発光層と、有機発光層上に位置する第2電極とを有し、第1隔壁は、撥液性を示し、第2隔壁の底面は、基板と第1電極との少なくとも一方に接する。
【0007】
この有機EL表示装置では、複数の画素のそれぞれが第1隔壁によって区画される。これにより、各画素が配置される領域が第1隔壁によって定められる。ここで、第1隔壁は撥液性を示す。このため、有機発光層に含まれる材料の少なくとも一部を湿式法にて上記領域内に形成することによって、第1隔壁を高く設けなくとも、当該材料を上記領域内に留めることができる。加えて、第2隔壁の底面は、基板と第1電極との少なくとも一方に接する。この場合、当該底面が第1隔壁のみに接する場合と比較して、第2隔壁が基板上から剥離しにくい。したがって、撥液性を示す第1隔壁を形成した場合であっても、第2隔壁を高い信頼性にて形成できる。
【0008】
複数の画素に含まれる第2画素は、第1方向において第1画素に対して隣り合い、第2画素は、第1電極と、第1電極上に位置する別の有機発光層と、別の有機発光層上に位置する別の第2電極とを有し、第1隔壁のうち第1方向において第1画素と第2画素との間に位置する第1部分の底面と、第2隔壁のうち第1方向において第1画素と第2画素との間に位置する第2部分の底面とのそれぞれは、第1電極に接してもよい。この場合、第2隔壁をより高い信頼性にて形成できる。
【0009】
複数の画素に含まれる第2画素は、第1方向において前記第1画素に対して隣り合い、第2画素は、第1電極と、第1電極上に位置する別の有機発光層と、別の有機発光層上に位置する別の第2電極とを有し、第1隔壁のうち第1方向において第1画素と第2画素との間に位置する第1部分の底面と、第2隔壁のうち第1方向において第1画素と第2画素との間に位置する第2部分の底面とのそれぞれは、第1電極上に位置する下地膜に接してもよい。この場合、第2隔壁をより高い信頼性にて形成できる。
【0010】
表示領域において、第2隔壁は、第1方向に交差する第2方向の一端から他端まで延在してもよい。この場合、表示領域における各第2電極は、第2隔壁によって好適に分断可能になる。また、第2方向から見た第2隔壁は、オーバーハング形状を有してもよい。この場合、表示領域における各第2電極は、第2隔壁によってより好適に分断可能になる。
【0011】
第1隔壁の一部は、第2隔壁に重なってもよい。この場合、表示領域において画素が占める領域を増加できる。
【0012】
第1隔壁と第2隔壁とは、互いに接してもよい。この場合、表示領域において画素が占める領域を増加できる。
【0013】
本発明の別の一側面に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板上に第1電極を形成する工程と、第1電極の一部を露出する第1開口部、及び第1開口部とは異なる第2開口部を有する第1隔壁を形成する工程と、第2開口部に第2隔壁を形成する工程と、第1開口部内に有機層を湿式法にて形成する工程と、有機層上に発光層を形成する工程と、発光層上に第2電極を形成する工程と、を備え、第1隔壁は、撥液性を示し、第2隔壁の底面は、基板と第1電極との少なくとも一方に接する。
【0014】
この有機EL表示装置の製造方法では、第1隔壁の第1開口部内に有機層を湿式層にて形成する。ここで、第1隔壁は撥液性を示す。このため、有機層を第1開口部内に留めることができる。加えて、第2隔壁の底面は、基板と第1電極との少なくとも一方に接する。この場合、当該底面が第1隔壁のみに接する場合と比較して、第2隔壁が基板上から剥離しにくい。したがって、撥液性を示す第1隔壁を形成した場合であっても、第2隔壁を高い信頼性にて形成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機発光層の形成時に湿式法を利用する場合であっても、有機発光層に含まれる材料を所定の領域へ留めることが可能な有機EL表示装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る有機EL表示装置の模式斜視図である。
図2図2(a)は、表示領域の要部概略平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A線に沿った概略端面図である。
図3図3は、図2(a)のB-B線に沿った概略端面図である。
図4図4(a),(b)は、表示領域の製造方法を説明するための概略断面図である。
図5図5(a)は、表示領域の製造方法を説明するための概略平面図であり、図5(b)は、図5(a)のC-C線に沿った概略端面図であり、図5(c)は、図5(a)のD-D線に沿った概略端面図である。
図6図6(a)~(c)は、表示領域の製造方法を説明するための概略断面図である。
図7図7(a),(b)は、表示領域の製造方法を説明するための概略断面図である。
図8図8は、比較例に係る第1隔壁及び第2隔壁を示す概略端面図である。
図9図9(a)は、第1変形例に係る有機EL表示装置の概略要部端面図であり、図9(b)は、第2変形例に係る有機EL表示装置の概略要部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、本実施形態に係る有機EL表示装置の構成の概略について、図1を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL表示装置の模式斜視図である。図1に示される有機EL表示装置1は、パッシブマトリックス型の表示装置である。有機EL表示装置1は、互いに積層している第1基板2及び第2基板3と、表示領域4と、配線部5と、集積回路6と、FPC7(フレキシブルプリント回路)と、保護樹脂8とを備える。以下では、第1基板2と第2基板3とが互いに積層する方向を、「積層方向(第3方向D3)」として説明する。積層方向は、第1基板2及び第2基板3の厚さ方向に相当する。加えて、以下では、積層方向に直交する方向を水平方向とし、水平方向の所定方向を第1方向D1とし、第1方向D1に交差若しくは直交する方向を第2方向D2として説明する。
【0019】
第1基板2は、封止基板として機能する基板であり、第2基板3に対向している。第1基板2は、例えば枠状の封止層(不図示)を介して第2基板3と接合している。この封止層は、例えば接着性を示す紫外線硬化樹脂を含んでおり、スペーサ等をさらに含んでもよい。第1基板2は、例えば平面視にて略長方形状を呈している。本実施形態では、平面視にて、第1基板2の短手方向は第1方向D1に延在し、第1基板2の長手方向は第2方向D2に延在する。第1基板2は、例えばガラス基板、セラミックス基板、金属基板、又は可撓性を示す基板(例えば、プラスチック基板)である。
【0020】
第2基板3は、表示領域4及び配線部5が設けられる素子基板である。第2基板3は、例えば平面視にて略長方形状を呈している。第2基板3は、例えばガラス基板、又は可撓性を示す基板(例えば、プラスチック基板等)であり、透光性を示す。平面視にて、第2基板3の短辺は第1基板2の短辺と略同一であり、第2基板3の長辺は、第1基板2の長辺よりも長くなっている。このため、第1基板2の一短辺と第2基板3の一短辺とを合わせた場合、第2基板3の一部は、第1基板2から露出している。なお、本実施形態における「略同一」は、完全同一だけを示すのではなく、多少の誤差(例えば、最大数%程度)を包含する概念である。
【0021】
表示領域4は、電流が供給されることによって光を発生する領域であり、第2基板3上に設けられている。表示領域4は、第1基板2、第2基板3、及び上記封止層によって囲まれて封止された封止空間内に設けられている。この封止空間内には、乾燥剤等が設けられてもよい。表示領域4の詳細については、後述する。
【0022】
配線部5は、複数の引き回し配線を含む部分である。図示しないが、配線部5は、例えば、表示領域4と集積回路6とを接続する引き回し配線、集積回路6とFPC7とを接続する引き回し配線などを含む。これらの引き回し配線は、例えば順に積層されたモリブデン合金層、アルミニウム合金層、及びモリブデン合金層を含む。配線部5には、上記引き回し配線を保護するためのバリア膜が設けられてもよい。このバリア膜は、例えば酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜等の絶縁膜である。
【0023】
集積回路6は、表示領域4内における各画素の発光及び非発光を制御する駆動回路である。集積回路6は、第2基板3において第1基板2から露出した領域に搭載されており、配線部5に接続されている。集積回路6は、例えばICチップ等である。有機EL表示装置1における集積回路6の数は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0024】
FPC7は、有機EL表示装置1と外部装置とを接続する配線である。FPC7は、例えば可撓性を示すプラスチック基板を用いて形成される。FPC7に接続される外部装置は、例えば電源及び電流制御回路等である。
【0025】
保護樹脂8は、封止空間の外側に位置する配線部5と、集積回路6とを保護するために設けられる樹脂である。保護樹脂8は、例えば種々の硬化性樹脂である。
【0026】
次に、図2を参照しながら、表示領域4の詳細について説明する。図2(a)は、表示領域の要部概略平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A線に沿った概略端面図である。図3は、図2(b)のB-B線に沿った概略端面図である。なお、図2(a),(b)及び図3のそれぞれにおいては、第1基板2は省略されている。図2(a)に示されるように、表示領域4には、第1方向D1に沿って延在する複数の陽極線11と、第2方向D2に沿って延在する複数の陰極線12と、第1隔壁13と、第2隔壁14とが位置する。
【0027】
表示領域4において、陽極線11の一部と、陰極線12の一部とは、互いに重なっている。具体的には、陽極線11の一部は、第3方向D3において第2基板3と陰極線12の一部との間に位置する。陽極線11と陰極線12とが交差する位置には、画素Pが設けられる。このため、表示領域4に位置する複数の画素Pは、第2基板3上においてマトリクス状に配置される。
【0028】
図2(b)に示されるように、各画素Pは、陽極線11の一部と、当該一部上に位置する有機発光層21と、有機発光層21上に位置する陰極線12とを有する。図2(b)に示される2つの画素Pのうち、一方を第1画素P1とし、他方を第2画素P2とする。第1画素P1と第2画素P2とは、互いに第1方向D1に沿って並んでおり、共通する陽極線11を有する。一方、第1画素P1に含まれる有機発光層21及び陰極線12は、第2画素P2に含まれる有機発光層21及び陰極線12と異なる。なお、複数の画素Pのうち第2方向D2に沿って一列に並ぶ画素同士は、共通する陰極線12を有し、互いに異なる陽極線11を有する。
【0029】
有機発光層21は、発光材料を含む発光層を少なくとも備える層である。有機発光層21は、平面視にて対応する陰極線12と略同一形状を呈する。すなわち、有機発光層21は、平面視にて第2方向D2に沿った略直線形状を呈しており、有機発光層21の幅は、陰極線12の幅と略同一である。有機発光層21は、発光層に加えて、他の有機層(例えば、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、及び正孔注入層等)を有してもよい。発光層に含まれる発光材料は、低分子有機化合物でもよく、高分子有機化合物でもよい。発光材料として、蛍光材料が用いられてもよく、リン光材料が用いられてもよい。電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、及び正孔注入層は、それぞれ有機材料を含む。例えば、正孔輸送層には正孔輸送性を示す低分子有機化合物であるα-NPDが含まれ、電子輸送層には電子輸送性を示す低分子有機化合物であるAlqが含まれる。有機発光層21の厚さは、例えば100nm以上300nm以下である。
【0030】
有機発光層21に含まれる上記層のうち少なくとも1層は、湿式法によって形成される。湿式法は、例えば、インクジェット法、スピンコート法、スプレーコート法、ドクターブレード法等である。本実施形態では、有機発光層21に含まれる他の有機層の少なくとも一部(例えば、正孔注入層など)は、湿式法によって形成される。
【0031】
複数の陽極線11は、平面視にて直線状を呈する透明導電体であり、画素Pの第1電極として機能する。複数の陽極線11は、第2基板3上にてストライプ状に配列されている。陽極線11は、例えばITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の透光性を示す導電材料によって形成される。各陽極線11の厚さは、例えば10nm以上200nm以下である。第2方向D2に沿った各陽極線11の幅は、例えば20μm以上500μm以下である。第2方向D2に沿った隣り合う陽極線11同士の間隔は、例えば10μm以上100μm以下である。
【0032】
複数の陰極線12は、平面視にて直線状を呈する導電体であり、画素Pの第2電極として機能する。複数の陰極線12は、第2基板3上にてストライプ状に配列されている。陰極線12は、例えばアルミニウム、銀等の導電材料によって形成される。当該導電材料には、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)が含まれてもよいし、IZO、ITO等の透光性を示す導電材料が含まれてもよい。すなわち、陰極線12は、透光性を示してもよい。陰極線12は、例えばPVD法によって形成される。各陰極線12の厚さは、例えば50nm以上300nm以下である。第1方向D1に沿った各陰極線12の幅は、例えば20μm以上1000μm以下である。陰極線12の幅は、陽極線11の幅以上であってもよい。第1方向D1に沿った隣り合う陰極線12同士の間隔は、例えば5μm以上50μm以下である。
【0033】
第1隔壁13は、表示領域4に位置する複数の画素Pのそれぞれを区画する絶縁部材であり、複数の開口部13a及び複数の開口部13bを有する。開口部13aは、陽極線11の一部を露出する部分(第1開口部)であり、平面視にて略矩形状を有する。各開口部13aは、陽極線11と陰極線12とが交差する箇所に重なる。このため、第1隔壁13において複数の開口部13aが設けられる位置は、画素Pが設けられる位置に相当する。各開口部13bは、第2基板3の一部を露出する部分(第2開口部)であり、第2方向D2に沿って延在する溝である。各開口部13bは、第1方向D1において隣り合う2つの画素Pの間に位置する。第1方向D1に沿った開口部13bの幅は、例えば5μm以上50μm以下である。本実施形態では、表示領域4において、各開口部13bは、第2方向D2の一端から他端まで延在する。開口部13bにおいては、第2基板3もしくは陽極線11が露出する。なお、本実施形態では、第1隔壁13は、単一部材であるが、これに限られない。例えば、第1隔壁13は、各開口部13bによって分断される複数の部分を有してもよい。
【0034】
第1隔壁13の底面13cは、第2基板3及び陽極線11の少なくとも一方に接触する。例えば、図2(b)に示されるように、第1隔壁13のうち第1方向D1において隣り合う第1画素P1と第2画素P2の間に位置する部分13d(第1部分)に含まれる底面13cは、陽極線11に接する。また、図3に示されるように、第1隔壁13のうち第2方向D2において隣り合う2つの画素Pの間に位置する部分に含まれる底面13cは、第2基板3に接する。第1隔壁13の厚さ(最大厚さ)は、例えば、0.5μm以上3.0μm以下である。第1隔壁13の厚さが0.5μm以上であることによって、画素Pが設けられる領域に微量の液体が滴下される場合であっても、当該液体が当該領域から漏れにくくなる。なお、微量の液体とは、例えば、上記領域において100nm以下の厚さを有する薄膜を形成可能な量の液体に相当する。
【0035】
第1隔壁13は、撥液性を示す。これにより、例えば画素Pが設けられる領域に微量の液体が滴下される場合、当該液体が当該領域から漏れにくくなる。なお、本実施形態では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を第1隔壁13の表面に滴下したとき、当該表面とPGMEAとのなす角度(接触角)が、少なくとも30°以上である場合、第1隔壁13は撥液性を示すと言える。第1隔壁13による上記微量の液体の漏れ防止の観点から、上記接触角が35°以上または40°以上である場合、第1隔壁13が撥液性を示すとしてもよい。第1隔壁13は、例えばポジ型もしくはネガ型の感光性樹脂を含む。
【0036】
第2隔壁14は、所望の形状を呈する陰極線12及び有機発光層21を形成するための素子分離体である。第2隔壁14は、第1隔壁13の開口部13b内に形成される絶縁部材であり、第2方向D2に沿って延在している。第2隔壁14は、平面視にて略直線形状を呈しており、第2方向D2から見てオーバーハング形状(例えば、逆テーパー形状)を有する。第2隔壁14は、第1隔壁13よりも高く、例えば1.0μm以上の高さを有する。第2隔壁14は、表示領域4において、第2方向D2の一端から他端まで延在する。第2隔壁14の底面14aは、第2基板3と陽極線11との少なくとも一方に接する。例えば、図2(b)に示されるように、第2隔壁14のうち第1方向D1において隣り合う第1画素P1と第2画素P2の間に位置する部分14b(第2部分)に含まれる底面14aは、陽極線11に接する。また、図3に示されるように、第2隔壁14のうち第2方向D2において隣り合う2つの画素Pの間に位置する部分に含まれる底面14aは、第2基板3に接する。第2隔壁14は、例えば有機材料であるネガ型の感光性樹脂を含む。
【0037】
次に、図4図7を参照しながら、本実施形態に係る有機EL表示装置の表示領域の製造方法の一例を説明する。図4(a),(b)は、表示領域の製造方法を説明するための概略断面図である。図5(a)は、表示領域の製造方法を説明するための概略平面図であり、図5(b)は、図5(a)のC-C線に沿った概略端面図であり、図5(c)は、図5(a)のD-D線に沿った概略端面図である。図6(a)~(c)は、表示領域の製造方法を説明するための概略断面図である。図7(a),(b)は、表示領域の製造方法を説明するための概略断面図である。以下では、配線部5、集積回路6、FPC7及び保護樹脂8の製造については割愛する。
【0038】
まず、図4(a)に示されるように、第2基板3を準備する(第1工程)。次に、図4(a)に示されるように、第2基板3上に陽極線11を形成する(第2工程)。陽極線11は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)により第2基板3上に成膜した透明導電膜を、パターニングすることによって形成される。このため、図示しないが、第2基板3の一部は陽極線11から露出する(図2(a)を参照)。
【0039】
次に、図5(a)~(c)に示されるように、開口部13a,13bを有する第1隔壁13を第2基板3上に形成する(第3工程)。第1隔壁13は、例えばフォトリソグラフィなどによって形成され、撥液性を示す。図5(b),(c)に示されるように、第1隔壁13の一部の底面13cは陽極線11に接し、第1隔壁13の別の一部の底面13cは第2基板3に接する。
【0040】
次に、図6(a)に示されるように、少なくとも陽極線11及び第1隔壁13を覆う樹脂層31を形成する(第4工程)。図示しないが、樹脂層31は、第2基板3において陽極線11及び第1隔壁13から露出する部分も覆う。樹脂層31は、例えばネガ型の感光性樹脂から形成され、種々の湿式法によって形成される。
【0041】
次に、図6(b)に示されるように、樹脂層31をパターニングすることによって、開口部13bに第2隔壁14を形成する(第5工程)。上述したように、開口部13b内において、第2隔壁14の底面14aは、第2基板3と陽極線11との少なくとも一方に接する。また、第1隔壁13と、陽極線11において開口部13aに重なる部分とが露出する。
【0042】
次に、図6(c)に示されるように、開口部13a内に液体Lを滴下する(第6工程)。本実施形態では、インクジェット法によって開口部13a内に、正孔注入材料を含む液体L(有機溶媒)を選択的に滴下する。続いて、液体Lを乾燥させることによって、図7(a)に示されるように、有機層32を湿式法にて形成する。次に、図7(b)に示されるように、有機発光層21を形成する(第7工程)。第7工程では、図7(a)に示される有機層32上に、少なくとも発光層(不図示)を形成することによって、有機発光層21を形成する。有機層32上には、発光層に加えて、別の有機層が形成されてもよい。発光層と、別の有機層との少なくとも一方は、湿式法にて形成されてもよいし、乾式法にて形成されてもよい。乾式法としては、例えば、真空蒸着法などが挙げられる。
【0043】
次に、図7(c)に示されるように、発光層を有する有機発光層21上に陰極線12を形成する(第8工程)。第2隔壁14を利用することによって、ストライプ状であって有機発光層21上に位置する陰極線12が形成される。以上により、各開口部13a内においては、陽極線11と、有機発光層21と、陰極線12とが互いに重なる。これにより、表示領域4に複数の画素Pが形成される。
【0044】
以上に説明した本実施形態に係る有機EL表示装置1によれば、複数の画素Pのそれぞれが第1隔壁13によって区画される。これにより、各画素Pが配置される領域(すなわち、開口部13a)が第1隔壁13によって定められる。ここで、第1隔壁13は撥液性を示す。このため、有機発光層21に含まれる材料の少なくとも一部を湿式法にて上記領域内に形成することによって、第1隔壁13を高く設けなくとも、当該材料を上記領域内に留めることができる。加えて、第2隔壁14の底面14aは、第2基板3と陽極線11との少なくとも一方に接する。この場合、底面14aが第1隔壁13のみに接する場合と比較して、第2隔壁14が第2基板3上から剥離しにくい。したがって、撥液性を示す第1隔壁13を形成した場合であっても、第2隔壁14を高い信頼性にて形成できる。
【0045】
ここで、本実施形態では、第2隔壁14が第2基板3上から剥離しにくくなる理由について、図8を参照しつつ説明する。図8は、比較例に係る第1隔壁及び第2隔壁を示す概略端面図である。図8に示されるように、第1隔壁113には開口部113aのみが形成され、第2隔壁114は、第1隔壁113上に形成される。ここで、有機発光層の形成に湿式法を利用するために第1隔壁113が撥液性を示すとき、第1隔壁113は、第2隔壁114の材料である有機材料に対して撥液性を示す。この場合、第1隔壁113と第2隔壁114とが互いに密着しにくくなり、第2隔壁114が第2基板3上から剥離しやすい。この場合、後に形成される有機発光層及び陰極線が第2隔壁114によって分離されないおそれがある。これに対して本実施形態では、上述したように、第2隔壁14の底面14aは、第2基板3と陽極線11との少なくとも一方に接する。このため、上記比較例と比較して、第2隔壁14が第2基板3上から剥離しにくくなることがわかる。
【0046】
本実施形態では、複数の画素Pに含まれる第2画素P2は、第1方向D1において第1画素P1に対して隣り合い、第2画素P2は、第1画素P1と共通の陽極線11を有する。また、第2画素P2は、第1画素P1に含まれる有機発光層21とは異なる有機発光層21と、当該有機発光層21上に位置すると共に第1画素P1に含まれる陰極線12とは異なる陰極線12とを有する。加えて、第1隔壁13のうち第1方向D1において第1画素P1と第2画素P2との間に位置する部分13dの底面13cと、第2隔壁14のうち第1方向D1において第1画素P1と第2画素P2との間に位置する部分14bの底面14aとのそれぞれは、上記共通の陽極線11に接する。このため、第2隔壁14をより高い信頼性にて形成できる。
【0047】
本実施形態では、表示領域4において、第2隔壁14は、第2方向D2の一端から他端まで延在してもよい。この場合、表示領域4における各陰極線12は、第2隔壁14によって好適に分断可能になる。また、第2方向D2から見た第2隔壁14は、オーバーハング形状を有してもよい。この場合、表示領域4における各陰極線12は、第2隔壁14によってより好適に分断可能になる。
【0048】
以下では、図9を参照しながら上記実施形態の変形例について説明する。以下の変形例の説明において、上記実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0049】
図9(a)は、第1変形例に係る有機EL表示装置の概略要部端面図である。図9(a)に示されるように、第1隔壁13のうち第1方向D1において第1画素P1と第2画素P2との間に位置する部分13dの底面13cと、第2隔壁14のうち第1方向D1において第1画素P1と第2画素P2との間に位置する部分14bの底面14aとのそれぞれは、陽極線11上に位置する下地膜41に接する。換言すると、第1変形例では、第1隔壁13と第2隔壁14との下方であって、陽極線11の上方には、下地膜41が位置する。下地膜41は、陽極線11の形成後であって第1隔壁13の形成前に形成される絶縁膜である。下地膜41は、例えば、ポジ型もしくはネガ型の感光性樹脂材料等の有機絶縁膜でもよいし、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜等の無機絶縁膜でもよい。下地膜41の厚さは、例えば、50nm以上3000nm以下である。下地膜41の一部は、第1隔壁13の開口部13a内にも設けられる。当該一部は、開口部13aの縁及びその近傍に設けられる。一方、下地膜41は、第1隔壁13の開口部13bを完全に覆う。
【0050】
以上に説明した第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、下地膜41が開口部13bを完全に覆うように形成されることによって、開口部13b内における陽極線11と陰極線12との短絡を良好に防止できる。
【0051】
有機発光層21に含まれる層の少なくとも一部を湿式法にて形成する場合、当該層の厚さは、不均一になる傾向がある。特に、上記層において開口部13aの縁及びその近傍に位置する部分は、他の部分よりも厚くなりやすい。これに対して第1変形例では、下地膜41の一部が、開口部13aの縁及びその近傍に設けられることによって、各画素Pにおける有機発光層21の厚膜部分を除外できる。したがって、第1変形例によれば、各画素Pの発光ムラを低減できる。
【0052】
図9(b)は、第2変形例に係る有機EL表示装置の概略要部端面図である。図9(b)に示されるように、第1隔壁13Aの一部が、第2隔壁14に重なっており、第1隔壁13Aと第2隔壁14とが互いに接する。加えて、上記第1変形例と同様に、下地膜41が形成されている。この第2変形例においても、上記第1変形例と同様の作用効果が奏される。さらには、表示領域4(図1を参照)において画素Pが占める領域を増加できる。
【0053】
本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法は、上述した実施形態及び各変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態と上記変形例とは、互いに組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態と上記第2変形例とが組み合わされることによって、下地膜が形成されず、かつ、第1隔壁の一部が第2隔壁に重なってもよいし、第1隔壁と第2隔壁とが互いに接してもよい。
【0054】
上記実施形態及び上記変形例において、有機EL表示装置は、パッシブマトリックス型の表示装置であるが、これに限られない。有機EL表示装置は、アクティブマトリックス型の表示装置、セグメント型の表示装置などでもよい。
【0055】
上記実施形態及び上記変形例において、各基板は平面視にて略長方形状を呈しているが、これに限られない。各基板は、平面視にて多角形状もしくは略円形状等を呈してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…有機EL表示装置、2…第1基板、3…第2基板(基板)、4…表示領域、5…配線部、6…集積回路、7…FPC、8…保護樹脂、11…陽極線、12…陰極線、13,13A,113…第1隔壁、13a…開口部(第1開口部)、13b…開口部(第2開口部)、13c…底面、13d…部分(第1部分)、14,114…第2隔壁、14a…底面、14b…部分(第2部分)、21…有機発光層、31…樹脂層、32…有機層、41…下地膜、P…画素、P1…第1画素、P2…第2画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9