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特開2023-150122斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ
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  • 特開-斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ 図1
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  • 特開-斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150122
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20231005BHJP
   F04B 1/2042 20200101ALI20231005BHJP
   F04B 1/2064 20200101ALI20231005BHJP
   F03C 1/253 20060101ALI20231005BHJP
   F03C 1/38 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F04B1/22
F04B1/2042
F04B1/2064
F03C1/253
F03C1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059063
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】花井 真樹
(72)【発明者】
【氏名】大鶴 諒
【テーマコード(参考)】
3H070
3H084
【Fターム(参考)】
3H070BB04
3H070CC31
3H070CC35
3H070DD61
3H070DD91
3H084AA08
3H084AA16
3H084BB24
3H084BB27
3H084CC40
3H084CC58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリンダブロックと摺接する弁板を回転軸と同芯にポンプ本体へ簡単に配置する斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを提供する。
【解決手段】本体1内へ収装して回転軸7と回転方向に係合したシリンダブロック15には、軸方向へ往復動自在に複数のピストン17を配置する。各ピストン17の先端部が斜板14に摺接して各ピストン17の往復動量を設定する。シリンダブロック15と摺接して流体を流通する吸排ポート29、30を形成した弁板28を備える。本体1は内部にシリンダブロック15を収装したハウジング2の収装孔5に蓋部材3、4をインロー嵌合して構成する。回転軸7は蓋部材3、4へ回転自在に軸支する。弁板28は蓋部材4をインロー嵌合する収装孔5に外周をインロー嵌合して回転軸7と同芯に本体1へ配置した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内へ収装して回転軸と回転方向に係合したシリンダブロックと、シリンダブロックに軸方向へ往復動自在に配置した複数のピストンと、各ピストンとシリンダブロックとにより区画形成して流体を吸入排出する複数の作動室と、シリンダブロックより突出した各ピストンの先端部が摺接して各ピストンの往復動量を設定する斜板と、シリンダブロックと摺接して各作動室に吸入排出する流体を流通する吸排ポートを形成した弁板とを備え、本体は内部にシリンダブロックを収装したハウジングの収装孔に蓋部材をインロー嵌合して構成し、回転軸は蓋部材へ回転自在に軸支し、弁板は蓋部材をインロー嵌合する収装孔に外周をインロー嵌合して回転軸と同芯に本体へ配置したことを特徴とする斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ。
【請求項2】
前記弁板は、係合部を前記本体に係合して回り止めしたことを特徴とする請求項1に記載の斜板式アキシャルピストンポンプ・モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックに複数のピストンを軸方向へ往復摺動自在に配置し、ピストンの往復動量を斜板で設定し、シリンダブロックと摺接する円板状の弁板に穿設した吸排ポートで流体を吸入排出する斜板式アキシャルピストンポンプ・モータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の斜板式アキシャルピストンポンプ・モータは、ハウジングの両端開口を蓋部材(フランジ部材)で閉塞して本体(ポンプ本体)を構成し、本体へ回転自在に軸支した回転軸(駆動軸)にシリンダブロックを係合し、シリンダブロックには複数のピストンを軸方向へ往復動自在で周方向へ等間隔に配置し、ピストン先端に枢着したシューを本体に固定した円板状の斜板に摺接してピストンの往復動量を設定し、シリンダブロックと摺接する円板状の弁板に流体を流通する吸排ポートを穿設し、弁板は回転軸、シリンダブロックと同芯に蓋部材へ固定している。作動は、ポンプ作動では、回転軸でシリンダブロックを回転駆動することでピストンが往復動して流体の吸入吐出が行われる。また、モータ作動では、供給される流体の圧力に基づく作用力によりピストンが往復動することでシリンダブロックとともに回転軸が回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の斜板式アキシャルピストンポンプ・モータでは、円板状の弁板は径方向に対向する2個のピン部材で本体の蓋部材へ固定し、回転軸、シリンダブロックと同芯に配置しているため、2個のピン部材は高精度のものを必要とし、製作が面倒となる問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、シリンダブロックと摺接する弁板を回転軸と同芯にポンプ本体へ簡単に配置する斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
本体内へ収装して回転軸と回転方向に係合したシリンダブロックと、シリンダブロックに軸方向へ往復動自在に配置した複数のピストンと、各ピストンとシリンダブロックとにより区画形成して流体を吸入排出する複数の作動室と、シリンダブロックより突出した各ピストンの先端部が摺接して各ピストンの往復動量を設定する斜板と、シリンダブロックと摺接して各作動室に吸入排出する流体を流通する吸排ポートを形成した弁板とを備え、本体は内部にシリンダブロックを収装したハウジングの収装孔に蓋部材をインロー嵌合して構成し、回転軸は蓋部材へ回転自在に軸支し、弁板は蓋部材をインロー嵌合する収装孔に外周をインロー嵌合して回転軸と同芯に本体へ配置したことを特徴とする斜板式アキシャルピストンポンプ・モータがそれである。
【0007】
この場合、前記弁板は、係合部を前記本体に係合して回り止めしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、本体は内部にシリンダブロックを収装したハウジングの収装孔に蓋部材をインロー嵌合して構成し、回転軸は蓋部材へ回転自在に軸支し、弁板は蓋部材をインロー嵌合する収装孔に外周をインロー嵌合して回転軸と同芯に本体へ配置した。このため、弁板をインロー嵌合する収装孔は蓋部材をインロー嵌合するものであるから、弁板を回転軸と同芯に配置するための部材を格別に用意しなくてよく、弁板を回転軸と同芯に本体へ簡単に配置することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、弁板は係合部を本体に係合して回り止めした。このため、弁板を本体へ確実に回り止めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示した斜板式アキシャルピストンポンプ・モータの縦断面図である。
図2図1の線A-Aに沿った断面図である。
図3】他の実施形態を示した図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを斜板式アキシャルピストンポンプとした本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、1は本体で、円筒状のハウジング2と前蓋部材3と後蓋部材4とから構成し、ハウジング2へ軸方向に貫通形成した収装孔5の一端開口を前蓋部材3で閉塞すると共に、収装孔5の他端開口を後蓋部材4で閉塞し、ハウジング2を挟持した両蓋部材3、4を複数のボルト部材6で締結している。両蓋部材3、4はそれぞれ収装孔5の両端開口にインロー嵌合して同芯に設けている。7は回転軸で、収装孔2の内部を挿通し、前蓋部材3に配置したラジアル玉軸受8と後蓋部材4へ配置したラジアルころ軸受9とで回転自在に軸支し、先端を前蓋部材3より外部に突出して図示しない電動機と結合する。そして、ラジアル玉軸受8は外部に露呈している。ラジアルころ軸受9は後蓋部材4に穿設した有底の孔10に配置され外部に露呈していない。
【0012】
前蓋部材3には、ラジアル玉軸受8の軸方向内方に抜け止め部材10を介して密封部材11を配置している。前蓋部材3は、本体1内部に面する内方端面を傾斜面に形成し、円板状の斜板14を固定している。斜板14の軸心には回転軸7が遊嵌している。斜板14は回転軸7の軸線と直交する線に対して一定の角度傾斜している。15はシリンダブロックで、本体1を構成するハウジング2の収装孔5へ収装し、自身の軸心で回転軸7とスプライン係合して回転方向に係合し、回転軸7で回転駆動される。
【0013】
シリンダブロック15は、軸心より径方向外方で周方向へ等間隔に複数のピストン孔16を形成している。各ピストン孔16は斜板14と対向するシリンダブロック15の一端面に開口している。17はピストンで、シリンダブロック15の各ピストン孔16に軸方向へ往復動自在に嵌挿し、シリンダブロック15に作動室18を区画形成している。各ピストン17は軸心に軸方向へ貫通して流通孔19を形成すると共に、斜板14と対向する先端を球状の凸部に形成してシュー20を枢動自在に枢着している。
【0014】
シュー20は、ピストン17の流通孔19と連通する通孔21を軸心に軸方向へ貫通形成し、先端に斜板14と摺接する摺接部材22を備えている。摺接部材22は樹脂材から円環状に形成し、シュー20に圧入で外嵌している。斜板14は傾斜した角度に基づき各ピストン17の往復動量を設定する。各シュー20は、シリンダブロック15の軸心に収装したばね23のばね力がピン24、リテーナ25、リテーナ板26を介して付与され、斜板14に押し付けられる。作動室18は、各ピストン17の図1右方向への往動で容積が増加して流体を吸入すると共に、各ピストン17の図1左方向への複動で容積が減少して流体を吐出している。各作動室18には接続孔27を接続し、各接続孔27はシリンダブロック15の一端面と対向する他端面に周方向へ等間隔に開口している。
【0015】
28はシリンダブロック15の他端面と摺接する円板状の弁板で、各作動室18に各接続孔27を介して吸入排出する流体を流通する一対の吸排ポート29、30を貫通形成している。両吸排ポート29、30は半円弧状で弁板28の軸心に対して対称位置に配置している。弁板28は後蓋部材4をインロー嵌合する収装孔5に外周をインロー嵌合し、回転軸7と同芯に本体1へ配置している。弁板28はばね23のばね力がシリンダブロック15を介して付与され、後蓋部材4に押し付けられる。31は係合部としての長円形の係合孔で、弁板28へ軸心より径方向外方で軸方向に貫通形成している。32は円柱状のピン部材で、後蓋部材4の内面に軸方向へ突設し、係合孔31に係合する。弁板28は係合孔31にピン部材32が係合することで回り止めされる。そして、係合孔31は短径部にピン部材32が隙間なく係合すると共に、長径部を径方向に延ばしてピン部材32より大寸法に形成し、ピン部材32の係合を容易にして弁板28の回り止めを得ている。
【0016】
33はドレン孔で、弁板28に係合孔31と同一円周上で周方向へ等間隔に3個を軸方向に貫通形成している。各ドレン孔33は弁板28と後蓋部材4との間に漏れたドレンを流通し、収装孔5内に流出する。一方の吸排ポート29は、ピストン17の往動で容積が減少する作動室18に連通し、作動室18から吐出する流体が流通する吐出ポートとして機能している。他方の吸排ポート30はピストン16の復動で容積が増加する作動室18に連通し、作動室18に吸入する流体が流通する吸入ポートとして機能している。34、35は後蓋部材4に形成した一対の吸排流路で、一方の吸排流路34は吐出ポートとして機能する一方の吸排ポート29に接続し、他方の吸排流路35は吸入ポートとして機能する他方の吸排ポート30に接続している。
【0017】
次にかかる構成の作動を説明する。
図1の状態で、回転軸7を回転駆動すると、シリンダブロック15が回転軸7とともに回転する。シリンダブロック15の回転に伴い、各ピストン17は先端のシュー20が斜板14に沿って摺接することで斜板14の傾斜角度に応じた往復動量で往復動し、各作動室18の容積を増減する。
【0018】
シリンダブロック15の回転により容積が増加する作動室18には、吸排流路35より吸排ポート30を流通して流体が吸入される。また、シリンダブロック15の回転により容積が減少する作動室18の流体は、吸排ポート29を流通して吸排流路34より吐出される。このように、シリンダブロック15の回転に伴い流体の吸入と吐出を連続して行うポンプ作動をする。そして、回転軸7の回転駆動を停止すると、ポンプ作動を停止する。
【0019】
かかる作動において、本体1は内部にシリンダブロック15を収装したハウジング2の収装孔5に両蓋部材3、4をインロー嵌合して構成し、回転軸7は両蓋部材3、4へ回転自在に軸支し、弁板28は後蓋部材4をインロー嵌合した収装孔5に外周をインロー嵌合して回転軸7と同芯に本体1へ配置した。このため、弁板28をインロー嵌合する収装孔5は後蓋部材4をインロー嵌合するものであるから、弁板28を回転軸7と同芯に配置するための部材を格別に用意しなくてよく、弁板28を回転軸7と同芯に本体1へ簡単に配置することができる。
【0020】
また、弁板28は係合孔31を本体1の後蓋部材4に突設したピン部材32に係合して回り止めした。このため、弁板28を本体1へ確実に回り止めすることができる。
【0021】
図3は本発明の他の実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
弁板36は、外周の一部を切り欠いて直線状の係合部37を形成している。本体1を構成するハウジング38は、収装孔39の一部を直線状に形成して直線部40を設けている。弁板36は外周を収装孔39にインロー嵌合する際に、係合部37を直線部40に係合して回り止めする。
【0022】
作動は、回転軸7の回転駆動で、各ピストン17が往復動して流体を吸入吐出するポンプ作動を行い、回転軸7の回転駆動を停止すると、ポンプ作動を停止する。
この作動で、弁板36は後蓋部材4をインロー嵌合する収装孔39に外周をインロー嵌合して回転軸7と同芯に本体1へ配置した。このため、弁板36をインロー嵌合する収装孔39は後蓋部材4をインロー嵌合するものであるから、弁板36を回転軸7と同芯に配置するための部材を格別に用意しなくてよく、弁板36を回転軸7と同芯に本体1へ簡単に配置することができる。
【0023】
また、弁板36は係合部37を本体1のハウジング38の直線部40に係合して回り止めした。このため、弁板28を本体1へ確実に回り止めすることができる。
【0024】
なお、前述の実施形態では、斜板式アキシャルピストンポンプ・モータを斜板式アキシャルピストンポンプとしたが、斜板式アキシャルピストンモータとしてもよい。この場合には、外部から供給された流体によりシリンダブロック15が回転駆動され、シリンダブロック15で回転軸7を回転する。また、斜板14の傾斜角度を一定角度とした定容量型としたが、斜板の傾斜角度を変更可能とした可変容量型としてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1:本体
2、38:ハウジング
3:前蓋部材(蓋部材)
4:後蓋部材(蓋部材)
5、39:収装孔
7:回転軸
14:斜板
15:シリンダブロック
17:ピストン
18:作動室
28、36:弁板
29、30:吸排ポート
31:係合孔(係合部)
37:係合部
図1
図2
図3